結論
INCLUSIVE Holdingsは、地域ブランドの企画・広告支援と、京都の老舗料亭「下鴨茶寮」の食品事業を二本柱にする持株会社である。筆者の結論は「割高」だ。下鴨茶寮には長く残る顧客価値があるが、広告や受託業務の利益が細る中で、持株会社の費用まで負担した株主利益は小さい。
2026年3月期は売上約46億円に対して営業赤字が約4億円だった。直後の四半期にはブランド支援事業が黒字化したものの、食関連事業と本社費の重さが残り、連結の営業損失は続いている。2028年5月期の連結黒字化は会社の目標であり、達成が確定した実績ではない。成熟期の利益をまず確かめ、それから成長を認めたい。
広告制作や運用、企業への助言は、顧客がAIエージェントを直接使うほど、外注件数と単価に圧力がかかる。逆に、料理そのもの、接客、商品づくりという現実の体験は置き換わりにくい。衛星画像を解析する行政サービスにも可能性はあるが、売上はまだ小さく、自治体への導入件数が利益や継続課金に直結するとは限らない。
10年後の中立では食品が成長してもブランド支援は縮み、全社の利益率はようやく低い一桁台に達する程度と考える。投資先の売却益は毎年続く収益に見込まない。5つの筋書きと資本コストを通じた現在価値は約11億円となり、比較基準の時価総額約31億円を6割強下回る。純現金は損失への備えになるが、配当実績のない少数株主が自由に引き出せるお金ではない。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主が最初に確認したいのは、10年後にも顧客が料金を払う必然性と、その料金が手元の現金に変わるかである。下鴨茶寮は、料理を食べる人や贈答品を贈る人がいる限り続き得る事業だ。江戸時代から残る名前と実際の調理設備は、媒体運用の技法よりはるかに長命である。商品を買い直す顧客の数、単価、食品の廃棄率を見れば、事業の本当の強さを毎年測ることもできる。
しかし株主が買うのは下鴨茶寮だけではない。広告と地域企画、宇宙関連、投資事業に加え、上場持株会社の管理費も負担する。広告外注の仕事がAIで減ると、浮いた人件費を他の事業へ回せる可能性はあるが、顧客への請求額まで同時に減る。その段階で売上維持を前提にした高い利益率を信じるのは難しい。
過去の大きな買収は、確かに価値ある食品ブランドを連れてきた。一方で、その後に減損を生じさせ、赤字と新株発行を挟んでいるため、再投資した資金の利回りが資本コストを超えたと認めるには早い。利益が回復したら、次の買収を急ぐより、企業の構造を簡素にし、現金還元と資本効率の改善で証明してほしい。
純現金約12.5億円は安全網だが、店舗運営、季節商品、今後の赤字、借入の返済を考えると全額が配当可能ではない。株価が現在より下がったとしても、事業の持続利益が見えないうちは安全域と呼べない。食品ブランドの良さと上場会社の値段を分ける態度が必要だ。
何で稼ぐ会社か
収入の柱は四つある。ブランドコンサルティングは地方企業や媒体社に対し、企画、SNS運用、広告制作、配信、地域再生の企画を提供し、受託料、運用手数料、広告収益の分配を受け取る。2026年3月期の外部売上は約22億円で、案件の採算悪化が営業赤字の主因になった。2025年10月には持株会社化し、ブランド支援を新設の事業子会社へ移した。
食関連事業は、1856年創業の下鴨茶寮を核に、京都本店や東京での飲食、百貨店売場、贈答品、ふるさと納税、電子商取引を運営する。2026年3月期の売上は約22億円、セグメント利益は約0.9億円で、赤字のほかの事業を支える存在になった。自社製造と老舗の看板は、広告代理店の受託料にはない価格決定力を一部に与える。ただし食材、製造人員、店舗賃料、配送費という現物のコストが必ず伴う。
宇宙関連事業はLAND INSIGHTが衛星写真をAIで解析し、農地の現地確認など行政の仕事を減らす「圃場DX」を提供する。会社資料では全国130超の自治体に導入されたが、売上は約0.3億円にとどまる。試行や低額契約を含む導入先数と、継続して対価を払う顧客数は区別しなければならない。投資事業は保有する営業投資有価証券を入れ替え、売却や評価の結果が業績に表れる。
売上の約半分を占めるブランド支援は人の作業時間への依存が高く、AIエージェント代替の対象となる。下鴨茶寮の料理・食品・接客は物理的な供給が中心で、同じ数量縮小を当てるべきではない。衛星サービスは自らAIを納品物に組み込む成果型に近いが、窓口や調査報告の受託部分には代替圧力が残る。この異なる四事業を一律の成長率で測ることはできない。
優良さと弱いところ
最も確かな堀、つまり顧客が値上げ後も選び続ける理由は下鴨茶寮の歴史と調理技術にある。長年の認知、京都の本店という場所、贈答にふさわしい商品開発は、生成AIが同じ文字や画像を作れることでは奪えない。会社資料には本店の顧客単価やEC購買者数の推移もあり、需要の質を追える。ただし利益率の高さや継続値上げの成功が10年間実証されたわけではなく、老舗というだけで高い投下資本利益率を保証しない。
ブランド支援の堀は弱い。顧客関係や媒体運用の経験はあるが、成果の大部分を人手と外部広告基盤に依存し、広告主による内製化とAIエージェントの直接利用を防ぎにくい。会社はAI活用を進めているが、代替困難な顧客の記録原本、法令に縛られた切替費用、年5%未満の解約率など、強い堀の認定に必要な二つ以上の開示証拠は見つからない。
衛星事業の130自治体超への導入は見逃せない実績だ。栃木県の多数の農地区画のデータ化など、自治体の現場に踏み込んだ知見が生まれつつある。それでも農林水産省が複数社の類似サービスを紹介しており、独占的な基盤とは言えない。収益への変換はこれからである。
資本効率の歴史は厳しい。2022年のオレンジ買収は食品事業への入口になった一方、グループの売上拡大後も営業赤字が続き、のれんなどの減損を経験した。純現金は厚いが、少数株主への現金還元は乏しい。筆者は食品の部分的な堀を評価しつつ、持株会社全体の堀は弱いと見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ブランド支援が向き合う市場は大きい。電通の調査による2025年の日本のインターネット広告費は約4兆円に達した。ただしこれは媒体費を含む広義の数字であり、INCLUSIVEがすべてを手数料として獲得できる市場ではない。同社のブランド支援売上約22億円をこの数字に当てはめても約0.05%で、市場支配力を示す数字にはならない。競争相手には電通グループ、博報堂DYグループ、サイバーエージェント、専門の制作会社がいる。
今後10年は広告の仕事の内訳が変わる。広告を生成し、配信先を調整し、結果を報告する工程ほどAIエージェントが直接担う。受託費の数量が減り、顧客の内製化で手数料も押される。地域で実際に施設を作り、利害関係者をまとめる企画には人が残るが、この強みだけで従来の広告売上が保たれるとは考えない。顧客数の伸びと単価の伸びを同時に期待するのは危うい。
食品の周辺市場は別だ。経済産業省が2026年10月に公表した2025年の食品・飲料・酒類EC市場は約3.33兆円で、前年比約7%成長した。しかしネットスーパーまで含む数字なので、高級料亭の贈答品市場をそのまま測るものではない。下鴨茶寮は、なだ万や美濃吉などの料亭系ブランド、百貨店の食品売場、ECの高級惣菜と競争する。単価が上がれば顧客の実質購買力が試され、食品価格を物価以上に上げ続ける保証はない。
行政向け衛星解析の市場は、全国約1,700市町村という導入対象の広さに比べて、支出予算と契約単価の開示が乏しい。会社の導入130超を単純に数えれば自治体の約8%だが、売上のシェアでも有料契約率でもない。農林水産省の紹介資料にはサグリ、パスコ、スペースシフトなど複数の選択肢が並ぶ。自治体調達の競争と画像解析技術の汎用化が進めば、導入数が増えても一自治体当たり収入は伸びない可能性がある。
資本政策と M&A
最大の資本配分は、2022年にオレンジの株式を取得した約16.5億円の買収である。これにより下鴨茶寮など食品と地域プロデュースが加わり、旧来のメディア事業だけでは持てなかった事業が育った。しかしグループはその後も赤字期が多く、2025年にはのれんやブランド関連の資産などを減損した。売上を買ったことと、株主に高い利回りを生む事業を買えたことは別問題である。
2026年6月の事業計画には、2028年5月期の連結営業黒字化と全セグメント黒字化、2030年の流通株式時価総額100億円を目指す道筋がある。後者は上場維持に関わる目標で、企業が株主に保証する価値ではない。売上、営業利益、ROEについて2030年の拘束力ある定量目標はなく、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額にも数字の約束なしである。決算期を変更した2027年5月期は14か月決算で、売上約59億円、営業損失約1.8億円を会社が見込む。
普通配当は近年ゼロが続き、自社株買いによる大きな株数削減も確認できない。一方で2026年に下鴨茶寮の電子クーポンによる株主優待が新設され、対象株数と保有期間に応じた特典がある。評価には券面額でなく引当費用の年約0.16億円を用いる。2026年には役員報酬削減を決めた半面、譲渡制限付株式報酬のため株式を発行しており、株数が増える負担も看過できない。余剰現金の株主への戻り方は保守的に見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
下鴨茶寮というブランドがなければ、同社を長期保有の候補にはしにくい。京都で170年近く続いた料亭の看板を商品開発とECに広げ、全国の贈答需要を取り込めば、小さな持株会社にとって意味のある利益を生み得る。公式資料ではEC購買者数が足元で増えており、既存の百貨店販路に加えて直販の比率が高まれば粗利益も改善する。食品は広告制作と違い、AIエージェントが料理を届けるわけではない。
ブランド支援もすべて消えるわけではない。地域の古い施設を再生する仕事や関係者を束ねる企画は、顧客がAIの画面を使うだけでは完成しない。2027年5月期の第1四半期には、売上が減る中でも同事業単体の黒字が確認された。赤字案件を切った結果であれば、規模を追わない経営への転換として評価できる。AIの道具を自社で使い、成果の高い企画へ人を集中させれば、少ない案件で収益を残せる。
LAND INSIGHTは既に130超の自治体で使われる圃場DXを持つ。導入の入り口を農地から森林、防災、固定資産調査へ広げられれば、同じ自治体から複数の用途の売上を得られる。栃木県の広い農地データの実績は、行政向けの新しい提案書に説得力を与える。衛星解析は自社がAIを成果物として売る領域で、単純な受託制作より長期の余地がある。
会社は2028年の黒字化を掲げ、持株会社費用を削る方針と役員報酬削減を公表した。食品の販売数が大きく増え、衛星事業が黒字化して、本社費が売上ほど増えなければ、10年後は過去の赤字会社とは違う経済性になる。新しい買収を無理に増やさず、既存ブランドへ資本を集中できれば価値は現状より大きくなる。
慎重な見方
大きな問題は食品以外の事業が、将来にわたって現金を生み出すか不確かなことだ。2026年3月期のブランドコンサルティングは売上が約22億円あっても営業赤字で、2027年5月期第1四半期に黒字化したとはいえ連結の赤字は残っている。広告制作、配信、媒体運用、調査報告は、AIエージェントが安く大量に作れる領域そのものである。顧客が内製化すれば、少ない人数で稼げるようになる前に、請求できる仕事自体が減る。
下鴨茶寮の価値も上場企業の儲けと直結しない。料理人や店舗、百貨店、配送に費用がかかり、贈答品需要には景気と季節の偏りがある。2026年の食関連のセグメント黒字は本社の費用を負担した後の数字ではない。食事や商品を買う人が増えても、食品原価と人件費が物価に沿って上がれば、利益が伸びるとは限らない。高級料亭が強くても、グループ全体の資本配分が良いことの証明にはならない。
衛星解析も需要はあるが、導入130自治体を130の高額継続契約とみなすべきではない。農林水産省が紹介する民間サービスは競合が多く、国の地図基盤と公開衛星データが整えば解析料金は下がり得る。AIの高度化が同社だけに有利とは限らない。もともと売上が小さいため、競争に勝っても本社赤字を埋めるまで長い時間を要する。
2022年の大型買収後に減損と赤字が続き、株式報酬による発行も行われた。現金約12.5億円は魅力に見えるが、少数株主はそれを清算して受け取れる立場にはない。業績の回復に何年もかかれば運転資金に吸収され、株主への現金還元も進まない。再編で資産を守れない場合には、現在の純現金ですら十分な下値保証ではない。
どちらに重みを置いたか
食品のブランド力と衛星解析の導入実績には上振れの芽があり、事業全体を無価値と見るべきではない。ただし今の時価総額を正当化するには、広告受託の縮小を食品の増益と本社費削減で埋め、しかもその利益を10年先まで残さねばならない。2026年までの赤字、過去の減損、2027年の通期赤字見通しを考えると、まだ証明された成果ではない。下に寄せる理由はAI代替そのものを二重に数えたからではなく、この会社固有の赤字継続、買収後の低い資本効率、還元不足にある。悲観側を41%、上振れ側を30%とし、残りを中立に配した結果、現在価値は市場価値を大幅に下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 241 円24 億円(+ 還元の換算額還元の合計 18 円2 億円)。 今の値に割り戻すと 111 円11 億円、今との差 −58.3%、 期待の年率 −0.3%(資本コスト 9.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 683 円69 億円 | 44 円4 億円 | +172.2% | +11.0% | 87 円9 億円 |
| やや楽観 | 18% | 339 円34 億円 | 25 円2 億円 | +36.3% | +3.3% | 66 円7 億円 |
| 中立 | 29% | 162 円16 億円 | 15 円2 億円 | −33.8% | −4.2% | 51 円5 億円 |
| やや悲観 | 27% | 127 円13 億円 | 11 円1 億円 | −48.0% | −6.6% | 37 円4 億円 |
| 悲観 | 14% | 121 円12 億円 | 8 円1 億円 | −52.0% | −7.2% | 18 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 241 円24 億円 | 18 円2 億円 | −2.8% | −0.3% | 259 円26 億円 |
今の株価時価総額 267 円27 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 12% 食品直販と衛星行政サービスが広く定着 利益 6 億円 · PER 10.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 683 円69 億円
下鴨茶寮の食品ギフトと直販商品が全国で浸透し、買い手は年143万人回相当まで増える。定番商品をリピートする顧客が育ち、商品の高付加価値化と適切な値上げで、食材費と人件費の上昇を吸収する。料亭の席数だけに依存しない売り方が広がり、食品事業の利益率は二桁台半ばへ上がる。
ブランド支援は従来型の運用代行を増やさず、収益性の高い地域案件と成果報酬に絞る。AIエージェントによる制作工数の消滅を、コスト削減と単価の維持で耐えるが、受託案件数そのものを現在以上に増やすとは想定しない。2027年の四半期に見えた選択と集中が通年で定着し、値決め力の弱い部分を撤退する。
LAND INSIGHTの圃場DXは約750自治体相当へ広がる。農地以外の林業・防災・固定資産調査でも成果のある有料サービスが売れ、既に商品として対価を得ている衛星AI解析が育つ。農水省が紹介する多数の競合と争うため独占にはならないが、自治体の現場データを蓄積し、業務の再利用が進む。
本社費は名目で増えても利益に見合う水準に抑えられ、新たな巨額M&Aを行わず現金還元を少しずつ始める。食品の伸びと行政案件の利益貢献が同時に起きた時だけ、連結利益は過去の最高水準を超える。
- ブランドコンサルティング:数量 100(年間有料案件のフルイヤー換算件数(公開は顧客数指数のみ、件数は推計))× 価格 0.29(受託案件1件当たり売上(億円/年、運用手数料・企画費等込み))→ 売上 29 億円・営業利益 3 億円。案件100件換算=現状と同数、単価は1.30倍。制作・運用のAI代替下で件数超過成長は見込まない。
- 食関連(下鴨茶寮):数量 1,430,000(年間利用顧客延べ人数(人回。2024年開示約80万人と最新の利用顧客指数から推計))× 価格 0.00(利用顧客一人回あたり平均売上(億円、百貨店卸売も含む混合単価))→ 売上 62 億円・営業利益 9 億円。高級ギフト・商品開発・EC直販の大成功で購買等価件数が1.86倍、単価1.52倍。
- 宇宙関連(LAND INSIGHT):数量 750(累計導入自治体に相当する継続サービス換算市町村数(実績の導入数を基礎、推計))× 価格 0.00(一自治体・一年当たり衛星解析売上(億円、有料・実証契約を平均した見掛け単価))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。130超自治体から全国の約4割へ、有料化・農地以外の用途が開く。
- 投資事業:数量 2.0(一年の証券売却案件換算数(推計))× 価格 0.70(売却案件1件当たり投資回収額(億円、原価を差し引く前))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。保有証券の売却益は慎重に少額だけ加算。
倍率:ROEは6.0÷33.0=18.2%でk9.25%を超える。全社の堀は弱いので増分RONIC=k+1/3×(ROE−k)=約12.2%だが、g_long=0%を上限とすると正当化PER=(1−0÷RONIC)÷(9.25%−0)=10.81倍。事業純利益5.937億円×10.81倍と現金4.5億円×戻り方0.75=約67.56億円。利益を強く予想した分だけ高くなり、倍率を恣意的に上げない。
確率:下鴨茶寮のEC・百貨店の市場浸透と自治体調査の用途拡大、広告事業の選択と集中が同時に成功する高難度の筋書き。広告受託数量は現状を超えない。
やや楽観 18% 下鴨茶寮の拡販が進み黒字が根付く 利益 3 億円 · PER 10.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 339 円34 億円
食品事業は贈答品の販路を拡大し、百貨店とECにおける年117万人回相当の販売に成長する。京都の老舗としてのブランドを維持しながら、製造設備の稼働率を高めることで利益が伸びる。食材と人件費は上がるが、新商品の売れ筋を見ながら過剰在庫と不採算商品を減らし、売上の増加を利益につなげる。
ブランド支援では広告主のAI活用が進み、従来の制作案件は減る。それでも地域施設や実際のイベントを束ねる仕事が残り、外注で専門性を買いたい顧客を確保する。現状より件数は約15%縮小するが、成果の確認しやすい案件へ集中するため、赤字から利益率一桁台後半へ変わる。優良さは価格を自由に決められるほどではなく、顧客との実務経験を生かす範囲にとどまる。
LAND INSIGHTは450自治体相当まで用途を広げるが、受注の多くは競争的な行政調達を通る。競合のサグリやパスコも技術を磨き、単価を一方的に上げられない。AIを使った自社商品に売上実績があるため利用自治体の拡大は見込むが、法対応の記録基盤という強い堀にはまだならない。
大型M&Aを控えた再建が継続し、本社費が売上増以上に膨らまない。少額の配当と株主優待が届くようになり、株主はようやく現金創出の実績を確認できる10年になる。
- ブランドコンサルティング:数量 85.0(年間有料案件のフルイヤー換算件数(公開は顧客数指数のみ、件数は推計))× 価格 0.27(受託案件1件当たり売上(億円/年、運用手数料・企画費等込み))→ 売上 23 億円・営業利益 2 億円。AIで作業を置き換えられる中で案件数0.85倍と比較的軽微な縮小は高品質化を前提にした上振れ。
- 食関連(下鴨茶寮):数量 1,170,000(年間利用顧客延べ人数(人回。2024年開示約80万人と最新の利用顧客指数から推計))× 価格 0.00(利用顧客一人回あたり平均売上(億円、百貨店卸売も含む混合単価))→ 売上 47 億円・営業利益 6 億円。購買等価件数1.52倍、単価1.41倍、EC・製造規模の改善。
- 宇宙関連(LAND INSIGHT):数量 450(累計導入自治体に相当する継続サービス換算市町村数(実績の導入数を基礎、推計))× 価格 0.00(一自治体・一年当たり衛星解析売上(億円、有料・実証契約を平均した見掛け単価))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。自治体用途増は進むが競合と入札が利益を制約。
- 投資事業:数量 1.0(一年の証券売却案件換算数(推計))× 価格 0.80(売却案件1件当たり投資回収額(億円、原価を差し引く前))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。機動的な売却収入と費用を相殺後の少額利益。
倍率:ROEは3.0÷22.0=13.6%、増分RONICは約10.7%。10年を超える名目g=0%は広告業務のAI代替と食品設備投資の負担を加味する上限で、PERは1÷k=10.81倍。事業純利益2.937億円と現金4.5億円に戻り方0.75を加えて約35.13億円であり、会社公表の目標時価総額を根拠にしない。
確率:ECの客数増と不採算広告案件の整理が順調でも、衛星解析の自治体入札競争は続くという改善側の筋書き。過去の赤字を考えると無条件には重くしない。
中立 29% 食品の拡販で辛うじて持続黒字に戻る 利益 1 億円 · PER 10.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 162 円16 億円
広告制作と運用の顧客はAIエージェントを自社で使うようになり、ブランド支援の年間受託量は約7割へ縮む。地域での調整や食と場を結ぶ企画は残るが、日々の広告作業を外注する必要は減る。単価も10年間の物価上昇を十分には取り戻せず、サービス売上は今より小さくなる。不採算案件を整理できた分だけ、利益率は少し改善する。
下鴨茶寮は長い歴史のある看板を守り、ECのリピート顧客と百貨店の販売が増える。購買等価件数は年97万人回へ増加し、商品の名目単価は物価上昇に沿って高くなる。売上増が製造・発送の固定費を薄めるものの、食材・人件費・賃料も上がるため、高い利益率が自動的に生まれるとは考えない。選択と集中で収益性は改善するが、その改善の多くは時間を要する。
LAND INSIGHTは自治体約230件相当への導入を広げ、農地調査以外の用途からも少額の継続収入を得る。2026年の導入実績が拡販の足場になる一方、公共予算と入札競争が単価を抑える。投資事業の売却収入は取得原価に見合うものとし、毎年の利益の柱に含めない。
本社費用は2026年に比べて人員の最適配置と共通業務の集約で抑制され、連結は営業黒字へ戻る。しかしROEは資本コストに届かず、新しい買収をすれば再び株主利益が薄まる可能性がある。再編前半の損失や整理費用で自己資本は大きく積み上がらず、保有する現金の一部を安全網として残しながら、優待以外の現金還元は実績が出るまで前提にしない。
- ブランドコンサルティング:数量 70.0(年間有料案件のフルイヤー換算件数(公開は顧客数指数のみ、件数は推計))× 価格 0.25(受託案件1件当たり売上(億円/年、運用手数料・企画費等込み))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。人月・広告運用型の中立数量0.70倍、単価1.12倍。AI代替の数量・単価制約に収める。
- 食関連(下鴨茶寮):数量 971,000(年間利用顧客延べ人数(人回。2024年開示約80万人と最新の利用顧客指数から推計))× 価格 0.00(利用顧客一人回あたり平均売上(億円、百貨店卸売も含む混合単価))→ 売上 37 億円・営業利益 4 億円。現物商品の購買1.26倍、物価3%×10年に概ね沿う単価1.34倍。製造・直販効率改善で利益率11%。
- 宇宙関連(LAND INSIGHT):数量 230(累計導入自治体に相当する継続サービス換算市町村数(実績の導入数を基礎、推計))× 価格 0.00(一自治体・一年当たり衛星解析売上(億円、有料・実証契約を平均した見掛け単価))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。自社AI解析の実販売があるため用途拡大、ただし年単価増は12%程度にとどめる。
- 投資事業:数量 1.0(一年の証券売却案件換算数(推計))× 価格 0.55(売却案件1件当たり投資回収額(億円、原価を差し引く前))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。売却収入に相当する取得原価・費用を差し引くと定常利益ゼロ。
倍率:ROEは1.30÷14.5=9.0%と資本コスト9.25%を下回り、新たな投下資本の超過収益は見込まない。10年以降のg_long=0%の下では正当化PERは1÷k=10.81倍が上限。現金利息を除いた事業純利益1.237億円と帳簿上の余剰現金4.5億円の株主への戻り方0.75から約16.75億円。過去の取引倍率や2030年の時価目標を使わず、上限そのものを用いた。
確率:2028年の黒字化を過信せず、食品の実質成長と広告の数量低下を同時に認める中心筋書き。食品の採算が改善しても全社のROEが資本コストに届かない。
やや悲観 27% 広告外注が減り食品の利益だけが残る 利益 −2 億円 · PBR 0.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 127 円13 億円
広告の運用や制作の多くがAIエージェントに代わり、ブランド支援の案件数量は現在の55%へ減る。広告主は自ら制作物を作り、配信結果まで機械で確かめる。地域再生の現場支援は残るが、固定の専門人員を従来の人数で抱え続けるほどの単価を払ってもらえない。ブランド事業は縮小後も小幅赤字から抜け出せない。
下鴨茶寮は食品そのものの競争力を維持し、実質販売数量もおおむね今と同じ水準を保つ。しかし贈答需要が伸び悩み、物価の上昇を全額販売単価に転嫁できない。季節商品と店頭販売には製造、賃料、配送の固定費が残り、食品の利益率は一桁台前半へ落ちる。ブランドがなくなるわけではないが、グループ全体の赤字を支える規模は持てない。
衛星事業は自治体140件相当で頭打ちとなる。国の基盤や他社サービスが普及し、解析結果の価格は下がる。農地の現場を理解することは役立つが、契約更新や有料化の実績が足りず、売上が増えたとしても収益貢献は限定的だ。
持株会社は管理費を削り、さらなる買収を止める。それでも連結営業利益は赤字に戻り、事業の稼ぐ力だけでは現金を生み続けられない。閉鎖できる資産の売却と流動資産の回収による床を見ても、先行する10年間の赤字と費用の負担は株主にとって大きい。
- ブランドコンサルティング:数量 55.0(年間有料案件のフルイヤー換算件数(公開は顧客数指数のみ、件数は推計))× 価格 0.22(受託案件1件当たり売上(億円/年、運用手数料・企画費等込み))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。AI代替の数量0.55倍、名目単価は据え置き、広告単価の下落圧力を反映。
- 食関連(下鴨茶寮):数量 770,000(年間利用顧客延べ人数(人回。2024年開示約80万人と最新の利用顧客指数から推計))× 価格 0.00(利用顧客一人回あたり平均売上(億円、百貨店卸売も含む混合単価))→ 売上 26 億円・営業利益 1 億円。実質販売数量横ばい、価格は物価の伸びを下回る1.20倍。
- 宇宙関連(LAND INSIGHT):数量 140(累計導入自治体に相当する継続サービス換算市町村数(実績の導入数を基礎、推計))× 価格 0.00(一自治体・一年当たり衛星解析売上(億円、有料・実証契約を平均した見掛け単価))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。自治体導入は頭打ちで公共入札により赤字が残る。
- 投資事業:数量 0.0(一年の証券売却案件換算数(推計))× 価格 0.55(売却案件1件当たり投資回収額(億円、原価を差し引く前))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。投資の新規売却を停止。
倍率:連結赤字のためPERで負の事業価値を無理に示さない。今の純現金12.5億円を起点に、今後の赤字で減る現金約2.0億円、不要となる事業用土地等の税後換価3.0億円、有価証券の税後回収0.7億円、閉鎖費用1.0億円から、処分可能額約13.2億円を上限・床とする。過去のPBRの底ではなく現在の自己資本15.3億円で割った0.862745倍。
確率:不採算広告案件の整理が収入減に追いつかず、食品事業は存続しても上場本社費の負担で再び赤字になる。過去の買収後の費用負担が会社固有の下側要因。
悲観 14% 広告事業の競争敗退と資産整理 利益 −1 億円 · PBR 0.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 121 円12 億円
広告主の制作・運用の内製化はさらに広がり、ブランド支援の受託件数は現在の35%へ落ちる。画像、記事、顧客の調査報告がAIエージェントで安価に作られ、従来の制作単価を保てない。地域施設の企画には仕事が残るが、それだけでは雇用と専門組織の費用を負担できず、事業を大幅に閉じる。長年の媒体顧客関係は収益を守るほどの堀にならない。
下鴨茶寮は料理や商品の魅力を保っても、高級贈答需要が弱り、食品販売件数は現在の8割程度に落ちる。原材料の上昇と顧客の節約が重なる中で価格転嫁は不十分になり、店舗の営業を縮小する。ブランド名だけなら残せるが、工場設備や百貨店の販売網を広く維持することは難しい。老舗の価値を否定せず、上場会社に残る利益を慎重に扱う。
LAND INSIGHTは圃場DXの優位を行政の共通地図基盤や競合に奪われ、稼働自治体が減る。農林水産省の紹介に多数の競合が並ぶ現状を踏まえると、導入実績が永久の独占につながるとはいえない。投資事業は新規出資を止め、証券を換金する。
悪化が深まる段階で食品以外の事業を整理し、資産と現金の流出をできるだけ抑える。決算上は最終年も赤字だが、継続企業としての高い倍率は与えない。少数株主に残る価値は、実体のない買収資産ではなく、税と閉鎖費用を引いて売れるものに限る。
- ブランドコンサルティング:数量 35.0(年間有料案件のフルイヤー換算件数(公開は顧客数指数のみ、件数は推計))× 価格 0.20(受託案件1件当たり売上(億円/年、運用手数料・企画費等込み))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。AI代替と競争敗退で現在の35%の案件、単価も0.91倍。
- 食関連(下鴨茶寮):数量 623,000(年間利用顧客延べ人数(人回。2024年開示約80万人と最新の利用顧客指数から推計))× 価格 0.00(利用顧客一人回あたり平均売上(億円、百貨店卸売も含む混合単価))→ 売上 21 億円・営業利益 0 億円。現物商品の購買81%、名目単価1.20倍、粗利益の大半を固定費が吸収。
- 宇宙関連(LAND INSIGHT):数量 70.0(累計導入自治体に相当する継続サービス換算市町村数(実績の導入数を基礎、推計))× 価格 0.00(一自治体・一年当たり衛星解析売上(億円、有料・実証契約を平均した見掛け単価))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。政府系競合と入札で契約数減、赤字。
- 投資事業:数量 0.0(一年の証券売却案件換算数(推計))× 価格 0.55(売却案件1件当たり投資回収額(億円、原価を差し引く前))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。投資事業の新規利益なし。
倍率:赤字の継続事業にはPERで正の価値を与えない。純現金12.5億円から終盤の事業縮小に伴う資金減3.0億円を控除し、食品店舗等の不要となる土地の税後換価2.7億円、営業投資有価証券回収0.7億円を加え、閉鎖費0.4億円を引いて清算可能な12.5億円だけを評価する。現在の自己資本15.3億円を分母にしたPBR0.816993倍で、将来の自己資本に過去の谷倍率を掛けてはいない。
確率:AIによる媒体運用の縮小に加え、食品の需要も低迷し、衛星解析が行政調達で選ばれなくなる複合悪化。清算費用を伴う事業縮小で資産床だけが残る。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ブランドコンサルティング
地域のブランド再生、広告の制作・運用、SNS、メディアの収益支援や企画を受託し、料金・手数料を得る。AI代替に直接さらされる。
| 数量年間有料案件のフルイヤー換算件数(公開は顧客数指数のみ、件数は推計) | 価格受託案件1件当たり売上(億円/年、運用手数料・企画費等込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.22 | 22 | −2 |
| 10 年後 中立 | 70.0 | 0.25 | 17 | 1 |
取り方:2026年3月期の公表セグメント外部売上22.09315億円を基礎に、会社が絶対顧客数を明かさず顧客数指数だけを公表するため、年間100件相当という換算基準を推計として設定し、1件平均2209万円を逆算した。実際の顧客実数ではない。広告運用・制作、人月のコンサルと一部の地域現場支援を包含する。AIエージェント代替では中立の実質案件量0.55~0.75倍、単価は物価1.34倍以下、10年以降のgは0%。記録の正本型と呼べる低解約率や法対応の二つの証拠はない。
食関連(下鴨茶寮)
京都・東京の料亭と百貨店・直販・ECの食品の売上。料亭本店の客単価とEC購買者数の開示を数量推定の参照にする。
| 数量年間利用顧客延べ人数(人回。2024年開示約80万人と最新の利用顧客指数から推計) | 価格利用顧客一人回あたり平均売上(億円、百貨店卸売も含む混合単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 770,000 | 0.00 | 22 | 1 |
| 10 年後 中立 | 971,000 | 0.00 | 37 | 4 |
取り方:2026年3月期の外部売上22.11212億円。会社の2024年成長資料には食関連全社で年間約80万人の利用顧客、2026年6月資料には利用顧客指数が2024年度約1.50、2025年度約1.45とある。これを接続して2026年3月期の延べ利用顧客を約77万人回と推定し、1人回あたり約2872円を求めた。これは百貨店卸売・EC・料理を混ぜた換算単価で、公式な注文単価ではない。別に2026年のEC購買者約3.4万人と本店客単価約2.1万円を確認し、内訳のばらつきに注意する。人が物理的に食べる・買う事業なので人月のAI数量縮小は適用せず、価格の1.34倍は物価3%の10年分に相当する。
宇宙関連(LAND INSIGHT)
衛星画像とAI解析で自治体の農地調査などを省力化する圃場DX。導入130超を得たが有料契約率や年額は非開示。
| 数量累計導入自治体に相当する継続サービス換算市町村数(実績の導入数を基礎、推計) | 価格一自治体・一年当たり衛星解析売上(億円、有料・実証契約を平均した見掛け単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 130 | 0.00 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 230 | 0.00 | 1 | 0 |
取り方:公表した導入自治体130超と公表セグメント売上0.30078億円の比から、一自治体約23.1万円を実績換算した。自治体数は有料年間契約件数と等しくないためこの単価は実勢料金ではない。2026年の栃木県などの実証・受託は自社のAI解析を納品している売上が存在する証拠となるが、独自DBや規制切替型の堀を保証しない。10年中立は用途拡大による導入増と、調達競争による単価抑制を別々に反映。調査報告の人月作業部分はAI代替の0.55~0.75倍、分析成果物部分は既販のAI商品として扱う。
投資事業
保有する営業投資有価証券の売却・入替えを行う。売却時の収入は定常の営業利益とは性質が異なる。
| 数量一年の証券売却案件換算数(推計) | 価格売却案件1件当たり投資回収額(億円、原価を差し引く前) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.0 | 0.55 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 0.55 | 1 | 0 |
取り方:セグメント外部売上約1.0962億円を基礎に、売却件数の開示がないため仮に2件換算とした。証券売却は保有資産と引き換えに現金になるだけで、売上全額が増分の価値ではない。将来の利益は取得原価、評価損、運用費を差し引く。投資有価証券の貸借対照表残高を余剰現金に二重計上しない。
リスクと懸念
AIエージェント代替と広告内製化
広告制作、SNS更新、成果報告、媒体運用、ブランド調査は、広告主がAIエージェントに直接指示するほど外注費が圧縮される。2026年3月期にはメディア関連案件の不振が売上の減少に寄与した。中立ではブランド支援の案件量を現在の7割へ減らし、単価の伸びも物価以下に抑える。顧客の業務の記録原本を保持するサービスではないため、席課金や成果物の多さを堀と誤認しない。
赤字継続と本社管理費
2026年3月期は事業別利益を足しても持株会社と全社費用の負担で約4.2億円の営業赤字となった。2027年5月期第1四半期も全社費用約1.33億円が計上された。経営計画のコスト削減は方向として妥当だが、食品の売上が伸びても持株会社費用を十分に吸収できるまでは株主利益が残らない。
食品のブランド力と原価の競争
下鴨茶寮の価値は歴史と実物の料理・商品にあるが、原材料や配送、人件費も物価とともに上がる。百貨店や競合料亭との競争、贈答品の需要減退、ECの集客費増加で、販売数が増えても粗利益率が落ちる可能性がある。上振れの筋書きにある高い利益率は、値上げの定着と販路の採算改善が伴う時だけ認める。
衛星解析の競争と自治体調達
LAND INSIGHTの圃場DXは130超の自治体に導入されたが、継続利用料と解約率は公表されていない。農林水産省の資料にはサグリ、パスコ、スペースシフトなど競合が並び、自治体は予算や入札で提供会社を変更できる。衛星画像の供給価格や行政地図基盤の共通化も、契約単価と継続率を下げるリスクとなる。
買収減損と希薄化
2022年のオレンジ株式取得には約16.5億円が使われ、下鴨茶寮を取り込んだ。だがその後にはのれん等の減損が生じ、買収費用を超える株主利益の回収は確認できない。株式報酬による新株発行や将来の資金調達が続けば、会社の事業価値が維持されても既存株主の取り分が薄まる。今の株数は2026年8月の発行を反映済みである。
純現金の過大評価と店舗固定費
純有利子負債はマイナス約12.5億円だが、食品事業の季節在庫、売掛金、製造・店舗の維持費(有報の建物賃借料だけで年約0.92億円)、赤字期の資金繰りを控除せず余剰現金と呼ぶのは危険である。新リース会計基準では店舗賃借の負債が表に出ることもあり、見掛けの純現金だけで安全性を判断できない。悲観は店舗閉鎖や資産売却の税金・費用まで見る。
上場維持の時価総額目標
会社は2030年に流通株式時価総額100億円以上を目指すが、これは価値評価の根拠ではない。収益が付いてこないまま株価だけを目標にすると、買収、株式交換、新株発行といった資本政策が既存株主の利益に逆行する恐れがある。営業利益と営業キャッシュフローが正になったかを目標の達成より先に見る。
今後の分かれ目
- 2028年5月期に全セグメントの営業黒字と連結黒字を実現し、翌期も維持したら
- 中立の本社費と各事業の利益率を実績で上書きし、食品以外の事業にも持続利益を認める。単年の投資売却益による黒字は除く。
- ブランド支援の顧客数指数は伸びても受託単価やセグメント利益が再び落ちたら
- AIエージェント代替と価格競争が顕在化したと判断し、ブランド支援の数量と利益率を悲観側へ修正する。
- 下鴨茶寮のEC購買者と本店顧客単価が増え、食品セグメント利益率が連続して二桁に定着したら
- 食品の実質シェア獲得と値決め力の証拠として、中立の数量と利益率を上方修正し、必要な再投資も同時に確かめる。
- LAND INSIGHTの有料自治体数、契約継続率、自治体当たり年収入が同時に開示・改善されたら
- 単なる導入件数から真の継続課金事業への転換を認める。低解約率と独自データ蓄積の証拠が揃った部分だけ、長期の堀を再評価する。
- 今後2期も営業赤字が続いて純現金が8億円を下回ったら
- 赤字の長期化と資金調達の可能性を重く見て、資産の床を再計算し、悲観の確率を引き上げる。
- 買収ではなく増配、自社株買い、事業の売却による現金還元が継続して実行されたら
- 余剰現金の株主への戻り方を0.75から1.0へ見直す余地がある。株数の減少と支払額を実績で確認する。
見ておくもの
- 2028年5月期の連結営業黒字化の達成状況と本社費用の年間推移
- ブランドコンサルティングの顧客数指数・売上単価・営業利益率
- 下鴨茶寮のEC購買者数・本店客単価・食品事業のセグメント利益率
- LAND INSIGHTの有料自治体数・契約金額・継続率、農水省の競争調達案件
- 現預金・純有利子負債・営業投資有価証券の推移と減損
- 配当・自社株買いの実績、譲渡制限付株式報酬と総発行株数
倍率と資本コストの決め方
現在株価を逆算せず、2026年3月期の外部売上とセグメント別営業利益から始めた。ブランド支援は公開顧客数指数を使った年100件換算、食品は旧開示の利用顧客約80万人と最新指数から当期約77万人回に推計、衛星は公表130自治体を基礎にした。ブランドの中立数量7割と名目単価1.12倍、食品の数量増と物価込みの単価、衛星の有料転換の不確かさを別々に見た。利益には本社費を残し、投資有価証券の売却収入を恒常利益にしなかった。
倍率は現在や過去の市場PER・PBRを根拠にせず、資本コスト9.25%、長期の名目成長率0%、全社の弱い堀から正当化PERを10.81倍とした。楽観から中立までは正当化上限そのものであり、AIリスクで倍率を再び引いていない。やや悲観と悲観は将来の増えた自己資本に床のPBRを掛けず、現在の純現金と税後で売れる資産から評価した。新リース基準で貸借対照表の負債表示は変わっても、賃料を営業費用に含む価値の前提は一貫させた。最後に時価総額約31.3億円と比較した。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5% + 上乗せ 1.0%。国債3%と株式リスクプレミアム4.5%による基礎7.5%に、循環、値決め力、純現金からの質0.75%と継続赤字の存続リスク1.0%を加えた。個別の買収失敗やAI代替は割増せず、事業数量と確率で表す。