結論
エス・エム・エスは、看護師・介護職の人材紹介と、介護事業所向けの経営支援システム「カイポケ」で稼ぐ会社だ。筆者は、今の値段は先の改善をかなり織り込みすぎており、本質価値との差は大きい割高と見る。
売上の 6 割は人材紹介(キャリア)だ。介護職・看護師の人手不足を追い風に、22 期連続で増収を続けてきた。ただ営業利益は 6 年前の水準から増えていない。求職者を集める広告費が膨らみ、利益率が 15% から 10% に下がったからだ。
カイポケは、契約の解約率が月 0.6% 未満と極めて低く、利益率も高い。ここが会社の宝だ。ただし訪問介護向けの月額は 2014 年から据え置きで、値上げの余地と、競合の追い上げの両方がある。
もう 1 つの重荷が海外だ。買収したアジアの医薬情報会社 MIMS で、2026 年 3 月期に 229 億円の減損を出した。会社は撤退・縮小を含む全選択肢を検討中だ。大株主のオアシスが経営陣の交代を迫り、会社は社外取締役を入れ替えている。
10 年後の中立は、営業利益が今の 2.5 倍、純利益が 150 億円台まで育つ姿だ。それでも今の時価総額は、そこへ届く手前で、すでにかなり先を買っている水準にある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、まず問うのは「10 年後もこの事業を持ち続けたいか」だ。カイポケはイエスだ。解約が少なく、毎月の課金が積み上がり、投じる資本は軽い。価格を上げる余地も残る。オーナーとして持ちたい種類の事業だ。
キャリアはそうはいかない。人手不足という追い風は確かだが、求職者の奪い合いで広告費が利益を食う。AI と直接採用が仲介を飛ばす未来もありうる。堀が浅く、先が読みにくい事業を、高い倍率で買うことはしない。
もう 1 つ見るのは、経営が資本をどう使ってきたかだ。MIMS の買収は、229 億円の減損で、株主のお金を毀損した。経営陣の総括はまだ足りないと、筆者は見ている。ただ、減損は現金を伴わず、営業キャッシュフローは厚い。事業の稼ぐ力そのものは傷んでいない。
安全域は、今の値段では取れない。10 年後の本質価値は、今の時価総額の 6 割前後と見る。事業の中立の姿を認めても、値段が先に行きすぎている。経営の体制が変わり、カイポケの価格改定が通る証拠が出るまで、確信度は下げて見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は 3 つある。2026 年 3 月期の売上 647 億円の内訳は、キャリアが約 383 億円、介護・障害福祉経営支援が約 137 億円、海外が約 89 億円、事業開発が約 38 億円だ。
キャリアは、看護師・介護職・薬剤師などの人材紹介が中心だ。転職が決まると、病院や介護施設から年収に応じた紹介手数料を受け取る。看護・介護の紹介では国内最大手で、シェアは 2〜3 割とされる。近ごろは、会社が求職者に直接アプローチする直接採用(ダイレクトリクルーティング)にも力を入れている。人手不足で求人は尽きないが、求職者を集める広告費が重い。
介護・障害福祉経営支援は、カイポケという名のクラウドの業務システムだ。介護事業所は請求(レセプト)、記録、勤怠、経理などをこれ 1 つで回す。在宅介護の事業所の 6 割超がつながっており、月ごとの解約率は 0.6% 未満だ。定額課金なので、収益は積み上がる。
海外は、アジアで医薬品情報データベースを持つ MIMS と、海外向けの人材紹介だ。製薬会社の宣伝予算に頼る事業で、2026 年 3 月期は売上が 6% 減った。
事業開発は、遠隔の産業保健やシニア向けサービスなど、育成中の小さな事業の寄せ集めだ。本社費はこれらと別に、約 30 億円がかかっている。
優良さと弱いところ
堀はカイポケの方が深い。介護事業所はいったん請求や記録の流れをシステムに載せると、切り替えに手間と不安がつきまとう。月の解約率 0.6% 未満が、その証拠だ。上場している介護向けの業務システムの中では最大の規模でもある。
一方、キャリアの堀は浅い。看護師や介護職は複数の紹介会社に登録し、決める先は手数料の高さでなく条件で選ぶ。求職者を呼ぶ広告費は、2026 年 3 月期で 140 億円と、売上の 2 割を超える。ここで他社と競い合う限り、利益率は上がりにくい。
資本効率は、事業の軽さのわりに高い。工場も店舗もなく、有形固定資産は 12 億円ほどだ。営業キャッシュフローは 88 億円と、利益より厚い。減損で自己資本が 265 億円まで縮み、今期の ROE は 20% を超える見込みだ。ただしこれは、買収で積み上げた帳簿の無形資産を一度に損失にした後の見かけの高さでもある。
経営の質には疑問が残る。オアシスの指摘では、期初の計画は 10 期連続で未達だった。海外の買収は 229 億円の減損に終わり、その責任を負う形の社長は、MIMS の元 CEO だ。筆者は、体制の刷新が実際に起きるかを、最も気にしている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
人材紹介の市場は、人手不足の構造そのものが追い風だ。医療・介護の就業者は高齢化でさらに必要になる。国は介護人材が今後さらに数十万人足りなくなると見ている。紹介の件数が伸びる素地は大きい。
ただ、仲介ビジネスには 2 つの圧力がある。1 つは直接採用だ。求人サイトやスカウトで、病院や施設が求職者に直接つながる動きが広がる。もう 1 つは AI だ。マッチングそのものを AI が担えば、紹介会社を挟む理由が薄れる。SMS 自身も AI でマッチングをモデル化して使う方針で、強みにも脅威にもなる。
競合はマイナビ・リクルートなどの総合勢に加え、医療に強いエムスリー(2413)のグループなどがいる。それぞれが広告費を投じて求職者を奪い合う。紹介手数料への上限を求める声が自治体や業界の側から出ることも、価格の天井になる。
介護の業務システムは、人手不足で事業所が生産性の向上を迫られ、導入が進む追い風にある。ただし、メドレー、eWeLL、カナミックなどの競合も同じ市場を狙う。SMS は在宅介護の 6 割超をすでに押さえており、残る伸びしろは、障害福祉・保育・看護などの隣接領域と、価格の見直しにある。
介護報酬の改定は、事業所の経営を左右する。報酬が据え置かれると、システムの月額を上げにくくなる。海外の医薬情報は、製薬会社の宣伝予算に頼るため、大手の予算縮小や中東情勢で振れやすい。
資本政策と M&A
資本政策は、いま大きな節目にある。2026 年 3 月期の配当は年 25 億円前後で、利益の 4 割程度にとどまる。還元の中心は配当で、自社株買いは大きくない。無借金で、純現金は 56 億円と、時価総額の 3% 弱にすぎない。
大株主は 2 人いる。創業者の諸藤周平氏の資産管理会社が約 17.6%、投資ファンドのオアシスが 18% 台を持つ(報道で数字に幅がある)。オアシスは海外からの撤退、国内の SaaS と人材への集中、外部の CFO・CTO 招聘を求め、社長の再任には反対した。再任は 2026 年 6 月の総会で可決された。会社側は CFO の外部招聘、社外取締役 4 名の刷新、企業価値向上委員会の設置で応えた。
買収は過去に積極的で、MIMS の買収はその典型だった。のれんと商標権を合わせて 216 億円を損失にした今、新たな大型買収には慎重になるはずだ。10 年以内に買われる側になる確率は、kabufu の推定で 18% だ。大株主が 2 人いる構造は、買収の防波堤にも、引き金にもなる。
2031 年 3 月期に、売上 1,220 億円・EBITDA 280 億円・ROE 30% を掲げる。詳しい中期経営計画は 2027 年 4 月末までに出す予定だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
カイポケは、介護事業所の標準システムになる。在宅介護の 6 割超がすでにつながり、月の解約率は 0.6% 未満だ。訪問介護向けの月額は 2014 年から据え置きで、競合の eWeLL は 1 事業所当たりの年額が 9 割近く高い。価格を正すだけで、売上が大きく伸びる余地がある。事業所に介護報酬の請求、記録、人事までをつなげれば、1 事業所当たりの年額はさらに上がる。
キャリアは、看護師領域の集客が好調だ。会社は人材紹介のマッチングを AI でモデル化し、直接採用にも使い、採用率を上げて費用を抑える方針だ。人手不足は 10 年続く。紹介の件数が伸び、手数料も物価で上がる。
海外は、MIMS を整理する決断がすでに出ている。償却は年 15 億円軽くなり、赤字は止まる。大株主の目が光るなかで、新 CFO や外部の社外取締役が入り、資本の配分は改まる。2031 年 3 月期の目標(売上 1,220 億円・EBITDA 280 億円)は高いが、カイポケと紹介が機能すれば、利益は今の 3 倍以上に伸びる。無借金で現金もあり、倒れる心配はなく、時間は味方だ。
慎重な見方
営業利益は 6 年前から増えていない。売上は 22 期連続で増えたが、広告費で利益率が 16% から 10% に下がった。会社の期初計画は 10 期連続で未達だ。今回掲げた 2031 年の目標は、証券アナリストの EBITDA 予想(150〜170 億円)を、ずっと上回っている。
キャリアの堀は浅い。求職者は複数の紹介会社に登録し、広告費をかけないと来ない。直接採用と AI が仲介を飛ばせば、手数料の高い紹介の意味が薄れる。自治体や業界から手数料に上限を求める声も出る。売上の 6 割がこの事業で、先行きは明るくない。
カイポケは良い事業だが、値上げを 10 年以上してこなかった事実が重い。強気に値上げすれば、メドレーやカナミックなど競合に乗り換えられる恐れもある。月次解約率が低いのは、価格が据え置きだったことの裏返しかもしれない。
海外は 229 億円の減損で、買収が失敗だったと自ら認めた。その責任を負う社長が再任された。経営の総括が足りず、体制が本当に変わるのかが見えない。今の時価総額は、これらの不安を考えると、先の改善をまとめて織り込みすぎている。
どちらに重みを置いたか
カイポケの堀と、海外の止血が見えてきた点では、強気の見方に分がある。ただ、営業利益が 6 年も足踏みし、計画未達が続いた実績は重く、慎重な見方のほうが根拠は多い。キャリアは堀が浅く、AI と直接採用の脅威も残る。
確率は、中立に 3 割台半ば、やや悲観に 3 割弱を置き、慎重な側へ寄せた。10 年後の中立でも、利益は今の 2.5 倍、ROE は 24% まで来る。それでも、先の利益に払う値段が高すぎる。本質価値は今の時価総額を大きく下回り、割高と結論した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,832 円3,146 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 810 円665 億円)。 今の値に割り戻すと 2,474 円2,031 億円、今との差 −5.6%、 期待の年率 +5.9%(資本コスト 7.2%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 7,950 円6,526 億円 | 1,212 円995 億円 | +249.4% | +13.3% | 641 円526 億円 |
| やや楽観 | 20% | 6,504 円5,340 億円 | 1,093 円897 億円 | +189.7% | +11.2% | 1,519 円1,247 億円 |
| 中立 | 36% | 4,640 円3,809 億円 | 862 円708 億円 | +109.9% | +7.7% | 1,981 円1,626 億円 |
| やや悲観 | 27% | 1,010 円830 億円 | 563 円462 億円 | −40.0% | −5.0% | 425 円349 億円 |
| 悲観 | 10% | 318 円261 億円 | 443 円364 億円 | −71.0% | −11.6% | 76 円63 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,832 円3,146 億円 | 810 円665 億円 | +77.1% | +5.9% | 4,642 円3,811 億円 |
今の株価時価総額 2,622 円2,153 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 7% カイポケが「介護の基幹システム」になり、紹介も AI で効率が上がる 10 年 利益 259 億円 · PER 24.4 倍 · 株価時価総額 7,950 円6,526 億円
カイポケが介護・障害福祉の事業所の標準システムに育ち、契約は 4 万を超える。値上げも通り、1 事業所当たりの年額は今の 2 倍に近づく。キャリアはマッチングの精度が上がり、AI を使った直接採用でも採用単価を抑えられる。看護師・介護職の紹介でシェア 3 割を保ち、件数が着実に伸びる。海外は MIMS の整理が済み、残った中核が小さな黒字を出す。経営の体制も新しくなり、利益は 10 年で 4 倍を超える。会社が掲げる 2031 年 3 月期の目標(売上 1,220 億円・EBITDA 280 億円)には届かないが、10 年後の水準でそれを大きく上回る。ただし、ここまで全部がうまくいく確率は低い。
- キャリア(看護師・介護職などの人材紹介):数量 7.0(入職決定件数(万件、当社推定))× 価格 112(1 件当たり紹介手数料(万円))→ 売上 784 億円・営業利益 149 億円。入職 7 万件×112 万円。AI マッチングと直接採用でシェア 3 割を維持
- 介護・障害福祉経営支援(カイポケ):数量 4.3(契約事業所数(万事業所、当社推定))× 価格 88(1 事業所当たり年額(万円))→ 売上 378 億円・営業利益 151 億円。4.3 万事業所×88 万円。標準システム化と価格改定が通る
- 海外(MIMS ほか):数量 3.2(契約顧客数(千社、当社推定))× 価格 440(1 社当たり年収益(万円))→ 売上 141 億円・営業利益 21 億円。中核顧客 3.2 千社×440 万円。整理後に小さな黒字
- 事業開発ほか:数量 3.4(契約企業・施設数(千件、当社推定))× 価格 280(1 件当たり年収益(万円))→ 売上 95 億円・営業利益 11 億円。3.4 千件×280 万円。遠隔産業保健などが黒字化
倍率:事業の純利益 259 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 44.5% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 25.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 24.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 24.4 倍。全体の PER 24.43 倍、時価総額 6,327 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:カイポケの値上げと紹介の効率化、海外の整理が同時にうまくいく必要があり、過去 10 期の計画未達を考えると高くは置けない。それでもカイポケの解約率の低さ(月 0.6% 未満)と AI の追い風はあるので、5% は超える重みを置く。
やや楽観 20% 海外を整理し、カイポケと紹介が着実に伸びる 10 年 利益 214 億円 · PER 24.2 倍 · 株価時価総額 6,504 円5,340 億円
海外は撤退・縮小で赤字が止まり、償却の軽くなった国内が利益を引っ張る。カイポケは契約を増やしつつ、据え置いてきた価格を段階的に直す。1 事業所当たりの年額は 10 年で 1.8 倍になる。キャリアは看護師領域の集客が好調なまま、介護・障害福祉・保育へ広げる。広告費の増え方が落ち着き、営業利益率は 18% まで戻る。新しい取締役と企業価値向上委員会が機能し、資本配分も改まる。配当と自社株買いの合計は利益の 65% 程度になる。会社の目標には届かないが、アナリストの予想よりは上に行く。介護の経営支援システムは、障害福祉や保育の事業所にも広がる。看護師領域で磨いた採用の仕組みを、介護職の紹介へ移し、件数の伸びを保つ。AI による直接採用の脅威は残るが、費用を抑える武器として先に使いこなす。強気の見方に近いが、全部がうまくいくわけではない、現実的な上振れの姿だ。
- キャリア(看護師・介護職などの人材紹介):数量 6.4(入職決定件数(万件、当社推定))× 価格 110(1 件当たり紹介手数料(万円))→ 売上 704 億円・営業利益 127 億円。入職 6.4 万件×110 万円。看護師領域が好調で介護・保育へ広がる
- 介護・障害福祉経営支援(カイポケ):数量 4.1(契約事業所数(万事業所、当社推定))× 価格 82(1 事業所当たり年額(万円))→ 売上 336 億円・営業利益 134 億円。4.1 万事業所×82 万円。据え置きの価格を段階的に改定
- 海外(MIMS ほか):数量 2.8(契約顧客数(千社、当社推定))× 価格 400(1 社当たり年収益(万円))→ 売上 112 億円・営業利益 12 億円。2.8 千社×400 万円。縮小後に低い利益率で安定
- 事業開発ほか:数量 3.0(契約企業・施設数(千件、当社推定))× 価格 265(1 件当たり年収益(万円))→ 売上 80 億円・営業利益 6 億円。3.0 千件×265 万円。黒字が見え始める
倍率:事業の純利益 214 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 41.7% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 24.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 24.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 24.2 倍。全体の PER 24.2 倍、時価総額 5,179 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外の止血と国内の堅調さは、すでに会社が方針として示している。外部の目(大株主・新しい社外取締役)が入る分、上振れの余地はあるが、営業利益が 6 年足踏みしてきた実績から、確率は 2 割にとどめる。
中立 36% 紹介は物価並みに伸び、カイポケが利益の柱になる 10 年 利益 156 億円 · PER 23.5 倍 · 株価時価総額 4,640 円3,809 億円
紹介は看護・介護の人手不足を背景に、件数が年 2% 台で伸びる。手数料は物価並みに上がる。広告費の競争は続き、利益率は今の 16% 前後で横ばいだ。カイポケは契約事業所が 3 万から 3 万 8 千へ増え、価格改定とクロスセルで 1 事業所当たりの年額が 1.5 倍になる。利益率は 36% で落ち着く。海外は MIMS の縮小・一部売却を経て、小さな黒字の事業になる。本社費は物価で膨らむ。全体では売上は 10 年で 1.6 倍、営業利益は 2.5 倍になる。減損で自己資本が小さいため、同じ利益でも ROE は高く出る。配当と自社株買いは純利益の 65% 程度だ。
- キャリア(看護師・介護職などの人材紹介):数量 6.0(入職決定件数(万件、当社推定))× 価格 107(1 件当たり紹介手数料(万円))→ 売上 641 億円・営業利益 103 億円。入職 6.0 万件×107 万円(手数料は物価並みの 1.34 倍)。広告費競争で利益率は横ばい
- 介護・障害福祉経営支援(カイポケ):数量 3.8(契約事業所数(万事業所、当社推定))× 価格 72(1 事業所当たり年額(万円))→ 売上 274 億円・営業利益 99 億円。3.8 万事業所×72 万円。価格改定とクロスセルで 1.5 倍
- 海外(MIMS ほか):数量 2.4(契約顧客数(千社、当社推定))× 価格 370(1 社当たり年収益(万円))→ 売上 89 億円・営業利益 7 億円。2.4 千社×370 万円。縮小・一部売却後の小さな黒字
- 事業開発ほか:数量 2.4(契約企業・施設数(千件、当社推定))× 価格 250(1 件当たり年収益(万円))→ 売上 60 億円・営業利益 3 億円。2.4 千件×250 万円。赤字が止まり小さな黒字
倍率:事業の純利益 156 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 35.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 21.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 23.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 23.5 倍。全体の PER 23.51 倍、時価総額 3,668 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:紹介は市場並み、カイポケは価格改定が一部通る、という標準の姿。確率は最も高いが、計画未達の続いた実績と、利益が伸びていない最近の足取りを踏まえ、4 割には届かせない。
やや悲観 27% 紹介の競争と報酬規制で利益が伸び悩む 10 年 利益 70 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 1,010 円830 億円
紹介の競争が激しくなる。ジョブボードや直接採用に求職者を奪われ、広告費をかけても件数が伸びにくい。手数料にも上限を求める圧力が出て、価格は物価に届かない。カイポケは据え置いてきた価格を上げきれず、メドレーや eWeLL など競合に挟まれて、1 事業所当たりの年額は 1.3 倍にとどまる。海外は撤退の費用と赤字が長引き、利益に貢献しない。事業開発も赤字が続く。営業利益は 10 年かけても今の水準をわずかに上回る程度で、成長がほぼ止まる。経営体制の刷新が成果を出せず、10 期連続の計画未達が 15 期に伸びるような姿だ。
- キャリア(看護師・介護職などの人材紹介):数量 5.4(入職決定件数(万件、当社推定))× 価格 100(1 件当たり紹介手数料(万円))→ 売上 540 億円・営業利益 59 億円。入職 5.4 万件×100 万円。競争と手数料への圧力で価格が物価に届かない
- 介護・障害福祉経営支援(カイポケ):数量 3.4(契約事業所数(万事業所、当社推定))× 価格 60(1 事業所当たり年額(万円))→ 売上 204 億円・営業利益 57 億円。3.4 万事業所×60 万円。競合に挟まれ値上げは限定的
- 海外(MIMS ほか):数量 2.0(契約顧客数(千社、当社推定))× 価格 330(1 社当たり年収益(万円))→ 売上 66 億円・営業利益 0 億円。2.0 千社×330 万円。撤退費用で利益ゼロ
- 事業開発ほか:数量 2.0(契約企業・施設数(千件、当社推定))× 価格 230(1 件当たり年収益(万円))→ 売上 46 億円・営業利益 −2 億円。2.0 千件×230 万円。赤字が続く
倍率:ROE 15.1%(減損で小さくなった自己資本で割るため高く出る)。RONIC = k 7.25% + 残る割合 1/2 ×(15.1% − 8.25%)= 11.7%、長期の g 4.0% から正当化 PER = (1 − 4.0÷11.7)÷(8.25 − 4.0) = 15.5 倍。堀は紹介が弱く、カイポケが強いので普通(1/2)。やや悲観 は上限の約 7 割(10.8 倍)に置いた。
確率:広告費の増加で利益率が 15% から 10% に下がってきた実績があり、競争の激しさは続く。海外の整理にも費用がかかる。強い見方より慎重な見方のほうに根拠が多いと判断し、やや悲観に厚みを置く。
悲観 10% AI と直接採用で紹介が細り、カイポケも値下げ競争に巻き込まれる 10 年 利益 29 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 318 円261 億円
AI と直接採用が紹介の仕事を代替する。看護師や介護職は求人サイトとスカウトで直接つながり、手数料の高い紹介を使う理由が薄れる。件数は減り、手数料も下がる。カイポケは、後発の SaaS との値下げ競争に巻き込まれ、価格を上げられないまま解約が増える。海外は撤退し、事業開発も止める。残るのは縮んだ紹介事業と、競争の厳しい経営支援システムだ。営業利益は今の半分を割り、優良企業ではなくなっている。ただし無借金で純現金があり、倒れはしない。10 年後の時価総額は、小さくなった稼ぐ力に見合う水準へ収れんする。
- キャリア(看護師・介護職などの人材紹介):数量 4.4(入職決定件数(万件、当社推定))× 価格 85(1 件当たり紹介手数料(万円))→ 売上 374 億円・営業利益 30 億円。入職 4.4 万件×85 万円。直接採用と AI に代替され件数・手数料とも減る
- 介護・障害福祉経営支援(カイポケ):数量 3.0(契約事業所数(万事業所、当社推定))× 価格 48(1 事業所当たり年額(万円))→ 売上 144 億円・営業利益 32 億円。3.0 万事業所×48 万円。値下げ競争で価格は今とほぼ同じ(名目で横ばい)
- 海外(MIMS ほか):数量 1.5(契約顧客数(千社、当社推定))× 価格 300(1 社当たり年収益(万円))→ 売上 45 億円・営業利益 0 億円。1.5 千社×300 万円。撤退・縮小で利益ゼロ
- 事業開発ほか:数量 1.6(契約企業・施設数(千件、当社推定))× 価格 210(1 件当たり年収益(万円))→ 売上 34 億円・営業利益 0 億円。1.6 千件×210 万円。止めて利益ゼロ
倍率:ROE 8.1% は k 7.25% 前後なので、正当化 PER は 1÷k = 12.1 倍が上限。紹介が代替され価格競争も続く構造的な負けの筋書きなので、稼ぐ力(純利益 29 億円)にその約 7.5 割(9.0 倍)を掛けた。床は自己資本の倍率でなく稼ぐ力で測る。
確率:AI による仲介の代替と SaaS の価格競争が同時に起きる構造的な負け筋。起きる確率は低いが、紹介が事業の 6 割で、技術変化への備えも整っていないので 1 割を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
キャリア(看護師・介護職などの人材紹介)
病院・介護施設に看護師・介護職などを紹介し、入職が決まると手数料を受け取る。直接採用(DR)も展開。
| 数量入職決定件数(万件、当社推定) | 価格1 件当たり紹介手数料(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.8 | 80 | 383 | 62 |
| 10 年後 中立 | 6.0 | 107 | 641 | 103 |
取り方:売上 382.8 億円を、看護師・介護職・薬剤師など職種を混ぜた平均手数料 約 80 万円で割り、入職決定件数を約 4.8 万件と推定。非開示のため当社推定。EBITDA は 78 億円(マージン 20%)で、償却を差し引いた営業利益は約 62 億円と推定した(営業利益の開示はなく、EBITDA 114 億円 − 償却 46 億円=営業利益 68 億円の枠内で配分)。
介護・障害福祉経営支援(カイポケ)
介護・障害福祉事業所向けのクラウド業務システム。請求・記録・勤怠などを担い、月額課金で収益が積み上がる。
| 数量契約事業所数(万事業所、当社推定) | 価格1 事業所当たり年額(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.0 | 46 | 137 | 52 |
| 10 年後 中立 | 3.8 | 72 | 274 | 99 |
取り方:売上 137.15 億円と、会社資料にある 1 事業所当たり年額(ARPA)約 46.1 万円から契約事業所数を約 3 万と逆算(出典:healthcareit.jp の整理記事に引用された会社資料)。EBITDA は 60 億円(マージン 45%)で、償却を引いた営業利益は約 52 億円と推定。
海外(MIMS ほか)
アジア 17 の国・地域の医薬情報データベース MIMS と、海外向けの人材紹介。製薬会社の宣伝予算に依存。
| 数量契約顧客数(千社、当社推定) | 価格1 社当たり年収益(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.0 | 295 | 89 | −7 |
| 10 年後 中立 | 2.4 | 370 | 89 | 7 |
取り方:売上 88.5 億円を、契約顧客約 3 千社で割った平均 295 万円と推定(顧客数は非開示で当社推定)。EBITDA は約 13 億円(マージン 15%)だが、減損前の買収由来の償却が重く、営業利益は約 −7 億円と推定。減損後は償却が年 15 億円軽くなる。
事業開発ほか
遠隔産業保健、シニア向けサービスなど育成中の小さな事業の集まり。
| 数量契約企業・施設数(千件、当社推定) | 価格1 件当たり年収益(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.9 | 200 | 38 | −10 |
| 10 年後 中立 | 2.4 | 250 | 60 | 3 |
取り方:売上約 38 億円を契約約 1.9 千件で割り 200 万円と推定(非開示のため当社推定)。立ち上げ中の事業で、営業利益は約 −10 億円と推定。全社の営業利益 68 億円に合うよう、本社費(約 −29 億円、筋書きの adjust_oku)と合わせて配分した。
リスクと懸念
AI と直接採用が紹介を飛ばす
売上の 6 割を占める人材紹介は、求人サイトやスカウトによる直接採用と、AI によるマッチングで代替されうる。手数料の高い仲介を使う理由が薄れ、件数も単価も下がる。SMS 自身も AI を使うが、同じ武器を競合も使うので差がつきにくい。
求職者の奪い合いで広告費が利益を食う
広告宣伝費は 2026 年 3 月期で 140 億円と、売上の 2 割を超える。営業利益率は 16% から 10% に下がった。看護師・介護職は複数社に登録するため、費用をかけないと集まらない。この競争が続けば、紹介の利益は伸びない。
手数料への上限・規制
医療・介護の紹介手数料の高さは、自治体や業界団体から批判されてきた。手数料に上限を設ける動きが強まれば、単価が物価に届かなくなる。入職後の短期離職の返金ルールの厳格化も同じ方向に効く。
カイポケの値上げと競合
訪問介護向けの月額は 2014 年から据え置きで、値上げが成長の切り札になる。ただ、メドレー、eWeLL、カナミックなど競合が価格を武器に追う。値上げで解約が増えれば、高い堀の評価が揺らぐ。介護報酬が据え置かれれば、事業所に値上げを受け入れる余裕もなくなる。
海外(MIMS)の整理の費用と失敗
会社は MIMS を継続前提でなく、撤退・縮小を含む全選択肢で検討中だ。売却が不調なら赤字と償却が続く。撤退では、人員整理や契約解除の費用がかかる。製薬会社の宣伝予算の縮小が重なれば、整理が長引く。
経営の質とガバナンス
期初の計画は 10 期連続で未達と、大株主は指摘する。MIMS の元 CEO・CFO が社長を務め、海外の減損の総括は十分とは言い難い。新 CFO と外部取締役の招聘で改善するかは未確定だ。大株主のオアシスと創業家の資産管理会社の関係が、方針の揺れにもなりうる。
今後の分かれ目
- カイポケの価格改定が、解約を増やさずに通れば
- 1 事業所当たりの年額が 1.5 倍を超え、営業利益の柱が育つ。本質価値は強気の筋書きに近づく。
- 看護師・介護職の紹介で、広告費の比率が下がり利益率が 18% に戻れば
- 営業利益は今の 3 倍に近づき、本質価値はやや楽観の筋書きに寄る。
- MIMS の売却や撤退が決まり、赤字と償却の重荷が消えれば
- 海外は利益を食わなくなり、国内の稼ぎが素直に表れる。本質価値は中立から上寄りに動く。
- AI と直接採用で、紹介の件数と手数料が下がり始めれば
- 紹介の利益は急速に細り、本質価値は慎重な筋書きに近づく。
- オアシスが保有を増やし、経営陣の交代や会社の分割・売却を迫れば
- 資本配分が改まる期待で値段は動くが、事業の稼ぐ力が変わらなければ本質価値は変わらない。TOB の可能性も出る。
- 介護報酬の改定で事業所の経営が悪化すれば
- カイポケの価格改定が難しくなり、介護の柱の成長が鈍る。
見ておくもの
- キャリアの入職決定数と広告費の売上比、EBITDA マージン
- カイポケの契約事業所数・1 事業所当たり年額・月次解約率と価格改定の発表
- MIMS の売却・撤退の判断と時期(2026 年度内の見込み)
- 新 CFO の就任後の資本配分(配当・自社株買い・M&A の基準)
- 2027 年 4 月末までに出る中期経営計画の数字と、期初計画の達成度
倍率と資本コストの決め方
今の株価・PER は見ずに、キャリアの入職件数×手数料、カイポケの契約事業所数×年額などを先に積み、その後で倍率を式から決めた。k は 7.25%(基本 7.5% + 紹介の循環 0.5% と AI による寿命の不安 0.25%)、堀は普通(残る割合 1/2)で、中立は上限の 8 割に置いた。ROE が高く出るのは減損で自己資本が小さいためで、その分を倍率に上乗せしていない。やや悲観は上限の 7 割、悲観は稼ぐ力に 1÷k の約 7.5 割を掛けた。今の値段は先の改善をかなり織り込みすぎており、割高の結果は株価に寄せたものではない。事務所の賃借料は営業費用に入っており、2028 年 3 月期からの新リース会計基準では営業利益が少し増え、純有利子負債にリース負債が加わるが、10 年後の数字は今と同じ形(賃借料を費用に入れた形)で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 16.7→24.43 倍・やや楽観 PER 15.66→24.2 倍・中立 PER 14.17→23.51 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。