結論
アイ・ケイ・ケイは、地方都市と首都圏でゲストハウス型の結婚式場を営む会社だ。婚礼が売上の9割を占め、写真、介護、食品も手がける。筆者の結論は割高である。10年で測った価値は、今の時価総額のおよそ半分にとどまる。
結婚式の件数は、日本の婚姻数の減少と、挙式をしない夫婦の増加で細っていく。それでも同社は、1組あたりの単価を毎年引き上げ、2025年10月期の単価は過去最高だった。件数は8%減ったが、利益は大きくは崩れなかった。
目を引くのは、2025年10月期の純利益20億円だ。繰延税金資産の増加という一回きりの押し上げが含まれ、ならすと13億円ほどになる。今期の会社予想は営業利益12億円と、前期から3分の1減る。新しい式場の開業準備に費用が先行するためだ。
中立の10年後は、売上約320億円、営業利益約26億円、純利益約18億円と置く。新店の稼働で件数は下げ止まるが、市場の縮小は止められない。倍率は11倍強。余った現金は前受金と投資の事情で分けていない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、事業としては悪くないが、長く持ちたい会社ではない。結婚式は人生の節目の需要で、なくならないが、件数は構造的に減る。この種の市場で価格を上げ続けるのは、客数の減少が止まらない限り限界がある。
資本の使い方は無理がない。借入が少なく、自己資本比率は58%。配当も利益の範囲内に収めようとしている。ただ、今期の配当は利益と同じ水準で、投資が続く間は余力が減る。新しい式場やホテルの投資が実を結ぶかを見る必要がある。
安全域の面では、2025年10月期の純利益は税効果で膨らんでいる。実力の13億円前後で見ると、今の値段は17倍台だ。市場の縮小を考えれば、この倍率に見合う成長は期待しにくい。
経営の資本配分は堅実で、無理な買収はしていない。ただし、事業が縮む市場では、利益を内部に残しても新しい稼ぎにつながりにくい。配当を厚く出すか、新規事業に賭けるかの判断が、今後の評価を分ける。
何で稼ぐ会社か
事業の柱は婚礼だ。2025年10月期の売上は208億円で、全体の9割を占める。国内に約20の式場を持ち、1組あたりの単価は411万円。1年で4,930組の挙式を行った。式場は貸し切りのゲストハウス形式で、料理、衣装、写真を自社で一体で提供する。
婚礼以外では、写真(スタジオ)、介護(有料老人ホーム)、食品(スイーツの製造販売)がある。フォト事業は、新宿に3店目を2025年11月に開き、売上は9億円と前期から3割強伸びた。介護は売上7億円、食品は5億円と小さい。
成長策は、首都圏と福岡の新しい式場だ。東京第2・福岡第2の開業を2026年冬に予定する。今期は新規出店がなく、先に仮のサロンで受注を取り、来期から施行、再来期にフル稼働となる。海外人財事業の子会社(2025年10月設立、2026年4月営業開始予定)や、ホテルの土地取得も進む。婚礼の縮小を別の収入で補う狙いだ。
人手が要る事業で、挙式の当日は式場のスタッフが多数動く。賃金の上昇がそのまま利益に響く。
収益の山は挙式の件数と単価の掛け算だ。受注から施行まで半年以上かかるため、受注残4,544組(2025年10月末)が翌年の売上の先行指標になる。
優良さと弱いところ
婚礼は地域ごとの強い式場が収益を支えるが、全国で通用する堀とは言いにくい。他社が真似できないのは、地方都市での立地と、料理・衣装・写真を自社で一貫して提供する運営力にとどまる。価格は上げてきたが、客数の減少を止める力はない。
数字の質は良い。10年の自己資本利益率の中央値は12.8%で、自己資本比率は58%、純現金は29億円。コロナ禍の2020年10月期は営業赤字40億円を出したが、回復も早かった。財務の体力は同じ領域の他社より厚い。
弱みは3つある。第1に、市場の縮小。第2に、固定費の重い式場運営。件数が減ると、人件費と設備費が重くのしかかる。第3に、2025年10月期の純利益は税効果で見かけが良く、今期予想の純利益は7億円まで落ちる。実力は13億円前後と見たほうがよい。経営は金子和斗志氏が会長CEO、中嶋大祐氏が社長COOに就く2名代表制へ移った(2026年1月の総会で決定予定と報じられた)。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
結婚式の市場は、人口の縮小で長く細っていく。婚姻数は2023年に47万件台まで落ち、挙式をしない夫婦、写真だけの『フォト婚』が増えている。矢野経済研究所は、婚姻の減少以上に挙式実施率の低下を業界が危惧していると指摘する。挙式の総額の平均は2024年で344万円と上がっており、来る客は少なくても1組あたりの金額は大きい。
競合は、大手のゲストハウス運営会社(ツカダ・グローバルホールディング、ワタベウェディング)、ホテル、結婚式場専業の中堅に分かれる。地方では地元の老舗との競争になる。アイ・ケイ・ケイは地方都市のゲストハウスで強く、首都圏の新店で都市の需要を取りにいく。
景気の谷では、婚礼は延期や縮小に傾く。コロナ禍では売上が半分以下になった。感染症のような一度きりの要因を除いても、賃金と原材料の上昇、客の自己負担の増加で、式の規模は小さくなる流れが続く。AIや電子化の影響は小さいが、SNSの口コミと予約サイトの掲載競争が、集客費用を押し上げている。
M&Aでは、業界の再編が進み、小規模な式場の売却が増えている。同社が買う側にも買われる側にもなりうる。
資本政策と M&A
配当は『業績に応じて』が方針で、2026年10月期の予想は総額約7億円。今期の純利益予想に近く、配当性向は96%と高い。会社は、新店の開業費用がかさむ一時的な事情と説明する。利益が戻れば、性向は下がる見通しだ。自社株買いの実績は確かめられなかった。
株主優待もある。100株以上を1年以上持つ株主に、菓子・ギフト・食事券を贈る。費用は確かめられなかったが、原価ベースで年1億円を大きく超えない規模と推定し、10年の還元には足していない。
投資は今期5.8億円と小さいが、新店の準備費用は営業費用に出る。ホテル事業の土地取得が複数進み、数年後の開業を見込む。この投資額は未開示で、純現金29億円の使い道として大きくなる可能性がある。
婚礼会場の土地・建物の一部は賃借で、家賃は固定の約束だ。新リース会計基準(2028年10月期から)で貸借対照表に載るが、数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)にそろえた。TOB(株式公開買付け)の確率は、外部の推計で10年に17.7%。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
同社は挙式の件数が8%減った2025年10月期でも、営業利益を18億円確保した。単価は過去最高で、受注は前年同期比1.4%増。2026年10月期の中間決算は、売上が5%増、営業利益が60%増と予想を上回り、婚礼の施行組数と単価がともに増えた。
新店の東京第2と福岡第2が2026年冬に開業し、仮サロンでの受注が先に積み上がる。2027年10月期からの施行と翌年のフル稼働で、組数は反転する可能性が高い。フォト事業は新宿の3店目が加わり、介護と食品も黒字化した。
純現金は29億円、自己資本比率は58%。ホテル事業と海外人財事業という新しい柱が育てば、婚礼の縮小を補える。今期の営業利益12億円は会社の保守的な予想で、実際はもっと上振れるとみる。
さらに、挙式を『やる』と決めた夫婦は、一生に一度の場として質を求める傾向が強まっている。件数が減っても、単価の高い会場が選ばれる流れは同社に有利だ。
介護と食品の黒字化も、本業以外の収入源が育ち始めた証拠だ。
慎重な見方
婚姻数は2023年に47万件台まで落ち、これからも毎年減る。挙式をしない夫婦は増え続け、式場の稼働率は下がる。同社の組数は2025年10月期に8%減り、計画も3.8%下回った。単価の引き上げも限界が近く、客の自己負担は161万円を超えている。
利益は薄くなりつつある。2025年10月期の営業利益は27%減り、今期予想は更に3分の1減る。人件費の上昇が続き、新店の償却と開業費用が重い。2025年10月期の純利益は税効果で見かけがよいが、実力は13億円前後だ。
新規事業は規模が小さく、婚礼の穴を埋めるにはほど遠い。ホテル事業は土地取得の段階で、投資額が膨らむ恐れもある。景気の谷や感染症が再び来れば、固定費の重さが赤字に直結する。
さらに、大手のゲストハウス運営会社やホテルとの競争が首都圏で激しく、新店が計画どおりに組数を稼げる保証はない。広告費や紹介サイトの手数料も上がり、利益率を削る。
配当性向が96%に及ぶ現状は、投資と還元の両立に余裕がないことを示す。
どちらに重みを置いたか
事業の足元は強いが、市場の縮小という長期の流れには慎重な見方が上回る。新店が組数を支えても、10年の中立は今の水準を大きくは超えない。中立を軸に、悲観側にやや厚く確率を置いた。2025年10月期の純利益が一回きりの押し上げを含む点も、慎重な見方を支える。確率は中立に最も厚く、悲観側にやや寄せた。婚姻数という外部の要因は会社の努力では変えられず、足元の好調を10年に延ばすのは危うい。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/10 期)
確率で加重した株価時価総額 671 円199 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 262 円78 億円)。 今の値に割り戻すと 480 円142 億円、今との差 −36.7%、 期待の年率 +2.1%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 1,522 円450 億円 | 389 円115 億円 | +152.0% | +9.7% | 134 円40 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,060 円314 億円 | 338 円100 億円 | +84.4% | +6.3% | 280 円83 億円 |
| 中立 | 36% | 800 円237 億円 | 314 円93 億円 | +47.0% | +3.9% | 401 円119 億円 |
| やや悲観 | 25% | 200 円59 億円 | 186 円55 億円 | −49.1% | −6.5% | 96 円29 億円 |
| 悲観 | 12% | 118 円35 億円 | 68 円20 億円 | −75.5% | −13.1% | 22 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 671 円199 億円 | 262 円78 億円 | +23.1% | +2.1% | 933 円276 億円 |
今の株価時価総額 758 円224 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 新店が稼働し組数が回復、利益率が過去の山近くへ 利益 31 億円 · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 1,522 円450 億円
新店の東京第2と福岡第2が稼働し、さらに次の新店も加わって組数は5,700まで戻る。式場は『少人数で質の高い挙式』を求める客の受け皿になり、単価は物価を超えて上がる。営業利益率は11%と、2014年から2018年の水準(10〜12%)に戻る。フォトは6店に広がり、ホテル事業が小さく利益を出し始める。2名代表制のもとで投資の規律も保たれる。
配当は利益の回復とともに増え、純現金も積み上がる。2名代表制のもとで新規事業の投資にも規律が保たれる。
海外の婚礼や人財事業も小さく利益に寄与し、組数の回復とあわせて利益の源泉が広がる。
- 国内婚礼事業:数量 5,700(施行組数(組))× 価格 573(1組当たり単価(万円・換算率0.0001で億円))→ 売上 327 億円・営業利益 36 億円。営業利益率11.0%
- フォト事業:数量 6.0(スタジオ数(店))× 価格 6.06(1店舗当たり年間売上高(億円))→ 売上 36 億円・営業利益 6 億円。営業利益率16.0%
- 介護・食品・海外ほか:数量 15.0(拠点・店舗数(推定))× 価格 2.73(1拠点当たり年間売上高(億円))→ 売上 41 億円・営業利益 3 億円。営業利益率6.0%
倍率:事業の純利益 31 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.8% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.7 倍。全体の PER 14.67 倍、時価総額 450 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新店の成功と市場の縮小への耐性が10年続く必要があり、挙式実施率の低下が続く中で確率は低い。
やや楽観 20% 新店が計画どおり立ち上がり、利益率が戻る 利益 23 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 1,060 円314 億円
新店が計画どおり立ち上がり、組数は5,300に増える。婚姻数の減少は新店のシェアで補われ、単価は物価をやや上回る。営業利益率は9.5%で、2023年10月期の8.9%を少し上回る水準を保つ。フォトは5店、介護と食品は小さい黒字。配当は利益の6割ほどに下がり、余力が戻る。
介護事業も黒字を保つ。海外人財事業も小さな利益を出し始め、全社の利益率を下支えする。ただしホテル事業は規模が小さく、全体への寄与は限られる。
既存店のリニューアルも組数の維持に効き、受注の先行指標が堅調に推移する。
景気が大きく崩れない前提で、挙式の延期や縮小は限定的にとどまる。
- 国内婚礼事業:数量 5,300(施行組数(組))× 価格 562(1組当たり単価(万円・換算率0.0001で億円))→ 売上 298 億円・営業利益 28 億円。営業利益率9.5%
- フォト事業:数量 5.0(スタジオ数(店))× 価格 6.06(1店舗当たり年間売上高(億円))→ 売上 30 億円・営業利益 4 億円。営業利益率14.0%
- 介護・食品・海外ほか:数量 10.0(拠点・店舗数(推定))× 価格 2.73(1拠点当たり年間売上高(億円))→ 売上 27 億円・営業利益 1 億円。営業利益率4.0%
倍率:事業の純利益 23 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.1% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.82 倍、時価総額 314 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:今期の中間は予想を上回っており、新店の受注も積み上がるため、他の会社の同じ位置より少し厚く置いた。
中立 36% 新店で組数が下げ止まり、利益は今の実力並み 利益 18 億円 · PER 13.2 倍 · 株価時価総額 800 円237 億円
新店の稼働で組数は下げ止まり、4,900組で落ち着く。既存店は毎年2%ほど減るが、新店の分が埋める。単価は物価並みに上がり、551万円。営業利益率は8.5%で、直近2年の平均(9.4%)より少し低い。人件費は物価で増え、新店の償却が加わる。フォトは4店に、介護・食品は小さな黒字。配当は利益の5〜6割で、緩やかに増える。
ホテル事業と海外人財事業は小さな利益にとどまり、婚礼の縮小を補いきれない。式場の改装費用は営業費用に出て、償却は新店と改装の新しい分だけ増える。純現金は投資と配当で少しずつ目減りする。
業績は会社の今期予想から緩やかに回復する形で、10年後も大きな飛躍はない。
- 国内婚礼事業:数量 4,900(施行組数(組))× 価格 551(1組当たり単価(万円・換算率0.0001で億円))→ 売上 270 億円・営業利益 23 億円。営業利益率8.5%
- フォト事業:数量 4.0(スタジオ数(店))× 価格 6.06(1店舗当たり年間売上高(億円))→ 売上 24 億円・営業利益 3 億円。営業利益率12.0%
- 介護・食品・海外ほか:数量 8.0(拠点・店舗数(推定))× 価格 2.73(1拠点当たり年間売上高(億円))→ 売上 22 億円・営業利益 1 億円。営業利益率3.0%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.6% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.2 倍。全体の PER 13.23 倍、時価総額 237 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:市場の縮小と新店の稼働が打ち消し合う。直近の営業利益率と会社予想の間に置く。
やや悲観 25% 市場の縮小が新店の効果を上回る 利益 7 億円 · PER 8.3 倍 · 株価時価総額 200 円59 億円
婚姻数と挙式実施率の低下が続き、新店の効果は限られ、組数は4,000まで減る。値上げは客の自己負担を押し上げ、挙式を見送る夫婦が増える。営業利益率は4.5%まで下がる(今期予想の5.3%を下回る)。式場の固定費は重く、新店の償却も利益を削る。フォトは3店、介護・食品は損益ゼロ。配当は利益に合わせて下がる。
新店のうち福岡第2は軌道に乗るが、首都圏の新店は苦戦する。ホテル事業の投資が重荷になり、借入が増える。純現金は取り崩されていく。
人件費の上昇を価格に転嫁しきれず、利益の薄い状態が長く続く。
景気の悪化が重なれば、挙式の延期や規模の縮小がさらに進む。
- 国内婚礼事業:数量 4,000(施行組数(組))× 価格 534(1組当たり単価(万円・換算率0.0001で億円))→ 売上 214 億円・営業利益 10 億円。営業利益率4.5%
- フォト事業:数量 3.0(スタジオ数(店))× 価格 6.06(1店舗当たり年間売上高(億円))→ 売上 18 億円・営業利益 2 億円。営業利益率8.0%
- 介護・食品・海外ほか:数量 6.0(拠点・店舗数(推定))× 価格 2.73(1拠点当たり年間売上高(億円))→ 売上 16 億円・営業利益 0 億円。営業利益率0.0%
倍率:事業の純利益7億円・事業ROE約5%でk 8.25%以下なので、PERの上限は1÷k=11.1倍。利益が薄く質が低いので上限の約75%の8.3倍に置いた。
確率:婚姻数の減少と挙式実施率の低下は構造的で、新店が組数を維持できない確率を厚く置いた。直近の組数は2年で8%以上減っている。
悲観 12% 挙式離れが進み固定費が赤字を呼ぶ 利益 −6 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 118 円35 億円
婚姻数の減少が続き、挙式をしない夫婦が多数を占める。組数は3,000まで減り、割引で単価も下がる。式場の固定費が重く、営業赤字になる。減損が出て、新店の一部は閉鎖する。フォトとホテルの新規事業も赤字を出す。配当はほぼ止まり、純現金が目減りする。感染症のような需要の一時蒸発が再び起これば、さらに厳しくなる。
最終的には式場の統廃合が進み、残るのは地方の採算店だけになる。少数株主の価値は、純現金の一部と式場の売却価値に近づく。経営統合や売却の話も現実味を帯びる。
新規事業の失敗も重なり、10年後には事業の規模が今の3分の2ほどに縮む。
- 国内婚礼事業:数量 3,000(施行組数(組))× 価格 507(1組当たり単価(万円・換算率0.0001で億円))→ 売上 152 億円・営業利益 −5 億円。営業利益率-3.0%
- フォト事業:数量 2.0(スタジオ数(店))× 価格 6.06(1店舗当たり年間売上高(億円))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。営業利益率0.0%
- 介護・食品・海外ほか:数量 4.0(拠点・店舗数(推定))× 価格 2.73(1拠点当たり年間売上高(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。営業利益率-3.0%
倍率:赤字で稼ぐ力がなく、純利益×PERでは測れない。純現金から前受金と赤字を引いた分と式場の売却価値の税後(約35億円)を床とし、今の自己資本122億円に掛けたPBRに直すと約0.29倍。
確率:挙式をしない夫婦が多数を占める構造的な縮小。固定費の重い式場運営で、少ない組数が赤字に直結する。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内婚礼事業
地方都市と首都圏のゲストハウス型式場。挙式・披露宴を、料理・衣装・写真まで自社で提供する。
| 数量施行組数(組) | 価格1組当たり単価(万円・換算率0.0001で億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 4,930 | 411 | 203 | 16 |
| 10 年後 中立 | 4,900 | 551 | 270 | 23 |
取り方:2025年10月期の国内婚礼の施行組数4,930組(前年比8.0%減)と施行単価411万円(過去最高)から積んだ。婚礼セグメントの売上207.7億円との差は海外ほか。営業利益は婚礼セグメントの16.5億円から海外などの分を除いた推定。数量は組数で、減る筋書きは組数を減らして表す。
フォト事業
記念撮影のスタジオ。新宿に2025年11月に3店目を開業。
| 数量スタジオ数(店) | 価格1店舗当たり年間売上高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 2.0 | 4.52 | 9 | 2 |
| 10 年後 中立 | 4.0 | 6.06 | 24 | 3 |
取り方:2025年10月期のフォト事業の売上9.04億円を、期末のスタジオ数2店(新宿の3店目は期後の開業)で割った。営業利益は開示の1.96億円。
介護・食品・海外ほか
有料老人ホームの介護、スイーツの食品、海外の婚礼など。
| 数量拠点・店舗数(推定) | 価格1拠点当たり年間売上高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 6.0 | 2.04 | 12 | 0 |
| 10 年後 中立 | 8.0 | 2.73 | 22 | 1 |
取り方:介護6.6億円、食品4.6億円、海外ほか(グループ内の取引消去後)の合計約12億円を、拠点数の推定6で割った。拠点数は開示を確かめられず推定。営業利益は介護0.4億円と食品の赤字0.4億円で相殺してほぼゼロ。
リスクと懸念
婚姻数と挙式実施率の低下
婚姻数は2023年に47万件台まで落ち、挙式をしない夫婦が増えている。同社の組数は2025年10月期に8%減った。新店の効果を市場の縮小が上回れば、固定費の重い式場運営は利益を保てない。
固定費と人件費
挙式の当日は式場のスタッフが多数動く。賃金の上昇と固定の設備費が、組数の減少時に利益率を一気に押し下げる。2026年10月期の営業利益予想は12億円と、前期から3割以上減る。
新店投資の回収
東京第2・福岡第2は2026年冬に開業し、先に費用が出る。首都圏は競合が多く、地方で磨いた運営が通じるかは未知数だ。計画の組数に届かなければ償却の負担だけが残る。
一回きりの利益の押し上げ
2025年10月期の純利益20億円は税効果で膨らみ、実力は13億円前後。今期の純利益予想は7億円に下がる。直近の数字だけを見て倍率を判断すると誤る。
新規事業の不確実性
ホテル事業は土地の取得段階で投資額が未開示。海外人財事業は営業開始前。婚礼の穴を埋める規模に育つか、資金を食うだけに終わるか、まだ分からない。
感染症などの需要の一時蒸発
コロナ禍の2020年10月期は営業赤字40億円。再びの感染症や災害で挙式の延期が相次げば、固定費が重い同社は一気に傷む。純現金29億円は緩衝だが、前受金の返還が重なると薄い。
今後の分かれ目
- 新店(東京第2・福岡第2)の受注が会社計画を上回って積み上がったら
- 楽観・やや楽観の確率を上げる。首都圏で通じる運営力の証拠になる。
- 既存店の施行組数が2期連続で前年を割ったら
- 新店の効果が市場の縮小に負けているとみて、中立から下に重みを移す。
- 施行単価の上昇が客の自己負担の増加で止まったら
- 値上げ頼みの増収が限界とみて、利益率の前提を下げる。
- ホテル事業の投資額が純現金を大きく超えて開示されたら
- 借入が増え、悲観側の床を下げる。
- 営業利益率が2期連続で5%を割ったら
- 回復の一巡とみて、やや悲観側へ寄せる。
- 他社が株式の取得を表明したら
- TOBの可能性を含めて見直す。ただし本質価値を基準にし、買収の期待で上げない。
見ておくもの
- 施行組数と受注組数、受注残
- 施行単価と1組あたりの自己負担
- 新店の受注・開業の進み具合
- 営業利益率と人件費率
- 純現金と配当性向、ホテル事業の投資額
倍率と資本コストの決め方
婚礼は施行組数×1組当たり単価(名目)で積み、組数の減少は数量側で表したので価格に物価を掛けても二重がけにならない。営業利益率は過去12年の山(2014年10月期の13%)以下で、中立は8.5%と直近2年の平均より低めに置いた。本社費は物価で増やした。2025年10月期の純利益は税効果で膨らんだため、流れの起点にはならした13億円を使った。純利益÷営業利益は過去の中央値0.69に近い0.68で置いた。資本コストは基本7.5%にquality +1.5%を足した9.0%。ROEがkを少し超える中立〜やや楽観は、PERの下限1÷kと正当化PERの上限の間に置いた。今の株価やPER(約17倍)は見ていない。悲観は稼ぐ力がなく、純現金から前受金と赤字を引いた分と売れる式場の税後を床にした。減価償却は物価で増やさず、新店の分だけ新しい値段で足した。優待は年1億円を大きく超えないと推定し、還元に足していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.8→14.67 倍・やや楽観 PER 11.5→13.82 倍・中立 PER 11.3→13.23 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.5% を足した(決まり v2)。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.25%。