結論
揚羽は、企業の理念づくりから社員への浸透、採用活動、広告制作までを一貫して請け負うブランディング支援会社である。筆者の結論は「割高」だ。顧客企業との関係には一定の価値があるが、制作とコンサルティングの工数を売る事業が中心であり、10年後にも今と同じ人数と単価で稼げる保証はない。
同社は映像制作を祖業とし、採用ブランドや企業ブランドの企画段階へ仕事を広げてきた。累計で1,000社を超える支援実績があり、採用支援を入口に、社内の意識改革や企業全体の広報へ契約を広げられることが強みだ。実際、2026年9月期第3四半期にはリクルーティング領域の売上が前年同期比16.2%増えた。しかし、企業向けの大型案件を失注し、通期の営業利益予想は黒字から赤字に修正された。取引先との関係があっても、案件を継続して受注できるとは限らない。
長期の最大の問題は、生成AIが企画調査、資料作成、画像、動画、Webサイト、広告運用の相当部分を自動化することだ。経営層への聞き取りや社員を巻き込む合意形成は残るだろう。それでも、顧客が買う工数と外注する工程は減る。会社がAIを使って人件費を減らせば利益を守れるが、同じ技術は顧客の内製化と競合の参入も容易にする。
2025年9月期の売上高は約15.5億円、営業損失は約0.7億円だった。2026年9月期も会社は営業赤字を予想する。純現金約6.9億円は大切な防波堤だが、収益力そのものを保証する資産ではない。中立の10年後時価総額は約7.7億円で、悲観側では資産の床が評価を支える。5つの筋書きと株主還元を資本コストで割り引いた現在の本質価値は約4.8億円となり、基準時価総額約12.6億円を約62%下回る。安さよりも、利益を持続的に生む仕組みの弱さが目立つ会社である。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主なら、揚羽の事業を理解すること自体は難しくない。企業が抱える採用や組織運営の悩みを聞き、伝えるべき内容を考え、必要な制作物を仕上げる。その仕事に対する需要は10年後も存在するだろう。問題は、同じ仕事を今より少ない人手でできるようになったとき、削減された費用を顧客と揚羽のどちらが手にするかである。
会社の説明ではリピート率が毎期約7割あり、顧客との信頼関係は営業上の財産になっている。しかし、同じ顧客から来年も同額の注文が入る契約構造ではない。製品を使用し続けるほど切り替えにくくなる基幹システムや、他社が複製できない独自データとも違う。値段を上げて顧客を維持した実績が示されない以上、強い堀に高い価値を払うという判断はできない。
オーナー利益にも注意がいる。制作会社は巨大な工場を必要としないため、見かけ上は設備投資が軽い。だが、知識と技能を維持するための採用費、教育費、営業費用は繰り返し必要になる。さらに、AIの導入費用と顧客獲得の競争が加わる。帳簿上の純利益が戻っても、それを維持する再投資を差し引いた株主の取り分が十分かどうかは別に検証すべきだ。
経営には、売上を追うよりも利益を生まない業務から撤退する規律が求められる。近年の先行採用は営業損失という形で株主に負担を生じさせた。今後は少ない人数でも利益を出せる体制へ転換できるかが分かれ目になる。純現金の厚さは好材料だが、現金を持つ会社と、その現金を株主のために使う会社は同じではない。現在の時価総額を正当化するほどの収益力が見えないため、筆者は安全域が不足していると判断する。
何で稼ぐ会社か
揚羽の事業は会計上、ブランディング事業という単一セグメントである。ただし、顧客が何にお金を払うかを考えると、コーポレートコミュニケーション、インナーブランディング、プロダクト&サービス・マーケティング、リクルーティングという4領域に分ける必要がある。いずれも企業から案件を受注し、調査や企画を行い、映像、Webサイト、デザイン、イベントなどを組み合わせて納品する仕事だ。自社製品を大量に複製して売る商売ではない。
コーポレートコミュニケーションは、経営理念や企業ブランドの設計から、対外的な発信までを担う。経営層の考えを整理し、社員や取引先に伝わる言葉と表現に変えるため、上流の企画には経験が必要となる。ただし、制作物の多くは他社に再発注でき、独占的な技術や許認可が収入を守っているわけではない。
インナーブランディングは、社員に理念を浸透させ、組織文化や従業員の行動を変える支援だ。社員向けの調査やワークショップを行い、社内の映像、冊子、イベント、Webコンテンツなどを制作する。経営課題と人事課題を結びつける能力には価値がある一方、調査集計、資料作成、社内広報の実務はAIによる自動化を受けやすい。
プロダクト&サービス・マーケティングでは、商品やサービスの訴求内容を考え、広告素材を制作し、Webマーケティングの運用改善まで支援する。4領域の中でも広告制作と運用の自動化に最も直接さらされる仕事である。リクルーティングは、採用コンセプトの策定から採用サイト、採用動画、採用パンフレット、候補者との接点づくりまで扱う。人手不足という顧客の課題は残るが、制作工程の人手がそのまま必要になるわけではない。
同社は採用支援から社員の定着支援へ、さらに企業全体のブランド構築へと契約を広げる戦略を掲げている。この横展開は営業効率を高める可能性がある。2025年9月期には年間受注額1,000万円以上の既存顧客が34社、新規受注企業が112社あった。一方、案件数と案件単価、領域別営業利益は正式には開示されていない。本分析の数量と単価は、開示された売上構成と顧客指標から組み立てた推定値であり、会社の実績件数ではない。
優良さと弱いところ
最大の強みは、採用、社員の意識改革、企業広報を一つの顧客関係で扱えることである。顧客の経営課題を理解するには時間がかかるため、同じ担当者に別の仕事を頼む合理性はある。会社資料ではリピート率が毎期約7割と説明されている。これは顧客接点の厚さを示すが、契約金額の継続率や解約率ではない。案件ごとに発注が途切れうるため、強固な継続課金の証拠とは扱わない。
支援実績にはNTTデータ、IHI、JX金属などの大企業が含まれる。採用サイトや企業広報の制作実績と受賞歴は、営業時の信用につながる。しかし、発注企業には複数の代理店と制作会社を比較する選択肢がある。揚羽だけが保有する規制上の資格や、顧客が移行できない業務データ基盤は見当たらない。ブランドという言葉を売る会社であっても、自社の値上げを通せるブランド力まで立証されているわけではない。
利益の履歴にも注意が必要だ。2022年9月期の営業利益率は約8%だったが、2024年9月期にはほぼゼロとなり、2025年9月期は赤字に転落した。2025年9月期の従業員数は141人で、上場調達資金を使った採用と営業体制の強化が先行した。増えた人件費に見合う売上と利益をまだ安定して得られていない。増分の投下資本利益率が資本コストを超えたという証拠も乏しい。
財務は比較的堅い。自己資本は約9.0億円、純現金は約6.9億円で、当面の赤字によって直ちに資金繰りが行き詰まる構造ではない。ただし、収入が細ったときにも社員の給与や事務所関連費用は残る。堀、つまり競合から利益を守る仕組みは弱いと判断する。顧客との人的な信頼は資産であるが、AIによって制作と運用の参入障壁が低くなる10年間には、その価値を慎重に評価すべきだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
企業ブランディングの需要は消えない。人材不足に悩む企業は、採用したい人物像を定め、自社の魅力を伝え、働く社員にも経営方針を理解してもらう必要がある。しかし、その必要性と、外部の制作会社へ従来どおりの金額を支払うことは別の問題だ。10年後も企業の理念や採用方針は存在する一方、調査、制作、配信、改善を担う外注工程は大きく変わると考える。
市場の外縁を示す数字は大きい。電通による2025年の国内総広告費は8兆623億円、うちインターネット広告制作費は4,922億円だった。揚羽のプロダクト&サービス領域の推定売上約1.70億円は、後者の約0.035%にすぎない。ただし、インターネット広告制作費には同社が扱わない仕事が大量に含まれ、この数字は厳密な対象市場シェアではない。新卒採用支援サービス7市場については、会社が引用する矢野経済研究所の2025年度予測が1,532.6億円である。リクルーティング領域の売上約5.26億円はその約0.34%に当たるが、求人媒体など異なるサービスが含まれるため、これも参考比較にとどまる。
コーポレートコミュニケーションとインナーブランディングには、統一定義による市場規模と各社シェアの開示がない。規模感を測る補助線として、国内の大企業・中堅企業を仮に1万社、1社当たり年間の外部発注額を前者500万~1,500万円、後者300万~1,000万円と想定すると、市場はそれぞれ500億~1,500億円、300億~1,000億円となる。現在の推定売上を割り当てれば、揚羽の参考シェアは前者約0.24~0.71%、後者約0.50~1.65%である。この1万社と予算額は会社の開示値ではなく分析上の仮定であり、4領域の市場を単純に合算することもできない。
競争相手は、電通や博報堂などの総合広告代理店、TOPPANなどの制作・情報サービス企業、リンクアンドモチベーションなどの組織変革支援会社、マイナビやリクルートなど採用領域の大手、そして多数の専門制作会社である。同一定義での競合シェアは確認できない。大手は企業との取引の広さと制作体制で勝り、小規模な専門会社は機動力と費用で競う。
従来の業界予想では、企業の人的資本投資とデジタル化が外注需要を押し上げると考えられてきた。しかし、AIエージェントが顧客企業の担当者に代わって企画書、サイト、動画素材、広告運用を作る環境では、市場全体の名目支出が増えても、人月と制作物の数量が増えるとは限らない。中立では揚羽の各領域の実質案件数を10年間で現在の約64~75%に縮める。これは顧客市場の消滅ではなく、必要な外注作業量と同社の取り分が縮む筋書きである。
資本政策と M&A
資本配分は厳しく評価したい。2023年の上場後、揚羽は営業体制と専門人材への投資を進めた。2025年12月公表の事業計画には、上場調達資金を使った人材投資として2024年9月期に1.17億円、2025年9月期に2.32億円が示されている。顧客への提案力を高める狙いは理解できるが、2025年9月期には売上が伸びず営業赤字となった。採用投資から十分な増分利益が生まれたとは、現時点では判断できない。
2025年12月の事業計画は2026年9月期の売上18.50億円、営業利益0.50億円、純利益0.32億円を掲げた。しかし2026年8月、会社は売上16.47億円、営業損失0.16億円、純損失0.21億円へ下方修正した。3年程度の正式な中期経営計画として、売上、利益、ROEを年度別に約束する数値は確認できない。配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額についても数字の約束なしである。
従来は無配で、自社株買いによる明確な株数減少も確認できない。一方、2026年に常設株主優待を導入し、300株以上を半年以上継続保有する株主に年間1万6,000円相当のデジタルギフトを用意した。資格を満たす株主には価値があるが、全株主への均等な現金還元ではない。10年間の還元額には、この制度の費用相当を含める。中立では年間約0.14億円、10年で1.4億円を仮定し、業績悪化時には制度縮小の可能性も織り込む。
2025年9月末の上位10株主の保有比率は約66.3%で、代表者と主要な保有会社だけで約56.5%を占める。過去5年間に通常配当の増額と大規模な自社株買いがないため、余剰現金が少数株主へ戻る価値は帳簿額の50%で評価する。セレブレインやブログウォッチャーとの業務提携は確認できるが、大型買収による利益成長の実績はない。将来の買収やMBOの可能性だけで価値を上乗せしない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
揚羽の仕事を単なる制作請負と考えるのは狭すぎる。採用サイトを作った企業から、社員の定着や企業理念の浸透を相談される。さらに、経営方針を投資家や取引先に伝える仕事へ広がる。一つの顧客に複数の部門が関わるため、営業担当が経営課題を把握できれば次の提案機会を生みやすい。累計1,000社超の実績と毎期約7割のリピートという説明は、この営業資産が空虚ではないことを示している。
AIは競争相手であると同時に、制作原価を下げる道具にもなる。従来なら外注していた企画書の下書き、素材の修正、動画編集、Webサイトの実装を少人数で行えば、従業員を増やさなくても利益率を引き上げられる。2026年7月にはAI検索に対応するAIO・LLMO最適化サービスも始めた。まだ売上実績を確認できないため新規売上の上乗せはしないが、顧客の新しい悩みに応じてサービスを変えようとする姿勢は評価できる。
日本の採用難と人的資本経営への関心も、長く続く需要の土台になる。JX金属の採用ブランディングや、パーソルテンプスタッフの社員向け施策のように、社内の合意形成や経営との対話が必要な仕事は生成AIだけで完結しにくい。人的な関係と制作機能の両方を持つ会社は、顧客が内製化できない最後の部分を請け負える。
上場後の積極採用は短期の損失を招いたが、専門家と営業人員の組み合わせが整えば、今後の採用費は抑えられる。事務所と本社機能を絞り、既存顧客の大口案件を再び獲得できれば、売上が大幅に増えなくても営業利益は回復しうる。約6.9億円の純現金があるため、再編を進める時間も確保できる。将来、大手広告代理店や人材会社から事業提携・買収を提案される余地もある。ただし、その実現を既定の企業価値とはみなさない。
慎重な見方
揚羽の本質は、優秀な担当者と制作スタッフが時間を使って顧客の課題を解決する受託事業である。高い利益率を守る特許、規制上の資格、業界標準の情報基盤はない。企画調査や広告制作にAIエージェントが普及すると、企業は社内で行える作業を増やし、外注先にはより少ない金額を提示できる。企画の上流へ移れば安泰という話でもない。顧客自身の調査、情報整理、施策比較までAIが助けるからだ。
既存の顧客関係を、10年間の利益保証とみなすこともできない。毎期約7割のリピートという数字は評価するが、契約の更新率や金額の維持率ではない。制作物は一度納品すれば使い続けられ、広告代理店との取引先変更も難しくない。大手企業は電通や博報堂のような広い取引先網を持つ代理店を使えるし、小さな企業は安価な専門会社やAIサービスを使える。揚羽が中間にいることは、顧客に便利であると同時に競争にさらされることでもある。
失注の影響はすでに決算に表れている。2026年9月期第3四半期は増収だったにもかかわらず営業赤字で、大型案件の失注と外注費率の上昇により通期予想が引き下げられた。2025年9月期も営業赤字だった。これまでの採用投資が収益力の向上につながったと確認できない段階で、将来の大幅な固定費削減を当然視するのは危険だ。AIを導入しても、節約分は顧客の値下げ要求に吸収されるかもしれない。
純現金が時価総額の半分以上ある点は安心材料だが、株主がその資金の配分を決められるわけではない。経営への持株集中度が高く、通常配当や自社株買いの実績も乏しい。株主優待を拡充しても、十分な利益を稼ぐ事業へ変わったことにはならない。会社が赤字のまま新しい事業や人材採用に資金を投入すれば、財務の安全域も小さくなる。10年後には顧客と社員の双方を減らし、手元資産の価値が事業の価値を上回る会社になっている可能性がある。
どちらに重みを置いたか
顧客との関係と財務余力については前向きに評価する。しかし、2025年9月期の赤字、2026年9月期予想の下方修正、案件当たり原価の上昇を見ると、利益改善を当然視する根拠は弱い。AIによる工数の減少はすでに中立の数量と10年より先の成長率に織り込み、確率と資本コストで同じ理由を重ねて罰してはいない。確率を下側へ寄せる追加の理由は、足元で大型案件を実際に失注し、人員への先行投資がまだ十分に回収されていないことだ。上側26%、中立33%、下側41%とし、資産による下支えは認めるものの、事業収益力の改善には慎重な立場を取る。中立の10年後の時価総額自体が現在を下回り、時間価値を差し引くと割高という結論になる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/09 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 596 円9 億円(+ 還元の換算額還元の合計 95 円1 億円)。 今の値に割り戻すと 334 円5 億円、今との差 −61.7%、 期待の年率 −2.5%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,124 円16 億円 | 209 円3 億円 | +52.9% | +4.8% | 107 円2 億円 |
| やや楽観 | 18% | 727 円10 億円 | 153 円2 億円 | +1.0% | +0.1% | 159 円2 億円 |
| 中立 | 33% | 539 円8 億円 | 98 円1 億円 | −27.0% | −3.3% | 210 円3 億円 |
| やや悲観 | 24% | 481 円7 億円 | 63 円1 億円 | −37.6% | −4.9% | 131 円2 億円 |
| 悲観 | 17% | 481 円7 億円 | 21 円0 億円 | −42.4% | −5.5% | 85 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 596 円9 億円 | 95 円1 億円 | −20.7% | −2.5% | 691 円10 億円 |
今の株価時価総額 872 円12 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 顧客関係を守り、少人数で利益を回復 利益 1 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,124 円16 億円
企業の採用難と人的資本経営への関心が続き、揚羽は採用支援から社内改革、企業広報へと仕事を広げることに成功する。NTTデータやJX金属のような既存の大企業案件を繰り返し受注し、営業担当者が経営層と直接話せる関係を守る。会社が2025年までに採用した専門人材は、大口顧客への提案を担う中核となる。
生成AIによって定型的な制作工程は減るが、浮いた作業時間を高付加価値の企画へ振り向けられる。競合もAIを使うため売上単価の上昇には限界があるものの、管理費と外注費の削減によって営業利益率が改善する。新しいAIO・LLMOサービスは、既存顧客をつなぎ留める補助的な仕事として定着する。ただし金額を伴う受注実績が未開示のため、独立した新市場の売上成長は加算しない。
4領域の年間案件数は2025年を超えず、採用や組織改革への支出が続く中で単価だけが名目で上がる。広告制作の値上がりは物価以下にとどめる。2026年のような大型案件失注は起きても一時的であり、競合の電通、博報堂、リンクアンドモチベーションなどと共存できる。経営は大型M&Aに依存せず、採用投資を収穫する段階へ移る。蓄積した利益の一部を優待と通常配当で戻すことができ、10年後には純利益が現在の赤字から明確に回復する。
- コーポレートコミュニケーション:数量 40.0(年間の企業ブランド・広報支援案件数(件、分析者推定))× 価格 0.12(1案件当たり売上高(億円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 2 億円。数量は現在比1.00倍、価格1.34倍。AIで制作作業を省力化し、直接人件費控除後の貢献利益率32%。
- プロダクト&サービス・マーケティング:数量 25.0(年間の広告・商品マーケティング支援案件数(件、分析者推定))× 価格 0.08(1案件当たり売上高(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。数量1.00倍、価格1.15倍。広告制作・運用の手数料率に値下げ圧力が残る。
- インナーブランディング:数量 70.0(年間の組織・社内ブランド支援案件数(件、分析者推定))× 価格 0.10(1案件当たり売上高(億円、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 2 億円。数量1.00倍、価格1.34倍。経営層と社員の対話支援が残り、制作原価だけが下がる。
- リクルーティング:数量 85.0(年間の採用ブランド・採用制作支援案件数(件、分析者推定))× 価格 0.08(1案件当たり売上高(億円、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 2 億円。数量1.00倍、価格1.30倍。採用の課題は残るが、制作単価は物価以上に引き上げない。
倍率:資本コストk=8.25%、10年より先のg_long=0%。AI代替により新規投資の超過成長を認めず、正当化PER=(1-g/RONIC)/(k-g)=1/0.0825=12.12倍とする。ROEは1.22÷13.0=9.38%でkを超えるが、成長率0%なので倍率に上乗せしない。事業用ではない現金4.0億円の税後利息0.056億円を全社純利益から控除し、現金の株主還元価値2.0億円を加える。時価総額=(1.22-0.056)×12.12+2.0=16.108億円。案件数の伸長やAI新製品の未確認売上は加算していない。
確率:既存案件量を10年間維持しながらAIを原価削減に使い、顧客による内製化には利益を奪われないという厳しい条件が必要である。実現すれば強いが、2026年の大型案件失注を踏まえると低い確率にとどめる。
やや楽観 18% 案件は減るが、横展開と経費削減が機能 利益 1 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 727 円10 億円
揚羽は採用支援を入口とした顧客との関係を維持し、インナーブランディングや企業広報を組み合わせた提案を増やす。2026年に苦戦した大型の企業広報案件も一部を取り戻す。顧客が広告制作の一部をAIで内製化するため案件数は減るが、単純な制作会社ではなく、経営課題の整理と実行支援を組み合わせる事業者として残る。
リクルーティングでは、採用広報に加えて候補者の体験設計や採用コンセプトの策定が比較的維持される。インナーブランディングでは、社員向け動画や調査資料の作成が自動化されても、組織文化を変えるための対話支援は残る。競合との価格競争は続き、値上げは生活費と人件費の上昇を補う程度にとどまる。
経営は採用費と制作外注費を抑制し、営業担当と専門人材を重点顧客へ集中させる。固定費削減によって、売上の伸びが限定的でも黒字を確保できる。ただし、製品独占やデータ独占によって利益を守るわけではなく、顧客との関係を毎年築き直す必要がある。大きな買収による上振れは見込まず、利益が回復した分だけ優待と配当を継続する。10年後の収益力は2025年より改善するが、継続的な高成長企業にはならない。
- コーポレートコミュニケーション:数量 36.0(年間の企業ブランド・広報支援案件数(件、分析者推定))× 価格 0.12(1案件当たり売上高(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。数量0.90倍、価格1.32倍。大型顧客からの発注が残る。
- プロダクト&サービス・マーケティング:数量 22.0(年間の広告・商品マーケティング支援案件数(件、分析者推定))× 価格 0.08(1案件当たり売上高(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。数量0.88倍、価格1.12倍。運用手数料と制作単価に競争圧力。
- インナーブランディング:数量 61.0(年間の組織・社内ブランド支援案件数(件、分析者推定))× 価格 0.09(1案件当たり売上高(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 2 億円。数量0.87倍、価格1.32倍。社内調査・資料作成の自動化分は消える。
- リクルーティング:数量 75.0(年間の採用ブランド・採用制作支援案件数(件、分析者推定))× 価格 0.08(1案件当たり売上高(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 2 億円。数量0.88倍、価格1.29倍。採用難による底堅さとAI制作代替が併存する。
倍率:ROE=0.751÷12.4=6.06%でk=8.25%を下回るため、成長による価値創造は認めずPERの上限を1/k=12.12倍とする。g_longはAIエージェント代替により0%。余剰現金の税後利息0.056億円を除いた事業純利益0.695億円にPERを掛け、余剰現金4.0億円の50%に当たる2.0億円を加える。時価総額=(0.751-0.056)×12.12+2.0=10.423億円。
確率:採用・社内改革・企業広報への横展開で顧客との関係を守り、実質案件量の減少を限定できる余地はある。ただし広告制作や研修業務の自動化を完全には防げないため、案件数は各領域で現状を下回る。
中立 33% 受託工数は縮小し、経費圧縮で小幅黒字 利益 1 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 539 円8 億円
10年後も揚羽は企業ブランドと採用ブランドの支援を続けるが、仕事の量は大きく減る。企画書の準備、社員調査の集計、広告素材の制作、Webサイトの実装は、顧客自身や少人数の制作会社がAIエージェントを使って処理する。揚羽に残るのは、経営陣から課題を聞き出し、複数の利害関係者を調整し、完成までの責任を引き受ける仕事だ。
国内企業の採用難や従業員の定着課題は残るため、需要が消滅するわけではない。それでも、2025年に比べた実質案件数は各領域で約64~75%となる。案件単価は名目で上がるが、広告制作・運用の値上げは物価を大きく下回る。日本の広告費や採用支援市場が名目で拡大しても、揚羽がそこで使われる人手を維持できるとは考えない。
利益を守るには、現在の営業体制と本社費用を相当程度縮小する必要がある。経営は採算の悪い案件を断り、制作の一部をAIで内製化して、重点顧客向けの少人数組織に移行する。これは会社が達成済みの成果ではなく、黒字化のための条件だ。固定費削減が遅れれば、やや悲観へ移る。大型M&Aの効果も、新規AIサービスの未確認売上も前提としない。収益は小幅に回復するものの、資本コストを超えるROEは実現せず、資産価値に近い規模の会社として残る。
- コーポレートコミュニケーション:数量 30.0(年間の企業ブランド・広報支援案件数(件、分析者推定))× 価格 0.12(1案件当たり売上高(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。数量0.75倍、価格1.31倍。経営相談は残るが制作作業をAIが代替する。
- プロダクト&サービス・マーケティング:数量 16.0(年間の広告・商品マーケティング支援案件数(件、分析者推定))× 価格 0.07(1案件当たり売上高(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。数量0.64倍、価格1.08倍。広告制作・運用の外注数量と手数料率が下がる。
- インナーブランディング:数量 50.0(年間の組織・社内ブランド支援案件数(件、分析者推定))× 価格 0.09(1案件当たり売上高(億円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。数量0.71倍、価格1.29倍。対話支援は残る一方、調査・制作が省力化される。
- リクルーティング:数量 60.0(年間の採用ブランド・採用制作支援案件数(件、分析者推定))× 価格 0.08(1案件当たり売上高(億円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。数量0.71倍、価格1.29倍。採用戦略は残るが、制作案件の本数が減る。
倍率:ROE=0.528÷9.8=5.39%でk=8.25%未満のため、PER上限は1/k=12.12倍となる。長期gはAIエージェント代替を反映して0%であり、再投資による超過成長は認めない。余剰現金の税後利息0.056億円を除いた事業純利益0.472億円に上限PERを掛け、現金の戻り方50%による2.0億円を加える。時価総額=(0.528-0.056)×12.12+2.0=7.721億円。4領域の直接費控除後利益合計約3.553億円から本社・共通費2.82億円を引く。2025年の推定共通費約4.8億円から名目でも大きく削減するという条件付きであり、AI活用と人員・拠点の合理化が実現しなければ黒字にはならない。
確率:下に寄せる理由:2026年に大型案件を失注し、増収でも営業赤字が続いた。採用投資から十分な利益を回収できていないため、AIによる業務効率化の利益を会社がすべて獲得できるとはみない。AIの影響自体は案件数量とg_longに反映済みであり、確率には重複して上乗せしていない。
やや悲観 24% 受注縮小に費用削減が追いつかない 利益 0 億円 · PBR 0.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 481 円7 億円
生成AIによって制作物を社内で用意する顧客が増え、採用サイトの改修、社内映像の更新、広告素材の制作など、揚羽が従来請け負ってきた小中規模の仕事が減る。競争相手は大手広告代理店だけではなく、少人数の制作会社や、AIサービスを直接使う顧客自身にも広がる。継続顧客の一部は残るものの、発注する仕事の単価と数量を絞る。
営業担当と制作担当を抱える会社にとって、受注減少は利益を大きく傷つける。外注費は減らせても、経営層に対応できる専門人材の給与や営業費用は同じ速さでは下がらない。企業向けの大型案件は競争入札と顧客の予算判断に左右され、2026年に起きたような失注が繰り返される。営業利益は小幅な赤字にとどまるが、継続的に株主へ現金を配れる企業にはならない。
新たなAIO・LLMO支援を提供しても、他社と差別化できる独自データがなく、従来の制作売上の減少を埋められない。経営は管理部門を縮小し、採算の低い案件を断るものの、顧客基盤を再び広げる力は弱い。配当は期待できず、株主優待も縮小する可能性がある。事業の稼ぐ力は小さくなるため、時価総額は現在の純現金と売却可能な資産を守ることができるかという議論に近づく。
- コーポレートコミュニケーション:数量 24.0(年間の企業ブランド・広報支援案件数(件、分析者推定))× 価格 0.10(1案件当たり売上高(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。数量0.60倍、価格1.17倍。大型案件の獲得率低下と値引き。
- プロダクト&サービス・マーケティング:数量 12.0(年間の広告・商品マーケティング支援案件数(件、分析者推定))× 価格 0.07(1案件当たり売上高(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。数量0.48倍、価格1.00倍。広告の制作と運用が内製化される。
- インナーブランディング:数量 38.0(年間の組織・社内ブランド支援案件数(件、分析者推定))× 価格 0.08(1案件当たり売上高(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。数量0.54倍、価格1.15倍。定型調査と資料制作の受託が減る。
- リクルーティング:数量 51.0(年間の採用ブランド・採用制作支援案件数(件、分析者推定))× 価格 0.07(1案件当たり売上高(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。数量0.60倍、価格1.15倍。採用戦略は残るが制作予算が細る。
倍率:営業赤字でROEは資本コスト8.25%に届かず、将来自己資本に通常のPBRを掛ける方法は適さない。事業の利益による価値は純現金を下回るため、2025年9月期時点の純現金6.9億円を資産の床とする。PBRの分母には10年後の積み上がった自己資本8.9億円を使わず、現在の自己資本9.0億円を使う。6.9÷9.0=0.7667倍であり、中立の時価総額÷将来自己資本7.721÷9.8=0.788倍より低い。床は赤字の継続で現金を失わず、現在の資産が保たれることを条件とした保守的な上限でもある。
確率:大口案件の失注と原価率上昇がすでに起きており、需要減少に合わせて人員を減らす経営判断が遅れる可能性がある。AI代替による数量減少とは別に、固定費削減の実行が不十分になる事業固有の下振れとして評価する。
悲観 17% 制作・運用の構造的代替で事業価値を失う 利益 −1 億円 · PBR 0.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 481 円7 億円
企業は引き続き採用や社員の定着に資金を使うが、Webサイト、動画、広告、調査資料のかなりの部分をAIエージェントに任せるようになる。外部へ頼む場合も、少人数で高品質な成果物を制作できる競合が増え、受注価格は上がらない。揚羽が積み上げた制作実績は営業時の参考にはなるが、他社へ発注できない理由にはならない。大手広告代理店の顧客基盤も強く、同社の小規模な市場シェアは縮む。
経営陣との対話や社員を巻き込む変革支援の一部は残る。しかし、それだけでは現在の営業人員と管理費を支えられない。顧客の発注回数が減り、大口案件の失注が続くため、営業部門を縮小する。それでも固定費負担と採用済みの専門人材の維持費が利益を圧迫する。新しいAI関連サービスには目立った収入が生まれず、制作需要の減少を補う事業には育たない。
株主優待は縮小または停止され、通常配当も支払われない。大型M&Aによって回復する可能性は基本ケースに織り込まず、逆に買収を強行すれば手元資金を失う危険がある。10年後には売上が2025年の半分弱となり、赤字が残る。純現金の保全だけが評価の支えとなり、事業の売却や大幅な人員整理を行わなければ経営を続けにくい会社になる。資産の床は現時点の換金可能額に基づくため、この筋書きでさらに資金流出が続けば引き下げる必要がある。
- コーポレートコミュニケーション:数量 16.0(年間の企業ブランド・広報支援案件数(件、分析者推定))× 価格 0.09(1案件当たり売上高(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。数量0.40倍、価格1.04倍。上流の企画の一部のみ残る。
- プロダクト&サービス・マーケティング:数量 10.0(年間の広告・商品マーケティング支援案件数(件、分析者推定))× 価格 0.06(1案件当たり売上高(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。数量0.40倍、価格0.94倍。広告制作・運用の利幅を失う。
- インナーブランディング:数量 31.0(年間の組織・社内ブランド支援案件数(件、分析者推定))× 価格 0.07(1案件当たり売上高(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。数量0.44倍、価格1.04倍。資料制作や定型的調査の受託が大きく減る。
- リクルーティング:数量 39.0(年間の採用ブランド・採用制作支援案件数(件、分析者推定))× 価格 0.06(1案件当たり売上高(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。数量0.46倍、価格1.04倍。採用の必要性は残るが制作費を確保できない。
倍率:事業の純利益が赤字であり、正のPERを掛けて継続価値を計算できない。資産の床として現在の純現金6.9億円のみを認識し、現在の自己資本9.0億円に対するPBRを6.9÷9.0=0.7667倍とする。10年後の自己資本7.4億円へこの倍率を掛けて床を積み上げてはいない。中立の実質的なPBR約0.788倍を下回る。再投資や赤字が現金を減らす場合は、現在の資産を維持するという床の条件が崩れるため、継続企業の価値は別途引き下げる必要がある。
確率:現状の赤字と受注変動に加え、顧客がAI制作を本格的に内製化し、競合に取引先を奪われる複合的な失敗を想定する。単なる景気の谷ではなく、10年後にも工数を売る事業が回復しない場合である。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
コーポレートコミュニケーション
企業理念、パーパス、社外向けブランド設計、企業サイト、広報映像などを一貫して支援する。人月・工数型のコンサルティングと制作受託に分類する。
| 数量年間の企業ブランド・広報支援案件数(件、分析者推定) | 価格1案件当たり売上高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 40.0 | 0.09 | 4 | 1 |
| 10 年後 中立 | 30.0 | 0.12 | 3 | 1 |
取り方:2025/09通期のコーポレート支援売上10.20887億円を、会社の2025/09第3四半期の4領域内訳であるコーポレートコミュニケーション265百万円、プロダクト&サービス127百万円、インナーブランディング371百万円の比率に従って仮配分した。3.546億円は領域別通期の公表実績ではない。会社は案件数と平均単価を開示していないため、年間40案件と仮定し、売上を案件数で割った8,864万円を平均単価とする。2025/09の通年受注額1,000万円以上の既存顧客34社、新規受注企業112社と混同しない。op_okuは直接制作費と当該領域に割り当てた人件費を控除した推定貢献利益であり、正式なセグメント営業利益ではない。残りの共通本社費は全社調整に計上する。AIエージェント代替の型は人月・工数型。参考市場は大企業・中堅企業1万社×年間発注500万~1,500万円の仮定で500億~1,500億円、参考シェア0.24~0.71%。
プロダクト&サービス・マーケティング
商品・サービスの広告戦略、コンテンツ制作、Web広告やデジタルマーケティングの改善を支援する。制作・運用型の広告受託に分類する。
| 数量年間の広告・商品マーケティング支援案件数(件、分析者推定) | 価格1案件当たり売上高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 25.0 | 0.07 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 16.0 | 0.07 | 1 | 0 |
取り方:2025/09のコーポレート支援売上10.20887億円に、同年第3四半期の同領域内訳127÷763を掛け、通期売上約1.699億円を仮推計した。通期の正式な領域別売上ではない。年間25案件を分析上の仮の数量とし、平均単価を約680万円と逆算した。会社の案件実数、媒体買付額と制作料の区分、広告運用手数料率は開示されていない。2026/09第3四半期の当領域は89百万円で、前年同期の127百万円より減少した。op_okuは推定貢献利益であり正式な部門利益ではない。AIエージェント代替の型は広告制作・運用型で、価格上昇率は物価を下回る。電通の2025年国内インターネット広告制作費4,922億円との比較では参考シェア約0.035%だが、対象範囲の不一致が大きい。
インナーブランディング
従業員への理念浸透、意識調査、組織文化改革、社員向け映像やイベントを支援する。人月・工数型のコンサルティングと制作受託に分類する。
| 数量年間の組織・社内ブランド支援案件数(件、分析者推定) | 価格1案件当たり売上高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 70.0 | 0.07 | 5 | 1 |
| 10 年後 中立 | 50.0 | 0.09 | 5 | 1 |
取り方:2025/09通期のコーポレート支援売上10.20887億円に、同年第3四半期の内訳371÷763を掛け、約4.964億円と仮配分した。領域の通期実績値ではない。案件数は非開示のため年間70件という推定を用い、平均単価約709万円を計算した。2026/09第3四半期の売上276百万円は前年同期371百万円から減少しており、数量の持続的増加を前提にしない。op_okuは直接原価と領域対応人件費控除後の推定貢献利益で、部門営業利益の開示ではない。人月・工数型のAI代替を適用し、社内調査や資料制作の自動化を案件数量の減少に含める。参考市場は大企業・中堅企業1万社×年間発注300万~1,000万円の仮定で300億~1,000億円、参考シェア0.50~1.65%。
リクルーティング
採用コンセプト策定、採用サイトや動画の制作、候補者体験の設計などを一貫して支援する。人月・工数型の採用コンサルティングと制作受託に分類する。
| 数量年間の採用ブランド・採用制作支援案件数(件、分析者推定) | 価格1案件当たり売上高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 85.0 | 0.06 | 5 | 2 |
| 10 年後 中立 | 60.0 | 0.08 | 5 | 1 |
取り方:2025/09通期のリクルーティング支援売上は約5.26165億円で、この額は会社開示に基づく。件数は非開示のため年間85案件と仮定し、平均単価を約619万円とした。2026/09第3四半期の売上467百万円は前年同期402百万円から16.2%増えたが、これを10年間の数量成長率に外挿しない。op_okuは正式開示のない領域別人件費等を配賦した推定貢献利益である。AIエージェント代替の型は人月・工数型。会社が引用する矢野経済研究所の2025年度新卒採用支援7市場予測1,532.6億円との比較では参考シェア約0.34%だが、採用媒体等も含まれるため厳密なシェアではない。
リスクと懸念
AIエージェント代替
4つの事業領域のすべてが、調査、企画、資料作成、映像・Web制作、広告運用など、人の作業時間を顧客へ売る要素を持つ。AIエージェントがこれらを代替すると、企業が同じ成果物に支払う外注費が減る。経営層との対話は残っても、従来の制作売上を維持できるとは限らない。AIを自社で使う利益と顧客に奪われる利益を区別して監視する。
大型案件の失注と受注時期の偏り
同社は一件の大型案件が売上と利益を左右しやすい。2026年9月期には受注までの期間長期化と大型案件の失注が起き、通期予想を下方修正した。季節的にも売上が第2四半期へ集中する傾向があり、四半期の好不調だけで年間の実力を判定しにくい。通年受注額1,000万円以上の既存顧客社数と受注残の質を重視する。
人材投資と固定費の回収不足
上場後に営業と制作の専門人材を増やしたが、2025年9月期は営業赤字に転落した。売上が減れば外注費は調整できる一方、社員給与や営業部門の費用、事務所賃料はすぐには下がらない。中立の黒字化は将来の固定費圧縮に依存する。人件費の上昇を上回る生産性改善が実現しなければ、売上が名目で増えても株主利益は縮む。
競争と価格決定力の不足
電通、博報堂、大手人材会社、専門制作会社、顧客の内製チームが仕事を奪い合う。会社には毎期約7割のリピートという実績があるが、金額ベースの解約率や単価改定の継続実績は開示されていない。AIによって小規模な競合でも制作を完結しやすくなるため、広い提供範囲がそのまま高い利益率の堀になるとは考えない。
余剰現金と少数株主の取り分
約6.9億円の純現金は時価総額の半分以上に当たるが、株主が直ちに現金化できるわけではない。上位10株主の保有比率が高く、過去の通常配当と自社株買いの実績は乏しい。優待の充実は一定の還元ではあるものの、全株主へ均等に現金が配られる制度ではない。利益率の低い事業への再投資で資産を減らす資本配分リスクを負う。
AI新サービスの競争優位の未確認
2026年にAIO・LLMO最適化サービスを始めたことは環境変化への対応として評価できる。しかし、売上高、継続契約数、利益率などの実績は確認できない。類似サービスは広告代理店やSEO会社、AIツール事業者も提供でき、独自の規制対応や排他的なデータ資産があるとは言えない。新サービスの発表だけで長期成長率や企業価値を引き上げない。
今後の分かれ目
- 通年受注額1,000万円以上の既存顧客が34社を明確に超えて増え、受注額と営業利益も同時に伸び続けたら
- 顧客単価と横展開の実効性が確認できる。中立の案件数量を上方修正し、やや楽観の確率を引き上げる。ただし、受注の増加が外注費や営業費の増加を伴わないことを確認する。
- AI関連サービスについて実際の売上金額、継続契約数、粗利益率が開示され、既存制作売上の減少を補い始めたら
- 確認できた新規売上の分だけ別の事業として数量と単価を積み増す。制作の自動化を単なる費用削減だけでなく成長源として評価する余地が生まれるが、未開示の将来契約は加えない。
- 営業赤字が続く中で、販売費及び一般管理費が売上の変動に合わせて下がらなかったら
- 中立で必要とした固定費圧縮が成立していない。10年後の営業利益と純利益を引き下げ、価値を資産の床へ近づける。費用削減に伴う退職関連費用や事務所の固定費も確認する。
- リクルーティングが増収を続けても、コーポレートとインナーの減収が埋まらなくなったら
- 一貫支援による横展開という会社の戦略が期待ほど機能していないと判断する。4領域の数量を別々に下げ、採用支援だけの好調を全社に外挿しない。
- 通常配当の開始や大規模な自社株買いが実行され、余剰資金の株主還元実績が蓄積したら
- 現金の戻り方を50%から75~100%へ見直せる可能性がある。事業の収益力が同じでも現金資産に対する少数株主の価値は高まるため、配当と自社株買いの実行額を確認する。
- 純現金が赤字補填や収益性の不明な買収によって大きく減少したら
- 悲観側の資産の床を直ちに下げる。2025年9月期の純現金約6.9億円は永久に維持される保証ではない。資金の用途と回収見通しを確かめ、継続企業としての価値と換金性資産を分け直す。
見ておくもの
- 受注額の推移と、受注残高が売上高へ転換される速度
- 通年受注額1,000万円以上の既存顧客社数と新規受注企業社数
- コーポレートコミュニケーション、インナーブランディング、プロダクト&サービス・マーケティング、リクルーティングの領域別売上
- 売上総利益率、外注費率、販売費及び一般管理費の絶対額
- AIO・LLMO最適化サービスの有償契約数、売上高、粗利益率
- 人員数と1人当たり売上高・営業利益の推移
- 配当・自社株買いの実行、優待制度の継続、純現金残高
- 2026年9月期の確定決算と次年度計画における赤字解消の進捗
倍率と資本コストの決め方
現在の株価877円と株数1,433,455株から計算した時価総額は約12.57億円だが、10年後の案件数、単価、直接利益、共通費、純利益、倍率は現在の株価から逆算していない。財務の起点は添付factsの2025年9月期とし、2026年8月の下方修正を事業見通しの検証に使った。4領域の案件数と単価は会社が開示しないため推定値であり、領域別営業利益も共通費配賦による推定である。物価年3%は単価側だけに入れ、実質数量へ重複加算していない。長期のAI代替は中立の数量とg_long=0%で表し、kの寿命調整には加えていない。正当化PERはk=8.25%とg=0%による12.12倍で、市場の過去PERを使っていない。悲観側のPBRは10年後の積み上がった自己資本ではなく現在の自己資本9.0億円を分母とする。純現金6.9億円のうち4.0億円を余剰現金とし、株主へ戻る割合を50%に制限した。新リース会計基準の適用による使用権資産とリース負債の両建て表示は、事務所賃借の固定的な約束を可視化するものであり、同じ賃料を二重に費用計上しない。なお、時価総額の悲観的な床は現時点の資産価値であって、将来の赤字による現金流出まで免除するものではない。確率8%、18%、33%、24%、17%を用い、10年間の還元を平均5年時点で割り引くと現在価値は約4.78億円、現在の時価総額との差は約マイナス61.9%となる。結論は明確に割高である。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債利回り3.0%と株式リスクプレミアム4.5%による基準7.5%に、品質調整+0.75%を加えた8.25%。赤字でも純現金が厚く、現時点で存続の危機を示す継続企業の前提の注記は確認できないため、財務困難による追加上乗せはしない。