結論
ツカダ・グローバルホールディングは、結婚式場とホテルを持つ会社だ。ゲストハウス型の結婚式場「ベストブライダル」を国内で19店舗・71会場運営し、ホテルはストリングスホテル、キンプトン新宿東京のほか、米国の3施設も持つ。2025年12月期の売上は731億円、営業利益は95億円で、営業利益は29%増えた。
筆者の結論は、今の値段はほぼ適正というものだ。株価の見た目は安いが、それは借金の重さと、結婚式の縮みを映している。純有利子負債は498億円と時価総額の1.8倍あり、2025年だけで312億円の投資をした。
結婚式は、受注が前期比11.6%減った。婚姻数の減少と、不採算店舗の閉鎖が重なる。会社はこれを、ホテルの拡大と米国の買収で補う。ホテルの売上は26%増えた。ただし、新しい施設は資本を食い、借り換えで利払いも増える。
中立の10年では、結婚式の件数は2割減り、ホテルの客室は3割強増える。営業利益は120億円ほど、純利益は60億円台前半で、今の水準とほぼ同じだ。物価で名目は膨らむが、金利と固定費が実質の成長を食う。ROEは7%と、資本コストに届かない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家の目で見れば、ツカダ・グローバルは「儲かる時と苦しい時の差が極端な、借金の重い会社」である。2025年は営業利益が大きく伸びたが、5年前の2020年は営業損失が115億円だった。この振れ幅が、株主の取り分の不確かさになる。
事業の質はまちまちだ。婚礼は、高単価と運営力があるが、需要が縮む。ホテルは、立地とブランドがあるが、資本を食い、景気と為替に左右される。W&Rは小さい。
資本の使い方は、積極的すぎる。1年で312億円を投じ、借入が183億円増えた。投資有価証券の評価損も26億円出した。ROEは、自己資本が積み上がるほど下がる。10年後の中立でも、ROEは7%と資本コストに届かない。
払う値段はどうか。時価総額は純資産の0.7倍で、一見安い。ただし、純有利子負債は時価総額の1.8倍ある。株主の取り分は、借金を引いた残りだ。10年後の本質価値は、今の値段とほぼ同じで、割安とも割高とも言い切れない。筆者は、安全域が薄い会社とみる。
何で稼ぐ会社か
事業は3つある。2025年12月期の売上731億円の内訳は、婚礼53%、ホテル43%、W&R(ウェルネス)4%である。
婚礼は売上388億円、営業利益73億円。国内で19店舗・71会場を運営し、ハワイに3施設、バリ島に2施設を持つ。年間の挙式は約9,400件で、1件あたり約410万円を売る。大半は自社が保有または賃借する専用の式場で、衣装、料理、装花、写真を一括で請け負う。
ホテルは売上313億円、営業利益44億円。ストリングスホテル名古屋・東京、キンプトン新宿東京に加え、2025年4月にANAホリデイ・イン東京ベイを開業した。米国ではハワイのKaimana Beach Hotel、ワシントン州のKimpton Palladian Hotel、テキサス州のW Hotel Dallas Victory(2025年6月に運営開始)を運営する。宿泊に加え、宴会や婚礼の収入も大きい。
W&Rは売上30億円、営業利益1.7億円。温泉施設「美楽温泉SPA-HERBS」とリフレクソロジーの「クイーンズウェイ」を運営する。不採算店の退店で黒字が定着した。
従業員は連結で約2,400人。婚礼が1,357人、ホテルが684人で、人手のかかる事業である。
優良さと弱いところ
優良さは、婚礼の運営力と、ホテルの立地・ブランドにある。婚礼は、衣装、料理、装花を一括して、1件あたり約410万円の高単価を取る。2025年は営業利益が26%増え、利益率は19%に達した。不採算店の閉鎖と改装が、利益率を押し上げた。ホテルは、都心の立地と国際的なブランド(キンプトン、W、ホリデイ・イン)を借りて、訪日客の高い単価を取っている。
弱みは3つある。第1に、婚礼の先行指標が悪い。受注件数は11.6%、受注残は8.2%減った。第2に、財務が重い。有利子負債は779億円と、1年で183億円増えた。自己資本比率は26.6%、支払利息の比率は売上の2.1%に上がり、利払い余力(インタレスト・カバレッジ)は13倍から7倍に下がった。第3に、2020年12月期は営業損失が115億円に達した。旅行と宴会が止まると、赤字は一気に深くなる。
経営は社長の塚田正之氏への依存が大きい。有価証券報告書は後継者計画を検討中と書く。2025年は投資有価証券の評価損も26億円出した。
堀、つまり他社がまねできない強みは、限られる。筆者は、残る割合を普通の水準でみる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要は3つの流れで決まる。
1つ目は婚礼だ。婚姻件数は年50万件を割り、減り続けている。式を挙げる割合も下がり、挙式を省く「ナシ婚」や、少人数・写真だけの形が広がった。ゲストハウス型は会場を貸し切り、1件の単価が高いが、固定費も重い。件数の減少は、利益を直接削る。10年で、婚礼の件数は2割ほど減るとみるのが妥当だ。
2つ目はホテルだ。訪日客は過去最高の水準で、都市部のホテルは稼働率も単価も高い。ただし、足元は国内の日本人の宿泊が減り、成長は2025年秋をピークに鈍っている。都心でホテルの新設が続き、供給も増える。
3つ目は金利と人件費だ。借入の大半は固定金利で、すぐには効かないが、借り換えのたびに利払いが増える。人手のかかる事業で、賃金の上昇は避けられない。
競合は、婚礼なら他のゲストハウス型の大手や、ホテル併設の式場、ホテルなら国内外のホテルチェーンだ。婚礼は、同業の撤退と閉鎖が進み、残った会場が選ばれやすくなる面もある。
なお、ホテルは供給の増える都心と、観光地での新設が重なり、稼働と単価の差が施設ごとに開きやすい。婚礼は固定費が重く、件数が減ると利益が急に落ちる。
資本政策と M&A
還元は小さい。2026年12月期の配当予想は、前期から増えるが、利益の1割台にとどまる。自社株買いの確認はできなかった。現金は成長投資に回す方針だ。
投資は大きい。2025年に312億円を使い、ほとんどがホテルの土地と建物の取得だった。テキサスのW Hotel Dallas Victoryは、帳簿で243億円にあたる。同じ年に、子会社株式の取得に34億円を使った。段階取得差益12.6億円と負ののれん10.3億円が、特別利益に出た。
資金は借入で賄った。長期借入金は146億円、社債は38億円増えた。借入の大半は固定金利だが、借り換えのたびに高い金利になる。設備の計画には、石垣島・宮古島などの仮称の案件も並ぶ。
社長の塚田正之氏と、資産管理会社のファインエクスパンドで、合わせて6割近い株を持つとされる。後継者の計画は検討の途中だ。時価総額が小さく、非上場化の可能性は否定できない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ホテルが伸びている。売上は26%増え、営業利益も18.5%増えた。米国の施設の取得と、訪日客による稼働と単価の上昇が効いた。2025年4月と6月に新しい施設を加え、通年の貢献は2026年に入る。会社は2026年12月期の営業利益を101億円、純利益を60億円と見込み、上半期の営業利益は35億円で進んでいる。
婚礼は利益率が19%近くまで上がった。営業利益は26.5%増えた。不採算店の閉鎖で、残った店舗の質が上がる。婚礼の同業は減り、勝ち残った会社に客が集まる。1件の単価も緩やかに回復している。
資産が裏づけになる。ホテルや式場の多くを自社で持ち、物価が上がれば不動産の価値も上がる。米国3施設の帳簿だけで420億円を超える。社長と資産管理会社で6割近い株を持つため、意思決定が速い。時価総額は純資産を下回り、評価は低い。
借金はあるが、借入の大半は固定金利で、利払いは営業利益の範囲に収まる。10年でホテルが倍近くになり、営業利益が180億円に届く筋書きは、十分にありうる。
慎重な見方
婚礼の先行指標が悪い。受注件数が11.6%、受注残が8.2%減った。婚姻数は減り続け、挙式をしない夫婦が増える。ゲストハウス型は会場を貸し切る分、固定費が重く、件数が減ると利益が急に落ちる。婚礼は売上の53%、利益の6割を占める。
ホテルの成長は、借金で買ったものだ。有利子負債は1年で183億円増え、779億円になった。借り換えのたびに金利は3.5%近くに上がり、利払いは10年で年12億円ほど増える。利払い余力は13倍から7倍に下がった。W Hotel Dallas Victoryに243億円を投じたが、米国の都市ホテルは為替と景気に左右される。
景気の波に弱い。2020年12月期は営業損失が115億円で、5年前の高い収益は、一度の外出自粛で消えた。投資有価証券の評価損も26億円出ており、資本の使い方に規律が足りない。社長への依存と、後継者計画の途中という点も不安だ。
純利益は特別利益に支えられた面がある。配当は小さく、資金は借金の返済でなく新しい投資に回る。時価総額が低く見えるのは、この借金とリスクを映しているからだ。
どちらに重みを置いたか
婚礼の縮みと借金の重さを強く見て、強気の言い分であるホテルの拡大は、中立の数量に織り込んだ。確率は中立を厚くし、受注の悪化と借金を考えて、やや悲観と悲観をやや厚めに置いた。楽観は、ホテルの拡大が計画どおり進み、婚礼の縮みが緩やかな筋書きに絞った。中立は会社予想に近く、強気の言い分を認めても、ROEは資本コストに届かない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 1,555 円731 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 193 円91 億円)。 今の値に割り戻すと 816 円384 億円、今との差 +44.9%、 期待の年率 +12.0%(資本コスト 8.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,066 円1,442 億円 | 259 円122 億円 | +490.7% | +19.4% | 233 円110 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,390 円1,124 億円 | 225 円106 億円 | +364.6% | +16.6% | 523 円246 億円 |
| 中立 | 36% | 1,846 円869 億円 | 198 円93 億円 | +263.1% | +13.8% | 736 円346 億円 |
| やや悲観 | 25% | 656 円309 億円 | 172 円81 億円 | +47.1% | +3.9% | 207 円97 億円 |
| 悲観 | 12% | 277 円130 億円 | 130 円61 億円 | −27.8% | −3.2% | 49 円23 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,555 円731 億円 | 193 円91 億円 | +210.4% | +12.0% | 1,748 円822 億円 |
今の株価時価総額 563 円265 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 7% ホテルが倍近くに育ち、婚礼の縮みも緩やか 利益 101 億円 · PER 13.2 倍 · 株価時価総額 3,066 円1,442 億円
訪日客と国内の旅行需要が高い水準で続き、ホテルの客室数は今の1.6倍に増える。石垣島・宮古島などの新しい施設が加わり、米国の3施設も安定して稼ぐ。婚礼は、同業の閉鎖で客が集まり、件数の減少は1割弱にとどまる。
宿泊の単価は物価以上に上がり、婚礼の利益率も19%台を保つ。営業利益率は14%台に上がる。借入は増えるが、利益が利払いを上回る。
営業利益は180億円に届き、純利益は100億円に近づく。それでも自己資本が積み上がるため、ROEは9%台で資本コストにようやく届く。ホテルの拡大が、婚礼の縮みを大きく上回る10年である。
- 婚礼:数量 8,636(挙式の施行件数(件))× 価格 570(1件あたり売上(万円))→ 売上 493 億円・営業利益 96 億円。件数は8%減
- ホテル:数量 92.8(年間の販売客室数(万室泊))× 価格 7.57(1室泊あたり売上(万円))→ 売上 702 億円・営業利益 112 億円。客室数1.6倍
- W&R(ウェルネス):数量 198(年間の利用者数(万人))× 価格 0.23(1人あたり売上(万円))→ 売上 45 億円・営業利益 4 億円。利用者1割増
倍率:事業の純利益 101 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.3% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.2 倍。全体の PER 13.23 倍、時価総額 1,332 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ホテルの拡大が計画どおり進み、婚礼の縮みが緩やかで、金利も落ち着く必要がある。条件が多いので7%にとどめた。
やや楽観 20% ホテルの拡大が婚礼の縮みを補う 利益 80 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 2,390 円1,124 億円
ホテルの客室数は今の1.45倍になる。2025年に加わった施設の通年の貢献と、新しい施設が効く。米国の3施設は、為替の影響を受けながらも稼ぎ続ける。婚礼は、件数が14%減るが、単価が物価並みに上がり、利益率はほぼ維持される。
W&Rは小さいまま黒字を保つ。営業利益率は13%台で、今の水準を上回る。
営業利益は150億円ほどで、純利益は80億円近い。借入は増え、利払いも上がるが、利益が吸収する。自己資本が積み上がるため、ROEは8%台にとどまる。ホテルが育ち、婚礼が緩やかに縮む、堅実な10年である。ただし拡大の投資は重く、1株の稼ぎが大きく増える形にはならない。
- 婚礼:数量 8,073(挙式の施行件数(件))× 価格 562(1件あたり売上(万円))→ 売上 454 億円・営業利益 84 億円。件数は14%減
- ホテル:数量 84.1(年間の販売客室数(万室泊))× 価格 7.40(1室泊あたり売上(万円))→ 売上 623 億円・営業利益 93 億円。客室数1.45倍
- W&R(ウェルネス):数量 189(年間の利用者数(万人))× 価格 0.22(1人あたり売上(万円))→ 売上 42 億円・営業利益 3 億円。利用者5%増
倍率:事業の純利益 80 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.0% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍。全体の PER 12.62 倍、時価総額 1,006 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ホテルの拡大が概ね計画どおり進み、婚礼の縮みが予想の範囲に収まる想定。業界の上位レンジに近い。
中立 36% ホテルの拡大で、婚礼の縮みと利払いの増加を補う 利益 63 億円 · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 1,846 円869 億円
婚礼は、婚姻の減少で件数が今の8割になる。単価は物価並みに上がるが、固定費の重さで利益率は17%台に下がる。ホテルは、2025年に加わった施設の通年の貢献と、新しい施設で、客室数が今の1.35倍に増える。宿泊単価は物価並みに上がる。
借入は増え、借り換えで金利が上がる。利払いは今より年12億円ほど増える。
営業利益は120億円ほど、純利益は60億円台前半で、今の水準とほぼ同じだ。物価で名目は膨らむが、実質では伸びない。自己資本は配当が小さいため積み上がり、ROEは7%まで下がる。「拡大しても、1株の稼ぎは増えない」10年になる。
- 婚礼:数量 7,510(挙式の施行件数(件))× 価格 554(1件あたり売上(万円))→ 売上 416 億円・営業利益 73 億円。件数は2割減
- ホテル:数量 78.3(年間の販売客室数(万室泊))× 価格 7.24(1室泊あたり売上(万円))→ 売上 567 億円・営業利益 79 億円。客室数1.35倍
- W&R(ウェルネス):数量 180(年間の利用者数(万人))× 価格 0.22(1人あたり売上(万円))→ 売上 40 億円・営業利益 2 億円。利用者は横ばい
倍率:事業の純利益 63 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.7% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.9 倍。全体の PER 11.87 倍、時価総額 743 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:婚礼の縮みと金利上昇を、ホテルの拡大がほぼ補う、会社の実力どおりの10年。2026年12月期の会社予想とも矛盾しない。
やや悲観 25% 婚礼が縮み、ホテルの拡大も鈍る 利益 29 億円 · PER 7.4 倍 · 株価時価総額 656 円309 億円
婚礼の受注は減り続け、件数は今の7割になる。固定費の重さで利益率は14%台に下がる。ホテルは、新しい施設の稼働が伸びず、客室数は今の1.15倍にとどまり、単価も物価に届かない。外国人客が減り、国内の宿泊も伸びない。
借入は増え、金利は上がる。利払いが利益を食う。営業利益は70億円まで下がり、純利益は30億円弱になる。
配当は小さいまま、資金は借金の返済に回る。ROEは4%近くで、資本コストを大きく下回る。拡大のために借りた分が、重しになる10年である。婚礼の固定費は減らしにくく、利益率の悪化が止まりにくい。
- 婚礼:数量 6,571(挙式の施行件数(件))× 価格 537(1件あたり売上(万円))→ 売上 353 億円・営業利益 51 億円。件数は3割減
- ホテル:数量 66.7(年間の販売客室数(万室泊))× 価格 6.92(1室泊あたり売上(万円))→ 売上 462 億円・営業利益 51 億円。客室数1.15倍
- W&R(ウェルネス):数量 162(年間の利用者数(万人))× 価格 0.21(1人あたり売上(万円))→ 売上 35 億円・営業利益 1 億円。利用者1割減
倍率:事業の純利益28億円・事業ROE3.8% は k 8.5% 以下なので、上限は1÷k=10.5倍。ROEが4%近くで新しい投資の稼ぎが資本コストを大きく下回るため、上限の約70%の7.4倍に置いた。谷の利益に谷の倍率を重ねてはいない。EV(時価総額+純有利子負債)÷営業利益も確認した。
確率:婚礼の受注減が続き、ホテルの稼働と単価が鈍る想定。借入の利払いも増え、利益が大きく削られる範囲。
悲観 12% 結婚式の需要が崩れ、借金だけが残る 利益 −19 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 277 円130 億円
婚礼の件数が今の55%まで減り、固定費の重さで利益率は9%に落ちる。ホテルは、都心の供給過剰と景気後退で稼働が伸びず、米国の施設も為替と景気で苦戦する。客室数は増えたが、単価は物価に届かない。
借入は増え、借り換えで金利が上がる。利払いは年30億円に近づく。営業利益は11億円まで落ち、利払いを払うと赤字になる。
配当は大きく減り、投資の失敗で減損も出る。純利益は赤字になり、自己資本は積み上がらない。借入が多いまま利益が消える、株主にとって最も厳しい10年である。2020年の危機の再来といえる。会場の売却や閉鎖で借金を減らす動きも出るが、時間がかかり、減損の費用が先に出る。
- 婚礼:数量 5,163(挙式の施行件数(件))× 価格 475(1件あたり売上(万円))→ 売上 245 億円・営業利益 22 億円。件数は45%減
- ホテル:数量 55.1(年間の販売客室数(万室泊))× 価格 5.95(1室泊あたり売上(万円))→ 売上 328 億円・営業利益 20 億円。客室数5%減
- W&R(ウェルネス):数量 126(年間の利用者数(万人))× 価格 0.19(1人あたり売上(万円))→ 売上 24 億円・営業利益 0 億円。利用者3割減
倍率:純利益は-19億円の赤字のため、PBRで置く。事業の稼ぐ力は借入の利払いで消えており、自己資本は今の372億円に掛けた。PBR 0.35倍は、所有する婚礼施設・ホテルの売却価値から純有利子負債を引いた残りを、約0.35倍とみた額である。EV(時価総額+純有利子負債)÷営業利益は利益が谷で大きく見えるが、PBRで置いたため倍率だけでは判断していない。
確率:婚礼の縮みの加速、ホテルの景気後退、為替と金利の悪化が重なる構造的な負け筋。起きる確率は高くないが、2020年の実績もあり無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
婚礼
ゲストハウス型の結婚式場「ベストブライダル」。国内19店舗・71会場と、ハワイ・バリ島の施設。衣装・料理・装花などを一括で請け負う。
| 数量挙式の施行件数(件) | 価格1件あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 9,387 | 413 | 388 | 73 |
| 10 年後 中立 | 7,510 | 554 | 416 | 73 |
取り方:セグメント売上は388.0億円・利益73.1億円(利益率18.8%)。施行件数は9,387件(前期比0.2%減)で、売上を割ると1件約413万円。受注件数は11.6%減、受注残は8.2%減と先行指標は弱い。
ホテル
ストリングスホテル、キンプトン新宿東京、ANAホリデイ・イン東京ベイ、米国の3施設など。宿泊・宴会・婚礼。
| 数量年間の販売客室数(万室泊) | 価格1室泊あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 58.0 | 5.41 | 314 | 44 |
| 10 年後 中立 | 78.3 | 7.24 | 567 | 79 |
取り方:セグメント売上は313.5億円・利益43.6億円(利益率13.9%)。客室数・稼働率・単価は本文に開示がないので、約2,000室・稼働約8割、宿泊に宴会・婚礼の収入を含めた1室泊あたり約5.4万円と推定した。2025年に開業・運営開始した施設は通年の貢献が2026年に入る。
W&R(ウェルネス)
温泉施設「美楽温泉SPA-HERBS」とリフレクソロジーの「クイーンズウェイ」。
| 数量年間の利用者数(万人) | 価格1人あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 180 | 0.16 | 30 | 2 |
| 10 年後 中立 | 180 | 0.22 | 40 | 2 |
取り方:セグメント売上は29.5億円・利益1.7億円(利益率5.7%)。利用者数は開示がなく推定で約180万人・1人の単価はごく小さい。不採算店の退店で黒字化した。
リスクと懸念
婚礼の縮み
婚姻件数は年50万件を割り、挙式をしない夫婦も増えた。2025年は受注件数が11.6%、受注残が8.2%減った。婚礼は売上の53%、利益の6割を占め、件数が減ると固定費の重さで利益が急に落ちる。
借金と金利
有利子負債は779億円で、1年で183億円増えた。借入の大半は固定金利だが、借り換えのたびに3.5%前後に上がる。10年で利払いは年12億円ほど増える。自己資本比率は26.6%で、2020年のような赤字の年に耐えられる余裕は小さい。
景気・外出の影響
結婚式、宴会、旅行は、外出自粛と景気後退で真っ先に止まる。2020年12月期は営業損失が115億円に達した。ホテルの拡大で固定費も増えており、次の危機では赤字が深くなりうる。
海外・為替
ハワイ、ワシントン州、テキサス州、バリ島の施設を持ち、W Hotel Dallas Victoryは帳簿で243億円にのぼる。為替と米国の景気に収益が左右される。海外の婚礼は為替の影響で回復が遅れている。
社長への依存と後継者
有価証券報告書は、社長の塚田正之氏への依存度が高く、後継者計画を検討中だと書く。事業の決定が人に偏るうえ、交代の局面で戦略や資本政策が変わる可能性がある。
資本の使い方
2025年は1年で312億円の投資をし、投資有価証券の評価損も26億円出した。配当は利益の1割台で、資金は新しい施設に回る。投資の収益が借入の金利を上回り続けなければ、ROEは資本コストに届かない。
今後の分かれ目
- 婚礼の受注件数と受注残が、2期続けて前年を下回ったら
- 婚礼の件数の前提を下げ、やや悲観側に確率を寄せる。
- ホテルの新しい施設の稼働と単価が、計画を上回って立ち上がったら
- ホテルの客室数の前提を上げ、楽観・やや楽観の確率を増やす。
- 有利子負債がさらに増え、利払い余力が5倍を割ったら
- 借金への評価を下げ、悲観側に確率を移す。
- 営業利益率が13%を割ったら
- 利益率の前提を下げ、中立をやや悲観寄りに見直す。
- 社長の交代や、創業者側による非上場化(TOB)が発表されたら
- 提示額を10年の価値(中立)と比べ、上回るかを考える。
- 配当性向の引き上げや自社株買いなど、資本効率の改善策を示したら
- ROEの前提を上げ、中立の倍率を見直す。
見ておくもの
- 婚礼の受注件数・受注残・施行単価
- ホテルの稼働率・単価と新しい施設の開業
- 有利子負債・利払い余力・自己資本比率
- 営業利益率(13%を割るか)
- 投資の規模と減損
- 社長の後継者計画と大株主の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)から置いた。自己資本が積み上がりROEが資本コスト k 8.5% に届かないので、上限は1÷k。上限の6〜9割に置いた。今の時価総額274億円に合わせて逆算してはいない。純有利子負債が重いので、EV÷営業利益も確認した(中立で約8倍)。利払いは、借り換えで3.5%に上がる分(10年で年12億円ほど)を純利益に入れた。減価償却は、今ある施設は取得時の値段のまま増えず、新しい施設の分だけ足されるとみて、利益率は物価で単純に変えていない。更新の投資は建築費の上昇で膨らみ、借入と利払いを増やす。賃借の式場は定期借地・定期借家で、新リース会計基準(2028年12月期)で形が変わるが、10年後は今と同じ形にそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→13.23 倍・やや楽観 PER 9.2→12.62 倍・中立 PER 8.6→11.87 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality を足した(決まり v2)。社長への依存や海外の運営リスクは k に足さず、筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.50% → 8.50%。