結論
インサイトは北海道を地盤とする広告会社である。広告制作、媒体の取り扱い、販促物、自治体向け観光コンサルティングを手掛け、債権投資も営む。筆者の結論は「やや割高」だ。現金の厚さは評価できるが、10年先の広告代理店に、今と同じ稼ぎ方が残るとは考えにくい。
2026年6月期の売上高は約24億円、営業利益は約0.6億円である。広告事業のセグメント利益率は10.0%でも、本社費用を差し引いた全社の利益率は2.4%と薄い。売上は2023年6月期を下回り、受注減で利益が消えやすい。
最大の問題は、顧客の広告を企画し、制作し、運用する仕事の価値が変わることだ。生成AIだけでなく、発注、制作、入稿、効果測定までを実行するAIエージェントが普及すれば、従来の工数や運用手数料には強い値下げ圧力がかかる。会社は地域の顧客理解と実行力を持つが、顧客の乗り換えを阻む仕組みは弱い。
一方、純現金は約7.6億円と、現在の時価総額約6.3億円を上回る。債権投資や広告取引の運転資金を差し引いても、財務は一定の下支えになる。ただし、その現金を少数株主が自由に引き出せるわけではない。2026年の貸付金回収による現金増は毎年続くものではない。
10年後の中立では売上高が約21.4億円、営業利益が約0.52億円となり、広告事業の稼ぐ力は今より小さくなる。純現金からの受取利息が純利益を補うが、会社の利益率が大きく改善するわけではない。5つの筋書きと株主還元を資本コスト8.25%で現在価値に戻した評価額は約4.89億円で、基準時価総額を約23%下回る。純現金を悲観側の床まで評価しても、事業の寿命と資本配分には安全域が要る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「この会社は10年後、何の仕事に対して報酬をもらっているか」と問いたい。広告を作ること自体は簡単になり、配信先の選定や効果の分析も自動化される。顧客にとって必要なのは成果であり、制作会社が費やした時間ではない。北海道の事情をよく知り、店舗や自治体の現場まで動ける強みは残るだろうが、その強みが値上げできる力に変わらなければ、高い企業価値は正当化できない。
次に見るのは、利益の質である。広告セグメントで利益が出ていても、全社費用を差し引くと利幅が薄い。小さな会社が社員を雇い、営業拠点を広げ、顧客ごとに制作を組み立てる事業では、人を増やさず利益を増やす仕組みがまだ見えていない。設備投資が少ないことは魅力だが、優秀な人を維持する費用が必要なら、会計上の利益すべてを自由なオーナー利益とは呼べない。
一方、純現金の厚さは見逃せない。事業が期待どおりに伸びなくても、その資産は再建の時間を与える。だが、現金は会社の口座にあるのであって、株主の口座にあるわけではない。債権投資に使われれば回収リスクを負い、採算の低い広告事業を支え続ければ徐々に目減りする。配当や自社株買いを通じて現金が株主に届くかまで見て、初めて安全域を判断できる。
筆者が長く保有したいのは、既存顧客との取引が積み重なるほど利益率が上がる事業である。同社には地域の信用があるが、強い価格決定力や切り替え費用の証拠は乏しい。2026年時点の現金資産を評価しても、現在の時価総額に十分な安全域を見いだせない。買収や新サービスが成功する可能性を否定しないが、まだ利益になっていない可能性に先払いすることは避けたい。
何で稼ぐ会社か
会社の中心は広告・マーケティング事業である。2026年6月期の同事業の売上高は約23.4億円で、全社売上高の約97%を占める。残る約0.6億円が債権投資事業だ。広告事業は自社で大量の印刷設備を保有する製造業ではなく、企画、デザイン、媒体の手配、外部の制作会社との調整を組み合わせて顧客の広告予算を受け取る商売である。
品目別では販促物が約7.0億円、観光コンサルティングが約6.6億円、テレビやラジオなどのマス四媒体が約4.7億円と大きい。インターネット広告は約2.5億円、イベントなどは約1.9億円、新聞折込は約0.8億円である。販促物では印刷や制作の外注費を含むため、請求額がそのまま付加価値を表すわけではない。広告媒体の取り扱いも、媒体費を含む売上と代理店が手元に残す手数料を区別する必要がある。
観光コンサルティングでは、北海道で培った観光、食、地域産品の販売促進経験を基に、自治体の地方創生事業やふるさと納税関連業務を受託している。制度への対応や地元事業者との調整には人の仕事が残るが、資料作成、調査、企画案の作成はAIに置き換わりやすい。2025年10月のふるさと納税制度変更後には寄附の動きが変わり、同事業の売上高は前期比で減少した。
デジタル領域ではSNS広告や検索広告の運用に加え、独自の地域調査サイトINSEARCHを使った生活者調査や広告効果測定を行う。これは地域の顧客を理解する助けになるが、独自データを持つことと、顧客が他社へ移れないことは別である。現在の開示だけでは、解約率の低さや価格引き上げの実績を伴う強い囲い込みは確認できない。
債権投資は広告と全く異なる事業だ。子会社が不良債権を取得し、専門の債権回収会社に管理・回収を委託する。貸金業登録を用いた法人融資も行う。利益は労働時間よりも購入価格、回収率、回収期間に左右されるため、広告制作型のAI代替を直接当てはめない。ただし、回収が遅れたり相手方が破綻したりすれば、帳簿上の資産が現金にならない危険を持つ。
会社が開示する数量は主として品目別の売上金額であり、広告案件数や案件単価は公表されていない。そのため、以下の数量は受注案件を一定規模に換算した分析上の推定件数である。実際の契約本数ではない。価格もその換算件数に対応する平均請求額であり、個々の顧客の約定単価ではない。
優良さと弱いところ
同社の強みは、北海道の広告主、自治体、観光事業者と長く仕事をしてきたことである。地域に詳しい担当者が、広告の企画から制作、実施まで引き受けられる。2024年に東京拠点を設け、2025年には山形と北陸にも拠点を広げた。地域の事情を知ることは全国規模の広告会社との差別化になる。
しかし、経済的な堀、つまり競合が容易に奪えない利益源は狭い。会社自身が有価証券報告書で、広告事業には顕著な参入障壁がなく、顧客は大きな障害なく発注先を変更できると説明している。この記述は、長期の株主にとって非常に重い。価格を上げても契約が残る力を裏付ける解約率や継続率の数値も確認できない。
2026年6月期の広告セグメント利益は約2.33億円あるが、本社費用などを控除した連結営業利益は約0.59億円に縮む。売上の大部分を外部原価が占め、社内の人件費は短期的に固定費となる。受注が減れば外注費は減らせても、営業や制作の組織を同じ速さで小さくするのは難しい。実際に2021年6月期には営業赤字を経験した。
過去10年のROE中央値は約6.9%で、通常の資本コストを安定して上回ってきたわけではない。2023年と2024年は利益率が改善したが、その後は再び低下した。高収益期だけを会社の実力とみなすのは危険である。再投資して増分利益を稼ぐ力についても、拠点拡大や買収が継続的に資本コストを超えたと判断できる証拠は十分でない。
財務だけは明確に強い。純現金が厚く、広告の不況が直ちに資金繰り危機につながる可能性は低い。ただし債権投資への資金配分、オーナー関係者の大きな持分、株主への現金還元の規模を分けて評価する必要がある。会社が存続することと、少数株主が帳簿上の資産価値を全額受け取れることは同じではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の広告市場は拡大しているが、すべての広告会社が成長する市場ではない。電通による2025年の国内総広告費は8兆623億円で、インターネット広告が4兆459億円と過半数を占めた。一方、マス四媒体は2兆2,980億円で前年を下回り、新聞折込は2,354億円に減少した。予算はデジタルへ移っているが、その流れだけで地方代理店の手数料が増えるとは限らない。
競争相手には、北海道博報堂、電通北海道、ノヴェロ、道新サービスセンターなどの地域広告会社に加え、全国系代理店がいる。デジタルではGoogleやMetaの広告配信基盤、広告主自身による直接運用、制作・運用を自動化するAIが競争相手になる。大手代理店の媒体交渉力や大量の広告効果データを持たない小規模事業者は、顧客との距離の近さで勝負する必要がある。
同社売上高の全国市場に対する参考比率は、折込約0.033%、マス四媒体約0.020%、ネット広告約0.006%、販促物約0.041%、イベント約0.040%である。ただし、媒体費込みの請求額と広い全国市場との比較であり、地域内の実際のシェアや競合順位は示さない。
数量の長期見通しでは、折込は新聞購読者の減少と広告主のデジタル移行で縮小する。マス四媒体の広告枠そのものは残るが、地方の仲介会社が取る案件数は減りやすい。販促物も実物の印刷需要は残る一方、企画とデザインに払われる人件費相当額は削られる。デジタル市場は伸びても、広告制作と運用の手数料率が低下すれば、代理店の売上数量と単価を同時に押し下げる。
観光と地方創生は別の需要を持つ。訪日客の増加、地域産品の販路開拓、自治体の情報発信は10年先も必要である。しかし自治体の予算には限りがあり、ふるさと納税の制度変更は既に売上を動かした。競争入札や委託範囲の見直しも起きるため、観光客数が増えた分だけ同社の利益が増えるわけではない。
債権投資には不況時に購入機会が増える面もあるが、回収額は読みにくい。法務省のサービサー統計は参考になるものの、同社は債権を保有し、回収を許可業者へ委託する側だ。許可業者の市場規模を同社のシェアに流用できず、購入債権の質と資本配分が結果を左右する。
AIエージェント代替は、広告と観光コンサルティングの中心的な長期リスクである。広告市場全体の伸びと代理店が請求できる仕事量の伸びを混同してはいけない。中立では広告の多くの品目で実質の案件換算数量が現在の55〜75%程度になると考える。価格には物価上昇の一部を反映するが、制作や運用の手数料率には十分な値上げ力を認めない。
資本政策と M&A
経営は安定配当と内部留保の両立を掲げる。2023年に増配し、2025年には特別配当を実施したが、2026年は普通配当のみとなった。2026年の連結配当性向は約35%で、単独利益を分母とした有報上の60.3%とは異なる。継続的な自社株買いによる株数削減は確認できない。
数値目標を伴う中期経営計画の約束は確認できない。売上高、純利益、ROE、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額を期間と結び付けた数字の約束はない。一方、広告事業のセグメント営業利益率8%以上、債権投資の投資債権ごとの粗利益率25%以上を経営指標とする。2026年の実績はそれぞれ10.0%、33.3%だが、全社利益や還元を保証しない。
2012年以降の介護・地域商社への進出を経て、2024年に風和里とたまかわ未来ファクトリーを売却した。既存事業に集中する判断には合理性があるが、買収から売却までを通じて資本コストを超える利益を得た証拠は乏しい。東京・山形・北陸の拠点も、投下資本に見合う増分利益が課題である。
2026年にパートナーズが筆頭株主となり、上位10株主の保有比率は約68.7%に上る。公表済みのTOBや上場廃止予定、継続企業の前提に関する注記は確認されないが、少数株主は余剰現金の還元を主導しにくい。増配実績はあっても高還元の継続実績は乏しく、事業継続時の余剰現金4.2億円の株主帰属率を75%とする。悲観側では営業縮小に伴って運転資金を回収できると考え、純現金7.6億円を資産床とする。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
北海道には、全国共通の広告運用だけでは解決できない課題が残る。観光地ごとの季節需要、地域特産品の販路開拓、自治体の情報発信、店舗の集客は、現場の事情を知らなければ適切な施策にならない。インサイトは長年その仕事を担い、INSEARCHで地域の生活者を調査し、広告制作から実行まで引き受けてきた。大手広告会社が規模を追うほど、小さな案件に丁寧に対応できる地域会社の価値は残り得る。
デジタルの普及は脅威であると同時に、広告の成果を測りやすくする。東京、山形、北陸に設けた拠点を通じて、北海道だけに依存しない顧客を増やせれば、観光コンサルティングや販促物の発注は広がる。制作業務の自動化で社員の時間が浮けば、同じ人員でより多くの顧客を支援できる可能性もある。ただし、現時点でAIエージェントを独立した高収益商品として販売し、その売上金額を確認できるわけではない。技術による利益率改善には実績の検証が要る。
債権投資にも独立した価値がある。広告収入が弱い時期でも、不良債権を適正な価格で購入し、予定どおり回収できれば利益を得られる。会社は貸金業登録と専門回収会社との委託関係を持ち、広告以外の収益経路を確保している。
財務面では、純現金が時価総額を上回るという特徴が大きい。固定資産への大型投資を必要とせず、現金の一部を株主に還元する余地もある。広告で利益を回復させ、債権投資で大きな損失を出さず、配当を増やせれば、現在の見た目の収益力以上の価値を実現するだろう。
慎重な見方
同社の本質的な弱点は、広告を作るための人の仕事を売っていることである。企画書、コピー、画像、動画、SNS投稿、広告の入稿、運用報告まで、AIエージェントが扱える仕事は広がる。広告主が社内の担当者とAIで同じ作業をこなせるなら、従来の制作費や運用手数料を支払う理由が薄れる。しかも会社自身が、広告事業には顕著な参入障壁がなく、顧客は他社へ移りやすいと認めている。
国内の広告費が増えている事実は、この弱点を打ち消さない。インターネット広告の成長利益は、GoogleやMetaなどの配信基盤や、独自の商品を持つ企業に集まりやすい。地域の代理店は予算の配分を手伝えても、媒体の価格を決める立場にはない。新聞折込の減少をデジタル運用へ置き換えても、従来より手数料率が低くなれば会社の付加価値は増えない。
自治体向け事業には、さらに予算と制度変更のリスクがある。2025年10月のふるさと納税制度変更が売上に影響した事実は、同社が制度の外部環境を左右できないことを示す。各自治体が委託範囲を減らし、入札で値段を下げ、企画書や集計をAIで内製すれば、契約件数と契約単価の両方が下がり得る。
債権投資は広告不況の完全な保険ではない。不良債権の回収価値を読み違えれば現金が失われる。2026年の多額の現金は貸付金の回収による面があり、毎年繰り返される営業収入ではない。さらに株主構成は集中しており、少数株主が現金の配当や事業売却を要求しても実現する保証はない。利益が細れば帳簿上の資産があっても評価は低迷し得る。
どちらに重みを置いたか
財務の強さと地域の顧客基盤は評価する。しかし、10年の収益を左右する論点では慎重な見方が優勢である。広告制作・運用・コンサルティングの主要部分はAIエージェントに代替されやすく、顧客の乗り換えも容易だ。純現金が時価総額を上回る事実を悲観側の資産床に反映し、事業の利益が縮む中立を中心とした。確率は楽観側31%、中立31%、悲観側38%とやや下へ寄せる。これは株価への悲観ではなく、同社固有の競争構造と収益の薄さによる判断である。期待本質価値は現在の時価総額を約23%下回り、評価はやや割高となる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 612 円10 億円(+ 還元の換算額還元の合計 68 円1 億円)。 今の値に割り戻すと 323 円5 億円、今との差 −15.7%、 期待の年率 +6.3%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 1,019 円16 億円 | 206 円3 億円 | +219.7% | +14.0% | 147 円2 億円 |
| やや楽観 | 19% | 688 円11 億円 | 106 円2 億円 | +107.2% | +8.2% | 151 円2 億円 |
| 中立 | 31% | 577 円9 億円 | 50 円1 億円 | +63.7% | +5.3% | 194 円3 億円 |
| やや悲観 | 24% | 474 円8 億円 | 28 円0 億円 | +31.0% | +2.8% | 120 円2 億円 |
| 悲観 | 14% | 474 円8 億円 | 9 円0 億円 | +26.1% | +2.4% | 68 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 612 円10 億円 | 68 円1 億円 | +77.5% | +6.3% | 680 円11 億円 |
今の株価時価総額 383 円6 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 12% 地域の実行力が残り、全社利益率も改善 利益 1 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,019 円16 億円
地域の広告主は、広告画像を作る能力よりも、どの顧客へどう届けるかを考え、現場で実行する力に報酬を払う。インサイトはINSEARCHによる地域調査と観光分野での実績を生かし、広告の発注単位を維持する。東京、山形、北陸の拠点も、新規顧客との継続取引につながる。制作工程はAIで効率化されるが、単なる工数販売から成果と実行への請求を一部移す。
観光コンサルティングでは、制度変更後のふるさと納税業務を再設計し、地域産品の開発、観光誘客、自治体の情報発信を一体で受託する。現場でのイベント実施も増え、単純な広告制作以外の仕事が厚くなる。販促物では、印刷や資材費の上昇を一定程度転嫁しながら、企画・デザインの生産性を改善する。広告制作の実質案件数が現在を超えるほどのAI特需は見込まない。
債権投資は購入対象の分散に成功し、回収の遅延や大きな減損を避ける。利益が改善した分の一部を配当に回し、会社に残る資本も増える。2036年には営業利益が約1.38億円、純利益が約1.02億円に達し、全社の収益性は過去の好調期を上回る。既存株主が得る10年間の累計還元も厚くなるが、競争上の強い堀が形成されたとまでは認めない。
- 新聞折込チラシ:数量 50.0(年間受注案件換算数(件、推定・実質))× 価格 0.02(1案件換算当たり平均請求額(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。紙媒体の減少を顧客開拓で補い、換算案件数を維持。単価は1.26倍。
- マスコミ四媒体:数量 130(年間受注案件換算数(件、推定・実質))× 価格 0.04(1案件換算当たり平均請求額(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。媒体の取扱い件数は維持し、媒体費を含む請求額は1.20倍。
- 販促物・プロモーション制作:数量 250(年間制作案件換算数(件、推定・実質))× 価格 0.04(1案件換算当たり平均請求額(億円、名目))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。制作案件数は維持。実物の印刷・資材価格転嫁と制作効率の改善。
- 観光コンサルティング・地方創生:数量 35.0(年間委託事業換算数(件、推定・実質))× 価格 0.25(1事業換算当たり平均請求額(億円、名目))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。自治体受託数を維持し、現場対応を含む契約の請求額が増える。
- インターネット広告・デジタル運用:数量 100(年間運用契約換算数(件、推定・実質))× 価格 0.03(1契約換算当たり平均請求額(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。広告主の直接運用に対抗して契約数を維持。運用自動化で利益率を改善。
- イベント・その他:数量 70.0(年間開催案件換算数(件、推定・実質))× 価格 0.04(1開催案件換算当たり平均請求額(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。現場でのイベント運営はAIで置き換えにくく、件数が約17%増える。
- 債権投資・貸付:数量 12.0(年間回収案件束換算数(束、推定・実質))× 価格 0.07(1案件束換算当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。債権購入・回収が順調に進み、回収案件束が増える。
倍率:資本コストk=8.25%、10年より先の成長率g_long=0%。広告会社の堀は弱く、増分資本利益率RONIC=k+(ROE-k)/3とするが、g=0のため正当化PERは1/k=12.12倍。今の余剰現金4.2億円の税後利息相当0.0588億円を全社純利益から除き、余剰現金の戻り方75%に相当する3.15億円を一度だけ加える。時価総額は約14.80億円。自己資本は現在8.0億円に10年間の累積純利益約7.3億円を加え、累計還元3.3億円を引いた12.0億円。
確率:自治体案件の維持、地域外での顧客獲得、制作効率の改善、債権回収の成功が同時に必要となる。広告市場に十分な余地はあるが、AIを独自の高収益商品として販売した金額実績はなく、すべての好条件がそろう確率は限定的と判断する。
やや楽観 19% 地域外進出が成果を出し、緩やかに稼ぐ 利益 1 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 688 円11 億円
インサイトは北海道で培った観光と広告のノウハウを地域外へ広げる。東京、山形、北陸の拠点が一定の売上を生み、地元顧客の減少を補う。広告の制作や効果測定にはAIが広く使われるが、地域の店舗や自治体には、現場の調整まで引き受ける取引先が必要だ。顧客は発注範囲を絞りながらも、同社との取引を続ける。
新聞折込とマス媒体の案件数は減るが、販促物や観光コンサルティングの減少は小さい。広告主の予算がインターネットへ移ることでデジタルの市場全体は伸びるものの、同社の運用契約数と手数料には圧力が残る。イベントでは人の現場対応が必要とされ、制作中心の仕事よりも収益を保ちやすい。
債権投資は大きな損失を出さず、広告事業にない利益を補う。全社費用は人件費の上昇で増えるが、顧客当たりの作業効率を改善して吸収する。営業利益は約0.75億円、純利益は約0.58億円となる。良い会社へ生まれ変わるほどではないが、小規模な地域広告会社として生き残り、株主への配当も続く。
- 新聞折込チラシ:数量 43.0(年間受注案件換算数(件、推定・実質))× 価格 0.02(1案件換算当たり平均請求額(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。数量0.86倍、請求額約1.21倍。折込需要減を既存顧客で補う。
- マスコミ四媒体:数量 118(年間受注案件換算数(件、推定・実質))× 価格 0.04(1案件換算当たり平均請求額(億円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。数量0.91倍、平均請求額約1.12倍。
- 販促物・プロモーション制作:数量 225(年間制作案件換算数(件、推定・実質))× 価格 0.04(1案件換算当たり平均請求額(億円、名目))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。数量0.90倍。印刷資材費を含む価格転嫁とAIによる制作効率改善。
- 観光コンサルティング・地方創生:数量 32.0(年間委託事業換算数(件、推定・実質))× 価格 0.24(1事業換算当たり平均請求額(億円、名目))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。受託事業の換算件数は0.91倍、請求額は約1.27倍。
- インターネット広告・デジタル運用:数量 90.0(年間運用契約換算数(件、推定・実質))× 価格 0.03(1契約換算当たり平均請求額(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。AI運用で契約数0.90倍、運用請求額はほぼ横ばい。
- イベント・その他:数量 64.0(年間開催案件換算数(件、推定・実質))× 価格 0.04(1開催案件換算当たり平均請求額(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。イベント現場の仕事が増え、案件数は約7%増加。
- 債権投資・貸付:数量 11.0(年間回収案件束換算数(束、推定・実質))× 価格 0.06(1案件束換算当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。回収案件がわずかに増えるが、採算には慎重。
倍率:k=8.25%、AI代替を反映したg_long=0%から、正当化PERは1/k=12.12倍。競争優位は強くないため、それを超える継続成長の倍率は認めない。事業の純利益は0.58-0.0588=0.5212億円、今の余剰現金の戻り方を掛けた価値は3.15億円で、合計約9.47億円。自己資本は8.0億円+累積利益約5.2億円-累計還元1.7億円=11.5億円。
確率:現在の顧客基盤と地方創生の需要から十分考えられるが、広告制作や運用の値下げ圧力を完全には打ち消せない。地域外の新規顧客獲得と固定費管理の両立が条件になる。
中立 31% 広告需要は残るが、代理店の付加価値が細る 利益 1 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 577 円9 億円
広告を出したい顧客は10年後も存在する。しかし、その顧客が人手の多い広告会社に頼む仕事は減る。画像や動画の制作、広告案の比較、SNS広告の運用、効果測定の多くをAIエージェントがこなす。インサイトは地域の顧客に必要な助言と実行を続けるが、請求できる工数と手数料は減少する。
新聞折込は媒体そのものの利用者が減り、マス媒体の取扱いも細る。販促物は実物の制作が残り、原材料や印刷費の上昇が請求額に反映されるため、数量の減少ほど売上は落ちない。観光コンサルティングは現場調整の仕事を維持するが、資料作成や制度対応の一部を自治体が内製化する。デジタル広告市場は伸びても、同社の運用契約数と平均手数料は伸びない。
債権投資は小規模に継続し、大きな利益の柱にはならない。本社費用は物価と人件費の上昇で重くなり、当初は仕事量に合わせてすぐには減らせない。中盤に一部の拠点や制作体制を集約して固定費を減らすが、移行期には赤字も経験する。最終的に売上高は約21.4億円、営業利益は約0.52億円となり、純現金の受取利息もあって純利益は約0.52億円となる。配当を減らしながら財務を維持するが、競争上の堀が強くなるわけではない。
既存株主の価値の中心は、今ある余剰現金と、薄利で残る広告事業の利益になる。地方に根を張る会社として存続しても、長い期間にわたり高い増分資本利益率を得る企業にはならない。
- 新聞折込チラシ:数量 28.0(年間受注案件換算数(件、推定・実質))× 価格 0.02(1案件換算当たり平均請求額(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。案件換算数量0.56倍。市場の紙離れと広告制作のAI代替。
- マスコミ四媒体:数量 88.0(年間受注案件換算数(件、推定・実質))× 価格 0.04(1案件換算当たり平均請求額(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。数量0.68倍、請求額約1.08倍。媒体手数料には値下げ圧力。
- 販促物・プロモーション制作:数量 182(年間制作案件換算数(件、推定・実質))× 価格 0.04(1案件換算当たり平均請求額(億円、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。数量0.73倍、価格1.34倍。実物の印刷費は上昇するが企画工数は減る。
- 観光コンサルティング・地方創生:数量 25.0(年間委託事業換算数(件、推定・実質))× 価格 0.24(1事業換算当たり平均請求額(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。数量0.71倍、価格1.28倍。自治体の内製化と制度変更の影響。
- インターネット広告・デジタル運用:数量 72.0(年間運用契約換算数(件、推定・実質))× 価格 0.03(1契約換算当たり平均請求額(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。運用契約換算数量0.72倍、価格約1.02倍。市場拡大を手数料が吸収。
- イベント・その他:数量 54.0(年間開催案件換算数(件、推定・実質))× 価格 0.04(1開催案件換算当たり平均請求額(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。現場の需要を残し、数量0.90倍、価格1.34倍。
- 債権投資・貸付:数量 9.0(年間回収案件束換算数(束、推定・実質))× 価格 0.06(1案件束換算当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。回収案件換算数量0.90倍。債権購入・回収の採算を大きく伸ばさない。
倍率:資本コストk=8.25%、AIエージェント代替を織り込む10年超の名目成長率g_long=0%なので、正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=12.12倍。2036年の全社純利益0.52億円から、余剰現金4.2億円の税後受取利息0.0588億円を除いた事業利益0.4612億円を資本化し、別に現金の株主帰属価値4.2億円×0.75=3.15億円を加えて8.74億円とする。営業利益の改善は本社・拠点の合理化によるもので、広告の成長は仮定しない。自己資本は現在8.0億円+途中の赤字期を含む累積純利益約1.70億円−累計還元0.80億円=8.90億円。
確率:広告事業に強い切り替え費用がなく、AIが制作・運用・調査の工数を減らす一方、地域のイベント運営や自治体調整は残るという中心的な見方。直近の減収、利益率の低さ、現金の厚さを同時に考慮した。
やや悲観 24% 受注が減り、固定費を吸収できない 利益 0 億円 · PBR 1.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 474 円8 億円
広告主は制作会社へまとめて発注する代わりに、AIエージェントと社内の担当者で多くの販促活動を行う。インサイトは制作、広告運用、調査の定型的な仕事を失う。北海道の地域顧客を維持しても、取引先が必要とするのは現場での調整や少数の特殊案件に限られる。新聞折込とマス媒体では、媒体需要の減少と代理店手数料の縮小が重なる。
観光コンサルティングも自治体の予算制約と入札競争の影響を受ける。ふるさと納税関連の受託内容が見直され、企画書作成や報告業務は自治体自身が自動化する。実物の販促物やイベント運営は残るが、全社の固定費を賄うほどの案件数には届かない。
経営は営業拠点や人員を縮小し、費用の削減を図る。それでも業務量の減少が先行し、2036年の営業利益は赤字になる。債権投資で一定の利益は残るものの、広告の落ち込みを補えない。10年間では初期の黒字と後半の赤字が混在し、累積利益は小さくなる。
会社は財務資産を保有しているため、直ちに清算や経営破綻に進むとは考えない。ただし、利益の成長を期待して資金を投じる価値はなくなり、既存の余剰現金と処分可能な資産が評価の中心になる。株主還元は抑えられ、事業の回復には相当の時間を要する。
- 新聞折込チラシ:数量 20.0(年間受注案件換算数(件、推定・実質))× 価格 0.02(1案件換算当たり平均請求額(億円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。数量0.40倍。媒体利用者の減少と顧客の内製化。
- マスコミ四媒体:数量 70.0(年間受注案件換算数(件、推定・実質))× 価格 0.04(1案件換算当たり平均請求額(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。数量0.54倍。広告主が媒体を直接購入する割合が増す。
- 販促物・プロモーション制作:数量 140(年間制作案件換算数(件、推定・実質))× 価格 0.04(1案件換算当たり平均請求額(億円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。数量0.56倍。価格転嫁が不足し、制作マージンも縮小。
- 観光コンサルティング・地方創生:数量 20.0(年間委託事業換算数(件、推定・実質))× 価格 0.22(1事業換算当たり平均請求額(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。委託案件換算数量0.57倍。自治体の委託範囲縮小。
- インターネット広告・デジタル運用:数量 60.0(年間運用契約換算数(件、推定・実質))× 価格 0.02(1契約換算当たり平均請求額(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。運用契約数量0.60倍、価格も現在を下回る。
- イベント・その他:数量 45.0(年間開催案件換算数(件、推定・実質))× 価格 0.04(1開催案件換算当たり平均請求額(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。現場の需要も減り、数量0.75倍。
- 債権投資・貸付:数量 7.0(年間回収案件束換算数(束、推定・実質))× 価格 0.06(1案件束換算当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。債権回収が遅れ、案件量と利益率がともに低下。
倍率:2036年には広告の受注減と固定費で営業・最終赤字が続くため、赤字利益にPERを掛けない。現在の純現金7.6億円を、事業縮小時に運転資金を解放して回収し得る資産床として評価する。現在の自己資本8.0億円をPBRの分母とし、7.6÷8.0=0.95倍、時価総額7.6億円とする。2036年の自己資本8.0億円は現在8.0億円+10年間の累計利益約0.45億円−累計還元0.45億円と整合し、将来資本を積み上げて床倍率を掛けていない。中立の実質PBR約0.98倍より低く、赤字事業の稼ぐ力と売却可能資産の大きい方を採る。
確率:AIによる制作・運用の内製化が進み、自治体案件も縮小する筋書き。地域顧客との関係は残るため全面撤退とはしないが、全社利益の薄さから赤字転落は十分考えられる。下に寄せる理由は、会社自ら認める低い参入障壁と全社固定費の重さにある。
悲観 14% 広告制作の商流を失い、現金だけが支えになる 利益 0 億円 · PBR 1.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 474 円8 億円
広告主は、広告の制作や配信の大半をAIエージェントへ移す。広告の企画・デザイン会社を経由しない直接発注が一般化し、媒体の取り扱いによる手数料も細る。インサイトが残せるのは、地域での実行を伴う案件と、長年の関係がある顧客の一部だけになる。実物の販促物とイベントも、企画・制作の仕事が削られ、取扱い規模が大きく縮小する。
自治体向けの観光コンサルティングは、予算圧縮、入札競争、業務の内製化が重なる。かつて担当していた調査、資料作成、広報の多くを発注先が自ら処理し、会社は少数の現場案件を巡って競争する。東京や地方の営業拠点を縮めても、組織を維持するための費用が残る。
債権投資では投資対象の選定を誤り、一部で回収が遅れる。貸付金の回収も想定より長引き、現金を再投資できない。経営は人員削減や事業整理を進める。当初の黒字がその後の赤字にほぼ食われ、10年間の累積利益はごくわずかにとどまる。2036年には売上高が約10.3億円、営業赤字が約0.46億円となる。
この筋書きでは広告会社としての超過利益は消え、長期の企業価値は処分可能な現金と回収可能な資産が中心になる。会社に大きな現金残高があるため直ちに価値をゼロとはしないが、現金が事業の再建に使われ続ければ、株主への還元余力は乏しくなる。市場からの撤退や事業の縮小で回収可能な運転資金まで、継続企業の固定費として永久に拘束すると仮定しない。上場廃止を前提とする買収は織り込まず、弱い事業を持ったまま存続する構造的な敗北を表す。
- 新聞折込チラシ:数量 15.0(年間受注案件換算数(件、推定・実質))× 価格 0.02(1案件換算当たり平均請求額(億円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。案件換算数量0.30倍。紙媒体の衰退で利益を失う。
- マスコミ四媒体:数量 50.0(年間受注案件換算数(件、推定・実質))× 価格 0.03(1案件換算当たり平均請求額(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。数量0.38倍、価格も下落。媒体手配の価値が失われる。
- 販促物・プロモーション制作:数量 100(年間制作案件換算数(件、推定・実質))× 価格 0.03(1案件換算当たり平均請求額(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。数量0.40倍。制作マージンの大半を失う。
- 観光コンサルティング・地方創生:数量 13.0(年間委託事業換算数(件、推定・実質))× 価格 0.20(1事業換算当たり平均請求額(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。受託案件換算数量0.37倍。制度変更と自治体の内製化。
- インターネット広告・デジタル運用:数量 45.0(年間運用契約換算数(件、推定・実質))× 価格 0.02(1契約換算当たり平均請求額(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。契約換算数量0.45倍、価格0.81倍。運用手数料が大きく減少。
- イベント・その他:数量 36.0(年間開催案件換算数(件、推定・実質))× 価格 0.04(1開催案件換算当たり平均請求額(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。現場の仕事は残るが、案件数と利益率が低下。
- 債権投資・貸付:数量 5.0(年間回収案件束換算数(束、推定・実質))× 価格 0.05(1案件束換算当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。回収遅延と債権購入案件の縮小で収益性が悪化。
倍率:広告の制作・運用の商流を失い、2036年は営業・最終赤字なので事業利益には正のPERを掛けない。純現金7.6億円を、営業債権の回収と営業債務の決済を伴う縮小・撤退によって実現し得る保守的な資産床とする。現在の自己資本8.0億円を基準としたPBRは0.95倍であり、時価総額は7.6億円となる。2036年の自己資本8.0億円は現在の8.0億円+初期黒字と後半赤字を通算した累積純利益約0.15億円−累計還元0.15億円であり、残存資産を過大に積み上げていない。倒産ではなく、広告代理店として競争に敗れる筋書きである。
確率:AIによる内製化と地域の広告案件減少が重なり、債権投資でも回収遅延が発生する複合的な悪化。発生頻度は中心筋書きより低いが、利益率の薄さと競争上の弱さを考えると無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
新聞折込チラシ
新聞折込広告の企画、制作、印刷・配布の手配。紙の広告到達力に依存する事業である。
| 数量年間受注案件換算数(件、推定・実質) | 価格1案件換算当たり平均請求額(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 50.0 | 0.02 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 28.0 | 0.02 | 1 | 0 |
取り方:2026年6月期有報の品目別売上78,359千円を使用。会社は折込部数・案件数・契約単価を開示していないため、年50件という規模換算を仮定し、売上を50で割った。実際の受注件数ではない。電通の2025年全国折込広告費2,354億円との単純比較では約0.033%だが、地元シェアとは異なる。AIエージェント代替の型は広告制作・媒体手配。案件数減少と運用手数料低下を主に数量側へ反映する。品目別利益は非開示であり、営業利益は分析上の推計。
マスコミ四媒体
テレビ、ラジオ、新聞、雑誌の広告企画、制作、媒体枠の手配。
| 数量年間受注案件換算数(件、推定・実質) | 価格1案件換算当たり平均請求額(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 130 | 0.04 | 5 | 0 |
| 10 年後 中立 | 88.0 | 0.04 | 3 | 0 |
取り方:有報に開示された466,263千円を使用し、案件換算130件で単価を逆算した。会社の実案件数・媒体枠数は非開示。電通の2025年全国マス四媒体広告費2兆2,980億円に対する単純比率は約0.020%。請求額には媒体費が含まれるため、代理店手数料の市場シェアを示さない。AIエージェント代替の型は広告の企画・運用・媒体買付けであり、数量と手数料率の低下を重視する。品目別営業利益は推計。
販促物・プロモーション制作
カタログ、POP、看板、販促映像、ダイレクトメールなどの企画制作。
| 数量年間制作案件換算数(件、推定・実質) | 価格1案件換算当たり平均請求額(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 250 | 0.03 | 7 | 1 |
| 10 年後 中立 | 182 | 0.04 | 7 | 1 |
取り方:有報の品目別売上700,966千円を年間250案件換算とした。数量は会社開示の発注回数ではない。市場の広い参考値は電通の2025年プロモーションメディア広告費1兆7,184億円で、単純比率は約0.041%。印刷物・物理的制作には資材と配送費の価格転嫁余地があるが、企画とデザインの工数はAIエージェントに代替される。中立の数量は現在の約73%とし、物価上昇は平均請求額へ反映。営業利益は推計。
観光コンサルティング・地方創生
自治体向けの観光開発、ふるさと納税関連業務、地域商材の販路開拓支援。
| 数量年間委託事業換算数(件、推定・実質) | 価格1事業換算当たり平均請求額(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 35.0 | 0.19 | 7 | 1 |
| 10 年後 中立 | 25.0 | 0.24 | 6 | 1 |
取り方:有報の観光コンサル売上659,519千円を用い、事業規模換算35件で割った。実際の自治体契約数や受託寄附件数は非開示。市場の数量指標には自治体の受託業務件数やふるさと納税の取扱事業を考えるが、全国寄附総額を会社の売上高と直接比較してシェアにすることは不適切。2025年10月の制度改正による受託需要の変化を反映する。AIエージェント代替の型は人月・コンサル業務。ただし現場調整や地域事業者との関係には人の役割が残る。品目別営業利益は推計。
インターネット広告・デジタル運用
検索広告、SNS広告、デジタルマーケティングの企画、入稿、運用、分析。
| 数量年間運用契約換算数(件、推定・実質) | 価格1契約換算当たり平均請求額(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 100 | 0.02 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 72.0 | 0.03 | 2 | 0 |
取り方:有報のインターネット広告売上246,156千円を100契約換算とした。契約ID数や広告運用口座数は非開示。電通の2025年インターネット広告費4兆459億円に対する単純比率は約0.006%。自社独自の地域調査サイトINSEARCHはあるが、データ保有の規模、解約率、値上げ実績を確認できないため記録の正本型には分類しない。AIエージェントが入稿・分析・最適化を代替する広告運用型に分類し、中立で数量0.72倍、平均請求額はほぼ横ばいにする。営業利益は推計。
イベント・その他
集客イベントの企画制作と当日の運営、その他の広告関連サービス。
| 数量年間開催案件換算数(件、推定・実質) | 価格1開催案件換算当たり平均請求額(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 60.0 | 0.03 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 54.0 | 0.04 | 2 | 0 |
取り方:有報のその他売上189,267千円を60案件換算とした。実際のイベント開催回数は非開示。電通の2025年イベント・展示・映像ほかの広告費4,748億円に対する単純比率は約0.040%だが、区分の対応は完全ではない。企画・告知はAIエージェント代替型で、会場設営や接客など現場の作業は直接の代替対象から外す。中立では現場需要を一部残す一方で企画費用を抑える。営業利益は推計。
債権投資・貸付
不良債権の購入・回収と、債権投資に関連する法人への貸付け。回収業務は許可業者に委託する。
| 数量年間回収案件束換算数(束、推定・実質) | 価格1案件束換算当たり年間売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 10.0 | 0.06 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 9.0 | 0.06 | 1 | 0 |
取り方:有報の債権投資セグメントの売上60,265千円を10債権束換算とした。実際の債権購入束数、購入額、回収率、1束当たり利ざやの詳細は公表値だけでは分離できない。価格は債権の額面ではなく会計上の売上を換算件数で割ったものである。法務省のサービサー業務統計は市場動向の参考にとどまり、許可業者への委託者である同社のシェアを示さない。AIによる広告制作・人月の代替型には当たらず、回収リスクと購入単価を主要因とする。営業利益は報告セグメントの開示値を使用。
リスクと懸念
AIエージェント代替による制作・運用・コンサル業務の縮小
広告の企画、コピー、画像制作、入稿、運用、効果測定や自治体向け資料作成は、AIエージェントが人の工数を置き換えやすい。インサイトの主要事業はその仕事を含み、しかも顧客の乗り換え障壁が低い。従来の案件数だけでなく手数料率も下がる可能性がある。独自の地域調査データはあるが、継続率や値上げ実績などの二つ以上の堀の証拠は確認できない。
観光コンサルティングとふるさと納税制度の変更
観光コンサルティングは売上の大きな柱であり、自治体の制度や予算に左右される。2025年10月のふるさと納税制度の変更によって寄附や受託業務の動きが変わり、2026年6月期の同品目は減収となった。自治体が作業を内製化したり競争入札で発注価格を下げたりすれば、観光需要そのものが増えても同社の利益は減り得る。
紙媒体の縮小と広告の直接取引
新聞折込の全国市場は減少を続けており、同社の折込売上も大きく落ちている。マス四媒体でも媒体費と代理店手数料は別物であり、媒体広告費が保たれても仲介会社の収入が保たれるとは限らない。広告主がGoogleやMetaなどの配信基盤へ直接発注し、社内で成果分析を行うほど、小規模代理店が取れる付加価値は細る。
債権投資・融資の回収損失
債権投資の収益は債権を安く買えるか、予想どおり回収できるかに左右される。回収業務を専門のサービサーへ委託していても、最終的な投資損失は同社側に残る。購入先の選定や担保評価を誤れば、豊富な現金が回収不能な資産に置き換わる。2026年の現金増加の一部をもたらした貸付金回収は、一度限りの資金移動として区別する必要がある。
本社費用と人件費の固定負担
2026年6月期は広告セグメントで約2.33億円の利益がありながら、連結営業利益は約0.59億円だった。本社費用など約1.94億円が利益を大きく削っている。売上原価の外注部分は案件減少に応じて下がるが、社員の給与、営業拠点、管理部門の費用は短期には下がりにくい。AIで作業時間が減っても人員や費用の構造を変えられなければ、利益率改善にはつながらない。
支配株主と少数株主の資本配分の違い
2026年の株主構成ではパートナーズが筆頭株主となり、上位10株主の合計保有比率は約68.7%である。純現金が時価総額を上回っていても、少数株主が特別配当や自社株買いを決定できるわけではない。現金が新規拠点や低採算事業、回収に時間のかかる債権投資へ回れば、帳簿上の純資産と株主が実際に受け取る価値には差が残る。
今後の分かれ目
- 広告・マーケティング事業の利益率が8%を安定的に超え、全社営業利益率も5%以上へ回復したら
- 本社費用を含めて収益改善が起きたと確認できる。単なる案件の一時増加でないことを見たうえで、中立の利益率とやや楽観側の確率を上方修正する。
- 広告運用や制作の請求額が減っても、契約継続率と顧客当たり利益の改善が数字で開示されたら
- AIによる工数削減を企業自身が利益に取り込んでいる証拠になる。数量の縮小率を緩め、継続率と値上げ実績が十分なら堀の判断も再検討する。
- 観光コンサルティングの減収が続き、自治体契約件数も減り始めたら
- 制度変更が一時的な反動ではなく、受託市場の構造的縮小だと考える。観光事業の数量を下方修正し、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 純現金が大幅に減り、同時に貸付金や投資債権が増えたら
- 会社の現金が回収リスクのある資産へ移ったと評価する。現金の床と余剰現金の加算額を引き下げ、資本配分の慎重さを改めて検証する。
- 配当性向50%以上の継続、まとまった自社株買い、または資本効率を伴う余剰現金還元が実行されたら
- 現金の株主への戻り方を75%から100%へ見直す余地が生じる。ただし、一度限りの特別配当だけで将来の還元方針が変わったとは判断しない。
- 正式なTOB、MBO、株式併合による上場廃止予定、または継続企業の前提に関する注記が開示されたら
- 本分析の継続企業としての10年価値評価をそのまま使わず、買付条件、上場廃止時期、資金繰りなどの確定情報を優先する。
見ておくもの
- 広告・マーケティング事業のセグメント営業利益率8%以上という会社目標の達成状況
- 本社費用・調整額と全社営業利益率の推移
- 新聞折込、マス四媒体、販促物、観光コンサル、インターネット、その他の品目別売上高
- 観光コンサルティングにおける自治体受託案件数とふるさと納税制度変更の影響
- デジタル広告の運用契約数、手数料率、顧客継続率、広告効果の開示
- AIエージェントを使った成果報酬型サービスの実際の売上高と営業利益
- 債権投資の購入額、回収額、回収期間、貸付金の残高、貸倒損失
- 現金・定期預金・借入金・純現金の残高と、営業キャッシュフローから貸付金回収の影響を除いた金額
- 増配、自社株買い、株主構成の変化、余剰現金の株主還元
- 地域外営業拠点の新規受注と、その増分利益
倍率と資本コストの決め方
市場のPER・PBRを2036年の倍率の根拠には使わない。会社開示の品目別売上から案件換算数量を推定し、AI代替による数量減と名目請求額の変化を分けた。資本コスト8.25%と10年超の成長率0%によりPERは12.12倍であり、余剰現金の税後受取利息を事業利益から除き、余剰現金を別に一度だけ足す。悲観側のPBRは現在の自己資本8.0億円に0.95倍を掛け、純現金約7.6億円の床を割らない。事業継続中の必要運転資金と、事業縮小で回収できる資金を区別した。純現金が現時価総額を上回るため、悲観終価と配当の額面合計も現時価総額を上回るが、10年後の金額は現在価値と異なる。根拠のない希薄化や資産毀損を設定して数字を合わせていない。新リース会計基準後も賃料負担を費用としてそろえる。5筋書きの現在価値の加重平均は約4.89億円で、基準時価総額比約22.7%のやや割高となる。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3.0%と株式リスクプレミアム4.5%の合計7.5%を基本に、事業の循環、値決め力、財務の4項目の合計+0.75%を加える。企業規模と株価ベータによる上乗せはしない。事業の資金繰りに継続的な疑義はないため、経営危機による追加上乗せもしない。