結論
エンは、求人媒体「エン転職」「ミドルの転職」と人材紹介、採用支援、海外を持つ人材サービス会社だ。2026 年 4 月に求人ツールの engage を切り出し、85.1% をカカクコムに譲った。
結論から言う。筆者は、10 年後の本質価値は今の時価総額 718 億円を 3 分の 2 ほど下回ると見る。構造改革で最悪期は抜けたが、売上の約 8 割を占める求人媒体と紹介は、AI エージェントが求人と求職者を直接つなぐ側にあるからだ。
営業利益は 40 億円で、2019 年 3 月期の約 3 分の 1、今期の会社予想は 28 億円とさらに下がる。5 カ年計画は最終年度に営業利益 240 億円を掲げながら、実績は 40 億円前後だった。本社と共通部門の費用が約 70 億円かかり、利益を薄くしている。
筆者は、中立で媒体の利用企業が 4 分の 1 減り、紹介の成約件数も 3 割減ると置いた。紹介の手数料は年収と一緒に上がるが、件数の減りを埋めきれない。無借金で現金が厚いのは強みで、使われていない現金 150 億円は価値に足した。AI エージェントを売り物にして出た売上の金額は、開示されていない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、エンは「割安に買えれば持てる、普通の会社」に見える。
事業の本質は単純だ。企業が採用にお金を払い、エンがその仲立ちをして手数料や掲載料を得る。仲立ちの事業は、仲立ちがいらなくなる技術の登場に弱い。生成 AI がその芽になりうる。10 年後も存在はするが、今より強いとまでは言い切れない。
堀は、人材紹介の担当者の力とベトナムのシェア、会員データに限られる。求人メディアでは堀が崩れてきた。
株主に残るお金は、利益の約半分を配当に回し、残りを自社株買いか現金で持つ形だ。自社株買いは 2025 年に実行済みで、評価できる。ただ、5 年計画の失敗が示すように、成長のための投資が利益に結びつかなかった。成長投資への資本配分は、まだ信用しきれない。
筆者が重く見るのは安全域だ。無借金で現金も厚く、倒れる心配は小さい。しかし、利益が戻る前に、すでに株価は大きく上がった。立て直しがうまくいっても、払う値段に余裕が残らない。
見直し(AI エージェント代替):「現金の厚みが支え」という上の見方は、筆者は改める。使われていない現金は価値に足したが、稼ぐ力は AI エージェントで削られる側にある。中立の 10 年後の時価総額は今の 5 割弱に下がる。
何で稼ぐ会社か
エンの事業は大きく 4 つに分かれる。いちばん大きいのが求人メディアで、engage を除いた売上の約 6 割を占める。
求人メディアは、若手から中堅向けの「エン転職」、35 歳以上に絞った「ミドルの転職」、若手の登録型の「AMBI」などからなる。企業が求人を載せる料金が収入になる。ミドルの転職は、人材紹介会社が求人を載せるお客として増えている。一方、エン転職は新しい取引先が伸びず、利用企業は前年を割っている。
人材紹介は、外資系・グローバル企業に強いエンワールド・ジャパンと、国内の高年収層を扱うエンエージェントだ。転職が決まると、年収の約 3 割が手数料になる。コンサルタントを増やし、2 年で売上は 1 割以上伸びた。
採用支援と教育評価は、採用候補者の経歴を確かめるリファレンスチェック(back check)、採用管理のゼクウ、適性検査、組織診断などだ。売上は小さいが、利益率は 3 割近い。
海外は、ベトナムの求人サイト・人材紹介(国内シェア 5 割強)と、インドの IT 技術者の派遣が中心だ。米国での IT 技術者派遣も伸びている。
これらの利益の合計は約 110 億円だが、本社と共通部門の費用が約 70 億円かかり、全社の営業利益は 40 億円にとどまる。この本社費の重さが、エンの利益を薄くしている。
engage は、求人の掲載を無料で始められる採用ツールだった。2026 年 4 月に新会社へ切り出し、85.1% をカカクコムに譲った。エンは 14.9% を持ち続ける。
優良さと弱いところ
堀は、広くない。バリュー投資家が好む、他社がまねできない強みが乏しいからだ。
求人メディアは、リクルートの Indeed やリクナビ NEXT、パーソルの doda、マイナビ、ビズリーチに囲まれている。ここ 3 年の営業利益は、2022 年 3 月期の 96 億円から 2023 年 3 月期の 42 億円へ半減し、戻りきっていない。広告費をかけても利用企業は増えず、利益率は 2 割台から 6〜9% に下がった。
強みも残る。会員は 1,284 万人と多い。ミドル層向けの媒体では長い歴史がある。ベトナムの求人サイトは国内シェアが 5 割あり、小さな堀と言える。人材紹介は、人を増やした分だけ売上が伸びる素直な事業だ。
財務は堅い。借金はなく、自己資本比率は 6 割を超える。
資本効率は、いまは低い。ROE は直近 8% で、過去 10 年の中央値 16.7% は 2018〜19 年の 20% 超が引き上げたものだ。
経営は、創業者の越智通勝氏が 2025 年 4 月に社長へ戻った。不振の engage を手放す決断は評価できる。ただ、その前の投資は回収できなかった。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の人材サービス市場は、年 3% 前後の成長が続く。矢野経済研究所によると、派遣・紹介・再就職支援の 2025 年度の合計は 10 兆円を超える見込みだ。
伸びているのは人材紹介である。ホワイトカラーの紹介市場は 2024 年度に 4,490 億円と、前年から 12% 増えた。人手不足で、企業が手数料を払ってでも人を採りたがっている。
逆風が吹くのは、求人を載せて待つ型の媒体だ。企業が求職者に直接声をかけるスカウト型、検索から応募につなぐ Indeed、人材紹介と、採用の入り口が分散している。載せて待つ型の媒体は、掲載料の値上げが難しい。
競合は桁が違う。リクルートは世界最大級の求人検索を持ち、パーソルやマイナビも営業の網が厚い。ビズリーチを運営するビジョナルは、ミドル層でエンと正面から競う。
生成 AI は両刃になる。面接や候補者の絞り込みに使えば、採用を効率化する新しい商品になる。国内の AI 面接市場は 2030 年に 500 億円規模との見方がある。一方で、AI が求人と求職者を直接結べば、媒体や紹介会社の取り分は減る。
景気の影響も大きい。景気が悪くなると、企業は採用をいちばん先に絞る。人材紹介の取扱高が、リーマンショックのときに半減近くまで落ちた例もある。
見直し(AI エージェント代替):上の議論で AI を採用の入り口の変化と並べて扱っていたが、筆者は AI エージェントによる求人と求職者の直接マッチングをより重く見る。10 年の中立でも、媒体の利用企業は 4 分の 1 減り、紹介の成約件数も 3 割減ると置いた。
資本政策と M&A
株主還元は、配当性向 50% を基本にしている。中期計画の間は固定配当を続けてきた。自社株買いは 2025 年 5 月から翌年 2 月までに 50 億円を実行し、自己株が発行済み株式の約 2 割になった。戻す姿勢は本物だ。
M&A は、2013 年のベトナムのナビゴス、2019 年のインドのフューチャーフォーカスが大きい。最近は back check を連結にした。中期計画の投資枠は 110 億円で、国内の HR 領域に使う方針だった。
2025 年 3 月期には、持っていたタイミーの株を売って 54 億円の売却益を得た。今回の engage の譲渡で入る約 44 億円は、同じく一度きりの利益になる。
新しい中期計画は、2028 年 3 月期に策定する。成長投資に 100 億円超、設備投資に 40 億円を見込む。
創業者の越智氏の持ち分は、共同保有分を含めて約 16% ある。買収の標的にはなりにくい。逆に、オーナー色が強いぶん、資本の使い方が創業者の判断に寄りやすい点は見ておきたい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
最悪期は過ぎた、という見方ができる。engage の譲渡で、不振の事業から手が切れた。広告費と人件費を約 3 割減らした効果で、直近四半期は営業利益が前年から 1 割増えた。減収の大半は譲渡分であり、それを除けば増収だ。
人材紹介は明るい。ミドル層の転職が定着し、約 480 万人の会員データベースのうち活用されているのは 15% ほどにすぎない。これを 2〜3 割へ引き上げれば、成約売上は年 220〜300 億円の規模になるという。紹介は成約件数が伸び、手数料も年収と一緒に上がる。
新しい稼ぎもある。リファレンスチェックの back check は大手の取引が増え、営業利益が倍になった。AI 面接を扱う合弁会社エン PeopleX は、計画を 26% 上回る売上だ。そのうえ、会社は無借金で現金が厚く、創業者が社長に戻り、事業の整理を決断した。ベトナムとインドの海外事業も伸びる。2028 年 3 月期から再成長に移れば、営業利益は 100 億円を超える水準に戻るという見方もある。人手不足で企業は採用に使うお金を惜しまず、手数料は年収と一緒に物価並みに上がる。
慎重な見方
稼ぐ力は戻っていない。営業利益は 40 億円で、2019 年 3 月期の約 3 分の 1 だ。会社予想の今期は 28 億円とさらに下がる。engage の譲渡益で純利益は見かけ上増えるが、一度きりの利益にすぎない。
主力のエン転職は、利用企業が前年を 3% 割った。会員数は増えているのに、お金を払う企業が増えない。求人媒体という型そのものが、スカウトや検索型、AI エージェントによる直接マッチングに押されているのだ。広告費を 3 割削れば、短期の利益は出るが、利用企業をさらに失う悪循環になりかねない。
人材紹介は伸びているが、市場の主役はビズリーチやリクルート、パーソルだ。紹介会社向けの求人掲載も、紹介会社の景気に左右される。5 カ年の中期計画は、最終年度に営業利益 240 億円を掲げながら、実績は 40 億円前後だった。AI エージェントを売り物にして出た売上の金額は、開示されていない。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、人材紹介と採用支援の伸びを正しく捉えている。構造改革で最悪期を抜けたという点も、直近の増益が裏づける。一方、慎重な見方は、利益の水準が低く、主力の媒体の地位が弱く、AI エージェントが求人の入口を変えるという核心を突いている。AI エージェントの売上が数字で出るまで、楽観にも数量 1.0 倍以上は置かない。
やや悲観と悲観を合わせて 37% を置いた。置き換えの影響は中立の数量と価格に入れたので、確率では重ねて引かない。現金は厚いので、悲観の側も床を持つが、期待は今の値段を大きく下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,272 円480 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 318 円120 億円)。 今の値に割り戻すと 839 円317 億円、今との差 −54.9%、 期待の年率 −1.5%(資本コスト 7.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 2,747 円1,038 億円 | 572 円216 億円 | +78.6% | +6.0% | 199 円75 億円 |
| やや楽観 | 19% | 2,001 円756 億円 | 433 円164 億円 | +31.0% | +2.7% | 462 円175 億円 |
| 中立 | 38% | 1,375 円519 億円 | 322 円122 億円 | −8.7% | −0.9% | 645 円244 億円 |
| やや悲観 | 25% | 627 円237 億円 | 240 円91 億円 | −53.3% | −7.3% | 217 円82 億円 |
| 悲観 | 12% | 397 円150 億円 | 160 円61 億円 | −70.0% | −11.3% | 67 円25 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,272 円480 億円 | 318 円120 億円 | −14.4% | −1.5% | 1,590 円601 億円 |
今の株価時価総額 1,858 円702 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 6% 紹介と採用支援が育ち、媒体の細りを止める 利益 60 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 2,747 円1,038 億円
エン転職がスカウト機能を強め、利用企業の減少は止まり、求人媒体の数量は今の水準を守る。約 480 万人の会員データベースが紹介の成約に結びつき、成約件数は今の水準を守って、手数料が物価並みの 1.34 倍に上がる。back check とゼクウは大手の取引が増える。ベトナムの景気回復で海外も保つ。売上は約 680 億円と今を 3 割余り上回り、営業利益は約 91 億円、利益率は 13% になる。創業者の経営で本社費を抑える。2019 年の水準には届かない。株主還元は純利益の約半分で、現金は戻し続ける。
- 求人メディア(エン転職・ミドルの転職・AMBI ほか):数量 9,000(利用企業の延べ社数(社、推定))× 価格 437(1 社当たり年間売上(万円))→ 売上 393 億円・営業利益 98 億円。数量 1.00 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 25%
- 人材紹介(エンワールド・ジャパン、エンエージェント):数量 5,200(年間の成約件数(件、推定))× 価格 280(1 件当たり手数料(万円))→ 売上 145 億円・営業利益 28 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 19%
- 採用支援・教育評価(back check・ゼクウ・適性検査ほか):数量 1,500(契約企業数(社、推定))× 価格 382(1 社当たり年間売上(万円))→ 売上 57 億円・営業利益 17 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 30%
- 海外(ベトナム求人・インド IT 派遣・米国 IT 派遣):数量 3,000(紹介・派遣の人数換算(人、推定))× 価格 289(1 人当たり年間売上(万円))→ 売上 87 億円・営業利益 18 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 21%
倍率:事業の純利益 58 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 23.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.4%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 926 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI エージェントを売り物にして出た売上・受注の金額開示が無く、楽観でも数量は 1.0 倍までと決めた。会員データの活用、リファレンスチェック、ベトナムの景気が揃う筋書きなので 6% に絞った。5 カ年計画を外した経営の実績もある。
やや楽観 19% 媒体は細り、紹介と採用支援が補う 利益 39 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 2,001 円756 億円
AI エージェントや無料の入口の広がりで、エン転職の利用企業は減り、求人媒体の数量は 1 割強減る。人材紹介は成約件数が 15% 減るが、手数料の上昇と会員データの活用で支える。採用支援は 5% 減にとどまり、海外は 1 割弱減る。売上は約 570 億円と今を 1 割ほど上回り、営業利益は約 59 億円、利益率は 10% に下がる。本社費は広告費の削減が効いて抑えられる。構造改革が効いて、2023 年以降の落ち込みの一部を取り戻した姿である。配当と自社株買いは守る。創業者が社長に戻り、事業の整理を進める姿勢は変わらない。新しい中期計画は控えめに置かれ、投資の使い道は絞られる。
- 求人メディア(エン転職・ミドルの転職・AMBI ほか):数量 7,920(利用企業の延べ社数(社、推定))× 価格 410(1 社当たり年間売上(万円))→ 売上 325 億円・営業利益 75 億円。数量 0.88 倍・価格 1.22 倍・営業利益率 23%
- 人材紹介(エンワールド・ジャパン、エンエージェント):数量 4,420(年間の成約件数(件、推定))× 価格 271(1 件当たり手数料(万円))→ 売上 120 億円・営業利益 20 億円。数量 0.85 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 17%
- 採用支援・教育評価(back check・ゼクウ・適性検査ほか):数量 1,425(契約企業数(社、推定))× 価格 365(1 社当たり年間売上(万円))→ 売上 52 億円・営業利益 15 億円。数量 0.95 倍・価格 1.28 倍・営業利益率 28%
- 海外(ベトナム求人・インド IT 派遣・米国 IT 派遣):数量 2,760(紹介・派遣の人数換算(人、推定))× 価格 280(1 人当たり年間売上(万円))→ 売上 77 億円・営業利益 15 億円。数量 0.92 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 19%
倍率:事業の純利益 37 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.0%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 644 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:人材紹介と採用支援は実際に伸びており、この筋書きの足場は固い。ただ、AI エージェントが媒体の求人を置き換える中で補う必要があるので、19% を置いた。
中立 38% 媒体は 4 分の 1 縮み、紹介の成約も 3 割減る 利益 22 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 1,375 円519 億円
エン転職の利用企業は減り続け、求人媒体の数量は 4 分の 1 縮む。単価は無料の入口に抑えられて 1.12 倍にとどまる。人材紹介は AI エージェントのマッチングに押され、成約件数が今より 3 割減る。手数料は年収と一緒に 1.28 倍に上がるが、件数の減りを埋めきれない。採用支援は 12% 減、海外は 15% 減。売上は約 470 億円と今の 9 割、営業利益は約 34 億円、利益率は 7% に下がる。今期予想の 28 億円と同じ水準が続く形で、本社費の重さが利益を薄くする。10 年の成長は、ここで止まる。
- 求人メディア(エン転職・ミドルの転職・AMBI ほか):数量 6,750(利用企業の延べ社数(社、推定))× 価格 376(1 社当たり年間売上(万円))→ 売上 254 億円・営業利益 51 億円。数量 0.75 倍・価格 1.12 倍・営業利益率 20%
- 人材紹介(エンワールド・ジャパン、エンエージェント):数量 3,640(年間の成約件数(件、推定))× 価格 267(1 件当たり手数料(万円))→ 売上 97 億円・営業利益 15 億円。数量 0.70 倍・価格 1.28 倍・営業利益率 15%
- 採用支援・教育評価(back check・ゼクウ・適性検査ほか):数量 1,320(契約企業数(社、推定))× 価格 342(1 社当たり年間売上(万円))→ 売上 45 億円・営業利益 12 億円。数量 0.88 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 26%
- 海外(ベトナム求人・インド IT 派遣・米国 IT 派遣):数量 2,550(紹介・派遣の人数換算(人、推定))× 価格 271(1 人当たり年間売上(万円))→ 売上 69 億円・営業利益 12 億円。数量 0.85 倍・価格 1.26 倍・営業利益率 17%
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.4% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 421 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI エージェントが求人と求職者を直接つなぐ流れの中心の筋書き。媒体の数量 0.75 倍、紹介の数量 0.70 倍と決まりの範囲に置いた。数量と価格に入れた分を、確率と g で重ねて引いていない。
やや悲観 25% 媒体と紹介が大きく縮み、利益がほぼ消える 利益 10 億円 · PER 7.4 倍 · 株価時価総額 627 円237 億円
AI エージェントや無料の入口が求人と求職者の直接マッチングを広げ、媒体の利用企業は 35% 減る。紹介の成約件数も 4 割減り、手数料は 1.18 倍にとどまる。採用支援は 2 割余り、海外は 25% 減。売上は約 380 億円と今の 7 割ほどに縮み、営業利益は約 15 億円、利益率は 4% に下がる。景気の後退も重なり、採用が絞られる年が出る。本社費を減らして抑えるが、売上の減りに追いつかない。純現金が厚いので財務は揺らがず、使われていない現金の一部を株主に返す。会社は広告費と拠点を減らし、人員を絞って固定費を抑える。5 カ年計画のような成長の絵は、ここで終わる。
- 求人メディア(エン転職・ミドルの転職・AMBI ほか):数量 5,850(利用企業の延べ社数(社、推定))× 価格 353(1 社当たり年間売上(万円))→ 売上 206 億円・営業利益 35 億円。数量 0.65 倍・価格 1.05 倍・営業利益率 17%
- 人材紹介(エンワールド・ジャパン、エンエージェント):数量 3,120(年間の成約件数(件、推定))× 価格 246(1 件当たり手数料(万円))→ 売上 77 億円・営業利益 9 億円。数量 0.60 倍・価格 1.18 倍・営業利益率 12%
- 採用支援・教育評価(back check・ゼクウ・適性検査ほか):数量 1,170(契約企業数(社、推定))× 価格 320(1 社当たり年間売上(万円))→ 売上 37 億円・営業利益 8 億円。数量 0.78 倍・価格 1.12 倍・営業利益率 22%
- 海外(ベトナム求人・インド IT 派遣・米国 IT 派遣):数量 2,250(紹介・派遣の人数換算(人、推定))× 価格 248(1 人当たり年間売上(万円))→ 売上 56 億円・営業利益 8 億円。数量 0.75 倍・価格 1.15 倍・営業利益率 14%
倍率:ROE 2.9% が k 7.5% 以下。ためた利益は額面未満の価値で、PER は 1÷k = 11.4 倍を上限に ROE÷k の割合で下げて 7.43 倍。g は名目 0.0%。人月・席の型で寿命は短く、g は名目 0%(横ばい)まで。堀は普通。 余った現金は戻り方を掛けて足す。
確率:AI エージェントが求人の直接マッチングを広げ、掲載料や手数料にも値下げの圧力がかかる筋書き。採用は景気にも弱く、25% を置いた。
悲観 12% AI エージェントが媒体と紹介を置き換え、稼ぐ力が崩れる 利益 −2 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 397 円150 億円
AI エージェントが求人と求職者を直接つなぎ、媒体と紹介の取り分は大きく縮む。媒体の利用企業は半分に、紹介の成約件数も半分に減り、単価は値下げを受け入れて 0.95〜1.05 倍にとどまる。売上は約 270 億円と今の半分に縮み、営業利益は赤字に近づく。本社費は減らすが、固定費は残る。もはや再建の途上の会社ではなく、純現金と少しの事業が残るだけの会社である。株主には、手元の現金から返す形になる。AI 面接や back check は残るが、全体を支える規模にはならない。会社は拠点を閉じ、人員を大きく減らして固定費を縮める。10 年後の会社は、海外と採用支援の一部だけを残した小さな会社になっている。配当は大きく減らす。
- 求人メディア(エン転職・ミドルの転職・AMBI ほか):数量 4,500(利用企業の延べ社数(社、推定))× 価格 319(1 社当たり年間売上(万円))→ 売上 144 億円・営業利益 12 億円。数量 0.50 倍・価格 0.95 倍・営業利益率 8%
- 人材紹介(エンワールド・ジャパン、エンエージェント):数量 2,600(年間の成約件数(件、推定))× 価格 219(1 件当たり手数料(万円))→ 売上 57 億円・営業利益 3 億円。数量 0.50 倍・価格 1.05 倍・営業利益率 6%
- 採用支援・教育評価(back check・ゼクウ・適性検査ほか):数量 930(契約企業数(社、推定))× 価格 285(1 社当たり年間売上(万円))→ 売上 27 億円・営業利益 4 億円。数量 0.62 倍・価格 1.00 倍・営業利益率 14%
- 海外(ベトナム求人・インド IT 派遣・米国 IT 派遣):数量 1,800(紹介・派遣の人数換算(人、推定))× 価格 226(1 人当たり年間売上(万円))→ 売上 41 億円・営業利益 3 億円。数量 0.60 倍・価格 1.05 倍・営業利益率 8%
倍率:稼ぐ力が崩れた姿。事業の稼ぎは床に使わず、純現金など売れる資産(約 150 億円)を今の自己資本 313 億円に対する PBR で表す。
確率:AI エージェントが求人と求職者を直接つなぎ、媒体と紹介の取り分が大きく縮む筋書き。売上が 10 年で半分になる形で、12% を置いた。やや悲観と合わせて 37%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
求人メディア(エン転職・ミドルの転職・AMBI ほか)
転職・求人サイトの掲載料。engage を除く。
| 数量利用企業の延べ社数(社、推定) | 価格1 社当たり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 9,000 | 336 | 302 | 69 |
| 10 年後 中立 | 6,750 | 376 | 254 | 51 |
取り方:メディア売上は 2026 年 3 月期 377 億円で、engage の売上(約 75 億円)を除いて約 302 億円とみた。利用企業の延べ社数は、エン転職 5,546 社に、ミドルの転職・AMBI・エン派遣・エンバイトを足した推定 9,000 社(開示なし)。1 社当たり約 336 万円は逆算。数量は人口と競争で中立 0.92 倍。価格は物価 3% より低い 1.25 倍とした。Indeed やスカウト型の無料・成果報酬の値付けに押され、掲載料を物価まで上げにくいからだ。 AI エージェント代替の型:売上の約 58%(engage 除く)。エン転職・ミドルの転職などの求人媒体は、契約企業の数に掲載料を掛ける席課金に近い型で、AI エージェントが求人と求職者を直接つなぐ側にある。AI エージェントを売り物にして出た売上の金額開示は確認できない。数量は 10 年中立で 0.75 倍(席型の決まり 0.70〜0.90 の下側。エン転職の利用企業は前年を割っている)、価格は Indeed やスカウト型の無料の入口に抑えられるので、物価並みの 1.34 倍でなく 1.12 倍とした。
人材紹介(エンワールド・ジャパン、エンエージェント)
転職が決まった時に年収の約 3 割を受け取る人材紹介。
| 数量年間の成約件数(件、推定) | 価格1 件当たり手数料(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5,200 | 209 | 109 | 16 |
| 10 年後 中立 | 3,640 | 267 | 97 | 15 |
取り方:紹介売上は 108.5 億円。外資系・高年収層が中心なので 1 件約 209 万円(年収 700 万円前後の 3 割)とみて、成約約 5,200 件に分解した(件数は推定)。数量はコンサルタントの増員で伸ばしてきた実績があり、中立で 10 年 1.55 倍(年 4.5%)。市場は 2024 年度に 12% 伸びたが、10 年は人口減で伸びは落ちるとした。価格は年収と一緒に物価並みの 1.34 倍。 数量は実物(成約件数)で、名目の市場の伸びからは置いていない。 AI エージェント代替の型:売上の約 21%。人材紹介は、コンサルタントの工数で成約件数をつくる人月・成果報酬の型。AI エージェントが企業と求職者のマッチングを置き換える側にある。数量は 10 年中立で 0.70 倍(人月の決まり 0.55〜0.75 の上側。ミドル層や外資系の見極めは対面が残る)、価格は手数料が年収に連動するので 1.28 倍とした。
採用支援・教育評価(back check・ゼクウ・適性検査ほか)
リファレンスチェック・採用管理・適性検査・組織診断。
| 数量契約企業数(社、推定) | 価格1 社当たり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,500 | 285 | 43 | 12 |
| 10 年後 中立 | 1,320 | 342 | 45 | 12 |
取り方:採用サービスのその他(25.3 億円)と教育・評価(17.5 億円)の合計 42.8 億円。契約企業数は約 1,500 社と推定し、1 社約 285 万円とした。back check の大手取引とゼクウの伸びで、足元は高成長(直近四半期の採用サービスは前年比 7 割増)。10 年では 1.4 倍の数量とし、価格は物価並みとした。 AI エージェント代替の型:売上の約 8%。リファレンスチェック(back check)、採用管理、適性検査は、採用の記録を扱う型で、AI エージェントに置き換わりにくい一方、AI 面接のエン PeopleX は競合も多い。AI を売り物にして出た売上の金額開示は確認できない。数量は中立 0.88 倍、価格は 1.20 倍とした。
海外(ベトナム求人・インド IT 派遣・米国 IT 派遣)
ベトナムの求人サイト・紹介、インド・米国の IT 技術者派遣。
| 数量紹介・派遣の人数換算(人、推定) | 価格1 人当たり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,000 | 215 | 65 | 13 |
| 10 年後 中立 | 2,550 | 271 | 69 | 12 |
取り方:海外売上は 64.6 億円。ベトナムの求人(国内シェア 51%)とインド・米国の IT 派遣を、人数に換算して約 3,000 人・1 人約 215 万円とした(換算は推定)。ベトナムの景気回復が追い風で、数量は 10 年 1.5 倍とした。為替は 1 ドル 150 円で動かさず、価格は物価並みの 1.34 倍。 数量は実物(人数換算)で、名目の市場の伸びからは置いていない。 AI エージェント代替の型:売上の約 12%。ベトナムの求人・紹介と、インド・米国の IT 派遣は、人の工数で売る人月の型を含む。ベトナムは国内シェア 5 割強の現地の市場で、景気の追い風がある。数量は中立 0.85 倍、価格は 1.26 倍とした。
リスクと懸念
AI エージェントによる求人・紹介の置き換え(AI エージェント代替)
売上の約 8 割は、契約企業の数に掲載料を掛ける媒体と、コンサルタントの工数で成約件数をつくる紹介だ。AI エージェントが求人と求職者を直接つなげば、掲載料と手数料を払う理由が薄れる。10 年の中立で媒体の利用企業は 4 分の 1 減り、紹介の成約件数は 3 割減る。悲観では売上が半分に縮み、稼ぐ力が崩れる。
エン転職の利用企業が減り続ける
直近四半期のエン転職の利用企業は 4,587 社で、前年を 3.2% 下回った。会員は増えているのに、お金を払う企業が増えない。広告費を 3 割削る構造改革が、利用企業をさらに失う悪循環に変わるおそれがある。
景気で採用が真っ先に削られる
求人広告も人材紹介も、景気が悪くなると企業が最初に絞る費用だ。リーマンショックでは紹介の取扱高が半分近くまで落ちた例がある。固定費の重い本社が残るので、売上減が利益減に大きく響く。
新しい中期計画も外れる
前の 5 カ年計画は最終年度に営業利益 240 億円を掲げ、実績は 40 億円前後だった。社長自身が失敗と認めている。新しい計画は 2028 年 3 月期にようやく出る。再びの未達なら、投資が回収できない期間が延びる。
本社費が重く、利益が薄い
事業の利益の合計は約 110 億円あるのに、本社と共通部門の費用が約 70 億円かかる。人員と広告費の削減が戻りに転じると、利益は計画より早く細る。この費用の中身が外から見えにくい点も気になる。
創業者の判断に資本配分が寄る
創業者が社長に戻り、持ち分も約 16% ある。意思決定が早い反面、投資の失敗を止める力が働きにくい。engage の事業と、過去の広告投資を回収できなかった経験を見ると、次の大型投資の判断が価値を損なう可能性は残る。
今後の分かれ目
- AI エージェントを売り物にした売上・受注(エン PeopleX の OEM など)の金額が決算で開示される
- 開示が媒体と紹介の減りを補う規模なら、楽観側の数量を引き上げる。開示が無い間は、数量 1.0 倍を超える筋書きは置かない。
- エン転職の利用企業数が 5,000 社を割り込み、減少が加速する
- 求人メディアの縮小が早まり、中立よりやや悲観の筋書きに近づく。本社費を削っても利益が戻らない。
- 約 480 万人の会員データベースの活用率が 2 割を超え、人材紹介の成約が目に見えて増える
- 人材紹介の数量が伸び、楽観・やや楽観の筋書きに近づく。営業利益が 100 億円を超える道が開ける。
- 2028 年 3 月期に出る新中期計画が、営業利益の目標を控えめに置き、投資の使い道を絞る
- 経営の信頼が戻り、資本配分の不安が和らぐ。中立の筋書きの確度が上がる。
- 景気が悪化し、企業の中途採用が大きく絞られる
- 紹介と媒体の売上が同時に落ち、営業利益は 20 億円台まで下がる。現金の厚みが下支えになるが、価値は目減りする。
- engage の持ち分 14.9% の扱いを含め、さらに非中核事業の売却や整理が進む
- 本社費が軽くなり、利益率が上がる。ただ、売上は小さくなり、成長の絵は見えにくくなる。
見ておくもの
- エン転職の利用企業数(四半期、直近は 4,587 社)と会員数
- 人材紹介の成約件数と、会員データベースの活用率
- 営業利益率と本社費の水準(直近四半期は約 11%)
- 2028 年 3 月期に策定する新しい中期経営計画の目標と投資の中身
- エン PeopleX と back check の売上の伸び
倍率と資本コストの決め方
倍率は式だけで置いた。人月・席課金が中心なので長期の g(10 年より先の名目の伸び)は 0% とし、PER は 1÷k = 11.4 倍になる。k は循環 +0.5%、値決め +0.25%、AI エージェント代替の寿命 +0.5% で 8.75%。AI エージェント代替の理由は、主に中立の数量と価格に入れ、k は下限寄り、確率は 37%、g は 0% と、重ねすぎないようにした。中立とやや悲観は ROE が k を下回るため式で PER が下がる。今の PER や同業・過去の倍率は使っていない。使われていない現金 150 億円は別に足した(やや悲観では 75% に割り引き、悲観は床に含む)。悲観は稼ぐ力でなく純現金など売れる資産の床で置いた。自己資本は「今の 313 億円+期間の純利益−還元」で積んだ。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.43→13.33 倍・やや楽観 PER 11.43→13.33 倍・中立 PER 9.31→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。