結論
ベビーカレンダーは、妊娠・出産・育児の情報メディアを起点に、女性の生活情報、動画配信、医療機関向けシステムへ事業を広げてきた会社である。筆者の結論は「割高」だ。2026年9月に発表されたオレンジページ買収には可能性があるが、広告収益の先細りと買収後の利益率を慎重に見れば、10年先の価値を現在の株価が十分に安く織り込んでいるとは言えない。
同社の長所は、妊娠から育児までの切実な悩みに応える専門家監修コンテンツと、産婦人科との長年の取引である。妊娠・出産の時期には正しい情報への需要があり、無料の専門サイトを利用者と広告主の双方につなぐ仕組みには一定の経済価値がある。一方、記事を読んでもらって広告収入を得るモデルは、検索エンジンや動画配信会社が集客と収益化の条件を握っている。
2025年12月期の売上高は約19.3億円、営業利益は約2.1億円だった。2026年は動画の収益化停止などで減収減益を見込む。さらに、取得予定のオレンジページは直近期の売上高が約28.3億円と、買い手の既存事業より大きい。これほど大きな事業構成の変化を、過去の利益率だけで評価することはできない。
10年後の中立的な時価総額は約12.9億円と、現在の約11.6億円をわずかに上回る。しかし、その価値を10年間の資本コストで現在に割り引くと見方は変わる。五つの筋書きの確率加重による現在の本質価値は約5.9億円で、現時点の時価総額を約49%下回る。中立の利益成長が限定的なうえ、買収に投じる資金から株主への還元が十分生まれるか、まだ証明されていないためである。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主が最初に問うべきなのは、10年後も読者がこの会社を経由しなければ得られない価値があるか、ということだ。妊娠・出産の医学的な説明や専門家に相談できる機能、院内での出産記録には長く残る需要がある。しかし、同じ情報をAIが引用して答えを返すようになると、読者にとって有益でも広告主が対価を支払う場面は減る。社会的に必要な事業と、株主が安定して稼げる事業を区別しなければならない。
所有したいのは、顧客が自発的に繰り返し利用し、値上げしても離れず、追加投資のたびに高い利益が残る会社である。ベビーカレンダーは専門家との協働と医療機関への導入実績を持つが、広告の値決めを外部に握られ、医療ソフトではAIや電子カルテとの競争がある。明確な解約率や値上げの実績がない現段階では、堀は狭いと判断する。
さらに、利益を配当せず買収へ回すなら、その資金は株主が自分で運用する場合より高い収益を生まなければならない。オレンジページは名前の知られた媒体で、生活情報への展開には魅力がある。しかし、営業赤字の事業を買い、出版とデジタルを統合するには編集体制や顧客営業の再構築が必要だ。買収価格が安く見えても、その後の追加投資や利益の改善が伴わなければ価値は増えない。
今回、判断をいっそう慎重にするのは過年度の不正と内部統制の問題である。小さな会社ほど管理の緩みが利益と信用に及ぼす影響は大きい。それでも投資家は回復の可能性を否定すべきではない。経営管理が安定し、医療施設の継続率と出版事業の現金創出力が確認できれば、評価を引き上げる余地はある。現時点では、そうなる前提の価格を先払いする理由は乏しい。
何で稼ぐ会社か
収益の中心は、利用者が無料で読む記事や動画を広告主の予算に変えるメディア事業である。「ベビーカレンダー」に加え、「ムーンカレンダー」「ウーマンカレンダー」「ヨムーノ」などを運営し、妊娠中の女性に限らず生活情報を求める幅広い読者を集める。広告収入はページ閲覧数に連動する広告枠、一定期間の広告掲載、成果報酬、専門家・医師監修を伴う広告から生まれる。
2025年のメディア事業売上高は約16.4億円で、全体の約85%を占めた。会社資料によると、同年に記録した月間ページ閲覧数の最高値は主力メディアが3.4億、その他メディアが2.5億だった。ただし、これらは各系列の最高値であり、通年平均の実際の閲覧数ではない。広告の数量を考えるうえで有用だが、表示された閲覧数すべてが同じ単価で売れるわけではない。
買収してきた動画チャンネルも収入源である。ただし、2026年には一部チャンネルの収益化が停止し、8月に再開が報告されても将来収入の安定は保証されなかった。自社で読者を持つサイトとは違い、配信元の審査や広告規約によって収益が突然変わる性質が強い。
医療法人向け事業では、産婦人科などに「ベビーパッド」、診察予約、超音波動画の保存、ホームページ制作、検索対策を提供する。2025年の取引施設数は652施設で、売上高は約2.9億円だった。院内の情報提供や動画保存には継続需要があるものの、予約画面や制作業務はAIエージェントによる自動化と競合する。産後ケア施設は実際の人による支援を要するが、人件費と賃借料が固定費になる。
2026年11月2日に実行予定のオレンジページ買収は、収益構造を大きく変える。料理雑誌の出版に加え、レシピサイト、通販、イベントなどを持つ企業を取得し、妊娠・育児に偏った顧客接点を家庭生活全体へ広げる狙いだ。ただし、買収対象の直近期営業損益は赤字だった。雑誌の発行部数だけでなく、広告、通販、催事まで含めた複合事業を立て直す必要がある。
優良さと弱いところ
同社には一定のブランド力があるが、長期にわたり高い値上げを続けられるほど強い堀は確認できない。妊娠中の健康情報は信頼性が重視され、医師や管理栄養士などによる監修と蓄積した記事には価値がある。医療施設向けでは、院内に設置した端末や説明動画の運用経験が新規参入者への障壁になる。しかし、サイトの広告単価を最終的に左右するのはGoogleなどの配信基盤であり、顧客を囲い込む力は限定的だ。
医療機関向けシステムには、施設ごとの内容調整や現場での導入支援という強みがある。だが、解約率が年5%未満であることや、法規制に伴う値上げを継続して通したことを示す十分な開示は見つからない。医療記録の正本を独占する基幹システムでもないため、AI時代にも高成長が続くとまでは評価しない。
資本効率も評価が難しい。2020年と2021年には比較的高いROEを記録したが、2023年には損失を出し、2024年も純損失となった。2025年の営業利益率は11%台へ回復したものの、純利益は約0.4億円にとどまり、6年間のROE中央値は約4.4%である。買収後も利益を継続して増やせると確認するまでは、増分の投資収益率が資本コストを上回るとは認めにくい。
最大の懸念は経営管理だ。元取締役による広告収入約926万円の不正流用が判明し、2025年決算の発表遅延、過年度資料の訂正、内部統制上の重要な不備の開示が続いた。職務分離や入金照合を強化していることは評価するが、株主は改善が実際に定着したかを複数年度で確かめる必要がある。こうした個別の失敗は資本コストへ重複して加算せず、収益と悲観的な筋書きで扱う。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の育児関連情報市場には、需要の切実さと利用者数の減少という相反する力が働く。2025年の出生数は約67.1万人で、同社の事業計画では30~32歳の女性人口が10年後に2025年の85%になると示された。妊娠・育児の情報需要そのものはなくならないが、対象となる世帯数の減少を記事の掲載数だけで埋めることは難しい。事業がシニア、生活、料理へ広がるのは合理的だが、その領域では新たな競争相手が増える。
広告市場全体はなお拡大している。電通によると、2025年の日本の総広告費は8兆623億円で、インターネット広告費は初めて過半数を占めた。しかし、市場の成長が個々の情報サイトの成長を意味するわけではない。検索広告はGoogle、SNS広告はMetaなど、大きな配信基盤に集まりやすい。育児情報では「たまひよ」や「ママリ」、料理・生活情報ではクックパッドなどが読者の時間を奪い合っている。
ベビーカレンダーのメディア事業売上高約16.4億円は、国内のインターネット広告市場全体に対して約0.04%に相当する。ただし、同社売上には記事制作や成果報酬なども含まれるため、これは厳密な広告枠シェアではない。育児情報サイトだけの市場規模と、たまひよ、ママリなどの比較可能な有料閲覧数・広告単価は開示がそろわず、順位やシェアの数値を断定できない。
10年で最も大きい構造変化は、AIが読者に代わって情報を探し、答えをまとめることだ。従来は検索して複数ページを読む行動が広告の表示回数になったが、AIの回答だけで目的が達成されれば、サイトの閲覧数は減る。専門家監修の一次情報は参照され続けても、参照されることと広告収入になることは別である。広告制作や運用を人の工数で売る仕事も、自動化により単価が下がりやすい。
医療機関向けは、ベビーパッドの導入実績が全国480施設あるという開示があり、製品が単なる構想ではないことが分かる。一方、年間取引652施設には産婦人科以外の制作案件なども含まれるため、これを全国の分娩施設数で割ってシェアとすることはできない。産婦人科向け製品同士の正確な競合シェアも非開示である。今後は予約、説明、動画保存が電子カルテや病院側のAI機能に取り込まれる可能性を考える必要がある。
オレンジページの媒体資料には、2024年の雑誌発行部数が各号約15万部、年間24号とある。これは年間約360万部という販売可能な紙の数量を考える手掛かりだが、販売部数や2026年の確定実績ではない。紙媒体では購読者数の減少が続く可能性が高く、今後の競争力は独自レシピ、料理家との関係、ブランドを広告や通販にどれだけ転換できるかで決まる。
資本政策と M&A
経営者は利益を配当するより、事業買収と新規サービスへ再投資してきた。会社の有価証券報告書には設立以来の配当実績がないと記載されており、2025年も無配だった。2026年7月の中長期計画は、2027年と2028年に売上高をそれぞれ前年比20%増、経常利益を前年比30~120%増とする方針を示す。一方、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額については数字の約束なしである。これらの目標には将来のM&Aを含めていない。
2024年にはメディカルリサーチを約4.5億円で取得し、医療機関向け事業を補強した。しかし、2025年の医療法人向け事業の利益は約0.19億円であり、買収した部分だけの投下資本利益率も開示されていない。事業拡大が、そのまま既存株主にとって価値創造になったと断言できる段階ではない。
2026年9月にはJR東日本からオレンジページを概算5.07億円で取得する契約を発表した。対象会社の2026年2月期売上高は28.28億円、営業損失は約0.21億円だった。譲渡前に売り手へ約20億円が配当される予定なので、買収前純資産27.55億円をそのまま取得価値とみなしてはいけない。配当だけを控除した純資産は概算7.55億円だが、譲渡実行時の運転資金や資産評価はなお変わり得る。
買収額は2025年末の純現金約1億円を大きく超え、資金は保有現金から支払う予定である。現金残高だけを見ると余裕があるように映るが、借入金約6.2億円と前受金、日々の運転資金も考えなければならない。株主に戻す余剰現金は現時点でゼロと判断し、将来の還元額も確かな方針が示されるまでは計上しない。オレンジページの営業利益が安定して0.6億円を超える程度になって初めて、買収価格に対して資本コストを超える税後利益が見え始める。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この会社には、売上高だけでは見えない資産がある。妊娠や育児に関する専門家監修記事は、読者にとって情報の正確さが特に重要な分野だ。単に文章を大量に生成する競合より、長年の編集ノウハウと専門家ネットワークを持つ媒体が選ばれる余地は大きい。主力サイトだけで月間最高3.4億PVに達した実績があり、規模の小さい上場企業としては無視できない利用者接点を持っている。
医療法人向け事業も、単なる予約画面の提供にとどまらない。ベビーパッドは院内指導の動画や説明内容を施設に合わせて調整する仕組みであり、エコー動画館や出産時の記念映像には実際の診療現場との接点が必要になる。産後ケアのように人が直接行うサービスも、AIに完全に代替される性質ではない。既存施設へ複数のサービスを提供できれば、顧客当たり収入が増える可能性がある。
オレンジページ買収によって、ベビーカレンダーは妊娠・育児だけを扱う媒体から、料理、家事、健康、通販に広がる。オレンジページは自社で料理を試作し、料理家との関係や長年の出版実績を持つ。そのブランドをデジタル広告やイベントで再活用できれば、対象読者の年齢幅が広がり、出生数減少の影響を小さくできる。買収前の利益が赤字でも、約28億円の売上基盤に対して小幅な利益率改善が実現すれば、現在の会社全体の利益を大きく押し上げる。
また、2026年の動画収益化停止は、完全な事業喪失ではなく一部再開が報告された。内部統制の問題も是正策が進んでおり、今後の決算が正常化すれば市場の不信が和らぐ可能性がある。小さい企業だからこそ、出版事業の利益改善とメディア収益の多様化が同時に進めば、利益は現在の数倍になる。長期の上振れ余地は決して小さくない。
慎重な見方
最大の弱点は、会社が支配できないプラットフォームに収益が依存していることだ。サイトの閲覧数が増えても広告単価が下がれば収入は伸びず、検索エンジンが回答を直接表示すれば閲覧数そのものが減る。実際に2026年には動画チャンネルの収益化停止が業績予想に影響した。再開があったからといって、外部の規約変更を受けない事業になったわけではない。
AIエージェントは、広告制作や検索対策だけでなく、予約画面の操作や医療機関の案内業務にも入り込む。専門家による監修の価値は残っても、その情報を表示する画面や制作工数の価格は下がり得る。会社が保有する情報の蓄積と、他社が代替できない記録の正本とは違う。契約解約率、値上げ、乗り換え期間の開示が十分でない事業を、安定成長する基幹ソフトとして評価することはできない。
加えて、出生数の減少は不可避に近い。会社自身の資料が、主力となる30~32歳の女性人口は10年で約15%減ると示している。料理やシニアの領域には既に多くの競合がいるため、育児分野で築いた知名度がそのまま他の年齢層で通用するとは限らない。読者を増やすためにコンテンツ制作費や広告宣伝費を増やせば、売上高が維持できても利益は減る。
オレンジページは、買収対象の売上規模が買い手を上回るほど大きい。出版市場が縮む中で営業赤字の会社を統合するため、編集、販売、物流、通販の実行力が問われる。売り手への約20億円の特別配当後は、過去の貸借対照表にあった資産をそのまま買い手の安全資産とみなせない。親会社には既にのれんなどの無形資産が多く、買収や既存媒体の収益性が崩れれば減損もあり得る。決算訂正や内部統制の不備が続いた直後に、この大型案件を確実に成功させると信じるのは早い。
どちらに重みを置いたか
事業の存在価値では強気の論点に説得力があるが、株主へ帰属する利益の持続性では慎重な見方が優勢である。専門家監修と医療機関との接点は残るものの、メディアの集客、広告単価、業務ソフトの価格にはAIの圧力がある。さらに、オレンジページ買収と内部統制の立て直しを同時に進める必要がある。この会社固有の不確実性から、確率は楽観側27%に対してやや悲観・悲観側41%と下へ寄せた。ただし、AIによる縮小は既に各事業の数量と単価、長期成長率に反映しており、同じ損失を資本コストに重ねていない。期待される現在の本質価値は約5.9億円であり、現在の時価総額約11.6億円に対する安全域は不足している。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,960 円17 億円(+ 還元の換算額還元の合計 0 円0 億円)。 今の値に割り戻すと 867 円8 億円、今との差 −31.7%、 期待の年率 +4.4%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 5,415 円48 億円 | 0 円0 億円 | +326.4% | +15.6% | 487 円4 億円 |
| やや楽観 | 18% | 3,561 円32 億円 | 0 円0 億円 | +180.4% | +10.9% | 641 円6 億円 |
| 中立 | 32% | 1,916 円17 億円 | 0 円0 億円 | +50.9% | +4.2% | 613 円5 億円 |
| やや悲観 | 25% | 731 円7 億円 | 0 円0 億円 | −42.4% | −5.4% | 183 円2 億円 |
| 悲観 | 16% | 225 円2 億円 | 0 円0 億円 | −82.3% | −15.9% | 36 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,960 円17 億円 | 0 円0 億円 | +54.4% | +4.4% | 1,960 円17 億円 |
今の株価時価総額 1,270 円11 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 出版再生と専門性の高い広告が共に成功 利益 3 億円 · PER 11.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5,415 円48 億円
オレンジページの料理ブランドと編集・試作体制を生かし、読者が求める信頼性の高い生活情報を増やす。雑誌の印刷部数そのものは現在の代理値を下回るが、出版社の広告企画、通販、イベントの収益化が進み、売上と利益率が改善する。買収後の編集・営業部門の重複を整理でき、出版事業は黒字の収益源へ変わる。
既存の育児・生活メディアでは、検索からの流入が減る分を指名訪問や直接の利用者接点が補う。PVは現状をわずかに下回るが、専門家監修広告などの付加価値が認められ、広告の実効単価はおおむね物価に沿って上昇する。動画は主要チャンネルの収益化が安定し、制作案件も高付加価値の仕事に集中するため急減を避ける。
医療機関向けサービスは既存施設への追加販売が増え、産後ケアも安全な運営を確立する。内部統制の改善が定着し、これ以上の大きな会計訂正や資本の毀損が起きない。こうした条件が重なれば営業利益は約5.7億円、純利益は約3.3億円に達する。しかし、楽観的な経営改善が実現しても、利益のすべてが配当されるとは想定しない。
- 自社サイトの閲覧連動・成果報酬広告:数量 70.0(年間ページ閲覧数の代理値(億PV)。2025年の各媒体群の月間最高PVを12倍した値)× 価格 0.22(閲覧1回当たりの収益(円)。広告・成果報酬を束ねた実効単価)→ 売上 15 億円・営業利益 5 億円。独自読者への直接接点が維持され、PVはほぼ横ばい。実効単価は物価並みの上昇にとどめる。
- 取得済み動画チャンネルの広告収益:数量 5.0(収益化可能なチャンネル数(件))× 価格 0.70(チャンネル1件当たり年間広告収入(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。五つの取得チャンネルの収益化が安定し、利益率が保たれる。
- 広告タイアップ・制作・検索対策:数量 70.0(年間の制作・タイアップ案件数(件、推計))× 価格 0.02(1案件当たり平均受託額(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AIで単純作業を削減しつつ監修付き案件に集中する。数量は現状以下。
- 医療機関向けシステム・制作・産後ケア:数量 650(年間取引施設・顧客の件数(件))× 価格 0.01(1取引件数当たり年間売上高(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。施設向け複数サービスと直接の産後ケアが採算改善に寄与する。
- 買収予定のオレンジページ出版・生活情報・通販:数量 330(年間雑誌印刷部数(万部、2024年媒体資料からの代理値))× 価格 0.11(印刷物1部当たりの複合収入(億円/万部)。出版以外の広告・EC・催事も含む)→ 売上 36 億円・営業利益 2 億円。印刷部数減を広告・通販・イベントの複合収益で補い、営業利益率6%。
倍率:資本コストk8.5%、10年後ROE約12.87%、弱い堀の超過収益残存割合1/3からRONIC約9.96%。長期名目成長率g0.5%を使用し、(1-g÷RONIC)÷(k-g)による正当化PER上限は約11.87倍。市場の過去倍率は使用しない。余剰現金の別加算はゼロ。
確率:買収後の出版事業の黒字化と既存メディアの高収益維持が同時に必要になる。専門家監修の信頼性と医療施設との関係には上振れ要因があるが、AIが進む環境で複数事業がそろって成功する確率は限定的と判断した。
やや楽観 18% 出版事業を黒字化し既存媒体も持ちこたえる 利益 2 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,561 円32 億円
オレンジページは紙の読者を徐々に失うものの、料理の独自コンテンツを広告や通販に使い、営業赤字から脱する。出版物を読んでいた顧客とWeb読者を相互に案内し、料理家との関係を広告主向け企画にも活用する。大きな値上げではなく、商品構成の改善が利益を支える。
育児・生活情報サイトではAIによる検索流入の減少が起きるが、専門家監修と編集力に一定の評価が残る。広告の実効単価は物価上昇に近い水準まで改善する一方、閲覧数は現状から減る。動画は五つすべてが高収益を維持するわけではなく、主要チャンネルの収益化に依存する状態が続く。
医療法人向けでは、診察予約の画面そのものより、院内動画、患者向け案内、導入支援の価値が残る。施設数は緩やかに減るが、一部顧客への複数サービス販売が単価を支える。買収と内部管理の強化に必要な本社費が増えても、会社全体では営業利益約3.7億円を確保する。ただし、株主還元の数値方針がないため、利益の留保を続ける筋書きである。
- 自社サイトの閲覧連動・成果報酬広告:数量 64.0(年間ページ閲覧数の代理値(億PV)。2025年の各媒体群の月間最高PVを12倍した値)× 価格 0.22(閲覧1回当たりの収益(円)。広告・成果報酬を束ねた実効単価)→ 売上 14 億円・営業利益 5 億円。流入数は約1割減るが、監修付き広告や直接読者によって単価を維持。
- 取得済み動画チャンネルの広告収益:数量 4.5(収益化可能なチャンネル数(件))× 価格 0.66(チャンネル1件当たり年間広告収入(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。収益化停止の再発が小規模にとどまる。
- 広告タイアップ・制作・検索対策:数量 60.0(年間の制作・タイアップ案件数(件、推計))× 価格 0.02(1案件当たり平均受託額(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。制作件数はAI代替で減少するが、高付加価値案件を維持。
- 医療機関向けシステム・制作・産後ケア:数量 600(年間取引施設・顧客の件数(件))× 価格 0.01(1取引件数当たり年間売上高(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。既存施設への追加販売と産後ケアの効率化が寄与。
- 買収予定のオレンジページ出版・生活情報・通販:数量 300(年間雑誌印刷部数(万部、2024年媒体資料からの代理値))× 価格 0.10(印刷物1部当たりの複合収入(億円/万部)。出版以外の広告・EC・催事も含む)→ 売上 29 億円・営業利益 1 億円。出版部数は減少。デジタル広告と通販が補い、利益率4.5%。
倍率:10年後ROE約10.71%、k8.5%、弱い堀の残存割合1/3によりRONIC約9.24%。長期g0.5%から正当化PER約11.82倍を算出した。10年より先の伸びを過大に評価せず、余剰現金の二重加算もしない。
確率:オレンジページの営業黒字化には合理的な道筋があるが、広告の閲覧減少と大手配信基盤への依存は消えない。出版の改善と医療施設への追加販売が進む条件付きの上振れとして評価する。
中立 32% 媒体は縮むが出版社の収益改善で事業を維持 利益 1 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,916 円17 億円
妊娠・育児の情報への需要は残るが、出生数の減少とAIによる検索結果の直接回答によって、自社サイトへの流入は緩やかに減る。会社は専門家監修記事や既存顧客との関係を保つものの、広告単価を自由に決める力は弱い。閲覧回数の減少を広告主向けの付加価値で一部補うため、媒体事業が突然消えることはない。
制作・検索対策の仕事はAIによって少人数でこなせるようになり、従来の案件数は減る。診察予約などの画面中心の医療ソフトにも自動化が及ぶが、院内で患者に説明する動画や出産時の記録は利用され続ける。医療施設向けの取引件数は現在の約8割となり、単価は物価上昇を下回る改善にとどまる。
オレンジページの紙の発行部数は減る。料理の試作と編集の信用は残るため、広告、通販、イベントを合わせた収益を維持し、営業利益率は小幅なプラスへ戻る。しかし、編集・販売の統合には固定費がかかり、親会社全体の利益が買収前から劇的に伸びるわけではない。2035年の営業利益は約1.9億円、純利益は約1.1億円となる。蓄積した自己資本に対する利益率は資本コストを下回り、利益の再投資が高い株主価値を生む状態には至らない。
- 自社サイトの閲覧連動・成果報酬広告:数量 60.0(年間ページ閲覧数の代理値(億PV)。2025年の各媒体群の月間最高PVを12倍した値)× 価格 0.20(閲覧1回当たりの収益(円)。広告・成果報酬を束ねた実効単価)→ 売上 12 億円・営業利益 4 億円。年間PVは2025年の最高月年率換算代理値の約85%。単価上昇は物価未満。
- 取得済み動画チャンネルの広告収益:数量 4.0(収益化可能なチャンネル数(件))× 価格 0.58(チャンネル1件当たり年間広告収入(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。実質的に収益化できるチャンネル数と1件当たり収入が減る。
- 広告タイアップ・制作・検索対策:数量 49.0(年間の制作・タイアップ案件数(件、推計))× 価格 0.02(1案件当たり平均受託額(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。制作・広告運用のAI代替で案件数量は現状の約65%。名目単価は据え置き。
- 医療機関向けシステム・制作・産後ケア:数量 522(年間取引施設・顧客の件数(件))× 価格 0.00(1取引件数当たり年間売上高(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。取引数は現状の80%。クラウド予約・制作への圧力で平均単価は10年で約11%増。
- 買収予定のオレンジページ出版・生活情報・通販:数量 252(年間雑誌印刷部数(万部、2024年媒体資料からの代理値))× 価格 0.10(印刷物1部当たりの複合収入(億円/万部)。出版以外の広告・EC・催事も含む)→ 売上 26 億円・営業利益 1 億円。紙の部数は2024年の印刷部数代理値の70%。通販・広告を含む複合単価は約31%増。営業利益率2.5%。
倍率:2035年のROEは1.10÷14.70=約7.48%で、k8.5%を下回る。再投資による超過価値を認めず、利益を資本コストで割る上限1÷k=11.7647倍とした。g_long0.5%を使って低収益の再投資を加点することはせず、長期の利益1.10億円に倍率を適用した。
確率:専門家監修コンテンツと医療施設の継続需要は事業の消滅を防ぐが、AIによる集客・制作工数の代替は避けにくい。オレンジページは大幅な成長でなく小幅な利益改善にとどまることを中心的な見込みとした。下に寄せる理由:動画収益化の停止、過年度決算の訂正、買い手を上回る売上規模の出版会社買収が同時期に重なっているためである。
やや悲観 25% 検索流入が減り買収した出版事業も低収益 利益 0 億円 · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 731 円7 億円
AIの回答が育児・料理情報を直接伝えることが一般化し、検索から各サイトへの訪問が減る。専門家による監修は続けるものの、広告主が支払う単価は十分には上がらない。動画でも収益化条件の変更が繰り返され、安定して広告を得られるチャンネルが少なくなる。
医療施設向けでは、病院が予約機能を電子カルテや自社のAI受付へ統合し、外部システムの契約を一部終了する。Web制作や検索対策の受託案件も減る。出産時の記録や院内向け説明動画は残るため、事業全体が消えるわけではないが、十分な値上げはできない。
オレンジページは料理ブランドの知名度を維持する一方、印刷物の縮小と広告収入の弱さを埋めきれない。買収後の販売・編集の統合には時間がかかり、営業利益はわずかに残る程度となる。人員と管理費を抑えても、事業全体の営業利益は約0.67億円にとどまる。利益率が資本コストを大きく下回るため、将来の帳簿上の自己資本を額面どおり評価しない。現在の自己資本を基準に低い資産倍率で評価する。
- 自社サイトの閲覧連動・成果報酬広告:数量 56.0(年間ページ閲覧数の代理値(億PV)。2025年の各媒体群の月間最高PVを12倍した値)× 価格 0.19(閲覧1回当たりの収益(円)。広告・成果報酬を束ねた実効単価)→ 売上 11 億円・営業利益 3 億円。AI検索と広告競争で閲覧数・単価の伸びが鈍化。
- 取得済み動画チャンネルの広告収益:数量 3.2(収益化可能なチャンネル数(件))× 価格 0.57(チャンネル1件当たり年間広告収入(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。収益化停止や広告単価低下が継続。
- 広告タイアップ・制作・検索対策:数量 40.0(年間の制作・タイアップ案件数(件、推計))× 価格 0.02(1案件当たり平均受託額(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AIエージェントが広告制作・運用を内製化し、件数と受託単価が下がる。
- 医療機関向けシステム・制作・産後ケア:数量 480(年間取引施設・顧客の件数(件))× 価格 0.00(1取引件数当たり年間売上高(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。予約・制作の競争が強まり、実際の医療現場支援だけが強く残る。
- 買収予定のオレンジページ出版・生活情報・通販:数量 230(年間雑誌印刷部数(万部、2024年媒体資料からの代理値))× 価格 0.10(印刷物1部当たりの複合収入(億円/万部)。出版以外の広告・EC・催事も含む)→ 売上 22 億円・営業利益 0 億円。印刷部数と広告市場での存在感が縮小し、営業利益率1%。
倍率:ROE約3.42%はk8.5%を大きく下回り、将来の自己資本を積み上げて額面評価することはできない。倍率を掛ける資本は2025年末の現在自己資本7.20億円に固定し、PBR0.60倍から時価総額4.32億円とした。10年後利益0.38億円をkで割る稼ぐ力の上限約4.47億円、推定売却可能資産の床2.0億円の双方と整合する。中立の実質PBR約0.88倍より低い。
確率:動画の収益化停止とAI検索への移行は既に観察できる問題であり、今後さらに進む可能性がある。大型買収の統合作業が予定ほど進まず、広告・出版双方の利益率が下がる場合に相応の重みを与えた。
悲観 16% 媒体広告と出版が構造的に縮み優良さを失う 利益 −1 億円 · PBR 0.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 225 円2 億円
検索エンジンとAIエージェントが、育児や料理の情報を利用者へ直接届けるようになり、外部情報サイトに人が訪れる回数が大きく減る。監修記事は引用されても、広告を表示する機会には十分結び付かない。動画は規約変更と広告主の選別が重なり、収益源としての信頼を失う。広告主は制作と運用をAIへ移すため、受託案件と価格の両方が下がる。
医療法人向けでは、予約、院内説明、患者向け情報の一部が病院の既存システムに吸収される。出産時の動画と直接の産後ケアは残るものの、固定費を回収するだけの需要が集まらない。産後ケア施設の賃料や専門職の人件費は、利用者が減った分だけすぐには減らせない。
オレンジページは紙の発行部数を大きく減らし、広告、通販、催事への展開も十分な採算を確保できない。取得後の編集・販売の統合作業に失敗し、出版事業は再び営業赤字に陥る。会社は人員整理や拠点の縮小で本社費を減らすが、営業損失は約1.25億円、純損失は約0.85億円となる。事業の価値を高い利益倍率で評価する理由はなく、売れる資産の限られた価値だけを株主に帰属する床とする。
- 自社サイトの閲覧連動・成果報酬広告:数量 39.0(年間ページ閲覧数の代理値(億PV)。2025年の各媒体群の月間最高PVを12倍した値)× 価格 0.15(閲覧1回当たりの収益(円)。広告・成果報酬を束ねた実効単価)→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。AI検索でPVが大幅減少し、広告単価も現状以下となる。
- 取得済み動画チャンネルの広告収益:数量 2.0(収益化可能なチャンネル数(件))× 価格 0.40(チャンネル1件当たり年間広告収入(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。収益化を維持できるチャンネルが減り、営業利益が消える。
- 広告タイアップ・制作・検索対策:数量 30.0(年間の制作・タイアップ案件数(件、推計))× 価格 0.02(1案件当たり平均受託額(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。制作・広告運用のAIエージェント代替が進み、工数販売の価値が失われる。
- 医療機関向けシステム・制作・産後ケア:数量 360(年間取引施設・顧客の件数(件))× 価格 0.00(1取引件数当たり年間売上高(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。医療機関の内製化と価格競争が進み、現場サービスの利益で補いきれない。
- 買収予定のオレンジページ出版・生活情報・通販:数量 170(年間雑誌印刷部数(万部、2024年媒体資料からの代理値))× 価格 0.08(印刷物1部当たりの複合収入(億円/万部)。出版以外の広告・EC・催事も含む)→ 売上 14 億円・営業利益 −1 億円。紙の部数は半分以下となり、広告・通販が十分育たず営業赤字。
倍率:営業赤字と純損失が続く構造的敗北のため、PERを用いない。減損前の将来積み上げ自己資本4.95億円ではなく、現在自己資本7.20億円を固定した基準とし、7.20億円×0.27777778倍=約2.00億円とした。これはのれん等を除いた資産の推定売却価値2.0億円を下回らない最小の正の時価総額であり、中立の実質PBRを大幅に下回る。過去の市場PBRの谷から決めていない。
確率:広告収益の外部依存、人口減少、買収先の出版赤字、内部統制の問題が重なる場合を考えた。すべてが同時に悪化することは中心的な見込みではないが、AIが既存の広告・制作・予約業務を置き換える環境では無視できない確率である。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
自社サイトの閲覧連動・成果報酬広告
ベビーカレンダーや関連生活情報サイトの読者接点を広告枠と成果報酬に変える事業。AI代替の型は「自社の媒体・プラットフォームの広告枠」であり、検索回答の直接表示により閲覧数が減る。
| 数量年間ページ閲覧数の代理値(億PV)。2025年の各媒体群の月間最高PVを12倍した値 | 価格閲覧1回当たりの収益(円)。広告・成果報酬を束ねた実効単価 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 70.8 | 0.16 | 12 | 4 |
| 10 年後 中立 | 60.0 | 0.20 | 12 | 4 |
取り方:会社の2026年7月31日事業計画にある2025年の月間最高PVは主力3.4億、その他2.5億。合計5.9億×12か月を年間70.8億PVの代理値とした。最高値の年率換算であり実際の年間閲覧数ではないため、0.1646円は広告の実際の販売単価ではなく保守的な実効収益率の代理値である。2025年媒体セグメント売上16.40453億円から、別建てで推計した動画3.25億円と制作1.50億円を控除して売上11.65453億円とした。利益もセグメント利益4.65988億円から両者の推定利益を控除したもので、これらの内訳は会社非開示である。将来の数量は実質PV、単価には物価と広告単価競争を反映する。
取得済み動画チャンネルの広告収益
買収で取得した動画チャンネルを運営する広告事業。動画の配信や収益化の可否を外部プラットフォームが決めるため、自社の利用者基盤を独占する媒体とは区別する。
| 数量収益化可能なチャンネル数(件) | 価格チャンネル1件当たり年間広告収入(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 5.0 | 0.65 | 3 | 1 |
| 10 年後 中立 | 4.0 | 0.58 | 2 | 0 |
取り方:2022~2024年に取得した五つのYouTubeチャンネル群を数量の基礎とした。2026年の収益化停止を巡って会社が示した年間影響約3.25億円を、2025年の動画売上規模の代理値として5件に配分した。2025年の実際のチャンネル別収入が開示されているわけではない。営業利益0.923億円も媒体セグメント利益からの推計配分である。AIによる動画供給増加と配信審査を数量・単価へ反映する。
広告タイアップ・制作・検索対策
広告主向けの企画制作、監修付きタイアップ、検索対策などを受託する収益。AI代替の型は「広告制作・運用/人の工数」であり、単純制作や運用作業は自動化されやすい。
| 数量年間の制作・タイアップ案件数(件、推計) | 価格1案件当たり平均受託額(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 75.0 | 0.02 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 49.0 | 0.02 | 1 | 0 |
取り方:会社は案件数・平均受託額を分けて開示していない。メディア事業売上のうち1.50億円を制作・タイアップ部分として仮に切り分け、75件×200万円と推計した。単価の参考にはオレンジページの媒体資料にある広告企画料金の水準を使ったが、両社の契約単価が同一とはみなしていない。中立の10年後数量は49件、現状の0.65倍で、広告制作・運用のAI代替指針である0.55~0.75倍の範囲内。手数料単価に物価上昇を自動転嫁しない。
医療機関向けシステム・制作・産後ケア
ベビーパッド、診察予約、エコー動画、ホームページ制作、院内支援と産後ケア施設を含む。主なデジタル部分は「席・操作画面型SaaS」と「人月型制作」、直接介助する産後ケアは「現場の体」に分類する。
| 数量年間取引施設・顧客の件数(件) | 価格1取引件数当たり年間売上高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 652 | 0.00 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 522 | 0.00 | 3 | 0 |
取り方:2026年7月の会社事業計画にある2025年の取引施設数652件と、有報の医療法人向け事業売上2.88903億円から、1件当たり約44.3万円の年間実効売上を算出した。652件には産婦人科以外の制作顧客も含まれ、継続課金IDの実数とは違う。ベビーパッドは全国480施設の導入実績があるが、それも652件と同一の集計ではない。各サービスの売上構成比は非開示なので、デジタル部分を主としてAIによる画面操作・制作工数の減少を数量と価格に織り込み、直接介助する産後ケアの存在を利益率に反映した。中立数量522件は現状の0.80倍、平均単価0.00490億円は1.11倍で、AI代替指針の席課金型の範囲内である。
買収予定のオレンジページ出版・生活情報・通販
料理雑誌を中心にレシピサイト、広告、通販、講座、イベントを展開する事業。印刷物は実物の商品だが、デジタル媒体広告と制作受託にはそれぞれAIによる閲覧減少・工数代替を考える。
| 数量年間雑誌印刷部数(万部、2024年媒体資料からの代理値) | 価格印刷物1部当たりの複合収入(億円/万部)。出版以外の広告・EC・催事も含む | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 360 | 0.08 | 28 | 0 |
| 10 年後 中立 | 252 | 0.10 | 26 | 1 |
取り方:取得予定のオレンジページが公表した2026年2月期売上高28.28億円、営業損失0.21億円を採用した。媒体資料には2024年の各号約15万部、月2回刊行とあるため、15万部×24号=年間360万部を実質数量の代理値とした。28.28億円にはサイト広告、通販、催事なども含まれるため、単価約786円/部は雑誌の店頭価格ではなく事業全体を印刷部数に対応させた複合単価である。実売部数、2026年時点の印刷部数、事業別売上は確認できていない。媒体資料はhttps://www.orangepage.co.jp/wp-content/uploads/2026/06/opnet_20260601.pdf 。なお、2026年10月22日時点で取得は未実行であり、このセグメントは2025年12月期の親会社実績に加算していない。10年後の筋書きには2026年11月の取得完了を前提に組み入れた。
リスクと懸念
AIエージェント代替と検索流入の減少
検索から記事へ移動せずAIの回答だけで用事を済ませる読者が増えると、専門家監修の記事が利用されても広告表示数は増えない。広告制作・検索対策は人の工数が不要になり、診察予約ソフトも電子カルテやAI受付に機能を吸収され得る。自社媒体広告、制作受託、画面中心の医療サービスを異なる型として数量と単価に反映した。
Google・動画配信会社への依存
広告収入は広告市場の成長だけで決まらず、配信基盤の規約や収益化審査に左右される。2026年には一部動画の収益化停止が実際に業績見通しへ影響し、再開報告後も収入の継続は保証されない。Google向け売上は2025年に約3.7億円あり、単一の大口相手先に関連する売上が無視できない。
オレンジページ買収の統合失敗
対象会社の売上高は買い手を上回る規模であり、出版、デジタル広告、通販、イベントを一体で改善する能力が問われる。取得前に売り手へ約20億円を配当する予定なので、旧純資産をそのまま買収後の安全資産とは扱えない。統合費用やのれんの評価が想定を超えれば、売上の拡大に反して利益と現金が減る。
内部統制と経営管理の信頼
元取締役による広告収入約926万円の不正流用が判明し、決算の遅延や過年度の訂正が生じた。会社は職務分離と入金照合、内部監査を強化しているが、再発防止の成否は継続した監査と決算の正確性で確かめる必要がある。大型買収で管理対象が急に増えることも、統制の弱さを再び表面化させる可能性がある。
出生数の減少と出版需要の縮小
2025年の出生数は約67.1万人で、同社資料の対象女性人口見通しも10年後の減少を示している。高齢層や料理分野へ広がっても、そこには既存の媒体と大手広告会社がいる。オレンジページの紙媒体が縮めば印刷・配送と編集体制の費用負担が重くなり、媒体単価だけでは利益を守れない可能性がある。
借入負担と売却可能な資産の薄さ
2025年末の現金等は約7.2億円あるが、有利子負債も約6.2億円ある。さらに買収対価を保有現金から支払う予定で、実質的な財務余力は見かけより小さい。帳簿上の自己資本約7.2億円のうち無形資産が約6.6億円を占め、赤字が続いても額面の純資産をすべて現金化できるとは考えにくい。
今後の分かれ目
- オレンジページの買収が予定どおり完了し、取得後2~3年間の営業利益が安定して0.6億円を超えたら
- 買収資本に対する税後の収益力が資本コストに近づいた証拠となる。出版社の利益率と本社費の改善を確認し、中立からやや楽観側の利益を引き上げる。
- ベビーカレンダーの実際の年間PVと広告収入を継続的に開示し、閲覧1回当たりの実効収益が物価以上に伸びたら
- 検索流入減少を自社の読者接点と値決め力で補えている可能性がある。媒体広告の単価と堀の判断を上方修正する。最高月だけのPVでは判断しない。
- 動画チャンネルの収益化停止が再発し、複数四半期にわたり広告収入が大きく減少したら
- 外部プラットフォームへの依存が構造的な損失になったと判断する。動画収益の数量と単価を引き下げ、やや悲観・悲観側の確率を増やす。
- 医療法人向けサービスの解約率が年5%未満で継続し、実績として値上げや施設当たり売上の増加が確認されたら
- 単なる予約画面を超えた継続利用と価格決定力の証拠として評価する。どのサービスが値上げできたかを確認し、堀の強さと長期成長率を再検討する。
- 内部統制の重要な不備が解消され、複数年度にわたり決算訂正や重大な不正が再発しなかったら
- 買収後の経営管理に対する不確実性が一つ減る。個別リスクを反映した悲観側の確率を見直すが、AIや出生数の問題まで解決したとはみなさない。
- 経営者が明確な配当性向や自社株買い額を約束し、その方針を実際に継続して実行したら
- 利益が株主へ戻る確実性を再評価する。自己資本の増加を還元額だけ減らす形で見直し、蓄積した利益を二重に株主価値へ計上しない。
見ておくもの
- オレンジページ取得の2026年11月2日実行状況と、取得時の純資産・のれん・借入金の確定額
- 取得後のオレンジページ単独売上高、営業利益率、雑誌発行部数、デジタル広告・通販・イベントの売上構成
- 自社サイトの月間PV、通年PV、直接流入比率、PV当たり広告収入
- 動画チャンネルの収益化状況、プラットフォーム別売上高、Google関連売上比率
- 医療法人向け取引施設数、ベビーパッド導入施設数、解約率、施設当たり収入
- 産後ケア施設の稼働率と施設損益、賃借料などの固定費
- 過年度訂正の有無、内部統制の改善状況、営業キャッシュ・フロー、借入金残高、株主還元方針
倍率と資本コストの決め方
価値の積み上げは、2025年の媒体PV、動画チャンネル、推定制作案件、医療取引652施設と、取得予定のオレンジページの印刷部数代理値を起点とした。オレンジページの売上28.28億円は2025年末の親会社実績に重ねず、2026年11月の取得完了を前提に2035年だけへ反映した。2025年の現金と借入金、のれんの大きさも悲観の床に反映した。倍率は現在や過去の市場PER・PBRから選ばず、資本コスト8.5%、10年後ROE、弱い堀、長期名目成長率0.5%による正当化倍率で決めた。やや悲観と悲観の資産倍率は将来積み上げた自己資本ではなく現在自己資本7.2億円へ掛けている。株価との比較は最後に行った。2027年以降の新リース会計基準によって借入金と使用権資産の見え方が変わっても、賃料は従来と同じく営業費用として扱い、価値の二重計上を避ける。10年の資本コスト割引率は約2.261倍であり、希薄化を反映した五つの筋書きの現在価値加重平均は約5.93億円、現在時価総額11.62億円との差は約マイナス48.9%となる。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債利回り3.0%と株式リスクプレミアム4.5%を合わせた基本7.5%に、利益の振れと外部に依存する広告の値決め力として1.0%を加える。内部統制とM&A実行の個別リスクは利益・確率で扱うため、さらに上乗せしない。