結論
ヴィスは、成長企業のオフィスを設計し、内装工事まで請け負う会社である。筆者の結論は、稼ぐ力に比べて今の値段は安い、というものだ。決め手は財布の厚さにある。純現金は約66億円で、時価総額の半分を超える。
事業そのものは堅い。売上は5期続けて伸び、2026年3月期は165億円、営業利益は19億円だった。借金はなく、ROEは17%台を保つ。受注は過去最高で、1億円以上の大型案件が半分近くを占める。
弱みは波の大きさだ。案件の検収が期をまたぐだけで、四半期の利益は大きく振れる。2026年4〜6月期の営業利益は、約8割減とされる。今期の会社予想は19億円台で、伸びは一服する。
10年の中立では、物価の分だけ単価が上がり、営業利益は26億円まで増える。生成AIは設計の手間を減らすが、施工の現場は残る。現金の積み上がりまで数えれば、中立の価値は今の時価総額を大きく上回る。
ただし議決権の6割超を、大株主2者が持つ。余った現金が株主に戻るかは、この2者の意思しだいだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社の魅力は「事業の稼ぎ」と「現金」の足し算にある。純利益は14億円、純現金は66億円。今の値段は、現金を引くと事業を3倍台の利益で買う計算になる。
事業の質は悪くない。借金がなく、ROEが高く、設計と施工を一貫して受ける力がある。ただ、堀、つまり他社がまねできない強みは、ブランドの強い製造業ほど広くない。案件を取るたびに競争があり、利益率は外注費と人の確保で決まる。
株主から見たオーナー利益、つまり再投資を引いた手取りは、純利益に近い。工場も大きな設備も要らないからだ。このため、利益の多くを配当や自社株買いで返せる。現金が積み上がるのは、投資先がないことの表れでもある。
資本の使い方は、まだ評価できない。配当性向は上がったが、66億円の使い道は示されていない。大株主が2者で6割を超えるので、少数株主が方針を決められない。筆者は、現金の価値を戻り方で割り引いて見るのが、安全域を取る正しいやり方だと考える。
払う値段に安全域はあるか。悲観でも現金が下支えする。答えは、ある。
何で稼ぐ会社か
ヴィスは、ブランディング、データソリューション、プレイスソリューションの3事業を持つ。稼ぎの大半はブランディング、つまりオフィスのデザインと施工だ。社員は約270人で、本社は東京の汐留にある。
仕事の流れは、相談、設計、受注、施工、移転後の更新だ。顧客の課題を聞き出して空間の考え方を決め、図面を引き、内装工事とネットワークの整備まで一手に引き受ける。施工は協力会社に出し、ヴィスは全体を取りまとめる。決算では売上から外注費を引いた粗利益を重視している。
顧客は成長企業が中心だ。2021〜2023年に新規上場した301社のうち74社、約4分の1が顧客だった。再び頼む比率は58.6%と高い。
2026年3月期の受注は178億円で過去最高だった。1億円以上の大型案件は38件、75億円で、受注の42%にあたる。期末の受注残は39億円と6割増え、前受金は13億円に3.3倍に増えた。
データ事業は、働き方の調査と改善を支えるソフトの提供だ。プレイス事業は、ビルの用途変更と、貸し会議室付きのフレキシブルオフィス「The Place」の運営である。後者はビルを借りて貸す事業なので、家賃が固定費になる。
優良さと弱いところ
優良さは、中の上と見る。強みは3つある。ワンストップで任せられること、成長企業の顧客を持つこと、財務に余裕があることだ。
顧客は、移転のたびに設計と施工の会社を探す。ヴィスは設計から更新まで受けるので、再び頼まれやすい。日経ニューオフィス賞を毎年のように受け、設計の評価も高い。有資格者と専門デザイナーを抱えるため、人の確保が競争力でもある。
資本効率は良い。ROEは2022年3月期以降、17〜21%で推移してきた。営業利益率は10年で6%台から11%台へ上がった。1件あたりの単価を上げ、受注率を高める方針が効いている。
弱みは、値段を自分で決めにくいことだ。外注費は物価で上がり、顧客は複数社に見積もりを取る。利益は案件の検収時期で振れ、予想も外れやすい。
経営への注文もある。現金の使い道が見えにくいと、株主から声が出ている。会社は累進配当と性向40%への引き上げで応えた。ただ、資本をどう育てるかの答えはまだ薄い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
オフィスの設計・内装は、規模の割に参入者が多く、公的な市場統計もない。競合は、空間デザイン大手の乃村工藝社、丹青社、オフィス家具大手のイトーキ、オカムラ、コクヨ、ゼネコン系の内装会社などだ。ヴィスの売上165億円は、その中では小さい側にいる。
数量は、オフィスの移転・増床・改装の件数で決まる。出社と在宅を組み合わせる働き方が定着し、オフィスは「集まる場所」として作り替えられている。老朽ビルの入れ替えも需要になる。一方で人口は減り、企業の新設は伸び悩む。筆者は、実質の件数は10年でほぼ横ばいか、会社の努力で少し増える程度と見る。
価格は、物価に連動する。内装工事の費用は、資材と職人の賃金で上がる。人手不足の現場では転嫁が通りやすい。ただ、外注費が先に上がり、顧客への請求が後を追うので、利益率は一時的に削られる。
生成AIは、設計の下書きや図面、提案資料の作成を速める。設計料の部分は値下げ圧力を受けるが、施工の現場は人が動く仕事で、AIが直接置き換えるのは難しい。ヴィスの売上は、外注の施工が大半なので、影響は設計の人件費に限られる。
循環は、いまは増益の後半にいる。2026年4〜6月期は大幅な減益だった。通期の予想は微増にとどまる。
資本政策と M&A
資本政策は、配当を厚くしながら現金をためてきた形だ。2026年3月期の配当は1株当たり前期並み、総額は約4億円で、純利益の3割だった。2027年3月期は性向の目安を40%に上げ、総額で約5億円を予定する。累進配当、つまり減らさない方針も入れた。
自社株買いの実績は見当たらない。純現金は約66億円あり、前受金や工事の立て替えを除いても余りが出る。株主から現金の使い道を問う声があり、会社は成長投資、還元、内部留保の釣り合いを示す必要がある。
2026年9月には、200株以上の株主向けに優待を新設した。ポイントを電子マネーなどに交換する仕組みで、金額は未開示だ。流通する株が少ないので、年1億円未満の費用と見込み、価値には入れていない。
大株主は、クレドが40.7%、中村勇人氏が22.4%を持つ。2者で6割を超え、実際に売買される株は3割台しかない。非公開化や再編が起きやすい構造だが、買収価格が本質価値を上回るかは別の問題だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
現金を引くと事業が驚くほど安い。純現金66億円は時価総額の半分を超え、事業の利益14億円には3倍台の値段しか付いていない。借金はなく、ROEは17%台で、設計から施工までを一貫して受けるので、再注文も多い。
受注は過去最高だ。178億円のうち1億円以上の大型案件が75億円を占め、受注残は6割増えた。前受金も3.3倍に増え、先の売上が見えている。2026年4〜6月期の利益減は検収のずれによるもので、通期の予想は変えていない。
会社は変わり始めた。累進配当を入れ、性向を40%に上げ、優待も新設した。資本の使い道を問う株主の声に応えた動きで、現金が戻る方向に進んでいる。
物価が3%で上がる世界では、設計と施工の請求額も上がる。取得済みの設備が少ないこの会社は、物価の恩恵をそのまま利益で受けやすい。1件あたりの単価は上がり続けており、中期計画は2031年3月期に売上250億円と営業利益25億円を掲げる。
慎重な見方
現金の値打ちを額面で数えるのは甘い。66億円には前受金13億円が含まれ、工事の立て替えにも使われる。大株主2者で6割を超えるので、少数株主は使い道を決められない。66億円が配当や自社株買いで戻る保証はない。
事業の波も大きい。2026年4〜6月期の営業利益は約8割減とされ、通期の営業利益の予想は前期とほぼ同じ19億円台だ。受注が増えても、検収のずれで利益は動く。案件ごとの商売なので、受注が途切れると売上は急に落ちる。
顧客は成長企業に偏る。新規上場や資金調達が冷えれば、移転や増床は真っ先に止まる。リーマン級の景気後退では、オフィスの内装の発注は大きく減る。
生成AIは設計工数を減らし、設計料に値下げ圧力をかける。設計の付加価値が下がれば、外注を束ねるだけの仲介と変わらなくなる。外注費は物価で上がるので、請求が追いつかなければ利益率が削られる。
配当性向を上げても、利益が減れば配当は増えない。優待を新設しても、費用は毎年かかる。大株主が動かないなら、66億円の現金は帳簿の数字にとどまり、PERは割安に見えても株価は動かない。リーマン級の後退を一度でも挟めば、10年の平均はもっと低い。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、現金と事業の足し算を描き、足もとの受注も強い。慎重な見方は、現金の戻り方と、案件の波、AIの影響を突く。現金の指摘は的を射ているが、悲観でも半分が残る計算になる。
このため確率は、中立を中心に、波の大きさを反映してやや悲観を厚めに置いた。余った現金は、戻り方を4分の3に割り引いて数えた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,623 円391 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 857 円72 億円)。 今の値に割り戻すと 2,805 円237 億円、今との差 +104.9%、 期待の年率 +14.9%(資本コスト 7.6%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 8,416 円711 億円 | 1,539 円130 億円 | +627.2% | +21.9% | 697 円59 億円 |
| やや楽観 | 20% | 6,879 円581 億円 | 1,184 円100 億円 | +488.9% | +19.4% | 1,612 円136 億円 |
| 中立 | 38% | 5,645 円477 億円 | 888 円75 億円 | +377.2% | +16.9% | 2,483 円210 億円 |
| やや悲観 | 26% | 1,749 円148 億円 | 592 円50 億円 | +71.0% | +5.5% | 609 円51 億円 |
| 悲観 | 9% | 647 円55 億円 | 237 円20 億円 | −35.4% | −4.3% | 80 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,623 円391 億円 | 857 円72 億円 | +300.3% | +14.9% | 5,480 円463 億円 |
今の株価時価総額 1,369 円116 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.6% を下回るほど割高。
楽観 7% 大型案件が積み上がり、VISION2030を超える 利益 30 億円 · PER 22.5 倍 · 株価時価総額 8,416 円711 億円
大型案件が増え、会社の長期目標を超える。1億円以上の案件が受注の半分を占め、設計から施工、移転後の更新までを任される。成長企業の新規上場が続き、顧客の裾野も広がる。
完工は実質で4割ほど増え、1件あたりの単価は物価を少し上回って上がる。売上は320億円に迫る。2031年3月期に250億円という会社の目標を、10年では大きく超える姿だ。
不動産仲介とデータ事業が育ち、営業利益率は13%に乗る。余った現金の一部は買収と自社株買いに回り、10年で130億円を株主に返す。大株主の持株が高く、非公開化の動きもありうる。
- ワークデザイン事業(オフィスのデザイン・施工):数量 476(完工案件数(件・実質))× 価格 1.38(1件あたり売上の指数(今を1.00))→ 売上 319 億円・営業利益 41 億円。利益率13.0%
倍率:事業の純利益 29 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 36.8% が k 7.65% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 22.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 22.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 22.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)34 億円。全体の PER 22.47 倍、時価総額 687 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注の増え方が会社の計画を超え、利益率も上がる必要がある。2026年3月期の受注は過去最高だったが、1Qの利益の落ち込みが示すように波が大きい。薄めに置いた。
やや楽観 20% 受注が伸びて単価も上がる 利益 24 億円 · PER 22.3 倍 · 株価時価総額 6,879 円581 億円
ワンストップの強みが効き、完工は実質で2割増える。1件あたりの単価は大型案件の比率が上がって物価を少し上回る。売上は270億円ほどになる。
外注先の単価も物価で上がるが、設計と管理の付加価値で粗利を守る。営業利益率は12%台に乗る。生成AIで設計と提案の手間が減り、同じ人数で多くの案件をさばける。
配当は性向40%を守りつつ増やし、10年で100億円を返す。現金は積み上がるが、買収の動きは小さい。優待の新設で個人株主が増え、流通する株が厚くなる効果も少し出る。
顧客の裾野は、新規上場企業に加えて、既存の中堅企業の改装需要へ広がる。リピート率は6割前後を保つ。
- ワークデザイン事業(オフィスのデザイン・施工):数量 408(完工案件数(件・実質))× 価格 1.36(1件あたり売上の指数(今を1.00))→ 売上 269 億円・営業利益 33 億円。利益率12.3%
倍率:事業の純利益 23 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 35.1% が k 7.65% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 21.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 22.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 22.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)34 億円。全体の PER 22.27 倍、時価総額 552 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注残と前受金が増えており、足もとの伸びは数字に出ている。1Qの波を差し引いても、実現しやすい上振れとして厚めに置いた。
中立 38% 中立:物価分の単価上昇と、緩やかな件数増 利益 19 億円 · PER 22.4 倍 · 株価時価総額 5,645 円477 億円
完工は実質で5%ほど増え、単価は物価並みに上がる。売上は230億円ほどになる。会社の2031年3月期の目標(250億円)には届かない見立てだ。
オフィスの需要は、働き方の見直しと老朽ビルの入れ替えで底堅い。ただ、成長企業の数と採用の勢いが落ち着けば、新規の移転や増床は鈍る。設計は生成AIで速くなるが、競合も同じ道具を使うので、値段で得をする分は小さい。
営業利益率は11%台で、今のピークの水準を保つ。配当は性向40%で、10年で75億円を返す。残りの利益は積み上がり、現金が増える。
大株主2者の持株は変わらず、現金の使い道も大きくは変わらない。筆者は、これが会社の実力どおりの10年だと見る。受注の波は残り、年によって利益は2割ほど振れる。
- ワークデザイン事業(オフィスのデザイン・施工):数量 357(完工案件数(件・実質))× 価格 1.34(1件あたり売上の指数(今を1.00))→ 売上 232 億円・営業利益 26 億円。利益率11.3%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 35.8% が k 7.65% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 21.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 22.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 22.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)34 億円。全体の PER 22.35 倍、時価総額 444 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の予想は今期が微増、中期計画は2028年3月期に売上200億円とする。計画は5期続けて伸びてきたが、検収のずれで未達も出た。計画どおりの伸びを中立の中心に置いた。
やや悲観 26% AIと景気で単価が伸びず、件数も減る 利益 11 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 1,749 円148 億円
景気が冷え、成長企業の移転や増床が減る。完工は実質で15%ほど減る。生成AIで設計の工数が下がり、設計料は値下げ圧力を受ける。単価は物価に届かず、10年で1.25倍にとどまる。
営業利益率は8%台に下がる。設計者と管理者の人件費は物価で上がるため、固定費の重さが効く。フレキシブルオフィスの賃借の約束も重荷だ。
配当は性向40%を守るが、利益が減るので10年の返却は50億円にとどまる。余った現金は谷で食われる。
設計者の採用は絞られ、大型案件を担える人材が流出する。受注率が下がり、値引きで案件を取る場面が増える。大株主は動かず、現金の使い道は変わらない。
- ワークデザイン事業(オフィスのデザイン・施工):数量 289(完工案件数(件・実質))× 価格 1.25(1件あたり売上の指数(今を1.00))→ 売上 175 億円・営業利益 15 億円。利益率8.5%
倍率:事業のROEは約9%でkをわずかに上回る程度。正当化PERは約12倍だが、利益が減る筋書きなので上限の約7割の8.5倍に置いた。
確率:成長企業向けに偏る需要は、景気と新規上場の勢いに左右される。1Qの大幅減益が示すように、利益は読みにくい。慎重な見方を強く見て厚めに置いた。
悲観 9% 需要の縮みとAIによる設計の置き換え 利益 3 億円 · PBR 0.7 倍 · 株価時価総額 647 円55 億円
リーマン級の景気後退に、生成AIによる設計の置き換えが重なる。完工は実質で4割減り、設計は無料に近づく。単価は物価の半分ほどしか上がらない。売上は115億円まで縮む。
社員約270人の固定費が重く、営業利益は4億円ほどに落ちる。賃借のオフィスの約束も固定費として残る。配当は性向を守れず、10年の返却は20億円にとどまる。
底を支えるのは現金だ。前受金を引いた純現金の約半分が残り、事業の利益が薄くても値段の下支えになる。
設計と施工の仲介としての価値は残るが、新しい顧客は取れず、既存客の小さな改装が中心になる。10年後のヴィスは、成長する会社というより、現金を抱えた小さな工事会社として見られる。
- ワークデザイン事業(オフィスのデザイン・施工):数量 211(完工案件数(件・実質))× 価格 1.12(1件あたり売上の指数(今を1.00))→ 売上 115 億円・営業利益 4 億円。利益率3.5%
倍率:床は今の自己資本79億円に掛けるPBR0.691倍(約55億円)。稼ぐ力(純利益÷k)に半分の現金を足した約50億円とほぼ同じで、売れる資産の税後も約40億円ある。
確率:成長企業向けの案件が細り、設計もAIに置き換わる構造的な負けが重なる必要がある。ただ案件ごとの商売なので、受注が途切れた時の落ち方は速い。無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ワークデザイン事業(オフィスのデザイン・施工)
成長企業のオフィスを、相談から設計、内装工事、移転後の更新まで一貫して請け負う。データ事業とフレキシブルオフィス運営は小さく、ここに含めた。
| 数量完工案件数(件・実質) | 価格1件あたり売上の指数(今を1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 340 | 1.00 | 165 | 19 |
| 10 年後 中立 | 357 | 1.34 | 232 | 26 |
取り方:決算で案件数の開示は限られる。受注178億円と、案件の平均単価が4千万円台であることから、年の完工を340件と推定した。売上はこの件数に1件あたり約0.485億円を掛けた形で置く(推定)。営業利益は連結の19.4億円。ブランディング、データ、プレイスの3事業は合算で扱う。
リスクと懸念
案件の波と検収のずれ
売上は案件の検収で立つため、四半期の利益は大きく振れる。2026年4〜6月期は営業利益が約8割減とされ、通期の予想も前期並みにとどまる。受注が増えても、売上計上が遅れれば株価は下に振れやすい。
成長企業に偏る需要
顧客は新規上場企業など成長企業が中心だ。資金調達や上場の市場が冷えると、移転や増床の発注が真っ先に止まる。リーマン級の後退では、案件数が大きく減る。
生成AIによる設計の置き換え
AIが図面と提案を作れるようになれば、設計料に値下げ圧力がかかる。設計の付加価値が下がれば、外注を束ねる役にとどまる。施工の現場は残るが、利益の厚い設計の部分が痩せる恐れがある。
外注費の上昇と転嫁の遅れ
協力会社の単価は、人手不足と物価で先に上がる。顧客への請求が後を追うので、利益率が一時的に削られる。設計と管理の人件費も物価で上がり、固定費が重くなる。
現金の使い道と大株主
純現金は約66億円で時価総額の半分を超える。大株主2者で議決権の6割超を持ち、現金が株主に戻るかは2者の意思に左右される。優待の新設はあるが、自社株買いの実績はない。
フレキシブルオフィスの賃借と新リース会計
プレイス事業はビルを借りて貸すため、家賃が固定費になる。2028年3月期から新しいリース会計基準で借りた分が貸借対照表に載り、純現金と自己資本比率が見かけ上弱く映る。約束の残高は確認できていない。
今後の分かれ目
- 自社株買いや特別配当など、現金を戻す策が出たら
- 現金の戻り方が上がるので、強気側の筋書きに確率を寄せる。
- 受注残と前受金が増える中で、検収が進み利益が戻ったら
- 1Qの減益は一時的だったと確認でき、中立から強気側へ寄せる。
- 新規上場の件数や資金調達が2年続けて細ったら
- 顧客の裾野が痩せるので、やや悲観側の確率を上げる。
- 大株主の2者が持株を売る、または非公開化の話が出たら
- 買収価格が本質価値を上回るかが分かれ目になる。上回れば強気側に重みを移す。
- 設計料を大きく引き下げる競合や、AI設計の内製化が広がったら
- 設計の付加価値が縮むので、悲観側の確率を上げる。
見ておくもの
- 受注高・受注残・前受金と、大型案件の件数
- 四半期ごとの営業利益率と検収のずれ
- 1件あたりの案件単価と受注率
- 配当性向と自社株買いの有無、現金の使い道
- クレド・中村勇人氏の持株の動き
- 新規上場企業の件数と成長企業の資金調達
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。事業のROEが約15%、k 7.65%、g 4%から正当化PERは約15倍で、その7割にあたる11倍を中立にした。今の株価や同業の倍率は見ていない。余った現金は戻り方4分の3で数え、悲観の床は純現金から前受金を引いた額と稼ぐ力で置いた。10年後の数字は新リース会計基準を入れず、家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.5→22.47 倍・やや楽観 PER 12→22.27 倍・中立 PER 11→22.35 倍・悲観 PBR 0.65→0.691 倍)。
資本コスト 7.6% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityを足した(決まりv2)。個別のリスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.40% → 7.65%。