結論
共栄セキュリティーサービスは、施設や工事現場に警備員を置く人的警備の会社だ。機械警備は持たず、売上のほぼ全部が人の時間で稼ぐ常駐と臨時の警備である。筆者の結論は「割安」だ。いちばんの理由は、稼ぐ力に比べて値段が低すぎることにある。
2026 年 7 月期は決算期を変えた 16 か月の決算で、営業利益は 11.6 億円だった。次の 12 か月の予想は営業利益 11.7 億円、純利益 7 億円で、時価総額はその 7 倍に満たない。しかも資産には 22 億円の金地金があり、時価総額のほぼ半分に当たる。
ただし安いのには理由がある。創業家側の会社が 4 割強を持ち、余った資産は株主に戻らず金に替わった。配当性向は 25% にとどまる。値段の多くは、この現金の戻りにくさを映している。
筆者が気にするのは、警備員の賃金が物価より速く上がり、料金の改定が追いつかない筋だ。人手不足は値上げの追い風にもなるが、小さな会社ほど人が集まらない。買収で規模を取りにいく戦略が、交渉力と採用力に結びつくかが 10 年の分かれ目になる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「事業はふつう、値段は安い、経営の資本の使い方は疑問」という組み合わせだ。
事業そのものは、10 年後も確実に残る。人が要る警備の仕事は消えず、賃金が上がれば料金も上がる。ただ他社にまねできない強みは無く、利益率は賃金と料金のせめぎ合いで決まる。オーナーとして長く持ちたいほどの事業ではない。
値段は別の話だ。次の 12 か月の純利益 7 億円に対して時価総額は 46 億円しかなく、そのうち 22 億円は金地金である。事業の部分だけなら利益の 3〜4 年分の値段だ。金を半分に割り引いて数えても、安全域はかなり厚い。
問題は、その安全域を株主が受け取れるかである。余った資産を金で持ち、配当は利益の 4 分の 1 だけ。経営が少数株主のために現金を戻す保証はない。筆者は、それでも稼ぐ力そのものが値段を上回っていると見る。リスクは事業の崩れよりも、オーナーの資本の使い方にある。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は単純だ。警備員が 1 時間働くごとに、顧客から料金が入る。原価のほとんどは警備員の賃金で、粗利は売上の 2 割強しか残らない。
常駐警備は、ビルや商業施設、空港、工事現場などに 1 年以上の契約で警備員を置く仕事だ。16 か月の売上 153 億円のうち 133 億円がこれに当たる。施設警備、交通誘導、駐車場の警備、空港の消防業務、マンションの管理人の派遣まで、人を置くサービスを広く持つ。
臨時警備は、イベントや催事の 1 年未満の仕事で、売上の 1 割強だ。大型の臨時案件があると売上と利益が跳ね、無いとしぼむ。
会社の成長の柱は買収である。地方の中小の警備会社を次々に子会社にし、2026 年 7 月期だけでデンツートラフィック、常総警備保障、アコードセキュリティ、太陽興産の 4 社を連結した。後継者のいない警備会社は全国に多く、売り手には事欠かない。買った会社とは営業と警備員の配置を一つにまとめ、本社の費用を薄める。
顧客は官公庁、空港、ビルの管理会社、建設会社が中心だ。単一セグメントの会社で、機械警備や機器の販売のような人に頼らない稼ぎは持たない。
優良さと弱いところ
共栄の優良さは、中くらいより下だ。景気には強いが、値段を自分で決める力が弱い。
警備は契約が続く商売で、景気が悪くても施設の警備は止まりにくい。上場してからの赤字は、減損を出した 2025 年 3 月期の 1 度だけだ。一方で堀、つまり他社がまねできない強みは見当たらない。人を置く警備は誰でも始められ、全国に 1 万社を超える業者がひしめく。会社自身も、競合との価格競争による料金の下げ圧力を課題に挙げている。
資本効率は買収で上がってきた。営業利益率は長く 5〜7% だったが、価格改定と配置の見直しで次の期は 9% 台の予想だ。ただし税負担は重い。のれんの償却が税金の計算で費用にならず、純利益は営業利益の 6 割しか残らない。
弱いのは資本の使い方だ。借入で買収を進めながら、手元の資金で金地金を 22 億円まで買い増した。事業に要らない資産を、配当でも自社株買いでもなく金で持つ。オーナーの資産を守る発想としてはわかるが、少数株主から見ればその価値は半分ほどにしか数えられない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
警備業界は、需要は堅いが人が足りない業界だ。警察庁の統計では、業者数も警備員の数もゆるやかに増え、市場は 3 兆円台半ばで推移する。
いちばん大きな変化は人手不足と賃金の上昇である。警備員は高齢化が進み、若い人が入らない。最低賃金は物価を上回る速さで上がり、交通誘導のような仕事は人が集まらないため単価が上がっている。人を出せる会社に仕事が集まるので、規模と採用力のある会社には追い風になる。
二つ目は再編だ。業界は上位のセコムと ALSOK が大きく、その下に中堅と無数の中小が並ぶ。中小は後継者がいないうえに、法令の改正や賃金の上昇に耐えにくく、売りに出る会社が増えている。共栄はこの受け皿として買収を重ねる。同じ戦略をとる会社は多く、良い売り物の値段は上がっていく。
三つ目は省人化である。カメラやセンサー、ロボットが警備員の仕事の一部を置き換える。施設警備では巡回の一部が機械に替わり、顧客は人数を減らして費用を抑えたがる。共栄は機械警備を持たないため、この流れでは押される側に立つ。ただ交通誘導やイベントの雑踏警備は、法令上も人が要る場面が多く、10 年で消える仕事ではない。筆者は、人の警備の数量は 10 年でほぼ横ばいか少し減ると見る。値段は賃金とともに上がるが、それを利益に残せるかは会社ごとの交渉力で差がつく。
資本政策と M&A
資本政策は、買収と金の保有が軸だ。配当性向は 25% で、自社株買いはほとんどない。
買収は借入も使って進める。2026 年 7 月期は 4 社を買い、のれんは 9.7 億円に増えた。短期の借入 15 億円を含め、有利子負債は 23 億円になった。一方で手元には現金と有価証券が 24 億円、金地金が 22 億円ある。借入と現金はほぼ見合い、金地金がまるまる余った資産として残る形だ。
筆頭株主は合同会社あっとプラニングで、4 割強を持つ。安定株主として保有すると届け出ている。株主優待は無い。経営陣が上場を続ける意味を問い直せば、非公開化もありうる。その時の買付けの値段は、金地金と稼ぐ力をどこまで反映するかにかかる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
警備は人手不足で売り手市場になった。交通誘導や施設警備の単価は上がり続け、共栄は 2026 年 7 月期に料金改定と契約の増加を同時に進めた。次の期の営業利益率は 9% 台の予想で、長く 5〜7% だった水準から一段上がる。
買収の効果も出ている。後継者のいない地方の警備会社を手ごろな値段で買い、本社の費用と警備員の配置をまとめる。4 社を加えた次の期は売上 130 億円を見込み、10 年で 2 倍近い規模も見えてくる。規模が増せば、顧客との料金交渉でも強く出られる。
そのうえ値段が安すぎる。時価総額 46 億円のうち 22 億円が金地金で、金は物価とともに値上がりしやすい。事業の部分は純利益の 3〜4 年分にすぎない。配当性向 25% でも、利回りは 4% 近い。いずれ配当を上げるか、オーナーが非公開化を選べば、値段の差は一気に埋まる。交通誘導や雑踏の警備は法令で人が要る場面が多く、カメラに置き換わる心配も薄い。人を出せる会社の価値は、むしろ上がっていく。
慎重な見方
人の警備は、誰にでもできる仕事だ。値段は競合との入札と交渉で決まり、会社自身も料金の下げ圧力を課題に挙げている。最低賃金が物価より速く上がれば、料金の改定が半年遅れるだけで利益は消える。9% 台の利益率は大型の臨時案件と買収の効果が重なった山で、続く保証はない。
買収は高くつき始めている。同じ戦略を取る会社が増え、良い売り物の値段は上がる。2025 年 3 月期には減損を出しており、目利きを誤れば、のれんがそのまま損になる。借入で買いながら金を買う資本の使い方も筋が悪い。
そして余った資産は株主に戻らない。オーナー側が 4 割強を持ち、現金は金地金に替わった。帳簿の資産をいくら積んでも、配当が利益の 4 分の 1 なら、少数株主の取り分は細る。カメラやロボットで巡回が減れば、機械警備を持たない共栄は顧客を失う側に立つ。小さな会社は採用の広告費も重く、人手不足は追い風どころか、仕事を断る理由になりかねない。
どちらに重みを置いたか
人手不足で料金が上がる流れは本物で、強気の見方に分がある。一方、利益率の山と資本の使い方には慎重な見方の指摘が当たっている。中立は利益率を次の期の予想より低く置き、金地金と溜まる現金は戻り方を半分に割り引いた。それでも稼ぐ力が今の値段を上回る。確率は、賃金の先行と省人化の筋に厚みを持たせ、悲観側の合計を楽観側より重くした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/07 期)
確率で加重した株価時価総額 12,201 円177 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,329 円19 億円)。 今の値に割り戻すと 6,417 円93 億円、今との差 +108.0%、 期待の年率 +15.9%(資本コスト 8.3%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 23,661 円342 億円 | 2,011 円29 億円 | +732.1% | +23.6% | 2,054 円30 億円 |
| やや楽観 | 20% | 18,655 円270 億円 | 1,693 円25 億円 | +559.6% | +20.8% | 4,070 円59 億円 |
| 中立 | 36% | 13,806 円200 億円 | 1,389 円20 億円 | +392.5% | +17.3% | 5,470 円79 億円 |
| やや悲観 | 24% | 5,853 円85 億円 | 1,029 円15 億円 | +123.1% | +8.4% | 1,652 円24 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,686 円24 億円 | 691 円10 億円 | −23.0% | −2.6% | 285 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 12,201 円177 億円 | 1,329 円19 億円 | +338.6% | +15.9% | 13,530 円196 億円 |
今の株価時価総額 3,085 円45 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 買収で規模が倍近くになり、料金の交渉力がつく 利益 17 億円 · PER 17.7 倍 · 株価時価総額 23,661 円342 億円
後継者のいない地方の警備会社を年に 1〜2 社ずつ買い続け、稼働時間は今の 1.24 倍になる。規模が増すと、官公庁や建設会社との料金交渉で強く出られ、単価は物価を上回って上がる。買った会社の本社をまとめ、警備員の配置を一つにする効果で、本社費の前の利益率は 13% 台に乗る。のれんの減損は小さく済む。売上は 226 億円、営業利益は 25 億円まで伸びる。金地金は持ち続けるが、利益の伸びに合わせて配当も増える。人手不足の中で人を出せる会社として、顧客の方から仕事が集まる。溜まった現金の一部は配当の引き上げに回り、少数株主にも稼ぎが届き始める。
- 常駐警備:数量 420(警備員の稼働時間(万時間・年、推定))× 価格 4,686(1 時間あたりの請求単価(名目))→ 売上 197 億円・営業利益 27 億円。稼働 420 万時間 × 単価(今の 1.42 倍)、利益率 13.5%
- 臨時警備(イベント・催事):数量 55.0(警備員の稼働時間(万時間・年、推定))× 価格 5,396(1 時間あたりの請求単価(名目))→ 売上 30 億円・営業利益 4 億円。稼働 55 万時間 × 単価(今の 1.42 倍)、利益率 14%
倍率:事業の純利益 17 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 24.3% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 16.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)16 億円。全体の PER 17.74 倍、時価総額 318 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:買収を年 1〜2 社のペースで当て続け、同時に賃金の上昇を料金に載せ切る両立が要る。実績はあるが、買収の値段が上がる中で 10 年続けて当たる確度は低い。
やや楽観 20% 料金改定が定着し、9% 台の利益率を保つ 利益 14 億円 · PER 17.4 倍 · 株価時価総額 18,655 円270 億円
人手不足で料金の改定が通り続け、単価は物価をやや上回って上がる。買収は数年に数社のペースで続き、稼働時間は今の 1.14 倍になる。2027 年 7 月期に見込む利益率 9% 台が一時の山でなく実力として定着し、本社費とのれん償却をこなしても 9% 前後を保つ。売上は 200 億円、営業利益は 20 億円になる。のれんの償却が進んで税負担が軽くなり、純利益は営業利益の 7 割近くまで戻る。還元は配当性向 25% のままで、手元の現金は積み上がる。交通誘導の単価の上昇が続き、臨時の大型案件も数年おきに入る。採用は買収した会社の地盤で補い、人手の不足で仕事を断る場面は少ない。
- 常駐警備:数量 385(警備員の稼働時間(万時間・年、推定))× 価格 4,554(1 時間あたりの請求単価(名目))→ 売上 175 億円・営業利益 22 億円。稼働 385 万時間 × 単価(今の 1.38 倍)、利益率 12.8%
- 臨時警備(イベント・催事):数量 50.0(警備員の稼働時間(万時間・年、推定))× 価格 5,168(1 時間あたりの請求単価(名目))→ 売上 26 億円・営業利益 3 億円。稼働 50 万時間 × 単価(今の 1.36 倍)、利益率 13%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 22.2% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)16 億円。全体の PER 17.35 倍、時価総額 247 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:次の期の予想が利益率 9% 台で、料金改定と買収の効果が出ている。人手不足が続けば単価は上がりやすく、実現の確度はそれなりにあるとみる。
中立 36% 賃金並みに料金が上がり、利益率は 8% 台 利益 10 億円 · PER 16.6 倍 · 株価時価総額 13,806 円200 億円
警備員の稼働時間は、小さな買収で人手不足の目減りを補い、今の 1.05 倍にとどまる。料金は賃金の上昇に合わせて改定され、単価は物価並みに 1.34 倍になる。ただ競合との入札で値上げの一部は削られ、本社費の前の利益率は 11.5% と今より少し下がる。本社費は物価で増えるが、のれんの償却が終わる分で一部を相殺する。売上は 181 億円、営業利益は 15 億円で、利益率は 8.4% になる。配当性向 25% の還元が続き、使わない現金は溜まっていく。金地金は持ったままである。事業は堅いが、余った資産の多くは少数株主の手に届かないまま残る。
- 常駐警備:数量 355(警備員の稼働時間(万時間・年、推定))× 価格 4,422(1 時間あたりの請求単価(名目))→ 売上 157 億円・営業利益 18 億円。稼働 355 万時間 × 単価(今の 1.34 倍)、利益率 11.5%
- 臨時警備(イベント・催事):数量 46.0(警備員の稼働時間(万時間・年、推定))× 価格 5,092(1 時間あたりの請求単価(名目))→ 売上 23 億円・営業利益 3 億円。稼働 46 万時間 × 単価(今の 1.34 倍)、利益率 12%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.9% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)16 億円。全体の PER 16.6 倍、時価総額 179 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:料金は賃金とともに上がるが、競合との価格競争もあり、利益率は次の期の予想 9% よりやや低い 8% 台に落ち着くと見る。買収は細く続く。最も起こりやすい筋として最大の確率を置く。
やや悲観 24% 賃金が先行し、利益率が過去の水準に戻る 利益 6 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 5,853 円85 億円
最低賃金の上げ幅が料金の改定を上回る年が続き、本社費の前の利益率は 9.5% に下がる。人が集まらず、取れる契約も減り、稼働時間は今の 0.94 倍になる。大型の臨時案件も途切れ、イベントの警備は細る。買収はのれんの割に利益が出ず、一部で減損が出る。売上は 156 億円、営業利益は 9 億円で、利益率は 6% 前後と過去の水準に戻る。配当は利益に合わせて伸びず、余った資産の一部は買収の穴埋めに使われる。採用の広告費と離職の穴埋めが重く、規模を追うほど本社の費用が膨らむ。人手不足は、値上げの材料より仕事を断る理由として効いてくる。
- 常駐警備:数量 320(警備員の稼働時間(万時間・年、推定))× 価格 4,290(1 時間あたりの請求単価(名目))→ 売上 137 億円・営業利益 13 億円。稼働 320 万時間 × 単価(今の 1.30 倍)、利益率 9.5%
- 臨時警備(イベント・催事):数量 40.0(警備員の稼働時間(万時間・年、推定))× 価格 4,750(1 時間あたりの請求単価(名目))→ 売上 19 億円・営業利益 2 億円。稼働 40 万時間 × 単価(今の 1.25 倍)、利益率 10%
倍率:ROE 7.2% が k 8.25% 以下なので、ためた利益は額面未満で、PER の上限は 1÷k=12.5 倍。伸びと値決めの力を低く見て上限の 8 割(上限の 80%=10.00 倍)。余った資産 16 億円は戻り方 0.50 を掛けて足した。
確率:最低賃金は物価を上回って上がっており、小さな会社ほど改定の交渉で負けやすい。過去 10 年の利益率の中心が 5〜7% だったことを踏まえ、厚めに置く。
悲観 12% 省人化と価格競争で人の警備が縮む 利益 2 億円 · PER 8.8 倍 · 株価時価総額 1,686 円24 億円
顧客が施設の巡回をカメラとロボットに置き換え、常駐の警備員の人数を減らす。機械警備を持たない共栄は、その流れに乗れない。残る仕事は交通誘導と雑踏の警備に偏り、入札の値下げ競争が続く。稼働時間は今の 0.8 倍、単価は物価を下回る。採用の費用は減らせず、本社費の前の利益率は 7% に落ちる。売上は 123 億円、営業利益は 4 億円を切る。買収で抱えたのれんの一部は減損になる。会社の価値は稼ぐ力より、金地金と手元の資産に近づくが、それもオーナーの判断次第で株主には届きにくい。配当は細り、上場を続ける意味も薄れる。
- 常駐警備:数量 270(警備員の稼働時間(万時間・年、推定))× 価格 4,026(1 時間あたりの請求単価(名目))→ 売上 109 億円・営業利益 8 億円。稼働 270 万時間 × 単価(今の 1.22 倍)、利益率 7%
- 臨時警備(イベント・催事):数量 32.0(警備員の稼働時間(万時間・年、推定))× 価格 4,370(1 時間あたりの請求単価(名目))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。稼働 32 万時間 × 単価(今の 1.15 倍)、利益率 7%
倍率:ROE 2.7% が k 8.25% 以下なので、ためた利益は額面未満で、PER の上限は 1÷k=12.5 倍。稼ぐ力が細り利益の質も低いので上限の 7 割(上限の 70%=8.75 倍)。余った資産 11 億円は戻り方 0.50 を掛けて足した。
確率:カメラとロボットで巡回が減り、同時に人手不足で採用の費用が膨らむ複合の筋。10 年の変化としては現実的だが、一度に重なる確度は高くない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
常駐警備
施設・空港・工事現場などに 1 年以上の契約で警備員を置き、時間単位の料金を受け取る。
| 数量警備員の稼働時間(万時間・年、推定) | 価格1 時間あたりの請求単価(名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 339 | 3,300 | 112 | 14 |
| 10 年後 中立 | 355 | 4,422 | 157 | 18 |
取り方:今の値は 2027 年 7 月期の 12 か月の予想(売上 130 億円、買収した 4 社を通年で含む)を起点にした。16 か月の契約別の売上で常駐が 86% なので約 112 億円。1 時間あたり約 3.3 千円(賃金に上乗せした請求単価の推定)で割り、稼働時間を約 339 万時間とした推定。本社費とのれん償却の前の利益率を 12.5% と見た。
臨時警備(イベント・催事)
イベントや催事など 1 年未満の契約で警備員を出す。
| 数量警備員の稼働時間(万時間・年、推定) | 価格1 時間あたりの請求単価(名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 47.0 | 3,800 | 18 | 2 |
| 10 年後 中立 | 46.0 | 5,092 | 23 | 3 |
取り方:16 か月の臨時契約の売上 20.2 億円(13%)の比を 12 か月の予想 130 億円に当てて約 18 億円。雑踏警備は単価が高めとみて 1 時間 3.8 千円で割り、稼働時間を約 47 万時間とした推定。本社費の前の利益率を 13% と見た。
リスクと懸念
賃金の上昇に料金が追いつかない
原価のほとんどが警備員の賃金で、粗利は売上の 2 割強しかない。最低賃金が物価を上回って上がり、料金の改定が遅れれば、利益率は数ポイント単位ですぐ落ちる。次の期の 9% 台の予想は、改定が順調に通る前提である。
買収の目利きとのれん
成長の柱は中小の警備会社の買収で、のれんは 9.7 億円に増えた。2025 年 3 月期には減損を出した。売り手が増える一方で買い手も増え、値段が上がれば、買収の利回りは下がる。
余った資産が株主に戻らない
筆頭株主の会社が 4 割強を持ち、手元の資金は配当でなく金地金 22 億円に替わった。配当性向は 25% で、自社株買いもほぼない。帳簿の資産が厚くても、少数株主の取り分にはなりにくい。
人が集まらない
警備員は高齢化が進み、若い人が入らない。人を出せなければ契約を取れず、取った契約も他社に回すことになる。小さな会社ほど採用の費用が重くなる。
省人化による仕事の目減り
カメラ、センサー、ロボットが施設の巡回の一部を置き換える。共栄は機械警備を持たず、顧客が人数を減らす流れでは売上が削られる側に立つ。
臨時の大型案件の波
イベントの警備は売上の 1 割強だが、大型案件の有無で利益が跳ねる。2026 年 7 月期の好調には大型の臨時警備が含まれ、反動の年は利益が落ちる。
今後の分かれ目
- 料金改定が続き、12 か月の営業利益率が 9% 台を 2〜3 年保ったら
- 利益率の山でなく実力とみて、中立の利益率を上げ、やや楽観に確率を寄せる。
- 最低賃金の上げ幅が 3 年続けて料金の改定を上回ったら
- 利益率は 5〜6% の過去の水準に戻るとみて、やや悲観の確率を上げる。
- 配当性向を 40% 以上に上げる、または自社株買いを始めたら
- 余った資産と溜まる現金の戻り方を 0.75〜1.0 に上げてよい。
- 金地金をさらに買い増す、または事業と関係の薄い投資を広げたら
- 戻り方は 0.5 のままとし、資本の使い方の懸念を確率に重く見る。
- オーナー側が非公開化(MBO)を発表したら
- 分析の対象から外す。買付けの値段が金地金と稼ぐ力をどう映すかを見る。
- 大型の買収でのれんが自己資本の 3 割を超えたら
- 減損の筋を悲観に厚く置き、悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 12 か月の営業利益率と料金改定の進み
- 買収の件数・のれんの残高・減損
- 金地金と借入の残高
- 配当性向と自社株買い
- 警備員の採用数と離職
倍率と資本コストの決め方
数量は警備員の稼働時間(推定)で実質に置き、賃金と物価は単価の側に入れた。今の値は 2027 年 7 月期の 12 か月の予想(4 社を通年で含む)で、16 か月の決算を年に直した値より高いことを how に書いた。中立の利益率は 8% 台で、過去 12 年の山 12.1% と次の期の予想 9% を下回る。倍率は k 8.25% と g 4% の式から出し、今の PER や同業の値付けは見ていない。金地金は帳簿の額で余った資産に入れ、戻り方 0.5 を掛けた。リースは今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.55→17.74 倍・やや楽観 PER 13.16→17.35 倍・中立 PER 12.5→16.6 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。