結論
LITALICO は、発達に特性のある子ども向けの教室「LITALICO ジュニア」と、障害のある人の就職を支える「LITALICO ワークス」を全国で運営する福祉サービス会社だ。収入の大半は国が決める公定価格、つまり報酬から入る。筆者の結論は、事業の勢いは本物だが、利益で測った本質価値は今の時価総額をやや下回る、というものだ。
稼ぎの柱は 4 つある。児童の教室、就労の施設、福祉事業所向けのソフト、米国の障害者グループホームだ。直近は営業利益が 3 割増と勢いがあり、会社は今期も 2 割増を見込む。ただし中身は、施設の数と国の報酬で決まる。数字が伸びるほど、報酬を決める側の目も厳しくなる。
10 年後の中立は、営業利益が約 110 億円、純利益が約 70 億円。ROE は 14% 台に落ち着き、時価総額は 870 億円ほどになる。強気の筋書きなら 2,000 億円を超えるが、報酬の引き下げが重なる筋書きでは 300 億円を割る。
筆者がいちばん気にしているのは、2027 年 4 月の報酬改定だ。2024 年の改定では、制度に合わせて運営の方式を変えて失敗し、児童の事業が赤字に落ちた。値段を自分で決められない事業は、堀、つまり他社がまねできない強みが厚くても、利益の見通しが国の方針に縛られる。この弱さを、筆者は資本コストと確率に織り込んだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、良い面と悩ましい面が半々だ。
良い面は、利用者が長く通い、毎月の収入が積み上がることだ。景気で需要が揺れにくく、現場の人の質がそのまま競争力になる。利益の使い方も、新しい教室や施設に先に回すという筋が通っている。
悩ましいのは、売上の大半を国が決めることだ。値段を決める力が自分にない事業は、オーナーとして長く持ちたいとは思いにくい。2024 年の改定では、運営の方式を制度に合わせて変えて裏目に出た。もう 1 つは再投資だ。教室を増やせば利益は増えるが、増やした分に見合う稼ぎが続くか、毎年確かめる必要がある。
安全域は、今の値段に対して十分とは言えない。10 年後の中立の価値は今の時価総額を上回るが、割り戻して確率で重ねると、今の値段は価値をやや上回る。わからない点は 2027 年 4 月の改定の中身だ。わからないものには、確信を下げて向き合うのが筋だ。筆者は、改定のたびに利益が大きく振れる会社を、同じ価格で割り切って持つことはしない。事業の質は良く、値段との釣り合いで慎重になる、という位置づけだ。
何で稼ぐ会社か
事業は 4 つに分かれる。児童福祉、就労支援、プラットフォーム、海外だ。
児童福祉の中心は、発達に特性のある子ども向けの教室「LITALICO ジュニア」だ。2026 年 3 月期の売上は 110 億円で、教室は期中に 19 増えて 186 になった。収入の源は国と自治体が払う報酬で、子どもが通うたびに公定価格が入る。2024 年 4 月の改定で長時間の支援が手厚くなり、会社は短時間の個別支援から長時間の集団支援へ運営を移した。ところが職員の負担が増え、稼働率が落ち、利益が赤字に沈んだ。2025 年 4 月に元の方式へ戻し、今は黒字に復している。
就労支援は「LITALICO ワークス」だ。障害のある人が働くための訓練を受け、就職までを支える。売上は 142 億円。2024 年の中間期で、セグメント利益率は 37% と高かった。施設は 160 前後で、会社全体の稼ぎ頭になっている。
プラットフォームは、福祉事業所向けの業務ソフトと、発達や仕事の情報サイトだ。契約する事業所は 2 万 8 千を超える。売上は 55 億円で、利益率は 3 割を超える。
海外は、2024 年に買収した米国ネブラスカ州の DDCN だ。重い行動障害のある人のグループホームを運営している。2024 年 9 月の時点で 17 棟、従業員は 227 人だった。
会社の稼ぎ方に共通するのは、1 つの施設が決まった収入を毎月生む形だということだ。だから、利益は施設の数、1 施設の売上、人件費の 3 つでほぼ決まる。新しい施設は立ち上げの数か月が赤字になりやすい。開設を急ぐ年ほど、利益は後ろにずれる。
優良さと弱いところ
堀は、制度と現場のノウハウの組み合わせだ。ただし鉄壁ではない。
強みは 3 つある。第 1 に、療育と就労支援の長い実績だ。2025 年度に 2,585 人を就職に導き、定着率は 9 割を超えると公表している。利用者にも自治体にも信頼されやすい。第 2 に、発達ナビなどの情報サイトだ。子どもの特性に悩む親が最初に開く場所を持つ会社は少ない。第 3 に、事業所向けのソフトだ。人手が足りない福祉の現場で、記録や請求を楽にする道具として売れる。
弱みは、値段を自分で決められないことだ。収入の大半は公定価格で、2024 年の改定はそこを突いた。会社の試算では、手を打たなければ児童の利益は 17 億円から 9 億円台へ縮む見込みだった。福祉職は採用の競争が激しく、賃金は物価並みに上がる。公定価格がそれに追いつかなければ、利益率が削られる。
資本の面では、ROE が 19% と高い。だが米国の買収でのれんが 100 億円を超え、有利子負債は 120 億円台に増えた。純負債は自己資本の 0.64 倍で、重くはないが無借金とも言えない。創業者の長谷川社長が約 27% を持ち、経営の意思は通りやすい。
筆者は、堀の厚さを「普通」と置く。ブランドと実績は本物だが、施設を開くのに特別な許認可の壁はなく、国が参入を絞らない限り、同じことをする事業者は現れ続ける。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
この市場の大きさは、人口よりも制度が決める。
障害児の通所支援は、国の費用が急に膨らんだ分野だ。放課後等デイサービスの利用者は月 37 万人台、事業所は全国で 1.6 万から 2 万を超えるとされる。民間の参入が相次ぎ、財務省は給付費が約 3 倍に増えたとして、加算の使われ方まで調べ始めた。総量を抑える圧力は今後も強いと見るのが自然だ。
就労支援では、2025 年 10 月に就労選択支援が始まった。就労系サービスの新規の利用者が、まず評価を受けてから振り分けられる仕組みだ。入口を握る事業所には機会になる。一方で、評価中は利用料が出ず、能力の高い人が一般就労へ流れる懸念もある。就労移行の市場は 2020 年度で事業所が 3,300、利用者が 4 万人ほど。ウェルビーなど上場の競合もいる。
追い風もある。発達障害の認知が進み、支援を受ける子の割合は上がっている。企業の障害者雇用の義務も段階的に重くなる。需要そのものは当面落ちない。
10 年後の姿は、報酬をどう置くかで大きく変わる。筆者は、施設の数が緩やかに増えても、1 施設の売上が物価に追いつかない世界を中立に置く。少子化で子どもの数は減るが、支援を受ける割合が上がり、ほぼ相殺すると見る。
国内で需要が伸びる分野は、施設を増やすだけで売上が付いてくる。だが、増えた分だけ国の負担も増える。財政が苦しくなる 2030 年代に、改定の風向きが変わる点を、筆者は最大の構造変化と見ている。
資本政策と M&A
資本政策は、成長投資が先で、還元はあとからついてくる形だ。
配当は毎期増やしていて、今期も増配を予想している。それでも配当性向は 2 割に満たない。自社株買いは前期に 13 億円、今期も上限 10 億円を決めた。両方を合わせても、利益の半分には届かない。
M&A では、2024 年の DDCN の買収が大きい。のれんは 100 億円を超え、借入で賄った分もある。買った会社は 17 棟のグループホームを持つだけで、米国で数を増やせるかは、まだ試されていない。成長が鈍れば減損の恐れが残る。
創業者が約 27% を持つため、買収される側になる可能性は小さい。時価総額は 700 億円弱と、大手が飲み込める大きさだが、社長が持ち続ける限り、TOB は考えにくい。
資本の使い方で筆者が見るのは、のれんの重さと、増配の余地のバランスだ。教室と施設への投資が利益を生むうちは、還元を抑えて再投資に回す今の形でよい。投資の回収が鈍った時に、還元へ切り替えられるかが試金石になる。
2027年3月期の上限10億円の自社株買いは、今の株数にまだ反映されていないため、10年の還元の中に残している(二重ではない)。
点検済み:中立の営業利益率14.6%が会社予想(27・28年3月期12.3〜12.7%)と過去最高(12.9%)を超え、売上が2倍なのに本社費用を70億円(今は約48億円)のまま据えていたため、本社費用を85億円・児童12%に置き直した(全社12.4%)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
需要は構造的に伸びる。発達障害の認知が広がり、支援を受ける子は増え続ける。同社の教室は 186 とまだ入口にいる。小規模な事業者がひしめく中で、実績のある大手に利用者が集まり、教室は 10 年で 380 まで伸びる。2026 年 3 月期に児童福祉は 24% の増収で黒字へ戻り、今期の第 1 四半期は営業利益が 5 割増えた。運営を元の方式へ戻した効果が出ている。
就労支援は利益率が 3 割を超え、全社の稼ぎ頭だ。ウェルビーなどの競合と比べても、施設の数・就職の実績・ブランドで頭 1 つ抜ける。就労選択支援が始まっても、評価の入口を握る側に回れる。
プラットフォームは、契約が積み上がる事業だ。人手不足の福祉の現場では、記録や請求を楽にするソフトの需要が強い。海外は、公費で支えられる福祉という同じ型の事業を持ち込める市場で、DDCN を足場に棟数を増やせる。
財務にも余裕がある。自己資本比率は 3 割、純負債は自己資本の 0.64 倍で、利益で借入を返しながら成長を続けられる。10 年で純利益が 4 倍を超える筋書きは、誇張ではない。
そのうえ、利益の使い方も前向きだ。増配と自社株買いを続けながら、教室と施設への投資を止めない。報酬改定の痛みを経験した会社は、現場の運営を元に戻す判断も早い。同じ失敗を繰り返さない力が、次の改定でも効く。
慎重な見方
この会社の利益は、国が決める値段に乗っているだけだ。2024 年の改定で、児童福祉は一度赤字に落ちた。同じことが 2027 年 4 月に起きても不思議はない。財務省は児童発達支援と放課後等デイの給付費が約 3 倍に膨らんだと問題視している。膨らんだ財源は、必ず絞り直される。
事業所は全国で 2 万を超えるとされ、民間の参入が止まらない。供給が増えれば報酬は上がらず、人の取り合いで賃金だけが上がる。公定価格は物価に自動では追いつかない。
就労支援は、2025 年 10 月に始まった就労選択支援で、利用者の入口が変わった。評価中は収入が出ず、能力の高い人は他へ流れる。就労移行は事業所が増えすぎた市場で、ウェルビーとの競争も続く。
海外は、買収で積んだのれんが 100 億円を超える。米国で数を増やせなければ減損が出て、借入だけが残る。金利が上がれば、120 億円台の有利子負債の利払いも重くなる。
今の稼ぐ力は、改定が一度も厳しく来ない前提に近い。10 年のあいだその前提が通ると考えるのは、楽観に過ぎる。
経営の判断にも不安が残る。制度の変更に合わせて運営を大きく変え、それが裏目に出た。創業者の持ち分が大きく、外から止める力も弱い。大きな買収を、借入を使って進めたことも、同じ根から出ている。
どちらに重みを置いたか
事業の勢いと成長の道筋では、強気の見方が上回る。一方で、値段を国が決めるという弱点は、慎重な見方のほうが重い。報酬の改定は 3 年ごとに必ず来て、財務省の目も厳しい。報酬の弱さは資本コストの値決めの項で 1 回だけ数え、確率では事業の勢いと釣り合わせて、中立に厚く置いた。確率を重ねて今に割り戻すと、10 年の価値は今の時価総額をやや下回る。やや割高とは、事業を悪く見ているという意味ではなく、払う値段に安全域が足りないという意味だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,405 円1,161 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 385 円131 億円)。 今の値に割り戻すと 1,879 円641 億円、今との差 −5.3%、 期待の年率 +6.7%(資本コスト 7.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 8,040 円2,741 億円 | 616 円210 億円 | +336.3% | +15.9% | 692 円236 億円 |
| やや楽観 | 22% | 5,893 円2,009 億円 | 510 円174 億円 | +222.7% | +12.4% | 1,409 円480 億円 |
| 中立 | 38% | 3,249 円1,108 億円 | 366 円125 億円 | +82.2% | +6.2% | 1,374 円468 億円 |
| やや悲観 | 21% | 948 円323 億円 | 293 円100 億円 | −37.4% | −4.6% | 261 円89 億円 |
| 悲観 | 11% | 290 円99 億円 | 205 円70 億円 | −75.0% | −13.0% | 54 円19 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,405 円1,161 億円 | 385 円131 億円 | +91.0% | +6.7% | 3,790 円1,292 億円 |
今の株価時価総額 1,984 円676 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 教室と施設が倍増し、報酬も物価に追いつく 10 年 利益 127 億円 · PER 21.2 倍 · 株価時価総額 8,040 円2,741 億円
児童の教室は 380 まで増え、発達障害の認知が進んで利用が伸びる。短時間の個別支援に長時間・訪問の支援を足し、1 教室の売上は物価を上回って伸びる。就労は 330 施設に達し、就労選択支援の入口も押さえて、ウェルビーなどを引き離す。プラットフォームは契約が 4 万 8 千を超え、ソフトの値上げも通る。海外は米国で 48 棟まで増え、稼ぎの柱に育つ。報酬改定は物価に追いつく水準で続き、利益率は児童が 17%、就労が 34% まで上がる。LITALICO が福祉の大手として一段上の地位を固める、最も良い 10 年だ。人件費の上昇も、賃上げ加算と生産性の向上で吸収できる。為替は 150 円のままで、米国の利益もそのまま円で積み上がる。
- 児童福祉事業(LITALICO ジュニア等):数量 380(教室(施設)数)× 価格 0.79(1 施設当たり年間売上(億円))→ 売上 300 億円・営業利益 51 億円。教室 380×1 施設 0.79 億円・利益率 17%
- 就労支援事業(LITALICO ワークス等):数量 330(施設数)× 価格 1.16(1 施設当たり年間売上(億円))→ 売上 384 億円・営業利益 131 億円。施設 330×1 施設 1.16 億円・利益率 34%
- プラットフォーム事業(業務ソフト・情報サイト):数量 48,000(契約事業所数(目安))× 価格 0.00(1 契約当たり年間売上(億円))→ 売上 123 億円・営業利益 47 億円。契約 4.8 万×1 契約 25.6 万円・利益率 38%
- 海外事業(米国 DDCN ほか):数量 48.0(グループホームの棟数(推定))× 価格 5.13(1 棟当たり年間売上(億円))→ 売上 246 億円・営業利益 62 億円。米国 48 棟×1 棟 5.1 億円・利益率 25%
倍率:事業の純利益 127 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 31.3% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 19.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.2 倍。全体の PER 21.2 倍、時価総額 2,692 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:10 年のあいだ報酬改定で大きな傷を負わず、児童・就労・海外の拡大を同時に成功させる必要があり、実現すれば強いが連続成功の確度は高くない。
やや楽観 22% 拡大は続くが、報酬の伸びが物価をわずかに下回る 10 年 利益 96 億円 · PER 20.5 倍 · 株価時価総額 5,893 円2,009 億円
児童の教室は 340、就労は 295 まで増える。発達ナビや事業所向けソフトが入口として効き、大手に利用者が集まる。報酬の伸びは物価をわずかに下回るが、賃上げ加算で人件費は吸収できる。プラットフォームは契約が 4 万 3 千まで増える。海外は米国で 40 棟へ広がる。就労選択支援は新しい仕組みとして定着し、会社は入口の側に回る。利益率は児童が 15%、就労が 32% で、会社の計画に近い成長が 10 年続く。報酬改定は小さな調整で済み、運営の方式を大きく変える必要も出ない。堀は保たれ、利益は着実に積み上がる。自社株買いと増配も続き、純利益の 3 割ほどが株主に戻る。
- 児童福祉事業(LITALICO ジュニア等):数量 340(教室(施設)数)× 価格 0.78(1 施設当たり年間売上(億円))→ 売上 264 億円・営業利益 40 億円。教室 340×1 施設 0.78 億円・利益率 15%
- 就労支援事業(LITALICO ワークス等):数量 295(施設数)× 価格 1.15(1 施設当たり年間売上(億円))→ 売上 338 億円・営業利益 108 億円。施設 295×1 施設 1.15 億円・利益率 32%
- プラットフォーム事業(業務ソフト・情報サイト):数量 43,000(契約事業所数(目安))× 価格 0.00(1 契約当たり年間売上(億円))→ 売上 108 億円・営業利益 38 億円。契約 4.3 万・利益率 35%
- 海外事業(米国 DDCN ほか):数量 40.0(グループホームの棟数(推定))× 価格 5.13(1 棟当たり年間売上(億円))→ 売上 205 億円・営業利益 48 億円。米国 40 棟・利益率 23.5%
倍率:事業の純利益 96 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 27.0% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 17.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.5 倍。全体の PER 20.53 倍、時価総額 1,965 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:需要の強さと大手への集約は進むが、報酬の伸びは物価をやや下回る。会社の計画に近い、現実的な上振れ。
中立 38% 施設は緩やかに増えるが、報酬が物価に追いつかない 10 年 利益 57 億円 · PER 18.7 倍 · 株価時価総額 3,249 円1,108 億円
児童の教室は 300、就労は 255 まで増える。増えるペースは今より落ち、年に 10 施設ほどだ。報酬の改定は 3 年ごとに来るが、1 施設の売上は物価の伸びを少し下回る。人件費は物価並みに上がるので、利益率は児童が 12%、就労が 30% にとどまる。プラットフォームは契約が 3 万 8 千まで増え、海外は 32 棟になる。2027 年の改定は致命傷にならず、小さな減額と加算の見直しで済む。成長は続くが、国の財布の範囲で伸びる、堅実な 10 年になる。堀は保たれるが、利益の伸びは物価と同じ程度にとどまる。米国は買収した会社の延長で、少しずつ棟数を足す。本社費用は売上の伸びに合わせて 85 億円まで増える。のれんの減損は出ず、借入は利益で返せる。
- 児童福祉事業(LITALICO ジュニア等):数量 300(教室(施設)数)× 価格 0.77(1 施設当たり年間売上(億円))→ 売上 230 億円・営業利益 28 億円。教室 300×1 施設 0.77 億円・利益率 12%
- 就労支援事業(LITALICO ワークス等):数量 255(施設数)× 価格 1.13(1 施設当たり年間売上(億円))→ 売上 288 億円・営業利益 86 億円。施設 255×1 施設 1.13 億円・利益率 30%
- プラットフォーム事業(業務ソフト・情報サイト):数量 38,000(契約事業所数(目安))× 価格 0.00(1 契約当たり年間売上(億円))→ 売上 93 億円・営業利益 31 億円。契約 3.8 万・利益率 33%
- 海外事業(米国 DDCN ほか):数量 32.0(グループホームの棟数(推定))× 価格 5.13(1 棟当たり年間売上(億円))→ 売上 164 億円・営業利益 36 億円。米国 32 棟・利益率 22%
倍率:事業の純利益 57 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.0% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.7 倍。全体の PER 18.7 倍、時価総額 1,073 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:施設は緩やかに増え、報酬は物価に追いつかないが大きくは切られない。事業の勢いと制度の重さが釣り合う、最も重みを置く筋書き。
やや悲観 21% 報酬が据え置かれ、施設の増加も止まる 10 年 利益 30 億円 · PER 9.9 倍 · 株価時価総額 948 円323 億円
児童の教室は 240、就労は 205 で伸びが止まる。財務省の適正化の圧力で報酬は据え置かれ、1 施設の売上は物価に大きく遅れる。賃金だけが上がるので、利益率は児童が 9%、就労が 24% まで下がる。就労選択支援で新規の利用者が減り、ウェルビーなどとの取り合いも続く。プラットフォームは契約が 3 万 1 千にとどまる。海外は米国で 24 棟まで広がるが、買収ののれんを回収できるほどの利益には届かない。堀は残るが、稼げる額が頭打ちになる 10 年だ。次の改定を待つあいだ、投資を絞った分だけ成長も止まる。純利益の 3 割半ばを還元に回すが、自己資本は思うほど増えない。
- 児童福祉事業(LITALICO ジュニア等):数量 240(教室(施設)数)× 価格 0.72(1 施設当たり年間売上(億円))→ 売上 172 億円・営業利益 16 億円。教室 240・報酬据え置きで利益率 9%
- 就労支援事業(LITALICO ワークス等):数量 205(施設数)× 価格 1.06(1 施設当たり年間売上(億円))→ 売上 217 億円・営業利益 52 億円。施設 205・利益率 24%
- プラットフォーム事業(業務ソフト・情報サイト):数量 31,000(契約事業所数(目安))× 価格 0.00(1 契約当たり年間売上(億円))→ 売上 71 億円・営業利益 20 億円。契約 3.1 万・利益率 28%
- 海外事業(米国 DDCN ほか):数量 24.0(グループホームの棟数(推定))× 価格 4.98(1 棟当たり年間売上(億円))→ 売上 120 億円・営業利益 22 億円。米国 24 棟・利益率 18%
倍率:ROE 9.0% は k 7.75% を上回るが小さい。RONIC = k + 1/2 ×(ROE − k)では正当化 PER = 13.2 倍と 1÷k の 12.5 倍に近い。報酬が据え置かれ新しく投じるお金の稼ぎが弱いので、上限の約 7.5 割(9.91 倍)に置いた。
確率:財務省の適正化の圧力で報酬が据え置かれ、人件費だけが上がる。2024 年の改定で実際に起きた型で、起こりやすい。
悲観 11% 報酬の引き下げと総量の抑制で、構造的に稼げなくなる 10 年 利益 11 億円 · PER 8.8 倍 · 株価時価総額 290 円99 億円
児童の報酬が大きく引き下げられ、事業所の総量にも規制がかかる。同社は 190 の教室を維持するのがやっとで、利益率は 7% に落ちる。就労は事業所が増えすぎて競争が激しく、就労選択支援で入口も変わり、施設は 160 に減り、利益率は 18% まで下がる。プラットフォームは大口の契約を失う。海外は米国で数を増やせずに 18 棟にとどまり、のれんの減損が出て借入だけが残る。本社の費用を削っても追いつかず、成長企業ではなくなる 10 年だ。それでも療育と就労の看板は残り、事業は続くが、稼ぐ力は今より小さくなる。純利益の 4 割を還元に回しても、自己資本は 250 億円ほどにとどまる。
- 児童福祉事業(LITALICO ジュニア等):数量 190(教室(施設)数)× 価格 0.68(1 施設当たり年間売上(億円))→ 売上 129 億円・営業利益 9 億円。教室 190・報酬引き下げで利益率 7%
- 就労支援事業(LITALICO ワークス等):数量 160(施設数)× 価格 1.00(1 施設当たり年間売上(億円))→ 売上 160 億円・営業利益 29 億円。施設 160・競争過多で利益率 18%
- プラットフォーム事業(業務ソフト・情報サイト):数量 27,000(契約事業所数(目安))× 価格 0.00(1 契約当たり年間売上(億円))→ 売上 57 億円・営業利益 14 億円。契約 2.7 万・大口を失い利益率 24%
- 海外事業(米国 DDCN ほか):数量 18.0(グループホームの棟数(推定))× 価格 4.79(1 棟当たり年間売上(億円))→ 売上 86 億円・営業利益 10 億円。米国 18 棟・のれん減損の後で利益率 12%
倍率:ROE 4.6% は k 7.75% 以下なので、正当化 PER の上限は 1÷k = 12.5 倍。構造的に稼げなくなる筋書きで、稼ぐ力(純利益 11 億円 ÷ k 7.75% = 約 141 億円)の約 7 割(8.75 倍)に置いた。帳簿の自己資本は床にしない。
確率:児童・就労ともに報酬が引き下げられ、総量も抑えられ、海外の買収も実らない。複数が重なる必要があり確率は低いが、起これば構造的な打撃になる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
児童福祉事業(LITALICO ジュニア等)
発達に特性のある子ども向けの教室。収入は国と自治体が払う障害児通所支援の報酬。
| 数量教室(施設)数 | 価格1 施設当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 186 | 0.59 | 110 | 10 |
| 10 年後 中立 | 300 | 0.77 | 230 | 28 |
取り方:2026/03 期の児童福祉の売上 109.5 億円を、期末の施設数 186 で割り、1 施設当たり売上を出した(期中に 19 増えたので期末割りは少し低め)。セグメント利益は開示の 10.2 億円。数量は施設数(実質)、価格は 1 施設の売上で、報酬の改定と賃上げの加算で上がる。中立は物価より少し低い 10 年 1.30 倍(公定価格は物価に自動では追いつかない)。 数量は実物(施設数)で、名目の市場の伸びからは置いていない。
就労支援事業(LITALICO ワークス等)
障害のある人の就職を支える訓練施設。収入は国の報酬。
| 数量施設数 | 価格1 施設当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 163 | 0.87 | 142 | 49 |
| 10 年後 中立 | 255 | 1.13 | 288 | 86 |
取り方:2026/03 期の就労支援の売上 141.6 億円を、第 3 四半期末の施設数 163 で割った。セグメント利益 49 億円は推定(2025/03 期の中間期で 22.9 億円・利益率 36.9% の開示から、同じ利益率帯で置いた)。中立の価格は公定価格なので 10 年 1.30 倍。 数量は実物(施設数)で、名目の市場の伸びからは置いていない。
プラットフォーム事業(業務ソフト・情報サイト)
福祉事業所向けの業務ソフトと、発達ナビ・仕事ナビなどの情報サイト。
| 数量契約事業所数(目安) | 価格1 契約当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 30,000 | 0.00 | 55 | 18 |
| 10 年後 中立 | 38,000 | 0.00 | 93 | 31 |
取り方:2026/03 期の売上 54.8 億円、利益 17.9 億円は開示。契約事業所数は 2024/09 時点で 28,200 の開示があり、2026/03 は約 3 万と推定して、1 契約当たり売上(約 18 万円)を出した。情報サイトの収入も含むので、あくまで目安の数量。価格は物価並みの 10 年 1.34 倍。
海外事業(米国 DDCN ほか)
2024 年に買収した米国ネブラスカ州の、重い行動障害のある人のグループホーム運営。
| 数量グループホームの棟数(推定) | 価格1 棟当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20.0 | 3.83 | 77 | 17 |
| 10 年後 中立 | 32.0 | 5.13 | 164 | 36 |
取り方:2026/03 期の売上のうち、3 つの事業の合計 305.9 億円を引いた残り 76.6 億円を海外と連結消去の残差として置いた(海外の通期売上は開示を確認していない)。2024/09 時点で 17 棟・2 か月で 9.6 億円の開示があり、棟数は約 20 と推定。セグメント利益 17 億円も推定。ドル円は 150 円で固定、価格は物価並みの 10 年 1.34 倍。 数量は実物(棟数)で、名目の市場の伸びからは置いていない。
リスクと懸念
2027 年 4 月の報酬改定
売上の大半は公定価格で、3 年ごとの改定で利益が動く。2024 年の改定では、会社の試算で児童の利益が 17 億円から 9 億円台へ縮む見込みになり、運営方式の転換にも失敗して赤字に落ちた。2027 年も、同じ型の下押しが来る可能性が残る。
給付費の適正化と事業所の総量
児童発達支援と放課後等デイの給付費は急増し、財務省が加算の使われ方を問題視している。国の財布が限られる以上、単価の引き下げや参入の抑制が今後も続く恐れがある。会社の教室数の伸びは、この政策の範囲に収まる。
就労選択支援と競争
2025 年 10 月から、就労系サービスの新規の利用者はまず評価を受けて振り分けられる。評価のあいだは利用料が出ず、能力の高い人が一般就労へ流れる懸念もある。ウェルビーなどの競合との取り合いも続く。
人材の確保と賃金
施設を増やすほど、専門職の採用が要る。退職率は 1 割近いとされ、賃金は物価並みに上がる。公定価格がそれに追いつかなければ、人を増やすほど利益率が落ちる。2024 年に支援方式の転換で職員の負担が増えた経験も、現場の弱さを示している。
米国の買収とのれん
2024 年に買った DDCN で、のれんは 100 億円を超えた。米国で棟数を増やせなければ減損が出る。為替や現地の人件費、制度の違いも読みにくい。借入で賄った分は、金利が上がると利払いが重くなる。
借入と固定の約束
有利子負債は 120 億円台まで増え、純負債は自己資本の 0.64 倍。施設の多くは賃借で、家賃は売上が落ちても必ず払う固定の約束だ。2028 年 3 月期から新リース会計基準で数字の形が変わるが、約束の重さは変わらない。
創業者への依存
社長が約 27% を持ち、意思決定は早い反面、資本政策や買収の判断が 1 人の考えに寄りやすい。物言う株主が入りにくく、投資の失敗を止める力も弱くなる。
今後の分かれ目
- 2027 年 4 月の報酬改定が児童福祉に小さな減額にとどまる
- 児童の利益率の回復が定着し、中立からやや楽観の筋書きの確度が上がる。
- 児童の報酬が大きく引き下げられる、または事業所数に規制がかかる
- 児童が再び赤字圏に落ち、やや悲観・悲観の筋書きが現実味を帯びる。
- 就労選択支援の導入後も、就労の新規利用者が減らない
- 就労の利益率が 3 割台を保ち、楽観寄りの確度が上がる。
- 就労の新規利用者が 2 年続けて減る
- 就労が稼ぎ頭でなくなり、全社の利益が伸び悩む。やや悲観の筋書きに近づく。
- 米国のグループホームが 30 棟を超えて採算が取れる
- 海外が第 2 の柱になり、楽観・やや楽観の確度が上がる。
- DDCN の棟数が増えず、のれんの減損が出る
- 利益と自己資本が削られ、借入の重さが目立つ。悲観側に寄る。
見ておくもの
- 報酬改定の議論(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム・社会保障審議会)の方向
- 児童福祉の教室数と 1 教室当たり売上、利益率の推移
- 就労支援の新規利用者数と就職者数、定着率
- プラットフォームの契約事業所数と解約
- DDCN の棟数と米国事業の利益、のれんの減損の有無
倍率と資本コストの決め方
セグメントごとに施設数(実質)×1 施設の売上(名目)で 10 年を積み、純利益から自己資本を流して ROE を出し、その ROE と資本コスト 7.75%(基本 7.5% + 値決め +0.5%・借金 +0.25%・循環 −0.25%)、長期の g 4%、堀は普通(1/2)で正当化 PER を出して中立は約 8 割に置いた。今の株価と PER・PBR は倍率の根拠に使っていない。同領域の物差しとは、k が 7.75% でカーブス・KeePer 技研と同じ。倍率の掛け目は公定価格の重さで中程度とした。新リース会計基準は、10 年後も今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)で置いている。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 16.08→21.2 倍・やや楽観 PER 14.55→20.53 倍・中立 PER 12.5→18.7 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。