結論
DeNA は、スマホゲームを軸に、ライブ配信、プロ野球のベイスターズ、医療と AI の新事業を持つ会社だ。筆者の結論は、利益で測った 10 年の価値が今の値段を 14% ほど下回る「やや割高」である。理由は単純だ。稼ぎの 9 割を占めるゲームが、ヒット頼みで先を読めないからだ。
足もとの数字は、一発の大きさと反動を物語る。『ポケポケ』が当たった 2025 年 3 月期は営業利益 290 億円だった。翌期は 187 億円に落ち、今期の会社予想は 150 億円だ。ポケポケの月間利用者は 1 年で 3,900 万人から 2,300 万人に減った。ヒットが長く続くことはあっても、次の当たりを約束してくれる者はいない。
一方で、土台は厚くなった。配信は黒字に転じ、球団は観客動員の最多を更新し、街づくりの施設も動き出した。純現金は自社株買い後も 800 億円ほど残る。南場智子氏の社長復帰で、M&A と新規事業を動かす方針も出ている。
だが、土台の稼ぎは小さい。ゲームを除いた事業の利益は 10 年後の中立でも 70 億円台にとどまる。ゲームが当たれば価値は 2 倍になりうるが、外れれば半分以下だ。この幅の広さを、筆者は安全域の薄さと見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、DeNA の評価は割れる。現金は厚く、自社株買いで株主に戻す姿勢も見えた。一方、肝心の稼ぐ力は読みにくい。
良い事業の条件は、10 年後も同じ形で稼いでいると確信できることだ。DeNA のゲームは、その確信を持ちにくい。ポケポケのような大ヒットは何年かに一度しか来ず、次を狙う新作の確度も低い。事業の本質は、毎年くじを引く仕事に近い。
オーナーとして持ち続けたいかと問われれば、条件付きだ。ヒットが出なくても現金と球団と配信が支えてくれる。ただ、それは守りであり、大きく増える資産ではない。
安全域を見ると、利益で測った 10 年の価値は今の値段を 14% ほど下回る。つまり、値段の側に余裕がない。むしろ現金 800 億円の分だけ下は支えられているが、時価総額の 3 割は現金なので、事業そのものにはほとんど値段をつけていない相場に見える。この点は割安の材料だが、筆者は事業の稼ぐ力を確信できないため、割安とは言い切れない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心はゲームだ。2026 年 3 月期の売上 644 億円に対し、セグメント利益は 297 億円。全社の営業利益 187 億円を、ゲームだけで上回る。
その主力が『ポケポケ』だ。ポケモンのカードを集めて遊ぶアプリで、ポケモン社などと共同で開発・運営している。売上は、共同開発先の取り分と決済手数料を引いた自社分だけを計上する。課金の約 7 割は海外から来る。『マリオカート ツアー』のような長寿タイトルが土台を支える。
2 本目の柱はライブ配信だ。『Pococha』は一般の人が配信し、視聴者の投げ銭が収益になる。『IRIAM』は VTuber 向けだ。売上 398 億円、利益 40 億円で、赤字から黒字に変わった。
3 本目はスポーツと街づくりだ。ベイスターズは主催試合の観客動員で球団史上最多を更新している。売上 328 億円、利益 18 億円と薄いが、横浜関内の BASEGATE の直営施設が動き出し、今期の第 1 四半期は利益が 24% 伸びた。
ヘルスケアは医療情報サービス『Join』に絞って赤字を縮めている最中で、新規事業は AI の事業を同時に複数試す段階だ。この 2 つは今も赤字である。GO(旧 Mobility Technologies、タクシー配車)は 2026 年 6 月の上場で持ち分を 4.99% まで減らし、評価益 395 億円を計上した。事業としての稼ぎは外れた。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、ゲームでは薄い。DeNA は自社で IP(作品の権利)を持たず、ポケモンやマリオなど他社の人気作品に頼る場面が多い。ヒットを生む力は本物だが、同じ成功を毎年続ける仕組みはない。実際、全社の営業損益は 2020 年 3 月期と 2024 年 3 月期に大きな赤字を出している。
強みは別のところにある。ゲームの共同運営のうまさと、課金の仕組みを磨く運営力は、ポケポケの成功で外からも確かめられた。配信は、配信者と視聴者が互いに離れにくい面があり、IRIAM は VTuber という狙いのはっきりした場を持つ。球団は、地域に根づいた数少ない資産で、人気は景気や流行に左右されにくい。
資本の使い方は、ここ数年で変わった。長く現金をためてきたが、2026 年に 500 億円の自社株買いをやり切った。これは評価できる。一方で、アルムののれん減損 99 億円のような買収の失敗もある。
資本効率は低い。ROE の中央値は過去 10 年で 8.5%、資本コストと同程度だ。純現金が時価総額の 3 割を超え、事業に使われていない分が資本の効率を落としている。経営は創業者の南場智子氏が社長に戻った。M&A と新規事業を動かす方針は期待でもあり、懸念でもある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ゲームは、国内市場がほぼ飽和している。人口が減る日本では、主戦場は海外だ。ポケポケは利用者の課金の約 7 割が海外から来ている。世界のスマホゲームは、中国・韓国・米国の大手が資本力で勝負する。DeNA が勝てるのは、日本の人気作品の権利を持つ相手と組める場面に限られる。
ヒットの寿命も短くなった。ポケポケの月間利用者は、ピークの 5,100 万人から 2,300 万人へ半分以下になった。大きく当たるほど、反動も大きい。そこで会社は、小さく始めて確かめてから広げる「ソフトローンチ」を新作の基本に据えた。今年度に 1〜2 本を本格運営に移す計画だ。
ライブ配信は、TikTok のライブ配信、17LIVE、SHOWROOM、そして VTuber の事務所と競う。投げ銭は一部の熱心な人に偏るため、規制の変化や利用者の飽きに弱い。Pococha は規模を追うのをやめ、収益性を優先する方針に切り替えた。
スポーツは、プロ野球の観客動員が全体に増えている。球場の収容力はほぼ使い切っているので、伸ばす余地は 1 人あたりの売上、つまり飲食・グッズ・協賛・年間の施設利用だ。
生成 AI は、ゲームの開発費を下げる追い風でもあり、新規参入を増やす逆風でもある。DeNA は『AI オールイン』を掲げ、約 10 本の AI 製品を試している。
資本政策と M&A
資本政策は、この 1 年で大きく動いた。2026 年 2 月、発行済株式の 22% にあたる 2,500 万株、500 億円を上限とする自社株買いを決め、7 月 7 日に 1,911 万株・約 500 億円で買い終えた。取得した株は全て消却する方針で、株数は約 1.12 億株から約 9,250 万株に減る。配当は 2026 年 3 月期に前期を上回り、配当性向は 38.5% だった。
資産の整理も進む。GO は 2026 年 6 月に東証グロースへ上場し、DeNA は 1,612 万株を約 366 億円で売り出した。持ち分は 4.99% に下がり、持分法の対象から外れた。
M&A は両面がある。IRIAM は約 120 億円で完全子会社にしたが、アルムでは 99 億円ののれんを減損した。南場氏は社長復帰にあたり、3 年をめどに組織を変え、M&A と新規事業を進める方針を示した。ためた現金の使い道として、筆者はここを最も注視している。
買われる側になる可能性は低い。時価総額は 2,400 億円ほどで、買収の対象としては小さくない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ポケポケは、ピークで 5,000 万人が遊ぶアプリに育った。ポケモンの IP と、DeNA の運営力が組み合わさった成功は、一度きりの偶然ではない。ライセンスを持つ相手が DeNA を選び続けるなら、次の協業の機会は十分にある。
ゲームを除いた事業も形になってきた。配信は黒字になり、IRIAM は四半期で初めて黒字を出した。球団は観客動員の最多を更新し、BASEGATE の直営施設の分だけ利益が増えた。スポーツ・街づくりの利益は第 1 四半期で 24% 伸びている。
そのうえ、資本の姿勢が変わった。500 億円の自社株買いを 5 か月で使い切り、全株を消却する。純現金は買い戻し後も 800 億円ほど残り、時価総額の 3 割を占める。南場氏が社長に戻り、M&A を含めて動く方針だ。ゲームが当たれば、時価総額は大きく見直される。ポケポケ級が 1 本出れば、営業利益は 400 億円規模にもなりうる。会社の今期予想 150 億円は、保守的に見える。
慎重な見方
ポケポケの反動は、まだ終わっていない。第 1 四半期のゲーム利益は 62% 減り、月間利用者は 2,300 万人まで落ちた。1 年前の 6 割だ。ポケモンの人気作品で、あのレベルのヒットがもう一度起きる保証はない。
問題は、ゲーム以外の利益が小さいことだ。配信の利益は 40 億円、球団と街づくりは 18 億円、医療と新規は赤字だ。ゲームを失えば、全社の営業利益は 100 億円を割る。スポーツは将来の期待こそあるが、野球の観客動員は球場の収容力という天井に近い。
資本の使い方にも疑問が残る。アルムののれん 99 億円の減損は、買収の判断が当たらないこともあるという記録だ。南場氏は M&A と新規事業を進めると言うが、手元の現金を使った買収が失敗に終わる確率は、過去の例からして低くない。
そして、純現金 800 億円が時価総額の 3 割を占める事実は、割安の根拠にならない。ゲームのヒットが来ないなら、現金は事業に戻るか、失敗した買収に消えるだけだ。利益は読めず、倍率を高く置く根拠が見当たらない。
どちらに重みを置いたか
強いのは、慎重な見方だ。ポケポケ級のヒットが再び来る可能性は否定しないが、10 年で見れば確率は低く、ゲームの利益は中立でも今より細ると読む。土台の事業は育ちつつあるものの、利益の規模はまだ小さく、ゲームの穴を埋められない。
確率は、中立に 33% と最も重く置いた。やや悲観に 28%、悲観に 16% と、下側に寄せて 4 割強にした。楽観は 6%、やや楽観は 17% にとどめた。ヒットが続く筋書きを軽視するわけではないが、一発の成功の後に反動で細る形を、この会社は過去にも繰り返している。
結果として、10 年の価値は今の値段を 14% ほど下回る。現金の厚みが悲観の底を支えるため、割高の度合いは限られる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,232 円2,990 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,395 円1,290 億円)。 今の値に割り戻すと 2,357 円2,180 億円、今との差 −7.7%、 期待の年率 +6.1%(資本コスト 8.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 8,753 円8,095 億円 | 2,595 円2,400 億円 | +344.2% | +16.1% | 681 円630 億円 |
| やや楽観 | 17% | 5,654 円5,229 億円 | 2,054 円1,900 億円 | +201.7% | +11.7% | 1,310 円1,212 億円 |
| 中立 | 33% | 3,828 円3,541 億円 | 1,622 円1,500 億円 | +113.4% | +7.9% | 1,799 円1,663 億円 |
| やや悲観 | 28% | 1,522 円1,408 億円 | 1,081 円1,000 億円 | +1.9% | +0.2% | 729 円674 億円 |
| 悲観 | 16% | 352 円326 億円 | 324 円300 億円 | −73.5% | −12.4% | 108 円100 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,232 円2,990 億円 | 1,395 円1,290 億円 | +81.1% | +6.1% | 4,627 円4,280 億円 |
今の株価時価総額 2,555 円2,363 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 6% ポケポケ級のヒットが続き、ゲームが再び稼ぎ頭になる 10 年 利益 479 億円 · PER 15.7 倍 · 株価時価総額 8,753 円8,095 億円
ポケポケの運営力が評価され、次の共同開発も当たる。2 本目の大型ゲームが加わり、ゲームの利用者は平均 3,600 万人に戻る。売上は 1,000 億円近く、利益は 400 億円を超える。
配信は IRIAM が VTuber 市場で育ち、課金ユーザーが 55 万人に増える。利益は 135 億円と、いまの 3 倍強だ。球団は BASEGATE の通年営業で 1 人あたりの売上が伸び、スポーツ・街づくりの利益は 80 億円台に達する。AI の新規事業は 1 つが形になる。
会社全体の営業利益は 630 億円ほど。純現金は還元に回り、配当と買い戻しで 2,400 億円を戻す。ゲームの当たりに複数の幸運が重なる、最も良い形である。
- ゲーム:数量 3,600(主力ゲームの年間平均 MAU(万人、推定))× 価格 2,730(1 MAU あたりの年間の自社取り分(円、推定))→ 売上 983 億円・営業利益 413 億円。利用者 3,600 万人、課金単価は物価より少し上、利益率 42%
- ライブ配信:数量 55.0(課金ユーザー数(万人、推定))× 価格 144,239(1 人あたりの年間の自社売上(円、推定))→ 売上 793 億円・営業利益 135 億円。課金 55 万人、IRIAM が VTuber 市場で成長
- スポーツ・スマートシティ:数量 250(ベイスターズ主催試合の観客動員(万人))× 価格 23,751(観客 1 人あたりの年間売上(円。チケット・飲食・物販・協賛・施設を含む))→ 売上 594 億円・営業利益 83 億円。BASEGATE の通年営業で 1 人あたりの売上が伸びる
- ヘルスケア・メディカル:数量 6,000(導入先の契約数(件、推定))× 価格 4,350,000(1 契約あたりの年間売上(円、推定))→ 売上 261 億円・営業利益 26 億円。Join が普及し黒字化
- 新規事業・その他(AI など):数量 16.0(事業の数(本、推定))× 価格 780,000,000(1 事業あたりの年間売上(円、推定))→ 売上 125 億円・営業利益 25 億円。AI 製品の 1 つが当たる
倍率:事業の純利益 472 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.9% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)500 億円。全体の PER 15.73 倍、時価総額 7,925 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ポケポケ級のヒットが 1 本以上続き、新規事業の 1 つも当たる必要がある。起きれば価値は大きいが、複数の幸運が重なる形で、確率は低い。
やや楽観 17% ゲームが踏みとどまり、配信と球団が積み上がる 10 年 利益 326 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 5,654 円5,229 億円
ポケポケは、ポケモンの人気に支えられて低い水準で長く残る。加えて、中ヒットが 1 本は出て、ゲームの利用者は 3,000 万人を保つ。収益化の工夫で、1 人あたりの課金も物価並みに伸びる。ゲームの利益は 290 億円になる。
配信は黒字が定着し、利益は 90 億円ほど。球団は施設の収益が伸び、スポーツ・街づくりの利益は 70 億円弱になる。ヘルスケアは黒字化し、新規事業も赤字を脱する。
営業利益は 420 億円ほど。配当と買い戻しは 1,900 億円。ゲームが足を引っ張らず、土台が少しずつ広がる形である。
- ゲーム:数量 3,000(主力ゲームの年間平均 MAU(万人、推定))× 価格 2,613(1 MAU あたりの年間の自社取り分(円、推定))→ 売上 784 億円・営業利益 290 億円。利用者 3,000 万人、利益率 37%
- ライブ配信:数量 46.0(課金ユーザー数(万人、推定))× 価格 137,276(1 人あたりの年間の自社売上(円、推定))→ 売上 631 億円・営業利益 88 億円。課金 46 万人、黒字が定着
- スポーツ・スマートシティ:数量 248(ベイスターズ主催試合の観客動員(万人))× 価格 21,977(観客 1 人あたりの年間売上(円。チケット・飲食・物販・協賛・施設を含む))→ 売上 545 億円・営業利益 68 億円。施設の収益で 1 人あたりの売上が伸びる
- ヘルスケア・メディカル:数量 4,800(導入先の契約数(件、推定))× 価格 4,060,000(1 契約あたりの年間売上(円、推定))→ 売上 195 億円・営業利益 12 億円。黒字化
- 新規事業・その他(AI など):数量 12.0(事業の数(本、推定))× 価格 499,200,000(1 事業あたりの年間売上(円、推定))→ 売上 60 億円・営業利益 3 億円。赤字を脱する
倍率:事業の純利益 319 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.9% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)500 億円。全体の PER 14.27 倍、時価総額 5,052 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ポケポケが細りながら長く残り、新作も 1 本は当たる形。ゲームの再成長は期待できるが、10 年を通じて続く確率は高くない。
中立 33% ゲームは今より細り、配信と球団で支える 10 年 利益 233 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 3,828 円3,541 億円
ポケポケの反動が収まる。ただし、あのレベルのヒットは繰り返さない。新作は出ては消え、ゲームの利用者は平均 2,500 万人に細る。1 人あたりの課金は物価並みに伸びて、売上は 650 億円ほど。利益は 215 億円で、いまの 7 割だ。
配信は課金ユーザー 38 万人で横ばい、利益は 60 億円弱。球団は観客動員が収容力の天井に近く、伸びるのは 1 人あたりの売上だ。飲食・グッズ・施設で物価を上回って伸び、利益は 50 億円台になる。医療は小さな黒字、AI は先行投資の赤字が残る。
営業利益は 290 億円ほど、純利益は 230 億円ほど。配当と買い戻しで 1,500 億円を戻す。突出した当たりはないが、土台が事業を支える、平凡な 10 年である。
- ゲーム:数量 2,500(主力ゲームの年間平均 MAU(万人、推定))× 価格 2,613(1 MAU あたりの年間の自社取り分(円、推定))→ 売上 653 億円・営業利益 215 億円。利用者 2,500 万人、価格は物価並み、利益率 33%
- ライブ配信:数量 38.0(課金ユーザー数(万人、推定))× 価格 133,297(1 人あたりの年間の自社売上(円、推定))→ 売上 507 億円・営業利益 58 億円。課金 38 万人で横ばい、利益率 11.5%
- スポーツ・スマートシティ:数量 245(ベイスターズ主催試合の観客動員(万人))× 価格 20,475(観客 1 人あたりの年間売上(円。チケット・飲食・物販・協賛・施設を含む))→ 売上 502 億円・営業利益 53 億円。観客は天井圏、1 人あたりの売上が物価を上回って伸びる
- ヘルスケア・メディカル:数量 4,000(導入先の契約数(件、推定))× 価格 3,886,000(1 契約あたりの年間売上(円、推定))→ 売上 155 億円・営業利益 5 億円。小さな黒字
- 新規事業・その他(AI など):数量 12.0(事業の数(本、推定))× 価格 418,080,000(1 事業あたりの年間売上(円、推定))→ 売上 50 億円・営業利益 −4 億円。先行投資の赤字が残る
倍率:事業の純利益 226 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.0% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)500 億円。全体の PER 12.64 倍、時価総額 3,357 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ポケポケの反動が収まり、新作が出ては消えるゲームの利益が今の 7 割ほどで落ち着く。配信と球団が少し伸びる。最も重く置く筋書き。
やや悲観 28% ヒットが続かず、ゲームの利益が半減する 10 年 利益 103 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 1,522 円1,408 億円
ポケポケは細り続け、新作も当たらない。ゲームの利用者は平均 1,900 万人まで減り、課金の単価も競争で物価に追いつかない。ゲームの利益は 115 億円と、いまの 4 割に落ちる。
配信は TikTok や他のライブアプリとの競争に押され、課金ユーザーが 30 万人に減る。利益は 26 億円ほど。球団は堅調だが、街づくりの先行投資が重く、スポーツ・街づくりの利益は 30 億円。医療と新規事業の赤字は続く。
営業利益は 115 億円ほど。ゲームの穴を、ほかの事業では埋められない。南場氏が進めた買収も、思ったほど利益を生まない。還元は 1,000 億円にとどまる。
- ゲーム:数量 1,900(主力ゲームの年間平均 MAU(万人、推定))× 価格 2,535(1 MAU あたりの年間の自社取り分(円、推定))→ 売上 482 億円・営業利益 116 億円。利用者 1,900 万人、課金単価は物価に追いつかない
- ライブ配信:数量 30.0(課金ユーザー数(万人、推定))× 価格 124,344(1 人あたりの年間の自社売上(円、推定))→ 売上 373 億円・営業利益 26 億円。課金 30 万人に減る
- スポーツ・スマートシティ:数量 240(ベイスターズ主催試合の観客動員(万人))× 価格 18,291(観客 1 人あたりの年間売上(円。チケット・飲食・物販・協賛・施設を含む))→ 売上 439 億円・営業利益 31 億円。先行投資が重く利益率 7%
- ヘルスケア・メディカル:数量 3,000(導入先の契約数(件、推定))× 価格 3,770,000(1 契約あたりの年間売上(円、推定))→ 売上 113 億円・営業利益 −6 億円。赤字が続く
- 新規事業・その他(AI など):数量 10.0(事業の数(本、推定))× 価格 405,600,000(1 事業あたりの年間売上(円、推定))→ 売上 41 億円・営業利益 −12 億円。赤字が膨らむ
倍率:ROE は約 4%で、事業の ROE も k 8.5% を下回るので PER の上限は 1÷k = 11.8 倍。ヒットが続かず利益の質も低いので、上限の約 7 割(8.5 倍)にした。余った現金は谷で食うとみて 0.75 倍の 375 億円にした。
確率:新作が当たらず、ポケポケも静かに細る。過去の 2020 年、2024 年の大赤字からも、ヒットが途切れる年が来る確率は高いと見て厚めにした。
悲観 16% ヒット切れと買収の失敗が重なり、赤字に戻る 10 年 利益 −7 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 352 円326 億円
ゲームのヒットが 10 年途絶える。ポケポケは終わり、新作は小さく、ゲームの利用者は 1,300 万人まで減る。利益は 40 億円足らずだ。配信は課金ユーザーが 20 万人に落ち、赤字に戻る。
スポーツは球場の天井にぶつかり、1 人あたりの売上も伸びない。医療と新規事業は赤字を垂れ流し、AI への投資も回収できない。南場氏が進めた M&A でも、さらに数百億円の損が出る。営業利益は赤字になり、保有していた現金も目減りする。
還元 300 億円は純利益でなく、手元の現金と GO 株の売却で払う(この分は下の床から引き、二重には数えない)。自己資本は減損で 1,700 億円まで縮む。ただし、事業が傾いても純現金と GO 株の残りは手元に残る。構造的に負けた会社の床として、それを数える。
- ゲーム:数量 1,300(主力ゲームの年間平均 MAU(万人、推定))× 価格 2,438(1 MAU あたりの年間の自社取り分(円、推定))→ 売上 317 億円・営業利益 38 億円。ヒットが途絶え利用者 1,300 万人
- ライブ配信:数量 20.0(課金ユーザー数(万人、推定))× 価格 109,423(1 人あたりの年間の自社売上(円、推定))→ 売上 219 億円・営業利益 −7 億円。課金 20 万人、赤字に戻る
- スポーツ・スマートシティ:数量 220(ベイスターズ主催試合の観客動員(万人))× 価格 16,380(観客 1 人あたりの年間売上(円。チケット・飲食・物販・協賛・施設を含む))→ 売上 360 億円・営業利益 11 億円。観客減で利益率 3%
- ヘルスケア・メディカル:数量 2,000(導入先の契約数(件、推定))× 価格 3,480,000(1 契約あたりの年間売上(円、推定))→ 売上 70 億円・営業利益 −14 億円。赤字が拡大
- 新規事業・その他(AI など):数量 8.0(事業の数(本、推定))× 価格 374,400,000(1 事業あたりの年間売上(円、推定))→ 売上 30 億円・営業利益 −18 億円。投資を回収できず赤字
倍率:構造的に負けた筋書き。稼ぐ力は赤字(純損失 7 億円)なので、床は純現金と売れる資産の税後 625 億円から、還元に回す 300 億円を引いた 325 億円とする(決算の自己資本 2,326 億円に PBR 0.14 を掛けた値)。球団と街づくりの施設は事業の資産なので床には足さない。
確率:ゲームのヒットが途絶え、新規事業と買収の失敗が重なる形。DeNA は 2020 年、2024 年に営業赤字を出しており、構造的に起こりうる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ゲーム
スマホゲームの運営と開発。『Pokémon Trading Card Game Pocket』が主力で、『マリオカート ツアー』などの長寿タイトルが続く。
| 数量主力ゲームの年間平均 MAU(万人、推定) | 価格1 MAU あたりの年間の自社取り分(円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,300 | 1,950 | 644 | 297 |
| 10 年後 中立 | 2,500 | 2,613 | 653 | 215 |
取り方:FY3/26 の平均 MAU は、ポケポケが四半期ごとに 3,900 万・3,000 万・2,800 万人と細ったことから年平均で約 3,000 万人、そのほかのタイトルで約 300 万人と推定した(全社の MAU は開示がない)。売上 644 億円をこの 3,300 万人で割ると 1 人あたり年約 0.2 万円。この売上は、ポケモン社など共同開発先の取り分と決済手数料を引いた自社分である。価格は中立で物価並みの 1.34 倍。ただし新しく課金の仕組みを変えない限り実質では上がらないので、遊ぶ人の数が減る分を価格では補えない。
ライブ配信
ライブ配信アプリ『Pococha』と、VTuber 向けの『IRIAM』。視聴者の投げ銭が配信者と運営に分かれて収益になる。
| 数量課金ユーザー数(万人、推定) | 価格1 人あたりの年間の自社売上(円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 99,475 | 398 | 40 |
| 10 年後 中立 | 38.0 | 133,297 | 507 | 58 |
取り方:課金ユーザー数は開示がないので推定。投げ銭は一部の熱心な人に偏る構造で、1 人あたりの年間売上は大きくなる。売上 398 億円を 40 万人で割ると約 10 万円になる。価格は中立で物価並みの 1.34 倍。
スポーツ・スマートシティ
プロ野球の横浜 DeNA ベイスターズと横浜スタジアム、BASEGATE 横浜関内などの街づくり。今期からスポーツとスマートシティを 1 つに開示している。
| 数量ベイスターズ主催試合の観客動員(万人) | 価格観客 1 人あたりの年間売上(円。チケット・飲食・物販・協賛・施設を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 240 | 13,650 | 328 | 18 |
| 10 年後 中立 | 245 | 20,475 | 502 | 53 |
取り方:主催試合の観客は約 236 万人で、球場の収容力(約 3.4 万人 × 72 試合)にほぼ届いている。数量は 240 万人。売上 328 億円を 240 万人で割ると 1 人あたり約 1.4 万円。球場が満員に近いので、伸びるのは数量でなく 1 人あたりの売上である。
ヘルスケア・メディカル
オンライン診療・医療情報の『Join』などの医療 DX。まだ赤字が続く。
| 数量導入先の契約数(件、推定) | 価格1 契約あたりの年間売上(円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,000 | 2,900,000 | 87 | −23 |
| 10 年後 中立 | 4,000 | 3,886,000 | 155 | 5 |
取り方:契約数は開示がないので推定。売上 87 億円を 3,000 件で割ると 1 契約あたり約 290 万円。
新規事業・その他(AI など)
AI を使った新規事業の束。『AI オールイン』の方針で複数の事業を同時に試している。
| 数量事業の数(本、推定) | 価格1 事業あたりの年間売上(円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.0 | 312,000,000 | 25 | −16 |
| 10 年後 中立 | 12.0 | 418,080,000 | 50 | −4 |
取り方:1 本あたりの売上は小さい。売上 25 億円を 8 本で割ると 1 本あたり約 3 億円。 数量は実物(事業の数)で、名目の市場の伸びからは置いていない。
リスクと懸念
ヒットが続かない
利益の 9 割はゲームで、その大半はポケポケだ。月間利用者は 1 年で 3,900 万人から 2,300 万人に減り、第 1 四半期のゲーム利益は 62% 減った。次の大型ヒットが出る確率は低く、出なければ全社の営業利益は 100 億円規模に落ちる。
ポケモン社など共同開発先への依存
ポケポケは共同開発の作品で、売上は共同開発先の取り分を引いた自社分だけを計上する。条件が変わったり、提携が打ち切られたりすれば、ゲームの利益の柱が一度に細る。契約の条件は開示されておらず、ここは外から確かめられない。
買収と新規事業の失敗
アルムののれん 99 億円の減損が示すように、買収が思惑どおりに行かない例がある。南場氏の復帰で M&A と新規事業を進める方針が出ており、純現金の使い道が最大の論点になる。大型の買収が失敗すれば、現金の厚みが事業の損失で消える。
配信の規制と競争
ライブ配信の投げ銭は一部の熱心な利用者に偏る。課金の規制強化や、TikTok・17LIVE など競合の攻勢で課金ユーザーが減れば、黒字化したばかりの利益が戻る。Pococha は規模より収益性を優先する方針で、成長の余地は限られる。
球団の収容力の天井
ベイスターズの観客動員は球場の収容力に近く、数量で伸びる余地は小さい。1 人あたりの売上を伸ばす計画が当たらなければ、スポーツ・街づくりの利益は小さいままになる。街づくりの施設は先行投資が重く、稼働率次第で重荷にもなる。
海外課金への偏りと為替
ポケポケの課金は約 7 割が海外から来る。ドル円は 150 円で変わらないと置いたが、円高になれば円の売上と利益は目減りする。海外の規制やアプリストアの手数料の変更も、利益率に直接効く。
今後の分かれ目
- ポケポケに続く大型ヒットが出る
- ゲームの利用者と利益が戻り、10 年の楽観・やや楽観の確率が上がる。営業利益は 400 億円規模に近づく。
- ポケポケの月間利用者が 2,000 万人を割る
- ゲームの利益が想定より早く細り、やや悲観の筋書きに近づく。会社予想の 150 億円も届きにくくなる。
- 南場氏が大型の買収を発表する
- 純現金 800 億円の使い道が決まる。事業の相乗効果が見えれば価値は上がるが、割高な買収なら現金の分が失われ、悲観側の確率が上がる。
- IRIAM と Pococha の課金ユーザーが増え、配信の利益が 100 億円を超える
- ゲーム以外の稼ぎが太くなり、土台が厚くなる。やや楽観の筋書きに近づく。
- BASEGATE などの施設の利益が計画どおり積み上がる
- 球団と街づくりの利益が 1 人あたりの売上の伸びで増え、中立の想定を上回る。
- 追加の自社株買いや増配が出る
- 余った現金がそのまま株主に戻る確度が上がり、現金の分の価値がはっきりする。
見ておくもの
- ポケポケの月間利用者と、ゲームのセグメント利益の四半期ごとの推移
- ソフトローンチから本格運営に移る新作の数と、その初期の継続率
- Pococha と IRIAM の課金ユーザー数・利益
- スポーツ・スマートシティの利益(BASEGATE の稼働を含む)
- M&A の発表と純現金の推移、追加の株主還元
倍率と資本コストの決め方
ゲームの利用者数と課金単価、配信の課金ユーザー、球団の観客と 1 人あたり売上を積み上げ、10 年後の営業利益から純利益と PER を決めた。k は基本 7.5% に quality +1.0% を加えた 8.5%。今の株価・今の PER・過去の PBR は倍率の根拠にしていない。倍率は正当化 PER の上限の 7 割から 8.5 割で、ヒット頼みの利益の質に応じて置き、悲観側は稼ぐ力と純現金の床で置いた。店舗の賃借は小さい。新リース会計基準(2028/03 期から BS に家賃が載る)で営業利益・負債の形が変わる点は、10 年後の数字を今の形(家賃を営業費用に入れた形)にそろえて避けた。なお kabufu の株数(約 1.12 億株)は、自己株を足した誤りで、実際の自己株を除く株数は約 9,250 万株。時価総額は 2,385 億円で計算した。結論を今の株価に寄せてはいない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.1→15.73 倍・やや楽観 PER 12.9→14.27 倍・中立 PER 11.8→12.64 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。