結論
トスネットは、仙台を本拠に東北と首都圏で警備を請け負う会社だ。売上の 6 割は工事現場の交通誘導で、施設警備とイベントの電源車が残りを支える。筆者の結論は、今の値段はおおむね適正というものだ。
目を引くのは現金だ。純現金は約 50 億円で、時価総額の 7 割にあたる。本業の値段はほぼ無料に見える。しかし、その本業の稼ぐ力が細っている。2026 年 9 月期は営業利益が 4 割減る見込みで、警備は人件費の上昇に値上げが追いつかない。
警備は人を集めて送り出す商売だ。警備員の半分は 60 歳以上で、人手不足は値上げの追い風にも、稼働の天井にもなる。10 年で見ると、警備料は物価より速く上がるが、その多くは警備員の賃金に消えると筆者は見る。
現金は創業者と経営陣が 4 割近くを持つ会社の中にあり、戻ってくるのは一部だ。現金を差し引いても、本業に払う値段に安全域は乏しい。現金が株主に戻る道筋が見えた時に、初めて評価は変わる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、現金の厚さに目を奪われないことが大事だ。時価総額の 7 割が現金なら、本業はただに近い。だが株主が受け取れるのは、会社が配当や自社株買いで戻した分だけだ。
この会社は 10 年間、利益の 7 割前後を手元に残し、現金を積んできた。経営陣が 4 割近くを持つ以上、その流れが急に変わるとは考えにくい。現金は事業の安全網にはなるが、少数株主の取り分としては割り引いて見るべきだ。
本業は、人を集めて現場に送る仕事で、値段は国の労務単価と客との交渉で決まる。人手不足は値上げの理由になるが、賃金も同じだけ上がる。2026 年 9 月期の大きな減益は、取り分を守る力の弱さを示した。
筆者は、この会社を潰れにくい会社だと見る。ただ、資本コストを超えて稼ぐ会社ではない。現金を割り引いて足しても、今の値段に厚い安全域は見えない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は警備で、売上の 9 割近くを占める。中身は三つある。最も大きいのが、道路や建設の工事現場で車と人を誘導する交通誘導警備で、ゼネコンや道路工事の会社から請け負う。次が商業施設や病院、官公庁の施設警備で、首都圏で伸ばしている。鉄道の線路工事で列車の接近を見張る列車見張り警備も手がける。
稼ぎ方は単純だ。警備員を 1 日いくらで現場に出し、その日当と会社の取り分を合わせて請求する。だから売上は「出した人の数 × 1 人 1 日の値段」で決まる。人を集める力が、そのまま売上の天井になる。
もう一つの柱が電源供給だ。コンサートやイベント、テレビの中継、停電工事に電源車と仮設電源を出す。売上は 12 億円ほどだが、利益率は 3 割近くと高く、全社の営業利益の半分以上を稼ぐ年もある。
この数年は、宮城のアイワ警備保障や首都圏の会社を買って地盤を広げる一方、郵便の取次のメーリングジャパンを売り、ビルメンテナンスの子会社を清算した。警備と電源に絞り込む流れだ。グループは 17 社ほどあり、地域ごとの警備会社を束ねる形をとる。
優良さと弱いところ
優良さは普通より下と筆者は見る。警備は免許が要るとはいえ、全国に 1 万を超える業者がいる。交通誘導は値段の比べやすい仕事で、セコムや ALSOK のような機械警備の契約の積み上げも無い。
強みは地盤の厚さだ。東北で長く工事現場を回してきた実績と、列車見張りのような資格の要る仕事を持つ。震災の復興工事では人を出せる会社として重宝された。電源供給は、電源車と運ぶ人の両方が要り、まねされにくい小さな堀がある。
弱みは人だ。警備員の高齢化が進み、若い人が集まりにくい。最低賃金と公共工事の労務単価が上がるたびに、値上げを客に通せるかで利益が決まる。2026 年 9 月期の減益は、その綱引きに負けた形だ。
資本の使い方は保守的だ。現金は 10 年で 1 億円台から 50 億円近くに積み上がった。配当は増えたが、性向は 2〜3 割にとどまる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
警備業の市場は約 3.4 兆円で、業者は 1 万を超える。需要は底堅い。工事現場には法令で交通誘導の警備員を置く決まりがあり、インフラの老朽化の補修や防災の工事も続く。施設警備も、防犯の意識の高まりで減りにくい。
問題は人の供給だ。警備員の半数は 60 歳以上で、毎年多くが引退する。若い人は建設や物流と取り合いになり、賃金を上げなければ集まらない。国が決める公共工事の労務単価は毎年上がり、警備料もそれに沿って上がる。ただし上がった分の多くは賃金に回り、会社の取り分は大きくは増えない。
10 年で見ると、交通誘導の数量は細る方向だ。建設の数量は人口とともに減り、片側交互通行を信号機や AI のカメラで誘導する機械も出てきた。トスネットのグループも 2026 年に「AI 保安警備」を始めたが、これは人を減らす道具でもある。
施設警備は機械警備と組み合わせる形に移り、セコムや ALSOK の網が強い。中堅の警備会社は、人を出す仕事の中で単価を上げられる分野を探す競争になる。業界は中小の再編が続き、トスネットも買う側に立ってきた。
資本政策と M&A
配当は年 1.7 億円ほどで、配当性向は 2〜3 割と低い。2024 年と 2025 年に立会外の取引で自社株を少し買ったが、規模は小さい。株主優待はブルーベリージャムで、費用は年 1 億円に届かない。
大株主は創業家と経営陣だ。代表取締役専務の資産管理会社である有限会社元気が 38% を持つ。経営陣が株を多く持つことは利害の一致にもなるが、余った現金の使い道を少数株主が動かす余地は小さい。
純現金は約 50 億円あり、使い道は警備会社の買収が中心になるとみる。2023〜2024 年にはトップロード、アイワ警備保障、NEXT を買った。買う値段が妥当なら地盤は広がるが、警備会社は人がやめれば価値が消える資産でもある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
人手不足は、人を集められる警備会社にとって値上げの武器だ。工事現場には法令で警備員を置かねばならず、インフラの補修と防災の工事は 10 年続く。公共工事の労務単価は毎年上がり、警備料もそれに沿って上がる。2025 年 9 月期までは、売上と営業利益が 5 年続けて中期計画の目標を上回っていた。
2026 年 9 月期の減益は一時的な面が大きい。郵便取次の子会社を売り、ビルメンテナンスの子会社を清算した整理の年で、創業者への特別功労金も重なった。値上げが人件費に追いつけば、営業利益率は 7% 台に戻る。
電源供給はコンサートとイベントの大型化で伸び、利益率 3 割の高い稼ぎを保つ。そして純現金は時価総額の 7 割ある。本業の値段はほぼ無料で、配当の性向を上げる余地も大きい。
東証は資本の使い方を株価で示すよう求めており、会社も 2025 年に対応の方針を出した。経営陣が株を多く持つことは、株価を上げる動機にもなる。
慎重な見方
本業の取り分は構造的に細っている。警備は人の賃金がそのまま原価で、値上げしても多くは賃金に消える。2026 年 9 月期は警備が表の上で赤字になり、営業利益は 4 割減った。整理の年という説明だけでは、この落ち方は説明しにくい。
数量の先行きも暗い。警備員の半分は 60 歳以上で、引退に採用が追いつかない。建設の数量は人口とともに減り、片側交互通行を AI のカメラと信号で誘導する機械も広がる。自社の「AI 保安警備」も、裏返せば人の仕事を減らす道具だ。
現金は厚いが戻ってこない。10 年で 50 億円近く積み上がったのに、配当性向は 2〜3 割のままだ。創業家と経営陣が 4 割近くを握り、使い道は警備会社の買収に向かう。人がやめれば価値の消える会社を買い続ければ、現金はかえって目減りする。
電源供給の高い利益率も、イベントの数次第で振れる。コロナの年のように大型の催しが止まれば、全社の利益を支える柱が一度に細る。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。値上げの追い風は本物でも、賃金の上昇がそれを食う形は変わりにくく、2026 年 9 月期の減益がその証拠になった。確率は中立を厚くし、悲観側を楽観側より少し重くした。
現金の厚さは悲観の底を浅くするが、戻り方を割り引くと、今の値段を大きく上回る価値にはならない。還元の方針が変われば、評価は一段上がる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/09 期)
確率で加重した株価時価総額 2,905 円135 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 461 円21 億円)。 今の値に割り戻すと 1,767 円82 億円、今との差 +17.9%、 期待の年率 +8.4%(資本コスト 7.2%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 4,618 円215 億円 | 580 円27 億円 | +246.8% | +13.2% | 624 円29 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,909 円182 億円 | 516 円24 億円 | +195.2% | +11.4% | 885 円41 億円 |
| 中立 | 36% | 3,241 円151 億円 | 473 円22 億円 | +147.8% | +9.5% | 1,337 円62 億円 |
| やや悲観 | 20% | 1,622 円75 億円 | 408 円19 億円 | +35.5% | +3.1% | 406 円19 億円 |
| 悲観 | 12% | 643 円30 億円 | 301 円14 億円 | −37.0% | −4.5% | 113 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,905 円135 億円 | 461 円21 億円 | +124.5% | +8.4% | 3,365 円157 億円 |
今の株価時価総額 1,499 円70 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 12% 人手不足を値上げに変え、利益率が戻る 利益 11 億円 · PER 17.2 倍 · 株価時価総額 4,618 円215 億円
人手不足で警備料の値上げが定着し、1 人 1 日の単価は 10 年で 1.55 倍になる。会社は採用と定着に投資し、警備員の数をほぼ保つ。インフラの補修と防災の工事が増え、交通誘導の需要も細らない。
警備の利益率は 5.5% に戻る。電源供給は大型のコンサートと停電工事で件数が 2 割余り増え、利益率 3 割を保つ。全社の営業利益は 14 億円台になる。
現金は警備会社の買収に一部使われ、配当の性向も上がる。それでも自己資本は厚く、自己資本利益率は 8% 台と資本コストをわずかに超える程度にとどまる。
- 警備:数量 485(警備員の延べ稼働(千人日・年、推定))× 価格 3.10(1 人日あたりの警備料(万円・名目))→ 売上 150 億円・営業利益 8 億円。稼働0.97倍・単価1.55倍・利益率5.5%
- 電源供給:数量 2,950(電源を出す案件の数(件・年、推定))× 価格 0.70(1 件あたりの売上(百万円・名目))→ 売上 21 億円・営業利益 6 億円。件数1.25倍・単価1.40倍・利益率30%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.5% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)22 億円。全体の PER 17.16 倍、時価総額 197 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2025年9月期まで中期計画を上回っていた実績はあるが、営業利益率を過去の山の水準に戻すには値上げの定着と人の確保が重なる必要があり12%。
やや楽観 20% 警備料の値上げが人件費に追いつく 利益 9 億円 · PER 16.4 倍 · 株価時価総額 3,909 円182 億円
警備料は人件費に沿って上がり、単価は 10 年で 1.5 倍になる。警備員の数は高齢化で 7% 減るが、単価の上昇で売上は伸びる。2026 年 9 月期の減益は整理の年の一時的なものとわかる。
警備の利益率は 4.8% に戻り、電源供給は件数が 15% 増える。全社の営業利益は 12 億円台で、2025 年 9 月期の 1.4 倍だ。
配当は利益に沿って増え、性向も少し上がる。現金は 60 億円台に積み上がり、小さな警備会社の買収に使われる。株主の取り分は増えるが、現金の大半は会社に残る。自己資本利益率は 7% 台で、資本コストにわずかに届かない。
- 警備:数量 465(警備員の延べ稼働(千人日・年、推定))× 価格 3.00(1 人日あたりの警備料(万円・名目))→ 売上 140 億円・営業利益 7 億円。稼働0.93倍・単価1.50倍・利益率4.8%
- 電源供給:数量 2,715(電源を出す案件の数(件・年、推定))× 価格 0.69(1 件あたりの売上(百万円・名目))→ 売上 19 億円・営業利益 5 億円。件数1.15倍・単価1.37倍・利益率29%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.4% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)22 億円。全体の PER 16.41 倍、時価総額 163 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げが人件費に追いつき、2025年9月期の利益率に戻る形。過去5年の実績に近いので2割。
中立 36% 人は減るが単価で売上を保つ 利益 7 億円 · PER 15.4 倍 · 株価時価総額 3,241 円151 億円
警備員の高齢化で、延べの稼働は 10 年で 1 割減る。代わりに 1 人 1 日の単価は 1.45 倍に上がり、警備の売上は 130 億円に届く。
警備の利益率は 4% と、2025 年 9 月期と今期の間に落ち着く。値上げの多くは賃金に回り、会社の取り分は大きくは増えない。電源供給はイベントの需要に沿って件数が少し増え、高い利益率を保つ。全社の営業利益は 10 億円近くになる。
配当は性向 3 割前後で増え、現金はさらに積み上がる。自己資本利益率は 6% 台で資本コストに届かず、現金は会社の中に眠り続ける。
- 警備:数量 450(警備員の延べ稼働(千人日・年、推定))× 価格 2.90(1 人日あたりの警備料(万円・名目))→ 売上 131 億円・営業利益 5 億円。稼働0.90倍・単価1.45倍・利益率4.0%
- 電源供給:数量 2,480(電源を出す案件の数(件・年、推定))× 価格 0.67(1 件あたりの売上(百万円・名目))→ 売上 17 億円・営業利益 5 億円。件数1.05倍・単価1.34倍・利益率28%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)22 億円。全体の PER 15.44 倍、時価総額 132 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:警備員は少しずつ減り、単価の上昇が売上を支えるが、賃金も同じく上がって取り分は薄いままという、最も起こりやすい姿。
やや悲観 20% 警備員が集まらず、取り分が細る 利益 5 億円 · PER 8.8 倍 · 株価時価総額 1,622 円75 億円
若い警備員が集まらず、延べの稼働は 2 割近く減る。値上げは人件費の上昇に半歩遅れ、警備の利益率は 2.5% に落ちる。客のゼネコンは安い業者と比べて値段を抑える。
電源供給はイベントの数の伸びが止まり、利益率も 24% に下がる。全社の営業利益は 6 億円台と、2026 年 9 月期の予想並みにとどまる。
配当は据え置き気味で、現金は増え続ける。会社は警備会社を買って地盤を広げようとするが、買った会社でも人がやめ、稼ぎは計画を下回る。自己資本利益率は 4% 台に沈み、現金の厚さだけが株価を支える。
- 警備:数量 410(警備員の延べ稼働(千人日・年、推定))× 価格 2.76(1 人日あたりの警備料(万円・名目))→ 売上 113 億円・営業利益 3 億円。稼働0.82倍・単価1.38倍・利益率2.5%
- 電源供給:数量 2,240(電源を出す案件の数(件・年、推定))× 価格 0.65(1 件あたりの売上(百万円・名目))→ 売上 15 億円・営業利益 3 億円。件数0.95倍・単価1.30倍・利益率24%
倍率:事業の ROE 4.4% が k 7.25% 以下なので、ためた利益は額面未満の価値で PER の上限は 1÷k=12.5 倍。やや悲観は警備の利益が細り稼ぐ力が弱いので、上限の 7 割の 8.8 倍。余った現金 16.9 億円(帳簿 22.5 億円 × 戻り方 0.75)は別に足した。
確率:2026年9月期の減益が一時的でなく、値上げが人件費に追いつかない形が続く。今期の数字がその兆しで2割。
悲観 12% AI の誘導機と建設の縮みで交通誘導が細る 利益 2 億円 · PER 8.8 倍 · 株価時価総額 643 円30 億円
片側交互通行を AI のカメラと信号で誘導する機械が広がり、国も配置の基準を緩める。建設の数量の減りも重なり、交通誘導の稼働は 3 割余り減る。
残った仕事は安値の取り合いで、警備の利益率は 0.5% まで落ちる。電源供給もイベントの減りで件数が 2 割減る。全社の営業利益は 2 億円台にとどまり、利益の多くは現金の利息になる。
会社は配当を続けるが、現金は買収の失敗と赤字の子会社の穴埋めで少しずつ減る。株主に残る価値は、現金の一部と細い電源供給の稼ぎになる。倒れはしないが、警備の会社としての役目は小さくなる。
- 警備:数量 340(警備員の延べ稼働(千人日・年、推定))× 価格 2.60(1 人日あたりの警備料(万円・名目))→ 売上 88 億円・営業利益 0 億円。稼働0.68倍・単価1.30倍・利益率0.5%
- 電源供給:数量 1,890(電源を出す案件の数(件・年、推定))× 価格 0.63(1 件あたりの売上(百万円・名目))→ 売上 12 億円・営業利益 2 億円。件数0.80倍・単価1.25倍・利益率18%
倍率:事業の ROE 2.0% が k 7.25% 以下なので、ためた利益は額面未満の価値で PER の上限は 1÷k=12.5 倍。悲観は警備がほぼ稼がず電源と現金の利息が頼りなので、上限の 7 割の 8.8 倍。余った現金 11.2 億円(帳簿 15.0 億円 × 戻り方 0.75)は別に足した。
確率:AIのカメラと自動の誘導機が工事現場に広がり、建設の数量の縮みが重なる形。法令で警備員を置く決まりは残るので12%にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
警備
工事現場の交通誘導警備が約3分の2、商業施設・病院などの施設警備が約3分の1、鉄道工事の列車見張りも行う。東北と首都圏が地盤。
| 数量警備員の延べ稼働(千人日・年、推定) | 価格1 人日あたりの警備料(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/09 | 500 | 2.00 | 100 | 2 |
| 10 年後 中立 | 450 | 2.90 | 131 | 5 |
取り方:2026年9月期は9か月の実績74.6億円から通年約100億円。1人日の警備料を平均2万円(公共工事の交通誘導警備員の労務単価に会社の取り分を乗せた水準)とみて延べ約50万人日と推定。セグメントの利益は社内の取引消去が別に立つので、全社の営業利益5.1億円から電源供給の約3.2億円を引いた約1.9億円を警備の利益とした。
電源供給
コンサート・イベント・テレビ中継・停電工事に電源車と仮設電源を出す。
| 数量電源を出す案件の数(件・年、推定) | 価格1 件あたりの売上(百万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/09 | 2,360 | 0.50 | 12 | 3 |
| 10 年後 中立 | 2,480 | 0.67 | 17 | 5 |
取り方:9か月8.9億円から通年約11.8億円。1件50万円と推定し約2,360件。利益は9か月の2.46億円から通年約3.2億円。電源車の償却は取得時の値段のままなので、利益率は物価で下がらない。
リスクと懸念
警備員の確保
警備員の半数は60歳以上で、引退に採用が追いつかない。建設や物流との人の取り合いで賃金は上がり続け、値上げが遅れれば利益がすぐに削られる。2026年9月期の減益がその例だ。
AIと機械による交通誘導の置き換え
AIのカメラと自動の信号で片側交互通行を誘導する機械が広がっている。配置の基準が緩めば、売上の6割を占める交通誘導の数量が大きく減る。
建設の数量の縮み
人口減で建設の数量は長く細る。インフラの補修と防災の工事が支えるが、公共の予算の頭打ちで工事が減れば、交通誘導の需要も落ちる。
現金が戻らない
純現金約50億円は時価総額の7割にあたるが、配当性向は2〜3割で、創業家と経営陣が4割近くを持つ。現金が会社に積まれ続ければ、少数株主の取り分は増えない。
警備会社の買収
現金の使い道は同業の買収に向かいやすい。警備会社の価値は人に宿り、買った後に人がやめれば稼ぎは消える。高い値で買えば現金の価値が目減りする。
今後の分かれ目
- 2027年9月期に営業利益率が6%台に戻る
- 今期の減益は一時的で、やや楽観の筋書きに近づく。
- 警備のセグメントの損失が続く
- 値上げが人件費に追いつかない形が定着し、やや悲観の筋書きに近い。
- 配当性向を5割以上に上げるか大きな自社株買いをする
- 現金が株主に戻り、戻り方を厚く見直す理由になる。
- 国が交通誘導警備員の配置の基準を緩める
- 機械への置き換えが進み、悲観の筋書きの確率が上がる。
- 大きな警備会社を高い値で買う
- 現金が人に宿る資産に変わり、悲観側の傷が深くなる。
見ておくもの
- 警備の売上と全社の営業利益率(2025年9月期7.2%、2026年9月期予想4.5%)
- 公共工事の交通誘導警備員の労務単価の上げ幅
- 電源供給の売上と利益
- 配当性向と自社株買いの額
- AIの誘導機の普及と配置の基準の見直し
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。資本コスト7.25%に対し、余った現金を除いた10年後の自己資本利益率は中立で6%台と届かないので、PERの上限は1÷k=12.5倍、中立はその8割に置いた。純現金約50億円のうち、売上の2か月分ほどの運転資金を除いた30億円を余った現金とし、還元は続くが性向が低く創業家と経営陣が4割近くを持つので戻り方0.75で足した。セグメントの利益は社内の取引消去が別に立つ開示なので、全社の営業利益から電源供給を引いて警備の利益とした。過去のPERや同業の値付けは使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.62→17.16 倍・やや楽観 PER 10.62→16.41 倍・中立 PER 10→15.44 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityの+0.5%を足した(決まりv2)。個別のリスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.25%。