結論
リンクバルは、街コンの予約・開催と恋活アプリを通じて、人と人が出会う場を提供する会社である。筆者の結論は「割高」だ。実際の出会いを求める需要は10年後も残るが、その需要を同社が高い利益率で独占できる理由はまだ弱い。2026年に始まった大型イベントの拡大を評価しても、長期の本質価値は現在の時価総額を大きく下回る。
かつての利益規模に戻ると考えるのは危険である。2019年9月期には売上高約27億円、営業利益約10億円を稼いだが、2025年9月期には売上高約9億円、営業損失約0.9億円まで縮んだ。2021年9月期から5期連続で営業赤字である。2026年9月期第3四半期には赤字幅が縮小し、街コン事業の単体損益も改善したが、グループ全体で利益を安定して生む段階には至っていない。
明るい材料もある。自社の大型恋活イベントは開催都市と回数が増え、オンラインの集客を実際の交流へつなぐ形が育っている。子会社MiDATAのAI関連売上も伸びた。一方、恋活アプリは大手との競争が厳しく、AI受託開発は顧客による内製化やAIエージェント代替にさらされる。新事業の成長率を、そのまま10年間の利益成長率として扱うべきではない。
中立では、イベントの参加件数が増え、会社全体が営業黒字に定着すると考える。それでも10年後の純利益は約0.6億円にとどまる。十分な純現金はあるが、これまでの赤字で現金が減り、現金を株主へ幅広く返した実績も乏しい。五つの筋書きを確率で重み付けし、資本コストで現在に戻した価値は約6.5億円で、基準時価総額約25.3億円に対して約74%低い。再建の可能性と、今の価格で長く所有する価値は分けて判断したい。
バリュー投資の観点から
長く所有する株主にとって、問うべきことは、街コンを開催できるかではなく、参加者が増えるほど一件当たりの利益も増え、その利益が次の収益を生むかである。広告費をかけて一度来てもらうだけなら、売上は伸びても株主の取り分は残らない。同じ利用者が再訪し、開催者が継続出稿し、会場を増やしても運営費が比例して増えない状態になって初めて、事業に経済的な強みができる。
同社には一つの魅力がある。AIは利用者に候補を紹介し、予約を手伝えるが、恋愛や対面での交流の体験そのものを完全に代替するものではない。「machicon JAPAN」と自社イベントの組み合わせが育てば、検索画面の価値が下がっても収入を保つ道がある。もっとも、経験やブランドを独占的な価格決定力へ変えられた証拠はまだ不足している。2019年に稼いだ巨額の利益を、今後も当然のように取り戻せるとは考えない。
もう一つの判断軸はオーナー利益である。表示上の純利益から、会場を維持する支出、顧客獲得のための広告費、製品を更新する開発費を差し引いて考える必要がある。小さな会社では固定費の見直しによって利益が急に改善する反面、事業が伸びると必要な人員や会場費も増える。大きな市場で戦っているという説明だけでは、再投資の利回りを証明できない。
純現金は魅力的だが、その価値は使い道によって変わる。赤字補填や成果の不確かな開発に消える現金は、額面どおりの株主価値ではない。優待の導入は還元に向けた変化として評価できるが、一般の少数株主へ現金を還元する明確な計画とは異なる。買収される可能性を投資根拠の中心にも置かない。安全域を求めるなら、数期にわたり営業黒字と営業キャッシュフローが定着し、現金が増え始めた事実を先に確かめたい。
何で稼ぐ会社か
事業の中心は「machicon JAPAN」である。各地の街コン、恋活イベント、少人数の交流機会を利用者に紹介し、参加や開催に伴う収入を得る。自ら企画・運営する「MEGA LOVE FES」などの大型イベントも増えている。「1on1 for Singles」は対面での出会いを提供するサービスで、会場や人員の確保が収益を左右する。オンラインで見つけても、最後の価値は現実の会場で人が会うことにある。
2025年9月期の会社開示では、イベントECサイト運営サービスが四半期合計で約6.05億円、Webサイト運営サービスが約2.98億円だった。2026年9月期からは区分が変わり、イベントとアプリを合わせたマッチングサービスと、AIソリューションサービスに整理された。2026年9月期第3四半期累計では、前者が約6.44億円、後者が約0.93億円である。本分析の三つの事業区分は、この二つの開示をつないで作った分析上の区分であり、会社の正式な報告セグメントではない。
恋活アプリ「CoupLink」は、利用者のプロフィール、検索、メッセージなどを通じて月額課金を得る。「恋学」などの情報発信も、広告や集客の役割を担う。街コンへの参加者をアプリへ誘導し、アプリ利用者をイベントへ戻せれば、広告費を抑えながら顧客と接点を保てる。ただし、累計登録者数は実際に料金を払う継続会員数とは違う。解約率や有料会員数が十分に開示されていないため、利用者基盤の価値を大きく見積もれない。
第三の柱は子会社MiDATAのAIソリューションである。企業向けのAIコンサルティング、受託開発、導入支援に加え、勤務表などの入力を省力化するAI-OCR製品の開発を進めている。大同火災との協業や試験導入先の獲得は営業上の進展だが、継続課金の製品売上がまとまって発生している証拠とは異なる。現時点では、顧客の案件と人の作業量に売上が依存する部分が大きいとみる。
顧客ごとの支払額、年間参加件数、アプリ有料会員数、人月単価は開示されていない。本分析では公表済み売上を起点に、参加セッション数、年間有料会員換算数、請求対象人月を推計した。売上の伸びを数量と単価に分けるための仮定であり、これらの数量を会社の公表実績と取り違えてはならない。
優良さと弱いところ
強みは、イベントを探す人と開催する人を結びつける知名度と、全国で開催実績を積み重ねた運営経験にある。「machicon JAPAN」は単なる検索サイトではなく、企画、募集、予約、当日の運営までつながる接点を持つ。2025年7月から約1年間で「MEGA LOVE FES」は累計30回、参加者1万5,000人を突破したと会社は説明する。これは実際に人を集める能力の証拠である。
しかし、堀、つまり競合が容易に奪えない強みは狭い。参加者は一つのサービスに長く居続ける必要がなく、イベント主催者も複数の集客経路を利用できる。値上げ後の継続率、会員の解約率、同じ開催主催者による継続掲載率など、価格決定力を裏付ける数字が乏しい。2019年の高収益がそのまま維持されなかった事実は、過去の顧客基盤を永続的な独占力と考えられない理由になる。
財務には守りがある。2025年9月期の自己資本は約8.1億円、純有利子負債は約マイナス8.1億円であり、実質的に純現金の会社である。一方、2019年9月期には約22.8億円あった純現金が大幅に減った。稼いだお金を成長へ再投資した結果というより、需要減少や事業再編への対応に現金を使った側面が大きい。純現金の厚さと、再投資の利回りの高さを混同できない。
会社は固定費を削減し、2025年9月期第4四半期には営業黒字を回復した。2026年9月期第3四半期も前年同期から改善している。費用を適正化する能力は認めるが、成長投資を増やすと再び赤字になる点は課題として残った。増分の投下資本利益率が資本コストを上回るかは、大型イベントの開催数ではなく、開催費用を引いた利益と翌年以降のリピート率で判断すべきだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の出会い関連市場は、人口減少だけでは決まらない。未婚化、晩婚化、働き方の変化、対面交流への需要は、利用率や利用回数を押し上げる可能性がある。会社の2025年12月の事業計画には、アプリ、結婚相談、イベントなどを含む広い恋活・婚活市場の拡大見通しが示されている。ただし、対象分野の定義が広く、街コン市場そのものの規模やリンクバルの占有率を直接示した数字ではない。
マッチングアプリ市場については、外部調査に2025年約1,023億円、2030年約1,380億円という推計がある。中心的な競合はPairs、with、タップルなどで、利用者基盤と広告宣伝力の差が大きい。リンクバルのアプリ関連売上を約2億円と推計すると、市場全体に対する売上比率は参考計算で約0.2%にすぎない。この数字には情報媒体の売上が混ざるため、正確なアプリの市場シェアではなく上限に近い参考値である。競合各社の同一基準による売上シェアも十分に確認できない。
イベント予約については、「machicon JAPAN」が集客の有力な窓口であることと、市場を独占していることは別である。Peatix、各地のイベント運営会社、結婚相談サービス、SNSを通じた独自募集なども参加者の時間と予算を奪い合う。参加費は景気や会場費に左右される一方、主催者が複数の媒体を使えるため、予約手数料だけを物価以上に上げ続けるのは難しい。自社開催の体験価値を高める方が値決め力を得やすいが、会場費と運営人件費も増える。
AI市場はさらに大きい。会社の成長計画は国内AIシステム市場が兆円規模に拡大すると説明している。しかし、これはリンクバルの受託開発が取れる市場と同じではない。富士通、NEC、NRIなどの大手や専門開発会社が競合し、顧客が自らAIエージェントを組み立てる選択肢も増えている。市場全体の成長を、小規模な受託企業の人月売上の成長に直結させない。
向こう10年間で最も注目するのは、画面の外にある価値である。AIが検索や予約を代行しても、実際に人が出会うイベントそのものは残る可能性が高い。逆に、プロフィール検索、広告原稿、紹介文、受託開発の定型作業は自動化が進む。リンクバルがイベント運営者としての地位を強めれば市場の変化に対応できるが、単なる検索・予約画面にとどまれば取り分は細る。
資本政策と M&A
資本配分で最も重い事実は、過去の利益を現金として十分に守れなかったことである。2019年9月期の高収益期から事業環境が一変し、2021年9月期以降は5期連続で営業損失を計上した。2025年9月期には店舗や設備等の減損も生じた。新しい事業への挑戦は必要だが、投資した資金が株主価値を増やしたと確認できるまでは、高い増分利益率を前提にしない。過去の事業整理や海外子会社の清算も、投資先の入れ替えが容易でないことを示す。
2025年12月公表の事業計画では、2026年9月期の目標として売上高9.71億円、営業利益0.02億円、純利益0.01億円を示した。中期の売上高、営業利益、ROEを年度別に数値で約束する計画は確認できず、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い金額についても数字の約束はない。2026年9月期の配当予想はゼロである。黒字化の目標は再建の第一歩だが、株主の取り分を明確に保証する方針ではない。
2026年には株主優待を導入した。一定期間以上にわたり1,000株以上を保有する株主に、年間合計1万円相当のデジタルギフトを付与する制度である。2026年9月期第3四半期の決算資料には関連費用約0.09億円が示されている。本分析では年約0.18億円の優待費用が続くと仮定し、10年間の還元に含めた。実際の対象株主数や制度の存続によって総額は変わる。
2025年9月期の大株主上位10者の合計保有比率は72.33%で、筆頭株主Kazyが38.98%、代表者個人が22.33%を持つ。過去5年間に現金配当の増配や発行済株式の大幅な買い戻しは見られず、少数株主が余剰現金の使途を変える力は弱い。したがって、現金が帳簿どおり株主へ戻るとは考えない。現時点で公表されたTOB、MBO、上場廃止予定は確認していない。2026年4月の市場変更は東証グロースからスタンダードへの移行であり、上場廃止ではない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
街コンの需要は消えていない。むしろ、画面越しの関係が増えたことで、実際に会える機会には新しい価値が生まれている。「MEGA LOVE FES」は約1年間で30回、延べ1万5,000人を集め、開催地も広がった。2026年9月期第4四半期には大型イベントを26回開催する計画で、運営が標準化すれば、都市や会場を増やしても本社費は同じ速度では増えない。オンライン集客と実際のイベントを組み合わせる会社は、アプリだけの競合とは異なる顧客接点を持てる。
過去の高収益も、事業が軌道に乗った時の利益率の高さを示している。2025年9月期には固定費を減らし、四半期黒字を回復した。2026年9月期第3四半期にはグループ売上が増え、赤字幅も大きく縮小している。この改善が一時的な広告費削減ではなく、予約件数とイベント収益の増加に支えられるなら、一定の営業利益率を再び確保できる。
また、AI技術をイベントの不正対策や推薦精度向上に使う余地がある。MiDATAの企業向け支援やAI-OCRが独立した収益源になれば、これまで持っていなかった法人顧客基盤も育つ。純現金の厚さは再建に必要な時間を確保する。大規模な増資に頼らずにイベントを拡大し、黒字化後に配当や自社株買いを実施できれば、現在より高い事業価値を実現する道は残っている。
慎重な見方
過去の高収益が失われたのは、単に景気が悪かったからではない。需要が落ちた際に、参加者、開催者、売上、営業利益を守る力が十分でなかった。街コンは利用者にとって重要な体験でも、特定の予約サイトが不可欠であるとは限らない。主催者は自社サイトやSNSで募集でき、利用者は大手アプリ、結婚相談所、友人紹介、地域の催しへ移ることができる。広告費を増やさなければ人が集まらないなら、イベント数の拡大は利益を伴わない。
アプリではPairs、with、タップルなどの大手が先行し、利用者の厚みと広告宣伝力で差がある。AIエージェントが本人に代わって検索、推薦、日程調整をする世界では、利用者が特定の画面を開く必要性が薄れる。「恋学」などの情報媒体も検索エンジンによる要約の影響を受ける。2024年にはGoogleのアルゴリズム変更が業績に影響したと会社自身が説明しており、流入経路への依存は実際の弱点である。
MiDATAの成長にも別の危険がある。売上の中心がコンサルティングや受託開発なら、AIが人間の作業を省力化するほど、請求できる人月が減る。試験導入したAI製品が継続課金の大きな収入になるかは、まだ証明されていない。会社は5期連続の営業赤字を経験し、2025年9月期には減損も計上した。純現金はあるが、そのまま赤字補填に使われれば減る。強い株主支配の下では、少数株主が清算や大幅還元を選べるわけでもない。将来の黒字化を高い確率で約束できない会社に、現在の評価を正当化するほどの値段は払えない。
どちらに重みを置いたか
対面イベントには成長余地があり、2026年の売上と費用の改善も実際に確認できる。一方、それを長期の高収益に変える競争優位はまだ弱い。アプリ画面とAI受託の代替リスク、過去5期の赤字、余剰現金の還元実績を考慮し、確率は楽観側30%、中立31%、悲観側39%と慎重寄りにした。ただしAIによる縮小は主に各事業の数量と長期成長率へ織り込み、確率や資本コストで繰り返し罰していない。結果として、再建がある程度成功する中立の筋書きでも、現在の時価総額に十分な安全域は見いだせない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/09 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 64 円12 億円(+ 還元の換算額還元の合計 10 円2 億円)。 今の値に割り戻すと 35 円7 億円、今との差 −72.9%、 期待の年率 −5.6%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 179 円34 億円 | 22 円4 億円 | +57.2% | +4.9% | 20 円4 億円 |
| やや楽観 | 20% | 102 円19 億円 | 13 円3 億円 | −9.9% | −1.1% | 23 円4 億円 |
| 中立 | 31% | 47 円9 億円 | 10 円2 億円 | −55.7% | −8.4% | 18 円3 億円 |
| やや悲観 | 26% | 32 円6 億円 | 7 円1 億円 | −69.1% | −11.9% | 10 円2 億円 |
| 悲観 | 13% | 24 円5 億円 | 5 円1 億円 | −77.4% | −14.6% | 4 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 64 円12 億円 | 10 円2 億円 | −41.6% | −5.6% | 75 円14 億円 |
今の株価時価総額 128 円24 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 全国イベントの採算改善と再成長 利益 3 億円 · PER 11.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 179 円34 億円
自社大型イベントの開催が全国で定着し、参加者を継続して呼び込む力が強まる。「machicon JAPAN」でイベントを発見し、実際に参加した人が別の開催にも戻る流れができる。都市数だけでなく稼働率と一回当たりの採算が改善し、会場の仕入れや運営費を上回る価格を受け取れるようになる。年間延べ参加・予約セッション数は40万件に達し、自社主催の付加価値が高まって平均収入も上昇する。
CoupLinkは大手アプリを追い越さないが、イベントの参加者との相互送客で顧客基盤を守る。AIによる検索・日程調整の代替が進んでも、料金を払って使う会員換算数量は現在並みを維持する。MiDATAは受託案件の省力化が進む中で成果物の付加価値を高め、人月を増やさずに単価と利益率を改善する。大型買収や大量増資には頼らず、イベント運営への再投資と限定的な株主還元を両立する。10年後には事業の利益率が大きく改善するが、競合が存在するため独占的な堀にはならない。
- 街コンEC・自社開催イベント・対面交流:数量 400,000(年間延べ有料参加・予約セッション数(件、推計。同一人の複数回利用を含む))× 価格 3,500(1セッション当たり会社帰属収入(円、手数料・自社開催収入の加重平均))→ 売上 14 億円・営業利益 4 億円。延べ40万セッション、平均会社帰属収入3,500円。自社イベントの比率上昇と高稼働によって営業利益率30%。
- CoupLink・恋学などのアプリ・情報媒体:数量 5,000(年間有料会員換算人年(人年、媒体広告収入も会員換算した推計))× 価格 54,000(有料会員換算1人年当たり年間認識収入(円))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替を踏まえ、楽観でも有料会員換算数量は現状の1.0倍まで。単価は物価上昇の範囲内で上昇。
- MiDATAのAIコンサルティング・受託開発:数量 64.0(年間請求対象人月換算(人月、推計))× 価格 2,000,000(1人月換算当たり受注収入(円、開発・導入支援を含む))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。人月数量は現状の1.0倍にとどめ、成果物の高度化で単価を改善。AI製品が実証段階を超えて大幅増収するとは見込まない。
倍率:k=8.75%、全社g_long=1.0%、moat=weakの残存割合1/3。余剰現金4.5億円の税後利息0.063億円を純利益2.62億円から除き、事業純利益2.557億円と事業自己資本11.2億円から事業ROE22.83%を得る。RONIC=8.75%+(22.83%−8.75%)÷3=13.44%。正当化PER=(1−1%÷13.44%)÷(8.75%−1%)=11.9434倍をそのまま用いる。事業利益2.557億円×PERに、余剰現金4.5億円×戻り方0.5=2.25億円を加え、時価総額約32.79億円とする。市場の過去PERは用いない。
確率:自社大型イベントを全国へ広げ、実際の参加件数の増加と採算改善を長期間両立する必要がある。2019年の高収益を完全には再現しないが、現在よりはるかに強いイベント運営体制になる筋書きであり、実現には複数年の成功が必要なため10%とする。
やや楽観 20% 大型イベントが主力の利益源として定着 利益 1 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 102 円19 億円
「machicon JAPAN」は大型イベントの開催都市と回数を広げ、主催イベントの収益性も改善する。成長は全国のすべての開催地で同じ速度ではないが、利用者に繰り返し選ばれる企画が生まれる。イベントの年間延べセッション数は33万件まで増える。費用削減を維持しながら集客を増やせるため、過去の赤字から営業黒字企業へ転換する。
CoupLinkはオンライン専業の大手サービスに対抗してシェアを大幅に取るのではなく、既存イベント利用者とのつながりで存続する。AIエージェントが検索やメッセージの一部を代行し、有料会員換算の数量は現在よりやや減るが、料金の適正化と広告の効率化で利益を残す。MiDATAは大手顧客との案件実績を蓄積する一方、受託開発に必要な人月は減る。新たな大型M&Aには依存せず、採算が確認された領域に投資を絞り、株主優待を継続しながら限定的な追加還元を実施する。
- 街コンEC・自社開催イベント・対面交流:数量 330,000(年間延べ有料参加・予約セッション数(件、推計。同一人の複数回利用を含む))× 価格 3,300(1セッション当たり会社帰属収入(円、手数料・自社開催収入の加重平均))→ 売上 11 億円・営業利益 3 億円。延べ33万セッション、認識単価3,300円。イベント開催効率と顧客の継続利用によって利益率24%。
- CoupLink・恋学などのアプリ・情報媒体:数量 4,800(年間有料会員換算人年(人年、媒体広告収入も会員換算した推計))× 価格 50,000(有料会員換算1人年当たり年間認識収入(円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。AI代替を踏まえ数量は10年で0.96倍。物価より弱い単価上昇と運営費抑制によって利益を維持。
- MiDATAのAIコンサルティング・受託開発:数量 57.0(年間請求対象人月換算(人月、推計))× 価格 1,900,000(1人月換算当たり受注収入(円、開発・導入支援を含む))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。人月換算数量0.89倍、単価1.27倍。定型作業の自動化が進む中で利益率9%。
倍率:k8.75%、長期g1%、弱い堀の残存割合1/3。余剰現金の税後利息0.063億円を外した事業純利益は1.427億円、事業自己資本は7.5億円で事業ROEは19.03%。RONICは12.18%、正当化PERは11.8435倍。事業純利益1.427億円にこの倍率を掛け、余剰現金の株主帰属分2.25億円を加える。
確率:大型イベントの開催数拡大と2025〜2026年の固定費削減に実績はあるが、参加者の再来場や開催地ごとの採算が長期的に維持されるかは未確認である。一定の成功が続く確率を20%とする。
中立 31% イベントの成長で黒字化するが競争優位は限定的 利益 1 億円 · PER 11.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 47 円9 億円
街コンは、人口減少による利用者の母数の縮小を受けながらも、利用率の改善と自社大型イベントの拡大によって取扱件数を増やす。年間延べ参加・予約セッション数は30万件となる。会場を確保する費用と人員の費用も物価に応じて上昇するため、売上の増加ほど利益は伸びない。それでも、2025年から進めた固定費の見直しが定着し、グループ全体で一定の営業黒字を生む。
CoupLinkは大手アプリと競争しながら、街コン利用者との相互送客に支えられて存続する。ただし、AIエージェントによる紹介や日程調整の自動化が進むため、有料会員換算の数量は現在の9割に減る。料金の引き上げも物価上昇より弱い。MiDATAではAI導入支援が必要とされるが、従来人が行っていた定型業務が自動化され、請求対象人月は約3分の2になる。製品が継続課金の大きな柱になる証拠はまだないため、高い利益率を与えない。
会社は大型買収による規模拡大に頼らず、イベントの集客効率、開催回数、顧客の再利用を少しずつ改善する。株主優待は継続するが、現金配当や大規模な買い戻しは業績次第にとどまる。10年後には今より安定した会社になっているものの、競合が模倣しにくい強い堀や、資本コストを大きく上回る新規投資機会が豊富な会社にはならない。
- 街コンEC・自社開催イベント・対面交流:数量 300,000(年間延べ有料参加・予約セッション数(件、推計。同一人の複数回利用を含む))× 価格 3,150(1セッション当たり会社帰属収入(円、手数料・自社開催収入の加重平均))→ 売上 9 億円・営業利益 2 億円。数量1.20倍、単価1.30倍。対面体験の需要は残るが会場費と人件費も上昇し、利益率16%。
- CoupLink・恋学などのアプリ・情報媒体:数量 4,500(年間有料会員換算人年(人年、媒体広告収入も会員換算した推計))× 価格 46,500(有料会員換算1人年当たり年間認識収入(円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。操作画面が価値の中心というAI代替の型。数量0.90倍、単価1.13倍で、席・画面課金に近い価格圧力を織り込む。
- MiDATAのAIコンサルティング・受託開発:数量 42.0(年間請求対象人月換算(人月、推計))× 価格 1,800,000(1人月換算当たり受注収入(円、開発・導入支援を含む))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。人月・工数型として数量0.66倍、単価1.20倍。AIエージェント代替により請求できる作業量が減る。
倍率:k8.75%、g_long1.0%、moat=weakの残存割合1/3。余剰現金4.5億円の税後利息0.063億円を除いた事業純利益は0.562億円。事業自己資本は8.2−4.5=3.7億円で、事業ROE15.19%、RONICは10.90%。正当化PER=(1−1%÷10.90%)÷(8.75%−1%)=11.7191倍であり、上限から任意に割り引かない。事業価値0.562億円×11.7191倍に、余剰現金4.5億円×0.5=2.25億円を加え、時価総額約8.84億円とする。10年間に積み上がる利益は事業の追加運転資金と還元に回ると考え、余剰現金を恣意的に積み増していない。
確率:2026年の大型イベント拡大と固定費改善は確認できるため、黒字化を中心に置く。ただしイベント集客力が全国で均等に通用する根拠や、アプリの高い継続率は不足する。AI受託の人月縮小も織り込んだ中立の筋書きとして31%とする。
やや悲観 26% イベントの拡大が止まり再び赤字へ 利益 −1 億円 · PBR 0.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 32 円6 億円
大型イベントは当初こそ集客を伸ばすが、開催地を増やすほど会場費、現場人員、広告宣伝費がかさむ。利用者のリピート率が十分に上がらず、新規顧客を呼ぶための費用が利益を圧迫する。競合主催者や地域のSNS募集へ参加者が流れ、延べ参加・予約セッション数は22万件へ縮小する。イベント自体は必要とされるが、リンクバルが全国で拡大する優位性は薄れる。
CoupLinkは大手マッチングアプリの顧客基盤との差が広がる。AIエージェントが候補の検索やメッセージの準備を行うようになり、特定のアプリに課金する人数が減る。MiDATAも定型的な受託開発の単価と人月に圧力を受け、顧客の内製化が進む。AI製品の収益化は限定的なままで、採算の悪い案件を縮小する。
経営陣は追加の大規模投資を避け、事業を絞り込むが、売上減に固定費の削減が追いつかない。優待は当初継続しても、その後の見直しを迫られる。自己資本は縮小し、価値を支えるのは利益を生む力ではなく、なお残る現金と回収可能な資産になる。
- 街コンEC・自社開催イベント・対面交流:数量 220,000(年間延べ有料参加・予約セッション数(件、推計。同一人の複数回利用を含む))× 価格 2,950(1セッション当たり会社帰属収入(円、手数料・自社開催収入の加重平均))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。集客件数は現在の0.88倍。利用者の獲得費用が上がり、利益率は6%。
- CoupLink・恋学などのアプリ・情報媒体:数量 3,700(年間有料会員換算人年(人年、媒体広告収入も会員換算した推計))× 価格 43,000(有料会員換算1人年当たり年間認識収入(円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。画面型の数量は0.74倍に減少。値上げは小幅で利益率5%。
- MiDATAのAIコンサルティング・受託開発:数量 35.0(年間請求対象人月換算(人月、推計))× 価格 1,750,000(1人月換算当たり受注収入(円、開発・導入支援を含む))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。人月数量0.55倍。案件を維持するための費用が重くなり営業赤字。
倍率:営業赤字が継続し稼ぐ力によるPER評価が成り立たないため、収益還元より残存資産を重視する。床のPBRは2036年まで利益を積み上げた自己資本ではなく、2025年9月期の自己資本8.1億円を分母とする。現在の自己資本8.1億円×0.75=6.075億円で、現金消耗を織り込んだ回収可能資産5.5億円を上回る。過去の市場PBRの底値は根拠にしていない。
確率:過去5期の連続赤字と、主催者・利用者が他の集客経路へ移りやすい構造から、再び採算が悪化する筋を無視できない。新サービスに改善の芽はあるため、全面崩壊ではなく緩やかな後退とする。
悲観 13% 集客基盤の喪失と資金の取り崩し 利益 −2 億円 · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 24 円5 億円
主催イベントの拡大が失敗し、イベント予約サイトとしての集客力も徐々に失われる。参加者は大手アプリや地域の独立主催者へ移り、開催者は自社SNSを中心に募集する。年間延べ参加・予約セッション数は14万5,000件まで減る。開催回数を減らしても会場関連費用、システム維持、上場維持費用を完全には削れず、イベント事業そのものが営業赤字になる。
CoupLinkではAIによる紹介や調整の代替に加え、競合のネットワーク効果が働き、有料会員換算の数量が半分以下になる。MiDATAも受託開発の定型作業を顧客自身のAIエージェントが行うようになり、採算の悪い案件が残る。新製品を独自の記録基盤として定着させられず、受託業務の縮小を補えない。
経営は拠点整理や事業売却を検討するが、赤字が続いて自己資本と現金を減らす。株主優待も途中で縮小または停止する。MBOや買収による救済は可能性として存在しても、価格や成立を保証できないため価値の中心には据えない。2036年の会社は成長事業というより、残った資産を守ることが優先される状態にある。
- 街コンEC・自社開催イベント・対面交流:数量 145,000(年間延べ有料参加・予約セッション数(件、推計。同一人の複数回利用を含む))× 価格 2,750(1セッション当たり会社帰属収入(円、手数料・自社開催収入の加重平均))→ 売上 4 億円・営業利益 −1 億円。開催・予約数量0.58倍。会場関連費と集客費が重く、営業利益率はマイナス17%。
- CoupLink・恋学などのアプリ・情報媒体:数量 2,200(年間有料会員換算人年(人年、媒体広告収入も会員換算した推計))× 価格 36,000(有料会員換算1人年当たり年間認識収入(円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。有料会員換算数量0.44倍。AIエージェントと大手競合に顧客を奪われる。
- MiDATAのAIコンサルティング・受託開発:数量 25.0(年間請求対象人月換算(人月、推計))× 価格 1,600,000(1人月換算当たり受注収入(円、開発・導入支援を含む))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。受託人月数量0.39倍。案件の内製化により固定費を回収できない。
倍率:構造敗北による営業赤字と現金消耗を前提とするためPERは用いない。今の自己資本8.1億円に、2036年時点で売れる資産の回収率を表す0.56倍を掛けて4.536億円とする。将来の減損後の自己資本3.1億円を積み上げて床の倍率に使っていない。回収可能資産の推計4.5億円をわずかに上回る値であり、過去の市場PBRは根拠にしない。
確率:街コンの自社集客力低下、アプリ顧客の流出、AI受託の内製化が重なる複合的な構造敗北である。現在の純現金が短期の資金繰りを支えるため直ちに倒産するとは考えず、ただし末期に再建費用がかさむ可能性を13%とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
街コンEC・自社開催イベント・対面交流
machicon JAPANによる街コン集客・予約・開催関連売上、MEGA LOVE FES等の自社大型イベント、1on1 for Singlesを含む。参加者と開催者の双方を集め、イベント取扱手数料や自社開催収入を得る。
| 数量年間延べ有料参加・予約セッション数(件、推計。同一人の複数回利用を含む) | 価格1セッション当たり会社帰属収入(円、手数料・自社開催収入の加重平均) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 250,000 | 2,420 | 6 | 0 |
| 10 年後 中立 | 300,000 | 3,150 | 9 | 2 |
取り方:2025年12月の会社資料で、2025年9月期のイベントECサイト運営サービスは四半期ごとに156、139、148、162百万円であり、丸め後の合計は605百万円。これを2025年の売上6.05億円の根拠とする。会社は年間予約件数・参加者当たり認識売上を開示していない。街コンの手数料売上と自社企画の売上を混ぜて考え、年間延べ25万セッション×平均認識収入2,420円と仮置きした。自社大型イベントの累計1万5,000人は全サイトの取引人数ではないため、これをそのまま全社の取引件数に使っていない。数量・単価・営業利益の内訳は推計であり、開示された事業別実績ではない。
CoupLink・恋学などのアプリ・情報媒体
マッチングアプリCoupLinkの会員課金と、恋学などの情報媒体に付随する広告・集客収入。ユーザーが画面上でプロフィール検索や紹介を利用する部分が中心である。
| 数量年間有料会員換算人年(人年、媒体広告収入も会員換算した推計) | 価格有料会員換算1人年当たり年間認識収入(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 5,000 | 41,000 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 4,500 | 46,500 | 2 | 0 |
取り方:2025年9月期の旧Webサイト運営サービスの四半期合計は約2.98億円であり、2026年の新分類ではそこに含まれていたAI受託開発等がAIソリューションとして分離された。旧Web関連からAI関連売上約0.96億円を差し引いた残額を、丸め差を含めて2.05億円と推計する。会社はCoupLinkの有料会員数、解約率、実際のARPUを開示していないため、5,000人年×4.1万円という便宜的な換算を用いる。実会員5,000人の公表事実を意味せず、広告収入もこの換算単価に含む。AIエージェントが画面操作を代替する事業として評価する。
MiDATAのAIコンサルティング・受託開発
企業・自治体向けAI導入支援、AIコンサルティング、受託開発、システムソリューション。AI-OCR製品の試行段階の収入も含めて扱う。
| 数量年間請求対象人月換算(人月、推計) | 価格1人月換算当たり受注収入(円、開発・導入支援を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 64.0 | 1,500,000 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 42.0 | 1,800,000 | 1 | 0 |
取り方:2026年9月期第3四半期の会社資料ではAIソリューション売上は約0.93億円、前年同期は約0.64億円である。2025年9月期の通期売上は同区分で再表示された全期間の数値が確認できないため、前年9か月の0.64億円に第4四半期約0.32億円を加えた0.96億円を分析上の推計とした。請求対象64人月×複合受注単価150万円で売上を再現する。人数・人月・単価は非開示であり、同規模の受託・導入支援を説明する仮定である。AI-OCRの試験導入は確認できるが、有料の継続課金製品として大きな売上が発生したとは確認できない。
リスクと懸念
イベントの開催数と収益性が一致しない
自社大型イベントの開催都市や開催回数が増えても、会場費、運営人員、広告宣伝費が同時に増えれば利益は残らない。現在確認できるのは集客と開催実績の拡大であり、都市別の継続利益率や参加者の再来場率ではない。開催費用を差し引いた一件当たり利益が改善しない場合、中立の成長は成立しにくい。
大手マッチングアプリとの競争
Pairs、with、タップルなどはユーザー数の厚みによるネットワーク効果を持つ。CoupLinkは街コンとの連携で差別化できるが、紹介候補の豊富さや広告宣伝力だけで対抗するのは難しい。有料会員数、解約率、単価の詳細開示も限られ、現在の売上から継続課金収益の耐久性を高く評価することはできない。
AIエージェント代替
CoupLinkのプロフィール検索・日程調整などの画面価値はAIエージェントによって一部代替される。MiDATAのコンサルティングや受託開発も、顧客がAIで作業を内製化すれば請求できる人月が減る。広告制作・運用への新規参入も同じ圧力を受ける。イベントという現実の体験は残るが、画面操作や工数そのものに高い長期成長を見込むことはできない。
検索エンジン・広告媒体への依存
会社は2024年のGoogleアルゴリズム変更が業績に影響したと説明している。検索結果がAIによる回答へ置き換わると、恋学などの情報媒体への訪問が減る可能性がある。SNSや広告出稿へ集客を切り替えても、広告獲得単価が上がればイベントの利益率は悪化する。自然検索流入と広告費の推移を併せて確認する必要がある。
赤字再発による純現金の消耗
純現金約8.1億円は資金繰りの安全性を高めるが、過去にはそれを上回る規模の現金を長期間で失った。2026年の改善はまだ安定したグループ全体の黒字実績ではない。費用削減が限界に達し、イベント投資とAI受託の採算悪化が重なると、株主価値の床となる現金そのものが小さくなる。2026年9月期第3四半期の継続企業の前提に関する注記は該当なしである。
株主支配と資本配分
上位10株主の保有比率が7割を超え、少数株主が資本配分を変える力は小さい。現金配当や大幅な自社株買いの実績が乏しいため、余剰現金を帳簿額でそのまま投資家の価値とするのは適切でない。今後、採算が検証されていないM&Aや新規事業への投資を拡大すれば、純現金の価値が再び失われる危険がある。
個人情報と利用者の信頼
出会い関連のサービスでは、プロフィールや連絡先などの情報管理が利用者の信頼を左右する。2026年8月にはシステム不具合による個人情報の表示について会社からお詫びの開示があった。安全対策の費用が増えるだけでなく、事故が繰り返されれば利用者離れや開催者との取引減少につながる。安全性を差別化要因とするには、継続した運用実績が必要である。
今後の分かれ目
- 大型イベントが計画どおり増加し、延べ参加者数と開催地別の粗利益も継続的に増えたら
- やや楽観・楽観側の数量と利益率を引き上げる。開催回数だけでなく、参加者の再来場率と一件当たり営業利益が増えたかを条件にする。
- イベントの開催数だけが増え、広告宣伝費と会場費の増加で営業赤字が再拡大したら
- イベントの規模拡大による利益率改善を取り消す。中立の営業利益と純利益を下げ、やや悲観の確率を引き上げる。
- CoupLinkの有料会員数、解約率、顧客獲得費用、実際の値上げ実績が定量的に開示されたら
- ネットワーク効果と価格決定力を再判定する。低解約率と値上げ後の継続利用が確認できれば、弱い堀の評価を改める余地がある。
- MiDATAでAI製品の継続課金売上と解約率が公表され、受託人月への依存が低下したら
- AIソリューションを人月型と製品型に分け直す。ただし導入企業が数社増えただけでは、AIエージェント代替リスクを外さない。
- 純現金が事業赤字の継続で5億円未満へ減少したら
- 余剰現金と悲観の床を再計算する。単なる現金移動か、損失補填と撤退費用による減少かを区別し、後者なら本質価値を下げる。
- 現金配当の開始・増配や大規模な自社株買いが継続し、余剰現金を実際に株主へ返すようになったら
- 現金の戻り方を0.5から再評価する。単発の優待だけではなく、配当性向や株数の減少などの実績を確認してから価値を修正する。
見ておくもの
- 自社大型イベントの四半期開催数、開催都市数、実参加者数、平均稼働率
- イベントECの年間延べ予約件数、会社帰属手数料、開催費用控除後の利益
- CoupLinkの月間利用者、有料会員、解約率、課金単価、イベントからの送客率
- MiDATAの受託人月売上と継続課金製品売上の内訳、AI-OCR有料導入社数
- 自然検索流入、広告宣伝費、顧客獲得単価、Google検索経由の訪問数
- 連結営業利益と営業キャッシュフローの継続黒字、現預金・有利子負債・純現金
- 株主優待の年間費用、対象株主数、現金配当、自社株買い、発行済株式数
- 中期数値計画と株主還元方針の新設、M&A・TOB・MBO・上場廃止に関する正式開示
- 継続企業の前提に関する注記と重要事象等の開示状況
倍率と資本コストの決め方
時価総額約25.34億円を最初に利益の目標へ割り戻すことはしていない。2025年9月期のイベントEC約6.05億円、Web関連約2.98億円と、2026年の新しいマッチング・AI区分を突き合わせ、非開示部分は推計と明記して数量×単価に分けた。イベントは実際の交流が価値の中心だが、アプリの操作画面にはAIエージェント代替による数量・単価の制約を掛け、MiDATAの人月数量は中立で約0.66倍とした。中立純利益は営業利益の約63%とし、過去の利益率と整合させた。kは8.75%、10年より先の名目成長率は1%、堀は弱いと評価し、ROEとRONICから正当化PERを求めた。悲観側は過去のPBRの谷を使わず、現金の消耗を含む回収可能資産を基準とした。2027年以後の新リース会計による貸借対照表の表示変更で価値を二重に変えず、会場家賃を営業費用とする同一基準で10年間を比較している。確率加重後の現在価値は約6.47億円で、株価基準時の時価総額約25.34億円との差は約マイナス74.5%。結論は明確に割高である。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5% + 上乗せ 0.5%。基本7.5%に事業品質の上乗せ0.75%と、2021年9月期以降5期連続の営業赤字に伴う事業再建リスク0.5%を足し、8.75%とした。大きな純現金と2026年の赤字縮小を考慮し、存続危機企業並みの上乗せにはしない。個別のM&Aや支配株主の問題は追加利率ではなく筋書きと現金の戻り方で扱う。
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読んだ資料
- リンクバル「事業計画及び成長可能性に関する事項」2025年12月19日。2025年の旧サービス区分の売上、2026年の会社計画、市場認識
- リンクバル「2026年9月期第3四半期決算補足説明資料」2026年8月14日。サービス別売上、大型イベント、AI事業、株主優待費用
- リンクバル「2026年9月期第3四半期決算短信」2026年8月14日。継続企業の前提に関する注記、業績・財政状態
- リンクバル「2025年9月期有価証券報告書」2025年12月19日。主要株主、財務、関連当事者、減損、配当・自己株式
- 「マッチングアプリ白書2026」公表資料。国内マッチングアプリ市場の推計
- リンクバル「株主優待品の内容決定に関するお知らせ」2026年3月4日