結論
ウェルネス・コミュニケーションズは、企業の健康診断を全国の医療機関につなぎ、従業員の健康情報を管理する会社である。長く持つ株主の観点からは魅力ある顧客基盤を持つものの、現在の時価総額約145億円に対しては「やや割高」と判断する。10年後の価値を五つの筋書きで評価すると、既存株主に帰属する適正価値は約121億円となり、現在の評価を約17%下回る。
最大の強みは、健康診断という企業が毎年行わなければならない業務を、単なる予約代行ではなく、医療機関との契約、受診結果の標準化、長年の健康記録の保管まで一体で請け負っていることだ。健診ソリューションの顧客継続率は100%、健康管理クラウドの継続率も99.8%に達する。健康管理クラウド「Growbase」には約184万件の登録IDがあり、この部分には他社が簡単には奪えない継続収入の性格がある。
ただし、売上の約88%を占める健診ソリューションには医療機関に支払う健診費用が含まれる。会社全体が高利益率のソフトウエア企業というわけではない。2026年3月期の健診事業の営業利益率は約2.9%にとどまり、利益の相当部分は売上規模の小さいクラウド事業が稼いでいる。売上の伸びと株主利益の伸びを同一視してはならない。
さらに2026年2月には、人事評価のクラウドとコンサルティングを手掛ける「あしたのチーム」を子会社化した。これによって翌期の売上は大きく増えるが、人事評価の事務作業や画面操作はAIエージェントに代替されやすい。取得した会社は債務超過であり、多額ののれんも計上された。健診記録の強みが人事評価にもそのまま及ぶと考えるのは危険である。
筆者は、法定健診と健康記録の保管は10年後も必要だと考える。一方で、予約、入力、集計、人事評価の運用支援を人が行う現在の業務形態は大きく変わる。純現金の厚さと増配姿勢を評価しても、買収の成果、AIへの対応、既存株主の希薄化を考えれば、現時点の価格に十分な安全域があるとは言い難い。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主が最初に問うべきなのは、10年後も顧客がこの会社にお金を払う理由があるかということだ。その点で、健診結果を医療機関横断で標準化し、企業の健康管理の正式な記録として蓄積する事業は有望である。会社を変えると数年分の健康記録と法令対応の仕組みを移さなければならず、利用先を変えない合理的な理由がある。極めて低い解約率は、その強みを裏づけている。
ただし、この強みを全社の売上に一律に当てはめてはいけない。健診費用を含んだ売上は大きいが、医療機関への支払いを終えて株主に残る利益は薄い。予約、入力、転記、集計という作業の価値は、AIによって低下する可能性がある。企業が負う法的責任と検査そのものは残っても、今の事務処理料金がそのまま残るとは限らない。
新たに買った人事評価事業にも同じ問題がある。顧客の人事制度について助言する仕事は今後も必要だが、文書作成や評価表の運用に人手を費やす部分は大きく自動化される。しかも、買収した子会社には債務超過とのれんの負担がある。過去の顧客獲得実績だけを見て、この事業にも健康記録と同じ堀があるとは考えない。
オーナー利益を測るときは、純利益から必要なシステム更新費用と買収後の追加資金を意識する必要がある。2026年の営業キャッシュフローは約11億円と堅調だったが、増資で増えた現金のすべてが自由に分配できるわけではない。将来の自己資本が増えても、資本コストを上回る増分利益が伴わなければ企業価値は増えない。
筆者が評価したいのは、健康情報の正確な記録を業界の基盤に育てる道である。逆に、買収を重ねて人事・健康関連の業務受託を幅広く抱える道には慎重になる。現在の値段には、この二つの方向の差を埋めるほどの安全域は見いだせない。
何で稼ぐ会社か
収益の中心は、企業や健康保険組合に代わって健康診断の実施を一括管理する「健診ソリューション事業」である。会社は全国2,204の医療機関と提携し、受診案内、予約、費用精算、健診結果の回収とデータ化まで請け負う。2026年3月期の健診結果出荷数は398,299件で、平均売上単価は32,202円だった。この単価には実際の健診費用が含まれ、同社が受け取る事務手数料だけを表しているわけではない。
健診事業が顧客に提供する本当の価値は、異なる医療機関から届く検査結果を共通の形式で扱えるようにすることにある。医療機関ごとに異なる判定基準をそろえ、前年度との差分を含む約6,000通りの確認を経て、企業が法令上の報告や従業員の事後措置に使えるデータにする。予約サイト「i-Wellness」はその入り口であり、健康記録の標準化が継続利用の理由となる。
もう一つの収益源が「健康管理クラウド事業」である。Growbaseは、健診結果、就労状況、ストレスチェック、産業医面談の記録を従業員ごとに蓄積する。主な料金は従業員ID数に応じた基本利用料やデータ保管料であり、初期設定や機能追加は別料金となる。2026年3月期末の契約企業グループ数は262、登録ID数は1,836,721である。クラウド事業の売上に占める継続課金の割合は90.6%で、既存顧客の継続課金売上は前年比107%となった。
2026年2月の「あしたのチーム」子会社化によって、クラウド事業の中身は変わりつつある。同社は人事評価制度の設計、評価業務のクラウド化、制度運用の伴走支援を提供する。2026年3月期の連結決算には取得後の短い期間しか反映されておらず、翌期以降の売上には買収による大きな段差が生じる。筆者は将来価値を考えるうえで、従来のGrowbaseと、新たに加わった人事評価・コンサルティングを区別する。
残る医療機関等支援事業では、健診予約やデータ化の部分受託などを扱う。従来のPET関連事業は2026年3月に契約が終了し、施設や設備も譲渡された。したがって、過去の売上をそのまま10年先まで延長せず、残る業務受託を中心に評価する。
優良さと弱いところ
この会社には、数字で確認できる顧客の粘着性がある。健診ソリューションの企業グループ継続率は100%、健康管理クラウドは99.8%であり、クラウドの月次解約率は平均0.20%にとどまる。加えて、医療機関ごとの検査結果を統一する独自の運用と、従業員の経年データの蓄積がある。これは、単に便利な操作画面を提供するSaaSよりも強い競争上の特徴である。
切り替えの手間も小さくない。大企業が利用先を変えるには、各地の医療機関との契約、従業員への案内、過去の健診データ、産業医との連携、労働基準監督署への報告方法を移行する必要がある。複数年の健康記録を安全に引き継ぐことは、通常の業務ソフトの入れ替えより難しい。会社はこうした関係を生かし、健診とクラウドを相互に販売できる。
価格決定力には強さと弱さが同居する。Growbaseでは2026年に一部顧客の価格改定が進み、改定対象顧客の継続売上も増えている。だが健診事業の売上の大部分は医療機関への支払いを伴うため、医療費や人件費が上がれば売上も増えるが、利益が同じ割合で増えるとは限らない。2026年3月期の健診事業の営業利益率は2.9%、クラウド事業は50.4%であり、表面上の売上構成より利益の偏りが大きい。
過去のROEはおおむね25%前後だったが、2026年3月期には上場増資と連結範囲の変更を経て14.1%となった。利益を積み上げた結果ではなく、株主が新たに投じた資本や買収資産によって分母が増えた影響が大きい。今後は新しい投資が資本コストを上回る利益を生むかが試される。健康記録の基盤には堀があるが、人事評価事業と健診の事務受託まで含めた会社全体の堀は、まだ強固だと言い切れない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の企業向け健康診断は、人口が減っても需要が突然消えにくい市場である。労働安全衛生法に基づく定期健康診断、結果の保存、必要な事後措置には継続した需要がある。一方、労働者の実数は長期的に減るため、業界全体の健診件数が大幅に増えると考えるべきではない。成長余地は主として、企業が自社で処理していた業務の外部委託と、健診後の健康管理サービスにある。
会社が引用する経済センサスでは、従業員1,000人以上の企業に約1,699万人が働いている。この人数に同社の健診平均単価を掛けると、医療機関への支払いを含む年間約5,500億円の理論上の需要規模となる。ただし、これは全員が同社と同じ料金で毎年健診を受けるとした上限的な試算であり、外部委託サービスの実際の市場規模ではない。同社の年間出荷数約40万件はこの従業員数の約2.3%に相当するが、同社の厳密な市場シェアを示すものでもない。
健診の運営受託ではバリューHR、イーウェル、ベネフィット・ワンなどが競合となる。健康管理クラウドではWELSA、HealthCore、Carely、medimentなどが競争相手だ。利用企業を対象とした民間調査ではGrowbaseの採用割合が11.5%、WELSAが15.0%、HealthCoreが11.8%と報告されている。ただし、これは回答企業の採用割合であり、国内市場の売上高シェアとは異なる。10年後の競争力は、導入社数よりも解約率、登録ID数、実際に通った値上げで確かめる必要がある。
2026年10月にはエス・エム・エスからストレスチェック事業を取得する契約を発表した。対象事業の直近売上は約1.79億円で、取得実行は同年12月の予定である。制度の対象拡大は商機となるが、オンラインでの問診や集計はAIで低価格化しやすい。医療・介護の現場で必要な専門家の判断と、単なる集計業務を同じ成長率で考えない。
最大の構造変化はAIエージェントである。予約、書類入力、報告書作成、人事評価シートの作成は自動化が進む。他方、医師による検査、法律上必要な健康記録、従業員本人の過去データの正確な保管は消えにくい。今後の勝者は画面操作を売る会社ではなく、AIが利用する正確な健康データと業務上の責任を握る会社である。
資本政策と M&A
資本配分は、従来の安定配当中心の経営から、上場資金を使った開発投資と買収を並行する段階に入った。2025年の上場に伴う公募増資などで約17.6億円を調達し、2026年3月期末の自己資本は約58.3億円、純現金は約38.2億円となった。健診の基幹システム刷新とGrowbaseの機能追加には、2028年3月までの投資計画がある。収益性の高い既存クラウドを守るための投資なら合理的だが、更新費用が恒常的に増えれば株主に残る現金は利益より少なくなる。
最も慎重に見たいのが、2026年2月に議決権の68.3%を取得した「あしたのチーム」である。同社の前期売上は約22.1億円だったが、取得後の2026年3月末には約17.7億円の債務超過だった。連結貸借対照表には約18.3億円ののれんが計上され、親会社からは最大5億円の融資枠も設定されている。株式の取得対価が小さくても、引き受けた経済的負担と将来の減損リスクは小さくない。
2026年10月21日に発表されたストレスチェック事業の買収は、既存顧客との相乗効果を狙う小規模な拡張である。取得価額は非公表であり、価格に見合う収益が得られるかは今後確認する必要がある。いずれの買収についても、売上の上積みではなく、買収後に追加投資を差し引いて生じる利益と現金を評価する。
会社は2026年に累進配当の方針を打ち出した。2027年3月期には年間総額約5億円の配当を予定している。直近の通期計画は売上175億円、営業利益16億円、純利益11.5億円、EBITDA21億円だ。一方、確認できた資料には、複数年にわたる売上、利益、ROE、DOE、総還元性向、自社株買い額を一体として約束する中期経営計画の具体的な数値目標はない。複数年の数字の約束なしと評価する。
過去には増配の実績があるが、過去5年の配当性向中央値が50%以上だったとは確認できず、大規模な自社株買いの実績もない。したがって、将来積み上がる余剰現金がすべて株主に戻るとは見ず、その価値の75%を既存株主に帰属させる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
法定健診と健康記録の管理は、流行ではなく企業が毎年果たさなければならない仕事だ。景気が悪くなっても検査そのものを簡単には止められない。ウェルネス・コミュニケーションズは全国2,204の医療機関との契約を持ち、大企業の健康管理業務に深く組み込まれている。健診事業の顧客継続率100%、クラウドの99.8%という数字は、競争相手が簡単に顧客を奪えないことを示している。
Growbaseの強みは操作画面ではなく、検査結果と就労情報、面談記録を従業員単位で長期間保管することにある。過去の検査結果を引き継ぎ、法令に沿った報告を正確に作れる仕組みは、AIが普及しても必要だ。むしろ、正確なデータを蓄積する基盤を自社で持つ企業ほど、AIを使った異常値の発見や受診勧奨を低コストで提供できる余地がある。会社はすでにAI-OCRと独自の処理方法で特許を取得しており、業務効率化を進めている。
価格決定力にも改善の兆しがある。Growbaseでは顧客の値上げ受け入れが進み、既存顧客売上も伸びている。健診でもがん検診や婦人科検診を加えることで、単なる定期健診より高い付加価値を提供できる。登録IDを維持しながら単価を改善できれば、会社全体の利益成長は売上成長を上回る可能性がある。
あしたのチームの買収も、健康データと人事評価を結ぶ一体的なサービスとして成功すれば意味がある。既存の大企業顧客に人事関連サービスを販売でき、買収した会社の営業体制や費用を立て直せば、追加投資に対する収益率を高められる。純現金と継続配当の実績もあり、短期の事業環境悪化で直ちに存続が脅かされる会社ではない。健診件数のシェアを広げ、クラウドの契約継続を保てれば、今後10年の株主価値は十分に伸びうる。
慎重な見方
売上の88%を占める健診事業の利益率は約3%にすぎない。医療機関への支払いを含む売上が物価上昇で増えても、その増収の多くは原価の増加に対応するだけである。企業がAIで予約や受診勧奨を内製化すれば、管理業務の手数料部分に価格競争が生じる。労働安全衛生法が健診を義務づけていることと、現在の受託業者に高い手数料を払い続けることは別の問題だ。
Growbaseの解約率は低いが、将来も人間の担当者が画面を操作するとは限らない。AIエージェントが複数の健康管理システムをまたいで記録を検索し、報告書を自動作成するようになれば、画面や個別機能に対する支払いは減りうる。健康データの正式な保管先として残る可能性は高いものの、同じID数から得られる売上が今後も順調に伸び続けるとは限らない。
さらに心配なのは、2026年に取得したあしたのチームである。人事評価制度の設計や運用支援は、AIエージェントによる代替の中心にある仕事だ。人事評価シートの作成、職種別評価項目の設定、集計と報告は、顧客自身が低コストで処理できる可能性が高い。買収した会社は債務超過であり、親会社が追加資金を供給する約束もある。従来の健診事業で築いた安定性が、新規事業の赤字補填に使われる恐れがある。
約18.3億円ののれんも無視できない。想定した収益が出なければ減損の可能性があり、自己資本の見た目ほど売れる資産が厚いわけではない。加えて、有価証券報告書には発行済株式の約7.1%に相当する潜在株式が開示されている。業績が伸びても、既存株主に帰属する割合が低下しうる。高い継続率だけに注目して10年間の高ROEを当然視する評価には、相当な危険がある。
どちらに重みを置いたか
健康診断の実施と健康記録の保管が必要であり続けるという主張は強い。低解約率と標準化された独自データは、実際に確認できる競争上の証拠である。しかし、利益率の薄い健診受託と、AI代替にさらされる人事評価事業を合わせて高成長企業と見るには無理がある。特に債務超過子会社の買収、のれん、既存株主の希薄化は、この会社に固有の不確実性だ。
中立を31%とし、楽観側28%に対して、やや悲観と悲観を合計41%とした。下に寄せる理由は、AIリスクを数量と価格に反映したうえでも、買収後の収益回復と資本配分の成否に不確実性が残るためである。AI代替そのものを資本コストや事業寿命でさらに二重に罰してはいない。最終的には現在の時価総額を約17%下回る価値となり、判断は「やや割高」である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,328 円166 億円(+ 還元の換算額還元の合計 383 円48 億円)。 今の値に割り戻すと 967 円121 億円、今との差 −15.5%、 期待の年率 +4.7%(資本コスト 6.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 2,813 円351 億円 | 674 円84 億円 | +204.8% | +13.6% | 349 円43 億円 |
| やや楽観 | 18% | 2,152 円268 億円 | 487 円61 億円 | +130.7% | +9.9% | 475 円59 億円 |
| 中立 | 31% | 1,543 円192 億円 | 405 円50 億円 | +70.2% | +6.2% | 604 円75 億円 |
| やや悲観 | 28% | 499 円62 億円 | 305 円38 億円 | −29.8% | −4.2% | 225 円28 億円 |
| 悲観 | 13% | 321 円40 億円 | 128 円16 億円 | −60.7% | −10.1% | 58 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,328 円166 億円 | 383 円48 億円 | +49.5% | +4.7% | 1,711 円213 億円 |
今の株価時価総額 1,144 円143 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 健診の外部委託を獲得し、健康データの基盤として定着 利益 21 億円 · PER 16.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,813 円351 億円
企業は健康診断の実施を医療機関ごとに管理する負担を減らし、大企業に加えて中堅企業でも外部委託が進む。ウェルネス・コミュニケーションズは全国の医療機関との契約と標準化された健診データを生かし、年間の健診結果出荷を54万件まで増やす。がん検診や婦人科検診の利用も広がり、健診費用の上昇を含む単価も改善する。
Growbaseは従業員の健康情報の正式な保管先としての役割を強める。複数の医療機関から届く検査結果を統一する強みが評価され、値上げを受け入れる顧客が増える。AIは予約や転記の単価を下げるが、同社自身も特許を持つデータ処理技術を活用し、健診事業の事務原価を削減する。クラウドの高い利益率を大きく落とさずに済む。
あしたのチームは、採算の悪い業務を整理し、継続契約と専門性の高い制度設計に重点を移す。人事評価の定型業務はAIに置き換わるが、既存の有料顧客基盤を維持できる。買収に伴うのれんは利益創出によって回収され、追加資金も過大にならない。累進配当が継続し、2036年には株主への累積還元と事業価値の両方が増える。
- 健診ソリューション:数量 540,000(年間の健康診断結果出荷数(件))× 価格 45,000(医療機関の健診費用を含む受診者1件当たり平均売上(円))→ 売上 243 億円・営業利益 16 億円。健診受診54万件、平均4.5万円。契約企業の外部委託比率が高まり、AIによる事務費削減で営業利益率6.5%。
- Growbase・健康記録管理の中核:数量 1,836,721(登録された従業員ユーザーID数(ID))× 価格 980(従業員ID当たり年額売上(円、基本料・保管料・オプションを含む推定平均))→ 売上 18 億円・営業利益 10 億円。GrowbaseのID数を維持し、健康記録の正本としての価値で価格を約1.33倍に改善。
- 人事評価クラウド・コンサルティング:数量 1,100(年間稼働顧客換算社数(社年。取得年度の現在値は連結対象月数で換算))× 価格 0.02(年間稼働顧客1社当たり平均売上(億円、推定))→ 売上 25 億円・営業利益 4 億円。取得時の推定年間稼働1,100社を維持。定型事務は縮小し、専門助言の付加価値で混合単価を約1.20倍にする。
- 医療機関等支援・健診BPO:数量 52,000(健診管理等の受託対象ID数(ID、前期実績を代理指標とする))× 価格 5,700(受託ID当たり年間売上(円、PET関連を含む見かけ上の平均))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。PET終了を他の医療機関向け受託で補い、事務効率化も実現。
倍率:資本コストk=6.75%、長期名目成長g=1%、通常の堀の残存割合1/2を使用。2036年の余剰現金50億円の税後利息相当0.70億円を純利益から除き、事業自己資本80億円で測るROE約25.9%を得る。RONIC=6.75%+0.5×(25.9%−6.75%)=約16.3%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=約16.33倍。余剰現金50億円は株主還元可能価値75%を加算し、手動の倍率割引はしない。
確率:健診件数のシェア拡大、AIを使ったコスト削減、Growbaseの値上げ維持、買収した人事事業の立て直しが重なる筋書き。健康記録の低解約率は支持材料だが、複数の成功を要するため10%にとどめる。
やや楽観 18% 健診の効率化と記録管理で着実に利益を伸ばす 利益 17 億円 · PER 16.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,152 円268 億円
健診ソリューションでは、全国の提携医療機関との関係を維持しながら、大企業の深耕と中堅企業への拡張に成功する。健診結果の出荷数は48万件となり、医療機関への支払いを含む平均単価も物価と付加価値の向上によって伸びる。AIによる結果データ化の効率化が、外部委託費の上昇を吸収する。
Growbaseは、従業員の長期健康データを企業が利用するための基盤として残る。既存顧客の低い解約率を保ち、登録IDはほぼ横ばいで推移する。値上げは健康記録の保管や法令対応に必要な部分で受け入れられ、単なる画面機能は競争によって価格を維持しにくくなる。クラウドの収益性は現在よりやや低下するが、会社の利益の柱であり続ける。
人事評価事業では、定型的な運用支援の需要が減る。もっとも、制度設計や顧客固有の労務課題に対応する専門家の仕事は残り、買収した会社を黒字運営できる。2026年に発表したストレスチェック事業取得も既存の健康管理顧客との関係を深めるが、大幅な市場支配力を生むほどではない。累進配当を継続しながら、新しいシステムへの投資も賄える。
- 健診ソリューション:数量 480,000(年間の健康診断結果出荷数(件))× 価格 42,500(医療機関の健診費用を含む受診者1件当たり平均売上(円))→ 売上 204 億円・営業利益 11 億円。年間48万件、単価4万2,500円。AIによる処理効率化が医療費・人件費の上昇を上回る。
- Growbase・健康記録管理の中核:数量 1,800,000(登録された従業員ユーザーID数(ID))× 価格 950(従業員ID当たり年額売上(円、基本料・保管料・オプションを含む推定平均))→ 売上 17 億円・営業利益 9 億円。IDは現在の約98%を維持、健康記録の管理単価は約1.29倍。
- 人事評価クラウド・コンサルティング:数量 990(年間稼働顧客換算社数(社年。取得年度の現在値は連結対象月数で換算))× 価格 0.02(年間稼働顧客1社当たり平均売上(億円、推定))→ 売上 22 億円・営業利益 3 億円。年間稼働顧客は推定起点の90%。人月型の縮小を専門助言で補う楽観寄りの筋書き。
- 医療機関等支援・健診BPO:数量 45,000(健診管理等の受託対象ID数(ID、前期実績を代理指標とする))× 価格 5,300(受託ID当たり年間売上(円、PET関連を含む見かけ上の平均))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。PETから健診BPOに比重を移し、限定的な効率化を実現。
倍率:k=6.75%、g_long=1%、通常の堀の残存割合1/2を使用。余剰現金45億円の税後利息相当0.63億円を除いた事業純利益15.87億円、事業自己資本89億円からROE約17.8%。RONIC約12.3%、正当化PER約15.98倍。現金45億円の75%を加え、現在または同業の市場PERは使わない。
確率:健診件数の増加とGrowbaseの値上げが進む一方、人事評価のAI代替を一部吸収する筋書き。既存事業の高い継続率から十分な可能性はあるが、買収の完全な成功までは見込まない。
中立 31% 法定健診は残るが、人事評価と事務処理の収益性が薄れる 利益 12 億円 · PER 15.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,543 円192 億円
2036年も企業は従業員に健康診断を受けさせ、結果を保存しなければならない。ただし国内の労働人口は減り、健診業界全体の数量は大きく増えない。ウェルネス・コミュニケーションズは直接受託からの切り替え需要を取り込み、年間の健診出荷数を44万件に伸ばす。医療費込みの単価も上昇するが、事務手数料には競争があり、値上げ幅は物価の累積上昇を下回る。
Growbaseは企業の健康情報の正式な保管先として残る。経年の健診結果と法令上の記録を移す手間は大きいため、顧客離れは緩やかだ。一方、人間が画面を操作する機能はAIエージェントに代替され、登録IDの実質数量は現在の約91%になる。価格には独自データと規制対応の価値が残るため、一定の値上げは維持できる。
あしたのチームでは、人事評価書類の作成や運用助言の多くが自動化される。稼働顧客数は取得時の推定年間水準の約70%となり、人事評価事業の売上は当初の年換算水準から減る。健康管理との相互販売で事業自体は残るが、高い利益率への転換は実現しない。買収後の利益が計画を大きく上回らず、今ある余剰現金も一部はシステム開発に使われる。
2036年の全社売上は約210億円、営業利益は約16.5億円、純利益は約11.8億円となる。利益は現在より増えるが、上場増資後の自己資本と継続投資を考えると、かつての高ROEには戻らない。
- 健診ソリューション:数量 440,000(年間の健康診断結果出荷数(件))× 価格 40,200(医療機関の健診費用を含む受診者1件当たり平均売上(円))→ 売上 177 億円・営業利益 8 億円。件数は現在の1.10倍。医療費込み単価は1.25倍で物価累積1.34倍を下回る。事務のAI効率化で営業利益率4.5%。
- Growbase・健康記録管理の中核:数量 1,680,000(登録された従業員ユーザーID数(ID))× 価格 900(従業員ID当たり年額売上(円、基本料・保管料・オプションを含む推定平均))→ 売上 15 億円・営業利益 7 億円。記録の正本型。ID数量は現在の0.915倍、単価は1.224倍で、いずれもAIリスク表の許容範囲。
- 人事評価クラウド・コンサルティング:数量 770(年間稼働顧客換算社数(社年。取得年度の現在値は連結対象月数で換算))× 価格 0.02(年間稼働顧客1社当たり平均売上(億円、推定))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。AI代替の人月・BPO型を中心に、年間稼働顧客を推定起点1,100社の0.70倍とする。混合単価は1.14倍。
- 医療機関等支援・健診BPO:数量 33,800(健診管理等の受託対象ID数(ID、前期実績を代理指標とする))× 価格 5,000(受託ID当たり年間売上(円、PET関連を含む見かけ上の平均))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。健診BPO型。対象ID数量0.65倍、単価約1.10倍。PET事業終了の影響も含む。
倍率:2036年の余剰現金40億円の税後利息相当0.56億円を除いた事業純利益は11.24億円、事業自己資本は85億円、事業ROEは約13.22%。k=6.75%、超過収益の残存割合1/2からRONICは約9.99%。AI代替と人口減少のため長期名目gは1%に制限する。正当化PER=(1−0.01÷RONIC)÷(0.0675−0.01)=約15.65倍とし、現金40億円の75%を加える。ROEは成長の理由ではなく、数量と価格から出した利益を自己資本で割った結果である。
確率:法定健診と長期の健康記録管理には安定需要がある一方、労働人口の減少、外注手数料への競争、人事評価のAI代替が進む最も自然な筋書き。継続率の実績と買収後の不確実性を両方考え、中心の31%とする。
やや悲観 28% AIによる内製化で受託業務と人事評価の利益が細る 利益 5 億円 · PER 10.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 499 円62 億円
AIエージェントによる健診予約や受診勧奨の自動化が進み、大企業は一部の健診業務を内製化する。医療機関の検査は引き続き必要だが、健診データの整理と費用精算をまとめて請け負うことの価格優位は小さくなる。バリューHRなどの競合も処理コストを下げ、ウェルネス・コミュニケーションズの健診出荷は32.5万件まで減る。売上の減少よりも利益率の低下が深刻になる。
Growbaseの過去データは顧客にとって大切なため、サービスが急になくなるわけではない。ただしAIが複数システムを横断して記録を利用するようになると、独自画面や機能追加に対する支払意思は低下する。登録IDは現在の約85%に減り、単価上昇も小さい。既存顧客の解約は急増しなくても、新規導入による補充が弱まる。
人事評価事業では、コンサルティングで提供していた評価項目の設計や書類作成を顧客企業自身がAIで行う。買収した会社の稼働顧客は大きく減少し、売上が残っても営業利益はほとんど出ない。追加のシステム開発費やのれん償却が、親会社の稼ぐ力を圧迫する。
増配は緩やかになり、保有現金の一部が事業の立て直しに回る。健診事業と健康記録の基盤は残るが、資本コストを十分上回る利益を上げる会社ではなくなる。
- 健診ソリューション:数量 325,000(年間の健康診断結果出荷数(件))× 価格 36,000(医療機関の健診費用を含む受診者1件当たり平均売上(円))→ 売上 117 億円・営業利益 2 億円。健診件数は現在の82%。医療費は上がるが管理手数料の値下げで平均単価は1.12倍にとどまる。
- Growbase・健康記録管理の中核:数量 1,560,000(登録された従業員ユーザーID数(ID))× 価格 850(従業員ID当たり年額売上(円、基本料・保管料・オプションを含む推定平均))→ 売上 13 億円・営業利益 5 億円。IDは85%、単価1.16倍。長期記録の価値は残るが画面型機能の収益力が低下。
- 人事評価クラウド・コンサルティング:数量 616(年間稼働顧客換算社数(社年。取得年度の現在値は連結対象月数で換算))× 価格 0.02(年間稼働顧客1社当たり平均売上(億円、推定))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。推定年間稼働顧客の56%。人事評価の定型業務が大きく代替される。
- 医療機関等支援・健診BPO:数量 27,000(健診管理等の受託対象ID数(ID、前期実績を代理指標とする))× 価格 4,700(受託ID当たり年間売上(円、PET関連を含む見かけ上の平均))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。健診事務BPOが縮小し、受託単位の固定費を回収できなくなる。
倍率:余剰現金16億円の税後利息相当0.224億円を除いた事業純利益4.776億円と、事業自己資本84億円からROEは約5.69%。資本コスト6.75%に届かず、利益の成長に正の価値を認めない上限1÷k=約14.81倍を下回る10.5倍とする。継続する業務はあるが、AIによる価格競争と固定費負担により資本効率が低い。余剰現金16億円の75%を足す。
確率:健診の実施需要は続いても、企業による事務処理の自動化が進み、管理手数料と人事評価の収益が侵食される筋書き。買収子会社の立て直し負担も残るため、中立より下の可能性を相応に重く見る。
悲観 13% 人事評価の買収が失敗し、健診の事務受託でも競争に敗れる 利益 0 億円 · PBR 0.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 321 円40 億円
医療機関での健康診断は法律に従って続くが、企業の予約、精算、データの入力や集計はAIによって大部分が自動化される。医療機関自身も結果を標準的なデジタル形式で提供するようになり、ウェルネス・コミュニケーションズが仲介する理由は弱まる。競合との価格競争が激しくなり、健診出荷数は25万件に減少する。医療費の立替えや処理体制を維持する固定費が残り、健診事業は小幅な営業赤字に転落する。
Growbaseには長期の健康記録が残るため、事業そのものが消えるわけではない。しかし、顧客のデータ移行技術が標準化されるにつれ、乗り換えの手間は小さくなる。登録IDは125万まで減り、実質的な値上げもできない。従来の高い営業利益率は維持できず、保守とセキュリティ対応が収益を圧迫する。
あしたのチームでは、AIが人事評価書類と制度運用の大部分を代替し、コンサルティングの案件が減る。買収時に期待した収益は実現せず、多額ののれんが減損される。親会社からの追加資金も回収できず、グループの自己資本が傷つく。PET事業終了後の医療機関等支援事業でも固定費を賄えない。
経営は配当を縮小し、新規買収を止めて財務再建を優先する。事業の稼ぐ力はほぼ失われるが、現在の純現金と、のれんを除いた自己資本に残る価値を悲観の床とする。
- 健診ソリューション:数量 250,000(年間の健康診断結果出荷数(件))× 価格 34,000(医療機関の健診費用を含む受診者1件当たり平均売上(円))→ 売上 85 億円・営業利益 0 億円。件数は現在の約63%。医療費は残るが事務手数料が削られ、営業赤字になる。
- Growbase・健康記録管理の中核:数量 1,250,000(登録された従業員ユーザーID数(ID))× 価格 740(従業員ID当たり年額売上(円、基本料・保管料・オプションを含む推定平均))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。データの移行容易化で契約を失い、ID数は現在の約68%。価格もほぼ据え置き。
- 人事評価クラウド・コンサルティング:数量 440(年間稼働顧客換算社数(社年。取得年度の現在値は連結対象月数で換算))× 価格 0.02(年間稼働顧客1社当たり平均売上(億円、推定))→ 売上 7 億円・営業利益 −1 億円。人事評価・コンサルの稼働顧客は推定取得時の40%に縮小し、損益分岐点を割る。
- 医療機関等支援・健診BPO:数量 15,000(健診管理等の受託対象ID数(ID、前期実績を代理指標とする))× 価格 4,000(受託ID当たり年間売上(円、PET関連を含む見かけ上の平均))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。定型BPOの多くが消え、残存契約も採算割れ。
倍率:事業の営業利益は約0.26億円、純利益は約0.2億円で、継続事業の利益価値は極めて小さい。悲観では2036年の積み上がった自己資本72億円に床のPBRを掛けない。2026年3月末の自己資本58.3億円から、買収で計上されたのれん約18.34億円を控除した約40億円を回収可能資産の目安とし、40÷58.3=約0.6861を現在の自己資本に適用する。過去の市場PBRや谷の倍率は参照しない。
確率:医療検査の需要が消えるのではなく、外部委託事業者としての競争力を失う構造的な敗北。あしたのチームの収益悪化、のれん減損、健診手数料の競争激化が重なる低頻度だが無視できない筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
健診ソリューション
i-Wellnessを使い、企業・健康保険組合の健診予約、医療機関との調整、検査費用の精算、健診結果の標準化と納品を一括受託する。実際の医療機関で行う検査と、AIが代替しうる事務処理が混在する。
| 数量年間の健康診断結果出荷数(件) | 価格医療機関の健診費用を含む受診者1件当たり平均売上(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 398,299 | 32,202 | 130 | 4 |
| 10 年後 中立 | 440,000 | 40,200 | 177 | 8 |
取り方:2026年3月期有報の出荷398,299件、平均売上単価32,202円、セグメント売上130.18494億円、営業利益3.79082億円を採用。件数×平均単価は128.26024億円で、セグメント売上との差約1.92億円は受診案内や未受診者への勧奨など、出荷数と異なる課金対象を含むためと判断する。平均単価には健診そのものの費用が含まれ、同社の純粋な手数料ではない。医療機関を相手にした実検査はAIに置換できないが、予約・入力・精算の事務部分はBPO型のAI代替リスクがある。2036年の価格では物価上昇と顧客の値下げ圧力を両方考える。
Growbase・健康記録管理の中核
健康診断結果、面談、就労、ストレスチェックのデータを従業員ごとに長期保管し、企業の法令対応に利用する健康管理クラウド。単なる画面型SaaSではなく、健康記録の正本と独自の標準化データとしての価値を持つ。
| 数量登録された従業員ユーザーID数(ID) | 価格従業員ID当たり年額売上(円、基本料・保管料・オプションを含む推定平均) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,836,721 | 735 | 14 | 8 |
| 10 年後 中立 | 1,680,000 | 900 | 15 | 7 |
取り方:有報開示のGrowbase登録IDは1,836,721、契約企業グループ数は262、月次CCR0.20%、企業継続率99.8%、NRR107%。公式の健康管理クラウド事業売上15.23763億円には、2026年2月取得のあしたのチームの短期間の売上などが混在する。独立したGrowbase売上は非開示のため、前期クラウド売上約12.32億円とID数の伸び、値上げ等から13.5億円と試算し、ID当たり約735円とした。営業利益の7.67327億円は公式のクラウド事業全体の値を暫定的にここへ配分したもので、Growbase単独の開示利益ではない。記録の正本型として、中立のID数量0.85〜1.00倍、価格1.15〜1.34倍の範囲を守る根拠は、極めて低い解約率と医療機関横断の独自データ蓄積の二つである。
人事評価クラウド・コンサルティング
2026年2月取得のあしたのチームと譲受したSUZAKU関連の人事評価制度設計、人事クラウド、運用支援。コンサルティングやBPOの人月型と、画面操作を中心とする席課金SaaS型を含む。
| 数量年間稼働顧客換算社数(社年。取得年度の現在値は連結対象月数で換算) | 価格年間稼働顧客1社当たり平均売上(億円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 91.7 | 0.02 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 770 | 0.02 | 17 | 1 |
取り方:あしたのチームの取得は2026年2月27日で、2026年3月期の連結売上は取得後の短期間のみ。旧会社の2025年3月期売上約22.1億円と導入実績累計約4,000社を参照するが、現役の有料顧客数は公表されていない。そこで稼働顧客を累計の約27.5%に相当する1,100社、1社当たり年約190万円と仮定する。2026年3月期の会計上の数量は約1か月分に相当する91.67社年とし、売上は健康管理クラウド全体15.23763億円から推定Growbase売上13.5億円を差し引いた1.73763億円とした。この配分は連結売上の推定分解であり独立した開示値ではない。営業利益も買収関連費用との切り分けが開示されず、現在値は暫定的に0とした。10年数量の比較起点は91.67社年ではなく、取得直後の年換算稼働約1,100社である。AI代替の中立は人月・BPO型で稼働数量約0.70倍、操作画面・席課金型では0.70〜0.90倍、単価は人月型で物価上昇以内、席型では1.00〜1.15倍とし、混合単価も1.15倍以内に抑える。
医療機関等支援・健診BPO
医療機関や保険者向けに健診予約、結果データ化、精算などを部分受託する事業。過去に含まれたPET関連事業は2026年3月に契約が終了したため、10年後の主力とは考えない。
| 数量健診管理等の受託対象ID数(ID、前期実績を代理指標とする) | 価格受託ID当たり年間売上(円、PET関連を含む見かけ上の平均) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 52,000 | 4,540 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 33,800 | 5,000 | 2 | 0 |
取り方:2026年3月期の公表セグメント売上2.361億円、営業利益0.39816億円。直近年度の数量KPIは廃止されているため、2025年3月期有報で維持していた約52,000IDを代理指標として使用し、売上から見かけ上の平均単価約4,540円を逆算した。PETの売上も混在した実績であり、BPO固有の正確な顧客単価ではない。2026年3月にPET契約が終了したため、その減収とAIによる予約・データ化業務の代替を反映する。中立の実質数量は52,000IDの65%、価格は1.10倍とし、人月・BPO型の規律を適用する。
リスクと懸念
AIエージェント代替
健診ソリューションには実際の医療検査というAIでは代替できない仕事がある一方、予約、受診勧奨、紙の結果入力、費用精算はAIエージェントで自動化しやすい。人事評価事業の制度運用支援や評価書類の作成も同様だ。Growbaseは正確な健康記録の保管先として残りうるが、画面型機能の価格は下がる。中立の人事・BPO数量を0.55〜0.75倍、席型SaaSを0.70〜0.90倍の考え方で評価し、長期成長率にも保守性を反映した。
買収した人事評価会社の債務超過とのれん
あしたのチームは取得後の2026年3月末に約17.7億円の債務超過であり、グループには約18.3億円ののれんが計上された。親会社の融資枠も設定されている。売上は翌期から大きく増えるが、それだけで買収が成功したことにはならない。人事評価のAI代替や追加資金の必要性により、増分の投下資本利益率が資本コストを下回る可能性がある。
健診売上に含まれる医療費と低い利益率
健診事業の平均売上単価は受診者の医療費を含む。したがって、物価上昇や検査項目の追加で売上が増えても、医療機関への支払いと人件費も増える。2026年3月期の営業利益率は約2.9%で、処理ミスや費用上昇、手数料の値下げが小さく起きるだけで利益に大きく響く。数量×単価の増収がそのまま株主の利益になる構造ではない。
健康記録の持ち運びと競合システム
今は医療機関ごとに異なる健診結果を統一して長期間保管することが、乗り換えを難しくする理由だ。しかし、健診結果の電子的な標準化や、複数システムを横断するAIエージェントが普及すれば、顧客がGrowbaseを変更する費用は下がる。WELSA、HealthCore、Carelyなどと価格や機能で競争する比重が強まり、現在の低解約率が永続するとは限らない。
医療情報の漏えいと業務停止
同社は健康診断の結果、産業医面談、ストレスチェックなど、機微性の高い情報を扱う。サイバー攻撃やデータ誤変換が生じれば、単なるシステム停止にとどまらず、従業員の健康管理と顧客企業の法令対応に影響が及ぶ。信用を失った場合には、今の強みである顧客の高い継続率が一気に変わる可能性がある。情報保護への継続投資も欠かせない。
株式希薄化と大株主の資本配分
2026年6月提出の有報には、発行済株式の約7.1%に相当する潜在株式が記載されている。新株予約権の行使で会社に資金が入っても、既存株主の持分比率は低下する。また、SOMPOホールディングスとLHP Holdingsの二大株主が大きな持分を持つ。増配姿勢は評価できるが、少数株主が余剰現金の還元や買収方針を自由に決められるわけではない。
法制度と顧客企業の健康管理の内製化
労働安全衛生法が健診の実施を求めることは需要の下支えとなる。しかし、検査の実施義務は外部業者への委託を義務づけるものではない。企業が健康診断の管理を自動化・内製化すれば、実際の受診者数が減らなくても同社の受託件数は減りうる。逆にストレスチェック制度の対象拡大は商機だが、制度によって生まれる市場がすべて同社の売上になるわけではない。
今後の分かれ目
- 健診結果の年間出荷数が45万件を超え、健診事業の営業利益率が5%以上で複数期安定したら
- 単なる医療費の転嫁ではなく、外部委託のシェア拡大と事務処理の生産性向上が定着した証拠になる。中立の健診件数と利益率を引き上げ、やや楽観側の可能性を高める。
- Growbaseの契約企業継続率が99%以上で維持され、値上げ後もNRRが105%以上で続いたら
- 健康記録の正本としての堀と実際の価格決定力が保たれていると評価する。IDの縮小を抑え、10年後のクラウド利益と長期成長率の前提を再検討する。
- Growbaseの月次解約率が0.5%を継続的に超えたり、登録ID数が減少基調になったら
- 独自データの蓄積による乗り換え障壁が弱まった可能性を疑う。記録の正本型としての評価を見直し、画面型SaaSに近い数量・単価の保守的な前提へ移す。
- あしたのチームの営業利益と営業キャッシュフローが継続して増え、親会社からの追加融資が不要になったら
- 債務超過会社の立て直しと買収後の資本効率改善が確認できる。買収事業の損失確率を下げ、余剰現金の株主帰属価値を高める根拠になる。
- 人事評価事業の売上が減少し、のれん減損または追加の資金支援が発表されたら
- AIによる代替や買収失敗の筋書きが近づく。やや悲観と悲観に重みを移し、のれんを除く実体資産と純現金を再点検する。
- ストレスチェック事業の取得後、案件数だけでなく顧客継続率と営業利益額が改善したら
- 医療・介護の新たな顧客基盤を獲得した成果として、健康管理クラウドへの追加販売を評価する。ただし取得価額を含む投下資本に対して十分な利益が出ていることを確認する。
- 累進配当に加え、余剰現金を使った継続的な自社株買いが実行され、希薄化を相殺する株数減少が確認されたら
- 現金が少数株主に戻る確度を見直す。還元実績が所定の条件を満たせば、余剰現金の戻り方を75%から100%へ引き上げる。
見ておくもの
- 健診ソリューションの年間結果出荷数と医療費込み平均売上単価
- 健診ソリューションの営業利益率と受診者1件当たり営業利益
- Growbaseの登録ID数、契約企業グループ数、月次解約率
- GrowbaseのNRRと価格改定後の顧客継続率
- あしたのチームの買収寄与売上と独立採算、親会社からの融資残高
- のれん残高、償却負担、減損の有無
- 2026年10月発表のストレスチェック事業取得の完了、取得価額、買収後の採算
- 営業キャッシュフロー、ソフトウエア開発投資、配当総額
- 発行済株式数、新株予約権の未行使残と行使実績
- 法定健診・ストレスチェックの制度改正と健康データ標準化の進展
倍率と資本コストの決め方
現在の時価総額は、添付の2026年10月23日終値と株数から約144.7億円としたが、この値から将来の利益や倍率を逆算していない。2026年3月期の実績を健診出荷数、GrowbaseのID数、取得した人事評価会社の推定稼働顧客、医療機関向けBPOに分け、数量と価格から2036年の売上を積んだ。物価3%、短期金利2%、10年国債3%、ドル円150円を共通前提とし、AI代替は数量・価格とg_longに反映した。倍率は資本コスト6.75%、事業ROE、増分投資利益率の逓減、長期名目成長1%から計算した。楽観から中立まで式の上限をそのまま使い、現在や同業の市場倍率には寄せていない。
自己資本は2026年3月期の58.3億円を起点とし、10年間の累積純利益から配当・自社株買いを差し引いた。楽観から中立では新株予約権の概算払込約9億円を加えている。中立の125億円は、当初自己資本58.3億円+累積純利益約112億円−還元54億円+行使払込約9億円の流れに沿う。将来の余剰現金は各筋書きに明示しており、自動的な留保現金の重複加算は意図しない。
悲観時の時価総額40億円は、現在の自己資本から約18.3億円ののれんを除く資産価値を基礎とし、現在の純現金38.2億円を下回らない。2028年3月期以降の新リース会計基準で使用権資産とリース負債が計上される可能性はあるが、比較する営業利益と事業価値は従来の家賃費用を含む形にそろえる。期待価値は10年後の各時価総額を6.75%で割り引き、期間中の還元を平均5年目に受け取る前提で割り引いた値である。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3.0%と株式リスクプレミアム4.5%の基本7.5%に、循環性マイナス0.5%、財務マイナス0.25%を反映する。個別の買収失敗やAI代替は資本コストに上乗せせず、数量、価格、利益率と確率で扱う。