結論
アゴーラホスピタリティーグループは、大阪の守口と堺、東京の浅草と銀座にホテルを持ち、京都などでは他社のホテルの運営も請け負う会社だ。筆者の結論は割高である。訪日客の波に乗って黒字に戻ったが、自己資本利益率(ROE)が資本コストに届く道筋はまだ見えない。
2025年12月期は営業利益が10億円を超え、最終利益も債務の免除の益で13億円になった。ただ、2026年は大阪・関西万博の反動と中国からの訪日客の減少で、上半期は最終赤字に戻った。コロナの3年間は売上が半分に落ち、営業赤字が続いた。訪日客に頼る商売の振れの大きさは、すでに一度見せている。
株主の取り分を細らせる要因も多い。借入は手元の現金を50億円ほど上回り、堺のホテルを持つ子会社には外部の出資者が半分いる。筆者は10年後のROEを6〜7%とみる。今の値段は、その稼ぎに対して高い。
駅に近いホテルという資産の確かさは認めるが、配当も無く、その値打ちが株主に届く経路は細い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、アゴーラは「良い場所の建物を持つが、株主に届く稼ぎが細いホテル会社」だ。大阪と東京の駅に近いホテルは、なくならない資産だ。訪日客が来る限り、部屋は埋まる。
筆者がいちばん気にしているのは、株主の取り分の細さだ。営業利益が10億円あっても、借入の利払い、子会社の外部の出資者への分配、税を引くと、株主に残るのは3億円ほどだ。しかも配当は無く、大株主がその使い道を決める。
ホテルは償却の費用が物価で増えないので、宿泊の値段が上がれば会計の利益は膨らんで見える。だが、建物の改装は建築費の上昇で高くつき、現金は細る。帳簿の1.1倍という今の値段は、ROEが資本コストに届かない会社には高い。安全域は、運営の請け負いの手数料が利益の柱になる時か、配当が始まる時に考えたい。それまでは、建物の確かさが損を限る役目にとどまる。
何で稼ぐ会社か
アゴーラホスピタリティーグループは、ホテルの持ち主と運営者を兼ねる会社だ。売上は約100億円、従業員は530人ほどだ。売上の9割はホテルで、残りはマレーシアの霊園と証券への投資の事業から来る。
ホテルは2つの形で持つ。1つは自社で建物を持ち、子会社が運営する形だ。大阪のホテル アゴーラ大阪守口、堺のホテル アゴーラ リージェンシー大阪堺とドーセット バイ アゴーラ大阪堺、東京のアゴーラプレイス東京浅草とアゴーラ東京銀座がこれにあたる。建物は信託の受益権の形で持ち、運営の子会社に貸す。堺のリージェンシーは宴会と婚礼の売上も大きい。
もう1つは、他社のホテルの運営を請け負う形だ。京都の烏丸と四条、東京のTSUKIを運営し、売上に応じた手数料を受け取る。会社はこの形を増やし、5年で30のホテルを目指すと掲げた。建物を持たないので、資本は少なくて済む。
株主の構成も特徴だ。香港系とみられるファー・イースト・グローバル・アジアの2社が、合わせて4割強を持つ。配当は長く出していない。霊園は現地の通貨で稼ぐ小さな事業だ。
優良さと弱いところ
強みは、大阪と東京の駅に近い立地のホテルを自社で持つことだ。訪日客と出張の客が多い場所で、稼働率は8割前後と高い。建物を持つので、家賃の値上げに縛られず、宿泊の値段が上がればその分が利益に残る。
弱さは多い。第1に、ブランドの力が弱い。アゴーラの名前を指名して泊まる客は少なく、値段は予約のサイトでの競争で決まる。第2に、需要の振れが大きい。訪日客が止まったコロナの3年間は、売上が半分に落ちて赤字が続いた。中国との関係が冷えた2026年も、客が減った。第3に、株主の取り分が細い。借入の利払い、堺の子会社の外部の出資者への分配、税を引くと、営業利益の3割ほどしか残らない。
経営は運営の請け負いで資本を軽くする道を選んだ。方向は正しいが、まだ実績は小さい。堀、つまり他社がまねできない強みは、立地の良い数軒のホテルに限られる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のホテルの需要は、訪日客が引っ張っている。2025年の外国人の延べ宿泊者数は約1億7,800万人泊と過去最高を更新した。一方で、日本人の延べ宿泊者数は前の年より4%減った。ホテルの稼働率は全国で8割近くと高いが、需要の伸びは2025年の秋から鈍っている。
訪日客の国の構成は、ホテルの売上を大きく動かす。中国からの客は2026年に政治の関係で減り、大阪のホテルは特に影響を受けた。大阪・関西万博の特需も一巡した。東京と京都は欧米と東南アジアの客で底堅いが、大阪は中国と韓国の客への依存が高い。
供給も増えている。東京と大阪では新しいホテルの開業が続き、外資の高級ブランドから格安のビジネスホテルまで競争が激しい。人手の不足も深刻で、清掃と接客の人件費は物価より速く上がる。
筆者は、10年で訪日客の数は高い水準を保つが、伸びは鈍るとみる。アゴーラの自社のホテルは、運営の請け負いと新しい開業で客室を2割弱増やし、1泊の値段は物価並みに上がる筋を中立に置く。
運営の請け負いの市場は、ホテルの持ち主と運営者の分離が進むにつれて広がっている。
資本政策と M&A
還元は長く行っていない。2025年12月期も無配で、会社は利益をホテルの事業に回すと言う。新株予約権の行使に自己株を充てて資金を得た年もあり、株主に戻すより集める側にいる。
財務は借入に頼る。現金は約35億円あるが、借入はそれを50億円ほど上回る。自己資本比率は27%だ。2025年には子会社の債務の一部の免除を受け、11億円の特別利益を計上した。2025年11月には、継続企業の前提に関する重要な事象の記載を解消した。
株主の構成は偏っている。ファー・イースト・グローバル・アジアの2社が4割強を持ち、堺のホテルを持つ子会社には外部の出資者が半分いる。資本の使い方は大株主の意向で決まる。運営の請け負いでホテルを30に増やす計画は資本を軽くするが、株主への還元の方針はまだ示されていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
訪日客は長い目で増え続ける。日本は円安と治安と食で選ばれ、東京と京都は欧米と東南アジアの客で埋まる。アゴーラの浅草と銀座は、まさにその客が泊まる場所にある。2025年に営業利益は2倍になり、ホテルの利益率は15%を超えた。
会社は運営の請け負いでホテルを5年で30に増やすと掲げた。建物を持たずに手数料を取る形なら、資本はほとんど要らず、ROEは上がる。2026年には京都の二条城の近くに新しいホテルを開いた。
大阪の不振は一時的だ。万博の反動と中国からの客の減少は、いずれ戻る。大阪には統合型のリゾートの開業も控える。
ホテルは償却の費用が物価で増えないので、宿泊の値段が物価並みに上がるだけで利益率は少しずつ上がる。持っているホテルの土地と建物は、帳簿より高く売れる可能性がある。
大株主が4割強を持つので、長い目でホテルを増やす判断を外の声に左右されずに下せる。堺のリージェンシーの宴会と婚礼も、地元の需要に支えられて底堅い。
慎重な見方
訪日客に頼る商売は、外の出来事で一夜にして崩れる。コロナでは3年続けて営業赤字になり、2026年は中国との関係で大阪の客が減った。上半期の最終損益は赤字に戻り、会社は1年前に重要な事象の記載を外したばかりだ。
株主の取り分が細い。借入は現金を50億円ほど上回り、金利が上がれば利払いが増える。堺のホテルを持つ子会社には外部の出資者が半分いて、利益の一部はそちらに流れる。2025年の13億円の最終利益は債務の免除の益で膨らんだもので、2026年の会社の予想は2.5億円にすぎない。
供給も増える。東京と大阪では新しいホテルが次々に開き、清掃と接客の人手も足りない。ブランドの力が弱いホテルは、予約のサイトで値段を下げるしかない。
配当は無く、大株主が4割強を持つ。資本の使い方を外から変える手段は乏しい。
運営の請け負いの手数料は小さく、契約の更新で条件を下げられやすい。マレーシアの霊園は本業と関係が薄く、資本の分散にも見える。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。訪日客の長い伸びと運営の請け負いの計画は確かに追い風だが、需要の振れの大きさと、借入と外部の持分で株主の取り分が細い構造は変わらない。中立を最も厚くし、やや悲観と悲観を合わせて3割強に置いた。運営の請け負いの手数料が利益の柱になるか、配当が始まるかで見直す。大阪の不振が一時で終わるかどうかが、確率を寄せ直す最初の分かれ目になる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 25 円67 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2 円5 億円)。 今の値に割り戻すと 12 円32 億円、今との差 −50.4%、 期待の年率 +1.2%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 63 円168 億円 | 6 円15 億円 | +186.4% | +11.1% | 5 円13 億円 |
| やや楽観 | 20% | 43 円114 億円 | 4 円10 億円 | +93.6% | +6.8% | 9 円25 億円 |
| 中立 | 38% | 28 円75 億円 | 2 円5 億円 | +25.1% | +2.3% | 11 円30 億円 |
| やや悲観 | 23% | 5 円13 億円 | 1 円2 億円 | −76.0% | −13.3% | 1 円4 億円 |
| 悲観 | 12% | 2 円5 億円 | 0 円0 億円 | −92.2% | −22.5% | 0 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 25 円67 億円 | 2 円5 億円 | +12.8% | +1.2% | 27 円72 億円 |
今の株価時価総額 24 円64 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 訪日客が伸び続け、運営の請け負いでホテルが大きく増える 利益 14 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 63 円168 億円
訪日客の伸びと会社の計画が両方かなう筋書きだ。訪日客は欧米と東南アジアから増え続け、中国からの客も戻る。会社は運営の請け負いでホテルを30近くに増やし、自社で持つか借りる客室も1,400に増える。稼働率は8割強を保ち、1泊の値段は物価をやや上回って上がる。
償却の費用は建てた時の値段のまま増えないので、ホテルの利益率は17%に上がる。営業利益は30億円を超える。運営の手数料が資本の要らない利益を足し、ROEは11%台に上がって資本コストを上回る。
配当が始まり、借入は利益で少しずつ返す。大阪の統合型のリゾートの開業も、堺と守口のホテルの客を増やす。
- 宿泊(自社保有・自社運営のホテルと運営受託):数量 429(販売した客室の数(千室泊・推定))× 価格 49(1室泊あたりの売上(千円・宴会と料飲を含む))→ 売上 212 億円・営業利益 36 億円。1,400室×稼働84%×1室泊4.9万円(1.45倍)、17%。償却は約8億円
- その他投資(マレーシアの霊園・証券投資):数量 1,700(霊園の区画の販売数(区画・推定))× 価格 88(1区画あたりの売上(万円))→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。1,700区画×88万円
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.3% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.11 倍、時価総額 168 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:5年で30ホテルの計画の達成と、訪日客の伸びの持続の両方が要る。ホテルの利益率17%は2025年の15.6%を上回るので7%とした。
やや楽観 20% 大阪が戻り、新しいホテルで客室が3割増える 利益 10 億円 · PER 11.3 倍 · 株価時価総額 43 円114 億円
大阪の不振が一時で終わる筋書きだ。中国からの客は数年で戻り、大阪の統合型のリゾートの開業が堺と守口に客を呼ぶ。京都二条城の新しいホテルと、借りる形の新しいホテルで、自社の客室は1,200に増える。運営の請け負いも10軒を超える。
稼働率は8割強、1泊の値段は物価をやや上回る。償却の費用が物価で増えないので、ホテルの利益率は16%に上がり、営業利益は20億円を超える。利払いと外部の出資者への分配を引いても、純利益は10億円近くになる。
ROEは9%台で、資本コストにわずかに届かない。配当は小さく始まるが、借入はまだ重い。
- 宿泊(自社保有・自社運営のホテルと運営受託):数量 359(販売した客室の数(千室泊・推定))× 価格 48(1室泊あたりの売上(千円・宴会と料飲を含む))→ 売上 171 億円・営業利益 27 億円。1,200室×稼働82%×1室泊4.8万円(1.40倍)、16%。償却は約7.5億円
- その他投資(マレーシアの霊園・証券投資):数量 1,600(霊園の区画の販売数(区画・推定))× 価格 86(1区画あたりの売上(万円))→ 売上 14 億円・営業利益 2 億円。1,600区画×86万円
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.4% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.3 倍。全体の PER 11.31 倍、時価総額 112 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026年の大阪の不振は万博の反動と中国の客の減少という一時の要因が大きい。京都二条城の開業もあり、客室を増やして稼ぐ筋として20%とした。
中立 38% 訪日客は高い水準を保ち、客室を少し増やして稼ぐ 利益 6 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 28 円75 億円
訪日客が高い水準を保ち、ホテルが堅く稼ぐ筋書きだ。中国からの客は一部しか戻らないが、欧米と東南アジアの客が埋める。京都二条城の新しいホテルなどで自社の客室は1,050に増え、運営の請け負いも少しずつ増える。稼働率は8割、1泊の値段は物価並みに上がる。
人件費は物価より速く上がるが、償却の費用は建てた時の値段のまま増えない。ホテルの利益率は14.5%と今に近い水準を保ち、営業利益は15億円ほどになる。改装の費用は建築費の上昇で膨らみ、借入は減らない。
利払い、税、外部の出資者への分配を引き、純利益は6億円ほどだ。ROEは6〜7%で、資本コストに届かない。配当は小さく始めるかどうかにとどまる。
- 宿泊(自社保有・自社運営のホテルと運営受託):数量 307(販売した客室の数(千室泊・推定))× 価格 46(1室泊あたりの売上(千円・宴会と料飲を含む))→ 売上 140 億円・営業利益 20 億円。1,050室×稼働80%×1室泊4.6万円(物価並み1.34倍)、14.5%。償却は取得時の値段のままで改装分を足し約7億円
- その他投資(マレーシアの霊園・証券投資):数量 1,500(霊園の区画の販売数(区画・推定))× 価格 84(1区画あたりの売上(万円))→ 売上 13 億円・営業利益 2 億円。1,500区画×84万円(1.34倍)
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.1% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 70 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:訪日客の高い水準と、大阪の不振や新しいホテルの供給が打ち消し合う落としどころ。会社の2026年の予想を出発点に、客室を少し増やす筋として38%とした。
やや悲観 23% 中国の客が戻らず、新しいホテルとの競争で値段が伸びない 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 5 円13 億円
大阪の不振が長引く筋書きだ。中国との関係は冷えたままで、大阪の客は戻らない。東京と大阪では新しいホテルの開業が続き、予約のサイトでの値下げの競争が激しくなる。稼働率は7割強に下がり、1泊の値段は物価に届かない。
清掃と接客の人件費は物価より速く上がり、ホテルの利益率は9%に下がる。営業利益は3〜4億円にとどまり、利払いでほぼ消える。純利益はゼロに近い。
改装の投資も先送りされ、ホテルの魅力は少しずつ落ちる。株主の価値は、ホテルの建物を売って借入と外部の持分を返したあとの残りに近づく。配当を始める余地も無い。
- 宿泊(自社保有・自社運営のホテルと運営受託):数量 237(販売した客室の数(千室泊・推定))× 価格 41(1室泊あたりの売上(千円・宴会と料飲を含む))→ 売上 97 億円・営業利益 9 億円。900室×稼働72%×1室泊4.1万円(1.20倍、物価に届かない)、9%
- その他投資(マレーシアの霊園・証券投資):数量 1,300(霊園の区画の販売数(区画・推定))× 価格 75(1区画あたりの売上(万円))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。1,300区画×75万円
倍率:利益がほぼ無く稼ぐ力(純利益÷k ≒ 3億円)は床にならない。ホテルの建物と現金から借入と外部の持分などを引いた約18億円に戻り方0.5を掛けた約9億円を、今の自己資本56.1億円で割った0.16倍。
確率:2026年上半期は売上が16%減り、最終赤字に戻った。大阪の不振が長引き、東京と大阪の新しいホテルの供給が値段を抑える筋として23%とした。
悲観 12% 訪日客が急減し、コロナの時のような赤字が続く 利益 −9 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 2 円5 億円
訪日客が大きく減る筋書きだ。近隣の国との関係の悪化や感染症、日本への旅の人気の衰えで、外国人の客は今の半分近くに落ちる。日本人の客も人口とともに細る。稼働率は6割強に下がり、1泊の値段も物価に届かない。
ホテルは人件費と固定の費用を賄えず、営業赤字が続く。借入の利払いが重なり、最終赤字は年に数億円になる。大株主の追加の出資か、ホテルの売却で借入を返すしかない。
株主に残るのは、ホテルを売り、借入と外部の持分を返したあとのわずかな残りだ。増資で既存の株主の取り分も薄まる。霊園の事業も現地の景気に引きずられる。
- 宿泊(自社保有・自社運営のホテルと運営受託):数量 181(販売した客室の数(千室泊・推定))× 価格 38(1室泊あたりの売上(千円・宴会と料飲を含む))→ 売上 69 億円・営業利益 −2 億円。800室×稼働62%×1室泊3.8万円(1.11倍)、赤字
- その他投資(マレーシアの霊園・証券投資):数量 1,000(霊園の区画の販売数(区画・推定))× 価格 70(1区画あたりの売上(万円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。1,000区画、損益ゼロ
倍率:赤字で稼ぐ力は床にならない。ホテルを売り急いで借入と外部の持分を返した残りの約10億円に戻り方0.5を掛けた約5億円を、今の自己資本56.1億円で割った0.089倍。
確率:2020〜23年に4年続けて赤字を出し、2026年も外の出来事で客が減った。訪日客が構造的に細る筋として12%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
宿泊(自社保有・自社運営のホテルと運営受託)
大阪守口・堺(2軒)・東京浅草・東京銀座の自社保有ホテルの運営と、京都など他社ホテルの運営受託。宴会・婚礼・料飲を含む。
| 数量販売した客室の数(千室泊・推定) | 価格1室泊あたりの売上(千円・宴会と料飲を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 263 | 34 | 90 | 14 |
| 10 年後 中立 | 307 | 46 | 140 | 20 |
取り方:客室数の開示が無いため推定。自社のホテル約900室×365日×稼働率8割で約26万3千室泊。セグメントの売上89.62億円を割った1室泊あたり約3万4千円(宴会と料飲を含む)。利益はセグメント利益13.95億円。償却は推定で年約6億円。
その他投資(マレーシアの霊園・証券投資)
マレーシアの霊園の区画の販売と管理、証券投資。
| 数量霊園の区画の販売数(区画・推定) | 価格1区画あたりの売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,500 | 63 | 9 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1,500 | 84 | 13 | 2 |
取り方:区画数の開示が無いため推定。売上9.46億円を、1区画あたり約63万円とみて約1,500区画。利益はセグメント利益1.37億円。
リスクと懸念
訪日客の急減
売上の多くは訪日客に頼る。コロナでは3年続けて営業赤字になり、2026年は中国との関係で大阪の客が減った。外の出来事で需要が一夜にして消えうる。
借入と金利の上昇
借入は現金を50億円ほど上回る。金利が上がれば利払いが増え、改装の投資も建築費の上昇で膨らむ。薄い最終利益はすぐに削られる。
外部の持分と大株主
堺のホテルを持つ子会社には外部の出資者が約半分いて、利益の一部がそちらに流れる。ファー・イースト・グローバル・アジアの2社が4割強を持ち、資本の使い方は大株主の意向で決まる。
新しいホテルの供給と人手の不足
東京と大阪では新しいホテルの開業が続き、予約のサイトでの値下げの競争が激しい。清掃と接客の人手も足りず、人件費は物価より速く上がる。
運営の請け負いの計画
5年で30ホテルの計画は、良い条件の運営の契約を取れるかにかかる。手数料の利益は小さく、契約の解除も起こりうる。
今後の分かれ目
- 中国からの訪日客が戻り、大阪のホテルの売上が前の年を上回ったら
- 2026年の不振が一時のものだった証拠として、やや楽観の確率を上げる。
- 運営の請け負いのホテルが15を超え、手数料が利益の2割を超えたら
- 資本の軽い利益が育った証拠として、中立の倍率とROEの見通しを引き上げる。
- 配当を始めるか、自社株買いを行ったら
- 利益が株主に戻る証拠として、戻り方を引き上げる。
- 営業赤字に戻ったら
- 訪日客に頼る構造の弱さが出たとみて、やや悲観に重みを移す。
- 大株主がホテルの売却や非公開化に動いたら
- ホテルの土地と建物に値段が付く場面として、時価総額の見方を見直す。
見ておくもの
- 訪日客の数と国の構成(特に中国)
- 大阪のホテルの稼働率と1泊の値段
- 運営の請け負いのホテルの数
- 借入の額と支払利息
- 配当の再開
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価やPBRを見ずに、ROEとk 9%から決めた。中立のROEは6〜7%で資本コストを下回るので、PERは1÷kの10.5倍の7.5割に置いた。中立の営業利益率は11%で、2025年の10.7%と2006年の11.7%の間。ホテルの償却は物価で増やさず、改装の分だけ新しい値段で足した。純利益の起点は債務の免除益を除いた会社の予想に置いた。新リース会計基準で借りているホテルの家賃が負債に載ると純負債はさらに大きく見えるが、10年後の数字は今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.1→12.11 倍・やや楽観 PER 8.95→11.31 倍・中立 PER 7.9→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。