結論
エヌ・シー・エヌは、木造住宅と大規模木造の耐震設計を請け負う会社だ。看板は「SE構法」で、木造に鉄骨並みの骨組みを持ち込み、全棟で構造計算をする。売上は84億円、営業利益は1.5億円。筆者の結論は、今の時価総額はほぼ妥当、というものだ。
追い風はある。2026年4月から木造住宅の壁量計算の基準が強まり、壁を減らして大きな開口を取れるSE構法の出番が増える。非住宅の大規模木造も、売上の3分の1を超えた。ただ、会社が示す来期の営業利益3億円は、直近の1億円台から倍増する計算で、筆者は全部は信じない。第1四半期は、営業赤字で始まった。
見かけは割安だ。純現金は時価総額とほぼ同じ約28億円ある。だが、この現金は自分のものではない。自己資本は21億円で、現金より小さい。差は負債側の前受金や預り金に近い性格のお金と見るのが自然だ。
事業の質は悪くない。工務店約630社のネットワークと、構造計算の蓄積は、すぐにまねできない。ただ、堀は広くない。住宅は人口の減少で縮む市場だし、構造計算は生成AIで安くなる仕事でもある。
結論として、本業の稼ぎだけを物差しにして、現金は価値に足さない。利益が積み上がるかを確かめる段階だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い仕組みを持つ小さな会社」だ。ただ、強い堀とまでは言えず、10年後が今より強いかは五分五分と見る。
オーナー利益、つまり株主のものになる利益は、直近で1.4億円ほどだ。設備投資は軽く、稼ぎのほとんどが現金になる。この点は良い。ただ、人員と販促の費用が先に出ており、利益に結びつくかは、これから証明が必要だ。
現金の扱いは、慎重に見たい。時価総額と同じ額の現金があるのは確かだが、前受金や預り金に近い性格のお金が含まれていれば、株主のものではない。筆者は現金を価値に足さず、事業の稼ぎだけで値段をつけた。
経営は借金を避け、配当を出し続けている。危ない買収もしていない。ただ、利益率が1〜2%台に落ちた今は、費用の使い方に疑問が残る。法改正の追い風を、利益に変えられるかが、経営の腕の見せどころだ。
安全域は、財務の堅さと小さな時価総額にある。ただ、事業の稼ぎが10年で大きく増える確証はなく、払う値段に余裕があるとまでは言えない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、工務店向けの構造設計のサービスだ。工務店がSE構法で家を建てると、NCNが構造計算をして、金物などの資材を供給し、設計のデータと住宅性能の保証を提供する。工務店からは、構造計算の手数料、資材の販売代金、保証の料金が入る。登録工務店は約630社で、全国のネットワークになっている。
SE構法は、鉄骨造やRC造で使う「ラーメン構造」、つまり柱と梁を固く組む骨組みを、木造に持ち込んだ自社の工法だ。壁の少ない大きな空間や、大きな窓を取りながら、耐震性を保てる。全棟で構造計算を行うことが、他の木造との違いである。
住宅が売上の約6割で、非住宅が約4割を占める。非住宅は、幼稚園・介護施設・店舗・オフィスなどの大規模木造だ。SE構法Ver.3では、階高6メートル、高さ30メートルまで設計できるようになり、36社の大規模木造のネットワークと組んで、ZEB(省エネの建物)の支援までを一括で請け負う。2026年度からは、相談窓口の「中大規模木造ビルディングサポートセンター」を開き、依頼を増やそうとしている。
2026年3月期は売上84億円、営業利益1.5億円で、増収だが減益だった。第3四半期までの累計では、売上総利益は微増したが、人件費・販売促進・広告宣伝の販管費が約9%増えて、利益を削った。通期の予想も、期の途中で下方修正した。
会社は2027年3月期に、売上93億円、営業利益3億円を見込む。ただし、第1四半期の売上は1.3%増にとどまり、営業は0.4億円の赤字だった。上期の弱さを、下期の法改正の効果で取り戻せるかが焦点である。
優良さと弱いところ
優良さは、中の上だ。堀、つまり他社がまねできない強みは、ネットワークと構造計算の蓄積にある。工務店は、SE構法の設計と保証を頼りに家を建てる。一度仕組みに載ると、別の工法に移すには、図面と社内の手順を作り直す手間がかかる。この切り替えの面倒さが、堀の中身だ。
営業利益率は2019年以降、1%から4.6%の間で動いた。2022〜2023年3月期の4.6%が山で、直近の1.8%は低い。人件費と販促費を増やす戦略が、利益率を押し下げている。筆者は、この費用が売上の伸びで回収されるかを見ている。
法令の変化は、この会社に有利に働きやすい。2025年4月から二階建て木造住宅も構造の確認申請が必要になり、2026年4月からは壁量計算の簡易設計の基準が強まった。構造計算を全棟で行う会社は、手間の差がそのまま売り物になる。
弱みは、市場が縮む点だ。新設住宅は人口の減少で長期に細る。構造計算は、AIで安く速くなる仕事でもある。外部に委託していた設計が、工務店やハウスメーカーの内製に戻るなら、手数料は下がる。
財務は、現金が厚いが、自分のものとは言い切れない。自己資本比率は35%で、現金は自己資本を上回る。株主に還元できる現金は、見かけよりずっと小さいと筆者は見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の新設住宅は、人口と世帯数の減少で、長い縮小に入っている。木造の戸建ては、その中では持ちこたえるが、10年で実質の件数が2割ほど減る見方が穏当だ。縮む市場の中で、SE構法のような差別化した工法がシェアを取れるかが勝負になる。
法令が、その勝負を後押しする。2025年4月から木造住宅の省エネ性能の確保が義務になり、二階建てにも構造の確認申請が要る。2026年4月には、壁量計算の簡易設計の基準が上がり、在来工法や2×4では必要な壁の量が大幅に増える。壁を減らしたい設計では、構造計算で自由度を出せるSE構法に分がある。
もう一つの成長の場は、非住宅の大規模木造だ。脱炭素の流れで、公共建築物や中規模の建物に木を使う動きが広がる。この分野は件数が少なく、1件の金額が大きい。NCNは売上の36%を非住宅で稼ぎ、構造の設計から保証まで一括で請ける体制を整えた。
競合は、大手のハウスメーカーの独自工法、プレカット工場系の構造計算サービス、構造設計事務所だ。非住宅では、鉄骨やRCの設計会社が木造に進出している。価格で競う局面が増える。
費用の面では、人件費が名目で年3〜5%上がる。構造計算は人手が要る仕事で、設計者の確保が難しい。生成AIで計算の補助が進めば、人手の負担は下がるが、単価も下がりやすい。筆者は10年の数量を、住宅で0.96倍、非住宅で約1.5倍と置く。
資本政策と M&A
資本政策は、配当を中心にしている。年間の配当は増配の基調で、2027年3月期は前期より引き上げる予想だ。総額は約1億円で、直近の純利益の約6割に当たる。自己株は、2023年にToSTNeT-3で買い付けた実績がある。
現金及び現金同等物は約29億円で、借入は軽い。ただ、自己資本は21億円と、現金より小さい。負債の側にある前受金や預り金の内訳は確かめられていない。事業に要らない分として分けて足すことはしない。
買収や大きな投資の実績は目立たない。成長は、自社の人員の採用と販促で追う形で、2026年3月期はその費用が増えた。優待は確認できなかったので数えない。
M&Aは、買う側にも買われる側にもなりうる。時価総額が27億円と小さく、現金が目立つため、買い手から見れば手を出しやすい。ただ、TOBの話は見つかっていない。この可能性は、確率の中で楽観側に少し反映させた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
2026年4月から、木造住宅の壁量計算の基準が強まった。在来工法や2×4では必要な壁が増え、設計の自由度が下がる。全棟で構造計算を行い、壁を減らして大きな開口を取れるSE構法は、ちょうどここで選ばれる。登録工務店は約630社あり、営業の足場はできている。
非住宅は、売上の36%まで育った。階高6メートル、高さ30メートルまで設計できるVer.3と、36社の大規模木造ネットワークで、一括で請け負う体制が整った。件数が増えれば、1件の金額が大きいので、利益が一気に伸びる。
費用の増加は先行投資だ。2026年3月期は人件費と販促費で営業利益が減ったが、法改正の効果が出る来期に回収する。会社は営業利益3億円を見込む。時価総額27億円は、現金と事業の稼ぎを考えれば、小さい。買い手が現れる余地もある。堅い財務を持つ小さな会社は、時価総額が利益の10倍を超えれば、評価の上振れ余地も大きい。工務店は、一度仕組みに載れば別の工法へ移しにくく、これが安定した収益の土台になる。
慎重な見方
会社の予想は、毎回楽観的すぎる。2026年3月期は、期の途中で下方修正した。来期の営業利益3億円は、直近の1.5億円の2倍で、第1四半期は営業赤字で始まった。売上の伸びは1.3%にとどまり、法改正の効果はまだ数字に出ていない。
住宅の市場そのものが縮む。人口と世帯数の減少で、新設住宅は長く減る。法改正が追い風でも、工務店の数が減れば、SE構法を使う登録工務店の数も増えにくい。
構造計算は、AIで安くなる仕事だ。工務店やハウスメーカーが、計算を内製できるようになれば、手数料は下がる。人件費は名目で年3〜5%上がり、人を増やして戦略を実行するほど、費用が先に膨らむ。
現金の厚さは、安全域にならない。自己資本は21億円で、現金より小さい。差は前受金や預り金に近いお金で、株主のものではない可能性が高い。資本コスト7.25%に届くかも、利益率が1〜2%台の今は怪しい。小さな会社は、一つの大型案件の失注や設計者の退職で、利益が大きく揺れる。
どちらに重みを置いたか
強気の見方が筋はよいが、時期の読みは慎重な見方のほうが強い。法改正の追い風は本物で、事業の稼ぎは確かに戻る方向にある。ただ、会社予想の倍増は割り引くべきで、現金も価値に足せない。確率は、中立とやや楽観に厚く置き、悲観は構造的な縮みに絞った。現金を価値に足さない点は、強気の見方にとっても確かめるべき宿題である。貸借対照表の内訳が開示で確かめられれば、見方は大きく変わりうる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,541 円46 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 436 円13 億円)。 今の値に割り戻すと 1,072 円32 億円、今との差 +20.1%、 期待の年率 +8.3%(資本コスト 7.2%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,775 円113 億円 | 738 円22 億円 | +405.3% | +17.6% | 361 円11 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,551 円76 億円 | 570 円17 億円 | +249.5% | +13.3% | 687 円20 億円 |
| 中立 | 34% | 1,599 円48 億円 | 469 円14 億円 | +131.6% | +8.8% | 703 円21 億円 |
| やや悲観 | 26% | 379 円11 億円 | 302 円9 億円 | −23.8% | −2.7% | 177 円5 億円 |
| 悲観 | 10% | 355 円11 億円 | 134 円4 億円 | −45.2% | −5.8% | 49 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,541 円46 億円 | 436 円13 億円 | +121.4% | +8.3% | 1,977 円59 億円 |
今の株価時価総額 893 円27 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 法改正と非住宅で、構造設計の主役になる 利益 6 億円 · PER 19.5 倍 · 株価時価総額 3,775 円113 億円
2026年4月の壁量計算の強化で、住宅のSE構法の選好が高まり、棟数が10年で1割以上増える。非住宅は、公共建築物の木造化と脱炭素の流れに乗り、件数が2倍を超える。構造計算と資材、保証を一括で請ける体制が評価され、利益率は4%台に届く。売上は170億円を超え、純利益は6億円近くになる。配当性向は6割を保ち、10年で20億円超を株主に戻す。構造計算のAI化は、手数料の低下ではなく、処理できる件数を増やす方向に働く。法改正が追い風になる局面では、構造計算を全棟で行える会社と、そうでない会社の差が最も開く。筆者は、この筋書きは会社が自力で届く範囲の上限と見ている。大型の買収は要らないが、設計者の確保が前提になる。
- 住宅(SE構法):数量 2,800(年間の物件数(棟、推定))× 価格 297(1 棟あたりの平均売上(万円・名目、推定))→ 売上 83 億円・営業利益 4 億円。2800 棟 × 1 棟 297 万円(今の 1.38 倍)、利益率 5.0%
- 非住宅(大規模木造):数量 440(年間の物件数(件、推定))× 価格 2,070(1 件あたりの平均売上(万円・名目、推定))→ 売上 91 億円・営業利益 6 億円。440 件 × 1 件 2070 万円(今の 1.38 倍)、利益率 6.5%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.4% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.5 倍。全体の PER 19.51 倍、時価総額 113 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:法改正の追い風と非住宅の成長が重なり、利益率も4%台に届く道。会社の過去の山の4.6%に迫る水準なので、起こる確率は低いと見る。
やや楽観 22% 住宅は横ばい、非住宅が着実に育つ 利益 4 億円 · PER 18.0 倍 · 株価時価総額 2,551 円76 億円
住宅の棟数は10年で4%増え、法改正の効果が市場の縮みをわずかに上回る。非住宅は件数が1.8倍に増え、1件の金額も物価並みに上がる。費用の先行投資は、売上の伸びで回収される。営業利益は5億円台に乗り、利益率は3.7%になる。配当性向は6割程度を保ち、10年で17億円を戻す。棟数は伸びないが、非住宅の1件あたりの金額の大きさが利益を支える。設計者を増やすほど、1人あたりの稼ぎが問われる点は変わらない。この筋書きでは、法改正の効果が出るまでの時間差が最大の不確実性になる。第1四半期の赤字は、その遅れの表れとも読める。
- 住宅(SE構法):数量 2,600(年間の物件数(棟、推定))× 価格 292(1 棟あたりの平均売上(万円・名目、推定))→ 売上 76 億円・営業利益 3 億円。2600 棟 × 1 棟 292 万円(今の 1.36 倍)、利益率 4.5%
- 非住宅(大規模木造):数量 360(年間の物件数(件、推定))× 価格 2,040(1 件あたりの平均売上(万円・名目、推定))→ 売上 73 億円・営業利益 4 億円。360 件 × 1 件 2040 万円(今の 1.36 倍)、利益率 5.8%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.0% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.0 倍。全体の PER 17.98 倍、時価総額 76 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:法改正の効果は出るが、住宅市場の縮みと相殺して棟数は微増にとどまる形。非住宅の伸びが主役になる。
中立 34% 追い風は出るが、利益は会社予想の6割 利益 3 億円 · PER 16.2 倍 · 株価時価総額 1,599 円48 億円
住宅は、市場が2割縮むが、SE構法のシェアが上がり、棟数は4%減にとどまる。非住宅は件数が1.5倍に増える。値段は物価並みの1.34倍まで上げる。人件費は物価で上がり、全社費用は1.3倍になる。営業利益は3.7億円で、利益率は2.8%。会社予想の3億円は達成するが、その先の伸びは限られる。配当性向は6割弱で、10年で14億円を戻す。法改正の効果は、施行の翌年から数年かけて数字に出ると見る。それまでは、人員と販促の先行費用が利益を削る。筆者が最も起こりやすいと見る姿は、緩やかな回復だ。派手さはないが、現金の積み上がりと配当の増加で、堅実に価値が積み上がる。
- 住宅(SE構法):数量 2,400(年間の物件数(棟、推定))× 価格 288(1 棟あたりの平均売上(万円・名目、推定))→ 売上 69 億円・営業利益 3 億円。2400 棟 × 1 棟 288 万円(今の 1.34 倍)、利益率 4.0%
- 非住宅(大規模木造):数量 300(年間の物件数(件、推定))× 価格 2,010(1 件あたりの平均売上(万円・名目、推定))→ 売上 60 億円・営業利益 3 億円。300 件 × 1 件 2010 万円(今の 1.34 倍)、利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.2 倍。全体の PER 16.22 倍、時価総額 48 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社予想の営業利益3億円を、そのまま信じずに割り引いた形。直近の利益水準と、法改正の効果の中間を取る。
やや悲観 26% 法改正の効果が出ず、費用だけが増える 利益 1 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 379 円11 億円
住宅は市場の縮みを取り返せず、棟数は16%減る。非住宅も件数が1.2倍にとどまり、大型案件は競合に取られる。構造計算の手数料は、工務店の内製化とAIの普及で、物価に届かず1.30倍にとどまる。人件費は上がり続け、営業利益は1億円台に落ちる。配当は縮み、10年で9億円の還元にとどまる。登録工務店の数は増えず、新築の着工は金利と物価で伸び悩む。非住宅の案件は、競合との値下げ競争になりやすい。配当は、現金があるうちは維持するが、利益が減れば増配は止まる。この筋書きは、直近の1年の延長に近い。派手な悪化ではなく、費用が先行して利益率が1%台に張りつく形である。
- 住宅(SE構法):数量 2,100(年間の物件数(棟、推定))× 価格 280(1 棟あたりの平均売上(万円・名目、推定))→ 売上 59 億円・営業利益 2 億円。2100 棟 × 1 棟 280 万円(今の 1.30 倍)、利益率 3.0%
- 非住宅(大規模木造):数量 240(年間の物件数(件、推定))× 価格 1,950(1 件あたりの平均売上(万円・名目、推定))→ 売上 47 億円・営業利益 2 億円。240 件 × 1 件 1950 万円(今の 1.30 倍)、利益率 3.5%
倍率:ROE 4.9%(事業の純利益÷自己資本)。k 7.25% に届かないので PER の上限は 1/k ≒ 12.5 倍。上限の約 7 割の 9 倍に置く。
確率:直近の下方修正と第1四半期の赤字が示すように、売上が伸びず費用が先行する形が続く。
悲観 10% 内製化とAIで、構造設計の手数料が崩れる 利益 −1 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 355 円11 億円
住宅の棟数が4割減り、非住宅も競合に押されて件数が減る。構造計算の手数料は、AIによる内製化で値上げどころか物価の半分しか上がらない。人員を減らしても、設計の品質を保つ費用は残り、営業利益は赤字に沈む。登録工務店の離脱が連鎖し、ネットワークの価値が失われる。床は、自己資本のうち現金と売掛金で裏づく分に置く。ネットワークの価値は、参加する工務店の数で決まる。離脱が始まれば、残る工務店の負担も増えて、さらに抜ける。筆者はこの筋書きを、確率は低いが無視できないと見る。構造計算の作業を、AIが人の代わりに安く速くこなす世界では、工務店が外部に頼む理由が薄れる。
- 住宅(SE構法):数量 1,600(年間の物件数(棟、推定))× 価格 258(1 棟あたりの平均売上(万円・名目、推定))→ 売上 41 億円・営業利益 0 億円。1600 棟 × 1 棟 258 万円(今の 1.20 倍)、利益率 1.0%
- 非住宅(大規模木造):数量 150(年間の物件数(件、推定))× 価格 1,800(1 件あたりの平均売上(万円・名目、推定))→ 売上 27 億円・営業利益 0 億円。150 件 × 1 件 1800 万円(今の 1.20 倍)、利益率 1.5%
倍率:稼ぐ力が消えるので、今の自己資本(21 億円)に PBR 0.5 を掛けた床(約 11 億円)で置く。
確率:工務店とハウスメーカーが構造計算を内製し、AIで手数料が崩れる構造的な負けの形。起こる確率は低いが、起これば本業は赤字になる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
住宅(SE構法)
工務店向けに、木造住宅の構造計算・資材供給・設計データ・性能保証を提供する。
| 数量年間の物件数(棟、推定) | 価格1 棟あたりの平均売上(万円・名目、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,500 | 215 | 54 | 2 |
| 10 年後 中立 | 2,400 | 288 | 69 | 3 |
取り方:棟数と単価は開示が確認できないため推定。非住宅が売上の約4割(2025/03期は36%)の開示から住宅を約54億円とし、1棟あたり約215万円(構造計算・資材・保証の合計)で約2,500棟と置いた。セグメント利益は開示が無く、全体の営業利益1.5億円を踏まえた推定。
非住宅(大規模木造)
幼稚園・介護施設・店舗・オフィスなどの大規模木造の構造設計と資材・保証を提供する。
| 数量年間の物件数(件、推定) | 価格1 件あたりの平均売上(万円・名目、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 202 | 1,500 | 30 | 1 |
| 10 年後 中立 | 300 | 2,010 | 60 | 3 |
取り方:売上84.1億円から住宅を引いた約30億円を、1件あたり平均1,500万円で約200件と置いた推定。セグメント利益は開示が無く推定。全社費用は営業利益の合計から逆算した調整(−1.6億円)に入れる。
リスクと懸念
会社予想の利益倍増が届かない
来期の営業利益3億円は、直近の1.5億円の約2倍。第1四半期は営業赤字で、売上の伸びは1.3%だった。法改正の効果が出るまでの時間差が長引けば、期待が剥がれる。
構造計算のAI代替と内製化
構造計算は、AIエージェントで安く速くなる仕事の一つ。工務店・ハウスメーカーが内製できれば、AIエージェント代替で手数料が下がり、登録工務店の価値も薄れる。
住宅市場の縮小
新設住宅は、人口と世帯数の減少で長期に細る。法改正でシェアを取っても、市場の縮みが大きいと、棟数は伸びない。
人員と販促費の先行
2026年3月期は、第3四半期までに人件費・販促費・広告費で販管費が約9%増え、営業利益が減った。売上が伸びない限り、利益率は2%を割る年が続く。
現金の中身が見えない
現金は自己資本を上回る。前受金や預り金(性能保証に関わるものを含む可能性)が裏にあれば、株主のものではない。内訳が確かめられておらず、価値に足していない。
今後の分かれ目
- 2027年3月期の営業利益が3億円を超えたら
- 法改正の効果が出たと見て、やや楽観・楽観の確率を上げてよい。
- 非住宅の売上比率が5割に近づいたら
- 高単価・高利益率の案件が増えている合図。中立の利益率を上げる根拠になる。
- 貸借対照表の内訳で、自由に使える現金が自己資本の半分以上と確かめられたら
- 余った現金として別に足せる。価値は上がる。
- 登録工務店の数が減り始めたら
- ネットワークの堀が弱まる合図。やや悲観の確率を上げる。
- 買い手によるTOBが出たら
- 筋書きの外。買付価格と、現金のうち株主のものになる額を見比べる。
見ておくもの
- 四半期の営業利益(特に下期の法改正の効果)と販管費の伸び
- 非住宅の売上比率と大型案件の件数
- 登録工務店の数と、SE構法の棟数
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROE が資本コスト 7.25% を超える中立以上では、堀を普通(残る割合 1/2)として正当化 PER の約 8〜8.5 割に置いた。ROE が 8% に届かない悲観側は上限 1/k(12.5 倍)の 6.5 割以下。今の株価・過去の PBR・同業の倍率は使っていない。純現金は時価総額に近いが、前受金・預り金の可能性があるため事業に要らない分として足さなかった。リース債務は小さく、新リース会計基準で数字の形が変わる点は、10 年後も今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.5→19.51 倍・やや楽観 PER 13→17.98 倍・中立 PER 11.5→16.22 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。