結論
E・Jホールディングスは、防災・減災、環境保全、発注者支援を柱とする建設コンサルタントの持株会社だ。河川・砂防、道路、橋、地質調査、測量を、国や自治体から請け負う。売上は2026年5月期に466億円、営業利益は47億円で、ともに過去最高だった。
結論から言う。筆者は、10年後の本質価値は今の時価総額341億円を上回ると見る。事業は凡庸だが、純現金が171億円あり、時価総額の半分に当たる。事業の稼ぎだけを見れば、ごく普通の建設コンサルの値段で済む。
ただ、この現金は満額では数えない。会社は2025年6〜7月に、発行済み株式の1割強にあたる増資を行った。現金を抱えたまま株を増やす会社だ。繁忙期には短期借入も使う。使える現金は、見かけの半分と見るのが妥当だ。
それでも割安側に出る。需要は堅く、受注は4,400件を超え、配当は10期連続の増配を見込む。AIの工数削減と、現金の戻りの遅さが、割安の幅を狭めている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、持ち続けたい事業かと問う。答えは「事業は凡庸だが、値段に安全域がある」だ。公共の建設コンサルは景気に左右されにくく、10年先も仕事は残る。借金は実質なく、財務の安全域は広い。
気になるのは稼ぐ力の伸びだ。元手は人だけで、利益率は10%前後で頭打ちに近い。人件費は物価で上がり、公共の単価は遅れて上がる。ROEが8〜9%にとどまるのは、この構造と、現金の厚さの両方による。
資本配分は不満が残る。現金を持ちながら増資をしたのは、少数株主にとって好ましくない。筆者は、事業に要らない現金のうち半分だけを株主の取り分に数えた。
安全域は広い。中立の筋書きの10年後の価値の現在価値は、今の時価総額を上回る。悲観でも現金が床になる。ただし割安の幅は、AIの影響と現金の戻りの遅さで削った。慌てて買う理由はないが、無視できない値段である。
何で稼ぐ会社か
事業は総合建設コンサルタント業の1つだけで、開示のセグメントも単一だ。企画・計画、設計、診断、マネジメント、発注者支援、補償コンサルといった建設コンサルの業務と、測量・地質調査の業務を組み合わせる。連結の従業員は2,144人、連結子会社は14社だ。
2026年5月期の受注は458億円。内訳は建設コンサル業務が356億円、調査業務が102億円で、調査が前期より約31億円増えた。受注件数は4,369件と、1件あたり約1,050万円の小口が中心だ。発注元は国と自治体が大半で、市町村向けの比率が上がっている。
会社は重点6分野(環境・エネルギー、自然災害・リスク軽減、都市・地域再生、インフラメンテナンス、公共マネジメント、デジタル・インフラ)を決め、受注の63%を占める。発注者支援は、自治体の人手不足を補う仕事だ。
成長は買収で足してきた。2024年9月に民間建築の地質調査に強い東京ソイルリサーチを子会社にし、2026年7月には関西電力グループが持つ気象工学研究所を取得した。気象工学研究所の2026年3月期の売上は約11億円、営業利益は約3億円。タイにはDynamic社と資本業務提携がある。
優良さと弱いところ
強みは、受注の裾野の広さだ。年に4,000件を超える小口の受注を、全国の自治体から積み上げる。1社に頼る案件が少なく、1件の失注が全体を揺らさない。防災、河川、道路、環境と、公共の需要の上流に幅広く入っている。
ただ、堀は弱めと見る。受注は入札とプロポーザルで決まり、値段を自分で決めにくい。技術者が動けば知見も動く。重点分野のうちデジタルや環境は、他社と差がつきにくい。
資本効率は並だ。ROEは過去10年の中央値で9%、直近は8%台に下がった。営業利益率は2022年5月期の12%台から、2026年は10%に低下している。人件費の上昇や研究開発費、のれんの償却が重い。ROE10%の目標には届いていない。
経営の癖も気になる。現金を抱えながら、2025年に増資を行った。大株主の八雲が約19%を持つ関係会社だ。弱みは、現金の使い道が株主に見えにくいことと、利益率がじわじわ下がっていることの2つである。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
建設コンサルは、公共事業の上流を担う人材業だ。2026年度の公共事業関係費は6.1兆円で前年並み、第1次国土強靱化実施中期計画は2026〜2030年度で20兆円強と、従来より大きい。2025年に埼玉県八潮市で下水管の陥没が起き、老朽化対策の予算も付きやすくなった。
追い風は更新と防災だ。道路・橋・河川の点検と補修、気候変動に伴う浸水対策の仕事が増えている。発注者支援は、自治体の技術職員が足りないことで伸びる。
逆風は2つある。1つは人手で、技術者が増やせない。もう1つは補正予算の成立遅れで、2026年5月期の受注は期初計画に届かなかった。複数年度の契約が減ったことも響いた。
競合は日本工営(現ID&Eホールディングス)、パシフィックコンサルタンツ、建設技術研究所、八千代エンジニヤリング、いであ、応用地質などだ。E・Jは売上で中堅に位置し、重点分野で差をつける。
10年で見ると、新設は減り、更新・維持と防災の比重が増える。AIは図面の作成や数量計算を肩代わりし、工数を減らす。発注者支援は人月で売る性格が強く、AIの影響を受けやすい。筆者は、中立で単価の伸びが物価に届かないと置く。
資本政策と M&A
還元の方針は、親会社所有者帰属持分配当率(DOE)3%以上を目安にした累進配当だ。2026年5月期の年間配当は前期から小幅に増え、2027年5月期は大きく増やす予定だ。これは設立20周年の記念配当を含み、10期連続の増配になる。中計期間の株主還元は38億円以上とする。自社株買いは「機動的に」とされるが、実績は乏しい。
資金の使い方は評価が割れる。2025年6〜7月に増資を行い、資本金は43.7億円になった。純現金が171億円ある中での増資だ。成長投資は中計期間に65億円で、うちM&Aが30億円、DXが9億円、人への投資が20億円だ。
M&Aは小粒で、民間建築の調査や気象の専門会社など、事業を足す手だ。2026年5月期の純利益には、政策保有株の売却益が入った。
ガバナンスは、八雲が約19%を持つ体制だ。TOBやMBOの発表は確認できなかった。同業の再編が進めば、現金が厚い当社は買われる側にもなりうる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
事業は堅く、値段は安い。純現金は171億円で、時価総額の半分に当たる。現金を除けば、事業は純利益33億円に対して170億円ほどの値段で、PERは5倍台だ。営業利益は過去最高で、2027年5月期も増収増益を計画する。
需要は強い。国土強靱化の第1次実施中期計画は5年で20兆円強、八潮市の事故以降は下水・道路の老朽化対策も続く。受注は4,369件と過去最高で、重点6分野は6割を占め、調査業務は前期より約31億円増えた。
配当は10期連続の増配で、DOE 3%以上の累進配当を掲げる。2026年7月には気象工学研究所を取得し、小粒の買収で事業を足している。M&Aに30億円を用意し、現金には余力がある。技術士が署名する設計は、AIが図面を描いても責任を負うのは人だ。AIで浮いた工数は新しい案件に回せる。営業利益率が12%台に戻れば、純利益は50億円に届く。増資で得た資金で人員と受注の基盤を広げており、先行投資の回収はこれからだ。
慎重な見方
現金は見かけほど株主のものではない。会社は純現金171億円を抱えたまま、2025年6〜7月に発行済み株式の1割強にあたる増資をした。繁忙期の9月から3月には、短期借入を約60億円使う。使える現金は、見かけよりずっと小さい。
事業の稼ぎ方も重い。売上は人の工数で決まり、AIが数量計算と図面づくりを減らせば、発注側は単価を下げたがる。発注者支援は人月で売る性格が強く、置き換えが早い。
利益率は2022年5月期の12.2%から、2026年は10%へ下がった。人件費と研究開発費、のれんの償却が重い。ROEは10%の目標に届かず、中計の期初計画も受注・売上・営業利益とも下回った。
補正予算の遅れで受注がぶれる点も、会社の力では動かせない。大株主の八雲が約19%を持ち、少数株主は現金の使い道を決められない。割安に見えるのは、現金を満額で数えた時だけだ。海外は受注に結びついていない。増資で株数が増えた分、1株の価値は薄まっている。
どちらに重みを置いたか
需要の堅さと現金の厚さは、強気の見方が正しい。ただ筆者は、増資をしながら現金を抱える姿勢と、AIによる工数の削減を重く見る。そのため現金の戻りは0.5を掛け、確率は悲観とやや悲観を合わせて31%に置いた。
事業の稼ぎだけでも今の値段に近く、現金の半分を足せば上回る。期待は今の値段を上回るが、割安の幅は見かけより小さい。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した株価時価総額 4,087 円751 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 914 円168 億円)。 今の値に割り戻すと 2,729 円502 億円、今との差 +48.3%、 期待の年率 +10.5%(資本コスト 7.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 6,968 円1,281 億円 | 1,240 円228 億円 | +346.1% | +16.1% | 575 円106 億円 |
| やや楽観 | 23% | 5,727 円1,052 億円 | 1,076 円198 億円 | +269.7% | +14.0% | 1,565 円288 億円 |
| 中立 | 39% | 4,675 円859 億円 | 942 円173 億円 | +205.3% | +11.8% | 2,191 円403 億円 |
| やや悲観 | 21% | 1,925 円354 億円 | 778 円143 億円 | +46.9% | +3.9% | 567 円104 億円 |
| 悲観 | 10% | 544 円100 億円 | 490 円90 億円 | −43.8% | −5.6% | 103 円19 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,087 円751 億円 | 914 円168 億円 | +171.8% | +10.5% | 5,001 円919 億円 |
今の株価時価総額 1,840 円338 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 7% M&Aで人員が3割増え、利益率が13%近くに戻る 利益 75 億円 · PER 16.0 倍 · 株価時価総額 6,968 円1,281 億円
国土強靱化の予算が続き、中計で用意したM&Aの枠を使って人員は3割増える。気象工学研究所のような小粒の買収が重なり、重点6分野の受注が300億円を超える。AIは図面と数量計算を引き受けるが、浮いた工数は新しい案件に回る。単価は物価並みの1.34倍まで上がり、営業利益率は12.8%に戻る。全社の売上は約812億円と今の1.7倍、営業利益は約104億円になる。会社が掲げる長期ビジョンの営業利益60億円を、大きく上回る。現金は買収と配当に使われ、積み上がらない。戻り方は変わらず0.5で数える。大株主の八雲の持ち分は動かない前提だ。
- 総合建設コンサルタント事業:数量 2,787(連結従業員(人))× 価格 2,912(1人当たりの年間売上(万円))→ 売上 812 億円・営業利益 104 億円。数量 1.30 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 12.8%
倍率:事業の純利益 74 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.9% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 2.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)60 億円。全体の PER 16.03 倍、時価総額 1,241 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:防災・更新の需要、M&A、利益率の12%台への回復が全部そろう筋書き。AIで伸びる前提は置かないため、7%に絞った。
やや楽観 23% 防災・更新の需要を取り込み、人員が15%増える 利益 61 億円 · PER 15.8 倍 · 株価時価総額 5,727 円1,052 億円
八潮市の事故以降、点検と更新の予算が続き、人員は15%増える。AIは作図と報告書づくりを減らすが、技術士が署名する設計の価値は残る。単価は1.32倍で、営業利益率は11.8%に戻る。全社の売上は約707億円と今の1.5倍、営業利益は約84億円になる。会社の第6次中期経営計画の目標を、数年遅れで超える形だ。採用が成長の天井になり、人件費の先行が利益率の頭を押さえる。配当は累進で増え、現金は少しずつ積み上がる。海外の拠点づくりは小さな投資にとどまる。技術者の定着のため、処遇の改善費は毎年のように増える。
- 総合建設コンサルタント事業:数量 2,466(連結従業員(人))× 価格 2,869(1人当たりの年間売上(万円))→ 売上 707 億円・営業利益 84 億円。数量 1.15 倍・価格 1.32 倍・営業利益率 11.8%
倍率:事業の純利益 59 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.8% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 2.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)60 億円。全体の PER 15.77 倍、時価総額 996 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:老朽化の更新と防災の需要が続き、小粒の買収も重なる筋書き。AIの影響は事務部分に収まる。公共の需要の堅さを踏まえ、23%を置いた。
中立 39% 人員は小さく伸びる。予算は堅いが工数の削減が単価に響く 利益 49 億円 · PER 15.4 倍 · 株価時価総額 4,675 円859 億円
国土強靱化と上下水道・道路の更新で予算は続くが、技術者は増やせず、人員は5%増にとどまる。AIが数量計算と図面づくりを減らし、発注側は単価の上昇を抑える。単価は1.30倍で、営業利益率は10.8%と、会社の2027年5月期の計画に並ぶ水準で落ち着く。全社の売上は約636億円と今の1.4倍、営業利益は約69億円になる。ROEは8%台で資本コストをわずかに上回る。純利益の約4割が還元に回り、残りは現金として積み上がる。堅いが平凡な10年である。補正予算の遅れによる受注のぶれは、毎年のように続く。中立では、配当を除く利益の約6割が事業と現金に残る。
- 総合建設コンサルタント事業:数量 2,251(連結従業員(人))× 価格 2,825(1人当たりの年間売上(万円))→ 売上 636 億円・営業利益 69 億円。数量 1.05 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 10.8%
倍率:事業の純利益 48 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.4% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 2.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)60 億円。全体の PER 15.4 倍、時価総額 794 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:公共の需要は堅く、AIの影響が事務部分に収まる中心の筋書き。数量1.05倍、価格1.30倍と、決まりの「今の置き方を基本」に単価の伸びの鈍りを足して置いた。数量と価格に入れた分を、確率とgで重ねて引いていない。
やや悲観 21% 工数の削減が値下げに転じ、人員が8%減る 利益 30 億円 · PER 8.1 倍 · 株価時価総額 1,925 円354 億円
AIが設計と積算の工数を大きく減らし、発注側は成果払いと予定価格の見直しを進める。発注者支援は人月の単価が下がる。人員は8%減り、単価は1.20倍にとどまる。営業利益率は8%に下がる。補正予算の遅れも重なり、受注がぶれる。全社の売上は約514億円と今より1割ほど増えるだけで、営業利益は約41億円と今を下回る。のれんの減損も出る。配当は累進を守るが、増配の幅は小さい。事業の存続は揺らがない。ただ、技術者の採用が難しくなり、受注を断る年も出てくる。のれんの償却と減損が利益を削り、ROEは6%台まで下がる。
- 総合建設コンサルタント事業:数量 1,973(連結従業員(人))× 価格 2,608(1人当たりの年間売上(万円))→ 売上 514 億円・営業利益 41 億円。数量 0.92 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 8.0%
倍率:事業の ROE 5.8%。RONIC = k 7% + 残る割合 1/2 ×(ROE − k)、g は名目 2.5%(更新・防災の需要は続くが人の工数が天井)、正当化 PER は約 12.5 倍。ROE が k 以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PER は 1÷k = 12.5 倍を ROE÷k の割合で下げた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 8.1 倍・時価総額 286 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:AIの工数削減が、成果払いと予定価格の引き下げ、特に発注者支援の単価下落につながる筋書き。公共の需要の堅さと許認可の型を踏まえ、21%を置いた。
悲観 10% 設計の自動化と財源の縮みで、売上が3分の2に縮む 利益 7 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 544 円100 億円
AIが設計・積算・報告書づくりの大半を引き受け、発注側は成果に応じた安い単価でしか払わなくなる。発注者支援は自動化で需要が減る。人員は3割減り、単価は1.05倍と、物価に大きく届かない。営業利益率は2.5%まで落ちる。全社の売上は約343億円と今の4分の3、営業利益は約9億円になる。のれんの減損が出て、自己資本の一部が消える。会社は拠点を閉じ、人員を減らして固定費を縮める。残る価値は現金が中心で、事業の稼ぐ力は小さい。配当は現金から払い、細る。10年後のE・Jは、防災に強い小さな建設コンサルとして残るが、今の稼ぎは生まない会社になっている。
- 総合建設コンサルタント事業:数量 1,501(連結従業員(人))× 価格 2,282(1人当たりの年間売上(万円))→ 売上 343 億円・営業利益 9 億円。数量 0.70 倍・価格 1.05 倍・営業利益率 2.5%
倍率:稼ぐ力が崩れた姿。事業の稼ぎは小さく、使える純現金の半分と合わせた約100億円を、今の自己資本403億円に対する PBR で表す。
確率:AIが設計の大半を自動化し、自治体の発注者支援も内製や自動化に置き換わる筋書き。公共の設計という性質上、起こりにくいと見て10%にとどめた。やや悲観と合わせて31%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
総合建設コンサルタント事業
建設コンサルタント業務(計画・設計・診断・発注者支援・補償)と調査業務(測量・地質調査)。報告セグメントは単一。
| 数量連結従業員(人) | 価格1人当たりの年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 2,144 | 2,173 | 466 | 47 |
| 10 年後 中立 | 2,251 | 2,825 | 636 | 69 |
取り方:連結従業員2,144人(2026年5月31日、有価証券報告書)で売上465.9億円を割り、1人当たり約2,170万円とした。開示は単一セグメントで、業務区分(建設コンサル356億円・調査102億円の受注)は受注の内訳。先の価格は人件費の物価3%を転嫁して1.34倍が目安だが、AI エージェント代替の型(建設コンサルの許認可業務に、人月で売る発注者支援が混じる。設計と積算の工数が減り、成果払いの圧力が出る)で、中立は1.30倍とした。
リスクと懸念
AIによる設計工数の削減(AI エージェント代替)
稼ぎの源は技術者の工数だ。AIが数量計算・図面・報告書づくりを減らせば、発注側は成果払いや予定価格の引き下げを求める。発注者支援は人月で売る性格が強く、置き換えが早い。許認可の型のため中立は単価を1.34倍から1.30倍に抑え、数量の減りはやや悲観と悲観に入れた。
現金の使い道と少数株主の立場
純現金は171億円で時価総額の半分だが、会社は2025年に増資をした。自社株買いの実績は乏しく、大株主の八雲が約19%を持つ。現金が株主に届かなければ、割安は見かけにとどまる。このため戻り方は0.5で数えた。
利益率の低下
営業利益率は2022年5月期の12.2%から、2026年は10%へ下がった。人件費の上昇、研究開発費、のれんの償却が重い。公共の単価が遅れて上がる局面では、増収でも利益が増えない。
補正予算と発注の遅れ
2026年5月期は、補正・本予算の成立の遅れと複数年度契約の減少で、受注が期初計画に届かなかった。国の予算の執行時期に受注が左右され、四半期の業績が振れる。
買収の統合
中計期間にM&Aを30億円用意する。東京ソイルリサーチや気象工学研究所の統合に失敗すれば、人材が抜け、のれんの減損が出る。
技術者の確保と海外
賃金は物価で先に上がり、公共の単価は遅れて上がる。採用が伸びなければ受注を断る。海外は東アフリカや中央アジアへの拠点づくりを検討中で、受注には結びついていない。
今後の分かれ目
- 自社株買いや特別配当で、現金の使い道が株主に示される
- 現金の戻りを0.5から0.75へ上げる根拠になる。10年の価値は一段上がる。
- 営業利益率が12%台に戻る
- 中立の10.8%が低すぎた確認になり、楽観側の確率が上がる。
- AIを使った設計サービスの売上や、発注者支援の単価の下落が決算で見える
- 工数の削減が新しい売上に変わる、または値下げに回るかの確認になり、確率を動かす。
- ROEが10%の目標を超えて定着する
- 資本効率の改善が確認され、中立の倍率の根拠が強まる。
- 同業や八雲による株式の動き(売却・TOB)が出る
- 現金が株主に渡る可能性が上がる。買われる側の価値が働く場合もある。
見ておくもの
- 受注高と受注残(補正予算の影響)
- 営業利益率とROE(目標:ROE10%、利益率を現状から1〜2ポイント改善)
- 純現金と自社株買い・配当の方針
- 気象工学研究所などM&Aの統合
- 八雲の持ち株比率
倍率と資本コストの決め方
倍率は式で置いた。中立はROE 8.5%、RONICはk 7%と残る割合1/2で8.3%、gは名目2.5%として正当化PERは約12.7倍。上限(g 4%)の範囲内で、利益の質を見て12倍にした。kはAI エージェント代替を寿命の+0.5%に入れ、確率は31%、gは2.5%と重ねないようにした。今のPERや同業の倍率は使っていない。余った現金は、純現金171億円から繁忙期の短期借入約60億円と、買収に充てる約30億円を除いた80億円とし、戻り方は0.5で数えた。10年の数字は家賃などの形を今と同じにそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.1→16.03 倍・やや楽観 PER 12.6→15.77 倍・中立 PER 12→15.4 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。