結論
ウエスコホールディングスは、岡山を地盤とする建設コンサルタントだ。橋の点検、河川、防災の設計で官公庁から稼ぐ。水族館とスポーツ施設の運営も持つ。売上の約86%は建設コンサルだ。
結論から言う。筆者は、10年後の本質価値は今の時価総額117億円とほぼ同じ水準と見る。下値を支えているのは事業ではなく現金だ。純現金は96億円あり、時価総額の8割に達する。ただ、事業の稼ぎが資本コストに届かず、現金が戻るのも遅いため、割安とまでは言えない。
事業の稼ぎは大きくない。営業利益率は6%台で、ROEは5%前後にとどまる。それでも会社は配当を12期連続で減らさず、自社株の買い入れと消却も進めている。
弱みは、現金が株主に戻る速さだ。資本が余っていても、使い道は決まっていない。筆者は、事業を割り引きつつ、現金を丁寧に見る立場を取る。
事業の価値は50億〜90億円、現金の価値は戻り方しだいで50億〜70億円。足すと今の時価総額に近い。市場は、現金の厚さと事業の低い稼ぎを、ほぼ妥当に織り込んでいる。
逆に、現金が戻らなければ、この差は埋まらない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は事業よりも現金を買う対象だ。純現金が時価総額の8割を占めるので、事業は2割の値段で買える計算になる。
事業の質は並だ。株主に残る利益、つまりオーナー利益は、営業利益の11億円ほどから税を引いた7億円前後。そこへ現金の利息が加わる。資本コスト7%で割れば、事業の価値は50億〜90億円にとどまる。
現金96億円のうち、戻り方を掛けた分が株主に届くと見れば、合計は今の時価総額に近い。鍵は、戻り方だ。配当性向は4割から6割へ上がり、自社株買いも始まった。経営が資本を余らせない方向に動いている点は評価できる。
安全域は厚い。事業が悲観の筋書きに落ちても、現金が価値を支える。筆者は、戻り方を0.75と置いて、慎重に見る。
配当を増やし、自社株を消却する姿勢は、オーナーの目で見て好ましい。ただ、現金を溜め続けた過去の歴史が長く、方針が変わったと確かめるには、数年の実績が要る。
何で稼ぐ会社か
事業は4つに分かれるが、中心は総合建設コンサルタント事業だ。2025年7月期の売上は138億円で、全体の86%を占める。営業利益は11億円。橋の点検、河川、防災・減災の設計が主力で、国や自治体が顧客だ。能登半島の災害関連の業務も増収に寄与した。
もう1つの柱が水族館の運営で、売上は12.5億円、営業利益は0.9億円。スポーツ施設の運営が7.6億円と、その他が2.7億円で続く。水族館は2026年に新施設が開業し、2026年7月期は売上が伸びた。
2014年に持株会社に移り、連結子会社は7社。第一次中期経営計画(2024年7月期〜2026年7月期)では、人材・技術・市場の3戦略を掲げ、関東と九州の受注拡大を重点にした。
2026年7月期の売上は170億円で5.5%増、営業利益は10.3億円、純利益は9.5億円。2027年7月期は売上172億円、営業利益10.9億円の計画だ。
収益の形は、年度契約の受託と、数年かけて積み上がる設計業務だ。受注は上期に集まり、売上は年度の後半に偏る。繰越の受注残が売上の半年分あるため、翌期の売上は見通しやすい。水族館は入場料と物販で稼ぐ、人口と天候に左右されやすい事業だ。
優良さと弱いところ
強みは、防災と橋梁点検での官公庁との取引と、豊富な繰越受注残だ。2026年7月期の計画では、受注残が78億円あり、売上の半年分に近い。
ただ、堀、つまり他社がまねできない強みは普通の水準と見る。入札で決まる仕事が多く、価格を自分で決めにくい。水族館とスポーツ施設は、建設コンサルと関係の薄い事業で、収益力も低い。
資本効率は低い。ROEは過去10年の中央値で5%、営業利益率は6%前後で動かない。自己資本は163億円と大きく、そのうち純現金が96億円と多い。資本を事業に使い切れていない。
財務は極めて堅い。自己資本比率は76%、有利子負債はない。経営は還元を強める方向で、配当性向40%を目安とし、自社株買いと消却を重ねている。株主優待は廃止した。
唯一の長所は財務の余裕で、不況でも技術者を抱え続けられる。それが採用難の中で、人を確保する力になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
公共の建設コンサルは、国の予算で動く。国土強靱化の実施中期計画が2026年度から5年間続き、橋、河川、砂防、上下水道の老朽化対策が設計の需要を生む。能登半島地震の復旧のような災害対応も、設計の量を押し上げる。
数量は技術者の数が天井で、実質では横ばいに近い。単価は予定価格で縛られ、人件費の上昇を転嫁するのに時間がかかる。ウエスコの営業利益率が6%台で動かないのは、そのためだ。
変化の中心は、AIによる設計の自動化だ。作図、数量計算、積算は工数型の仕事で、AIが得意とする。技術士の署名が要る設計は残るが、発注側は工数の減った分を値下げとして求める。
水族館とスポーツ施設は、人口減と余暇の消費に左右される。新施設の効果は数年で薄れる。
同業は、日本工営、建設技術研究所、パシフィックコンサルタンツなどだ。中堅のウエスコは、地方の官公庁に強みを持つ。業界の分かれ目は、技術者を採れるかと、AIで空いた工数を新しい案件に回せるかにある。
気象の激甚化も、河川や砂防の設計を増やす。九州と関東への展開は、豪雨災害の多い地域への受注拡大という意味でも筋が通っている。
資本政策と M&A
還元は強まっている。配当は12期連続で減らさず、2027年7月期は前期から大きく増やす予定で、性向は6割を超える。自己株式は、2024年12月に60万株ほどを取得して消却した。2025年9月からも、上限4.7億円の市場買付けを実施した。2024年7月期の総還元性向は84%に達した。
純現金は96億円。有利子負債は無く、自己資本比率は76%だ。この現金は、受託業務の前受金や賞与の支払いに回る分を除いても、時価総額の半分を超える。
政策保有株は2銘柄のみで、段階的に縮減する方針。不動産の売却益も2026年7月期に出た。
大株主は個人が上位に並び、公益財団法人ウエスコ学術振興財団が11%、光通信が5%弱を持つ。支配株主はいない。TOBの可能性は低くないが、現金の厚さが買い手の資金を軽くするため、一定の確率はあると見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
時価総額117億円に対し、純現金が96億円ある。事業はほぼ無料で付いてくる計算だ。会社は配当を12期連続で減らさず、2027年7月期は大幅に増やす。自社株買いと消却も、2024年12月と2025年9月以降の2回実施した。株主優待を廃止してまで、現金での還元に切り替えている。建設コンサルの受注残は78億円と半年分あり、来期の売上を支える。水族館の新施設も黒字を支える。国土強靱化の予算は2030年度まで続き、防災の設計は止められない。現金が株主に戻り続ければ、1株の価値は年率で積み上がる。資本コストを超えない事業でも、現金の価値は変わらない。経営は株主優待を廃止してまで、配当と自社株買いに軸足を移した。資本の使い方を改める意思が見える。持株会社の下で、事業会社の再編も進めてきた。コストの重複が減れば、利益率は少しずつ上がる。技術者の若返りにも投資しており、40歳以下の管理技術者を増やす目標を掲げている。
慎重な見方
現金は96億円あるが、すべてが株主のものとは限らない。受託業務の前受金や賞与、未払の支払いに回る分を除かなければならない。事業の稼ぎはROE5%と資本コストに届かず、現金を事業に置いたままでは価値が減る。水族館とスポーツ施設は、本業と関係が薄く、資本を食う。経営は現金を戻すと言うが、過去10年で純現金は60億円から96億円へ増えた。戻り方は遅い。AIによる設計の自動化は単価を押し下げ、官公庁は工数の減った分を値下げとして求める。時価総額が低いのは、市場がこの資本の使い方を評価していないからだ。不動産の売却益は一度きりで、2027年7月期の純利益は減る見通しだ。事業の稼ぎそのものは伸びていない。公共の建設コンサルは、どの会社も似た仕事を請け、入札で価格が決まる。差別化できない仕事で、現金の戻り方だけが頼りの株は、期待が外れると下がりやすい。さらに、持株会社の下にある水族館とスポーツ施設は、公共の建設コンサルとシナジーが乏しい。
どちらに重みを置いたか
現金の厚さは確かだが、戻り方が遅い実績が残る。配当と自社株買いが強まる流れは事実なので、戻り方は0.75とした。事業はROEが資本コストを下回り、倍率は式の上限に置いた。確率は悲観側を3割半に寄せた。現金を戻す流れが続けば、慎重な見方でも下値は固いと見る。楽観の見方は現金の価値を強調するが、戻り方の実績はまだ短い。数字が示すのは、現金のうち半分強が株主に届く姿だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/07 期)
確率で加重した株価時価総額 1,314 円170 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 422 円55 億円)。 今の値に割り戻すと 969 円126 億円、今との差 +9.6%、 期待の年率 +7.0%(資本コスト 7.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 1,860 円241 億円 | 579 円75 億円 | +175.9% | +10.7% | 171 円22 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,640 円213 億円 | 509 円66 億円 | +143.1% | +9.3% | 430 円56 億円 |
| 中立 | 38% | 1,543 円200 億円 | 455 円59 億円 | +126.0% | +8.5% | 759 円98 億円 |
| やや悲観 | 24% | 944 円122 億円 | 339 円44 億円 | +45.2% | +3.8% | 308 円40 億円 |
| 悲観 | 11% | 393 円51 億円 | 231 円30 億円 | −29.3% | −3.4% | 69 円9 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,314 円170 億円 | 422 円55 億円 | +96.4% | +7.0% | 1,736 円225 億円 |
今の株価時価総額 884 円115 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 防災の受注が関東・九州に広がり、現金も株主に戻る 利益 14 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 1,860 円241 億円
国土強靱化の予算を追い風に、橋梁点検、河川・砂防、防災の設計が増える。会社が重点にしている関東と九州の受注が定着し、建設コンサルの人員は1割増える。水族館は新施設の効果が続き、来館者が伸びる。AIによる作図の自動化は事務部分の工数を減らすが、減った分は案件の増加に回る。営業利益は19億円ほどで、営業利益率は7.6%。利益が増えても現金は余り、配当は性向6割を超える。自社株買いの消却が進み、1株あたりの価値は増える。現金の使い道も、買収より還元が優先される。民間や電力など、官公庁以外の受注も少しずつ広がる。
- 総合建設コンサルタント事業:数量 770(技術者・稼働人員(人、推定))× 価格 2,799(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 216 億円・営業利益 19 億円。人員 1.10 倍・単価 1.34 倍・営業利益率 9.0%
- 水族館・スポーツ施設・その他:数量 132(来場・会員の延べ人数(万人、推定))× 価格 2,714(1人あたり売上(円))→ 売上 36 億円・営業利益 3 億円。来場 1.10 倍・単価 1.34 倍・営業利益率 8%
倍率:ROE 7.1%。ROE が k 7% に届かず、PER の上限は 1÷k = 14.26 倍。堀は普通で、g は名目 0% まで。上限いっぱいに置いた。
確率:防災・減災の予算と関東・九州への展開がそろう筋書き。ただ営業利益率は過去の山9.4%に届かない7.6%で止め、現金も戻り方1.0までは置かない。確率は7%。
やや楽観 20% 建設コンサルが堅調に伸び、水族館も黒字を保つ 利益 12 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 1,640 円213 億円
能登の災害復旧や防災関連の仕事が続き、受注残が積み上がる。建設コンサルの人員は4%増え、単価は物価に少し届かず1.32倍。営業利益率は7.2%まで改善する。水族館とスポーツ施設は横ばいで、黒字を保つ。配当は性向6割ほどを維持し、自社株買いも続く。現金は余ったまま、時価総額に反映される。設計の誤りやガバナンスの問題は見当たらず、品質も安定している。自社株買いと増配が続き、現金は少しずつ株主に戻る。水族館は新施設の効果で黒字を保つ。受注残が積み上がり、翌期の売上が見通しやすくなる。技術者の採用が追いつけば、売上はさらに伸びる。
- 総合建設コンサルタント事業:数量 728(技術者・稼働人員(人、推定))× 価格 2,757(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 201 億円・営業利益 17 億円。人員 1.04 倍・単価 1.32 倍・営業利益率 8.4%
- 水族館・スポーツ施設・その他:数量 120(来場・会員の延べ人数(万人、推定))× 価格 2,673(1人あたり売上(円))→ 売上 32 億円・営業利益 2 億円。来場 1.00 倍・単価 1.32 倍・営業利益率 7%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.3% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.6%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)49 億円。全体の PER 14.29 倍、時価総額 212 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注残は潤沢で、中期計画の営業利益10.5億円を2026年7月期に上回って着地した。足元の勢いが続く筋書きとして20%。
中立 38% 公共の仕事は堅く、利益率は今の水準。現金が時価総額を支える 利益 11 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 1,543 円200 億円
国と自治体の橋梁点検、河川、防災の設計は堅く、建設コンサルの人員は横ばい。単価は人件費の上昇を転嫁しきれず、10年で1.30倍。営業利益率は6.3%と、直近の6.1〜6.2%とほぼ同じで、売上は約220億円。水族館は来館者が少し減り、スポーツ施設は会員の減少を単価で補う。AIは作図の工数を減らすが、予定価格が下がる分、利益率は上がらない。配当は性向6割ほどで、残りの現金は積み上がる。配当を性向6割ほどに保つが、残りの現金は積み上がる。水族館は新施設の効果が薄れ、横ばいから微減に向かう。国の予算が続くかぎり、橋の点検後の補修設計や防災の更新が着実に積み上がる。
- 総合建設コンサルタント事業:数量 700(技術者・稼働人員(人、推定))× 価格 2,716(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 190 億円・営業利益 15 億円。人員 1.00 倍・単価 1.30 倍・営業利益率 8.0%
- 水族館・スポーツ施設・その他:数量 114(来場・会員の延べ人数(万人、推定))× 価格 2,633(1人あたり売上(円))→ 売上 30 億円・営業利益 2 億円。来場 0.95 倍・単価 1.30 倍・営業利益率 6.5%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.4%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)49 億円。全体の PER 14.29 倍、時価総額 194 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量は技術者の数で横ばい、単価は物価に少し届かない1.30倍。利益率は直近の6%台とほぼ同じ。事業の価値より現金の価値が大きい構造を、そのまま中立に置いた。
やや悲観 24% 受注が細り、水族館も振るわず、利益率が下がる 利益 7 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 944 円122 億円
公共予算の抑制と、AIによる作図の自動化に伴う値下げ要求が重なる。建設コンサルの人員は7%減り、単価は物価に届かず1.25倍。営業利益率は4%台に下がる。水族館は来館者の減少で赤字に近づく。現金は積み上がらず、配当は性向を保つが額は減る。人件費の上昇を転嫁できず、利益率は下がり続ける。技術者の採用も難航し、売上の伸びが止まる。水族館の来場者も新施設の効果が薄れて減り、固定費が重くのしかかる。純現金は減らないが、配当の額は利益に合わせて減る。水族館の赤字が続き、撤退の判断を迫られる。能登のような大型の復旧需要が一巡し、受注の勢いは落ちる。
- 総合建設コンサルタント事業:数量 651(技術者・稼働人員(人、推定))× 価格 2,611(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 170 億円・営業利益 10 億円。人員 0.93 倍・単価 1.25 倍・営業利益率 6.0%
- 水族館・スポーツ施設・その他:数量 102(来場・会員の延べ人数(万人、推定))× 価格 2,430(1人あたり売上(円))→ 売上 25 億円・営業利益 1 億円。来場 0.85 倍・単価 1.20 倍・営業利益率 3%
倍率:ROE 3.4%。ROE が k 7% を下回る稼ぎで、1÷k = 12.9 倍の下に置いた。余った現金は 0.75 倍の約 49 億円に戻り方 0.75。
確率:官公庁の発注は予算の増減に左右される。強靱化の予算が縮み、水族館が不振になる筋書きとして24%。
悲観 11% 公共の受注が構造的に細り、現金だけが残る 利益 2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 393 円51 億円
AIが設計と積算を自動化し、発注側が内製と値下げに動く。建設コンサルの人員は3割減り、単価は物価に届かず1.12倍。水族館とスポーツ施設は赤字で撤退する。営業利益率は1%台で、会社は人員を絞って現金を守る。それでも純現金は残り、配当も減らして維持される。床は現金で作られる。AIが設計の自動化を進め、発注側は内製と値下げに動く。会社は事業の縮小を迫られ、水族館とスポーツ施設の撤退で一時的な損失が出る。それでも、官公庁との取引が全く消えるわけではない。会社は小さな設計会社として残り、現金が価値の中心になる。優秀な技術者から先に離れ、残った事業は許認可と地元の関係に頼る形になる。
- 総合建設コンサルタント事業:数量 490(技術者・稼働人員(人、推定))× 価格 2,340(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 115 億円・営業利益 4 億円。人員 0.70 倍・単価 1.12 倍・営業利益率 3.5%
- 水族館・スポーツ施設・その他:数量 72.0(来場・会員の延べ人数(万人、推定))× 価格 2,228(1人あたり売上(円))→ 売上 16 億円・営業利益 0 億円。来場 0.60 倍・単価 1.10 倍・営業利益率 0%
倍率:稼ぎはほぼ無く、現金を戻り方で見た床を今の自己資本に掛けた形で置いた。
確率:公共予算の抑制、AIによる設計の自動化、水族館の閉鎖が重なる構造的な負け。公共の建設コンサルは落ち込みが浅いので、悲観は11%にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
総合建設コンサルタント事業
橋梁点検、河川・砂防、防災・減災、環境、地質などの調査と設計。官公庁が中心。
| 数量技術者・稼働人員(人、推定) | 価格1人あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 700 | 2,089 | 146 | 11 |
| 10 年後 中立 | 700 | 2,716 | 190 | 15 |
取り方:2025年7月期の建設コンサル売上は138.4億円(前期比+4.7%)、営業利益は10.9億円。2026年7月期は連結売上170億円のうち水族館・スポーツ・その他を約24億円と置き、残り146億円を建設コンサルとした。人員は推定(従業員数は資料にない)。許認可の型で AI エージェント代替は事務部分に限り、中立は人員1.0倍・単価1.30倍に置いた。
水族館・スポーツ施設・その他
水族館の運営、スポーツ施設の運営、その他。
| 数量来場・会員の延べ人数(万人、推定) | 価格1人あたり売上(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 120 | 2,025 | 24 | 2 |
| 10 年後 中立 | 114 | 2,633 | 30 | 2 |
取り方:2025年7月期は水族館12.5億円・スポーツ7.6億円・その他2.7億円。2026年7月期は新施設で水族館が伸びたとして合計24.3億円と推定。営業利益は2025年7月期の合計1.2億円から1.5億円と推定。人口減と余暇消費で中立の来場は0.95倍、単価は1.30倍。
リスクと懸念
現金の戻りが遅い
純現金は10年で60億円から96億円へ増えた。配当と自社株買いが強まったが、戻し方が遅ければ、現金は事業の低い収益に置かれたままになる。
設計の自動化(AI エージェント代替)
作図、数量計算、積算は工数型の仕事で、AI が得意とする。発注側が工数の減った分を値下げとして求めれば、単価が物価に届かない。
公共予算の抑制
受注の大半が官公庁に依存する。強靱化の予算が縮めば数量が減り、入札の競争も強まる。
水族館とスポーツ施設の収益
来場者は新施設の効果が薄れれば減る。2025年7月期は水族館の売上が13%減った。利益は小さく、赤字になれば撤退の判断が要る。
技術者の採用難
数量の天井は技術者の数だ。採用と定着が滞れば売上が伸びない。若手管理技術者の育成が会社の課題になっている。
現金の使い道の失敗
現金が余る会社は、収益の低い買収や投資に使いがちだ。大型の買収は、資本コストを下回る使い方になりかねない。
今後の分かれ目
- 総還元性向が8割を超えて定着する
- 現金が株主に戻る確証になり、戻り方を1.0に引き上げる根拠になる。
- 純現金が100億円を超えて増え続ける
- 還元より蓄積が上回る証拠で、戻り方を0.5に近づける。
- 2027年7月期以降に営業利益率が7%を超えて定着する
- 受注の増加が利益に出た証拠で、やや楽観の筋書きに近づく。
- 水族館事業を売却または閉鎖する
- 資本の余りが減り、事業の稼ぎに集中できる。経営の資本の使い方が改まる。
- AIを使った設計サービスが売上として開示される
- 工数に頼らない稼ぎが育った証拠で、楽観の確率が上がる。
見ておくもの
- 総還元性向と自社株買いの実施
- 純現金の水準
- 受注残と受注高
- 営業利益率(6%台を抜けるか)
- 水族館・スポーツ施設の損益
- 技術者の採用数
倍率と資本コストの決め方
倍率は正当化 PER の式から出した。ROE が資本コストに届かないので 1÷k を上限に置き、事業の純利益に掛けた。現金は別に戻り方で足し、時価総額から現金を引いた事業の部分を見た。今の株価や過去の PER、同業の値付けは使っていない。2026年7月期の純利益は不動産売却益で押し上げられたため、会社予想の純利益を起点にした。AI エージェント代替は、数量・単価と k の寿命に入れ、確率や g には重ねていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.9→14.26 倍・やや楽観 PER 12.7→14.29 倍・中立 PER 12.5→14.29 倍・やや悲観 PER 11.5→12.75 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。