結論
インテグループは中小企業の売り手と買い手を結び、取引が成立した時だけ報酬を得るM&A仲介会社である。筆者の結論は「やや割安」だ。時価総額約29億円に対し、現金の裏付けと利益回復を慎重に重ねた10年の確率加重現在価値は約35億円となり、約18.5%上回る。ただし、成長株としてではなく、優位の持続を疑いながら持つべき条件付きの評価である。
最大の魅力は、買収企業や工場を抱えずに成功報酬を生み、事業資金を超える現金を保有していることだ。2026年5月期の売上は15.6億円、営業利益は1.2億円まで落ちたが、資金繰りは逼迫していない。成約49組という件数自体は前期43組から増えている。利益が大きく落ちた主因は、一件当たりの報酬が細り、増やした人員の生産性も低下したことにある。
需要の土台は後継者不足という長期の社会問題である。しかし、それだけでは仲介会社の株主が潤うとは限らない。大手や地方金融機関に加え、AIを使って買い手探しや企業評価を安く済ませる競合が増える。報酬を売り手と買い手の双方から取る仕組みへの監視も強く、案件が増えても手数料が同じように伸びる保証はない。
10年後の中立像は、成約80組、売上28億円、営業利益約5.5億円である。好況の2024年の異例の利益率には戻さず、固定費と報酬率の競争を残した。業績の振れが大きく、創業者への議決権集中と新株予約権の希薄化もあるため、十分な安全域があるとまでは言えない。今後は成約件数以上に、一人当たりの成約数と一件当たりの手数料が回復するかを追う。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主が最初に問うのは、十年後の顧客がこの会社を使い続ける理由である。答えは後継者難だけでは足りない。信頼できる買い手を見つけ、条件の衝突を収め、経営者が人生をかけた譲渡を完了できる人材がいることこそ価値だ。しかし、相手先情報や書類の処理まで自社だけが高い対価を取れる時代ではなくなる。成約率と担当者の力を示す実績を、現金よりも厳しく調べたい。
この会社には、工場や在庫を増やさず稼ぎを拡大できる魅力がある。その一方で、仲介は契約が成立した年度に利益が偏る。大きな案件が数件あるだけで利益率は跳ね上がるし、売り手が慎重になれば案件の準備に使った給与だけが残る。真のオーナー利益は、好況の一時的な報酬ではなく、平常年に成約を重ねたあと自由に配れる現金で測るべきだ。
現金を積み上げた経営は評価するが、資本をため込んで低利回りで運用し続ければ株主の利益にはならない。配当性向を段階的に80%へ高める方針は望ましい。ただ、創業者の議決権集中と株式報酬の希薄化があり、方針が将来も守られる保証はない。利益を人材採用へ再投資するなら、増えた担当者の成約生産性が資本コストを上回るかを確認する必要がある。
払う値段については、利益の回復だけでなく定期預金の裏付けにも目を向けられる。もっとも、同業の高い株価倍率を借りず、十年先の競争を前提に短い利益倍率で測る。小さな割安さは認められても、案件単価と成約率が悪化すれば安全域は急速に消える。したがって、安心して放置できる永続的な堀を持つ企業とは区別して評価する。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの仕組みは明快だ。事業を譲りたい中小企業と譲り受けたい企業を探し、条件調整から最終契約まで仲介する。売り手と買い手の双方に完全成功報酬制を採用し、成約前の着手金や月額の人月料金を主な売上源にしていない。法務・税務上の専門判断は各専門家も関わるが、仲介会社にとっては案件を成立まで運べるかどうかが収益の核心となる。
会社が開示する事業はM&A仲介の単一セグメントである。2026年5月期には49組を成約させ、一組当たりの売上は約3,180万円、全社売上は約15.6億円となった。前々期の53組からは減ったが、前期43組からは戻した。それでも大型案件が少なく、2025年5月期の一組約4,400万円を大幅に下回ったため、売上は減った。件数と単価を分けない成長率には、こうした落とし穴がある。
特色は、譲渡価格が数千万円から数億円規模の小型案件にも直接営業することにある。最低成功報酬は1,500万円と説明しており、大手の料金水準では相談しづらい売り手を開拓する。電話や郵送などの直接提案に加え、金融機関などからの紹介も使う。PEファンド向けの情報媒体も運営するが、独立した売上高は開示されず、別事業として価値を加算できない。
仲介担当者は案件の発掘、資料の収集、買い手候補との交渉を一気通貫で担う。このため採用と育成が増収の条件になる一方、採用直後の人件費は成約前から発生する。2026年5月期の平均コンサルタント数は45.5人まで増えたが、一人当たり成約数は1.1組にとどまった。かつての1.8組を回復できるかが、利益率の分岐点である。
優良さと弱いところ
価格を下げて小型案件を取り込む姿勢は、顧客獲得上の特色であって、必ずしも強い堀ではない。売り手は一生に何度も会社を売るわけではなく、継続課金の契約や解約しにくい情報基盤は存在しない。案件ごとの信用、担当者の交渉力、直接営業の蓄積は競争力になるが、担当者が移籍すれば顧客接点も移りやすい。値上げを継続して通した実績や、解約率の低さといった証拠も確認できない。
資本効率は最良期と通常期で別物だ。2024年5月期には営業利益率が約45%に達したが、大きな案件の偏りが収益を押し上げた。2026年5月期は約8%に低下した。採用人数は増えたのに一人当たり成約数が1.1組に低下し、売上が細っても給与や事務所の固定費は残った。過去の高いROEを、今後も毎年得られる利回りと考えるのは危うい。
一方で、借入に頼らず、定期預金を含めて多額の流動資産を持つ財務は明確な強みだ。大型設備の更新は不要で、成約が回復すれば現金を生みやすい。ただし利益の源が人材である以上、売り手の評判と経験者の離職を軽視できない。上位二名の株主だけで約66%を握り、少数株主が現金の配分を直接動かせない点も、優良さの判定を控えめにする理由である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の中小企業M&Aには、経営者の高齢化と後継者不在という息の長い需要がある。事業をたたむより第三者に引き継ぐほうが、雇用も取引先も守りやすい。国内で公表された2025年のM&Aは5,115件に達した。ただし、これは大型取引や海外関連も含む統計であり、そのままインテグループの取り得る小型案件数ではない。支援機関の成約報告は別の母集団で年間約5,000件という物差しになる。
競争は大手の日本M&Aセンターホールディングス、M&Aキャピタルパートナーズ、ストライクグループ、クオンツ総研ホールディングスだけではない。地方銀行、税理士・会計事務所、事業承継の公的支援機関、オンラインのマッチング事業者も売り手と買い手を探す。日本M&Aセンターの2025年度実績は1,061件、ストライクグループの2025年9月期は275組、M&Aキャピタルパートナーズは248件である。政府登録の支援機関による2024年度の成約報告約4,940件を仮の分母にすればそれぞれ約21%、6%、5%、同社49組は約1%だ。ただし年度と案件の定義が異なり、実際の市場占有率や厳密な順位を示す数字ではない。
10年の市場は、事業承継の利用が広まって成約件数が年5~8%ほど伸びる余地があり、支援機関の報告約4,940件が2036年には単純延長で約9,000~12,400件となる規模感だ。それでも手数料率をそのまま維持できるとは限らない。中小M&Aガイドラインの改訂は手数料の説明や買い手の調査、利益相反への対応を重視している。両当事者から報酬を得る仕組みが強く制限されれば、単価そのものが下がりうる。金利が3%の世界では買い手の借入負担も増え、景気後退期には成立件数が大きく減る。
AIエージェントは企業情報の整理、候補先の検索、初期的な価格分析、契約書類の下書きを安くする。最後の交渉と経営者の信頼形成には人が残るとしても、情報整理の対価を仲介会社だけが取り続けるのは難しい。市場の件数は増え、仲介一件の報酬の実質価値は縮む。この二つを同時に見ることが肝心だ。
資本政策と M&A
還元方針は2026年に具体化した。2025年5月期の初配当は純利益の約30%、2026年5月期は約50%である。2027年5月期は配当性向50%程度と下限の設定を掲げ、長期的には80%を目指す。ただし絶対額の維持は約束せず、下限も年度ごとに見直す。業績が悪いときには配当も減る仕組みである。自社株買いの金額については数字の約束なし。
2027年5月期の会社予想は成約62組、売上20.93億円、営業利益3.06億円、純利益2.18億円である。2028年5月期末の従業員90人という中期目標も示す。一方、数年先の売上・営業利益・ROEについて拘束力のある中期数値目標は数字の約束なし。人数だけを増やしても、一人当たりの成約が増えなければ利益率を押し下げる。
これまでの資本配分は大型買収や設備投資より、人材採用と預金の積み上げが中心だった。2026年5月末の現金・預金は約20.2億円で、うち12億円は定期預金である。十分な配当余力がある一方、上位株主の支配は強く、余剰資金が必ず全額還元されるとは見ない。未行使新株予約権による将来の株数増加も、既存株主の取り分から区別した。公表済みのTOB・MBOを価値の根拠にはしていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
最大の追い風は、毎年多くの中小企業が後継者を見つけられず、事業承継を迫られることだ。会社は譲渡価格の小さい案件も扱い、最低報酬を大手より低くすることで、新しい買い手や売り手を開拓できる。2026年5月期は大型案件が乏しく利益が落ちたものの、成約49組は前期43組を上回った。2027年5月期の会社予想も62組と増加を見込む。2026年8月までの四半期は11組を成約し、前年同期の6組より回復した。需要そのものが途絶えたわけではない。
一人当たりの成約は2024年5月期に1.8組だった。現在の1.1組から改善する余地は大きく、専門チームや社内支援部門の強化が実を結べば、採用した人員が利益につながり始める。買い手情報の収集や候補先の整理をAIに任せれば、事務時間が減り、担当者は交渉と成約に集中できる可能性がある。もっとも、この利便性は競合にも広がるため、独占的な技術収益としては数えない。
財務面は同規模の新興企業としてかなり堅い。2026年5月末の現金・預金は約20億円に達し、有利子負債への依存はほとんどない。配当性向は長期80%を目標としており、利益が回復すれば現金が株主へ返る道筋がある。2024年の好況時と同じ利益率が常に続く必要はない。成約が年間80組程度、手数料が緩やかに戻るだけでも、事業価値と預金の合計が現在の値段を上回りうる。
慎重な見方
売上を成約件数だけで見ると、最も大切な危険を見落とす。2024年5月期には53組で営業利益約9.8億円を稼いだが、2026年5月期には49組で約1.2億円に減った。件数の違いは小さいのに利益は急減した。大口案件の有無、手数料の水準、採用人員の負担が重なり、見かけの高収益性は簡単に消える。会社自身も2026年の有価証券報告書で成約期間の長期化と成約率の低下を認めている。
買い手探しと企業価値評価はAIエージェントが最初に入り込む仕事である。金融機関、オンライン事業承継市場、経験ある独立コンサルタントも同じ情報を使えるようになれば、情報を集めるだけの仲介料は通りにくい。成功報酬の低料金は顧客には魅力でも、同社が値上げできる力の証明ではない。双方から報酬を受け取る仕組みに対して、利益相反や買い手の適格性の監督が強まれば、手数料率と営業費用の両面で不利になりうる。
人員を増やす投資が必ず利益を生むわけでもない。経験を積んだ担当者が独立・転職したり、成約率が低いまま採用費と給与が膨らんだりすれば、固定費だけが残る。業績悪化時には配当額を維持しない方針で、見かけの利回りにも保証はない。さらに創業者二人が議決権の過半を持つため、少数株主にとって大量の預金は自由に処分できる資産ではない。純資産が厚いことと、それが将来株主に届くことは別問題である。
どちらに重みを置いたか
需要の長期成長と厚い現金を考えれば、価値を現在の時価総額より上に見る根拠はある。ただし、成約単価が急低下し、一人当たりの成約生産性も悪化した実績が、楽観的な高利益率を否定する。中立の確率を33%、上側を27%、下側を40%とし、会社固有の採用効率と案件構成の不確実さから下方を重くした。AI代替は中立の実質単価と10年以降の成長率に織り込み、確率で同じ損失を重ねていない。現金を全額株主のものとして足さないため、評価は大幅な割安ではなく、条件付きのやや割安にとどまる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 2,333 円51 億円(+ 還元の換算額還元の合計 789 円17 億円)。 今の値に割り戻すと 1,586 円35 億円、今との差 +21.0%、 期待の年率 +10.8%(資本コスト 8.3%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 5,911 円129 億円 | 1,899 円41 億円 | +495.7% | +24.3% | 781 円17 億円 |
| やや楽観 | 17% | 3,888 円85 億円 | 1,192 円26 億円 | +287.5% | +17.5% | 864 円19 億円 |
| 中立 | 33% | 2,357 円51 億円 | 839 円18 億円 | +143.8% | +11.2% | 1,055 円23 億円 |
| やや悲観 | 25% | 761 円17 億円 | 397 円9 億円 | −11.6% | −1.5% | 290 円6 億円 |
| 悲観 | 15% | 751 円16 億円 | 132 円3 億円 | −32.6% | −4.2% | 132 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,333 円51 億円 | 789 円17 億円 | +138.1% | +10.8% | 3,122 円68 億円 |
今の株価時価総額 1,311 円29 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 小型案件の定番仲介へ育つ 利益 10 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5,911 円129 億円
後継者を見つけられない中小企業の事業承継が進み、2036年までに仲介される案件は広がり続ける。直接営業で小さな売り手を早く見つけられる強みが地域金融機関からの紹介にもつながり、インテグループの成約は年間125組に達する。競争市場の中でも、信頼できる担当者による交渉と売り手への丁寧な対応が評判を作り、一組の手数料は4,240万円まで戻る。
人員が増えても育成が追いつき、経験者が一人で年間一組を大きく超えて成約できる体制になる。AIが案件情報の整理と資料の下書きを軽くするが、その便益は顧客にも渡り、技術そのものを独占できるわけではない。大型案件への依存が過度に高まらない一方、実務の規律が取引の信頼を積み上げる。営業利益率は29%に回復し、経営は大型買収に手を出さず、純利益の相当部分を増配で返す。十年後も成長は続くが、将来永遠に高成長を維持するとは考えない。
- 中小企業M&A仲介(完全成功報酬):数量 125(年間成約組数(組。実質の取引件数))× 価格 0.42(成約一組当たりの売上(億円、売り手・買い手の合計))→ 売上 53 億円・営業利益 15 億円。成約125組×平均4,240万円。案件市場の成長と小型案件の浸透、担当者の成約効率改善。営業利益率29%は2024年の44.7%を下回る。国内支援市場は2036年に約9,000~12,400組、同社浸透率は約1.0~1.4%の目安。
倍率:資本コストk8.25%、長期名目成長g_long0%、弱い堀の残存割合1/3。2036年ROEは10.47÷39.5=26.5%でkを超えるが、g=0ゆえ正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=12.12倍。預金の利息税後12×1.4%=0.168億を純利益から除いた事業利益10.302億に12.12倍を掛け、余った現金12億の戻り方75%=9億を加える。過去の市場PERを参照しない。
確率:後継者難の市場拡大に加え、同社の直接営業、担当者教育、成約単価の回復が同時に成功する筋書きである。2024年の高い生産性を新しい人員でも再現し続ける難しさから一割に限る。
やや楽観 17% 案件拡大と利益率の穏やかな回復 利益 7 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,888 円85 億円
中小企業の後継者不足に支えられ、売り手からの相談が引き続き増える。インテグループは地域の紹介先を増やし、直接営業で獲得した企業を時間をかけて成約につなげる。年間の成約件数は104組となる。2026年5月期に落ち込んだ大型案件も一定数戻るが、手数料率は透明化と競争の影響を受け、一組の平均売上は3,900万円にとどまる。
担当者への案件配分が改善し、買い手情報リサーチチームも交渉にかける時間を減らす。AIによる調査の省力化は競合にも同時に生じるため、他社が真似できない利益源にはならない。採用にかかる給与と成果連動報酬が増えても、成約件数の積み上がりが固定費を吸収し、営業利益率は24%となる。経営は配当性向を段階的に高め、新株予約権の行使後も元の株主へ一定の成果を返す。大型買収による急拡大は想定しない。
- 中小企業M&A仲介(完全成功報酬):数量 104(年間成約組数(組。実質の取引件数))× 価格 0.39(成約一組当たりの売上(億円、売り手・買い手の合計))→ 売上 41 億円・営業利益 10 億円。成約104組×平均3,900万円。手数料の伸びは物価10年1.34倍を下回り、営業利益率24%は2025年の約26%にも届かない。同じ参考市場の約0.8~1.2%を獲得する場合。
倍率:k8.25%、g_long0%から、ROE6.69÷36.0=18.6%でも正当化PERは12.12倍となる。余剰定期預金12億円の税後受取利息0.168億円を純利益から外して事業利益6.522億円を評価し、余剰現金の株主帰属額9億円を別に加える。人月・情報調査のAI代替を10年後の利益とgに反映し、kでは再び引かない。
確率:2027年5月期の会社計画62組から年間100組超への拡大は、市場の伸びと営業人員の定着があれば可能である。ただし大口案件を毎年取れるとは見ず、中立よりやや高い実現確率に留める。
中立 33% 件数は伸びるが単価は物価に負ける 利益 4 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,357 円51 億円
事業承継需要は広がり、国内の支援機関を通じた成立件数も長期では増える。しかし、同じ売り手を狙う地域金融機関や大手仲介、オンラインの紹介事業者も増え、同社の市場での立場は大きく変わらない。2027年5月期の会社計画62組から、2036年の成約は80組へと緩やかに伸びる。小型案件が増えるほど一件当たりの報酬を上げにくく、平均売上は3,500万円となる。
AIが買い手候補の探索や初期資料を代替するにつれ、案件一件に必要な事務作業は減る。だが、売り手にも低料金を示す競合が増え、省力化の利益はすべて仲介会社に残らない。担当者一人当たりの成約は最近の1.1組前後から大幅には改善せず、給与、教育費、事務所賃料も物価とともに上がる。営業利益率は19.5%で落ち着き、ピーク期の高収益を当然視しない。株主還元は純利益の約7割を長期間で返し、残りは営業資金と人材育成に蓄える。
- 中小企業M&A仲介(完全成功報酬):数量 80.0(年間成約組数(組。実質の取引件数))× 価格 0.35(成約一組当たりの売上(億円、売り手・買い手の合計))→ 売上 28 億円・営業利益 5 億円。成約80組×平均3,500万円。国内市場の成立件数が年5~8%伸びる一方、仲介手数料は10年で約1.10倍と物価1.34倍に届かない。同社の支援市場に対する参考比は約0.65~0.9%で、現在よりやや低い。
倍率:k8.25%、g_long0%、moat=weak。2036年の見かけROEは3.83÷30.3=12.6%、弱い堀を反映したRONICはk+1/3×(12.6%−8.25%)≈9.7%。成長gが0なので正当化PER=1÷k=12.12倍であり、高成長プレミアムを付けない。事業純利益3.662億円にPERを掛け、預金12億円の75%に相当する9億円を加える。
確率:会社が2027年に見込む62組と過去の生産性の低下を起点に、国内の事業承継需要は伸びるがシェアはほぼ横ばいとする。AI代替を単価と長期gに既に織り込み、確率では重ねて減点しない。
やや悲観 25% 成約は続いても採算が戻らない 利益 1 億円 · PER 11.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 761 円17 億円
国内で事業を売りたい人は多いが、買い手は資金調達の金利上昇や業績の先行きに敏感になる。検討に時間がかかり、成約しない案件の調査も増える。小規模な取引を扱う競合は手数料を下げ、売り手は複数社から見積もりを取るようになる。インテグループの成約は年間58組で足踏みし、一組の平均売上は2,920万円へ低下する。
AIで書類作成の作業は楽になるが、それ以上に手数料競争が進み、人員を減らせるほどの改善にはつながらない。事務所の賃料や経験者の給与は物価で上がり、案件ごとの交渉や調査にはなお人手が要る。営業利益率は8%程度にとどまる。大型の買収に手を出さず現金を守っても、利益が少なければ配当も細る。経営が保守的に事業を続けるため破綻は避けられるが、株主の収益力という意味で優良さを失う十年になる。
- 中小企業M&A仲介(完全成功報酬):数量 58.0(年間成約組数(組。実質の取引件数))× 価格 0.29(成約一組当たりの売上(億円、売り手・買い手の合計))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。成約58組×平均2,920万円。売上が現在からほぼ横ばいのまま給与や賃料が重く、営業利益率は2026年実績に近い8%。参考市場での浸透率は約0.5~0.65%に低下。
倍率:ROE約4.0%がk8.25%を下回るため、長期g0%でも稼ぐ力のPER上限は1÷k=12.12倍である。構造的な低採算と固定費の残存を考え、やや悲観では上限より少し低い11.6倍とする。谷で余剰預金が9億円に縮むと見て、税後利息0.126億円を純利益から外した事業利益0.904億円に11.6倍を掛け、預金の株主帰属額6.75億円を別建てで加える。稼ぐ力約17.24億円が清算床17億円をわずかに上回る。
確率:下に寄せる理由:2024年から2026年の一組当たり売上の低下と、人員増にもかかわらず一人当たり成約が1.8組から1.1組に落ちた固有の実績がある。価格競争や買い手の審査厳格化で回復が鈍る確率を重く見る。
悲観 15% 仲介価格の崩れで事業を縮小 利益 0 億円 · PBR 0.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 751 円16 億円
買い手候補の探索や初期評価が汎用AIとオンラインの事業承継市場で安く済むようになり、仲介会社への支払いは交渉と最後の実務に絞られる。加えて両当事者からの報酬への監督が厳しくなり、従来の成功報酬の総額を維持できない。経験者の離職が続き、直接営業で集めても成立しない案件が増える。2036年の成約は27組、平均売上は2,500万円に落ちる。
契約が減っても賃貸事務所と管理職の給与、情報管理や法令対応の費用がすぐには消えない。規模を縮小する過程で営業赤字が続き、2036年の営業損失は約0.5億円となる。経営は不採算の営業拠点や部署を整理し、残った預金から撤退費用と顧客への対応費用を賄う。大型買収による救済や株式非公開化の高値買付けは想定しない。取引市場はなくならないが、同社がこれまで得ていた高い仲介利潤はほぼ失われ、売却可能な資産が株主の価値を支える。
- 中小企業M&A仲介(完全成功報酬):数量 27.0(年間成約組数(組。実質の取引件数))× 価格 0.25(成約一組当たりの売上(億円、売り手・買い手の合計))→ 売上 7 億円・営業利益 −1 億円。成約27組×平均2,500万円。規制と競争で手数料総額が低下し、人件費・賃料が残って営業赤字8%。売上は2026年の約43%。参考市場シェアは約0.2~0.3%に落ちる。
倍率:2036年の事業は赤字となりPERで利益価値を出せないので、純現金・売掛金・回収可能な敷金から負債と税後の整理費を引いた資産床17億円を優先する。PBR0.885417倍は2026年5月末の自己資本19.2億円に対する表示であり、2036年の蓄積後の自己資本21.63億円へ掛けた数字ではない。過去の市場の谷のPBRは参照しない。
確率:小型案件の成約率低下に加え、両手報酬への規制や競争激化で構造的に稼げなくなる場合である。今の預金が短期の倒産を防ぐため、完全消滅ではなく事業縮小と資産回収の筋書きとする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
中小企業M&A仲介(完全成功報酬)
譲渡を希望する中小企業と買い手を直接開拓・仲介し、成約時に両当事者から成功報酬を受け取る単一の開示セグメント。独自媒体に単独の外部売上開示はない。
| 数量年間成約組数(組。実質の取引件数) | 価格成約一組当たりの売上(億円、売り手・買い手の合計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 49.0 | 0.32 | 16 | 1 |
| 10 年後 中立 | 80.0 | 0.35 | 28 | 5 |
取り方:2026年5月期の有報・成長可能性資料から年間成約49組、実際の売上15.58064億円を採用。会社が示す一組当たり平均売上は約31.8百万円なので49×0.318=15.582億円、端数差は開示の丸めによる。営業利益約1.2億円には人件費、本社販管費、年0.974億円の本社賃料を控除済み。市場側は2024年度の登録支援機関の成約報告約4,940件と2025年の公表M&A5,115件を別の母集団として参照し、同社の約1%という目安は年度・定義が違うため粗い。十年後は市場件数の増加と同社の浸透率から組数を推定し、物価3%による1.34倍の効果は単価だけに含める。情報収集や資料作成の工数はAIエージェント代替で約0.65倍になる想定だが、人月課金ではないため組数に直接掛けない。競争への還元で中立単価は物価上昇を大きく下回る。比較対象の件数は日本M&Aセンター採用サイトhttps://recruit.nihon-ma.co.jp/about-us/data-overview/とストライクグループ・M&Aキャピタルパートナーズの2025年9月期有報に基づく。シェアは集計母集団の不一致から参考比であり、値付けの根拠にはしない。
リスクと懸念
AIエージェント代替と手数料の実質低下
買い手候補の探索、企業情報の整理、一次評価や資料作成はAIエージェントで代替されやすい。現在は成約時にまとめて成功報酬を得るため、事務時間の節約がそのまま売上減にはならない。しかし参入者も同じ技術を使い、必要な人手が10年で約65%へ減れば、その余地は価格競争によって顧客へ渡りやすい。独自データの排他的な支配がない限り、利益成長の持続を高く見積もれない。
両手仲介と利益相反への規制
会社は売り手と買い手の双方から完全成功報酬を受け取る。中小M&Aガイドラインの改訂が求める費用説明、買い手の適格性審査、利益相反への配慮は、長期的には事務費用の増加や手数料率の低下につながりうる。売り手の保護が強まること自体は健全だが、一組当たりの収入が細る会社の利益には逆風となる。
大型案件への依存と成約時期のぶれ
成約は最後の契約締結まで売上にならず、決算をまたぐだけで年度利益が大きく動く。2024年5月期の高利益率は大型案件の寄与が大きく、2026年5月期には件数の回復に反して一件単価が落ち、営業利益が急減した。買い手の融資負担が増える局面では案件の長期化や白紙化が連鎖し、売上の減少に比べて利益の落ち方が大きくなる。
採用拡大と人材生産性の不一致
平均コンサルタント数は2024年の30人から2026年には45.5人に増えたが、一人当たりの成約は1.8組から1.1組へ下がった。2028年5月期末の従業員90人を目指す過程で、採用や教育費が先行すれば増員が株主価値を減らす。優秀な人材の移籍も、成約力と売り手とのつながりを同時に失うリスクとなる。
創業者の支配と余剰現金の使途
2026年5月末時点で二人の主要株主の保有割合は合計約65.9%である。12億円の定期預金を含む財務の厚さは魅力だが、少数株主は自社株買いや配当の実行を決定できない。長期の配当性向80%は目標であり、利益が落ちれば配当自体は減る。資金が成果の不明確な買収や採用に使われる場合、現金一円を一円の株主価値とは扱えない。
希薄化と事務所の固定費
2026年5月末には未行使の新株予約権が80,500株あり、権利行使が続けば既存株主の持分は薄まる。過去にも新株予約権の行使で発行済株式数が増えている。また本社賃料は年約0.97億円と、業績が悪い年度にも発生する固定負担である。新リース基準で帳簿の見え方が変わっても、資金流出の経済実態が改善するわけではない。
今後の分かれ目
- 2027年5月期の成約62組と売上20.93億円が達成され、その翌年も一人当たり成約数が1.4組以上へ戻ったら
- 採用と買い手情報チームの投資が成果を生んだと評価し、中立の成約件数と営業利益率を上方修正する。ただし一件報酬が戻ることも同時に確かめる。
- 一組当たり売上が3,000万円を連続して下回り、成約率も改善しなかったら
- 情報・仲介の価格競争が想定より速いと見て、やや悲観と悲観を厚くする。成約件数の増加だけでは中立の利益率を守れない。
- 国内の中小M&Aガイドラインが厳格化し、両当事者からの報酬の合計や料率が実質的に制限されたら
- 顧客単価と営業利益率を同時に引き下げる。規制対応の費用増も考え、事業の長期成長を評価する倍率は引き上げない。
- 現金・定期預金の残高が縮んでも、配当性向が段階的に80%に近づき、買収を控えたら
- 余剰現金の株主への戻り方を0.75から1.0へ見直す余地が生じる。反対に大型買収へ使えば、その投資後の利益と現金残高を再評価する。
- AI利用による事務時間の削減だけが進み、同時に最低成功報酬の引き下げが広がったら
- 業務効率の上昇を独占的な利潤と扱わず、中立単価をさらに下方へ動かす。販売単価が維持される証拠が出るまで長期成長率を上げない。
- 不採算の年が続き、本社の賃料と採用費が売上に対して高止まりしたら
- 構造的な赤字への転換とみなし、2036年の稼ぐ力の評価を下げ、純現金と売れる資産の税後残額を主な下限とする。
見ておくもの
- 四半期・通期の成約組数と通期会社予想62組の進捗
- 一組当たり売上と高額案件(売上5,000万円以上)の割合
- 平均コンサルタント数と一人当たり成約組数の推移
- 受託案件数・成約率・案件の成約までの期間
- 完全成功報酬の最低料金と両手報酬への制度改訂
- 現金と定期預金残高、配当性向、自社株買いの有無
- 新株予約権の行使、主要株主の持株比率、管理体制の変更
倍率と資本コストの決め方
時価総額約29億円や過去の同業PERを出発点にせず、開示された49組×約3,180万円の実績を、国内市場の成約件数と小型案件における競争から伸ばした。10年の物価3%は平均報酬の側だけに含め、件数には二重加算しない。資本コスト8.25%、AI代替を踏まえた長期g0%の正当化PER12.12倍を楽観から中立まで用い、悲観は現在の換金可能資産17億円を確認した。新株予約権の潜在的希薄化と現金の戻り方75%を考慮し、買収による架空の上乗せを避けた。リース基準の変更も賃料の経済負担を消さない。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3.0%と株式リスクプレミアム4.5%の合計7.5%に、利益変動と値決め力、実質無借金の事実から算定した品質補正+0.75%を加える。経営者・M&A・新株予約権の個別リスクは筋書きと希薄化で扱い、kには重ねない。