結論
シグマクシスは、大企業の経営改革や基幹システム入れ替えを手伝う独立系のコンサルティング会社だ。コンサルタントは 692 人。売上は 238 億円、営業利益は 61 億円で過去最高を更新した。
結論から言う。筆者は、10 年後の本質価値は、今の時価総額 503 億円を下回ると見る。売上のほぼ全部が人月、つまり人の工数で売る仕事だからだ。
AI エージェントは、調査・資料づくり・設定作業という若手の仕事から置き換えていく。過去 10 年の人数の伸びは、10 年先の目安にならない。筆者は、中立でも人数は今より 35% 減ると置いた。値段も物価に追いつかない。小規模でブランドは大手に劣り、今期は売上が計画を 2 割外した。そのためベイカレントより重く見る。
救いは、財務と資本配分だ。借金はなく、稼ぎの 85% を返す方針も信頼できる。悲観でも純現金と売れる資産が床になる。ただ、縮む事業に高い倍率は払えない。成功報酬型への転換が数字で見えるまでは、割安とは言えない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず事業が 10 年後に存在し、今より強いかを問う。コンサルは大きな設備を要さず、稼いだお金のほぼ全額を株主に返せる。これは筆者の好む型だ。オーナー利益、つまり再投資を引いて株主の手元に残る利益は、純利益に近い。
堀は広くない。人が資産で、人の流出と採用難が最大のリスクだ。AI が若手の仕事を代替する速さも読み切れない。バリュー投資家は、予測しにくい事業ほど確信度を下げて安全域を厚く取る。この会社の 10 年は、鉄道や半導体ほど確かではない。
そのうえで、経営の資本配分は信頼できる。借金がなく、稼ぎを全額返し、過去の失敗(旧投資事業)を認めて整理した。割高な自社株買いをしている兆しもない。
安全域は、今の時価総額が稼ぐ力に比べて低い水準にあることで生まれる。楽観でも悲観でも負けにくい形ではないが、中立の筋書きでも今の値段を大きく上回り、悲観の筋書きでも失う額は小さい。この非対称さが、筆者がこの会社を評価する理由である。
警戒するのはコアコンセプトへの出資の値段と、利益率が今の 25% から下がる速さの 2 点だ。
見直し(AI エージェント代替):安全域は、稼ぐ力が 10 年残る前提の上に立つ。人月型の稼ぐ力が残る保証は、いま薄い。筆者は中立の数量を 0.65 倍まで落とし、割安の評価を取り下げた。資本配分の質は変わらず評価できるが、縮む事業に払ってよい値段は低い。
何で稼ぐ会社か
事業は経営コンサルティングの一本だ。顧客は運輸、金融、情報通信、小売、商社などの大企業で、経営の構想づくりから、クラウド型の業務ソフト(SaaS)の導入、データ基盤の整備、そのあとの定着までを請け負う。売上の中心は、コンサルタントの人月(1 人が 1 か月働く単位)である。
この会社の特徴は、案件の大きさに応じて外注を使い分けることだ。大型のソフト導入案件では外注が売上の 2 割に達した。外注分は利益が薄いので、売上は増えても利益率は下がる。今期は外注を 4 割減らし、売上は 9% 減ったが、営業利益率は 25% まで上がった。来期も外注比率は約 1 割を見込む。
人の数が事業の大きさを決める。2026 年 3 月末のコンサルタントは 692 人で、前年から 11% 増えた。毎年、新卒を 60〜90 人、経験者を 70 人ほど入れる。2027 年 4 月の新卒は約 80 人を目標にしている。
新しい試みは 2 つある。1 つは、成果に応じて報酬をもらう料金体系だ。人月ではなく結果に値段を付ける狙いで、AI で作業が早くなっても儲けが減らない形を探る。もう 1 つは、製造業の DX(デジタルによる業務改革)に強いコアコンセプト・テクノロジーとの資本提携である。
かつては投資事業も持っていたが、2025 年に停止した。承継した投資有価証券は約 29 億円で、市場を見て早めに売る方針だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、人と信頼の組み合わせにある。大企業の経営陣と直接つながる関係、案件を完遂した実績、顧客からの評価点(97 点)が積み上がり、同じ顧客から次の案件が来る。ただ技術や特許の堀ではなく、コンサルタントが辞めれば揺らぐ。筆者は堀を普通と見る。
収益力は高い。営業利益率は 25%、経常利益率は 27% だ。外注に頼らず自社の人で回すほど利益が厚くなる構造で、稼働率も高水準を保っている。借金はなく、自己資本比率は 83% ある。
ROE(自己資本に対する利益の割合)は 27.8% と高い。ただし背景は、稼ぎをほぼ全額配当と自社株買いで返し、自己資本を膨らませない経営にある。事業が小さな資本で回る人の商売だからできることだ。
弱みは 3 つ。規模が小さいこと、大型案件の出入りで売上が振れること、上位 10 社への売上の集まりが大きいことだ。大手のアクセンチュアや、同じ日本の独立系で利益率の高いベイカレントと比べて、ブランドと採用力は見劣りする。
経営の資本の使い方は評価できる。配当性向を 2030 年に 50% へ上げる方針を掲げ、今期は自社株買いで 300 万株を消却した。一方、旧投資事業の整理で 6.6 億円の特別損失を出した点は、過去の資本配分の誤りの跡である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の IT・DX 関連サービスは拡大が続いている。IDC Japan の予測では、コンサルティングや開発などプロジェクト型の市場は、2024 年から 2029 年まで年 9% ほどで伸び、2029 年に 5.5 兆円に達する。ただし伸びの多くは、システムの更新や人手不足を補う需要である。
競合は多層だ。最上位に外資のアクセンチュアや戦略系のコンサルが並び、日系ではベイカレント、フューチャー、アビームが大きい。シグマクシスは、その中堅の隙間で、経営の構想と業務改革を一緒に請け負う立場にある。国内プロジェクト型市場に占める売上は、大づかみで 0.5% ほどにすぎない。
人材の取り合いが業界の天井になる。コンサルタントの採用は年々競争が激しくなり、賃金も年 3% 以上で上がる。大手が質の高い人材を先に取れば、中堅は案件の選別と単価で戦うしかない。
いちばん大きな変化は生成 AI である。調査・資料づくり・コード作成といった若手の仕事が安く速くできるようになる。コンサルの値段が下がるのか、それとも AI を使いこなして 1 人当たりの稼ぎがむしろ増えるのか。同社は後者に賭け、AI 活用支援と成功報酬型の料金を打ち出している。会計などの基幹ソフトは、統制の要件から顧客が自前で作りにくく、導入支援の需要は残るというのが同社の見立てだ。
筆者は、この分かれ道が業界全体の 10 年の最大の論点と見ている。
見直し(AI エージェント代替):前の段落で「後者に賭けている」と書いた同社の見立てを、筆者は慎重に見る。AI エージェントが人月の仕事を置き換える速さは、過去の IT 化と同じ尺度では測れない。10 年の中立でも、コンサルタントの人数は今より 35% 減ると置いた。
資本政策と M&A
還元は積極的だ。2026 年 3 月期は配当性向は 54.5% で。加えて 26 億円を超える自社株買いをして、300 万株を消却した。稼ぎの 100% 超を株主に返したことになる。2030 年 3 月期に配当性向 50% という目標は、すでに超えている。
資本の使い道では、フリーキャッシュフローの約 3 分の 1 を、人材の採用と育成、生産性の向上に充てる。大型 M&A の経験はなく、買収で価値を壊す心配は小さい。
注意したいのは、2026 年 4 月に決めたコアコンセプト・テクノロジーへの出資だ。市場で株を買い集め、2027 年 3 月末までに持分法適用の水準まで引き上げる意向だが、相手方は合意していないと説明している。買収価格が高くなれば、資本の使い方としては疑問が残る。
もう 1 つは、旧投資事業から承継した投資有価証券の約 29 億円だ。早く売って株主に返せば、価値が生きる。
伊藤忠商事やインターネットイニシアティブなど事業会社が大株主に並ぶとされる。再編の対象になる可能性は、外部の試算では 10 年で 26% とされる。時価総額が小さく、買われる側の筋書きは無視できない。
10 年の還元は、配当性向 50% 目標と 2026 年 3 月期の実績(配当性向 54.5% に自社株買いを加えて 100% 超)の範囲で 85%。取得ずみの約 4 億円は除いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
成功報酬型が当たれば、AI で作業が速くなるほど儲けが増える。同社はその転換を早くから試している。コンサルタントは 692 人に増え、営業利益率は 25% と過去最高だ。借金がなく、稼ぎの 100% 超を返している。
AI の使い方を教える仕事も新しく生まれる。基幹ソフトの導入では、統制の要件から顧客が自前で作りにくく、導入支援の需要が残る。人が減っても、経営の構想を語れる少数精鋭は高く売れる。コアコンセプトとの提携が製造業の顧客を開けば、人数の減りを補える。
時価総額が小さいため、事業会社が買いに来る可能性もある。買収のプレミアムが付けば、価値は今を上回る。大株主に伊藤忠商事など事業会社が並ぶことも、その見方を支える。強気の見方は希望であって、数字の裏付けはこれからだ。それでも借金がなく、悲観でも現金が残る点は、他の人月型より守りが固い。小さな会社だからこそ、意思決定が速く、方向転換もしやすい。
慎重な見方
AI エージェントは、若手がやってきた調査・資料づくり・設定作業を数分で終わらせる。顧客は人月で買うのをやめ、同じ成果を半分の値段で求める。売上の大半が人月の同社は、いちばん先に影響を受ける。しかも顧客の大企業は、自社で AI エージェントを使い始めている。
今期の売上は計画の 300 億円に対して 238 億円にとどまった。上位 10 社への集まりが大きく、1 社の発注が止まるだけで稼働が空く。規模も小さく、アクセンチュアやベイカレントのような AI への投資力はない。
営業利益率 25% は過去最高で、10 年続く保証はない。2009〜2011 年には赤字を出した会社である。賃金は年 3% 以上で上がるのに、値段は上がらない。人の数が減れば固定費も重い。成功報酬型はまだ試行で、金額の開示もない。過去 10 年の人数の伸びは、10 年先の目安にならない。コアコンセプトへの出資の値段にも不安が残る。
どちらに重みを置いたか
事業の質と資本配分では強気の見方が光る。ただ筆者は、AI エージェントが人月型を置き換える流れのほうが10 年の価値を決めると見る。成功報酬型の売上が数字で出るまで、楽観にも数量 1.0 倍以上は置かない。
やや悲観と悲観を合わせて 40% を置いた。中立の数量と価格に置き換えの影響を入れたので、確率では重ねて引いていない。悲観でも純現金と売れる資産が残るので、元本の大半が消える形ではない。それでも、期待は今の値段を下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 393 円318 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 356 円288 億円)。 今の値に割り戻すと 446 円361 億円、今との差 −29.4%、 期待の年率 +1.7%(資本コスト 7.2%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 968 円783 億円 | 531 円430 億円 | +137.1% | +9.0% | 75 円61 億円 |
| やや楽観 | 17% | 729 円590 億円 | 457 円370 億円 | +87.7% | +6.5% | 202 円163 億円 |
| 中立 | 38% | 445 円360 億円 | 370 円299 億円 | +28.8% | +2.6% | 309 円250 億円 |
| やや悲観 | 25% | 154 円125 億円 | 305 円247 億円 | −27.4% | −3.2% | 115 円93 億円 |
| 悲観 | 15% | 86 円70 億円 | 237 円192 億円 | −48.9% | −6.5% | 48 円39 億円 |
| 加重平均 | 100% | 393 円318 億円 | 356 円288 億円 | +18.6% | +1.7% | 749 円606 億円 |
今の株価時価総額 632 円512 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 5% 成功報酬が定着し、人数は今の水準を守る 利益 55 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 968 円783 億円
AI エージェントが調査や資料づくりを肩代わりしても、同社は成功報酬型への移行に成功する。コンサルタントは平均 660 人の水準を守り、人数は増えない。1 人当たりの売上は物価並みの 1.34 倍まで上がり、売上は約 320 億円と今を 3 割余り上回る。外注は絞ったままで、利益率は今の 25% を保つ。コアコンセプトとの提携は協業にとどまり、貢献は小さい。過去 10 年のような人数の伸びは戻らない。人が減らないだけで十分に良い結果という、厳しい前提の上の楽観である。稼ぎの 85% を返す方針は変わらない。大手が AI エージェントに巨額の投資をしても、経営の構想づくりという上流の仕事で選ばれ続ける。
- 経営・DX コンサルティング:数量 660(年平均のコンサルタント数(人))× 価格 4,839(コンサルタント 1 人当たり年間売上(万円・外注分を含む))→ 売上 319 億円・営業利益 80 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 25%
倍率:事業の純利益 55 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 28.9% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 18.1%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)29 億円。全体の PER 13.79 倍、時価総額 783 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI エージェントを売り物にした売上・受注の金額開示がまだ無く、楽観でも数量は 1.0 倍までと決めた。成功報酬の定着、人の確保、利益率の維持が全部そろう筋書きなので 5% に絞った。
やや楽観 17% 人数は 15% 減り、単価を物価近くまで守る 利益 41 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 729 円590 億円
AI エージェントが若手の作業を引き受け、同じ案件に必要な人数が減る。コンサルタントは平均 560 人となり、今より 15% 少ない。成功報酬型が一部の顧客に広がり、1 人当たりの売上は物価に近い 1.28 倍まで上がる。売上は約 260 億円と今を 1 割ほど上回る。賃金が年 3% で上がる中、利益率は 23% に下がる。コアコンセプトとの関係は協業にとどまる。会社は小さいまま、高い利益率と全額還元で株主に報いる形が続く。大型案件の出入りは残り、年ごとの振れは変わらない。人を減らして回すぶん、離職を防ぐ仕組みが要る。
- 経営・DX コンサルティング:数量 561(年平均のコンサルタント数(人))× 価格 4,622(コンサルタント 1 人当たり年間売上(万円・外注分を含む))→ 売上 259 億円・営業利益 60 億円。数量 0.85 倍・価格 1.28 倍・営業利益率 23%
倍率:事業の純利益 41 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 22.7% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.0%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)29 億円。全体の PER 13.79 倍、時価総額 590 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI エージェントの導入で若手の作業が減る分、人数が減る筋書きの中で良い側。AI 活用支援の受注が補う前提で、17% を置いた。
中立 38% 人数は 35% 減り、値上げは物価に届かない 利益 24 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 445 円360 億円
AI エージェントが調査・資料づくり・設定作業の大半を引き受け、顧客は人月での発注を減らす。コンサルタントは平均 430 人まで減り、今より 35% 少ない。値段は賃金に追いつかず、1 人当たりの売上は 1.20 倍にとどまる。売上は約 186 億円と今より 2 割ほど減り、利益率は 19% に下がる。成功報酬型は一部に広がるが、人月の目減りを埋めるには足りない。コアコンセプトとの提携は貢献が小さい。採用は絞り、稼ぎの 85% を返す姿勢は保つが、返せる額は今より小さい。縮みながら黒字を保つ、静かな 10 年になる。
- 経営・DX コンサルティング:数量 429(年平均のコンサルタント数(人))× 価格 4,333(コンサルタント 1 人当たり年間売上(万円・外注分を含む))→ 売上 186 億円・営業利益 35 億円。数量 0.65 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 19%
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.4% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.8%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)29 億円。全体の PER 13.79 倍、時価総額 360 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI エージェントが人月の作業を置き換える流れの中心の筋書き。数量 0.65 倍、価格 1.20 倍と決まりの範囲の中ほどに置いた。数量と価格に入れた分を、確率と g で重ねて引いていない。
やや悲観 25% 人数が半分に減り、利益率が 1 割強へ 利益 12 億円 · PER 8.8 倍 · 株価時価総額 154 円125 億円
AI エージェントが若手の仕事の過半を代替し、同じ成果を安く求められる。コンサルタントは平均 340 人まで減り、今のほぼ半分になる。1 人当たりの売上は 1.08 倍と、物価に大きく届かない。売上は約 134 億円と今の 6 割弱に縮み、利益率は 13% まで下がる。固定の人件費と家賃が残り、採用も止まる。大手が AI エージェントに投資する力で先を行き、中堅の同社は案件の選別で防ぐ形になる。還元は縮むが赤字にはならない。成功報酬型は成果の測り方で顧客と揉め、思ったほど広がらない。会社は縮んだ姿で利益を出しながら、次の一手を探し続ける。
- 経営・DX コンサルティング:数量 343(年平均のコンサルタント数(人))× 価格 3,900(コンサルタント 1 人当たり年間売上(万円・外注分を含む))→ 売上 134 億円・営業利益 17 億円。数量 0.52 倍・価格 1.08 倍・営業利益率 13%
倍率:ROE 7.1% が k 7.25% 以下。ためた利益は額面未満の価値で、PER は 1÷k = 11.1 倍を上限に ROE÷k の割合で下げて 8.80 倍。g は名目 0.0%。人月・席の型で寿命は短く、g は名目 0%(横ばい)まで。堀は普通。 余った現金は戻り方を掛けて足す。
確率:AI エージェントが人月の作業を大きく置き換え、顧客が値下げを求める筋書き。人月型の小さな会社には起こりやすい形で、25% を置いた。
悲観 15% AI エージェントが人月型を置き換え、稼ぐ力が崩れる 利益 2 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 86 円70 億円
AI エージェントが調査から設計・導入まで広く請け負い、顧客は人月での発注をやめる。コンサルタントは平均 265 人まで減り、売上は約 91 億円と今の 4 割以下になる。1 人当たりの売上は 0.95 倍と、値下げを受け入れる。利益率は 3% に落ち、稼ぐ力は事業として残らない。有力なコンサルタントは大手や AI 企業に移る。顧客は AI エージェントを自社で使いこなし、外部に頼む理由が薄れる。残るのは純現金と売れる投資有価証券で、会社は小さく続くか、清算に近い形で株主に返す。人月型の事業そのものが、10 年後には意味を失っている。
- 経営・DX コンサルティング:数量 264(年平均のコンサルタント数(人))× 価格 3,430(コンサルタント 1 人当たり年間売上(万円・外注分を含む))→ 売上 91 億円・営業利益 3 億円。数量 0.40 倍・価格 0.95 倍・営業利益率 3%
倍率:稼ぐ力が崩れた姿。事業の稼ぎは床に使わず、純現金と売れる資産の税後(約 70 億円)を今の自己資本 143 億円に対する PBR で表す。
確率:AI エージェントが人月型を構造的に置き換え、売上が 10 年で半分以下になる筋書き。稼ぐ力そのものが崩れる形で、15% を置いた。やや悲観と合わせて 40%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
経営・DX コンサルティング
大企業の経営改革・SaaS 導入・データ基盤整備を請け負う独立系コンサルティング。
| 数量年平均のコンサルタント数(人) | 価格コンサルタント 1 人当たり年間売上(万円・外注分を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 660 | 3,611 | 238 | 61 |
| 10 年後 中立 | 429 | 4,333 | 186 | 35 |
取り方:コンサルタントは 2025/03 末 625 人、2026/03 末 692 人で、年平均を約 660 人とした。売上 238.3 億円を割って 1 人当たり約 3,611 万円(外注分を含む)。数量は人数(実質)、価格は 1 人当たり売上(名目)で、物価の分は価格に入れ 10 年中立で 1.34 倍とした。参考:IDC Japan のプロジェクト型市場は 2024〜2029 年に年 9.1% で伸びる予測で、同社の売上はその 0.5% ほど。 AI エージェント代替の型:売上のほぼ 10 割が人月(コンサルタントの工数)で売る型。成功報酬型は試行段階で、AI エージェントを売り物にして出た売上・受注の金額開示は確認できない。数量は 10 年中立で 0.65 倍(決まりの 0.55〜0.75 の中ほど。小規模でブランドと採用力が大手に劣り、今期は売上が計画を 2 割外したため、ベイカレントより重く置いた)、価格は物価 1.34 倍を上限に 1.20 倍とした。
リスクと懸念
AI エージェントによる人月型の置き換え(AI エージェント代替)
売上のほぼ全部が人月の工数で売る型だ。AI エージェントが調査・資料づくり・設定作業を肩代わりすれば、顧客は人月での発注を減らす。10 年の中立でコンサルタントは 35% 減り、値上げも物価に届かない。利益率は 25% から 19% に下がる。悲観では売上が 4 割以下に縮み、稼ぐ力が崩れる。
大型案件の出入りと顧客の偏り
上位 10 社への売上の集まりが大きく、1 社の発注が止まれば稼働が空く。今期は売上が計画の 300 億円に対して 238 億円で終わった。大型案件の外注依存を絞ったが、案件の山谷は今後も残る。
人材の確保と流出
事業の価値の大半はコンサルタントという人にある。採用競争は年々厳しくなり、賃金は年 3% 以上で上がる。有力なコンサルタントが大手や独立で抜ければ、顧客との関係ごと失う。新卒を年 80 人入れても、定着が下がると純増は伸びない。
景気後退での発注の凍結
経営改革や DX は景気のよい時に積み増される裁量費用だ。リーマン級の後退が来ると、案件の延期や取りやめが起きる。2009〜2011 年には赤字の期もあった。稼働率が下がると、人を抱えた固定費が利益を圧迫する。
コアコンセプトへの出資の値段
市場で株を買い集めており、相手方は合意していないと説明している。持分法適用まで引き上げるには、買い上がりの値段が高くなる恐れがある。製造業の顧客を取り込む狙いが外れれば、資本の使い方としては疑問が残る。
旧投資事業の整理
投資有価証券の約 29 億円は、市場を見ながら早期に売る方針だ。売り急げば損が出て、相場が悪ければ売れ残る。すでに今期 6.6 億円の特別損失を出しており、資本配分の失敗が繰り返されないかを見る必要がある。
今後の分かれ目
- AI エージェントを売り物にした売上・受注の金額が決算で開示される
- 開示が人数の目減りを補う規模なら、楽観側の数量を引き上げる。開示が無い間は、数量 1.0 倍を超える筋書きは置かない。
- 成功報酬型の料金が主力の顧客に広がる
- AI で作業が速くなっても儲けが減らない形ができ、楽観〜やや楽観の筋書きに近づく。
- 主力顧客の大型案件が終わり、稼働率が下がる
- 売上の振れが利益を圧迫し、中立からやや悲観の筋書きに寄る。人の採用の速度を落とすかが問われる。
- コアコンセプトとの提携が正式に合意され、持分法に入る
- 製造業の顧客層が広がる一方、買収価格の高さが資本配分の評価を左右する。
- リーマン級の景気後退が来る
- 案件の凍結で稼働が落ち、1〜2 年は利益が半分近くに減る。借金がないので存続は揺るがない。
- 事業会社が TOB(株式の公開買い付け)で買収に動く
- 時価総額が小さいため、プレミアムが付く可能性が高い。ただし大株主の意向が鍵になる。
見ておくもの
- コンサルタント数(692 人)の純増と離職率
- 営業利益率(今期 25%)と外注比率(約 1 割)
- 上位 10 社への売上の集中度
- 成功報酬型の料金の売上に占める割合
- コアコンセプトへの持株比率と提携の合意
倍率と資本コストの決め方
倍率は式だけで置いた。人月型なので長期の g(10 年より先の名目の伸び)は 0% とし、PER は 1÷k = 11.1 倍になる。k は AI エージェント代替の寿命で決まりの下限の +1.0% を上乗せして 9.0%。AI エージェント代替の理由は、主に中立の数量と価格に入れ、k は下限寄り、確率は 40%、g は 0% と、重ねすぎないようにした。やや悲観は ROE が k を下回るため式で PER が下がる。今の PER や同業・過去の倍率は使っていない。悲観は稼ぐ力でなく純現金と売れる資産の税後を床にした。今の株価が倍でも半分でも数字は動かない。リースは本社の賃借が中心で小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.11→13.79 倍・やや楽観 PER 11.11→13.79 倍・中立 PER 11.11→13.79 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。