結論
KeePer技研は、車のコーティングと洗車の専門店「キーパーラボ」を全国で営み、コーティング剤などの製品をガソリンスタンドや新車ディーラーに売る会社だ。筆者の結論は、事業の質は高いが会社計画をそのまま信じる値段ではなく、今の時価総額は利益で測った価値とほぼ釣り合っている、というものだ。
稼ぎの源は 2 つある。1 つは直営とフランチャイズ(FC)のラボで、車 1 台ごとに施工料が入る。もう 1 つは製品で、新車の納車前に施工するコーティング剤が急に伸びている。2026 年 6 月期の売上は 260 億円と 12% 増えた。一方、営業利益は 69 億円と 3% 減った。売却益を元手にした特別賞与などの費用が約 11 億円入ったためで、実力は 80 億円前後と筆者は見る。
この期の純利益は 98 億円に跳ねたが、中身はソフト 99 株の売却益 68 億円という一度きりの利益だ。続く利益は 55 億円ほどにすぎない。見かけの数字に引きずられないことが、この会社を見る第一歩になる。
会社は 2031 年 6 月期に営業利益 161 億円、今の約 2 倍を掲げる。ただ前の計画では、新店が 67 店の予定に対し 41 店にとどまった。筆者は 10 年後の中立を営業利益 143 億円と置く。この水準でも利益は着実に増える。ただ増える分は払う値段にすでに織り込まれており、安全域は厚くない。分かれ目は、出店と人の確保、新車向け製品の伸びの 3 点だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、事業の性格は悪くない。車が走り続ける限り、汚れ落としとコーティングは繰り返し発生する。1 店ごとの採算も良く、会社が示す例では名古屋の 1 店で年間利益が約 3,000 万円になる。建物に 1 億円前後を投じても数年で回収できる計算だ。
ただ、筆者が最も重く見るのは堀の浅さだ。値上げが効いたのは事実だが、参入は容易で、技術者の確保が成長の天井になる。新車向けも、採用を決めるのはメーカーとディーラーで、KeePer の側ではない。数年で採用が外れれば、伸びも止まる。
オーナー利益、つまり株主が持ち出せる利益の見立ては、2026 年 6 月期の純利益 98 億円ではなく 55 億円前後だ。一度きりの売却益を外すと、今の時価総額は 18 倍ほどの値になる。成長を織り込めば妥当な水準で、安いとは言えない。
経営の資本配分は評価が割れる。ソフト 99 株の判断は的確だったが、利益を特別賞与などで先に使う姿勢は、株主の取り分を後回しにしているようにも映る。安全域は薄い。事業の質は評価しつつ、払う値段としては適正圏で、新規の買い手に魅力があるとは言いにくい。
何で稼ぐ会社か
事業は 4 本に分かれる。
1 本目は直営のキーパーラボだ。コーティングや洗車、車内清掃を専門に施工する店で、2026 年 4 月末で直営 143 店、FC 33 店になった。来店台数は前期比で 9% 増えたが、1 台あたりの単価は下がった。誰でも受け入れる方針に変え、手頃なメニューの客が増えたためだ。会社は 2026 年 6 月から全店で料金を 8% 上げた。
2 本目は FC だ。加盟店が店を運営し、本部には初期費用とロイヤリティ、ケミカル代が入る。直営よりはるかに利益率が高く、新しい中期経営計画ではこれを出店の主役に据えた。ただ始まって日が浅く、実績はまだ薄い。
3 本目は製品で、ガソリンスタンドなどの「プロショップ」に卸すコーティング剤だ。取扱店は約 6,500 店ある。ところがスタンドの統廃合と燃料需要の減少で、2025 年 6 月期は創業以来初めて前年を割った。
4 本目は新車向けだ。トヨタやスバルなどが納車前に行うコーティングに製品を納める。トヨタ向けを中心に 3 年続けて約 2 倍に伸び、いまの成長の主役になっている。国内の新車に占める採用率は、会社の説明でもまだ 1 割に届かない。
ほかにスマホやハウスクリーニング向けの「車以外」があるが、今期は分野を絞り込む方針だ。
優良さと弱いところ
強みは、製品と施工をひと続きで持っていることだ。コーティング剤をつくる会社が、自ら施工の専門店も営む。店で磨いた技術と客の反応が、製品の改良と技術者の教育に戻ってくる。技術スタッフは約 1,200 人にのぼる。営業利益率は 2022 年 6 月期から 30% 前後を保ち、ROE も 30% 前後と高い。値上げに客が逃げなかったことの証でもある。
新車向けの採用が広がっているのも強みだ。ディーラーがメーカーの純正に近い形で採用すれば、客の側から見て選ぶ手間がなくなる。スバルでは付帯率が 24% に達し、ボルボやメルセデス・ベンツ日本も採用した。
弱みは 3 つある。第 1 に、コーティングは参入の壁が低い。ディーラーが自前で施工する、他の専門店が値を下げる、といった手が打てる。強い堀と呼べるほどの独占ではなく、筆者は堀を普通と見る。第 2 に、人が稼ぎの上限になる。施工は人の手で、採用と教育が出店の速さを決める。第 3 に、計画の実行力に疑問が残る。前の中期経営計画で新店は 67 店の予定に 41 店、売上は 252 億円の予定に 232 億円だった。
経営はオーナー色が濃い。会長兼 CEO の谷好通氏が率い、同氏が設立したタニが約 2 割を持つ。意思決定は速いが、特別賞与や出店の拡大など利益を先に使う癖には注意がいる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の保有車は約 8,000 万台、新車の販売はおよそ 450 万台だ。市場の規模を示す調査はあるが、数字が桁でずれており当てにならない。そこで筆者は、車の数に対して専門店でコーティングや洗車を受ける車がどれだけあるかで見る。ラボの来店は年に約 80 万台で、保有車の 1% ほどにすぎない。伸びる余地はあるが、1% を 2% にするのに店も人も 2 倍いる。
追い風は 3 つある。1 つ目は、車を長く乗る人が増え、きれいに保つ需要が底堅いこと。2 つ目は、新車の納車前コーティングがディーラーで定着しつつあること。3 つ目は、人手不足で自分で洗車する人が減り、プロに任せる流れが強まっていることだ。
逆風も明確だ。ガソリンスタンドの数は減り続け、アフターマーケット向けの製品は先細りになる。会社自身が 2026 年 6 月期は前期比で 8% の減少を見込む。人口が減るので、国内の車の台数は長い目で見れば伸びない。電気自動車への移行で燃料店の客足がさらに減る可能性もある。
競争の形は 3 つに分かれる。製品ではソフト 99 が老舗で、ファンドのエフィッシモによる公開買い付けが成立し、持ち主が変わった。店では他社の洗車・コーティング専門店とディーラー内製がある。いずれも技術と人で差をつける世界で、KeePer の優位は店の数と技術教育の仕組みにある。
10 年後の姿は、車の数が横ばいで、1 台あたりの手入れの単価だけが物価で上がる市場だ。そこで店を増やして取り込む台数を伸ばせる会社が勝つ。
資本政策と M&A
お金の使い方は、成長に厚く、株主還元は薄いままだった。これまでの方針は、税引き後利益の約 4 分の 1 を株主に返し、残りの 4 分の 3 を成長投資に回すというものだ。2031 年 6 月期までの新しい計画では、配当性向を 40% 以上に上げ、直営店の建設に 5 年で約 110 億円を投じる。2026 年 6 月期の年間配当は、特別配当を含めて前期の約 1.7 倍になった。
この会社にとって最大の資本の事件は、ソフト 99 株の売買だ。2025 年に約 12% を約 43 億円で買い、MBO(経営陣による買収)への応募を見合わせて、より高い価格のエフィッシモの公開買い付けに応じた。売却益は 68 億円に達した。買値が安く、少数株主として有利な方を選んだ判断は妥当だった。ただ本業の稼ぎ方とは別の話で、同じ成果を繰り返せるとは考えない。
売却益は特別配当と特別賞与、成長投資に回った。いま手元には純現金が 133 億円ある。決算の説明資料には M&A に関わる費用も並び、買収に動く可能性がある。買収が成功した実績はまだない。
株主はタニが約 2 割、VT ホールディングスが約 17% を持つ。VT は 2019 年に資本業務提携で入ったホンダ・日産系のディーラー大手だ。この 2 者で 4 割近くを握るため、会社が敵対的に買収される可能性は低い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
会社の計画どおりに進めば、2031 年 6 月期に売上 470 億円、営業利益 161 億円に届く。計画の中身は納得感がある。直営店は 1 店あたり年間売上が約 9,200 万円で、利益率は 20% 以上が続く。FC は利益率が 5 割を超え、店が増えるほど本部の利益が積み上がる。
2026 年 6 月から全店で料金を 8% 上げた。来店台数が増える中での値上げで、物価に負けない単価の引き上げが利く証拠だ。新車向けは 3 年続けて約 2 倍に伸び、国内全体の採用率はまだ 1 割にも届かない。仮に 15% に乗れば、製品の売上は今の 3 倍近くになる。ガソリンスタンド向けの落ち込みは、この伸びで十分に吸収できる。
来期の営業利益は 90 億円と、実力の 80 億円から 1 割上がる見込みだ。特別賞与のような一度きりの費用が消えるだけで、利益は戻る。会社の技術者は約 1,200 人いて、採用を厚くしている。人手が足りないという悲観は、採用が進んでいる事実と合わない。
財務にも余裕がある。純現金が 133 億円あり、新店の建設費を自前で賄える。配当性向は 40% 以上に上がる方針で、株主への還元も厚くなる。ソフト 99 株の売買で見せたように、資本に対する判断も確かだ。
慎重な見方
最大の問題は、計画の実行力だ。前の中期経営計画では、新店は 67 店の予定に 41 店、売上は 252 億円の予定に 232 億円だった。今回の計画は直営と FC を合わせて 5 年で 320 店余りを増やす。これまでの出店ペースの 3 倍を超える速さだ。工事費の高騰と工事の遅れで、出店は想定を下回ると会社自身が認めている。
2026 年 6 月期は、売上が 12% 増えたのに営業利益は 3% 減った。来店台数は増えたが、1 台あたりの単価は下がった。誰でも受け入れる方針で安いメニューの客が増えたためだ。特別賞与は一度きりと言うが、人を増やせば人件費は続く。家賃や減価償却も店が増えるほど固定費として積み上がる。
アフターマーケット向けの製品は、ガソリンスタンドの減少で創業以来初めて前年を割った。新車向けの伸びは、採用を決めるトヨタなどメーカー側の意向に左右される。採用が外れる、値引きを求められる、といったことが起きれば、伸びは止まりかねない。
今期は 68 億円の売却益で純利益が膨らんだが、これを繰り返すことはできない。続く利益は半分ほどだ。それでも時価総額は 1,000 億円を超える。会社の計画が通る前提を先に払っている値段で、計画が 3 割遅れるだけで割高になる。
どちらに重みを置いたか
事業の質では強気の見方が優勢だ。1 店ごとの採算、FC の高い利益率、新車向けの伸びは本物である。ただ、会社計画の実行力と、堀の浅さ、人手という天井は慎重な見方のほうが強い。筆者は中立の営業利益を、会社が 2031 年に掲げる 161 億円の 9 割にあたる水準に、さらに 5 年かけて到達すると置いた。それでも 10 年後の中立の時価総額は 1,500 億円ほどで、配当を含めて今に割り引くと今の値段とほぼ釣り合う。確率はやや悲観側に寄せ、やや悲観を 24%、悲観を 11% とした。楽観の厚みが小さいので、全体はわずかに今の値段を下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 7,551 円2,061 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,537 円419 億円)。 今の値に割り戻すと 4,934 円1,347 億円、今との差 +33.2%、 期待の年率 +9.4%(資本コスト 7.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 13,705 円3,740 億円 | 2,085 円569 億円 | +326.2% | +15.6% | 1,105 円302 億円 |
| やや楽観 | 21% | 11,405 円3,113 億円 | 1,836 円501 億円 | +257.4% | +13.6% | 2,781 円759 億円 |
| 中立 | 37% | 8,991 円2,454 億円 | 1,572 円429 億円 | +185.1% | +11.0% | 3,908 円1,067 億円 |
| やや悲観 | 24% | 3,176 円867 億円 | 1,308 円357 億円 | +21.0% | +1.9% | 1,076 円294 億円 |
| 悲観 | 11% | 976 円266 億円 | 1,000 円273 億円 | −46.7% | −6.1% | 217 円59 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7,551 円2,061 億円 | 1,537 円419 億円 | +145.3% | +9.4% | 9,088 円2,480 億円 |
今の株価時価総額 3,705 円1,011 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 出店が計画どおり進み、新車向けも全国に広がる 10 年 利益 151 億円 · PER 23.9 倍 · 株価時価総額 13,705 円3,740 億円
出店が会社の計画どおり進み、直営は 250 店、FC は 250 店近くまで広がる。来店台数は 150 万台を超え、1 台の単価は料金の見直しとメニューの上位化で物価以上に上がる。新車向けは全国のディーラーに採用が広がり、採用率は 15% 台に乗って施工は 70 万台になる。
ガソリンスタンド向けは減るが、残った店の売上が伸びて下げ止まる。人手の確保にも成功し、技術者の育成が出店の足かせにならない。営業利益は 216 億円まで伸び、直営店の利益率は 22%、FC の高い利益率が全体を押し上げる。
会社が掲げた 2031 年の目標を数年遅れで上回る姿で、10 年間、すべてが噛み合った場合の筋書きだ。
- キーパーラボ直営(施工・洗車):数量 153(年間の来店台数(万台))× 価格 23,030(1 台あたり単価(円))→ 売上 352 億円・営業利益 77 億円。平均 255 店×1 店 6,000 台、単価 1.40 倍、利益率 22%
- FC・海外ラボ(本部収入):数量 260(期中の平均店舗数(FC・海外、店))× 価格 0.23(1 店あたり本部収入(億円))→ 売上 59 億円・営業利益 34 億円。FC・海外 260 店、利益率 58%
- 新車マーケット(納車前コーティング):数量 70.0(施工台数(万台))× 価格 22,176(1 台あたり納入額(円))→ 売上 155 億円・営業利益 65 億円。施工 70 万台(採用率 15% 台)、利益率 42%
- アフターマーケット・車以外(製品):数量 6,300(取扱拠点数(プロショップ、店))× 価格 148(1 拠点あたり製品等売上(万円))→ 売上 93 億円・営業利益 40 億円。拠点数が下げ止まり 1 拠点あたりも伸びる
倍率:事業の純利益 150 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 36.0% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 21.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 23.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 23.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)68 億円。全体の PER 23.92 倍、時価総額 3,649 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出店、人の確保、新車の採用拡大の 3 つが同時に計画どおり進む必要がある。前の計画で出店が 6 割しか進まなかった実績を考え、厚くは置かない。
やや楽観 21% 出店は計画の 8 割ほど進み、新車向けが主役になる 10 年 利益 126 億円 · PER 23.7 倍 · 株価時価総額 11,405 円3,113 億円
出店は計画の 8 割ほどで進み、直営は 240 店、FC は 235 店前後になる。来店台数は 140 万台、1 台の単価は物価をやや上回る。新車向けは採用が広がって施工が 57 万台まで増え、ラボと並ぶ柱になる。
ガソリンスタンド向けは減りながらも、拠点あたりの売上で補う。人手は採用の強化でなんとか足りるが、賃金の上昇で利益率は伸び悩む。営業利益は 180 億円で、直営店は 20% 台前半に収まる。
会社の計画には届かないが、成長は続く。株主への還元も増え、配当性向は 40% を超える水準で推移する。
- キーパーラボ直営(施工・洗車):数量 140(年間の来店台数(万台))× 価格 22,536(1 台あたり単価(円))→ 売上 316 億円・営業利益 65 億円。平均 240 店×1 店 5,850 台、単価 1.37 倍
- FC・海外ラボ(本部収入):数量 235(期中の平均店舗数(FC・海外、店))× 価格 0.22(1 店あたり本部収入(億円))→ 売上 52 億円・営業利益 29 億円。FC・海外 235 店
- 新車マーケット(納車前コーティング):数量 57.0(施工台数(万台))× 価格 21,701(1 台あたり納入額(円))→ 売上 124 億円・営業利益 50 億円。施工 57 万台、利益率 40%
- アフターマーケット・車以外(製品):数量 6,200(取扱拠点数(プロショップ、店))× 価格 139(1 拠点あたり製品等売上(万円))→ 売上 86 億円・営業利益 36 億円。拠点数はやや減り 1 拠点あたりで補う
倍率:事業の純利益 125 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 34.0% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 20.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 23.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 23.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)68 億円。全体の PER 23.7 倍、時価総額 3,024 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新車向けの伸びと出店の拡大が続くが、人の確保と工事費の重さで速度が落ちる。会社の計画より緩やかな成長を想定する。
中立 37% 出店は計画の 6 割強、新車向けは堅調で、人手が天井になる 10 年 利益 100 億円 · PER 23.3 倍 · 株価時価総額 8,991 円2,454 億円
出店は計画の 6 割強にとどまる。直営は 225 店、FC は 205 店ほどで、10 年後に 400 店台の体制になる。来店台数は 130 万台近くに増え、単価は物価並みに上がる。新車向けは採用が 10% 台に乗り、施工が 45 万台まで増える。
ガソリンスタンド向けは減る店と残る店が分かれ、売上は緩やかに縮む。人手不足は続き、賃金も上がるので、直営店の利益率は 18% 台にとどまる。FC は利益率が高く、全体の稼ぎを下支えする。
営業利益は 143 億円で、会社の 2031 年の計画値と同じ程度の水準に 5 年遅れで届く。値上げが効く間は安定して稼ぐが、堀が浅いので高い成長率までは続かない。
- キーパーラボ直営(施工・洗車):数量 128(年間の来店台数(万台))× 価格 22,043(1 台あたり単価(円))→ 売上 283 億円・営業利益 52 億円。平均 225 店×1 店 5,700 台、単価 1.34 倍、利益率 18.5%
- FC・海外ラボ(本部収入):数量 205(期中の平均店舗数(FC・海外、店))× 価格 0.22(1 店あたり本部収入(億円))→ 売上 44 億円・営業利益 24 億円。FC・海外 205 店、利益率 54%
- 新車マーケット(納車前コーティング):数量 45.0(施工台数(万台))× 価格 21,226(1 台あたり納入額(円))→ 売上 96 億円・営業利益 36 億円。施工 45 万台(採用率 10% 台)、利益率 38%
- アフターマーケット・車以外(製品):数量 6,000(取扱拠点数(プロショップ、店))× 価格 130(1 拠点あたり製品等売上(万円))→ 売上 78 億円・営業利益 31 億円。拠点数 6,000、1 拠点あたりは名目でほぼ横ばい
倍率:事業の純利益 99 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 30.9% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 19.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 23.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 23.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)68 億円。全体の PER 23.3 倍、時価総額 2,368 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:前の計画の達成率が 6 割だったことを踏まえ、今回も出店は計画の 6〜7 割と置く。新車向けとラボが堅調に伸び、人手が成長の速さを決める、最も確からしい筋書き。
やや悲観 24% 出店が遅れ、人手と競争で利益率が下がる 10 年 利益 63 億円 · PER 12.0 倍 · 株価時価総額 3,176 円867 億円
出店は計画の半分ほどで、直営は 190 店、FC は 150 店前後で止まる。工事費の高止まりと人手の確保難が重なり、新しい立地は 1 店あたりの来店が少ない。来店台数は 100 万台ほどで、単価は競争で物価の伸びに届かない。
新車向けは採用が一部のメーカーにとどまり、施工は 33 万台になる。ガソリンスタンド向けはさらに縮む。直営店の家賃や減価償却は店が増えた分だけ重くなり、売上が伸びなくても固定費は残る。
営業利益は 89 億円と今の実力をやや上回る程度で、成長はほぼ止まる。会社の計画とは遠いが、事業そのものは崩れない。
- キーパーラボ直営(施工・洗車):数量 103(年間の来店台数(万台))× 価格 21,056(1 台あたり単価(円))→ 売上 216 億円・営業利益 28 億円。平均 190 店×1 店 5,400 台、単価 1.28 倍、利益率 13%
- FC・海外ラボ(本部収入):数量 150(期中の平均店舗数(FC・海外、店))× 価格 0.21(1 店あたり本部収入(億円))→ 売上 31 億円・営業利益 15 億円。FC・海外 150 店、利益率 48%
- 新車マーケット(納車前コーティング):数量 33.0(施工台数(万台))× 価格 20,275(1 台あたり納入額(円))→ 売上 67 億円・営業利益 22 億円。施工 33 万台、利益率 33%
- アフターマーケット・車以外(製品):数量 5,600(取扱拠点数(プロショップ、店))× 価格 118(1 拠点あたり製品等売上(万円))→ 売上 66 億円・営業利益 24 億円。拠点数 5,600、1 拠点あたり 8% 減
倍率:事業の ROE 14.7%(現金の利息を除く)で k を上回るが、利益が名目でほぼ伸びない筋書き。成長 g をほぼ 0 とみると PER は 1÷k = 12.5 倍。家賃など固定費が残り利益の質が劣るので、12 倍に置いた。
確率:出店の遅れは前の計画で実際に起きた。賃金の上昇とコーティングの競争で利益率が削られる可能性も大きく、慎重な見方を強めに置く。
悲観 11% 人手と競争で出店が頓挫し、新車向けも外れる 10 年 利益 28 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 976 円266 億円
出店が頓挫し、直営は 150 店ほどにとどまる。誰でも受け入れる方針が裏目に出て単価が下がり、人手不足でさばける台数も落ちる。来店台数は 70 万台まで減り、競合の専門店とディーラー内製に客を奪われる。
新車向けはメーカーが採用を外し、施工は 22 万台に縮む。FC は加盟店が増えず、閉店も出る。ガソリンスタンド向けは取扱拠点が 4,800 店まで減る。直営の家賃や人件費は売上が落ちても減らず、利益を大きく圧迫する。
営業利益は 39 億円まで落ちる。事業は残るが、もはや成長する会社ではなく、株主への還元も細くなる。
- キーパーラボ直営(施工・洗車):数量 70.5(年間の来店台数(万台))× 価格 18,918(1 台あたり単価(円))→ 売上 133 億円・営業利益 8 億円。平均 150 店×1 店 4,700 台、単価 1.15 倍、家賃など固定費で利益率 6%
- FC・海外ラボ(本部収入):数量 90.0(期中の平均店舗数(FC・海外、店))× 価格 0.19(1 店あたり本部収入(億円))→ 売上 17 億円・営業利益 6 億円。FC・海外 90 店、利益率 35%
- 新車マーケット(納車前コーティング):数量 22.0(施工台数(万台))× 価格 18,216(1 台あたり納入額(円))→ 売上 40 億円・営業利益 10 億円。施工 22 万台、単価も下がり利益率 25%
- アフターマーケット・車以外(製品):数量 4,800(取扱拠点数(プロショップ、店))× 価格 103(1 拠点あたり製品等売上(万円))→ 売上 49 億円・営業利益 15 億円。拠点数 4,800、1 拠点あたり 2 割減
倍率:事業の ROE 7.8% は k 7% 以下なので正当化 PER の上限は 1÷k = 12.5 倍。利益が縮み家賃など固定費が残る筋書きで、上限の約 7 割弱(8.5 倍)に置いた。稼ぐ力(純利益 ÷ k)と純現金のうち大きい方を超えない。
確率:出店の失敗、採用の外れ、価格競争が重なる構造的な負けで、起これば大きな打撃になる。実現の可能性は低めだが、小さくはないと見て 1 割強とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
キーパーラボ直営(施工・洗車)
直営の専門店で車のコーティング・洗車・車内清掃などを施工する。来店 1 台ごとに施工料が入る。
| 数量年間の来店台数(万台) | 価格1 台あたり単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 79.6 | 16,450 | 131 | 17 |
| 10 年後 中立 | 128 | 22,043 | 283 | 52 |
取り方:開示はラボ全体の売上(2026/06 期は 9 カ月で約 100 億円、前年比 7% 増)と来店台数の伸び(9% 増)。年間のラボ売上を約 136 億円と置き、直営分を約 131 億円と推定した。来店は 1 台あたり約 1.6 万円(月次の 1.5〜1.8 万円台の中ほど)で割って約 80 万台。営業利益は特別賞与などの費用を含む形で全社 69 億円に合うよう割り振った(推定)。単価の中立は 10 年で物価並みの 1.34 倍。 数量は実物(来店台数)で、名目の市場の伸びからは置いていない。
FC・海外ラボ(本部収入)
FC 加盟店と海外店から入る初期費用・ロイヤリティ・ケミカル代。
| 数量期中の平均店舗数(FC・海外、店) | 価格1 店あたり本部収入(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 31.0 | 0.16 | 5 | 3 |
| 10 年後 中立 | 205 | 0.22 | 44 | 24 |
取り方:FC 店は 2026 年 4 月末で 33 店、海外は数店。中期経営計画の 2031/06 期は FC 250 店で 40.9 億円(1 店約 0.16 億円)、利益率は 58%。この 1 店あたりを今の店数に当てはめて約 5 億円と推定した(開示なし)。1 店あたりは物価で上がる想定。 数量は実物(店舗数)で、名目の市場の伸びからは置いていない。
新車マーケット(納車前コーティング)
新車ディーラーが納車前に行うコーティング向けに、製品を納める事業。
| 数量施工台数(万台) | 価格1 台あたり納入額(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 25.0 | 15,840 | 40 | 15 |
| 10 年後 中立 | 45.0 | 21,226 | 96 | 36 |
取り方:中期経営計画の「新車マーケットは年 25.6% 増で 2031/06 期 123.9 億円」を 2026/06 期起点と読み、約 40 億円を逆算した(9 カ月で 24% 増とも整合)。国内の新車は約 450 万台で、会社は採用率が 1 割に届かないと説明する。施工は約 25 万台(採用率約 5.5%)、1 台あたり約 1.6 万円と推定した。 数量は実物(施工台数=採用率の上昇)で、名目の市場の伸びからは置いていない。
アフターマーケット・車以外(製品)
ガソリンスタンドなどのプロショップ向けコーティング剤と、スマホ・ハウスクリーニングなど車以外の施工事業。
| 数量取扱拠点数(プロショップ、店) | 価格1 拠点あたり製品等売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 6,543 | 128 | 84 | 34 |
| 10 年後 中立 | 6,000 | 130 | 78 | 31 |
取り方:プロショップは 2026 年 6 月末で 6,543 店。全社売上 260 億円から他の 3 つを引いた残りの約 84 億円(アフターは年 3〜8% の減少、車以外は反動減)を拠点数で割った。車以外を含めたため 1 拠点あたりは実態より高く出る(推定)。拠点あたりの売上は、スタンドの縮小と燃料需要の減少で物価に届かず、中立で 10 年 1.01 倍(名目でほぼ横ばい)と置いた。
リスクと懸念
出店と人手の限界
直営と FC の合計で 5 年に 320 店余りを増やす計画は、前の計画の出店ペースの 3 倍を超える。工事費の高騰と工事の遅れ、技術者の採用難のどれかが詰まれば、成長は計画の半分になりうる。
単価の下がり
2026 年 6 月期は来店台数が増えたのに 1 台あたりの単価が下がった。誰でも受け入れる方針で安いメニューの客が増えたためだ。2026 年 6 月の 8% 値上げで戻るかどうかが試金石になる。
新車向けの採用が外れる
新車向けの成長は、トヨタやスバルなどメーカー側の採用に依存する。採用を外される、値引きを求められる、といったことが起きれば、製品事業の成長は止まる。
アフターマーケットの縮小
ガソリンスタンドの統廃合と燃料需要の減少で、アフターマーケット向けは創業以来初めて前年を割った。会社は今期も 8% 減を見込む。電気自動車への移行でさらに細る恐れがある。
一度きりの利益と利益の質
2026 年 6 月期の純利益はソフト 99 株の売却益で膨らんだ。続く利益は 55 億円前後で、見かけの数字で値段を決めると誤る。特別賞与のように利益を先に使う習慣が、続くのかどうかにも注意がいる。
買収の失敗
手元の純現金 133 億円と、決算資料に出てくる M&A の費用から、買収の可能性が考えられる。買収の経験が乏しい会社が高い値で買えば、資本を無駄にする。
固定費の重さ
直営店は建物や土地を借りて運営し、家賃と人件費は売上が落ちても減らない。店が増えるほど固定費が積み上がり、需要が落ちた局面では利益が大きく削られる。新リース会計(2028 年 3 月期から)で貸借対照表が膨らむ点にも注意する。
今後の分かれ目
- 新リース会計基準の適用後も、直営の既存店の 1 店あたり売上が年 9,200 万円を超えて伸びる
- 値上げと技術力が効いている証拠で、出店の採算が確かめられる。やや楽観・楽観の確度が上がる。
- 2026 年 6 月の 8% 値上げ後も来店台数が前年を上回り、1 台あたりの単価が戻る
- 客離れなしで単価が上がる力が確認でき、中立から楽観側に寄る。
- 新店の出店が 2 期続けて計画の 5 割を下回る
- 人手と工事費が成長の天井になる。やや悲観の筋書きに近づく。
- 新車向けの採用がトヨタ以外の大手メーカーに広がる
- 採用率が 10% 台に乗り、製品事業が成長の主役として固まる。やや楽観の筋書きに近づく。
- 新車向けの採用がいずれかの大手メーカーで外れる
- 成長のエンジンが止まり、製品事業は縮む。悲観側の筋書きが現実味を帯びる。
- 手元の純現金を使った大型の買収が発表される
- 買収が本業と相乗効果を持つかが分かれ目になる。失敗すれば悲観側、成功すれば楽観側の確度が上がる。
見ておくもの
- ラボの月次の来店台数と 1 台あたり単価(毎月の速報)
- 直営・FC の新規出店数と、計画に対する達成率
- 新車向け製品の売上の伸びと、採用メーカー・付帯率の動き
- アフターマーケット向けの売上の減り方(前期比 8% 減の計画との差)
- 営業利益率と、人件費・賃借料の伸び
倍率と資本コストの決め方
先に事業ごとに数量と価格を置き、10 年後の営業利益と純利益を積み上げた。今の株価や市場の倍率は使っていない。倍率は、現金の利息を除いた事業の ROE から k 7%・g 4% で出した正当化 PER(残る割合は堀が普通なので 1/2)に対して、楽観・やや楽観・中立は上限の約 9 割・約 9 割弱・約 8.5 割に置いた。やや悲観・悲観は構造で置き、7 割へ引き上げていない。自己資本は今の値に純利益の合計を足し、還元を引いて流した。今の純利益は売却益で膨らんでいるので、続く利益 56 億円を起点にした。直営店の家賃は営業費用に入れた今の形のままで置いたので、2028 年 3 月期からの新リース会計で数字の形が変わっても価値は変わらない。結論は今の値段に寄せていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 17.2→23.92 倍・やや楽観 PER 16.1→23.7 倍・中立 PER 15→23.3 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。