結論
タウンニュース社は、神奈川県と東京多摩地域で無料地域情報紙を発行し、広告主から収益を得る会社である。筆者の結論は「適正」だ。ただし理由は紙の広告事業が大きく成長するからではない。地域に根を張った取材・営業網が生む利益と、豊富な預金・投資有価証券を合わせた価値が、現在の時価総額を小幅に上回るためである。
最大の魅力は、普通の地方広告会社とは異なる財務の厚さだ。2026年6月期の売上高は約40億円、営業利益は約5.9億円、自己資本は約56.7億円に達する。借入金はなく、現預金のほかに長期預金や多額の純投資株式を持つ。紙の収益力が多少弱まっても、直ちに事業継続を脅かされる会社ではない。
しかし、10年後も現在の発行形態と収益構成が保たれるとは考えない。全国のフリーペーパー広告市場は縮小し、新聞折込による配布網も細っている。同社自身が紙面の発行版と部数を見直しており、広告制作やウェブ関連の受託仕事もAIエージェントに代替されやすい。代わりに育ちつつある公民連携・施設運営は、実際の現場を必要とするが、入札更新と人件費高騰を避けられない。
5つの筋書きによる本質価値は約43.1億円となり、基準時点の時価総額約39.6億円を約8.8%上回る。上側より下側の筋書きを厚く評価したうえでの、上下10%の範囲に収まる「適正」である。紙の広告数量が想定より速く落ちる場合や、余剰資産が株主へ戻らない場合には、この差は簡単に消える。魅力的な資産を持つことと、少数株主が十分な利益を受け取れることは別問題である。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、この会社を「紙を印刷する会社」だけと捉えると本質を見失う。価値があるのは、町ごとの取材網、広告主との継続した付き合い、地域から得る信頼、そしてそれを他の仕事へ転用できることだ。地域の細かな出来事を取材する組織を一から築くには時間がかかる。新聞紙そのものが必要なくなっても、こうした情報源や関係が残れば、会社の役割は維持できる。
ただし、良い地域ブランドが必ず良い株主利益を生むわけではない。広告枠の価格決定権は強くなく、広告主は成果が低ければ媒体を切り替える。AIにより広告制作やウェブ関連の受託仕事が安価になる時代には、地域情報の取材と現場の施設運営を守り、代替されやすい作業の人件費を早く減らす経営が求められる。紙の売上を守るために採算の悪い発行版へ資本を投じ続ければ、歴史あるブランドがかえって負担になる。
所有者に残る利益を見ると、無借金であることと営業キャッシュフローが継続して黒字であることは大きな長所だ。印刷設備を自社で大規模に抱えないため、製造業ほど重い設備更新は必要ない。一方、編集と営業の人材、紙の印刷・折込費用、公共施設の運営費は毎年要る。純利益がすべて自由に配れるわけではないが、事業拡大に必要な資本は過度に重くない。
最も注意したいのは資本配分である。本業に必要な資本の利回りが高くても、稼いだお金を低利回りの預金や投資株式に積み続ければ、株主全体の資本効率は上がらない。純投資株式は換金可能な資産だが、その含み益を売却せず持ち続ける判断は少数株主には変えられない。増配は続いているものの、還元をもっと強める余地が残る。
本質価値の評価では、本業の利益を過大に伸ばさず、金融資産も満額を当然に株主のものとはみなさない。この慎重な見積もりでも現在の時価総額を小幅に上回るが、差は厚くない。筆者が長期保有の確信を高める条件は、非紙面事業が紙面の利益減少を十分に埋め、余剰資産を持つ合理的な理由と還元方針が明確になることだ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、購読料を取らない地域情報紙「タウンニュース」の広告枠販売である。2026年6月末時点で神奈川県内32地区、東京都内3地区の計35版を発行する。新聞7紙への折込と店舗・施設への配架を合わせた公称部数は約144万部で、各行政区の出来事を別々に取材・編集している。紙面の内容が地区ごとに異なるため、全国一律の広告では届きにくい地域の商店、住宅関連、医療、教育、催事などの顧客と接点を作れる。
この商売の実体は、広告枠の数と実効掲載単価の掛け算だ。広告主には直接営業し、広告代理店を通じても販売する。印刷と新聞折込は外部業者へ委託しており、同社は地元の取材力、企画、営業、広告制作に人と資本を使う。広告料は大きさや発行地区によって異なり、公表料金では小型の枠から全面広告まで幅が広い。個別の年間掲載件数や実際の値引き率は開示されていない。
デジタルでは「Web版タウンニュース」「RareA」「政治の村」、LINEやメールによる地域情報配信を展開する。自社メディアの広告枠と、ウェブサイト制作、動画制作、広告素材の制作・運用という受託仕事は、経済性が異なる。前者には読者と地元情報が資産として残るが、後者には担当者の制作工数が多く含まれ、今後の自動化で単価や受注件数が変わりやすい。
新しい柱は、公民連携と地域事業である。秦野市文化会館、茅ヶ崎公園体験学習センター、小田原市民ホールの指定管理に関わり、自治体の企画提案案件、イベント、記念誌、防災関連商品なども手掛ける。地域社会の事情を知る営業・取材網が案件の入り口になる一方、施設運営には人員配置、保守、光熱費など継続的な費用が要る。2026年には自治会活動を支援する「JichiCa」も開設したが、独立した大きな継続課金収益になったという金額の開示は確認できない。
会計上は単一セグメントであり、紙面、デジタル、広告制作、指定管理、地域事業それぞれの実績売上・利益は公表されていない。以下の5区分は経済性を分析するための推計区分である。会社が中期計画で公表した紙面関連・非紙面の構成と、最新の全社実績、実際の発行部数、広告料金表、運営施設数を突き合わせているが、区分ごとの数字を会社の実績値と混同してはならない。
優良さと弱いところ
最大の堀、すなわち競争相手が容易にまねできない強みは、狭い地域を継続的に取材し、広告主と読者の双方に接してきた網である。35地区それぞれの人、自治会、学校、行政、商店の出来事を追うには、現場の人間関係と取材の積み重ねが必要だ。単に地域ニュースを自動生成するだけでは同じ情報源をすぐには確保できない。この資産は、行政や地域団体からの企画・運営案件にも生かせる。
ただし、その堀は料金を自由に上げられるほど強くない。広告の効果は、読者に届いた人数と顧客が得られた成果で判断される。新聞購読者が減れば折込媒体としての価値も下がり、比較対象にはGoogleやMetaの広告、検索広告、ポスティング、他の地域紙がある。公表料金表は単価の目安になるが、過去に物価を超える値上げを継続して通したという実績は確認できない。長年の地域ブランドだけで強い価格決定力を認定するのは危険だ。
業績の安定性には一定の証拠がある。2008年の金融危機や2020年の感染症流行でも営業黒字を維持し、2023年と2024年には営業利益率が15%台に達した。一方、2020年には4%台まで落ちており、広告需要が縮んでも編集・営業・管理部門の固定費が残ることが分かる。現在の利益率を10年間当然に維持できる会社ではない。
資本効率は見かけのROEだけでは捉えられない。2026年のROEは約8%だが、自己資本の中に多額の現金と純投資株式がある。本業に必要な資本だけを取り出せば事業の利回りは高いものの、利益を株主に返さず金融資産として積むほど全社ROEは薄くなる。過去10年で増えた自己資本に対する純利益増加額を粗く比べると、増分の利回りは7%台程度であり、資本コストを明確に上回る再投資実績とは言いにくい。
したがって堀の評価は「普通」とする。地域取材と営業網には価値が残るが、解約率、顧客単価の上昇率、デジタル媒体の継続利用率など、10年先の超過利益を強く裏づける開示が足りない。AIで制作費が下がる利益はあり得るが、その便益は競合や広告主にも及ぶため、会社だけの恒久的な利益として先取りしない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
紙媒体を取り巻く構造は厳しい。電通による2025年の国内フリーペーパー広告費は1,056億円で、前年比19.1%減少した。同じ年の新聞折込広告費も2,354億円へ減り、インターネット広告費は4兆459億円まで拡大している。紙からデジタルへの広告予算の移動は、単年度の景気変動ではなく、配布網と消費者行動の変化を伴う長期的な流れだ。
同社の紙面関連売上を分析上約27億円とすると、全国フリーペーパー市場の約2.6%に相当する。ただし同社の商品と業界統計の対象は完全には一致しない。神奈川県と対象の東京3市の人口比で全国市場を機械的に地域配分すれば、商圏の市場規模は約90億円、推計シェアは約3割となる。これは地域広告費の所得差や媒体構成を無視した粗い仮説で、公式シェアではない。県内の厳密な競合別シェアは確認できなかった。
紙の直接的な競争相手には地域新聞、リビング新聞などの無料媒体、地域別の配布広告がある。広告主の予算を奪い合う相手としてはGoogle、Meta、Yahoo!系広告の存在がさらに大きい。一方、超地域密着の記事や自治体・学校・地域団体との接点では同社に蓄積がある。業界が縮む中で弱い地域媒体が撤退すれば、残存事業者に出稿が集中する可能性もある。しかし、市場全体の縮小をシェア獲得だけで完全に埋められるとは見込まない。
デジタル広告の市場は大きいが、同社が全国の配信事業者と同じ規模で競争できるわけではない。自社媒体の価値は神奈川・東京多摩の地域情報に依存し、広告制作の価格には自動化による圧力がかかる。AI検索やAIエージェントによる記事の要約が一般化すれば、検索から自社サイトを訪れる人が減り、広告接触機会も失われ得る。全国の市場成長率を、そのまま同社のデジタル受注増加率には使わない。
公民連携の市場は異なる。総務省調査では2024年時点の指定管理者制度導入施設が全国で約7.9万施設あり、運営の担い手には民間企業も多い。同社が運営する3施設は全国では小さな存在だが、参入余地はある。ただし実際の競争相手は自治体ごとに異なり、文化施設の専門運営会社、財団、地元団体などと公募で競う。施設数の大きさは利益成長を保証せず、再受託できるかと人件費を価格に転嫁できるかが重要になる。
10年の中立では、紙広告の実質掲載数量が3割減る一方、デジタル自社媒体は減少が相対的に小さく、指定管理施設を2件増やす。全体の名目売上は現在より小幅に増えるが、印刷、配布、人件費の負担から営業利益はやや減る。この組み合わせが、人口減少と広告の媒体転換を同時に織り込んだ中心的な見通しである。
資本政策と M&A
経営の資本配分は、急拡大よりも無借金と安定経営を優先してきた。2018年には本社隣接地に江田第2ビルを整備し、2021年にはタウンニュース・ロコを完全子会社化した。2022年以降は公民連携事業を拡充し、秦野市文化会館、茅ヶ崎公園体験学習センター、小田原市民ホールの運営へ進んだ。大型の買収を繰り返す会社ではなく、既存の地域ネットワークから隣接事業を育てる傾向が強い。
第2次中期経営計画は2027年6月期に売上高44億円、営業利益7.5億円、経常利益7.85億円、純利益5.1億円、営業利益率17%を目指す。非紙面事業の売上目標は13.6億円で、売上構成比30.9%を掲げる。ただし2026年8月公表の直近の2027年6月期会社予想は売上高42億円、営業利益6.17億円、純利益4.55億円であり、中期計画の最終年度目標を下回っている。計画上の数値を達成済みの事実として扱わない。
還元方針は安定配当を基本とする。2026年6月期の配当総額は約1.21億円で、年間配当は前期から増額された。過去5年間も増配しているが、大規模な自社株買いによる株数減少は見られない。中期経営計画には配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い金額の定量的な約束がない。配当額の改善は評価する一方、余剰資本を効率的に減らす仕組みはまだ弱い。
大株主上位10名の保有割合は2026年6月時点で約81.8%に達し、筆頭のカネマスだけで約40.2%を持つ。光通信グループは同年10月の変更報告書で共同保有割合を12.3%へ引き上げた。資本効率改善への圧力になる可能性はあるが、公開買付けが決まったという意味ではない。TOBやMBOによる価値実現を中立の利益や株価に上乗せしていない。
2026年の貸借対照表には現預金約24.95億円、長期預金約4.35億円、投資有価証券約16.75億円がある。うち純投資目的の上場株式は時価約10.74億円で、評価益も相当額を占める。賃貸等不動産は簿価約1.90億円に対し開示時価約1.59億円で、隠れた不動産含み益は期待できない。今後も余剰現金を積み上げるなら、その資金をどの程度株主に戻すかが、事業成長以上に価値を左右する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
地域密着の取材網には、一般的なフリーペーパー以上の持続価値がある。神奈川県全域と東京多摩地域に35の異なる紙面を持ち、行政区ごとの細かな取材を続けられる会社は限られる。地元の顧客が地域の催事、住宅、医療、教育などを知らせる時、同社の編集・営業組織を使う利便性は簡単には失われない。紙媒体の市場が縮むほど小規模な競合が撤退し、残った広告主の出稿が同社に集まる可能性もある。
新しい成長の筋も既に見えている。秦野市文化会館、茅ヶ崎公園体験学習センター、小田原市民ホールでは、自治体が必要とする現場運営の実績を積み始めた。全国に多数ある指定管理施設のうち、神奈川周辺でさらに数件を獲得できれば、紙面売上の減少を埋める規模にはなる。自治体の企画案件や地域イベントを通じ、新聞広告の顧客関係が別の契約収入へ広がる点にも意味がある。
財務面の魅力はさらに大きい。借入金がなく、現預金と長期預金だけでも相当額を保有する。投資有価証券の時価にも価値があり、会社の時価総額のかなりの部分が換金性のある資産で裏づけられている。紙面が低成長でも本業の黒字が続き、蓄積する資金が配当や自社株買いへ回れば、資産と利益の両方が株主の取り分になる。紙面事業の成熟を理由に、その全てを低く評価する必要はない。
経営は過去に巨額の買収で資本を毀損したわけではなく、長年にわたり無借金を維持してきた。株主構成に変化が生じ、外部の大口保有者から資本効率改善を求められるなら、余剰現金の還元が早まる可能性もある。これは現時点で確約された還元ではないものの、事業の安定と財務の厚さを評価する余地を示している。
慎重な見方
紙面の堀は、読者に届く配布網と一体で縮んでいる。全国的に新聞購読は減り、折込配布に依存した地域情報紙も影響を免れない。同社も2026年には発行版と部数を見直しており、従来の形を維持することが最適とは言えなくなっている。高齢層への到達力が残っていても、広告主は新規顧客の獲得効率を求め、GoogleやMetaなどの広告へ予算を移す。価格表の引き上げだけで掲載件数の減少を補える証拠はない。
デジタルへの転換も簡単ではない。地域記事の検索流入はAIによる要約で減る可能性があり、広告制作、動画編集、ウェブサイト構築などはAIエージェントが人の作業を代替する。制作費を減らせても、同時に顧客が内製化し、受注単価が下がる。紙の売上を失った分が、そのまま利益率の高いデジタル売上に置き換わるという見方は楽観的だ。
公民連携は実際の施設運営を伴うためAIに全面代替されにくいが、契約は永久ではない。指定管理者の選定では競合との比較があり、更新に失敗すれば売上が一度に失われる。人員配置、設備保守、光熱費などのコストは下げにくく、賃金や物価が上がっても自治体から同じ比率の増額を得られるとは限らない。施設が増えて売上が伸びても、資本に見合う利益が残るとは限らない。
財務資産は安全域のように見えるが、少数株主にとっては換金できる時期を決められない。筆頭株主とその他の主要株主の持ち分が大きく、純投資株式を処分することも、大幅な自社株買いを行うことも外部株主には強制できない。株式市場で金融資産の評価損が発生すれば、帳簿上の厚さも損なわれる。紙面の営業赤字が数年続く場合には、現金が再編費用と固定費に使われてしまう可能性もある。
どちらに重みを置いたか
事業の構造変化については慎重な見方を重く採用する。紙の広告数量の長期減少、広告制作のAI代替、公共施設の契約更新リスクがあり、楽観とやや楽観の合計30%に対し、やや悲観と悲観の合計を37%とした。一方、地域の取材網と無借金の財務は実在する強みであり、事業がすぐに消えると決めつける理由もない。
評価を支えているのは、強気の成長予測ではなく、預金と純投資株式、今後積み上がる現金である。それらが実際に株主へ戻る割合を低めに見ても価値は現在の時価総額を約8.8%上回るが、判定は適正の範囲にとどまる。現金の使い方や指定管理事業の採算が少し違うだけで評価は変わる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,445 円80 億円(+ 還元の換算額還元の合計 200 円11 億円)。 今の値に割り戻すと 806 円44 億円、今との差 +13.5%、 期待の年率 +9.5%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 2,330 円129 億円 | 322 円18 億円 | +273.6% | +15.5% | 292 円16 億円 |
| やや楽観 | 19% | 2,063 円114 億円 | 272 円15 億円 | +228.9% | +13.8% | 444 円24 億円 |
| 中立 | 33% | 1,663 円92 億円 | 214 円12 億円 | +164.3% | +11.0% | 619 円34 億円 |
| やや悲観 | 25% | 711 円39 億円 | 141 円8 億円 | +20.0% | +2.0% | 213 円12 億円 |
| 悲観 | 12% | 589 円33 億円 | 62 円3 億円 | −8.4% | −0.9% | 78 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,445 円80 億円 | 200 円11 億円 | +131.8% | +9.5% | 1,646 円91 億円 |
今の株価時価総額 710 円39 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 11% 地域ブランドを多事業へ転換 利益 7 億円 · PER 12.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,330 円129 億円
地域の取材網が、公民連携と地元企業向けの総合的な情報サービスへうまく転換する。神奈川県の自治体との信頼関係を生かし、秦野、茅ヶ崎、小田原の既存施設を安定して運営しながら、周辺の文化施設や地域交流施設を新たに受託する。地元の催事や防災・教育関連の事業でも、新聞を通じて築いた顧客接点が受注につながる。
紙面では発行地区の統廃合を進めながら取材密度を高め、広告主に対する地域到達力を維持する。印刷と折込の数量が減っても、地域で存在感を保つために掲載枠の需要は大きく失われない。自社デジタル媒体は、検索サイトへの依存を減らし、メールやLINEなど直接届く読者を増やすことで広告の価値を守る。地域のニュースや施設案内をまとめる仕組みが定着し、紙とデジタルを組み合わせた販売が進む。
広告制作の仕事ではAIによって単純な編集作業が減り、同社も人件費を抑える。もっとも、広告主が自分で作れるようになる分だけ制作の数量は伸ばさない。事業の上振れを担うのは、現場で人と施設を動かす案件である。大規模な買収や株式希薄化に頼らず利益を伸ばし、増配を続けても資金が蓄積する。地域情報企業への転換が最も順調に進む10年となる。
- 地域情報紙・紙面関連広告:数量 28,500(年間の広告掲載枠件数相当(件、大小枠を混ぜた推定))× 価格 120,000(広告掲載1枠当たり実効料金(円、名目))→ 売上 34 億円・営業利益 6 億円。掲載数量は現在の95%、平均単価は1.33倍。残存競合の撤退と高付加価値枠への集中で紙面利益率を保つ。
- 自社デジタル媒体の広告:数量 1,400(年間のデジタル広告掲載・配信契約件数相当(件、推定))× 価格 156,000(契約1件当たり平均広告料(円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。AIによる流入減を直接配信で補うが、広告契約数量は現在を超えない。
- 広告制作・ウェブ制作・運用受託:数量 900(年間の制作・運用受託案件数相当(件、推定))× 価格 390,000(受託1件当たり平均売上(円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。制作件数は横ばい。AIによる効率化は競争の激化と相殺され、件数の上振れは見込まない。
- 指定管理・公民連携施設運営:数量 7.0(受託施設の年間運営件数相当(施設・年))× 価格 192,000,000(施設1件の年間売上相当額(円、名目))→ 売上 13 億円・営業利益 2 億円。指定管理・運営施設が7件へ増加し、案件規模も拡大。
- 地域イベント・企画・出版物・物販:数量 270(年間の地域企画・現場案件等価件数(件、推定))× 価格 2,740,000(案件1件当たり平均売上(円、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。現場型イベントや地域企画の契約が増え、固定費の効率も改善。
倍率:k8.0%、2036年以降の名目g0.5%、堀は普通で超過ROEの残存割合1/2。余剰現金48億円の税後利息相当0.672億円、純投資株式の税後配当0.190億円、賃貸利益の税後0.133億円を純利益7.03億円から控除すると事業純利益は約6.035億円。自己資本から余剰現金48億円、純投資株式約10.74億円、賃貸不動産簿価約1.90億円を除くと事業資本約37.36億円、事業ROE約16.2%。RONIC約12.1%から正当化PERは約12.79倍。事業価値に、余剰現金48億円×戻り方0.75、純投資株式の税後実現価値約8.68億円、賃貸不動産の価値約2.07億円を加える。余剰現金は10年間の利益留保と必要事業資本の増加を反映した2036年残高であり、自動積み上げとは重ねない。
確率:指定管理施設を現在の3件から7件へ広げながら、紙面広告の掲載件数もほぼ守る必要がある。両方の成功には相応の経営力が要るため、実現可能性を11%とする。AIを直接販売して大きな受注を得た証拠はなく、AI関連事業の成長を上振れ理由には使わない。
やや楽観 19% 紙の減少を非紙面事業が十分に補う 利益 6 億円 · PER 12.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,063 円114 億円
紙の広告事業は縮むものの、地域の取材と営業網が他の仕事を生む。現在の35地区版を効率的に再編し、読者への到達力が高い地区と企画特別号に経営資源を集中する。紙の広告掲載件数は現在より減るが、地域の店舗や法人に対する提案型営業によって、平均掲載単価は物価に近い水準まで上がる。
デジタル自社媒体は、検索からの流入が減る部分をメールやLINEによる直接配信で補う。記事を自社で取材できる強みが残り、広告主にとって使い続ける意味も保たれる。ただし制作・運用の受託ではAIエージェントによる競争が進む。売上は紙面からの転換だけでは増やせず、単純な広告制作の案件数は減少する。
公民連携は着実に広がる。秦野、茅ヶ崎、小田原の施設運営経験を評価する自治体が増え、周辺でさらに3件ほどの施設を受託する。地域の文化行事や記念事業でも仕事を増やし、非紙面事業が全社の成長を支える。大きな買収を行わずに現場事業を育て、利益の一部を安定配当として返しながら預金が増える。紙の会社という姿は薄れるが、地域情報と施設運営の会社として黒字を保つ。
- 地域情報紙・紙面関連広告:数量 26,000(年間の広告掲載枠件数相当(件、大小枠を混ぜた推定))× 価格 122,000(広告掲載1枠当たり実効料金(円、名目))→ 売上 32 億円・営業利益 5 億円。掲載件数約13%減、実効単価約36%増。地元取引の維持が前提。
- 自社デジタル媒体の広告:数量 1,360(年間のデジタル広告掲載・配信契約件数相当(件、推定))× 価格 153,000(契約1件当たり平均広告料(円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。自社媒体の広告契約は微減。直接配信が検索流入減を部分的に補う。
- 広告制作・ウェブ制作・運用受託:数量 750(年間の制作・運用受託案件数相当(件、推定))× 価格 380,000(受託1件当たり平均売上(円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。制作・運用件数は現在の83%、単価は1.27倍。
- 指定管理・公民連携施設運営:数量 6.0(受託施設の年間運営件数相当(施設・年))× 価格 180,000,000(施設1件の年間売上相当額(円、名目))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。既存案件を維持しながら3件増やす。入札価格への人件費転嫁は部分的。
- 地域イベント・企画・出版物・物販:数量 240(年間の地域企画・現場案件等価件数(件、推定))× 価格 2,650,000(案件1件当たり平均売上(円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。地域の現場案件が増加し、仕入れ・施工などの効率も改善。
倍率:k8.0%、g0.5%、堀の残存割合1/2。純利益5.84億円から余剰現金49億円の利息相当0.686億円、純投資株式の税後配当約0.190億円、賃貸の税後利益約0.133億円を除いた事業純利益は約4.831億円。自己資本92.7億円から金融資産・賃貸資産を除く事業資本は約31.06億円、事業ROE約15.6%。RONIC約11.8%から正当化PER約12.77倍を適用し、将来の余剰現金49億円×0.75、純投資株式の税後価値約8.68億円、賃貸資産約2.07億円を加える。現在の市場倍率は参照していない。
確率:既存3施設の運営実績と地域の営業網には次の受託へつながる可能性がある。ただし自治体の公募には競合が存在し、デジタル制作は価格競争も強い。紙面広告を維持しながら新規受託を積む確率を19%とした。
中立 33% 紙は縮小、施設運営は拡大、利益は微減 利益 4 億円 · PER 12.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,663 円92 億円
紙媒体の役割は残るが、現在の発行形態がそのまま続くわけではない。新聞購読世帯の減少が折込部数に影響し、企業の広告出稿も検索広告やSNSに向かう。発行地区を統合し、採算の良い広告枠と特別号に集中することで、平均掲載単価は名目で上がる。しかし広告の掲載数量は10年間で3割減り、紙面売上は現在より小さくなる。
ウェブ版やRareAでは地元情報を自ら取材できる利点が残るが、AI検索による要約や競争媒体への流出で広告接触数は減る。デジタル媒体の掲載契約数は現在の85%程度となる。ホームページ制作、動画制作、広告運用などの受託仕事ではAIエージェントが多くの単純作業を代替し、案件数は現在の65%まで減少する。制作単価は物価に近い水準で上がっても、総収益の大幅な成長にはつながらない。
一方、指定管理施設は3件から5件へ増える。実際に施設を開け、利用者に対応し、イベントを安全に運営する仕事は残る。地域の企画や現場イベントの受注も緩やかに増える。ただし自治体の価格改定は人件費上昇に追いつかず、施設運営の高い利益率を当然とは考えない。
10年後も全社は黒字を維持するが、売上の小幅増加ほどには利益が伸びない。大規模なM&Aや希薄化を伴う増資はなく、安定配当を続けた後の留保利益が預金として積み上がる。地域情報を軸とする会社として存続するものの、資本効率を改善するための還元が十分に強まらない10年となる。
- 地域情報紙・紙面関連広告:数量 21,000(年間の広告掲載枠件数相当(件、大小枠を混ぜた推定))× 価格 117,000(広告掲載1枠当たり実効料金(円、名目))→ 売上 25 億円・営業利益 3 億円。広告掲載数量は現在の0.70倍、価格は1.30倍。全国紙の購読減と印刷・折込費用を反映。
- 自社デジタル媒体の広告:数量 1,190(年間のデジタル広告掲載・配信契約件数相当(件、推定))× 価格 150,000(契約1件当たり平均広告料(円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。自社媒体の掲載数量は0.85倍、価格は1.25倍。AI検索による流入減を反映。
- 広告制作・ウェブ制作・運用受託:数量 585(年間の制作・運用受託案件数相当(件、推定))× 価格 390,000(受託1件当たり平均売上(円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替により案件数量0.65倍、価格1.30倍。長期gは0%。
- 指定管理・公民連携施設運営:数量 5.0(受託施設の年間運営件数相当(施設・年))× 価格 180,000,000(施設1件の年間売上相当額(円、名目))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。指定管理施設は5件。単価は1.20倍にとどまり、物価3%の全額転嫁はできない。
- 地域イベント・企画・出版物・物販:数量 220(年間の地域企画・現場案件等価件数(件、推定))× 価格 2,600,000(案件1件当たり平均売上(円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。現地イベント・物販の数量は1.10倍、案件単価は約1.30倍。
倍率:k8.0%、2036年以降のg0.5%、堀は普通で残存割合1/2。純利益4.04億円から、余剰現金51億円の税後利息0.714億円、純投資株式の税後配当約0.190億円、賃貸資産の税後利益約0.133億円を控除すると事業純利益は約3.003億円。自己資本88.5億円から余剰現金51億円、純投資株式10.74億円、賃貸不動産簿価1.90億円を除いた事業資本は約24.86億円、事業ROE約12.1%。RONICは8%+1/2×(12.1%−8%)で約10.0%、正当化PER=(1−0.5%÷RONIC)÷(8%−0.5%)=約12.67倍。事業価値に、将来余剰現金51億円×戻り方0.75、上場純投資株式の売却税後・還元調整済み価値約8.68億円、賃貸不動産約2.07億円を加える。株式や不動産の収益をPERと資産価値に二重計上しない。
確率:紙広告市場の縮小と、実績のある指定管理事業の追加受託をともに織り込んだ中心的な筋書き。地域ブランドの持続価値を認める一方、AIによる受託制作の置き換えを重要視し、最大の確率33%を配分する。
やや悲観 25% 紙の減少に非紙面事業が追いつかない 利益 2 億円 · PBR 0.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 711 円39 億円
新聞購読者の減少が想定以上に速まり、紙面の読者到達力が下がる。広告主は地域新聞よりも検索、地図、SNSなどで直接顧客へ届く方法を選び、紙の掲載件数は現在の半分近くまで減る。値上げによって売上減少の一部は補うが、印刷、編集、営業、折込の費用は同じ比率では下がらない。地域ブランド自体は残っていても、高い営業利益率を維持できなくなる。
自社デジタル媒体は、AI検索で記事を要約される機会が増え、広告主がサイト内の掲載契約を減らす。広告制作やウェブ制作では、顧客の内製化と低価格のAIツールにより案件数が減少する。制作を効率化しても、浮いた人員や共通費をすぐには削減できず、広告関連の利益は細る。
指定管理施設は現在の3件を概ね維持するが、新規獲得に失敗する。既存契約の更新では大手施設運営会社や地元の財団と競争し、委託料の増額が抑えられる。物価と人件費の上昇に対して利益率が低くなる。地域イベントや出版物の仕事も減り、全社の収益は大きく落ち込む。
会社は無借金を維持するものの、増配は止まり、既存の配当水準も段階的に見直す。紙面事業の縮小に伴う人員再配置や拠点整理で現金を使うため、資産の積み上がりは中立ほど大きくない。事業は黒字を保つが、稼ぐ力に対する評価は厳しくなる10年である。
- 地域情報紙・紙面関連広告:数量 16,500(年間の広告掲載枠件数相当(件、大小枠を混ぜた推定))× 価格 103,000(広告掲載1枠当たり実効料金(円、名目))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。広告掲載数量は0.55倍、単価は1.14倍。固定費が残り利益率低下。
- 自社デジタル媒体の広告:数量 1,050(年間のデジタル広告掲載・配信契約件数相当(件、推定))× 価格 138,000(契約1件当たり平均広告料(円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AI検索による流入減と地元広告主の離反が進む。
- 広告制作・ウェブ制作・運用受託:数量 510(年間の制作・運用受託案件数相当(件、推定))× 価格 345,000(受託1件当たり平均売上(円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。制作案件数量は現在の0.57倍。内製化と価格競争が進む。
- 指定管理・公民連携施設運営:数量 3.0(受託施設の年間運営件数相当(施設・年))× 価格 165,000,000(施設1件の年間売上相当額(円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。運営施設数は増えず、人件費上昇の転嫁も限定的。
- 地域イベント・企画・出版物・物販:数量 175(年間の地域企画・現場案件等価件数(件、推定))× 価格 2,300,000(案件1件当たり平均売上(円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。自治体企画や地域イベント案件の数が減り、採算が悪化。
倍率:紙面広告の掲載数量が縮み、10年後の営業利益は約2.03億円、純利益は1.56億円となる。純利益から将来余剰現金38億円の税後利息0.532億円、上場株の税後配当約0.190億円、賃貸の税後利益約0.133億円を除く事業純利益は約0.705億円であり、事業ROEは資本コスト8%に届かない。したがって受託・紙媒体の長期成長をPERで高く買わず、換金できる余剰資産の価値を中心とする。2036年の現金回収見込28.50億円、純投資上場株式の税後回収価値約8.68億円、賃貸等不動産の税後価値約2.07億円を合計した39.25億円を採用し、現在の自己資本約56.7億円で割ったPBR約0.692倍で表す。2036年の自己資本78.5億円に掛けたり、株式配当・賃料を資産価値に重ねたりしない。継続収益力の上限(純利益から現金利息を除いた約1.03億円×1÷kの12.5倍+現金回収見込28.50億円=約41.35億円)も超えず、現在・過去の市場PBRは根拠に使わない。
確率:下に寄せる理由:2026年の発行版・配布部数の見直し、国内フリーペーパー広告費の急減、会社の2027年予想が既存中計を下回る事実がある。指定管理の競争も考慮し、紙の利益減少を補えない確率を25%とする。
悲観 12% 紙媒体が競争力を失い、公共施設契約も縮小 利益 −1 億円 · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 589 円33 億円
紙面の配布網が大幅に縮小し、広告主に対する地域到達力が失われる。広告枠は大きく値上げできず、掲載件数は現在の3分の1程度になる。編集・営業拠点の統廃合に追われ、記事を発行し続けるだけでは費用を回収できない地区が増える。会社は紙の発行頻度を減らすが、地域ブランドの弱まりによって広告収入はさらに細る。
自社ウェブ媒体もAIによる情報要約と外部プラットフォームへの広告集中に押される。広告制作・ウェブ受託ではAIエージェントが標準的な作業をほぼ代替し、顧客は多くを内製化する。受注単価は名目でも現状に近い水準にとどまり、従来の人員体制を維持できなくなる。
自治体の施設運営では契約更新に失敗し、主な受託施設が2件まで減る。人件費と保守費用の上昇が委託料の改定を上回り、残る施設も赤字になる。現場イベントや地域商品の案件数も減り、各事業で共通費を吸収できなくなる。再編や人員削減の費用も発生し、全社営業利益は赤字に転落する。
それでも無借金で蓄積した預金と売却可能な有価証券が、会社の経済価値を下支えする。ただし金融資産の一部は損失補填や整理費用に使われ、配当は大きく削減される。10年後に優良な広告会社として評価される余地は乏しく、存続企業としての稼ぐ力ではなく、換金できる資産を中心に価値が決まる。
- 地域情報紙・紙面関連広告:数量 11,000(年間の広告掲載枠件数相当(件、大小枠を混ぜた推定))× 価格 92,000(広告掲載1枠当たり実効料金(円、名目))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。広告掲載数量は0.37倍。値上げがほぼ通らず、固定費を吸収できない。
- 自社デジタル媒体の広告:数量 750(年間のデジタル広告掲載・配信契約件数相当(件、推定))× 価格 123,000(契約1件当たり平均広告料(円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。自社媒体への流入と広告契約が減り、維持運用費を回収できない。
- 広告制作・ウェブ制作・運用受託:数量 400(年間の制作・運用受託案件数相当(件、推定))× 価格 280,000(受託1件当たり平均売上(円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替と顧客内製化が急進し、件数・単価とも弱い。
- 指定管理・公民連携施設運営:数量 2.0(受託施設の年間運営件数相当(施設・年))× 価格 145,000,000(施設1件の年間売上相当額(円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。指定管理を1件失い、残る施設も賃金と保守費上昇で赤字。
- 地域イベント・企画・出版物・物販:数量 120(年間の地域企画・現場案件等価件数(件、推定))× 価格 1,950,000(案件1件当たり平均売上(円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。地域企画の案件減少と固定費負担により赤字。
倍率:2036年の営業・純利益が赤字となるため、正当化PERによる継続収益価値は使わない。悲観時の換金可能資産約32.5億円を床とし、2026年時点の自己資本約56.74億円に対して約0.573倍となる価値を採用する。現在の株価や過去のPBRの谷から倍率を採っていない。2036年の帳簿自己資本にPBRを掛けて利益留保を重複計上せず、現金や株式の個別資産価値をPBRの価値にさらに足すこともしない。10年後の時価総額と期間還元の合計が現在の約39.64億円を下回ることを確認した。
確率:下に寄せる理由:新聞折込の構造的減少と広告制作のAI代替が重なり、さらに指定管理施設を失う複合的な失敗を想定する。現時点の無借金財務から倒産確率そのものは高くないが、2036年に稼ぐ力を失う確率は無視できず12%とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
地域情報紙・紙面関連広告
神奈川県と東京多摩の35地区版に広告枠を販売する。実際の地域取材と折込配布に支えられる自社媒体である。
| 数量年間の広告掲載枠件数相当(件、大小枠を混ぜた推定) | 価格広告掲載1枠当たり実効料金(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 30,000 | 90,000 | 27 | 5 |
| 10 年後 中立 | 21,000 | 117,000 | 25 | 3 |
取り方:会社開示は単一セグメントで、2026年の紙面実績売上と掲載枠数は非開示。第2次中期計画では2024年の紙面関連売上実績が28.95億円、2026年の計画値が29.45億円。2026年の全社売上39.87635億円と非紙面事業の拡大、実際の発行部数縮小を踏まえ、紙面売上を27億円と保守的に推定した。会社料金表では地区・サイズ別の広告料は数万円から100万円超まで幅がある。35版を年間約45回ずつ発行する概算約1575版号に対し、平均約19件の掲載枠相当、年3万件、実効平均9万円で27億円を組み立てた。件数と実効単価は開示実績ではなく推計である。全国フリーペーパー広告市場は2025年1056億円で、売上を単純比較した推計シェアは約2.6%。地域市場の公式シェアは未開示。営業利益は全社営業利益に一致するよう共通費を配分した分析上の推計である。出典:https://www.townnews.co.jp/business/price.pdf 、https://www.dentsu.co.jp/knowledge/ad_cost/2025/media4.html
自社デジタル媒体の広告
Web版タウンニュース、RareAなどの地域情報媒体における記事広告、バナー、デジタル配信の広告枠販売。
| 数量年間のデジタル広告掲載・配信契約件数相当(件、推定) | 価格契約1件当たり平均広告料(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 1,400 | 120,000 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1,190 | 150,000 | 2 | 0 |
取り方:自社ウェブ媒体だけの実績売上、PV、広告契約数は非開示。2026年の料金表ではWebタイアップ広告が11.1万円から、RareAのレポート広告が7万~10万円、バナー等が数万円からである。紙面とのセット販売を含む平均12万円の広告掲載・配信契約1400件相当として1.68億円を推定する。広告媒体としての読者基盤に価値がある『自社の媒体・プラットフォーム』型とし、広告制作の人月型とは区分した。2025年の全国インターネット広告費4兆459億円に対する比率はごく小さく、地元媒体に限定した正式な市場シェアは確認できない。出典:https://www.townnews.co.jp/business/price.pdf
広告制作・ウェブ制作・運用受託
ホームページ制作、動画撮影・編集、広告素材制作、デジタル販促支援など、人の制作工数が収益源になりやすい仕事。
| 数量年間の制作・運用受託案件数相当(件、推定) | 価格受託1件当たり平均売上(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 900 | 300,000 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 585 | 390,000 | 2 | 0 |
取り方:受託制作の件数・売上は独立開示されていない。会社料金表にある動画制作15万円から、ホームページ制作50万円からという水準と中期計画の制作・デジタル販促施策を参照し、大小を平均30万円の900件相当として推定した。AIエージェント代替では『広告の制作・運用』型とする。中立の2036年の件数を現在の0.65倍、単価を1.30倍とし、AIによる自動化、顧客の内製化、工数単価の下落圧力を数量に反映する。営業利益配分も推計。出典:https://www.townnews.co.jp/business/price.pdf
指定管理・公民連携施設運営
秦野市文化会館、茅ヶ崎公園体験学習センター、小田原市民ホールを中心とする公共施設の指定管理・運営。
| 数量受託施設の年間運営件数相当(施設・年) | 価格施設1件の年間売上相当額(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 3.0 | 150,000,000 | 5 | 0 |
| 10 年後 中立 | 5.0 | 180,000,000 | 9 | 1 |
取り方:2026年の有価証券報告書で確認できる主な運営施設3件を数量の起点とする。施設ごとの会社帰属売上、共同受託比率、利用料収入と指定管理料の区別は開示されていないため、平均年1.5億円は会社の開示単価ではなく、非紙面事業の残余売上からの推計である。全国の指定管理者制度導入施設は総務省の2024年調査で7万9332施設。現在の3件は全国で極めて小さく、地域内の施設別シェアは確認できない。現場の管理、人員配置、利用者対応が中心なので『現場の体』型とし、事務処理だけをAIの対象にした。出典:https://edinetdb.jp/company/E05576/text?fy=2026
地域イベント・企画・出版物・物販
自治体の企画案件、地域イベント、記念誌や自費出版、防犯防災関連商品の製作・販売など。
| 数量年間の地域企画・現場案件等価件数(件、推定) | 価格案件1件当たり平均売上(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 200 | 1,998,175 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 220 | 2,600,000 | 6 | 1 |
取り方:決算書ではイベント・物販・自治体企画の売上数量を分離していない。全社売上39.87635億円から、紙面27億円、デジタル自社媒体1.68億円、制作受託2.7億円、施設運営4.5億円を控除した3.99635億円を分析上この区分に配分した。200件は大小の企画を束ねた案件等価件数であり、会社開示の実受注件数ではない。平均約199.8万円という単価も残余売上からの推定である。現地開催、配布、物販を伴う部分を中心とし、純粋な制作工数の仕事はcreative区分へ分けた。全国イベント・展示・映像ほかの広告市場は2025年4748億円だが、同社の対象と一致せず、厳密なシェアは不明。出典:https://www.dentsu.co.jp/knowledge/ad_cost/2025/media4.html
リスクと懸念
新聞折込の縮小と広告掲載数量の減少
タウンニュースは購読料のかからない媒体だが、配布の大半を日刊紙への折込に頼る。新聞購読世帯が減れば発行・配布の効率が落ち、広告主に届く人数も減る。全国のフリーペーパー市場の縮小が続けば、地元での高い知名度があっても掲載件数の減少は避けにくい。紙面の価格を引き上げるだけでは、媒体価値の低下を埋め切れない可能性がある。
AI エージェント代替
広告制作、動画編集、ウェブ制作、広告運用は、顧客やAIエージェントが直接作業を実行できるようになる。受託制作は工数課金の価値が下がり、案件数が減少する。また自社ウェブ媒体もAI検索で記事を要約されると、広告の表示機会を失う。中立では制作受託数量を現在の65%、自社デジタル広告数量を85%としており、AIによるコスト削減益を別途上乗せしていない。
指定管理契約の更新失敗と価格転嫁不足
公民連携は実際の施設と人の運営が必要であるため、制作受託よりもAI代替への耐性がある。ただし自治体との契約は更新時に公募・審査が行われ、文化施設の専門運営会社や地元団体と競う。契約を1件失うだけでも、現在の施設運営の推計売上には大きな影響がある。物価や賃金が上昇しても契約金額を同じ割合で改定できなければ、売上増加が利益に結びつかない。
金融資産の評価損と現金の拘束
投資有価証券の中には純投資目的の上場株式が約10.74億円含まれる。時価の変動は自己資本に影響し、含み益の全てが今すぐ株主へ配れるわけではない。加えて預金は新規施設の立ち上げ費用、既存施設の維持、紙面事業の縮小費用などに使われ得る。本質価値では金融資産の税金と株主への戻り方を控除しており、帳簿上の金融資産を額面どおり全て加えることはしていない。
大株主への集中と少数株主の資本配分
2026年6月時点の上位10株主保有割合は約81.8%で、筆頭株主だけで約40%を占める。過去の増配は評価できるが、現時点で数値のある総還元方針や大規模な自社株買いの約束はない。多数の預金と純投資株式を低利回りで持ち続ける判断が変わらなければ、本業の利益率が高くても株主の利回りは下がる。外部株主による変更は期待できるが、確約ではない。
人件費・印刷費・拠点費用の固定負担
2026年の販売費及び一般管理費には給与・賞与・法定福利費・家賃などの継続費用が含まれ、紙面の売上が下がっても直ちに同じ比率では減らせない。印刷・折込は委託しているが、用紙代、配送費、人件費の上昇が費用へ波及する。2036年の損益は、既存設備の減価償却を単純に物価で増やさず、新規投資や設備更新の費用を事業ごとの利益率に反映している。新リース会計基準による表示変更も、現金支出を減らすわけではない。
今後の分かれ目
- 紙面の発行部数や広告掲載件数が毎年大幅に減り、値上げ後も紙面関連売上が継続して減少したら
- 中立の紙面広告数量をさらに下げ、やや悲観の比重を高める。特に地区版の統廃合後も営業利益が改善しない場合は、地域取材網の経済価値を見直す。
- 指定管理施設の更新を安定して勝ち取り、2027年以降も運営施設数が3件から5件以上へ増えたら
- 中立のPPP数量と利益を上方修正する。委託料の増加だけでなく、施設別の採算と人件費への価格転嫁が確認できた場合に限って、やや楽観の確率を引き上げる。
- デジタル媒体の直接配信読者や広告契約が継続して増え、検索流入への依存が下がったら
- AI検索の影響が比較的小さい自社媒体の数量見通しを上げる。ただしウェブ制作・広告制作の工数受託とは区別し、AIを理由にその数量まで拡大させない。
- 広告制作・ウェブ受託の売上が減る一方で、人員削減や受託価格の下落が先行したら
- AIエージェント代替による収益圧力が中立より深いと判断し、制作受託の数量・利益率をやや悲観へ寄せる。会社のAIツール導入自体は独立した成長の証拠としない。
- 特別配当や大規模な自己株買いが行われ、余剰資本の株主への還元が継続的に確認できたら
- 余剰現金の戻り方を0.75から1.0へ見直す余地が生じる。本質価値の改善は事業成長ではなく、資本配分の改善として明確に区別する。
- 保有上場株式に大きな評価損が生じる、または施設運営の赤字補填に現金を使い続けたら
- 余剰資産の実現価値と悲観の資産の床を引き下げる。財務が無借金であるという事実だけで、安全域を据え置かない。
見ておくもの
- 発行地区数、総折込部数、配架部数、紙面発行頻度の推移
- 紙面関連売上と非紙面売上の実績構成比、会社中期計画との差
- 紙面広告の実効掲載単価と広告掲載件数の開示の有無
- Web版タウンニュース、RareA、LINE等の直接配信読者と広告契約の推移
- 指定管理施設の件数、契約更新時期、委託料改定、施設別の採算
- 広告制作・ウェブ受託の案件数と粗利益率、AI利用による価格への影響
- 現預金、長期預金、投資有価証券、純投資株式の評価損益
- 年間配当、自社株買い、発行済株式数と自己株式数
- 光通信グループの共同保有割合と大株主による資本政策の提案
- 第2次中期経営計画最終年度の売上高44億円・営業利益7.5億円の達成状況
倍率と資本コストの決め方
基準時点の時価総額は718円×552万623株で約39.64億円。10年後の売上は、会社が開示する紙面・非紙面の中期計画区分を出発点に、地域紙広告枠、自社デジタル広告、受託制作、公民連携施設、地域案件の数量と名目価格を別々に積んだ。実績の区分別売上は未開示であるため、2026年全社実績との一致は確認したが、区分の数量と平均単価には推定誤差がある。
楽観から中立のPERは、k8.0%、2036年以降の名目g0.5%、事業のROE、超過利益の残存割合1/2から決めた。中立は事業純利益約3.00億円、事業資本約24.86億円からRONIC約10.0%、正当化PER約12.67倍となる。現在のPER・PBRや同業の市場倍率は使っていない。余剰現金は将来の事業資本必要額と留保利益から算出し、筋書きに明示したため、自動積み上げとは重複させない。
楽観から中立のPER法では、純投資株式と賃貸不動産から生じる利益をPERの対象から除き、別に資産価値を加えた。やや悲観では事業ROEが資本コストを下回るためPER法をやめ、将来の余剰現金の回収分と売却可能な株式・賃貸不動産の税後価値を合算した39.25億円を採用した。その額を現在の自己資本約56.7億円で割ったPBR約0.692倍で表し、将来の自己資本78.5億円には掛けない。現金と資産を含む値は継続収益力による上限約41.35億円も下回る。保有金融資産を満額の株主価値とはせず、含み益課税と株主への戻り方を控除している。現在株価が2倍でも半分でも、事業の数量・単価、資本コスト、還元の見込みが変わらなければ本質価値は動かない。最も悪い悲観では現在の換金可能資産に基づく床を用い、10年後時価総額約32.51億円が床約32.5億円を下回らないことと、期間還元を加えても現在時価総額を超えないことを検算した。日本基準の新リース会計導入後も、10年後の損益は家賃を営業費用に含む現行基準と同じ経済的な形で比較している。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%による基本7.5%に、広告主に対する値決め力の弱さ0.5%を加える。無借金であり、財務の存続を理由とした特別な上乗せは行わない。