結論
JSHは地方の農園で障がい者の就労場所と定着支援を企業へ提供し、精神科訪問看護も営む会社だ。筆者の結論は「割安」である。株主が10年持つ価値は農園契約の積み上がりにあり、景気敏感な人材紹介業のように毎年ゼロから売る商売ではない。2026年3月期には47.4億円を売り上げながら営業赤字だったが、利益を失った主因は訪問看護の急拡大と全社費の重さにある。農園そのものは相応の収益を上げている。
一方、法定雇用率の引上げだけで成功を確約するのは危険だ。障がい者にとって意味のある仕事とキャリアが生まれなければ、農園を使うだけの雇用に対する監督や社会の評価は厳しくなる。競合のエスプールプラスは受入人数でJSHを大きく上回り、価格を自由に上げられるほどの独占はない。精神科訪問看護も看護師の採用、診療報酬、拠点統合の実行に左右される。
2026年7月の中期計画は2029年3月期の売上106.58億円、営業利益13.21億円を目指す。しかし、IoTの大幅な増収や訪問看護の黒字化をすべて信じた金額を中立価値にはしない。AIエージェントが紹介事務や無人内見の操作画面を代替する影響も別に織り込んだ。5つの筋書きの確率加重を資本コストで割り戻した価値は約47.47億円で、基準時価総額約33.22億円を約42.9%上回る。上振れ余地は大きいが、それを手にできるかは農園の継続率と投資の規律次第である。
バリュー投資の観点から
長く保有する株主なら、まず顧客が10年後にも農園を使い続ける理由を問う。法定雇用率が上がれば契約を取る機会は増えるが、法律で作られた需要は法律や行政運用の変更で形を変える。価値の土台になるのは、本人が働き続けられ、利用企業が安心して仕事を任せられる実務の品質だ。解約率の低さと低い地方地代は強みだが、それだけで永続的な値上げ力を約束するものではない。
次に見るのは、会社が儲けた金をどこへ戻すかである。農園に新しい利用者を受け入れる設備投資は、満床になるまで資本を先払いする。一方、訪問看護は看護師を採っただけでは儲からず、移動経路や稼働件数が整って初めて利益が出る。投資した資本に対する追加利益が8%を超えるのか、その改善が全社の現金収支に表れるかを数年続けて見たい。従来の出店数重視から既存拠点の生産性重視へ転じたことは、必要だった修正だ。
もっとも疑問が大きいのはIoT事業である。実際のスマートロックの設置や鍵の受け渡しは残るが、予約、問い合わせ、アクセス管理画面はAIエージェントが仲介するようになる。現在の継続課金の伸びを10年先まで延ばして株主のものと見なせない。ここには高い倍率を払わない。
現在の時価総額は、農園の継続課金だけでも上積みの余地が見込める価格帯にある。しかし、赤字期を経験し、今後の利益率が制度と人件費に左右される会社に、確実性を意味する高評価は与えない。資本コストで割り戻し、実現確度の低い上振れと資産の床の両方を考慮した上でも安全域が残る、という限定された判断である。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ頭は「コルディアーレ農園」である。都市部などの企業が地方の障がい者を自社の従業員として採用し、JSHが農園、栽培設備、日々の就労支援、健康面の見守り、送迎を提供する。利用企業が払う定着支援料、施設利用料、設備レンタル料は毎月積み上がる。2026年3月期の農園支援サービス売上の約9割が継続課金で、期末の受入人数は1788人、取引先は約247社だった。利用者が退職した際の補充紹介料を原則取らない設計は、定着率を上げる利害と一致する。
農園では野菜の売上が主役ではない。企業が法定雇用を果たしながら、安全な就労環境を作るための費用を払う仕組みだ。地方の用地賃料は都市型農園より低く、同社は競合施設使用料の2〜3割と説明している。この差額を人への支援に使うことができる。地方創生セグメントの一部には「リロカル」の特産品販売、旅行手配、民泊事業もあるが、農園支援とは利益の源泉が違う。
「コルディアーレ」のもう一つの柱は精神科訪問看護だ。2026年3月期は約15.5万件訪問し、診療報酬に基づく売上を得た。医療機関へ精神科訪問診療の進め方を助言する活動は患者紹介につながるが、主な収入は看護師が実際に訪問する行為に対する公定価格である。拠点数を急増させた後に固定費が重くなり、2026年7月の計画では統廃合を優先する方向へ切り替えた。
2025年1月に子会社化したショウタイム24は「無人内見くん」を通じ、スマートロックと不動産内見の予約・管理システムを提供する。2026年4月の利用企業は132社、月次継続課金は約1020万円で、売上の約85%がシステム利用料である。実物の鍵の管理には価値があるが、予約や画面操作はAIに代替される余地が大きい。この事業の計画上の伸びを農園と同じ確からしさでは評価できない。
優良さと弱いところ
堀、すなわち顧客が簡単には他社に乗り換えられない理由は農園の運営力にある。用地、障がい特性に合わせた仕事、支援スタッフ、医療・福祉との連携を同時にそろえるのは難しい。会社開示の2026年3月期の年間解約率は受入人数ベースで4.5%だった。これは長期継続の実績であり、顧客の定着が営業費用を抑える可能性を示す。2026年9月の受入人数も1990人へ増え、追い風が実際の人数に表れている。
ただし、解約率が低いだけでは独占的な堀とはいえない。エスプールプラスやスタートラインのIBUKIが同様の就労環境を整え、顧客は新規採用を別の施設へ振り向けられる。契約継続率は良好でも、値上げを継続して通した実績は限定的である。JSHの特徴は農園と精神科支援の接点だが、それが競争相手に模倣不能な独自データや許認可を生むわけではない。堀は「普通」であり、将来の超過利益が永久に残るとは扱わない。
再投資の利回りはまだ評価の分かれ目だ。農園は増設した区画が埋まれば継続収入を生むが、土地・建物・設備と人員を先に用意する。2026年3月期の地方創生セグメントは営業黒字だったのに、全社では営業損失となった。訪問看護の出店を急いで生じた損失は、利益の出る分野からの再投資が企業価値に直結しないことを示した。今後の増分投下資本利益率が資本コストを超えるかは、農園ごとの稼働率と拠点統合後の看護師一人当たり訪問件数で確かめる必要がある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要を支えるのは法定雇用率と就労の実態の両方だ。民間企業の法定雇用率は2026年7月に2.7%へ引き上げられた。厚生労働省による2025年の民間企業の雇用障がい者数は70万4610人、法定雇用率を達成した企業は46%にとどまる。未達成企業が多いことは支援サービスの需要を示す。ただし、雇用者全員が農園を利用するわけではない。仮に70万人全員が年約192万円の農園支援を使えば約1.35兆円となるが、これは現実的な販売可能市場ではなく上限を示すだけの計算である。
農園型サービスの競争を比べるには、同じ形で雇用される人数を見る方が適切だ。JSHの2026年3月末1788人に対し、エスプールプラスは約5200人、スタートラインのIBUKIは1320人以上と開示する。確認できるこの3社の合計約8300人のうちJSHは約2割で、国内市場全体のシェアではない。エスプールプラスは農園網や取引企業数で大幅に先行し、JSHが全国首位という根拠はない。2036年の中立では、法制度に支えられた需要の一部を継続して獲得し、農園利用者数を増やすが、大手を一気に追い抜くとは考えない。
制度の数量面には追い風がある一方、質の面には逆風がある。2026年2月に厚生労働省の研究会は障がい者雇用の質を論点とした報告書を公表した。遠隔農園での雇用が一律に禁止されたわけではないが、企業が雇用責任を現場任せにしないか、本人に仕事の成長機会があるかが問われる。今後、評価基準や行政指導が厳しくなれば新規契約は鈍り得る。
精神科訪問看護は在宅療養への移行という長期需要があるものの、競合は地域の独立ステーションや医療法人であり、全国でのJSHの占有率を裏付ける一貫した公開分母はない。会社資料の精神疾患患者603万人を全員訪問看護利用者とみなす約4兆円市場も潜在的な上限に過ぎない。不動産向け無人内見は年間約11.5万戸の新築分譲戸建てを中心とする周辺市場に接するが、顧客企業数と管理物件数の市場シェアは未開示である。大手不動産システムやスマートロック会社が同じ機能を標準搭載する脅威がある。
資本政策と M&A
資本配分は、強い農園事業の成長投資と、苦戦する訪問看護への先行投資が同居してきた。2025年1月のショウタイム24子会社化で、医療・雇用支援と関連の薄い不動産IoTにも領域を広げた。2026年3月期の営業赤字、純有利子負債約1.9億円は、その投資を無条件に肯定できない理由である。今後の買収には取得価格と利益回収を求めたい。
2026年7月公表の中期事業計画は、2029年3月期に売上106.58億円、営業利益13.21億円、当期純利益7.21億円、農園43拠点を目指す。地方創生は売上68.23億円、営業利益17.58億円、在宅医療は28.21億円、営業利益3.58億円、IoTは10.12億円、営業利益3.28億円を計画する。本社共通費は約11.27億円となる。ROE、配当性向、DOE、総還元性向について中計に数字の約束はない。
中計後の2026年8月には初配の予想と、上限5億円・100万株の自己株取得を発表した。9月末までに約3.36億円、46.36万株を買い付けている。株主へ現金を戻す行動を評価し、余剰現金の帰属は100%で扱う。ただし成長設備、看護再編、借入返済と大規模な自己株買いを同時に賄えるとは限らない。2027年3月期の初配予想は総額約0.16億円に過ぎず、長期の一定配当性向の約束ではない。
「リロカルマーケット」の割引クーポン優待も還元に含める。実際の利用件数と原価は開示されていないため、中立では年約0.01億円、10年約0.10億円の費用相当を仮定して累計還元に入れた。優待の額面上限を全株主へ一律に配ったと見なすことはしない。既実行の買い付けは将来還元に二重計上しない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
農園は法律上の雇用義務を、地方の雇用創出と企業の継続契約に結び付ける仕組みを既に作っている。25農園から43農園への拡張計画は、土地を取得するだけの夢ではない。2026年9月には受入人数が1990人まで増え、直近の需要は弱っていない。施設が埋まるにつれ同じ支援人員と本部の仕組みを広い売上で支えられ、地方創生事業の利益は売上以上の勢いで増える余地がある。地方の土地代を抑え、その分を障がい者の定着支援へ投じるモデルは、価格と社会的価値を両立する。
2026年7月の中計は農園の増設ペースを以前より抑え、代わりに一農園の規模と稼働率を重視する内容に変わった。利益を伴わない規模拡大を修正したことは、むしろ将来の再投資利回りを高める。訪問看護でも47拠点の体制を整理し、生産性の低い拠点から需要の強い地域へ看護師を集約することで黒字化できる。精神科患者の在宅移行は10年の中で止まりにくく、紹介元となる医療機関との連携も育っている。
法定雇用率2.7%の下で企業の半数以上が未達成であり、顧客企業を数百社増やす余地は十分残る。利益が回復すれば、負債返済と農園拡張の両立だけでなく、配当や自己株買いを続ける道も開ける。IoTは大きく伸びなくても全社の価値を壊さないよう投資額を制御できる。こうして農園と訪問看護だけで現在の時価総額を大きく上回る利益基盤へ育てられる可能性がある。
慎重な見方
農園型の雇用支援は、障がい者本人の職業能力を本業で生かす雇用とは距離がある。農園内での仕事の質や企業による直接の雇用管理が厳しく問われれば、利用企業は本社業務への配属や一般の就労支援サービスへ移行する。法定雇用率が高いことは、特定の農園モデルの売上を守る保証ではない。競争でもエスプールプラスが規模で先行し、スタートラインのIBUKIは都市に近い屋内型農園を提供する。JSHの地方立地の低コスト優位は賃金や送迎費の上昇で薄れ得る。
会社自身が解約率を将来6%へ上げる計画を公表した点も見落とせない。契約を失えば残るのは賃借料、人件費、農園設備の減価償却であり、継続売上の強みが固定費の重さに裏返る。訪問看護では2026年3月期に約2億円のセグメント赤字となり、出店を縮小し統合へ転じた。経験豊かな看護師が採れず、訪問件数が計画どおり増えなければ、公定価格の下では採算を取り戻しにくい。
IoTも中計の売上10億円超という目標に対し、直近の年商は1億円未満の小規模事業である。スマートロック自体は大手との価格競争になり、無人内見システムの操作はAIで省略される。大きな企業が内見予約と鍵管理を不動産基幹システムに組み込めば、独立した月額契約を保つのは難しい。全社が再び赤字になっても農園の資産を容易には売れず、買戻しで手元現金も減っている。中期目標をそのまま10年後の稼ぐ力と扱えば、損失を過小評価する。
どちらに重みを置いたか
農園の実際の受入人数と低い解約率は、机上の成長物語ではなく収益を支える証拠だ。だから最も高い確率を置く中立でも農園は成長すると判断した。ただし2026年3月期の赤字、訪問看護の拠点整理、雇用の質を巡る制度議論、IoTへの過大な期待は軽視できない。上側の合計23%に対し下側を43%とした理由は、これらJSH固有の経営実行と規制リスクである。AIエージェント代替による紹介・画面課金の縮みは数量と長期成長率に織り込んだため、同じ理由で確率や資本コストを重ねて引いていない。なお、この保守的な確率でも合理的な価値は基準時価総額を上回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,659 円90 億円(+ 還元の換算額還元の合計 160 円9 億円)。 今の値に割り戻すと 877 円47 億円、今との差 +52.6%、 期待の年率 +13.0%(資本コスト 8.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 6,270 円339 億円 | 444 円24 億円 | +1,067.6% | +30.0% | 470 円25 億円 |
| やや楽観 | 16% | 3,755 円203 億円 | 314 円17 億円 | +607.6% | +23.2% | 651 円35 億円 |
| 中立 | 34% | 1,314 円71 億円 | 185 円10 億円 | +160.7% | +10.9% | 510 円28 億円 |
| やや悲観 | 28% | 429 円23 億円 | 55 円3 億円 | −15.8% | −1.8% | 136 円7 億円 |
| 悲観 | 15% | 351 円19 億円 | 2 円0 億円 | −38.6% | −4.8% | 53 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,659 円90 億円 | 160 円9 億円 | +216.4% | +13.0% | 1,819 円98 億円 |
今の株価時価総額 575 円31 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 7% 農園の広域展開と看護再建が同時に成功 利益 23 億円 · PER 14.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 6,270 円339 億円
農園では地方の低コスト立地と医療に近い支援力が評価され、法定雇用率の引上げをきっかけに新規企業の採用が広がる。2036年には課金相当の利用者が5850人に増え、支援スタッフの配置が効率化する。土地代が安い分を運営の質へ回し、エスプールプラスが先行する地域にも新しい大型拠点を設ける。契約解約率は低く、本人の技能開発も進んで行政監督の厳格化を乗り越える。
看護事業は統廃合を終え、地域の精神科医療機関から安定して患者を紹介される。年間訪問件数は41.5万件となり、人員の成熟と移動の効率化で採算が改善する。ただし診療報酬を物価どおり機械的に上げず、件数増が成長を担う。IoTについては既存の月額システム利用者が維持されるにとどまり、会社計画どおりの飛躍は仮定しない。
設備投資と採用に十分な資金を振り向けつつ、顧客の支援品質を落とさないことが条件である。全社の営業利益は30億円台へ達し、増分資本の利回りが資本コストを大きく超える。制度と現場運営の両方で勝つ可能性はあるが、連続した成功が必要なため確率は高くない。
- 地方創生・農園型障がい者雇用支援:数量 5,850(年間平均の課金相当受入者数(人年、期末人数とは別))× 価格 0.03(受入者1人年当たりの継続支援・採用紹介を合算した実現売上(億円/人年))→ 売上 173 億円・営業利益 45 億円。新設農園の拠点生産性が高まり、継続契約の人数と価格をともに維持する
- 地方創生・観光物産/リロカル:数量 4,200(地域物販・旅行手配などの年間取扱件数(件、異なる商材の加重平均))× 価格 0.00(取扱1件当たりの実現売上(億円/件))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。民泊と物販が地域で定着
- 在宅医療・精神科訪問看護:数量 415,000(年間の訪問看護件数(件))× 価格 0.00(一訪問当たりの実現診療報酬・売上(億円/件))→ 売上 51 億円・営業利益 6 億円。看護師が育成され訪問件数41.5万件、件数増による利益率改善
- IoT・無人内見くん:数量 96.0(年間平均の月額課金利用企業数(社、期末数ではない))× 価格 0.01(1社当たり年額のシステム・機器等売上(億円/社年))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。SaaS主型の数量は現在以下に保ち、AI新商品収入を含めない
倍率:事業のROEは純利益23.0億円÷期末自己資本86億円=26.74%。資本コストk8%、普通の堀の残る割合0.5から増分投資のRONIC=k+0.5×(ROE−k)=17.37%。物価3%より慎重な長期名目成長率g2%を用い、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=14.75倍の上限そのものを採用。既存の市場PERとは無関係。
確率:25農園から大型拠点を含む広域展開を継続するだけでなく、施設の稼働率が高く維持されるという高い条件を置く。企業が雇用の質を重視して長期契約を結び、送迎・医療連携の優位が保たれる必要がある。
やや楽観 16% 農園の増設と訪問看護の黒字化が定着 利益 14 億円 · PER 14.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,755 円203 億円
農園は2029年3月期の43拠点という中計の延長で、利用者が徐々に増える。都市から離れた地域で採用先を探す企業が多く、JSHの送迎や精神科の知見が選ばれる理由として定着する。競合との受注競争は続くが、退職者の補充と支援の質を重視する契約形態が解約を抑える。単価は賃金や管理費に見合う範囲で引き上げられ、農園の規模拡大が営業利益を増やす。
訪問看護では47拠点を増やし続ける路線を捨てた判断が奏功し、採算の合う地域に看護師が集中する。年間訪問件数は33.5万件となり、1件の報酬が物価に追い付かなくても人員配置の改善で利益率を回復する。低採算の事業所の閉鎖は一時的に費用を要するが、固定費負担を長期的に軽くする。
IoTはスマートロックの実物管理が必要な顧客だけを残し、予約画面への依存を減らす。ただしAI自体の新たな販売実績は示されていないので、月額利用企業数は今より増やさない。企業価値はIoTではなく農園と訪問看護の利益増により押し上げられ、配当と自己株買いを続ける余力も生まれる。
- 地方創生・農園型障がい者雇用支援:数量 4,650(年間平均の課金相当受入者数(人年、期末人数とは別))× 価格 0.03(受入者1人年当たりの継続支援・採用紹介を合算した実現売上(億円/人年))→ 売上 129 億円・営業利益 32 億円。受入人数の伸びが2029年計画以後も続き、価格は賃金上昇をおおむね吸収
- 地方創生・観光物産/リロカル:数量 3,600(地域物販・旅行手配などの年間取扱件数(件、異なる商材の加重平均))× 価格 0.00(取扱1件当たりの実現売上(億円/件))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。地域物販・旅行で小幅黒字
- 在宅医療・精神科訪問看護:数量 335,000(年間の訪問看護件数(件))× 価格 0.00(一訪問当たりの実現診療報酬・売上(億円/件))→ 売上 38 億円・営業利益 4 億円。拠点統廃合後に訪問件数33.5万件
- IoT・無人内見くん:数量 95.0(年間平均の月額課金利用企業数(社、期末数ではない))× 価格 0.01(1社当たり年額のシステム・機器等売上(億円/社年))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。IoTの企業数は96社を超えず、実物鍵の必要性で解約を防ぐ
倍率:事業のROEは純利益14.3億円÷期末自己資本75億円=19.07%。資本コストk8%、普通の堀の残る割合0.5から増分投資のRONIC=k+0.5×(ROE−k)=13.53%。物価3%より慎重な長期名目成長率g2%を用い、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=14.20倍の上限そのものを採用。既存の市場PERとは無関係。
確率:中計の農園増設と看護師の生産性改善の主要部分が達成されるが、業界の首位を奪ったりIoTが爆発的に伸びたりするとは想定しない。
中立 34% 農園の成長は続くが利益率は控えめ 利益 6 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,314 円71 億円
2036年も企業の障がい者雇用義務は残り、農園で安心して働く場への需要は続く。JSHは地方の低コスト運営と既存顧客の紹介を生かし、課金相当受入者を3600人年へ増やす。ただしエスプールプラスやスタートラインとの競争は激しく、農園の契約料金は10年の物価上昇より低い伸びにとどまる。紹介事務はAIエージェントに置き換わるため、紹介手数料の実質件数は現在の約65%になる。
在宅医療は不採算拠点を統合した後で緩やかに拡大する。年間訪問件数24万件は今より増えるが、診療報酬の改定が人件費の物価上昇に十分追い付かず、利益率は高くない。看護師の訪問自体は技術で代替されないが、サービス品質を保つための現場支出は省きにくい。観光物産は小さな利益にとどめる。
IoTのシステム月額課金はAIエージェントが予約・照会を担う影響を受け、利用企業数は今の約83%になる。新たなAI商品の有料販売額がない以上、将来の利用社数が急増するという計画は価値に入れない。農園利益から本社費用を引くと営業利益は約8億円となる。資本は増えるがROEは10%弱であり、再投資が無制限に高収益を生む会社とは見ない。
- 地方創生・農園型障がい者雇用支援:数量 3,600(年間平均の課金相当受入者数(人年、期末人数とは別))× 価格 0.03(受入者1人年当たりの継続支援・採用紹介を合算した実現売上(億円/人年))→ 売上 94 億円・営業利益 20 億円。年課金相当3600人。農園継続部分は物価程度、紹介作業はAI代替で数量0.65倍
- 地方創生・観光物産/リロカル:数量 3,300(地域物販・旅行手配などの年間取扱件数(件、異なる商材の加重平均))× 価格 0.00(取扱1件当たりの実現売上(億円/件))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。物販・観光は小幅成長にとどまる
- 在宅医療・精神科訪問看護:数量 240,000(年間の訪問看護件数(件))× 価格 0.00(一訪問当たりの実現診療報酬・売上(億円/件))→ 売上 26 億円・営業利益 2 億円。公定価格は物価3%より遅く、件数24万件で黒字化
- IoT・無人内見くん:数量 80.0(年間平均の月額課金利用企業数(社、期末数ではない))× 価格 0.01(1社当たり年額のシステム・機器等売上(億円/社年))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。操作画面・席課金がAI代替され数量0.83倍、年単価1.12倍
倍率:事業のROEは純利益5.5億円÷期末自己資本56億円=9.82%。資本コストk8%、普通の堀の残る割合0.5から増分投資のRONIC=k+0.5×(ROE−k)=8.91%。物価3%より慎重な長期名目成長率g2%を用い、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=12.93倍の上限そのものを採用。既存の市場PERとは無関係。
確率:法定雇用率引上げによる需要と、行政の雇用の質重視・競合との単価交渉を両方考慮する。農園以外の中計の利益改善は一部のみ実現する。
やや悲観 28% 競争と制度対応で農園の成長が鈍化 利益 2 億円 · PER 11.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 429 円23 億円
農園型の障がい者雇用は残るものの、利用企業からは本人のキャリア形成や企業側の雇用管理を厳しく問われる。大企業の一部は社内での配置を増やし、新規の農園契約を減らす。JSHは価格を維持しようとするがエスプールプラスや屋内型のIBUKIとの競争が強く、契約更新時の値上げは抑えられる。農園の課金相当人数は2500人年にとどまり、拠点の閉鎖費用が経営を圧迫する。
訪問看護は不採算の拠点を閉じて費用を減らすが、看護師の不足で訪問件数が20万件にとどまる。公定価格の上昇も物価を大きく下回り、収益性の改善は限定的である。観光物産では旅行予約とECの競争に押され、IoTでは独立の予約画面に払う企業が減る。AI代替の縮みは売上見通しに含めた。
本社費も縮小に合わせて人員を減らすものの、残る管理負担のため営業利益は数億円にとどまる。長期のROEは資本コストを割り込む。株主への配当・自社株買いは縮小し、時価総額は成長の利益でなく既存の資産と低い稼ぐ力の双方に制約される。
- 地方創生・農園型障がい者雇用支援:数量 2,500(年間平均の課金相当受入者数(人年、期末人数とは別))× 価格 0.02(受入者1人年当たりの継続支援・採用紹介を合算した実現売上(億円/人年))→ 売上 60 億円・営業利益 11 億円。制度対応と競争で受入が2500人年まで鈍化
- 地方創生・観光物産/リロカル:数量 2,400(地域物販・旅行手配などの年間取扱件数(件、異なる商材の加重平均))× 価格 0.00(取扱1件当たりの実現売上(億円/件))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。旅客需要が細り営業赤字
- 在宅医療・精神科訪問看護:数量 200,000(年間の訪問看護件数(件))× 価格 0.00(一訪問当たりの実現診療報酬・売上(億円/件))→ 売上 20 億円・営業利益 0 億円。医療機関からの紹介が伸びず訪問件数20万件
- IoT・無人内見くん:数量 68.0(年間平均の月額課金利用企業数(社、期末数ではない))× 価格 0.01(1社当たり年額のシステム・機器等売上(億円/社年))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AI代替と大手基幹システムに対抗できない
倍率:純利益2.0億円、自己資本36億円でROE5.6%はk8.0%以下。したがって永続的な超過成長に価値を付けず、収益力上限1/k=12.5倍以下の11.6倍を採る。顧客減少とリース固定費に加え、農園資産の売却可能性から評価を抑える。過去の株価倍率は参照しない。
確率:下に寄せる理由:2026年3月期の赤字と拠点閉鎖の実績があり、雇用の質を巡る制度議論と大手競合への規模劣位もある。訪問看護の黒字化が部分的にとどまる確率は無視できない。
悲観 15% 雇用制度への適応に失敗し、事業の優良さが崩れる 利益 0 億円 · PBR 1.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 351 円19 億円
2036年には、単に遠隔の農園へ配置しただけでは企業の障がい者雇用責任を十分に果たせないという監督が強まっている。既存企業の一部は本業の職域開発へ移り、新規の農園支援契約は低迷する。JSHは高コスト地域から撤退し、課金相当の受入人数は1800人年へ減る。農園の運営自体は続くが、支援の質を落とせないため人件費は容易には削れず、かつての優良な利益率を維持できない。
訪問看護では拠点を大きく整理しても人員不足と診療報酬改定が重なり、訪問件数は14万件へ縮小する。赤字を防ぐため閉鎖を進めた結果、成長市場から撤退せざるを得ない。IoTではスマートロックの機器以外の独立課金がほぼ価値を失い、AIエージェントと大手不動産業務ソフトが予約・内見管理を統合する。旅行・物販も規模を維持できない。
各事業の売上が残っても、農園や看護に要する本社管理費、家賃、更新投資のため全社利益は小幅な赤字となる。株主への現金還元は実質的に停止する。収益還元では価値をほぼ見いだせず、現時点の自己資本からのれんを除いた資産の床をよりどころに評価する。これは毎期の破綻を前提とする筋書きではないが、投下資本から十分な収益を得られない構造的な敗北だ。
- 地方創生・農園型障がい者雇用支援:数量 1,800(年間平均の課金相当受入者数(人年、期末人数とは別))× 価格 0.02(受入者1人年当たりの継続支援・採用紹介を合算した実現売上(億円/人年))→ 売上 40 億円・営業利益 8 億円。雇用の質を巡る制度変更で大量解約、農園の優位がほぼ失われる
- 地方創生・観光物産/リロカル:数量 1,800(地域物販・旅行手配などの年間取扱件数(件、異なる商材の加重平均))× 価格 0.00(取扱1件当たりの実現売上(億円/件))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。取扱減少と施設固定費で赤字
- 在宅医療・精神科訪問看護:数量 140,000(年間の訪問看護件数(件))× 価格 0.00(一訪問当たりの実現診療報酬・売上(億円/件))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。訪問件数14万件へ縮小、固定費負担
- IoT・無人内見くん:数量 60.0(年間平均の月額課金利用企業数(社、期末数ではない))× 価格 0.01(1社当たり年額のシステム・機器等売上(億円/社年))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。UI課金とスマートロック採用がともに低迷
倍率:10年後の純利益が小幅赤字となるためPERを使わず、今の自己資本19.4億円からのれん約0.37億円を控除した約19.0億円の資産床を参照する。19.4億円×PBR0.98=19.01億円。期末想定自己資本17億円への倍率ではなく今の自己資本を分母に使い、過去の市場PBRは参照しない。農園用設備の売却値が簿価を割れる場合はさらに損失があり得る。
確率:下に寄せる理由:利用企業の雇用責任や職業能力向上に関する実務基準が変わり、農園契約を縮小する可能性がある。先行投資した資産の換金性も高くない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
地方創生・農園型障がい者雇用支援
コルディアーレ農園の定着支援料、設備・農園利用料、採用紹介に伴う一時収入。雇用者の見守り・送迎・設備は現場サービスでありAIで消えないが、紹介・事務作業は一部代替される。
| 数量年間平均の課金相当受入者数(人年、期末人数とは別) | 価格受入者1人年当たりの継続支援・採用紹介を合算した実現売上(億円/人年) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,450 | 0.02 | 31 | 8 |
| 10 年後 中立 | 3,600 | 0.03 | 94 | 20 |
取り方:会社開示:地方創生事業売上約32.05億円、農園継続課金27.73億円、継続売上比率約90%、期末受入1788人、利用約247社。継続利用の公表料金約16万円/人・月(年192万円)から27.73億円÷0.0192億円=平均課金人数1444人年と推定し1450人年を採用。農園計31.00億円(継続27.73+紹介等3.27)、観光・物産1.05億円は非開示のため地方創生セグメントから仮に区分。平均実現単価31÷1450=0.021379億円には紹介料を含む。紹介等約10.5%は人月・工数型に分類し、10年中立で当該部分の数量0.65倍、名目価格1.28倍、g_long寄与0%を採用する。残りの約89.5%は農園・送迎・保健支援という現場の体の型で、受入人数の増減は法定雇用率と新設農園数により決める。2026年営業利益の区分8.0億円は、地方創生全体の7.76億円と観光損失推定0.24億円からの配賦であり、非開示の推定。
地方創生・観光物産/リロカル
地域産品のEC・旅行手配・民泊。農園支援とは顧客や競争条件が異なり、規模はまだ小さい。
| 数量地域物販・旅行手配などの年間取扱件数(件、異なる商材の加重平均) | 価格取扱1件当たりの実現売上(億円/件) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,500 | 0.00 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 3,300 | 0.00 | 2 | 0 |
取り方:地方創生セグメント32.05億円のうち農園31.0億円と仮定した差の1.05億円で、観光単独の公表売上・件数はない。2500取引×平均4.2万円=1.05億円は推定であり、旅行と物販を混ぜた加重平均である。観光商品の予約・広告運用・事務作業はAIエージェント代替の人月BPO型を含むため10年中立は受注数そのものを過大成長させず、価格は実現構成で評価する。
在宅医療・精神科訪問看護
精神科訪問看護ステーションから看護師が訪問し、診療報酬で売上を得る。医療機関向け訪問診療の支援は紹介経路としての役割が大きい。
| 数量年間の訪問看護件数(件) | 価格一訪問当たりの実現診療報酬・売上(億円/件) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 155,000 | 0.00 | 14 | −2 |
| 10 年後 中立 | 240,000 | 0.00 | 26 | 2 |
取り方:会社2026年3月期開示の在宅医療売上約14.45億円、精神科中心の訪問件数年約15.5万件から、1回の実現売上約9323円を逆算。会社資料が示す基準単価約9250円との小差は加算・期ずれ・丸めによる可能性があり、厳密な単価内訳は非開示。身体の訪問看護はAIエージェント代替の対象外、周辺の請求書作成・医師向け助言の事務部分のみ代替される。診療報酬改定に拘束されるため2036年中立の単価上昇は物価1.34倍より低い。
IoT・無人内見くん
ショウタイム24の不動産向けスマートロックと無人内見予約システム。売上の約85%が画面・システム利用料の月額継続課金。
| 数量年間平均の月額課金利用企業数(社、期末数ではない) | 価格1社当たり年額のシステム・機器等売上(億円/社年) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 96.0 | 0.01 | 1 | −1 |
| 10 年後 中立 | 80.0 | 0.01 | 1 | 0 |
取り方:会社2026年3月期のIoTセグメント売上約0.89億円、営業損失約0.63億円。2026年4月時点の課金企業132社と1社月7.71万円(年92.5万円)の開示から、通期平均課金企業96社を推定し年約92.7万円/社で割り戻した。期末2026年4月の132社と通期平均96社を混同しない。月額課金が約85%なので主型は操作画面・席課金SaaS、残りはスマートロック等の現物設置・販売。記録の正本を示す解約率・法令移行・独自DBの2証拠は無いため、2026年起点の10年中立数量0.83倍(96→80社)、価格1.12倍、10年より先のソフト単体成長は0%以下とする。物理設備の需要拡大を安易にソフトの高成長へ転用しない。
リスクと懸念
農園型雇用と「雇用の質」の規制
法定雇用率2.7%は追い風だが、障がい者本人の仕事内容、技能の習得、企業側の雇用管理責任が将来より厳しく評価される可能性がある。2026年2月の国の研究会は雇用の質を論点とした。農園型の一律禁止が決定したわけではないが、監督基準が変わると新規契約停止や既存契約の移行が起こり、長期の売上数量と利益率を同時に損ねる。
定着率と競合・値上げ力
JSHの年間解約率4.5%は強みだが、会社の中期計画は6%まで上がると想定している。エスプールプラスは約5200人、スタートラインIBUKIは1320人以上の就労を支援し、新設企業への営業競争は厳しい。利用企業が本社の業務へ直接雇用を移す可能性もあり、農園利用料が人件費と同じ幅で上がるとは限らない。
訪問看護の人員・診療報酬・統廃合
実際の訪問を伴う精神科看護はAIがそのまま代行できないが、需要が強くても看護師を確保できなければ件数は伸びない。2026年3月期は訪問看護で約1.96億円の営業損失が生じ、拠点の閉鎖・統廃合に転じた。診療報酬が賃金上昇に遅れれば、拠点集約で訪問件数が伸びても利益率が改善しない。
AI エージェント代替
農園の現場支援と看護師の身体的訪問は残る。しかし農園の採用紹介や請求事務、医療機関向け助言、観光の予約業務、無人内見くんの予約・操作画面はAIエージェントが直接担い得る。とくにIoTの約85%を占めるソフト課金は基幹不動産システムに吸収されやすい。農園紹介業務は中立数量0.65倍、IoTは0.83倍を基準とし、同じリスクを資本コストと確率に重ねていない。
投資先行と手元資金・自社株買いの競合
2026年3月期末の純有利子負債は約1.9億円で、潤沢な純現金企業ではない。農園新設には土地設備と支援人員の支出が先立ち、訪問看護の統廃合にも費用が掛かる。その状況で上限5億円の自己株買いを決め、9月までに約3.36億円を使った。営業現金収支が改善しないうちに還元を急げば、借入増加や追加増資が既存株主の価値を損なう。
IoT買収と新規事業の不確実性
ショウタイム24の月額課金は増えているが、2029年3月期に売上10.12億円、営業利益3.28億円へ伸ばす計画は2026年3月期売上0.89億円との隔たりが大きい。自社の不動産情報が業界全体の正本になった証拠はない。競合の大手不動産システムやスマートロック事業者が機能を取り込み、月額の席課金を下げれば買収効果が消える。
物価上昇、固定費と償却・リース
物価3%の10年では、送迎費、看護師の賃金、施設家賃、本社管理費が積み重なる。既存設備の減価償却は取得時の価格のままだが、新設農園の更新投資は高くなり、償却費だけ見て余剰現金を過大に扱う危険がある。2027年度以降の新リース会計では使用権資産とリース負債が計上され、純負債が増えて見えるが、家賃費用を二重に引かないよう比較方法をそろえる必要がある。
今後の分かれ目
- 農園の年間解約率が5%未満を維持し、企業数が毎年35〜45社ずつ増え続けたら
- 農園の顧客獲得効率と堀への評価を上げる。受入人年を中立の3600からやや楽観の4650に近づけ、ただし労務費を控除した増分投下資本利益率で再確認する。
- 農園の利用企業が本人の職業能力開発を示せず、行政が遠隔農園の雇用評価を厳格化したら
- 新規採用の停滞と契約解約を一緒に想定して、やや悲観・悲観の数量と確率へ重点を移す。法定雇用率の上昇だけを需要の保証に使わない。
- 看護師1人当たり月訪問件数が110件前後で定着し、統廃合後の在宅医療部門が通期黒字へ戻ったら
- 看護の固定費吸収が証明されるため、中立の訪問件数と利益率を上方修正する。診療報酬引下げが同時に起きる場合は単価の修正を優先する。
- IoTの月額課金売上が増えても解約率が高まり、利用社数または実現単価が低下したら
- 無人内見の操作画面が代替され始めたと判断し、IoTの利益貢献をゼロ以下に改める。AIを自社の有料商品として売った金額が確認できるまでは数量増を正当化しない。
- 農園の増設費用と訪問看護統合費用を賄った後にも営業現金収支が毎年プラスとなったら
- 蓄積現金が事業に固定されず株主へ戻る実績として、還元継続の見込みを引き上げる。反対に純負債が拡大すれば成長投資の自己資本効率を下方修正する。
- 2029年3月期の営業利益13.21億円の計画に近づく一方、IoTがその利益の大半を担わなくても達成できたら
- 農園と訪問看護だけの稼ぐ力が予想を上回った証拠となり、中立利益の持続性を高く評価する。計画達成が買収による一過性利益なら長期倍率は上げない。
- 自己株買いのために借入が増えるか、外部資金調達で株式が発行されたら
- 既存株主に帰属する取り分とバランスシートの現金を再計算する。すでに済んだ自己株買いを将来の還元や株数削減に重複計上しない。
見ておくもの
- 2027年3月期以降の農園利用企業数、受入人数、年間解約率と平均継続課金単価
- 農園43拠点の2029年3月期計画に対する、投資額・受入枠・稼働率の実績
- 在宅医療の営業利益率、看護師常勤換算人数、看護師1人当たり月訪問件数
- 厚生労働省の農園型就労支援を含む雇用の質に関する制度・ガイドライン
- ショウタイム24の月次継続課金、課金利用社数、解約率、スマートロック稼働戸数
- 2026年8〜9月の自己株取得実績以降の有利子負債・現金・設備投資・配当実績
- 農園を含む新設拠点の償却費と更新設備投資の差額、賃貸借契約の固定負担
倍率と資本コストの決め方
時価総額は添付の2026年10月23日株価と8月末実質株数から33.216億円とし、10年先の売上・利益・倍率を作る前には参照していない。農園は受入人年と継続支援・紹介料、看護は訪問件数と実現診療報酬、IoTは課金企業数と年額課金から求めた。物価3%は名目単価にだけ含め、訪問看護は公定価格のため物価より上げない。既存設備の償却は物価に連動させず、新設農園に必要な建築費・更新投資と区別して利益率と株主還元を絞った。
長期名目成長率は2%、資本コストは8%、超過利益の残存は普通の堀として半分で、正当化PERを新規投資の収益性から決めた。AI代替は紹介・IoTの数量と長期成長率にのみ反映し、寿命や悲観確率で重複減点していない。悲観の床は現時点の自己資本19.4億円からのれん0.37億円を除いた約19億円。株数は添付の8月末基準で、9月の追加自己株取得は未反映である。既取得額は将来還元に再計上しない。新リース基準は家賃費用を旧基準とそろえて比較する。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に営業利益の変動0.5%を加算。赤字は訪問看護拡大の調整期で、2027年3月期は黒字化の会社計画と四半期の回復実績があるため存続懸念の上乗せはしない。