結論
AViCは、インターネット広告の運用とSEOコンサルティングを柱とするデジタルマーケティング企業である。筆者の結論は「割高」だ。足元の高い利益率は実力を伴うものだが、10年先まで現在の収益構造を守れるという確信は持てない。
2025年9月期の売上高は26.8億円、営業利益は7.2億円に達した。営業利益率27%という水準は、通常の広告代理店とは一線を画している。顧客ごとの採算管理、人材育成、自社開発ツールを組み合わせ、少人数で多くの案件を処理する経営が成果を上げている。ADKとの協業による大企業顧客の開拓も進み、2026年9月期には売上高40.1億円、営業利益11.3億円を見込む。
2026年1月のSpica買収は、この会社を見るうえで重要な転換点である。TikTok LIVEの配信者を支援する事業を15億円で取得し、広告運用だけに依存しない収益源を獲得した。買収対象事業の営業利益は大きく、取得時の事業価値も利益に比べて抑えられている。ただし、その収益はTikTokという外部プラットフォームの報酬制度に依存する。
問題は、主力の広告制作・運用とSEO支援がAIエージェントによる代替の中心に位置することだ。自社の「慧眼AI」は生産性を改善しているが、顧客も同様の技術を導入できる。広告市場全体の成長が、代理店の手数料収入の成長を保証する時代ではなくなる。
10年後の中立では、広告運用とSEOの取扱案件が減り、Spicaの収益が一定程度残る姿を見込む。純利益は約3.3億円、時価総額は約48億円となる。5つの筋書きの確率加重価値を現在に割り戻すと約23億円であり、現在の時価総額約102億円を約77%下回る。企業の成長実績を否定する結論ではない。既存事業の寿命、買収事業の不確実性、株主へ利益が戻る時期を考えると、現在の値段には十分な安全域がないという判断である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で最初に問うのは、10年後の顧客が何にお金を払うかである。AViCが現在販売している広告運用やSEOの作業そのものには、10年後も同じ価値が残るとは限らない。むしろ、分析、配信調整、レポート作成、コンテンツ改善という仕事はAIが得意とする領域である。広告主は集客成果を求め続けるが、そこに人間の運用担当者を多数介在させる必要は薄れていく。
経営陣の能力は評価に値する。人材育成を標準化し、工数管理を徹底して高い営業利益率を実現してきた。大企業顧客を増やし、買収先の採算を改善したことも事実である。しかし、他社が模倣できる管理技術と、顧客が離れられない競争上の堀とは異なる。AViCには独占的な広告媒体も、顧客の業務記録を保持する不可欠な基盤もない。
Spicaの取得は、収益構造を変え得る興味深い資本配分である。配信者との関係を積み上げ、動画マーケティングやライブコマースへ展開できれば、広告運用の縮小を補う可能性がある。ただし、TikTok側が報酬制度を変更するだけで、これまでの高収益が揺らぐ。高い利益率が、そのまま独占力の強さを意味するわけではない。
株主に帰属する利益を考える際には、買収による成長と、買収のために必要な資本を分けて見るべきだ。利益を内部留保しても、それを継続的に資本コスト以上の利回りで再投資できなければ、株主価値は増えない。現在の無配政策は、再投資先が豊富な間は合理的だが、その成否を少数株主が評価するまでには時間がかかる。
この会社は、経営が優秀であることと、投資対象として予測しやすいことが一致しない典型例に見える。筆者は、今後数年の利益成長には一定の期待を持つが、10年後の利益の形には強い確信を持てない。本質価値と支払う値段の間に十分な余裕が必要であり、現在の時価総額ではその余裕が乏しい。
何で稼ぐ会社か
AViCの本業は、広告主の集客成果を改善することで報酬を得る事業である。2025年9月期の売上高は、インターネット広告が18.49億円、SEOコンサルティングが8.31億円だった。会社の報告セグメントはデジタルマーケティング事業の一つだが、収益の性質が異なるため、この二つを分けて考える必要がある。
インターネット広告では、Google、Yahoo! JAPAN、Meta、LINE、TikTokなどの広告媒体を利用し、戦略立案、広告配信、クリエイティブ制作、分析、改善までを請け負う。広告主が支払う広告費そのものではなく、広告運用や関連サービスの対価がAViCの主な収入源となる。大企業向け案件では、ADKマーケティング・ソリューションズとの合弁会社A2PDが顧客開拓を担い、AViCは運用と専門サービスを提供する。ADK側が営業・媒体買付機能を持つため、AViCは必ずしも広告主との取引全体を支配していない。
SEOコンサルティングは、検索エンジンからの自然流入を増やすために、サイト構造、コンテンツ、検索順位、利用者行動などを分析して改善を支援する。2023年から2025年にかけてFACTなどの買収を通じて周辺サービスを広げた。広告運用とSEOの両方を提供できることは、顧客との関係を深めるうえで有利である。
2026年1月に買収したSpicaは、これらとは異なる収益構造を持つ。「like me」という名称でTikTok LIVEの配信者を発掘・育成・管理し、配信プラットフォームからインセンティブ報酬を得る。所属配信者から直接手数料を徴収しない。取得対象事業の2026年4月期実績は売上高5.34億円、営業利益3.64億円だった。広告代理業よりも高い利益率を生み得るが、報酬制度を決めるのはAViCではなくTikTokである。
自社開発の分析ツールや「慧眼AI」は、現在のところ主として社内業務の生産性向上に使われている。独立したソフトウエア課金収入の金額は確認できない。したがって、これを将来の大型SaaS事業として評価するのではなく、既存サービスの作業原価を引き下げる仕組みとして評価する。
優良さと弱いところ
AViCの強みは、広告媒体を独占していることではなく、案件ごとの採算を細かく把握し、人を効率よく使えることにある。社員の工数、職階、担当案件、顧客別のサービス水準を管理し、必要な人員を配置する。2026年9月期第3四半期累計の社員1人当たり売上高は前年同期比41.2%増となった。エンタープライズ顧客向け売上高も前年同期比54%増加している。こうした成果は経営能力の証拠である。
買収後の改善にも実績がある。FACTでは営業利益率の向上が確認され、リアレーションでも赤字から黒字への改善が開示された。さらにSpicaは、取得対象事業の営業利益に対して取得時の事業価値が比較的低い。業務の標準化と価格・外注費の管理を買収先へ移植する手法は、資本効率を高める可能性がある。
しかし、経営能力と競争上の堀は同じではない。広告配信の基盤はGoogleやMetaが所有し、AViCが独占する媒体、広告在庫、法的な許認可はない。広告主が別の代理店へ移ることも、内製化することも可能である。経営陣は解約率が低いと説明しているが、年間解約率5%未満といった定量的な数字は確認できない。顧客の切り替えに年単位の移行を要するという証拠もない。
値上げの力も慎重に見る必要がある。エンタープライズ顧客の増加によって平均顧客単価は上がっているが、これは既存顧客に同じサービスを値上げできた証拠ではない。広告媒体側の自動化が進むほど、運用手数料の値下げ交渉は強まり得る。現在の高い営業利益率は、顧客に対する支配的な価格決定力よりも、組織の生産性と事業の小回りによる部分が大きい。
自己資本利益率は高く、2025年9月期までの財務も健全だった。ただし、2026年には買収に伴って借入金とのれんが増加した。10年後にも同じ収益力を維持するには、今の組織運営能力に加え、変化する媒体環境で新しい付加価値を売り続ける力が必要である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のインターネット広告市場は大きい。電通によれば2025年のインターネット広告費は4兆459億円、そのうち媒体費は3兆3,093億円、運用型広告は2兆9,352億円だった。動画広告とSNS広告が成長を牽引し、2026年の媒体費は3兆5,840億円と予測されている。市場の需要そのものが直ちに消えるとは考えにくい。
一方、この市場の大きさをそのままAViCの成長余地とみなすことはできない。媒体費の多くはGoogle、Meta、LINEヤフー、TikTokなどの媒体事業者へ流れる。AViCが競うのは、その周辺にある広告運用手数料と専門サービスの市場である。電通デジタル、セプテーニ、サイバーエージェントなどの大手に加え、多数の中小代理店が競争する。会社ごとの純額・総額の計上方法が違うため、公表売上高を単純に並べても正確なシェアにならない。
AViCの2025年の広告運用売上高を手数料収入とみなし、取扱広告費に対する手数料率を15%と仮定すると、対応する媒体取扱高は約123億円となる。国内運用型広告費に対する比率は約0.42%であり、これは開示されたシェアではなく比較用の推定値である。規模の拡大余地はあるが、10年後に広告費が増えても手数料率と外部委託件数が同時に下がる可能性がある。
SEOでは、Faber Company、ナイル、CINC、PLAN-B、ウィルゲートなどが競争相手になる。国内SEOコンサルティング単独の信頼できる市場総額は確認できず、MEOやSEOツール市場をそのまま合算することはできない。仮に年間支援先1万5,000社、平均契約額約670万円とすると市場は約1,000億円、AViCの売上シェアは約0.8%となる。ただし、顧客数と契約額の双方が推計であり、このシェアには大きな誤差がある。
SEOの構造変化は広告運用以上に深刻になり得る。生成AIによる検索結果の要約、検索画面内での回答完結、企業によるAI分析の内製化が進むと、従来型の検索順位改善サービスの価値が低下する。検索結果の上位表示を売る業務は、顧客の商品がAIの回答で推薦・購入される仕組みへの対応に変わっていく。
Spicaが属するライブ配信市場には成長余地がある。会社資料は国内ライブ配信プラットフォーム市場について2020年5.67億ドル、2027年30.28億ドルという予測を紹介している。ただし市場全体の収入と、配信者管理会社が受け取る報酬は別物である。Spicaの強みはTikTok LIVEの一次代理店としての地位と配信者基盤だが、プラットフォーム自体を所有していない。10年後の競争優位は、TikTokの報酬条件が変わっても配信者と顧客を維持できるかにかかっている。
資本政策と M&A
資本配分では、現時点のAViCは株主還元よりも事業拡大を優先している。2025年9月期の配当はゼロで、2026年9月期も無配予想である。明確な配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い金額の数値目標は確認できない。2025年11月公表の事業計画と2026年8月の決算説明資料は成長戦略を示しているが、2027年以降の売上高やROEを拘束する中期経営計画の数値の約束は確認できない。
確認できる具体的な短期計画は、2026年9月期の売上高40.08億円、営業利益11.27億円、純利益7.65億円である。会社は売上高だけでなく営業利益の絶対額と社員1人当たりの生産性を重視している。
2026年1月のSpica買収では、株式取得対価15億円を全額銀行借入で調達した。取得対象の現金3.5億円を考慮した事業価値は11.5億円で、2026年4月期実績EBITDAに対して約3.1倍である。アーンアウトと返金条項を付けた点は、買収の失敗を抑えようとする規律として評価できる。
ただし、2026年6月末の有利子負債は19.7億円、のれん等は16.8億円に達した。借入には純資産の維持と連続営業赤字の回避に関する財務制限条項がある。買収価格が安く見えても、買収先の収益が急減すれば減損と借入制約が同時に問題となる。
筆者は、買収先の利益改善を再投資能力の証拠として一定程度評価する。一方、創業者・関係株主の保有比率が高く、無配が続く現状では、蓄積した現金が少数株主へ戻ることを当然とは考えない。株主にとっての資本配分の成否は、買収件数や売上成長率ではなく、買収後の利益と現金が持続的に増えるかによって決まる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
AViCは、媒体の自動化が進む業界で、逆に高い生産性と成長率を実現してきた。広告主にとって重要なのは運用画面を操作することではなく、売上や利益を伸ばすことである。AIによって分析時間が短縮されるほど、複数媒体を横断した戦略設計と事業成果に結びつく提案の価値が高まる可能性がある。AViCはすでにこの方向に事業を広げている。
ADKとの合弁会社は、大企業の広告予算へアクセスする有力な経路である。エンタープライズ顧客の増加は、広告媒体費の増加だけに依存しない顧客基盤の拡大を示す。会社の工数管理や人材育成の仕組みは、同じ仕事を低い原価で提供する競争力にもなる。AIを先に使いこなす企業が、従来型代理店からシェアを奪うことも考えられる。
Spicaは新たな収益源であり、取得対象事業の営業利益に対して買収時の事業価値が低い。TikTok LIVEの一次代理店としての地位と配信者基盤を生かし、動画広告、ライブコマース、海外展開との連携が進めば、広告運用の減少を補う利益を生み出せる。今後も同様の規律で買収できれば、株主資本の増分利回りは高い水準を維持する可能性がある。
重要なのは、AI代替によって消える作業と、AIを使ってより広い顧客課題を解決する仕事を区別することだ。現在の高い営業利益率と顧客獲得力は、少なくともAViCが従来型の人月商売だけではないことを示している。今後も高付加価値の領域へ移り続けられるなら、長期の利益縮小は想定ほど大きくならない。
慎重な見方
AViCの利益率が高いことと、10年後にも同じサービスに需要があることは別問題である。広告運用の入札、予算配分、広告文の作成、分析、レポート作成は、AIエージェントが代替しやすい業務の代表例である。GoogleやMetaが自動化機能を改善し、広告主自身がAIに運用を指示できるようになれば、独立系代理店が受け取る手数料は縮小する。
SEOも構造変化の中心にある。検索エンジンの回答が生成AIによって完結すれば、従来の検索順位改善の価値は下がる。新しい検索環境への対応を販売できても、分析や改善案を生成する作業の原価が低くなるほど、価格競争が起きやすい。AIを自社で使うことは生存の条件にはなっても、高い手数料を維持する根拠にはならない。
AViCの競争優位は人材と経営管理に依存する部分が大きい。現在の独自ツールが競合に永続的な差をつけるとは限らない。大手代理店は広告主との幅広い取引関係を持ち、媒体事業者は配信基盤そのものを支配する。AViCにはどちらの支配力もない。
Spicaの高収益も安全とはいえない。TikTok LIVEの一次代理店という地位は魅力的だが、プラットフォーム報酬への依存度が極めて高い。報酬率の変更、優良代理店の増加、配信者の直接契約、法規制の変更によって利益率は大きく変わり得る。2026年に増加した借入金とのれんは、このリスクをさらに大きくする。
株主還元にも不確実性がある。高い利益を生んでも配当せず、次の買収へ回し続ければ、少数株主が利益を受け取れる時期は遠くなる。経営が優秀な会社でも、買収を繰り返すうちに投資先の質が下がることはある。現在の時価総額は、経営能力の持続と買収の成功を長く前提にしている。
どちらに重みを置いたか
足元の経営能力と買収価格の規律では強気の主張に説得力がある。しかし、長期保有で最も重いのは10年後の収益の予測可能性であり、この点では慎重な見方が優勢である。広告運用とSEOにはAIエージェント代替の構造的な圧力があり、SpicaにはTikTok依存という別の不確実性がある。確率は楽観側28%、中立32%、悲観側40%とした。下に寄せたのは現在の業績不振を見込むためではなく、広告運用の利益を別の収益源で補い続ける必要があり、その成功を長期にわたって確認できないためだ。AIの縮小効果は中立の数量と長期成長率に反映し、確率では会社固有の買収・プラットフォーム依存を中心に判断した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/09 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 773 円49 億円(+ 還元の換算額還元の合計 0 円0 億円)。 今の値に割り戻すと 366 円23 億円、今との差 −75.0%、 期待の年率 −6.2%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 2,005 円128 億円 | 0 円0 億円 | +36.9% | +3.2% | 241 円15 億円 |
| やや楽観 | 16% | 1,397 円89 億円 | 0 円0 億円 | −4.6% | −0.5% | 224 円14 億円 |
| 中立 | 32% | 742 円47 億円 | 0 円0 億円 | −49.3% | −6.6% | 238 円15 億円 |
| やや悲観 | 25% | 220 円14 億円 | 0 円0 億円 | −85.0% | −17.3% | 55 円4 億円 |
| 悲観 | 15% | 108 円7 億円 | 0 円0 億円 | −92.6% | −22.9% | 16 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 773 円49 億円 | 0 円0 億円 | −47.2% | −6.2% | 773 円49 億円 |
今の株価時価総額 1,465 円93 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 12% 広告の高度な戦略支援が残り、配信者基盤が拡大 利益 9 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,005 円128 億円
広告運用の単純作業はAIが担うようになるが、AViCは広告主の事業戦略、顧客獲得の全体設計、複数媒体を横断した施策の実行で強みを保つ。ADKとの提携を生かして大企業顧客を維持し、従来型の運用案件が減っても、より高度なサービスへの移行で収入の減少を抑える。SEOも検索順位の改善だけでなく、生成AI経由の顧客接点や購買導線の設計を支援する仕事へ変わる。
Spicaは配信者の獲得と育成で成功し、TikTok LIVEに加えて動画マーケティングとライブコマースの周辺収入を広げる。プラットフォームの報酬制度は維持され、所属配信者の活動規模も伸びる。買収後の管理手法が定着し、動画・配信者関連事業が従来の広告運用に匹敵する利益を生む。
追加M&Aでも過大な取得対価を避け、のれん減損を発生させない。広告運用の高い利益率は守られ、グループ全体の純利益は約8.8億円となる。無配の方針が続いても資本の一部は余剰現金として蓄積され、10年後には経営能力の高い総合デジタル集客企業となっている。ただしAI製品の独立販売額が確認できないため、広告運用とSEOの数量は現在以下にとどめる。
- インターネット広告運用・制作:数量 200(年間の平均稼働広告運用契約・アカウント数(件、推定))× 価格 0.09(年間1契約当たり広告運用・関連サービス売上高(億円、媒体費ではなく手数料等))→ 売上 18 億円・営業利益 5 億円。広告運用案件は200件を維持。手数料単価はほぼ現状で、成果に結びつく戦略支援が運用単価下落を補う。
- SEO・デジタル集客コンサルティング:数量 120(年間の平均稼働SEO支援契約数(件、推定))× 価格 0.09(年間1契約当たりコンサルティング売上高(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 4 億円。支援件数は120件を維持し、より広い事業支援へ移行。単価は現在の約1.30倍で物価上昇の範囲内。
- Spica・TikTok LIVE配信者支援:数量 3,500(年間平均稼働配信者の延べ人年(人年、推定))× 価格 0.00(稼働配信者1人年当たりプラットフォーム報酬売上高(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 5 億円。配信者基盤が約1.75倍に拡大。TikTok LIVEでの活動とライブコマース連携が奏功し、高い収益性を維持。
倍率:資本コストk=7.75%、AI代替とプラットフォーム依存を考慮した長期名目g=0%。事業のROEは資本コストを超えるが、g=0%なので正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=1÷0.0775=12.90倍となる。将来の余剰現金50億円について、税後受取利息相当の0.7億円を純利益から除外し、事業純利益8.1億円にPERを掛ける。現金50億円には株主への戻り方0.5を適用して25億円を加える。
確率:AViCの経営能力とSpicaの展開がともに成功し、高い利益率を維持する場合。ただし広告制作・運用とSEOの数量をAI代替前の実績以上に伸ばす前提は採用せず、実現可能性は12%に抑える。
やや楽観 16% 広告縮小を高付加価値化とSpicaの成長で補う 利益 6 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,397 円89 億円
広告主のAI導入によって単純な運用案件は減少するが、AViCはADK経由の大口案件と自社の高付加価値コンサルティングによって顧客との関係を維持する。広告運用契約の件数は現在より減るものの、既存顧客とのクロスセルや複雑なマーケティング課題への対応によって、売上高の落ち込みを抑える。
SEOでもコンテンツの大量制作や順位監視は自動化される。AViCはその代わりに、生成AI時代の検索行動に合わせたサイト設計、事業成果の測定、広告との統合支援へ移る。専門サービスの価格はある程度引き上げられるが、価格交渉力が強いわけではない。
Spicaでは配信者の数が増え、買収後のデータ管理と人材育成が効果を上げる。TikTokの報酬単価は大きく下がらず、配信者基盤の拡大によって利益が増える。追加M&Aは小規模に抑え、既存事業との連携を重視するため、大きな減損は発生しない。全社の利益率は現在ほど高くないが、収益源が分散された会社として安定する。
- インターネット広告運用・制作:数量 185(年間の平均稼働広告運用契約・アカウント数(件、推定))× 価格 0.09(年間1契約当たり広告運用・関連サービス売上高(億円、媒体費ではなく手数料等))→ 売上 16 億円・営業利益 4 億円。広告運用契約は現在の0.925倍。手数料単価は現在より小幅低下するが、大企業向けの付加価値が残る。
- SEO・デジタル集客コンサルティング:数量 105(年間の平均稼働SEO支援契約数(件、推定))× 価格 0.09(年間1契約当たりコンサルティング売上高(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 3 億円。契約数量は0.875倍、単価は約1.26倍。総合的な集客支援へ移り、従来型SEOの減少を一部補う。
- Spica・TikTok LIVE配信者支援:数量 2,600(年間平均稼働配信者の延べ人年(人年、推定))× 価格 0.00(稼働配信者1人年当たりプラットフォーム報酬売上高(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 3 億円。配信者基盤は約1.30倍。プラットフォームとの良好な関係を維持しつつ、高い利益率はやや低下。
倍率:k=7.75%、g_long=0%により正当化PERの上限12.90倍をそのまま適用する。余剰現金30億円の税後受取利息相当0.42億円を純利益から控除し、事業純利益5.83億円を評価する。余剰現金の株主帰属価値15億円を別に加える。
確率:AI導入への対応力が現在の高い生産性を守り、Spicaも成長を続ける筋書き。ただし広告手数料の下落や解約の増加までは完全には防げないため、全面的な成功より実現可能性は高い。
中立 32% 中立:AIで運用とSEOが縮小し、Spicaが残る 利益 3 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 742 円47 億円
広告主のマーケティング予算は今後も存在するが、その配分と運用にはAIエージェントが広く使われる。GoogleやMetaは広告配信の自動化を進め、広告主自身が社内AIを利用して広告を管理する。AViCは成果を重視する大企業向け戦略支援を維持するものの、従来の広告運用契約は現在の7割程度に減る。手数料単価も競争によって低下する。
SEOは検索順位を改善する作業から、AI検索への対応や顧客獲得全体の設計へ変化する。それでも、分析、記事改善、レポート作成などの作業量は大きく減る。コンサルティング単価の上昇だけでは、実質契約数量の減少を埋めきれない。
Spicaは一定数の配信者を維持し、プラットフォームからのインセンティブ報酬を受け取り続ける。ただしTikTokの報酬条件と競争環境は現在ほど有利ではなく、高い営業利益率は低下する。配信者を自社で育成できることは強みだが、その価値はプラットフォームの支払いに左右される。
買収による初期の増収増益の後、既存サービスの縮小が進み、10年後の全社純利益は約3.3億円となる。配当を行わず利益を内部留保するため自己資本は厚くなるが、利益の増分利回りは資本コストを下回る。事業は存続するものの、高い利益率を持つ成長企業から、収益の再構築を続ける企業へ変化している。
- インターネット広告運用・制作:数量 140(年間の平均稼働広告運用契約・アカウント数(件、推定))× 価格 0.09(年間1契約当たり広告運用・関連サービス売上高(億円、媒体費ではなく手数料等))→ 売上 12 億円・営業利益 2 億円。AIエージェント代替によって実質契約数量は0.70倍。手数料単価は約0.94倍で、媒体費全体のインフレを運用報酬には転嫁できない。
- SEO・デジタル集客コンサルティング:数量 78.0(年間の平均稼働SEO支援契約数(件、推定))× 価格 0.08(年間1契約当たりコンサルティング売上高(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。実質契約数量は0.65倍。単価は約1.20倍で、物価上昇と事業課題の高度化を一部反映する。
- Spica・TikTok LIVE配信者支援:数量 2,000(年間平均稼働配信者の延べ人年(人年、推定))× 価格 0.00(稼働配信者1人年当たりプラットフォーム報酬売上高(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 2 億円。配信者基盤と報酬総額は現在の取得対象事業実績程度で推移。競争と償却等で利益率は低下。
倍率:k=7.75%、長期の名目成長g=0%。事業の純利益から余剰現金16億円に対応する税後受取利息0.224億円を除くと約3.096億円。自己資本76億円から余剰現金16億円を除いた事業資本60億円に対し、事業ROEは約5.2%で資本コストを下回る。そのため超過成長価値を加えず、上限1÷k=12.90倍を使用する。事業価値に余剰現金16億円の50%である8億円を加える。
確率:既存事業の高収益と買収事業の収入を評価しつつ、AIによる制作・運用工数の削減と価格交渉力の低下を中心に据える。広告運用の実質契約数量0.70倍、SEO0.65倍はAIエージェント代替の基準範囲内。Spicaは概ね現在の事業規模を維持する。
やや悲観 25% 広告の内製化が進み、TikTok報酬も圧迫される 利益 1 億円 · PER 12.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 220 円14 億円
大企業が広告運用をAIエージェントと社内の少人数チームへ移し、外部代理店の役割を縮小する。AViCは一部の大口顧客と専門性の高い案件を残すが、運用手数料の引き下げに応じなければ顧客を維持できなくなる。ADKとの協業は続くものの、大手代理店も自社のAI活用を進め、AViCが受け取る手数料は細る。
SEOでは、検索結果への流入量が減少し、従来型コンサルティングへの支出が縮小する。顧客は記事作成やサイト分析を内製化し、AViCには難しい案件だけを発注する。社内の人員と固定的な管理費を需要の減少に合わせて十分に削減できず、営業利益率は低下する。
Spicaでは、TikTok LIVEの報酬率が引き下げられ、配信者獲得競争も激しくなる。主要配信者の離脱が増え、契約基盤は縮小する。追加買収は停止し、金融機関への返済と収益体質の再構築が優先される。
10年後も事業は継続するが、全社営業利益は約1.5億円、純利益は約1億円にとどまる。現金を蓄積しても、将来の増分利益が資本コストを下回るため、企業価値の回復力は弱い。
- インターネット広告運用・制作:数量 115(年間の平均稼働広告運用契約・アカウント数(件、推定))× 価格 0.08(年間1契約当たり広告運用・関連サービス売上高(億円、媒体費ではなく手数料等))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。広告主の内製化が進み、契約数量は0.575倍。単価も約0.87倍に縮小。
- SEO・デジタル集客コンサルティング:数量 75.0(年間の平均稼働SEO支援契約数(件、推定))× 価格 0.08(年間1契約当たりコンサルティング売上高(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。SEOの外注支援案件が減少し、数量は0.625倍。単価上昇は限定的。
- Spica・TikTok LIVE配信者支援:数量 1,000(年間平均稼働配信者の延べ人年(人年、推定))× 価格 0.00(稼働配信者1人年当たりプラットフォーム報酬売上高(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。配信者基盤が半減し、プラットフォームからの報酬単価も低下。
倍率:事業の稼ぐ力は資本コストを下回る。k=7.75%に対する利益資本化の上限は約12.90倍だが、AI代替とプラットフォーム依存による競争力低下を考慮し、悲観側の稼ぐ力として12.0倍を使用する。余剰現金6億円の税後受取利息0.084億円を純利益から除き、残余の事業純利益0.936億円を資本化する。現金の株主帰属価値3億円を加える。資産の床7億円も上回る。
確率:広告主のAIによる運用内製化が予想以上に進み、SEOの支援領域がさらに縮小する。同時にTikTok側の報酬条件も悪化する場合。下に寄せる理由は、二つの異なる収益源の競争力がそれぞれ外部技術・プラットフォームの判断に左右されるため。
悲観 15% 広告支援の汎用化と配信報酬の崩壊で優良さを失う 利益 −1 億円 · PBR 0.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 108 円7 億円
広告運用の大部分は広告媒体のAIと広告主の内部システムで処理できるようになる。独立系代理店は残るものの、主な仕事はAIが処理した結果の確認や例外対応となり、これまでの運用手数料を維持できない。AViCは高い専門性を必要とする案件を一部残すが、価格競争によって広告運用の利益率はほとんど失われる。
SEOでは、検索画面が回答と購買を完結させる形に変わり、従来型のサイト集客支援の価値が下がる。新しいコンサルティングサービスへの移行は進むものの、AIを使える広告主や競合との差が小さく、単価と契約件数の両方で圧力を受ける。
Spicaでは、TikTokのプラットフォーム報酬が大幅に縮小する。所属配信者の一部は別の事務所や直接契約へ移り、かつての高い収益性は失われる。2026年の買収時に計上したのれんは回収できず、減損が必要になる。借入金の財務制限条項への対応が経営の優先課題となり、追加M&Aは停止する。
広告運用とSEOの合計売上高は2025年9月期の水準を大きく下回り、Spicaを加えた全社売上高も約13億円に縮小する。固定費と組織再編費用が残り、営業損失が続く。会社は存続するものの、かつての高収益企業ではなくなっている。評価の床は、将来の利益でも積み上がった帳簿上の自己資本でもなく、現在確認できる換金可能資産を基礎とする。
- インターネット広告運用・制作:数量 100(年間の平均稼働広告運用契約・アカウント数(件、推定))× 価格 0.07(年間1契約当たり広告運用・関連サービス売上高(億円、媒体費ではなく手数料等))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。数量は現在の半分。手数料単価も約0.78倍まで低下し、固定費を十分に回収できない。
- SEO・デジタル集客コンサルティング:数量 70.0(年間の平均稼働SEO支援契約数(件、推定))× 価格 0.08(年間1契約当たりコンサルティング売上高(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。AI検索が従来型SEOを代替。専門案件は残るが、高い利益率は失われる。
- Spica・TikTok LIVE配信者支援:数量 300(年間平均稼働配信者の延べ人年(人年、推定))× 価格 0.00(稼働配信者1人年当たりプラットフォーム報酬売上高(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。配信者基盤とプラットフォーム報酬が大幅に減少し、配信者育成と管理の固定費が収益を上回る。
倍率:継続的な利益で評価できないため、現在の自己資本23.3億円を基準に税後の換金可能資産の床を確認する。23.3億円×0.30=約7.0億円。悲観時の自己資本15億円に0.30倍を掛けて価値を水増しする方法は使わない。2026年6月末の純現金約7.5億円から再編費用等を考慮した税後資産7億円を評価の基礎とする。のれん約16.4億円などの実体の乏しい資産は床から除外する。
確率:広告運用とSEOの価格競争に加え、TikTok LIVEでの主要配信者離脱とプラットフォーム報酬制度の大幅変更が重なる複合的な失敗。単独の問題ではなく複数の収益源の同時悪化を要するため、やや悲観より低い確率とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
インターネット広告運用・制作
Google、Yahoo! JAPAN、Meta、LINE、TikTok等の媒体に関する広告戦略、運用、制作、分析を広告主や大手代理店向けに提供する。2025年9月期の全社売上高の約69%を占める。
| 数量年間の平均稼働広告運用契約・アカウント数(件、推定) | 価格年間1契約当たり広告運用・関連サービス売上高(億円、媒体費ではなく手数料等) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 200 | 0.09 | 18 | 5 |
| 10 年後 中立 | 140 | 0.09 | 12 | 2 |
取り方:2025年9月期の有価証券報告書にあるインターネット広告サービスの売上高18.494億円を使用した。会社は運用契約件数と契約当たり売上高を開示していないため、年間平均稼働契約200件、平均年額924.7万円と仮定して分解した。件数は開示実績ではない。2026年6月末の連結社員111名、エンタープライズ顧客の増加、月次事業部粗利200万円以上という大口顧客区分などを踏まえた規模感の仮定である。国内運用型広告媒体費2兆9,352億円に対して手数料率15%を仮定すると対応取扱高は約123億円、参考シェアは約0.42%。10年中立はAIエージェント代替により契約数量を200件から140件、0.70倍に減らし、契約単価は手数料競争により0.94倍とする。媒体市場の成長とAViCの取り分は区別する。営業利益4.60億円はサービス別利益が非開示のため全社営業利益を事業特性に基づいて配分した分析上の推定値である。
SEO・デジタル集客コンサルティング
検索順位、サイト構造、コンテンツ、ユーザー行動を分析し、検索経由の集客と事業成果の改善を支援する。FACTなどの関連事業を含む。
| 数量年間の平均稼働SEO支援契約数(件、推定) | 価格年間1契約当たりコンサルティング売上高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 120 | 0.07 | 8 | 3 |
| 10 年後 中立 | 78.0 | 0.08 | 6 | 1 |
取り方:2025年9月期有価証券報告書のSEOコンサルティング売上高8.31455億円を使用した。契約社数と契約単価は非開示なので、年平均120件、1契約当たり年間約693万円と推定した。国内SEO支援単独の公的な市場規模は確認できない。比較上、外部SEO支援先1万5,000社、年間平均契約額約670万円と仮定すれば国内市場は約1,000億円、AViCの参考シェアは約0.83%となる。ただし、これはFaber Company、ナイル、CINC等が競う市場の規模感を確認するための仮定であり、公表統計ではない。AIエージェント代替は人月・工数型に分類し、中立の実質契約数量を120件から78件の0.65倍、単価を物価上昇の一部だけ反映した1.20倍とする。営業利益2.65億円は未開示のサービス別利益を推定した値である。
Spica・TikTok LIVE配信者支援
2026年1月に買収したSpicaの「like me」を中心に配信者を発掘・育成・支援し、TikTok LIVEプラットフォームからインセンティブ報酬を受け取る。配信者本人から手数料は徴収しない。
| 数量年間平均稼働配信者の延べ人年(人年、推定) | 価格稼働配信者1人年当たりプラットフォーム報酬売上高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 2,000 | 0.00 | 5 | 4 |
| 10 年後 中立 | 2,000 | 0.00 | 5 | 2 |
取り方:2026年8月のAViC決算説明資料に掲載されたSpica譲渡対象事業の2026年4月期実績、売上高5.34億円、営業利益3.64億円を使用した。2025年9月期のAViC連結売上高26.8億円にはSpicaは含まれないため、このnowは取得事業の比較用参考値であり、2025年9月期の2サービスと合算した当期実績ではない。所属配信者数と報酬単価は非開示なので、年間稼働2,000人年、1人当たり年26.7万円という仮定で分解した。2026年の買収後は約11年ののれん等償却が発生するため、10年後の利益率には償却、運営費、プラットフォーム報酬条件の変化を反映する。自社媒体の広告枠販売や席課金SaaSではなく、配信者の活動成果に応じたプラットフォーム報酬であるため、広告運用のAI数量基準は機械的には適用しない。ただし配信者管理の一部はAIで自動化され、TikTokの規約変更による減収は大きなリスクである。
リスクと懸念
AIエージェント代替による広告運用の収益縮小
広告の入札、予算配分、クリエイティブ制作、分析、改善提案は、AIエージェントが代替しやすい。AViCの慧眼AIは社内生産性の向上に役立つが、広告主や競合も同じ技術を使える。広告費全体が成長しても、運用を外部へ委託する件数と手数料率が同時に下がれば、AViCの売上高と営業利益は縮小する。
生成AI検索によるSEO需要の構造変化
検索結果が生成AIによる回答で完結する比率が上昇すると、従来型の検索順位改善やコンテンツ制作の価値は低下する。AViCが新しい検索環境へ対応しても、その分析作業はAIによって効率化され、他社との価格競争にさらされる。サイト流入数ではなく最終的な販売成果を売れるかが重要になる。
TikTok LIVEへのプラットフォーム依存
Spicaは配信者から手数料を受け取らず、TikTok LIVEからのインセンティブ報酬を主要な収入源とする。報酬率、優良代理店の認定基準、配信者との契約関係が変更されれば、配信者数が維持されても売上高が減る可能性がある。TikTokの法規制や国内サービスの運営方針もAViCが制御できない。
のれん減損と買収資金の借入制約
2026年のSpica買収後、のれん等と有利子負債が大きく増加した。買収先の業績悪化は営業利益の減少だけでなく、のれん減損や財務制限条項への抵触にもつながる。さらに買収を重ねると、実績利益が増えても取得対価や追加借入に見合う株主価値が増えない可能性がある。
大口顧客とADK協業への依存
2025年9月期にはADKデジタル・コミュニケーションズ向け売上が全社の約10.8%を占めた。A2PDは大企業顧客への重要な営業経路であるが、顧客との接点や媒体買付機能の一部は提携先が握る。大口顧客の広告予算縮小、内製化、提携先の戦略変更は、AViCの受注と手数料に影響する。
利益が少数株主へ還元されない資本配分リスク
AViCは高い利益率を持ちながら無配を続けており、明確な株主還元の数値目標も確認できない。大株主の保有比率が高いため、少数株主が資本配分を左右することは難しい。蓄積した利益が低収益の買収や事業投資に回れば、帳簿上の自己資本は増えても本質価値が増えるとは限らない。
今後の分かれ目
- 広告運用の外部委託契約数が減らず、AI導入後もサービス単価が維持されるなら
- AIエージェント代替による数量と価格の縮小前提を緩める。既存広告運用事業が成果報酬型・戦略支援型に移行できた証拠を確認し、中立の純利益を上方修正する。
- 慧眼AIの外部販売が始まり、独立した製品売上と契約継続率が数値で開示されるなら
- 内部効率化ツールとしての扱いを見直し、独立した製品事業として数量と価格を再評価する。ただし顧客業務の記録を保持する堀の有無とAI製品自体の代替リスクを別に確かめる。
- Spicaのプラットフォーム報酬と利益が複数年にわたり増加し、TikTok以外にも収益源が広がるなら
- ライブ配信者支援事業の数量、収益単価、長期の存続可能性を引き上げる。広告運用が縮小しても全社の利益を維持できる可能性が高まり、楽観側の重みが増す。
- TikTok LIVEの代理店報酬制度が大幅に変更され、Spicaの利益率が急低下するなら
- Spicaの利益を下方修正し、のれん減損と借入金の財務制限条項への影響を点検する。やや悲観と悲観の筋書きが近づく。
- 会社が配当性向やDOEの数値目標を公表し、利益の相応部分を継続的に還元し始めるなら
- 10年間の累積還元額を新たに評価し、余剰現金の株主への戻り方も引き上げる。新規買収に使われる利益が減ることによる成長への影響と合わせて判断する。
- 買収先の取得後利益が償却・金利込みでも継続的に増え、追加買収の投下資本利益率が資本コストを上回るなら
- 経営陣の資本配分能力に対する評価を上げ、将来利益と余剰現金の予想を見直す。単なる連結売上高の増加ではなく、買収対価を含めた増分の現金利益を重視する。
見ておくもの
- 広告運用契約の実質件数と1契約当たり手数料収入。未開示の場合は大口顧客売上とサービス別売上を継続して確認する。
- インターネット広告とSEOのサービス別売上高、成長率、粗利益率の変化。
- エンタープライズ顧客向け売上高と、ADK関連取引への集中度の推移。
- 慧眼AIの社内利用による生産性改善と、外部販売の有無・金額。
- Spicaの売上高、営業利益、所属配信者数、TikTok LIVEからの報酬条件の変化。
- のれん残高、有利子負債、純現金、財務制限条項の余裕度。
- 実施済みの買収案件について、取得価額と取得後の利益・キャッシュフローを比較した増分投資収益率。
- 配当、自社株買い、ストックオプションによる株式希薄化の推移。
倍率と資本コストの決め方
株価1598円と時価総額約102億円は、最後に価値との差を確認するためだけに使用した。事業の売上高は広告運用契約数×年間手数料、SEO契約数×年間報酬、配信者稼働数×プラットフォーム報酬で分けて見積もった。2025年9月期の広告・SEO実績と2026年4月期のSpica取得対象事業実績は、連結期間が違うことを明示している。AIエージェント代替は広告・SEOの10年間の数量・価格とg_long=0%へ反映し、kの寿命上乗せには使っていない。PERはk=7.75%と長期g=0%に基づく利益資本化の式から求め、過去のPERや競合の株価倍率は使用していない。悲観の床は現在確認できる純現金と換金可能資産から求め、積み上がった自己資本に過去のPBRを掛けていない。無配が継続する想定では累積還元額をゼロとし、内部留保のうち余剰現金として残る分だけを別に評価した。事務所賃貸に関する将来のリース会計表示の変更は経済的な利益の増加とはみなさない。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%の合計7.5%を基本に、4つのquality項目の合計0.25ポイントを加えた7.75%。個別の買収リスクやAI代替を別途上乗せせず、利益と確率で評価する。