結論
極楽湯ホールディングスは、スーパー銭湯の「極楽湯」と、駅近の「RAKU SPA」を運営する会社である。国内に直営 30 店とフランチャイズ 10 店、海外に 11 店を持つ。
筆者の結論は、10 年の本質価値が今の時価総額を大きく下回る、というものだ。2026 年 3 月期の営業利益 12 億円は、上場以来の最高だった。営業利益率 7.6% は、コロナ前の最高の 4.8% を大きく超えている。この水準を 10 年保てるかが、すべての分かれ目になる。
強みは、客を呼ぶ工夫にある。アニメや Vtuber とのコラボイベントと、段階的な値上げで、客数を大きく減らさずに単価を上げた。借入金も、営業のお金で 10 億円返した。
弱みは、設備が重いことだ。建物は取得価格の 63% がすでに償却済みで、更新の投資が続く。2026 年 3 月期の投資は 20 億円と、償却費の 3 倍近い。物価で建築費が上がれば、この負担はさらに重くなる。
家賃の固定費と資産除去債務 23 億円も抱える。景気や集客が崩れたとき、固定費が残る構造は、コロナ禍の赤字で実際に起きた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「再生した事業」であり、「優良な事業」とはまだ言えない。直近 3 期の利益は力強いが、その前の 4 年間は赤字だった。景気に左右される施設事業で、固定費が重いことが、その差をつくった。
株主に残る利益(オーナー利益)は、純利益 9 億円より少ない。稼いだお金の多くを、更新と新店に使わなければ、施設が古びて客が離れるからだ。2026 年 3 月期の投資は 20 億円で、営業のお金 13 億円を上回った。
評価できる点は、集客と値上げの力だ。コラボで客を呼び、値上げで客数を保つ運営は、堀と呼べるほど強くはないが、本物の技術だ。
安全域は薄い。今の時価総額は、最高益の 17 倍にあたる。10 年の利益の伸びは、物価の分が大半で、投資の負担で現金は細る。持ち続けたい会社かと問われれば、今の値段では待ちたい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎは、温浴施設の入館料と、館内の飲食・物販・サウナなどの売上である。単一の事業で、2026 年 3 月期の売上は 162 億円だった。
店は 3 つの型に分かれる。1 つ目は郊外の大型スーパー銭湯の「極楽湯」で、岩盤浴・食事処・イベントを備える。2 つ目は駅の高架下などに出す「RAKU SPA」で、JR 東日本との協業の武蔵小金井が 2025 年 12 月に開いた。初期投資を分け合って抑えた形だ。3 つ目はフランチャイズ店で、ブランドと運営の支援を売る。海外は 11 店で、グループが直接運営している。
客を呼ぶ仕掛けは、アニメ・Vtuber とのコラボイベントと、店ごとの風呂・サウナのイベントだ。入館料は店ごとに利用データを見て、段階的に上げてきた。会社によると、値上げ後の客数の減りは極めて限られる。
数量は来館者数、価格は客単価で決まる。来館者数は、立地と新店の数に左右され、人口の減る地方では細りやすい。会社は全国 60 店舗体制を掲げ、2027 年春に足立区で「RAKU SPA 足立江北」を開く。従業員は正社員 188 名とパート 891 名で、最低賃金の上昇が費用を直接押し上げる。
優良さと弱いところ
強みは、集客の工夫とデータで値上げの幅を決める運営だ。直近 3 期は営業利益が 8 億円、11 億円、12 億円と伸び、営業利益率も 5% 台から 7% 台に上がった。借入金は 2 年で大きく減り、自己資本比率は 27% から 35% に戻った。
弱みは 3 つある。1 つ目は、設備が古いことだ。建物と構築物は取得価格 147 億円のうち 92 億円が償却済みで、更新の時期に入っている。2 つ目は、固定費の重さだ。多くの店を借りて営むため、家賃は売上が落ちても減らない。さらに退店時の原状回復の費用が、資産除去債務として 23 億円ある。3 つ目は、過去の傷だ。2020〜23 年は 4 期続けて営業赤字で、自己資本が一時マイナスになった。利益剰余金はいまも 57 億円の赤字だ。
経営は、借入金の返済を優先し、配当は最小限の復配にとどめた。慎重な資本配分と言える。ただ成長の資金を新店と更新に回すと、現金が細る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
スーパー銭湯の市場は、人口の減る国内で数量の伸びにくい成熟した市場である。来館者数は、景気よりも天候・光熱費・店の鮮度に左右される。業界全体は、コロナ禍で打撃を受けたあと、値上げと体験の高付加価値化で回復した。
競争相手は、大江戸温泉物語や万葉倶楽部のような大型の温浴チェーン、地域の独立系のスーパー銭湯、サウナを売りにする新しい施設だ。近年はサウナブームで、若い客層が増えた。極楽湯はコラボイベントで、その客層を取りに行っている。
費用の面では、光熱費と最低賃金の上昇が最大の重しだ。会社は 2027 年 3 月期の業績予想を、エネルギーと原材料の不確実性を理由に出していない。ガスや電気の価格が上がれば、すぐ利益に響く。
構造の変化は 2 つある。第一に、駅近・都心の小型店の型が広がる。これは立地の賃料は高いが、集客の安定が期待できる。第二に、設備の更新が業界全体で必要になっている。建築費が物価以上に上がる中、更新を先送りした店は廃業に追い込まれる。
スーパー銭湯は、移動の手段に左右される。郊外の店は車での来館が前提で、ガソリン価格や人口の高齢化が来館頻度に響く。都心の駅近の店は、それを避けやすい。
資本政策と M&A
会社は、2026 年 3 月期に 7 期ぶりに復配した。配当は総額 1.9 億円で、純利益の約 2 割にあたる。2027 年 3 月期も同額の予定だ。自社株買いの実績はない。
財務は改善した。長期借入金は約 25 億円まで減り、現金は 15 億円ある。ただ投資が先行し、現金は 1 年で 14 億円減った。2025 年 6 月には資本金と資本準備金を取り崩し、欠損を埋めた。これは見かけの整理で、利益の積み上がりを意味しない。
株主は、ミライニホン・アセットマネジメントと中国系の投資会社が、それぞれ 9% を超えて持つ。新株予約権の行使で、発行済み株式は 1 年で約 1% 増えた。
株主優待は、年 1 回の入館券で、電子化された。費用は開示されていないが、入館券の変動費が中心で、年 1 億円を下回るとみる。買収の歴史は目立たず、出店は自社のお金と借入、JR 東日本のような提携で進める。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
営業利益は 3 年で 8 億円から 12 億円に伸び、営業利益率は 7.6% と過去の最高を更新した。値上げ後も客数はほとんど減らず、段階的な値上げの余地は残っている。コラボイベントは新しい客層を呼び、店ごとのイベントが地域の客を捉える。
新店の型が変わったことも大きい。JR 東日本との協業の武蔵小金井は、初期投資を抑えて駅前の好立地を取った。足立区の新店も同じ型で、会社は全国 60 店舗を目指す。今は国内に 41 店ほどなので、2 割近い店舗増になる。
財務の改善も進んだ。借入金は 2 年で大きく減り、利払いは軽くなった。7 期ぶりの復配は、会社が財務の傷を癒したことの表れだ。
サウナブームと体験型の消費が続けば、客層が広がり、単価もさらに上げられる。固定費を新店の増収で吸収できれば、営業利益率は 8% 台に乗る。
費用の面でも、再生可能エネルギーの導入や設備の省エネ投資で、光熱費の上昇を抑える手がある。更新のたびに設備が新しくなるので、集客の鮮度も保てる。
慎重な見方
営業利益率 7.6% は、コロナ前の最高 4.8% を大きく超えた水準で、構造が変わったと言い切るには、期間が短い。2020〜23 年に 4 期続けて営業赤字だった記憶は新しい。景気の悪化や感染症が来れば、固定費の重さがまた利益を消す。
設備の更新が重い。建物の 63% が償却済みで、更新の投資は 2026 年 3 月期に 20 億円と、償却費 7 億円の 3 倍近い。建築費は物価以上に上がっており、同じ店を建て直すには今より高いお金がかかる。減価償却は取得時の値段のままなので、会計の利益は更新の負担を映していない。現金は 1 年で 14 億円減った。
固定費も重い。多くの店が賃借で、家賃と資産除去債務の約束が残る。人口の減る国内で、来館者数の自然な伸びは見込めない。
今の時価総額は最高益の 17 倍で、物価並みの成長を前提にしても、10 年後に追いつかない。
サウナブームで競合の新規出店も増えている。小型で安価な施設が増えると、スーパー銭湯の値上げ余地は狭まる。
どちらに重みを置いたか
強気の主張は、直近 3 期の利益の伸びと新店の型の変化に根拠がある。ただ 10 年の価値は、利益率が 7% 近くを保てるか、更新の投資の負担を価格で吸収できるかで決まる。更新の負担と固定費の重さが 10 年を通じて効くと見て、慎重な主張の方が重いと判断した。
確率は中立に 35%、やや悲観を 25%、悲観を 12% と、悲観側を少し厚くした。楽観は 8% にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 526 円167 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 96 円31 億円)。 今の値に割り戻すと 303 円96 億円、今との差 −40.0%、 期待の年率 +2.1%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,032 円328 億円 | 173 円55 億円 | +138.5% | +9.1% | 96 円31 億円 |
| やや楽観 | 20% | 790 円251 億円 | 132 円42 億円 | +82.6% | +6.2% | 184 円59 億円 |
| 中立 | 35% | 630 円200 億円 | 110 円35 億円 | +46.6% | +3.9% | 259 円82 億円 |
| やや悲観 | 25% | 225 円72 億円 | 63 円20 億円 | −43.0% | −5.5% | 72 円23 億円 |
| 悲観 | 12% | 73 円23 億円 | 16 円5 億円 | −82.5% | −16.0% | 11 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 526 円167 億円 | 96 円31 億円 | +23.3% | +2.1% | 622 円198 億円 |
今の株価時価総額 505 円161 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:出店が 60 店舗体制に近づき、利益率が 8% に乗る 利益 20 億円 · PER 15.7 倍 · 株価時価総額 1,032 円328 億円
JR 東日本との協業の型が広がり、駅近の小型店が国内で増える。来館者数が実質で 1.5 倍に近づき、全国 60 店舗体制が現実になる。サウナと体験型の消費が続き、段階的な値上げは客数を減らさずに通る。コラボイベントは新しい客層を取り続ける。規模が増えて、固定費を吸収する効果で営業利益率は 8% に乗る。減価償却は、新しい店の分だけ増えて 15 億円ほどになるが、増収が吸収する。借入金は返し終え、配当は利益の 3 割近くまで上がる。それでも、更新の投資は毎年続き、現金の余力は限られる。サウナを軸にした若い客層の取り込みが続き、平日の稼働も上がる。
- 温浴施設(直営・FC・海外):数量 12.8(来館者数(百万人・推定))× 価格 27(1 人あたり売上(億円/百万人。入館料と館内の飲食・物販を含む))→ 売上 341 億円・営業利益 27 億円。来館者 12.8 百万人。営業利益率 8%
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.7% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 12.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.7 倍。全体の PER 15.73 倍、時価総額 308 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:全国 60 店舗への出店が進み、値上げも通り、コラボの集客が続く必要がある。更新の投資と固定費の重さを考えると、同時に起きる確率は低い。
やや楽観 20% やや楽観:新店が増え、利益率が 7% 台で定着する 利益 15 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 790 円251 億円
RAKU SPA の型で年 1〜2 店のペースで出店が続き、来館者数は実質で 3 割増える。値上げは物価をわずかに上回って通り、コラボとサウナの客層も定着する。営業利益率は 7% 台前半で安定する。減価償却は新しい投資の分だけ増えて 13 億円ほどになる。更新の投資は建築費の上昇で膨らむが、営業のお金で賄える。借入金は返し終え、配当は利益の 3 割まで上がる。ただ設備の古さは残り、更新のたびに現金が出ていく。海外の店は横ばいで、国内が利益を支える。ただ、立地の古い郊外店の入れ替えは先送りされ、投資の優先順位が経営の課題になる。
- 温浴施設(直営・FC・海外):数量 11.1(来館者数(百万人・推定))× 価格 26(1 人あたり売上(億円/百万人。入館料と館内の飲食・物販を含む))→ 売上 287 億円・営業利益 21 億円。来館者 11.1 百万人。営業利益率 7.4%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.8% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 11.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍。全体の PER 15.04 倍、時価総額 227 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近 3 期の利益の伸びが続き、値上げと新店の型が成功する姿は十分にありうる。更新の投資を価格で吸収できる前提で、中立の上に置いた。
中立 35% 中立:新店は少しずつ増えるが、利益の伸びは物価並みにとどまる 利益 12 億円 · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 630 円200 億円
国内で新店を少しずつ増やし、全国で 50 店ほどになる。人口減で既存店の客は細るが、新店の客がそれを上回り、来館者数は実質で 1.15 倍になる。入館料は物価並みに上がり、光熱費と賃金の上昇も同じ率で吸収する。減価償却は、今ある設備の分が少しずつ減り、新しい投資の分が積み上がって、10 年後に 12 億円ほどになる。売上比では 4.4% から 5% に上がり、営業利益率は 6.9% に落ち着く。更新と新店の投資は毎年 15〜18 億円と、営業のお金をほぼ使い切る。借入金は返せずに残り、配当は利益の 3 割にとどまる。大きな成長も大きな失敗もない 10 年になる。海外の店は横ばいで推移する。
- 温浴施設(直営・FC・海外):数量 9.8(来館者数(百万人・推定))× 価格 25(1 人あたり売上(億円/百万人。入館料と館内の飲食・物販を含む))→ 売上 250 億円・営業利益 17 億円。来館者 9.8 百万人。営業利益率 6.9%
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.0% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.6 倍。全体の PER 14.58 倍、時価総額 175 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業利益率は過去の山 7.6% を下回る 6.9%、来館者数は新店で実質 1.15 倍、価格は物価並み。更新の投資の負担を織り込んだ、最も重い筋書き。
やや悲観 25% やや悲観:光熱費と賃金の上昇を転嫁できず、利益率が 4% 台に戻る 利益 6 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 225 円72 億円
コラボと値上げの効果が一巡し、客数が少しずつ減る。光熱費と最低賃金の上昇を価格に乗せきれず、営業利益率は 4% 台に下がる。新店は年 1 店ほどにとどまり、既存店の客の減りを補えない。更新の投資を後回しにした店で、客が離れる。減価償却は現状から増えて 10 億円ほどになる。借入金の返済が進まず、利払いが 3.5% に上がって利益を削る。配当は小さいまま。固定費の重さが、利益の変動を大きくする。人口の減る地方の店から、閉鎖が始まる。店舗の入れ替えと不採算店の閉鎖で、減損が出る年も続く。会社は更新の投資を絞って現金を守るが、設備が古びて客の足がさらに遠のく悪循環に入りかける。
- 温浴施設(直営・FC・海外):数量 8.4(来館者数(百万人・推定))× 価格 24(1 人あたり売上(億円/百万人。入館料と館内の飲食・物販を含む))→ 売上 204 億円・営業利益 9 億円。来館者 8.4 百万人。営業利益率 4.5%
倍率:事業の ROE 約 5.6% は k 8.25% 以下なので、利益が伸びても価値は増えず、正当化 PER の上限は 1÷k = 11.8 倍。稼ぐ力が落ち、利益の質も低い。9.0 倍に置いた。
確率:営業利益率はコロナ前の最高 4.8% の水準で、コラボと値上げの効果が一巡する姿は十分にありうる。悲観側を少し厚くした。
悲観 12% 悲観:景気後退や感染症で固定費が重くのしかかり、赤字が続く 利益 −5 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 73 円23 億円
感染症や景気の後退で来館者数が 4 分の 1 減り、値上げもできなくなる。家賃と資産除去債務の約束は残り、固定費が利益を飲み込む。光熱費は上がり続け、更新の投資も止まって設備が古くなる。営業利益は赤字になり、不採算店の閉鎖と減損が続く。借入金の返済に窮し、増資や金融支援を受ける局面も出る。配当は止まる。残る価値は、土地と一部の建物、保証金に近い、もう優良ではなくなった 10 年になる。自己資本は一時ほぼ消え、上場の維持も問われる。従業員の離職も進み、残った店の運営水準も落ちる。店舗網を半分近くに縮めても、残る店の固定費を払いきれず、事業の整理が続く。
- 温浴施設(直営・FC・海外):数量 6.4(来館者数(百万人・推定))× 価格 22(1 人あたり売上(億円/百万人。入館料と館内の飲食・物販を含む))→ 売上 144 億円・営業利益 −3 億円。来館者 6.4 百万人。営業利益率 -2%
倍率:赤字の筋書きなので、売れる資産で測る。土地 19 億円、閉店時に売れる建物と設備の一部、保証金 10 億円、現金を合わせて約 59 億円あるが、借入金 25 億円・資産除去債務 23 億円・前受金 9 億円を差し引くと残りは小さい。今の自己資本 46 億円の 0.5 倍に置いた。
確率:2020〜23 年に営業赤字が 4 期続き、自己資本が一時マイナスになった実績がある。同じ型の事象が再び起きる余地を 1 割残した。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
温浴施設(直営・FC・海外)
スーパー銭湯の「極楽湯」と駅近の「RAKU SPA」を、国内の直営・FC と海外で運営する。単一のセグメント。
| 数量来館者数(百万人・推定) | 価格1 人あたり売上(億円/百万人。入館料と館内の飲食・物販を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.6 | 19 | 163 | 12 |
| 10 年後 中立 | 9.8 | 25 | 250 | 17 |
取り方:来館者数は開示がない。連結売上 162.46 億円(決算短信)を、1 人あたり約 1.9 千円と置いて割り戻した推定で、約 855 万人。海外店とフランチャイズの収入も含む混合の値。営業利益 12.37 億円は決算短信。減価償却は 7.15 億円で、取得価格のまま。
リスクと懸念
更新投資の負担と建築費の上昇
建物と構築物は取得価格 147 億円の 63% が償却済みで、2026 年 3 月期の投資 20 億円は償却費 7 億円の約 3 倍。建築費が物価以上に上がると、同じ店の建て直しにより多くの現金が出る。会計の利益より、現金の余力が先に細る。
固定費と景気・感染症への弱さ
2020〜23 年に営業赤字が 4 期続き、自己資本が一時マイナスになった。多くの店が賃借で家賃は減らず、資産除去債務も 23 億円ある。集客が落ちたときの傷は深い。
光熱費と最低賃金の上昇
会社は 2027 年 3 月期の予想をエネルギーと原材料の不確実性を理由に出していない。ガス・電気の価格が上がる、または最低賃金が年 5% 以上上がると、値上げで吸収しきれない。
高い利益率が続くかどうか
営業利益率 7.6% はコロナ前の最高 4.8% を大きく超える。コラボと値上げの効果が一巡すれば、客数が減り、利益率が戻る可能性がある。
新店の立ち上がりとカニバリ
新店は開業費が先に出る。足立江北のような都心の店は賃料も高く、既存店の客を奪うこともある。全国 60 店舗体制に向けた出店の質が、利益の伸びを決める。
希薄化と株主構成
新株予約権の行使で、株数は 1 年で約 1% 増えた。上位の株主が 9% 台の持株を 2 者持ち、売却や追加の取得が株価に影響する。
今後の分かれ目
- 2027 年 3 月期の営業利益が 14 億円前後で着地し、営業利益率が 8% を超える
- 値上げとコラボの効果が定着し、やや楽観に近づく。
- 光熱費の上昇や賃金の上昇を価格に乗せきれず、営業利益率が 6% を割る
- 中立の前提が崩れ、やや悲観に近づく。更新投資の現金が借入で賄われる。
- 全国 60 店舗体制に向けて出店が年 3 店以上のペースになる
- 来館者数が伸び、楽観に近づく。ただ投資の現金は重く、配当は増えにくい。
- 感染症や自然災害で、数か月の休業を迫られる
- 固定費が残り、悲観に近づく。コロナ禍のような赤字が再び出る。
- 配当性向を 4 割以上に引き上げる方針が示される
- 財務の傷が癒えた確認になり、評価の見方がやや強まる。ただ更新投資が続く限り、現金の余力は限られる。
- 上位の株主が持株を売る、または TOB が出る
- 買い付けに上乗せが付く可能性があるが、本質価値は動かない。
見ておくもの
- 営業利益率(7.6% を保てるか)
- 来館者数と客単価の内訳
- 更新・新規投資の額と現金の推移
- 光熱費の動きと価格への転嫁
- 足立江北など新店の立ち上がり
倍率と資本コストの決め方
来館者数と客単価(名目)を置いて 10 年の利益を積み、費用を減価償却とそれ以外に分けた。減価償却は今 7.2 億円で取得価格のまま、新しい投資の分だけ増えて 10 年後に 12 億円ほど(売上比 5%)。それ以外の費用は物価で一律に増やした。中立の営業利益率 6.9% は、過去 12 年の山 7.6% より低い。資本コストは基本 7.5% に quality +1.0% を足した 8.5%。ROE が k を上回るので、中立の PER は 1÷k を下回らせない。今の PER・PBR は使っていない。賃借の店舗の家賃は固定の約束で、新リース会計基準(2028 年 3 月期から)で BS の形が変わるが、10 年後の数字は家賃を営業費用に入れた今と同じ形で置いた。純現金は見かけほど強くない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.8→15.73 倍・やや楽観 PER 12→15.04 倍・中立 PER 11.8→14.58 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.0% を足した 8.5%。主要株主の動きや新株予約権の行使は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.25%。