結論
日建工学は、海岸の消波ブロックや川の護岸ブロック、土木シートを扱う会社だ。自社の工場は持たず、製造は協力工場に任せる。1964年に「3連ブロック」を開発して以来、官公庁の防災工事に支えられてきた。
筆者の結論は「適正」だ。事業は小さいが、手元に25億円の現金があり、借入はほとんどない。時価総額の約8割を現金が占めるため、事業の稼ぎを少し見るだけで値段は説明がつく。
ただ、稼ぎの源は災害復旧と国の防災予算で、年によって大きく振れる。2021年3月期の営業利益は12億円、その前の年は0.7億円だった。直近は3.5億円だ。
筆者が見るのは、現金の使い道と、稼ぎの山と谷のならし方だ。現金が株主に戻るなら、割安の側に傾く。戻らず積み上がるだけなら、今の値段は妥当にとどまる。
もう一つ、筆者が割安側に傾く可能性を残す理由がある。2026年2月に、同じ型枠の賃貸を営む技研ホールディングスが筆頭株主になった。再編や資本の使い方が動く下地は、すでに整っている。ここは、今後の数年で最も大きく動く変数だ。
10年の見立ては、現金の戻り方と、公共工事の山と谷のならし方で決まる。この二つに筆者は慎重な数字を置いた。それでも結果が今の値段に近いのは、事業の稼ぎと現金の厚みがほぼ釣り合っているからだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「現金が値段の大半を支える」型だ。時価総額30億円に対し、現金は25億円。事業の部分を、わずかな値段で買える計算になる。
ただ、事業の稼ぎは公共工事の波に乗る。山の年に12億円、谷の年に0.7億円と、振れ幅が大きい。筆者は、ならした利益を4〜5億円と見る。これを10倍ほどの倍率で評価しても、事業の価値は今の時価総額に近い。
筆者が最も気にするのは、現金の使い道だ。配当性向は2割にとどまり、現金は積み上がる。経営が株主に戻す意思を示すか、より良い使い道を見つければ、価値は一気に表に出る。逆に戻さないなら、現金の価値は割り引いて見るべきだ。
経営者の資本配分を採点するなら、守りは合格、攻めは未知数だ。借入をほぼ返し、安全な財務を保った点は評価できる。一方、現金を事業の成長や株主還元に使う方針は見えない。数字が語るのは、安全域の厚い会社であって、資本を働かせる会社ではない。
それでも、時価総額の8割が現金という事実は、悪い筋書きの下値を支える。悲観でも現金の半分は残る。この非対称さが、この会社を見る価値だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は二つある。一つは製品販売で、売上の約75%を占める。河川の護岸に使うコンクリートブロック、自然石を使った製品、土木シートなどを、土木工事の会社に売る。製品は協力工場に作らせるため、設備の負担が軽い。
もう一つは型枠貸与だ。消波根固ブロック、つまり波を和らげて海岸を守るコンクリートの塊を作る鋼製の型枠を、製造業者に貸して使用料を得る。型枠の保管、修理、輸送は子会社が担う。売上は約25%だが、災害の復旧が増えた年は利益が大きく跳ねる。
客の大半は土木建設業で、その向こうは国や自治体の発注だ。つまり、仕事の量は公共予算と災害の多さで決まる。受注生産はせず、受注残も開示しない。
従業員は連結で132人、工場を持たない身軽な形だ。上場株を9億円ほど持ち、配当を受け取っている。
もう少し丁寧に言うと、製品販売は「作らずに売る」商売だ。ブロックは協力工場が作り、日建工学は設計、営業、品質の管理を担う。工場の設備と従業員を持たないので、需要が減っても固定費の負担が小さい。一方で、協力工場の価格が上がれば利益はすぐ削られる。
型枠貸与は、逆に資産を持つ商売だ。鋼製の型枠は何度も使えるため、一度貸し出せば減価償却を超えて稼げる。災害復旧で型枠が足りなくなる年は、貸与料が一気に増える。2026年3月期の型枠の設備投資は1.4億円で、この資産は更新と増設が続く。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、ほどほどだ。3連ブロックは60年の実績があり、国の基準や設計に採用された製品は、簡単には置き換わらない。ただ、特許は古く、競合のブロックも多い。
値段を決める力は普通だ。官公庁の入札で決まる仕事が多く、値上げが通るのは、設計に指定された製品に限られる。原価は協力工場の価格と、鋼材などの上昇で決まる。
資本の効率は、並みの水準だ。過去10年のROEの中央値は6%ほどで、山の2021年は30%を超えた。自己資本の半分は現金で、これが利回りを下げている。
強みを探すなら、設備に重く投資しない身軽さと、型枠という資産を持つ点だ。弱みは、需要が公共予算と災害に左右されることと、規模の小ささだ。
経営の資本配分には、注文をつけたい。自己資本の約半分が現金と上場株で、事業に使われていない。それでも配当性向は2割にとどまり、自社株買いもない。保守的で堅実だが、株主から見ると資本の効率を下げている。
もう一つは、業績の読みにくさだ。受注生産ではなく、受注残も出さない。災害が起きた年に急に忙しくなる事業の性格上、会社の予想も当たりにくい。この点は、確信度を下げる理由になる。
取引先は国や自治体の工事を請け負う建設会社だ。信用の面では堅いが、価格の交渉力は弱い。支払いは工事の完成後になることが多く、運転資金が膨らみやすい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
消波根固ブロックの市場は、過去30年で約3分の1に縮んだ。港や海岸の整備が一巡し、新しい工事が減ったためだ。ただ、近年は台風と豪雨が激しくなり、復旧と改修の仕事が増えている。経営陣も、気候変動で中長期は漸増とみる。
追い風は国の防災予算だ。第1次の国土強靱化実施中期計画は、2026年度から5年で事業規模20兆円強を見込む。河川の護岸や海岸の補強も対象で、ブロックと型枠の需要を支える。
競合は、テトラポッドを持つ不動テトラが代表だ。型枠の賃貸では、技研ホールディングスが同じ分野にいる。その技研HDが2026年に日建工学の筆頭株主になった。業界の再編の動きとも読める。
人手不足と建設費の上昇は逆風だ。工事の遅れで出荷がずれ込み、年ごとの業績が振れる。人口が減る国内では、新設の工事は増えにくく、更新と復旧が主役になる。
気候変動の影響は、ここでは追い風になる。台風と集中豪雨が激しくなるほど、川の護岸と海岸の補強の仕事は増える。2021年3月期に、型枠貸与の営業利益が1年で10倍近くに跳ねたのは、その典型だ。国が防災に使うお金が増える局面では、この会社の収益は一気に膨らむ。
反対に、構造的な縮みもある。消波ブロックを新しく積む工事は、港や海岸の整備が一巡して減っている。復旧と改修が新設の減りを埋められるかが、10年の分かれ目だ。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。配当は5年間同額で、配当性向は約20%と低い。自社株買いはしていない。結果として現金が積み上がり、今は25億円を超える。
株主の顔ぶれが動いている。2026年2月に技研HDが16.8%を持つ筆頭株主になった。光通信の投資組合やフリージア・マクロスも名を連ね、資本の使い方に関心を持つ株主が多い。
上場株は9億円ほどで、日本国土開発やナガワなど取引先が中心だ。配当を受け取っているので、価値には足していない。過去には2017年に型枠の三省水工を買収した実績がある。
資本政策の焦点は、25億円を超える現金の使い道だ。事業の運転資金を6億円ほどと見ても、残る18億円は配当と自社株買いに回せる。実際には、5年間配当は同額で、現金は積み上がってきた。
技研HDは建設会社で、鋼製型枠の賃貸も営む。日建工学の型枠貸与と事業が重なるため、提携や経営統合の動きは、業界の再編として自然だ。ただ、現時点で公表された計画はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
時価総額の8割が現金で、事業の部分はほぼ無料で手に入る。年3〜5億円の営業利益が続くなら、事業だけで20〜40億円の価値があり、現金と合わせれば今の値段の2倍に近づく。
追い風も強い。国土強靱化の実施中期計画は5年で20兆円強で、災害の激甚化も止まらない。2021年のように災害復旧が増えれば、型枠貸与は一気に稼ぎ頭になる。製品販売は2026年に出荷が2割増えており、勢いがある。
株主の動きも変わった。技研HDが筆頭株主になり、光通信の投資組合も保有する。現金の使い道への圧力は強まり、増配、自社株買い、再編の可能性が出てきた。
設備を持たず、借入もない。安全な土台の上に、利益の山が加わる形だ。
仮に現金を半分しか評価しないとしても、事業を3億円の営業利益で10倍に評価すれば、合計は今の値段に並ぶ。それより上振れる要素(災害復旧、防災予算、再編、株主還元)が、いくつも重なる点が強みだ。
第1四半期の経常利益はすでに通期予想の3割を超え、会社は2027年3月期に営業利益5億円を見込む。直近の勢いは本物だ。
慎重な見方
稼ぎの山は一時のもので、ならせば小さい。消波根固ブロックの市場は30年で3分の1に縮み、型枠貸与は2026年も7.7%減った。営業利益は直近で3.5億円にすぎず、2021年の12億円は災害復旧の特需だった。
現金は25億円あっても、その多くは運転資金と、公共工事の支払いの待ち時間を支えるお金だ。配当性向は2割で、現金は株主に戻らず、積み上がるだけかもしれない。上場株の配当も、取引関係を守る持ち合いの性格が強い。
官公庁の予算に左右される事業は、予算が削られれば一気に細る。受注残の開示もなく、先が読めない。筆頭株主の技研HDは、競合であり、少数株主の利益と一致しない可能性もある。
10年後も、国内の新設は縮み、規模の小さな会社は大手に押される。
割安に見えるのは、PBRが0.6倍にとどまるからだ。ただ、公共工事の会社は、PBRが低いままの例が多い。現金が株主に戻らないなら、帳簿の価値が値段に反映されることもない。
技研HDが筆頭株主になった動きも、楽観一色では読めない。型枠の賃貸という同じ分野の競合が、相手の事情を知りながら持分を増やしている。少数株主が望む条件で再編が進むとは限らない。
どちらに重みを置いたか
強気の見方と慎重な見方は拮抗している。現金の厚みは確かだが、事業の稼ぎは読みにくく、現金が株主に戻る保証もない。確率は中立を最も厚くし、悲観側にもやや多めに置いた。結果として、10年の価値は今の時価総額に近い。現金の戻り方を0.75とした点が結論を左右する。 現金の半分近くは運転資金と戻らない分として割り引いて見た。災害復旧の特需は山の年に限り、毎年の稼ぎにはならしてしか入れていない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,568 円65 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 437 円8 億円)。 今の値に割り戻すと 1,909 円35 億円、今との差 +16.1%、 期待の年率 +9.3%(資本コスト 8.3%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 7,302 円133 億円 | 768 円14 億円 | +390.6% | +17.2% | 565 円10 億円 |
| やや楽観 | 18% | 5,476 円100 億円 | 604 円11 億円 | +269.6% | +14.0% | 1,094 円20 億円 |
| 中立 | 38% | 4,049 円74 億円 | 439 円8 億円 | +172.8% | +10.6% | 1,705 円31 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,863 円34 億円 | 302 円6 億円 | +31.6% | +2.8% | 520 円9 億円 |
| 悲観 | 13% | 658 円12 億円 | 274 円5 億円 | −43.3% | −5.5% | 121 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,568 円65 億円 | 437 円8 億円 | +143.5% | +9.3% | 4,006 円73 億円 |
今の株価時価総額 1,645 円30 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 防災予算と災害復旧が続き、現金も戻る 利益 8 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 7,302 円133 億円
国土強靱化の予算が続き、台風と豪雨の復旧が増える。製品の出荷は今より15%増え、設計に採用された製品の値上げが通る。型枠貸与は山の年が重なり、使用料の総額が物価を上回って伸びる。営業利益は9億円台で、2021年の山には届かないが、平均では大きく上がる。現金は自社株買いや増配で一部が株主に戻る。ただ、市場の縮みは長い目では変わらない。技研HDなど同業との再編が進めば、型枠の稼働率が上がる可能性もある。現金は事業の成長か株主還元に回り、資本効率が上がる。この筋書きでは、製品販売の利益率が8%台まで上がり、型枠貸与も山の年が2回ほど来る。会社は、現金の一部を使い、同業との統合や設備の強化にも動く。
- 製品販売(護岸ブロック・自然石・土木シート):数量 115(出荷量(千トン、推定))× 価格 0.68(1 千トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 78 億円・営業利益 7 億円。数量 1.15 倍、単価 1.45 倍、営業利益率 8.5%
- 型枠貸与(消波根固ブロック用の鋼製型枠):数量 170(型枠で作られるブロックの量(千トン相当、推定))× 価格 0.14(1 千トンあたりの使用料(億円・名目))→ 売上 24 億円・営業利益 3 億円。数量 1.13 倍、単価 1.40 倍、営業利益率 12.0%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.7% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)14 億円。全体の PER 14.97 倍、時価総額 124 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国土強靱化の予算が続き、災害復旧も増える筋書き。2021年のような山が数年に一度来るなら、利益はならして増える。現金が戻る動きも出る。
やや楽観 18% 稼ぎが今より上向き、現金も一部戻る 利益 6 億円 · PER 13.9 倍 · 株価時価総額 5,476 円100 億円
製品の出荷は今より1割弱増え、値段は物価を上回る。型枠貸与は災害復旧が一定続き、使用料は物価並みに伸びる。営業利益は7億円台まで戻る。配当は少し増え、現金は積み上がりながら、一部が株主に戻る。ただし、山の年の水準は続かず、ならせば中位にとどまる。製品販売の営業利益率は6%台を保ち、型枠貸与は谷でも赤字にならない。現金の運用益も、金利の上昇で増える。護岸ブロックの出荷は災害復旧と更新工事で底堅く、土木シートも新しい用途で伸びる。型枠貸与は、山ではないが谷も浅い。国の防災予算は2026年度から5年の計画で見通しが立ち、受注の山と谷が小さくなる。協力工場との関係も安定し、価格の上昇を吸収できる。
- 製品販売(護岸ブロック・自然石・土木シート):数量 108(出荷量(千トン、推定))× 価格 0.66(1 千トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 71 億円・営業利益 5 億円。数量 1.08 倍、単価 1.40 倍、営業利益率 7.0%
- 型枠貸与(消波根固ブロック用の鋼製型枠):数量 160(型枠で作られるブロックの量(千トン相当、推定))× 価格 0.14(1 千トンあたりの使用料(億円・名目))→ 売上 22 億円・営業利益 2 億円。数量 1.07 倍、単価 1.37 倍、営業利益率 10.0%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.3% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)14 億円。全体の PER 13.91 倍、時価総額 91 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:防災予算の追い風で、利益が過去の中位に戻る筋書き。直近の製品販売の勢いが続く姿だ。
中立 38% 公共工事の波をならし、現金は半分ほど戻る 利益 4 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 4,049 円74 億円
製品の出荷は横ばい、値段は物価並みに上がる。型枠貸与は市場の縮みと復旧の増加が打ち消し合い、量は少し減る。営業利益は5億円台で、過去12年の山の11.6%には遠い。直近の製品販売の黒字転換と国土強靱化の予算が、この水準の裏づけだ。配当は物価並みに増え、現金は積み上がる。営業利益は山の年と谷の年を平均した水準で、年によって2〜3億円の幅が出る。現金の運用益は短期金利2%で増えるが、配当は物価並みの増加にとどまる。製品の値上げは、設計に採用された品目から順に通り、協力工場の値上げと相殺される。型枠の償却は、今の型枠の取得した値段のまま続き、物価で増えない。更新の投資は建築費の上昇で膨らむが、事業の規模に比べて小さい。
- 製品販売(護岸ブロック・自然石・土木シート):数量 100(出荷量(千トン、推定))× 価格 0.63(1 千トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 63 億円・営業利益 4 億円。数量 1.00 倍、単価 1.34 倍、営業利益率 6.0%
- 型枠貸与(消波根固ブロック用の鋼製型枠):数量 143(型枠で作られるブロックの量(千トン相当、推定))× 価格 0.14(1 千トンあたりの使用料(億円・名目))→ 売上 20 億円・営業利益 2 億円。数量 0.95 倍、単価 1.34 倍、営業利益率 8.0%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.0% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)14 億円。全体の PER 12.64 倍、時価総額 64 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ここ数年の水準をならし、物価分だけ伸びる筋書き。製品販売の6%台の利益率と、型枠貸与の山と谷の中間を置く。
やや悲観 24% 公共予算が細り、利益が元に戻る 利益 2 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,863 円34 億円
製品の出荷は1割減り、値上げは通りにくい。型枠貸与は復旧の需要が減り、使用料の総額が細る。営業利益は2億円台に下がる。現金は運転資金の増加と、型枠の更新の投資で目減りし、株主への還元も増えない。新設の工事の減少と、復旧の需要の細りが重なる。型枠の使用料も下がり、稼働率が落ちる。現金は運転資金に取られ、運用益も縮む。官公庁の発注の減少と、競合の値下げが重なり、利益率は下がる。公共工事の支払いが遅れ、運転資金が増える。技研HDのような同業が型枠の賃貸で価格を下げれば、使用料の水準が下がる。現金の運用益は短期金利の2%で支えられるが、本業の赤字を埋めるほどではない。
- 製品販売(護岸ブロック・自然石・土木シート):数量 88.0(出荷量(千トン、推定))× 価格 0.60(1 千トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 53 億円・営業利益 2 億円。数量 0.88 倍、単価 1.28 倍、営業利益率 4.0%
- 型枠貸与(消波根固ブロック用の鋼製型枠):数量 110(型枠で作られるブロックの量(千トン相当、推定))× 価格 0.13(1 千トンあたりの使用料(億円・名目))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。数量 0.73 倍、単価 1.25 倍、営業利益率 3.0%
倍率:事業のROEは3%でkの8.5%を大きく下回る。縮む市場の利益の質に応じて9倍。余った現金は筋書きで0.75倍に目減りし、戻り方0.75で足した。
確率:官公庁の予算が細り、災害の復旧も減る筋書き。2019年から2020年の営業利益1億円未満の水準に近づく姿だ。
悲観 13% 市場の縮みと競合で、事業が赤字に近づく 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 658 円12 億円
消波根固ブロックの市場がさらに縮み、型枠貸与の使用料が3割以上減る。製品販売も価格競争に巻き込まれる。営業利益はほぼゼロで、型枠の償却と子会社の人件費が重い。現金は目減りするが、借入はなく、事業を縮小しながら続ける。再編で技研HDなどに事業を売る可能性もある。国の財政が厳しくなり、防災予算が細る。消波根固ブロックの需要は、30年で3分の1に縮んだ流れを、さらに加速させる。型枠貸与の使用料が下がり、子会社の人件費と償却が重くなる。製品販売も価格競争に巻き込まれ、利益が出ない年が続く。協力工場の稼働にも影響が出る。協力工場の閉鎖も重なり、納期が遅れて信用を落とす。
- 製品販売(護岸ブロック・自然石・土木シート):数量 75.0(出荷量(千トン、推定))× 価格 0.54(1 千トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 40 億円・営業利益 0 億円。数量 0.75 倍、単価 1.15 倍、営業利益率 1.0%
- 型枠貸与(消波根固ブロック用の鋼製型枠):数量 80.0(型枠で作られるブロックの量(千トン相当、推定))× 価格 0.11(1 千トンあたりの使用料(億円・名目))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。数量 0.53 倍、単価 1.10 倍、営業利益率 -5.0%
倍率:稼ぐ力はほぼゼロで、PERは使えない。今の自己資本49億円の約24%。純現金を下回ってよい(現金の使い方は少数株主に決められないため)。
確率:消波根固ブロックの市場の縮みが進み、競合に仕事を奪われる筋書き。官公庁の予算が国債費に押されて細る姿でもある。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
製品販売(護岸ブロック・自然石・土木シート)
河川の護岸に使うブロックや土木シートを、協力工場に作らせて土木建設会社へ売る。
| 数量出荷量(千トン、推定) | 価格1 千トンあたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.47 | 47 | 3 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.63 | 63 | 4 |
取り方:売上46.8億円と営業利益2.94億円は開示のセグメントの値。出荷量は開示がなく、ブロックとシートの混在した1トンあたりの売上を約4.7万円と置いた推定。
型枠貸与(消波根固ブロック用の鋼製型枠)
消波根固ブロックを作る鋼製の型枠を製造業者に貸し、使用料を得る。保管・修理・輸送は子会社が担う。
| 数量型枠で作られるブロックの量(千トン相当、推定) | 価格1 千トンあたりの使用料(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 150 | 0.10 | 15 | 1 |
| 10 年後 中立 | 143 | 0.14 | 20 | 2 |
取り方:売上15.27億円と営業利益0.59億円は開示のセグメントの値。型枠で作られるブロックの量は開示がなく、使用料を1トンあたり約1万円と置いた推定。2021年3月期は災害復旧で売上27.6億円・営業利益8.0億円まで跳ねた。
リスクと懸念
公共予算と災害への依存
売上の大半は官公庁発注の工事に結びつく。2021年3月期の営業利益12億円は災害復旧の特需で、その前の年は0.7億円だった。予算や災害の多さで、年ごとの業績が大きく振れる。
消波根固ブロックの市場の縮み
市場は過去30年で約3分の1に縮んだ。港や海岸の整備が一巡し、新設は少ない。気候変動で復旧は増えるが、型枠貸与は2026年3月期も7.7%減った。
現金が株主に戻らない可能性
現金は25億円を超えるが、配当性向は約20%、自社株買いはない。公共工事の支払いを待つ運転資金も要る。積み上がるだけなら、現金の価値は割り引いて見るべきだ。
筆頭株主の技研HD
2026年2月に技研ホールディングスが16.8%を持つ筆頭株主になった。型枠の賃貸という同じ分野の会社で、競合でもある。提携や再編の話が出るなら、条件は少数株主に有利とは限らない。
持ち合い株の評価
上場株9億円は、日本国土開発やナガワなど取引先が中心だ。配当を受け取る限り価値は利益に入っており、売却益として別に足すと二重になる。株価が下がれば自己資本が減る。
小さな会社の人と技術
従業員は132人で、型枠の保守と製品の設計には経験が要る。平均年齢は50代半ばで、後継の確保が課題だ。協力工場への依存も大きい。
今後の分かれ目
- 営業利益が3期続けて5億円を超える
- 山が続いたとみて、中立の利益率を上げ、楽観側の確率を厚くする。
- 配当性向の引き上げや自社株買いが発表される
- 現金の戻り方を1.0に近づけて評価する。割安の側に傾く。
- 型枠貸与の売上が2期続けて前年を割る
- 市場の縮みが復旧の増加を上回っているとみて、やや悲観の確率を上げる。
- 技研HDが追加で株を買い増す、または提携を発表する
- 再編の可能性が高まる。条件は少数株主に有利とは限らず、内容を見て判断する。
- 国土強靱化の予算が減額される
- 官公庁の予算に左右される事業が細る。悲観側の確率を上げる。
見ておくもの
- 製品販売と型枠貸与のセグメント利益
- 国土強靱化の年次の予算額
- 配当性向と自社株買い
- 技研HDの持株比率と動き
- 現金の残高と運転資金の増減
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業のROEと資本コスト8.25%から決めた。ROEがkを下回る筋書きではPERの上限は1÷k=11.8倍で、公共工事の波に乗る利益の質に応じて上限の9割台に置いた。余った現金は戻り方0.75で足し、株価からは置いていない。10年の価値が今の時価総額に近いのは、現金の厚みと事業の稼ぎがほぼ釣り合うためで、今の株価に寄せたわけではない。上場株は配当が利益に入っているので足していない。新リース会計の影響は小さい(事業所は小規模)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→14.97 倍・やや楽観 PER 11→13.91 倍・中立 PER 11→12.64 倍・悲観 PBR 0.24→0.243 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 1.0% = 8.5%。事業は傾いておらず、上乗せなし。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.25%。