結論
テルマー湯ホールディングスは、東京の新宿と西麻布で大きな温浴施設を営む会社だ。2025年に長野の食品の会社も買った。筆者の結論は割高である。新宿の施設は歌舞伎町の入口という強い立地で、年に32万人が訪れる。だが会社の稼ぎのほとんどはこの1施設に乗り、その土地は借りたものだ。
2026年3月期の営業利益は3億円で、純利益は1.6億円だった。今の値段は純利益の25倍を超える。施設は2つしかなく、10年で稼ぎを大きく伸ばすには新しい施設を買うか建てる必要がある。会社はM&Aを視野に入れると言うが、数字の計画は示していない。
温浴の値段の力は本物だ。サウナの人気と訪日客で、深夜も客が入る。それでも人件費と水道光熱費は物価以上に上がり、借地の家賃も上がる。筆者は、今の値段は新しい施設が次々に当たる筋書きを先に織り込んでいるとみる。
財務は軽い。借入はわずかで、配当は利益の9割を払う。持っている不動産には含み益もある。悲観の深さは和らぐが、上の値段を支えるほどではない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、テルマー湯は「強い立地の1施設に頼る会社」だ。新宿の施設はよくできた商売で、真似されにくい。利益率も高い。
だが、オーナーとして10年持つには、その稼ぎが続き、増える道筋が要る。施設は2つで、新宿の土地は借りたものだ。新しい施設を出すには大きな投資が要り、会社は数字の計画を示していない。買った食品の会社は温浴と結びつかず、資本の使い方としては説明が足りない。
今の値段は純利益の25倍を超える。強い立地に値段を払うのはよいが、払うのは10年先も続く利益に対してだ。施設が1つに偏り、借地の家賃が上がり、伸びの道筋が見えない会社に、この倍率は高い。
財務の軽さと不動産の含み益は、悲観の深さを和らげる。筆者は、新しい施設の計画が数字で出るまで、安全域は無いとみる。
持ち続けたいと思えるのは、施設が3つ目、4つ目と増え、偏りが和らいだ時だ。
何で稼ぐ会社か
テルマー湯ホールディングスの前身は、繊維と化粧品のエコナックだ。繊維やゴルフ場の事業から撤退し、2025年に温浴の事業会社を中心とした今の形と名前に変わった。
稼ぎの柱は温浴だ。売上20億円、営業利益4.9億円を稼ぎ、会社の利益のほぼ全部にあたる。施設は2つある。新宿店は2015年に歌舞伎町の入口に開き、天然の温泉とサウナ、食事と仮眠の場所を24時間開ける。年に32万人が訪れる。西麻布店は会員向けの色が濃い施設で、宿泊も扱い、年に9万人が訪れる。
2つ目は食品だ。2025年7月に長野市の青柳食品販売を買った。9か月で6.5億円を売ったが、買った代金の償却もあり、利益はまだ出ていない。
3つ目は不動産の賃貸で、西麻布のビルなどを貸す。売上は小さいが、持っている賃貸の不動産の時価は帳簿の額を11億円上回る。
客は、都心で働く人や観光客、サウナを好む若い人だ。新宿店は終電を逃した人の泊まり場としても使われる。値段は入館料に食事と施術が乗る形で、1人あたり5千円近くを使う。
株主は、ウェブ、船橋カントリー倶楽部、ロイヤル観光など、関係の深い会社が少しずつ持ち合う。親会社は無い。
優良さと弱いところ
強みは、新宿という立地だ。歌舞伎町の入口で、駅からも近い。都心で大きな湯と広いサウナを24時間開ける施設は少なく、真似されにくい。入館料に食事と施術を重ねて、1人あたりの売上も高い。営業利益率は25%近くある。
弱さは、稼ぎが1つの施設に集まっていることだ。新宿店の入館者は会社全体の8割に近い。その土地は年2.3億円の家賃で借りており、契約の条件が変われば利益は大きく削られる。設備の故障や衛生の事故で休めば、その間の稼ぎは止まる。
伸びしろも限られる。2つの施設の入館者は2026年3月期にどちらも少し減った。西麻布店は周りのホテルの値下げに合わせて宿泊の値段を下げた。新しい施設を出すには大きな投資と、都心の土地が要る。
資本の稼ぎは薄い。自己資本は50億円あり、ROE(自己資本利益率)は3%台だ。食品の会社を買ったが、まだ利益を生んでいない。長く赤字を重ねた会社で、累積の損失を解消したのは最近のことだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
温浴施設の市場は、銭湯の減りとスーパー銭湯の伸びが重なる形で動いてきた。都内の銭湯は燃料費と後継ぎの不足で年に数十軒ずつ減る。代わりに、サウナを売りにした大型の施設が人を集める。サウナの人気は2019年ごろから広がり、若い客と女性の客を呼び込んだ。
都心の大型の温浴施設は数が少ない。新宿には東京ドーム天然温泉スパラクーアのような大きな施設があり、池袋や錦糸町にも競う施設がある。テルマー湯は、立地と24時間の営業でその中の一角を占める。訪日客も、日本の温泉の体験として都心の施設を訪れる。
費用の面では、重さが増す。温浴は水と燃料と電気を大量に使い、その値段は物価以上に上がる。深夜の営業は人手が要り、時給も上がる。借地や借りた建物の家賃も、契約の更新のたびに上がる。
10年の構図は、サウナの人気が落ち着いた後も、都心の大型の施設は残り、値上げを通せる施設と通せない施設に分かれる形だ。新しく施設を出すには、都心の土地と大きな投資が要り、数は増えにくい。
施設の数が増えにくいことは、今ある施設を持つ会社には守りになる。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。2026年3月期の配当の総額は1.3億円で、純利益の9割を払った。2027年3月期も同じ配当を予定する。自社株買いはしていない。株主優待はテルマー湯の入館の招待券で、原価は小さい。
財務は軽い。現金は13億円あり、借入は4億円ほどで返済を進めている。持っている賃貸の不動産の時価は33億円で、帳簿の額を11億円上回る。
資本の使い道は、温浴の施設とM&Aだ。2025年に長野の食品の会社を買ったように、本業と遠い会社を買う可能性もある。筆者は、買収で資本を薄めないかを最も気にしている。株主は関係の深い会社が少しずつ持ち合い、外から資本の使い方を問う力は弱い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
新宿の施設は強い。歌舞伎町の入口で駅に近く、24時間開いている大型の温浴施設は都心に数えるほどしかない。営業利益率は25%近くあり、真似されにくい。サウナの人気は一時の流行を超えて習慣になり、若い客と女性の客が定着した。
訪日客も追い風だ。日本の温泉とサウナの体験は人気で、都心の施設に外国の客が増える。値上げも通る。入館料に食事と施術を重ね、1人あたりの売上は物価以上に伸ばせる。
財務は軽く、借入はわずかだ。現金は13億円あり、賃貸の不動産には11億円の含み益がある。会社はM&Aを視野に入れ、温浴の施設を買い足せば、新宿で磨いた運営の力を他の施設に広げられる。3つ目、4つ目の施設が当たれば、利益は今の3倍になる。
配当は利益の9割を払い、株主への還元にも前向きだ。
新宿店は開業から10年が過ぎても入館者をほぼ保っており、立地の強さは実績で示されている。持っている不動産の含み益は、新しい施設の資金の裏付けにもなる。
慎重な見方
稼ぎが1つの施設に乗りすぎている。新宿店の入館者は全体の8割に近く、その土地は年2.3億円の家賃で借りている。契約の更新で家賃が上がるか、更新されなければ、会社の稼ぎのほとんどが消える。
入館者はもう伸びていない。2026年3月期は新宿も西麻布も入館者が減った。サウナの人気は落ち着き始め、都心には新しい施設も増える。水道と燃料と電気、深夜の人手の費用は物価以上に上がる。
資本の使い方も心もとない。長野の食品の会社を買ったが、温浴とは結びつかず、まだ利益を生まない。M&Aで本業と遠い会社を買い続ければ、資本の稼ぎはさらに薄まる。ROEは3%台だ。
今の値段は純利益の25倍を超える。施設が増えない限り、この倍率を支える利益の伸びは無い。
関係の深い会社が少しずつ持ち合う株主の形では、資本の使い方を外から正す力も弱い。強い立地への値段は、もう十分に払われている。
西麻布店は開業から3年でも宿泊の値段を下げており、2つ目の施設が新宿ほど稼げる保証は無い。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。新宿の施設の強さは本物だが、1施設への偏りと借地、伸びの道筋の無さは10年で解けにくい。中立を最も厚くし、やや悲観と悲観を合わせて35%に置いた。財務が軽いので悲観の確率は施設の偏りほどには上げなかった。新しい施設の計画が数字で出れば見直す。施設の偏りは確率よりも資本コストの寿命の上乗せで一度だけ数え、悲観の確率を重ねて上げてはいない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 97 円26 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 53 円14 億円)。 今の値に割り戻すと 78 円21 億円、今との差 −49.8%、 期待の年率 −0.4%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 257 円68 億円 | 102 円27 億円 | +130.2% | +8.7% | 25 円7 億円 |
| やや楽観 | 20% | 142 円38 億円 | 76 円20 億円 | +39.6% | +3.4% | 44 円12 億円 |
| 中立 | 38% | 103 円27 億円 | 60 円16 億円 | +4.7% | +0.5% | 62 円16 億円 |
| やや悲観 | 22% | 35 円9 億円 | 30 円8 億円 | −58.3% | −8.4% | 14 円4 億円 |
| 悲観 | 13% | 28 円8 億円 | 11 円3 億円 | −74.6% | −12.8% | 5 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 97 円26 億円 | 53 円14 億円 | −3.7% | −0.4% | 150 円40 億円 |
今の株価時価総額 156 円41 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 新しい施設を2つ加え、新宿の運営の力を広げる 利益 5 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 257 円68 億円
会社がM&Aと新しい施設で、温浴の施設を4つに増やす筋書きだ。都心や郊外で売りに出た温浴施設を買い、新宿で磨いた運営の力で立て直す。入館者は年60万人に増える。
値上げも通る。サウナの人気は習慣として定着し、訪日客も増える。1人あたりの売上は物価を上回って伸び、温浴の利益率は25%を保つ。温浴の営業利益は10億円を超える。食品の会社も温浴の施設に商品を卸し、小さな利益を生む。
純利益は5億円台になり、ROEは資本コストを少し上回る。配当は利益の8割を払い続ける。新宿の借地の契約も、同じ条件で更新される。
- 温浴(テルマー湯 新宿店・西麻布店):数量 600(入館者数(千人))× 価格 6,745(入館者1人あたりの売上(円))→ 売上 40 億円・営業利益 10 億円。4施設で60万人×1.38倍、25%
- 食品(青柳食品販売):数量 880(出荷量(トン・推定))× 価格 1.38(1トンあたりの売上(百万円・推定))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。880トン×1.38倍、6%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.8% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)5 億円。全体の PER 12.52 倍、時価総額 68 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社はM&Aを視野に入れるが、都心の施設は数が少なく大きな投資が要る。施設を2つ増やして当てる筋は狭いので7%とした。
やや楽観 20% 西麻布が立ち直り、2施設で物価並みに稼ぐ 利益 3 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 142 円38 億円
施設は2つのまま、運営の工夫で稼ぎを伸ばす筋書きだ。西麻布店は宿泊の値段を戻し、会員の客を増やす。新宿店は訪日客を取り込み、入館者は合わせて年45万人になる。
1人あたりの売上は物価並みに伸び、温浴の利益率は24%を保つ。温浴の営業利益は7億円ほどだ。食品の会社は小さな利益を出す。本社の費用と借地の家賃は物価とともに上がる。
純利益は3億円近くになり、配当は利益の7割ほどを払う。ROEは6%前後で、資本コストには届かない。
新宿の借地の契約は、家賃を少し上げる形で更新される。食品の会社は温浴の施設に商品を卸し、施設の食事の原価を少し下げる。
- 温浴(テルマー湯 新宿店・西麻布店):数量 450(入館者数(千人))× 価格 6,550(入館者1人あたりの売上(円))→ 売上 29 億円・営業利益 7 億円。45万人×1.34倍、24%
- 食品(青柳食品販売):数量 860(出荷量(トン・推定))× 価格 1.34(1トンあたりの売上(百万円・推定))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。860トン×1.34倍、3%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.9% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)5 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 38 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新宿の立地は強く、西麻布の宿泊が持ち直せば入館者は少し増える。施設を増やさずに物価並みに稼ぐ筋として20%とした。
中立 38% 入館者は横ばい、費用の上昇で利益率が少し下がる 利益 2 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 103 円27 億円
施設は2つのまま、入館者が横ばいで推移する筋書きだ。サウナの人気は落ち着き、都心に新しい施設も増える。入館者は年40万人とほぼ今のままだ。1人あたりの売上は値上げで伸びるが、競う施設と比べられて物価にわずかに届かない。
水道と燃料と電気、深夜の人手の費用は物価以上に上がり、借地の家賃も上がる。温浴の利益率は22%に下がり、営業利益は5.6億円ほどだ。食品はわずかな利益にとどまる。
純利益は2億円ほどで、配当は利益の9割を払い続ける。ROEは4%前後で、資本コストに届かない。
食品の会社は温浴と結びつかないまま、細い利益の別の事業として残る。新しい施設の計画は出ず、資本の稼ぎは上がらない。
- 温浴(テルマー湯 新宿店・西麻布店):数量 400(入館者数(千人))× 価格 6,353(入館者1人あたりの売上(円))→ 売上 25 億円・営業利益 6 億円。40万人×1.30倍(競う施設と比べられ物価に届かない)、22%
- 食品(青柳食品販売):数量 840(出荷量(トン・推定))× 価格 1.30(1トンあたりの売上(百万円・推定))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。840トン×1.30倍、2%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.1% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)5 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 27 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026年3月期は2施設とも入館者が少し減った。サウナの人気の一巡と物価の分の値上げが打ち消し合う落としどころとして38%とした。
やや悲観 22% サウナの人気が去り、新宿の客が細る 利益 1 億円 · PER 8.8 倍 · 株価時価総額 35 円9 億円
サウナの人気が去り、新宿店の客が細る筋書きだ。都心に新しい大型の施設が開き、客を奪う。入館者は年36万人に減り、値上げも通りにくくなる。1人あたりの売上は10年で1.22倍にとどまる。
水道と燃料と電気、人手の費用は上がり続け、借地の家賃も更新で上がる。温浴の利益率は17%に落ち、営業利益は1億円台になる。食品の会社は赤字に沈む。
純利益は1億円に届かない。配当は減る。現金は谷で一部を食い、ROEは1%台にとどまる。
会社は新しい施設を探すが、都心の土地は高く、手を出せない。買った食品の会社の立て直しにも手間を取られる。
- 温浴(テルマー湯 新宿店・西麻布店):数量 360(入館者数(千人))× 価格 5,963(入館者1人あたりの売上(円))→ 売上 21 億円・営業利益 4 億円。36万人×1.22倍、17%
- 食品(青柳食品販売):数量 780(出荷量(トン・推定))× 価格 1.22(1トンあたりの売上(百万円・推定))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。780トン×1.22倍、−2%
倍率:ROEは1%台で資本コストを大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)で見て、1÷kの12.5倍の7割の8.8倍。余った現金は谷で食う分を引いた3.75億円を足す。不動産の含み益は賃料を利益に残すので足さない。PBRは0.17倍と低いが、ROEが1%台の会社では帳簿の自己資本は床にならず、不動産は事業に使い続ける。
確率:サウナの人気は流行の面もあり、都心には新しい施設が増える。新宿の入館者が1割以上減る筋として22%とした。
悲観 13% 新宿の借地の契約が終わり、稼ぎの柱を失う 利益 −3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 28 円8 億円
新宿店の借地の契約が、家賃の大幅な引き上げか、更新の拒否で終わる筋書きだ。新宿店を閉じるか、大きく縮める。会社に残るのは西麻布店と食品の会社だけになる。
温浴の売上は4分の1に落ち、西麻布店だけでは本社の費用を賄えない。営業は赤字に沈み、新宿の設備の減損で自己資本は大きく減る。配当は止まる。
現金と西麻布のビルは残るが、会社は新しい施設を探して現金を使う。少数株主は清算を求められず、株主に残るのは帳簿の自己資本の2割に満たない値段だ。
新宿の施設の跡は借地の持ち主に返し、設備の多くは捨てることになる。会社の値打ちの大半は、この1つの契約に乗っていた。
- 温浴(テルマー湯 新宿店・西麻布店):数量 100(入館者数(千人))× 価格 5,500(入館者1人あたりの売上(円))→ 売上 6 億円・営業利益 −1 億円。西麻布だけ10万人×1.13倍、−10%
- 食品(青柳食品販売):数量 700(出荷量(トン・推定))× 価格 1.15(1トンあたりの売上(百万円・推定))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。700トン×1.15倍、−3%
倍率:赤字で稼ぐ力は床にならない。今の自己資本49.7億円に0.15倍を掛けた約7.5億円とみる。純現金約9億円と賃貸の不動産の含み益の税後約8億円はあるが、会社は新しい施設の投資に使い、少数株主は清算を求められないので床に全部は数えない。
確率:稼ぎのほとんどが借地の上の1施設に乗る。契約の条件が大きく変わるか更新されず、柱を失う筋として13%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
温浴(テルマー湯 新宿店・西麻布店)
都心の大型の温浴施設2つ。入館料に食事・施術・宿泊が乗る。
| 数量入館者数(千人) | 価格入館者1人あたりの売上(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 409 | 4,887 | 20 | 5 |
| 10 年後 中立 | 400 | 6,353 | 25 | 6 |
取り方:入館者は有報の新宿店32.21万人と西麻布店8.72万人の合計。温浴の売上20.00億円を割った1人あたり約4,887(円)(宿泊・飲食・施術を含む)。営業利益は温浴の4.93億円。
食品(青柳食品販売)
2025年7月に買った長野市の食品の製造と販売。
| 数量出荷量(トン・推定) | 価格1トンあたりの売上(百万円・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 647 | 1.00 | 6 | 0 |
| 10 年後 中立 | 840 | 1.30 | 11 | 0 |
取り方:出荷量の開示が無いため推定。9か月の売上6.47億円を、1トンあたり約1百万円(加工食品の卸の値段の目安)で割った約650トン(年に直すと約860トン)。利益は買った代金の償却0.18億円を含む−0.18億円。
リスクと懸念
新宿店への偏り
新宿店の入館者は会社全体の8割に近い。設備の故障や衛生の事故、近くに競う施設が開くことで新宿店の客が減れば、会社の稼ぎのほとんどが揺らぐ。
借地の契約
新宿店の土地は年2.3億円の家賃で借りている。契約の更新で家賃が上がるか、更新されなければ、稼ぎの柱を失う。
水道光熱費と人手
温浴は水と燃料と電気を大量に使い、深夜の営業には人手が要る。その費用は物価以上に上がり、値上げが通らなければ利益率は削られる。
サウナの人気の一巡
サウナの人気は若い客と女性の客を呼んだが、流行の面もある。人気が落ち着き、都心に新しい施設が増えれば、入館者は細る。
M&Aによる資本の薄まり
会社はM&Aを視野に入れ、2025年に本業と遠い食品の会社を買った。利益を生まない買収が続けば、資本の稼ぎはさらに薄まる。
今後の分かれ目
- 新しい温浴施設の取得か開業を発表したら
- 施設の偏りが和らぐとみて、やや楽観と楽観の確率を上げる。
- 新宿店の借地の契約が長い期間で更新されたら
- 最大の不確かさが減るとみて、悲観の確率を下げる。
- 新宿店の入館者が2期続けて5%以上減ったら
- サウナの人気の一巡とみて、やや悲観に重みを移す。
- 食品の会社が2期続けて赤字になったら
- 買収の失敗とみて、資本の使い方の評価を下げる。
- 温浴と遠い分野の買収をさらに行ったら
- 資本の稼ぎが薄まるとみて、中立の利益率を見直す。
見ておくもの
- 新宿店・西麻布店の入館者数
- 温浴の営業利益率
- 新宿店の借地の契約の更新
- 新しい施設のM&A
- 食品の会社の利益
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価やPERを見ずに、ROEとk 8.5%から決めた。中立のROEは4%前後で資本コストに届かないので、PERは1÷kの12.5倍の7.5割に置いた。今の値段は純利益の25倍を超えるが、それには寄せていない。利益率は今の温浴の水準を山とし、中立では下げた。不動産の含み益は賃料を利益に残したので足していない。新宿店の借地の家賃は固定の約束で、2028年3月期からの新リース会計基準で負債が増えて見えるが、10年後の数字は今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.4→12.52 倍・やや楽観 PER 10→11.76 倍・中立 PER 9.4→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。