結論
ナレルグループは、建設現場に施工管理技術者を送り出すワールドコーポレーションを主力とする人材サービス会社である。筆者の結論は「やや割安」だ。建設現場を動かす人間の仕事はAIエージェントで簡単には消えず、足元の株価には、採用難と利益率低下への警戒が相応に反映されている。
収益の約9割を占める建設ソリューションには、建設技術者の高齢化と人手不足という長期の追い風がある。一方、会社が2030年に掲げる売上高500億円、営業利益50億円、技術者数8000人という目標を、そのまま10年先まで延ばして評価することはできない。主力事業の離職率は2025年10月期に31.1%で、2026年の開示では一段と高い水準にある。人数を増やすたびに採用費と育成費がかかり、売上高の拡大が利益の拡大に直結しないためだ。
ITソリューションは約1割の小さな事業だが、こちらにはAIエージェント代替を明確に織り込む。10年後の中立では稼働するIT技術者の人数が今より35%減ると考える。建設でも施工図や書類作成の一部は自動化されるが、現場で安全、工程、協力会社を調整する仕事は残る。
5つの筋書きによる10年価値の現在価値は約246億円で、基準時点の時価総額約207億円を約19%上回る。ただし、これは盤石な優良企業を安く買えるという意味ではない。自己資本約145億円の大半はのれんであり、採用競争に負けたときに売れる資産の床は薄い。やや悲観と悲観に合わせて42%の確率を配したうえでなお割安だが、安全域は事業の不確実さを忘れてよいほど厚くない。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、まず10年後も客が代金を払いたいと思う仕事が残るかを考える。建設の施工管理には残る理由がある。図面作成や報告書の一部をAIが肩代わりしても、現場に立ち、安全を確認し、人と工程を動かす責任は消えない。国内の人口が減っても建設資産の更新は続き、人を外部から調達する仕組みへの需要はむしろ強まる可能性がある。
次に問うのは、必要なサービスを提供する会社が、その需要からどれだけ長く超過利益を得られるかである。ナレルグループには現場への人材供給という役割があるが、顧客の乗り換えを難しくする固有技術や強いネットワーク効果は乏しい。社員が競合へ移れば供給力も移る。契約単価を上げても給与と採用費が同じだけ増えるなら、株主の取り分は増えない。これは高い値段を払える種類の堀ではない。
再投資の判断も独特である。建物や工場に大金を投じなくても売上は伸ばせるが、技術者の採用、研修、定着支援には繰り返し支出が要る。純利益には通常の採用費が既に反映されているものの、成長を加速させる追加投資が資本コストを超えて回収されるかは別の問題だ。人数だけを追って採用単価が上がれば、規模拡大が株主に不利になることもある。
もう一つ、会社を丸ごと所有するなら帳簿の中身を見逃せない。自己資本の大半を占めるのれんは、将来の利益への期待を買った記録であって、事業が崩れた時に額面で売れる資産ではない。だから悲観では貸借対照表の自己資本をそのまま下値にしない。基準時点の値段は、こうした弱さをある程度補うだけの安全域を備えているが、投資の確信度を高くするには、離職率の低下と増分利益率の改善をさらに確認したい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は建設ソリューションである。子会社ワールドコーポレーションが施工管理技術者を採用、教育し、ゼネコンや専門工事会社の現場へ派遣する。発注側は自社で若手社員を大量採用する負担を抑えながら、工期に合わせて現場の人員を確保できる。派遣会社は技術者の月額契約単価と、その人の給与、社会保険料、採用費、教育費との差額を稼ぐ。
2025年10月期の建設ソリューションの売上高は216.42億円だった。同社が開示する期中平均稼働技術者数は3136人、平均契約単価は月額51.9万円である。契約単価だけで計算した年間売上は約195億円となり、実際の売上との差は残業、施工図作成、関連サービスなどを含む収益の違いと考えられる。長期の値決めでは、この差を含めた稼働技術者1人当たりの実現売上を使う。施工管理という現場業務のほかに、CADや施工図作成、建設技術者の紹介も扱うが、主役はあくまで人の稼働だ。
ITソリューションはATJCを中心とする技術者派遣・システム開発支援で、2025年10月期の売上高は25.15億円だった。期中平均稼働技術者数は362人、平均契約単価は月額52.4万円である。顧客企業の開発案件に技術者を参加させ、稼働人数と契約期間に応じて売上が立つ。この事業は建設現場と違い、人が行ってきたプログラミング、テスト、資料作成の相当部分をAIが担えるため、現在の売り方が10年後も続くとは考えない。
この会社の成長を決めるのは、案件の多さだけではない。採用した技術者を早く現場に配置できるか、一定期間働き続けてもらえるか、経験と資格に応じて契約単価を上げられるかが利益を左右する。離職者が増えると、稼働人数を維持するだけでも新規採用が必要になる。設備の増設よりも採用と定着の巧拙が資本配分の中心になる点が、この事業の特徴である。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、建設現場に人を送り込む採用網と、若手技術者を現場で働ける人材に育てる仕組みにある。施工管理は図面を読むだけの仕事ではない。現場で起きる工程の変更、安全上の問題、協力会社間の調整にその場で対応する必要がある。人手不足の顧客には必要なサービスであり、仕事そのものの寿命は長い。
しかし、必要とされる事業であることと、会社固有の堀が強いことは別である。技術者は会社の所有物ではなく、顧客はコプロ、オープンアップ、テクノプロなどにも発注できる。資格者の人数、地域ごとの採用力、既存顧客との関係は競争力になるが、他社が再現できない独占的な資産ではない。主力事業の離職率が3割を超える現実は、働き手を自社に引き留める力の限界も示している。堀の評価は「弱い」とする。
2021年10月期から2025年10月期まで、売上高は121億円から242億円へほぼ倍増した。しかし営業利益は18億円から28億円への増加にとどまり、2024年の31億円からは減益となった。2025年の営業利益率は11.7%で、前年の14.4%を下回る。採用費、人件費、販管費が成長の果実を食いやすい構造が数字に表れている。ROEは14%台で資本コストを上回るが、増えた売上を従来と同じ利益率で獲得できているわけではない。
財務の見かけにも注意が要る。2025年10月期の有利子負債と現金はともに約48億円で、純負債はほぼゼロである。一方、約145億円の自己資本に対してのれんが約141億円ある。買収した事業の稼ぐ力が保たれる限り問題はないが、失敗した事業を売って回収できる金額と帳簿上の自己資本は大きく違う。財務が直ちに危ない会社ではないものの、自己資本の厚さをそのまま下値の保証と見なすべきではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
建設技術者派遣は、人手不足が需要を支え、採用競争が供給を制約する市場である。競合のオープンアップグループが引用する業界調査では、建設技術者派遣市場は2025年ごろの約6300億円から2027年ごろに約6700億円へ拡大する見通しである。ナレルグループの建設ソリューション売上約216億円は、6300億円の市場に対して約3.4%に相当する。市場区分や決算期が完全には一致しないため概算だが、圧倒的首位ではなく、シェアを奪える余地のある中堅企業という位置づけが分かる。
競合にはオープンアップグループ、コプロ・ホールディングス、テクノプロ・ホールディングス、共同エンジニアリングなどがいる。公表時期や含まれるサービスは異なるが、建設技術者派遣の事業売上は大手オープンアップが500億円台、複数の主要競合が200億円台という規模感である。上位企業が採用広告、教育、営業拠点を共同利用できるほど、人数を増やす効率に差が出る。ナレルグループが今後10年でシェアを上げるには、市場全体の成長以上に技術者の純増を実現する必要がある。
需要の背景には、老朽化した橋梁や道路の維持更新、物流施設や工場の新設、既存建物の改修がある。新築の着工件数が弱くなっても、現場監督や安全管理者が不要になるわけではない。ただし建設費の上昇や民間工事の延期は派遣需要を鈍らせる。建設技能者の高齢化も、需要を増やす反面、現場で育成を担える人材を減らす問題を生む。2035年の建設技術者派遣市場は、物価上昇と緩やかな実質需要増を含め名目約9000億円を中心に考える。
IT技術者派遣には別の力が働く。競合資料で確認できる機械・IT技術者派遣市場は約1兆4500億円規模だが、これは機械系を含む広い区分であり、ナレルグループのIT事業だけの正確な市場占有率は算定できない。同じ広い市場を分母にすると売上占有率は約0.17%にすぎない。競争相手は人材派遣会社だけではなく、顧客自身が利用するAI開発環境や自動化エージェントにも広がる。2035年までにITの人月需要は縮むと考え、建設の現場業務と同じ成長率を当てはめない。
資本政策と M&A
会社は2025年12月に公表した中期経営計画で、2030年10月期の売上高500億円、営業利益50億円、営業利益率10%、ROE20%以上、技術者数8000人を目標に掲げた。2025年10月期の売上高は約242億円であり、売上と技術者数の双方を大きく増やす必要がある。計画の成否は、新規採用人数そのものより、離職者を差し引いた技術者の純増と、稼働率を保ったまま契約単価を引き上げられるかにかかる。なお、この中期計画の業績目標には将来のM&Aによる上乗せを含めていない。
還元については、2026年10月期から2030年10月期まで減配しない方針を示し、2025年10月期の年間配当を基準とする最低水準が示されている。直近の年間配当は115円で、現行株数では年約10億円の支払いに相当する。一方、配当性向を常に50%とする数値目標、DOE、総還元性向、自社株買いの実施金額について、同じ水準の確定的な数値約束は確認できない。10年後の還元を考える際は、2030年までの減配回避方針と、その後の業績悪化時に支払いが変わり得ることを分けて考える。
事業拡大では、IT領域のATJC、建設人材の採用・紹介網、CADや施工図関連の機能などをグループに取り込んできた。周辺機能を広げる狙いは理解できるが、買収によって技術者1人当たりの利益や定着率が改善したかは継続的に確かめる必要がある。過去の企業取得に伴う大きなのれんが残り、失敗した買収を減損する余地もある。
2023年の上場以降は増配の実績がある一方、発行済株数の大幅な減少を伴う自社株買いは確認できない。余剰資金の株主への戻り方は慎重に75%と評価する。今後は規模拡大のための買収より、採用費の回収期間短縮と離職率改善に資金を振り向ける方が、株主価値につながる可能性が高い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
建設ソリューションの価値は、今の利益率よりも、どこまで技術者の供給網を広げられるかにある。国内の建設現場では監督や工程管理を担える人が慢性的に足りず、建設会社が必要な人材をすべて自社雇用するのは難しい。大規模な再開発が減っても、橋梁、道路、物流施設、工場、老朽建物の改修が続く。需要が残る市場で約3.4%のシェアしかない会社には、競合から案件を奪う余地が十分ある。
同社は若手の未経験者を採用して現場に送り出す仕組みを築いてきた。資格取得者の増加、経験年数に応じた契約単価の引き上げ、研修体制の整備が進めば、採用人数を増やすほど企業価値が上がる好循環もあり得る。会社の2030年目標である技術者8000人は野心的だが、これに近づく過程で採用網や教育力が大手に肩を並べれば、建設技術者派遣市場での位置づけは大きく変わる。
AIもすべてが逆風ではない。建設側の書類作成や営業管理を自動化すれば、現場の技術者を減らさずに間接費を抑えられる。IT事業の人月需要は縮んでも、売上の約9割を占める建設が成長すれば、連結業績は十分に伸びる。過去に有利子負債を圧縮してきた財務運営と、増配を続けてきた姿勢も株主に有利だ。2035年に建設市場で一段高いシェアを獲得できれば、現在の時価総額は事業の成長余地に比べ小さい。
慎重な見方
最大の問題は、需要があるのに人が定着しないことである。施工管理技術者の離職率が3割を超えるなら、採用に成功しても翌年の稼働者数は思うほど増えない。広告宣伝、紹介料、研修、営業、待機期間の費用は先に発生する。建設会社が人材不足を訴えていても、派遣会社が人を無制限に値上げできるわけではない。コプロやオープンアップ、テクノプロなど大手との採用競争が激しくなれば、最も高い給与を払える会社が技術者を集める。
実際に売上高は増えているのに、2025年10月期の営業利益は減った。技術者数の拡大を追うほど販管費が先行し、収益性が薄まる可能性は既に現実の数字に表れている。中期計画の技術者8000人は、単なる市場成長の延長では到達できない。高い離職率を抱えたまま積極採用や買収で人数を増やせば、利益ではなくのれんと採用費だけが膨らむおそれがある。
ITソリューションでは問題がさらに根本的である。プログラミング、テスト、仕様書作成などの人月業務はAIエージェントに直接置き換えられる。顧客が少ない人数で同じ成果を得られるなら、派遣元の稼働人数と契約単価の双方が圧迫される。建設でも施工図と事務の外注部分は同じ圧力を受ける。
自己資本が約145億円あるから安心だという見方も危うい。のれん約141億円は事業が期待どおり稼ぐことを前提とした資産であり、構造的に負ける局面では回収できない。手元資金のほぼ同額の借入金もある。配当を支えながら成長投資と減損に対応しなければならず、最悪のケースでは現在の株主が回収できる価値が大幅に減る。
どちらに重みを置いたか
建設の現場需要が10年後も残るという点では強気の見方に分がある。しかし、その需要から高い利益率を守れるかについては慎重な見方が優勢だ。離職率の高さ、2025年の減益、のれんの大きさは会社固有の懸念であり、単なる景気循環では片付けられない。ITのAI代替は人数と単価の筋書きに既に反映し、確率で二重に引かない。それでも採用と定着、買収の実行に失敗する可能性を重く見て、楽観側22%に対して悲観側42%とした。結果は約19%のやや割安だが、実力に対する確信度は中程度にとどまる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/10 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 4,220 円369 億円(+ 還元の換算額還元の合計 1,357 円119 億円)。 今の値に割り戻すと 2,878 円252 億円、今との差 +39.0%、 期待の年率 +12.4%(資本コスト 8.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 10,865 円951 億円 | 2,285 円200 億円 | +535.2% | +23.8% | 789 円69 億円 |
| やや楽観 | 16% | 7,668 円671 億円 | 1,885 円165 億円 | +361.5% | +19.5% | 1,529 円134 億円 |
| 中立 | 36% | 4,774 円418 億円 | 1,428 円125 億円 | +199.6% | +13.7% | 2,233 円195 億円 |
| やや悲観 | 29% | 2,028 円178 億円 | 1,085 円95 億円 | +50.4% | +5.2% | 903 円79 億円 |
| 悲観 | 13% | 264 円23 億円 | 685 円60 億円 | −54.1% | −11.0% | 123 円11 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,220 円369 億円 | 1,357 円119 億円 | +169.4% | +12.4% | 5,577 円488 億円 |
今の株価時価総額 2,070 円181 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 6% 建設市場の有力企業へ成長 利益 67 億円 · PER 14.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 10,865 円951 億円
建設技術者の不足が一段と深まり、ナレルグループは若手採用から資格取得、現場配置までの仕組みを強化する。離職率は大幅に低下し、採用した社員が経験を積むほど高単価の案件に移れるようになる。施工管理技術者の平均稼働人数は7400人へ増え、建設技術者派遣市場での存在感は現在の約3.4%から大きく高まる。
建設会社の人手不足が契約価格にも反映され、施工管理の実現単価は名目で上昇する。規模の拡大と定着率の改善によって1人当たりの採用・教育負担が下がり、建設事業の利益率が改善する。新たな買収がなくても、採用網そのものが成長の源になる。
IT事業ではAIエージェントが単純開発やテストを担い、稼働人数は現在をやや下回る。ただし残る仕事が高度化し、単価と利益率を守る。連結で高い利益を生み、その一部を継続的に配当や自社株買いに回せる10年間となる。
- 建設ソリューション:数量 7,400(期中平均稼働建設技術者数(人・年、実質))× 価格 0.10(稼働技術者1人年当たりの実現売上(億円、名目。基本契約料以外の収益を含む))→ 売上 718 億円・営業利益 86 億円。建設の平均稼働7400人、実現年単価970万円。市場約9000億円に対する売上シェア約8.0%。離職率の改善と上位資格者の増加で、建設利益率12%。
- ITソリューション:数量 350(期中平均稼働IT技術者数(人・年、実質))× 価格 0.09(稼働IT技術者1人年当たりの実現売上(億円、名目))→ 売上 33 億円・営業利益 2 億円。AI代替が進んでも高度な開発業務を保持。人数は現在以下、単価は高付加価値化で上昇するが自社AI製品の売上上乗せはしない。
倍率:資本コストk8.0%、2035年ROE66.56÷350=19.02%、弱い堀による超過収益残存割合1/3からRONIC=11.67%。2035年より先の名目成長率g_long2.5%を用い、正当化PER=(1−0.025÷0.11672)÷(0.08−0.025)=14.288倍。楽観は上限そのものに置き、市場の過去倍率は参照しない。
確率:施工管理の需要は堅いが、稼働人数を7400人まで増やすには離職率の大幅改善と継続的な採用成功が必要になる。2030年技術者8000人という会社目標を超える採用基盤と高い稼働率を維持する難度から、低めの6%とする。
やや楽観 16% 採用と定着が改善し堅実に拡大 利益 48 億円 · PER 13.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 7,668 円671 億円
建設会社の慢性的な人手不足が続き、ナレルグループは営業地域を広げながら技術者の採用と教育を進める。離職率は依然高いものの、研修と配置の改善で採用後の定着期間が長くなる。建設事業の稼働人数は6000人となり、顧客からの継続発注が成長を支える。
契約単価は経験者や資格保有者の割合が高まることで物価並みからやや強めに上昇する。採用費の増加は残るが、待機期間の短縮と規模の効果によって建設事業の利益率は改善する。会社の目標に完全に届かなくても、今より一段大きい事業として安定する。
ITの人月派遣はAIエージェントの普及で一部の案件が減り、平均稼働人数は300人に低下する。ただし開発管理や顧客固有のシステム対応は残り、単価の上昇が人数減を緩和する。増益に応じて配当も増え、株主に一定の成果が戻る。
- 建設ソリューション:数量 6,000(期中平均稼働建設技術者数(人・年、実質))× 価格 0.09(稼働技術者1人年当たりの実現売上(億円、名目。基本契約料以外の収益を含む))→ 売上 564 億円・営業利益 62 億円。平均稼働6000人、実現年単価940万円。2035年の市場シェアは約6.3%、採用効率と単価改善で建設利益率11%。
- ITソリューション:数量 300(期中平均稼働IT技術者数(人・年、実質))× 価格 0.09(稼働IT技術者1人年当たりの実現売上(億円、名目))→ 売上 28 億円・営業利益 1 億円。AI代替による稼働人数の減少を、残る高度業務の単価上昇が部分的に補う。
倍率:k8.0%、ROE48.40÷310=15.61%、弱い堀で超過収益残存1/3とするとRONIC10.54%。g_long2.5%から正当化PER=(1−0.025÷0.10538)÷0.055=13.868倍。楽観側は正当化上限をそのまま採用する。
確率:建設技術者派遣市場の拡大を取り込める余地はある。しかし大手との採用競争が厳しく、契約単価と利益率の改善を同時に実現する必要があるため、上振れの中心として16%を配する。
中立 36% 建設は成長、IT人月は縮小 利益 31 億円 · PER 13.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,774 円418 億円
建設技術者派遣市場は人手不足を背景に成長するが、ナレルグループの技術者数は会社の2030年目標ほど速く増えない。採用と退職が繰り返されるため純増のペースが鈍く、2035年の建設の平均稼働人数は4500人となる。競争を通じてシェアは約3.4%から約4.5%へ上がるが、業界の中心企業を一気に追い越すほどではない。
建設現場の契約単価は物価上昇や技術者の経験を反映して高くなる。ただし、同じ期間に給与、紹介料、採用広告費も上昇する。施工管理の現場業務は残るが、CADや事務作業の自動化で一部の追加請求機会が減り、建設事業の営業利益率は現在の水準をやや下回る。
ITの人月派遣はAIエージェントによる開発・テスト業務の省力化が進む。平均稼働人数は362人から235人へ約35%減少し、実現単価の名目上昇も10年で約30%にとどまる。建設の増収がITの縮小を補い、会社全体の利益は緩やかに成長するが、ROEは過去の平均より低い水準へ落ち着く。
- 建設ソリューション:数量 4,500(期中平均稼働建設技術者数(人・年、実質))× 価格 0.09(稼働技術者1人年当たりの実現売上(億円、名目。基本契約料以外の収益を含む))→ 売上 405 億円・営業利益 38 億円。平均稼働4500人、実現年単価900万円。建設市場約9000億円のうち約4.5%。採用費・給与上昇で建設利益率9.5%。
- ITソリューション:数量 235(期中平均稼働IT技術者数(人・年、実質))× 価格 0.09(稼働IT技術者1人年当たりの実現売上(億円、名目))→ 売上 21 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替の人月型。現在比で人数0.65倍、実現単価1.30倍。物価の10年累積1.34倍より値上げが弱い。
倍率:k8.0%、ROE30.88÷275=11.23%、堀が弱いため超過収益の残る割合1/3、RONIC9.08%。建設の長期名目成長とIT人月の長期停滞を合わせたg_long2.5%から正当化PER=(1−0.025÷0.09076)÷(0.08−0.025)=13.174倍。利益の質の減点はkとmoatで反映済みなので、中立PERを式の上限からさらに割り引かない。
確率:建設の現場業務は必要とされるが、離職率と採用費により会社の2030年目標の達成は当然視できない。下に寄せる理由:2025年の減益、高い離職率、自己資本の大半を占めるのれんにより採用・定着・買収の失敗時の影響が大きい。ITのAI代替はこの筋書きの数量減少に既に反映し、確率で二重に差し引いていない。
やや悲観 29% 採用競争で稼働人数が伸びない 利益 14 億円 · PER 10.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,028 円178 億円
建設技術者への需要自体は残るものの、ナレルグループは採用競争で大手に後れを取る。新規採用数を増やしても退職者が多く、平均稼働人数は現在とほぼ同じ3100人にとどまる。顧客は複数の派遣会社へ発注を分散させ、会社の市場シェアは縮小する。
契約単価は名目では上がるが、給与や採用費の増加には追いつかない。採用広告や営業拠点などの費用を十分に吸収できず、建設事業の利益率は低下する。施工図と事務作業の一部はAIに置き換わり、派遣契約に付随する追加収益も細る。
IT事業ではAIエージェントが開発・テストの定型作業を広く引き受け、稼働人数は150人へ減る。採算の悪い案件から撤退する一方、残った事業にも固定的な管理費がかかり、わずかな赤字となる。2030年までの減配回避方針は維持しようとするが、その後は利益水準に見合う還元へ縮小する。
- 建設ソリューション:数量 3,100(期中平均稼働建設技術者数(人・年、実質))× 価格 0.08(稼働技術者1人年当たりの実現売上(億円、名目。基本契約料以外の収益を含む))→ 売上 257 億円・営業利益 17 億円。離職・採用競争によって人数が伸びず、契約単価も物価に負ける。建設の利益率6.5%、市場シェア約2.9%。
- ITソリューション:数量 150(期中平均稼働IT技術者数(人・年、実質))× 価格 0.08(稼働IT技術者1人年当たりの実現売上(億円、名目))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。AIによる人月案件の縮小と間接費の負担で小幅赤字。
倍率:ROE14.07÷225=6.25%でk8.0%を下回り、新規留保資本が高い超過利益を生まない。やや悲観の値付けは永続成長を過大評価せず、利益による稼ぐ力の上限1÷k=12.5倍より低い10.6倍とする。過去・同業の市場PERは参照しない。
確率:建設現場の需要があっても、技術者が他社に移ることで自社の稼働人数は増えない可能性がある。実際の離職率と2025年の利益率低下を踏まえると、需要不足より供給能力不足による下振れの方が現実味を持つ。
悲観 13% 採用モデルが崩れ、のれんを減損 利益 2 億円 · PER 10.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 264 円23 億円
建設技術者の需要は残るが、ナレルグループは人材の確保に失敗する。給与と採用費が上がり続けるなか、定着率は改善せず、経験者はより大きい競合へ移る。採用したばかりの若手を現場に定着させる力も弱まり、建設の平均稼働人数は1750人へ減る。大手顧客との取引を失い、業界の成長から取り残される。
現場業務の基本契約は維持できても、高い追加料金を請求できる案件は減る。施工図や事務の付随業務は自動化され、建設事業の利益率は2%まで下がる。ITの人月派遣はAIエージェントによる直接代替で大半の案件を失い、固定費を吸収できず赤字が続く。
事業の収益力が従来の見通しを大きく下回るため、過去の企業取得に伴うのれんの減損が発生する。2030年までの減配回避方針を踏まえた支払いの後、配当も縮小する。会社は存続するものの、優良な成長企業としての評価は失われる。最悪でも建設現場に送り出す人材と顧客基盤は一部残るが、その稼ぐ力は現在より大きく弱い。
- 建設ソリューション:数量 1,750(期中平均稼働建設技術者数(人・年、実質))× 価格 0.07(稼働技術者1人年当たりの実現売上(億円、名目。基本契約料以外の収益を含む))→ 売上 130 億円・営業利益 3 億円。技術者の流出と顧客喪失で稼働人数が現在の約56%に減少。建設市場シェア約1.4%、利益率2%。
- ITソリューション:数量 90.0(期中平均稼働IT技術者数(人・年、実質))× 価格 0.07(稼働IT技術者1人年当たりの実現売上(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 −1 億円。AIエージェント代替で人月案件の大半を失い、固定費が残るため営業赤字。
倍率:ROE2.20÷65=3.38%でk8.0%を大きく下回る。資本コストを超える再投資収益を見込まず、利益による稼ぐ力の上限12.5倍より低い10.5倍で評価する。事業価値23.1億円は、のれんを差し引いた現在の実体自己資本約4.0億円の床も上回る。
確率:施工管理の現場そのものが消える事態ではなく、採用と定着の失敗によって会社だけが競争力を失う筋書きである。高い離職率と大きなのれんが組み合わさる危険はあるが、建設の実需が残ることから13%とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建設ソリューション
ワールドコーポレーションの施工管理技術者派遣を中心とし、施工図、CAD、建設関連の人材紹介を含む。現場の工程・安全・品質調整に人が必要なため、AI代替は事務・図面部分に限定的と判断する。
| 数量期中平均稼働建設技術者数(人・年、実質) | 価格稼働技術者1人年当たりの実現売上(億円、名目。基本契約料以外の収益を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 3,136 | 0.07 | 216 | 22 |
| 10 年後 中立 | 4,500 | 0.09 | 405 | 38 |
取り方:会社の2025年10月期開示にある建設の期中平均稼働人数3136人を数量に用い、報告セグメント売上216.42億円を同人数で割り、実現売上を1人年0.0690億円とした。月額平均契約単価51.9万円×12か月×3136人では約195.3億円で、セグメント売上との差約21.1億円は残業、施工図等の付随収益と契約単価・会計売上の集計範囲の違いを含む。内訳は完全開示されないため差額を個別項目へ断定的に配賦せず、実現単価で一貫させた。建設技術者派遣市場6300億円を分母とする現在の売上シェアは約3.4%。施工管理の現場業務はPROMPT_AI_RISKの『現場の体』型であり、人月の数量減少率を機械的に当てはめない。ただしCAD・書類部分の自動化を単価・利益率に考慮する。
ITソリューション
ATJCなどのIT技術者派遣、開発・テスト・運用支援。顧客が技術者の稼働時間と人数に対価を払う人月型であり、AIエージェント代替を直接受ける。
| 数量期中平均稼働IT技術者数(人・年、実質) | 価格稼働IT技術者1人年当たりの実現売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 362 | 0.07 | 25 | 1 |
| 10 年後 中立 | 235 | 0.09 | 21 | 1 |
取り方:会社開示の期中平均IT稼働技術者362人とITセグメント売上25.15億円を使用し、実現単価を1人年0.06948億円と算出した。平均基本契約単価は月額52.4万円で、12か月換算の基本契約売上約22.76億円とセグメント売上には約2.39億円の差がある。実現単価には契約外稼働などの集計差を含む。基本事業はPROMPT_AI_RISKの『人月・工数』型で、AIエージェント代替により中立数量を10年で0.65倍、実現単価を1.30倍に抑制し、2035年以降の名目成長を0%と考える。AIエージェントの自社製品売上を金額で確認できないため、楽観でも人数の実質増加を想定しない。
リスクと懸念
離職率の高さと採用費の回収
建設事業の2025年10月期離職率は31.1%で、2026年の開示ではさらに高い水準となっている。人を増やすにはまず退職分を補う必要があり、採用広告、紹介料、研修、待機期間の給与が先に発生する。顧客の需要が強くても、採用費を回収する前に技術者が辞めれば増収が株主価値につながらない。会社の2030年技術者8000人という目標の最大の障害である。
契約単価と人件費の競争
建設技術者の不足は単価引き上げを後押しするが、同じ不足は給与と採用費も押し上げる。2025年の建設平均契約単価は月額51.9万円で、2026年の開示では上昇がみられるものの、物価と採用コストを継続的に上回る価格決定力までは確認できない。派遣会社間の競争で値上げを顧客に転嫁できなければ、人数が増えても利益率は下がる。
AI エージェント代替
ITソリューションは、人月・工数で売る開発、テスト、運用支援が中心である。AIエージェントが仕様の理解、コード作成、テスト、修正まで担うようになると、顧客が必要とする人員数が減る。中立ではIT稼働人数の10年後を現在の65%とし、価格も物価上昇に完全には追いつかないとした。建設側でもCAD、施工図、事務書類の一部は代替されるが、現場の工程・安全管理は区別している。
のれんの減損と買収の実行
約145億円の自己資本に対し、のれんは約141億円に達する。現在の収益力が保たれるなら帳簿上の問題はないが、採用力の低下や取得事業の収益悪化が続くと減損損失が発生し得る。のれんは売却して現金化しやすい資産ではないため、自己資本をそのまま悲観時の床に使うことはできない。今後のM&Aでは、買収代金よりも技術者の定着と増分利益の実績を優先して評価する必要がある。
建設投資の停滞と競合へのシェア流出
維持補修の需要は長く残るが、民間の新築工事や設備投資は金利、建設費、景気に左右される。工期の延期や着工件数の減少が続くと派遣人数と稼働率が下がる。競合には規模の大きいオープンアップ、コプロ、テクノプロなどがあり、採用広告、給与、教育体制の競争も激しい。市場が成長しても、会社自身のシェアが下がる可能性を分けて考える必要がある。
配当維持と資金繰りの両立
2030年までの減配回避方針は株主に有利だが、業績が弱まった時には採用投資と配当の両立が難しくなる。有利子負債は現金とほぼ同額で、銀行借入れやIFRS上のリース負債には返済・支払いの約束がある。金利上昇による純損益への影響は現状では大きくないものの、営業キャッシュフローの悪化が続く場合には借り換え条件と還元方針を見直す必要がある。
今後の分かれ目
- 建設技術者の離職率が継続的に25%未満へ改善し、期中平均稼働人数の増加が加速したら
- 新規採用費の回収期間が短縮している可能性が高い。建設の数量成長と営業利益率を上方修正し、やや楽観の確率を増やす。
- 契約単価の上昇率が技術者給与と採用単価の上昇率を複数期にわたって上回ったら
- 採用不足による一時的な値上げではなく、一定の価格決定力が現れた証拠になる。建設事業の利益率と再投資効率を上方修正する。
- 2030年に向けた技術者8000人の計画から純増ペースが大きく遅れ続けたら
- 人数の増加を前提とする中立・楽観の売上を見直す。市場が好調でも自社がシェアを取れないなら、やや悲観を中心とした評価へ移す。
- IT部門の平均稼働人数が継続的に減り、契約単価も物価に追いつかなくなったら
- AIエージェントによる人月代替が中立以上の速さで進んでいると判断する。ITの数量と価格を引き下げ、建設事業だけで連結利益を支えられるかを再検算する。
- 買収先の収益悪化で大規模なのれん減損が発生したら
- 一時的な会計損失か、将来の稼ぐ力の低下かを分けて調べる。技術者数や契約単価も悪化していれば悲観側の確率を増やし、自己資本の床も再評価する。
- 売上高は増えているのに営業利益率が10%未満で定着したら
- 採用と教育に投じる資金の増分利回りが低下している可能性がある。人数だけで成長を正当化せず、建設の中立利益率と10年後のROEを引き下げる。
見ておくもの
- 建設ソリューションの月次在籍技術者数、稼働技術者数、稼働率の推移
- 建設技術者の年間離職率と採用人数から差し引いた純増人数
- 建設技術者の平均契約単価と、採用費・給与を含めた1人当たり利益
- 施工管理技士などの資格保有者数と高単価案件への配置率
- 建設ソリューションの営業利益率と全社の営業利益率の差
- IT技術者の稼働人数、平均契約単価、AI関連業務の売上開示
- 2030年中期計画の売上高500億円、営業利益50億円、ROE20%以上、技術者数8000人に対する進捗
- のれんの残高、減損兆候、買収後の技術者定着率
- 営業キャッシュフロー、年間配当総額、発行済株式数と自己株式数
- 建設技術者派遣市場の規模と主要競合の技術者数・売上成長率
倍率と資本コストの決め方
評価は2025年の建設平均稼働3136人・IT362人と、それぞれの実現年単価から出発し、2035年の人数、単価、セグメント利益率を独立に決めた。建設市場は現在約6300億円から2035年名目約9000億円へ拡大する前提だが、会社の2030年技術者8000人という目標を中立に転記していない。ITはAIエージェント代替で数量0.65倍、単価1.30倍とし、g_longを名目2.5%に抑えた。倍率はk8%、弱い堀のRONIC、g_longから正当化し、現在や過去のPERには合わせていない。IFRSのリース負債は既に貸借対照表に反映されているため、新リース基準による負債を二重に加えない。悲観ののれん減損は自己資本と資産の床に反映し、正常時の利益へ重複して差し引かない。時価総額との比較は最後に行った。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3.0%と株式リスクプレミアム4.5%から基本7.5%、事業の値決め力の弱さによるquality+0.5%を加えて株主資本コスト8.0%。βと小型株プレミアムは使わない。採用・M&A・ガバナンスに関する個別リスクは数量、利益率、筋書きの確率に反映する。