結論
オリジナル設計は、上下水道の計画・設計・施工監理を請け負う建設コンサルタントだ。1962 年の創業で、顧客の中心は全国の自治体である。
結論から言う。筆者は、10 年後の本質価値は今の時価総額 84 億円を 3 割ほど下回り、やや割高と見る。水道管の老朽化は待ったなしの課題で、更新の需要は長く続く。一方で、稼ぎは技術者の数に縛られ、利益率は高くない。
追い風は確かにある。人手が足りない自治体は、設計も施工管理も外へ頼らざるをえない。同社は 2025 年からクラックスシステム、日本技術サービス、アクティブフュージョンズの 3 社を買い、水道の設計と情報システムを組み合わせる形をつくっている。2026 年上期の売上は 23% 増えた。
懸念は 2 つある。入札で選ばれる仕事で、価格を自分で決められないこと。そして買収で広げた情報処理は、AI エージェントに人月を削られやすいことだ。筆者は、利益率が 11% 台にとどまる中立を中心に置いた。現金も時価総額の 2 割あり、下値は支えられる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「構造的な需要」と「平凡な利益率」を分けて見る。
需要は確かに強い。水道管の更新は先送りできず、自治体は技術者不足で外へ頼る。10 年後もこの需要は残る。ただ、価格を自分で決められず、技術者の数が天井になるので、利益は需要の伸びほどは増えない。
資本の使い方は悪くない。配当性向は 4 割弱で、自己株式の取得も続けてきた。ただ、買収を重ねる戦略は、筆者にとっては検証が難しい。小粒の買収が価値を生むのか、規模を買っただけなのかは、数年の実績を見ないと分からない。
10 年後の純利益は 8 億円強と置き、12 倍弱の値をつけた。現金は余った 8 億円に戻り方 0.75 を掛けて足している。
安全域は並みである。やや悲観の筋書きでは今の時価総額の 6 割、悲観では 1 割強にとどまる。現金の厚みは大きくなく、床は浅い。
何で稼ぐ会社か
事業は 2 つに分かれる。建設コンサルタントが売上の約 88%、情報処理サービスが約 12% だ。2025 年 12 月期の売上は 85 億円で、営業利益は 9 億円だった。
建設コンサルタントは、上下水道の調査・計画・実施設計・施工監理が柱である。道路や河川、公園、建築物の設計も手がける。仕事は国や自治体の入札と企画競争で決まり、売上は技術者の数と 1 人あたりの単価で決まる。セグメント利益は約 10 億円、利益率は 13.7% だった。
情報処理サービスは、ソフトウェア開発と IT エンジニアの提供だ。2025 年 1 月に買った大阪のクラックスシステムが入り、自治体向けの地図情報(GIS)や積算管理のシステムを持つ。利益はほとんど出ていない。
2025 年 7 月には、上下水道の設計や施設管理をする日本技術サービスを買った。2026 年 7 月には、受託開発と SES のアクティブフュージョンズを取得した。グループの従業員は 717 人である。
買収は小粒で、水道の仕事を厚くするか、水道の DX に使う情報システムの力を補うものが多い。
優良さと弱いところ
強みは、上下水道の分野で積み上げた実績と、自治体との関係である。計画から設計、施工監理まで一貫して請け負い、技術士の署名と入札の資格が参入の壁になる。買収で地図情報のシステムを持ち、水道の「設計」と「データ」を組み合わせられる点は、他社にない色だ。
堀としては普通と見る。入札では価格が左右し、技術者が転職すれば知見も動く。情報処理は競争が激しく、利益率が低い。
資本効率は並だ。ROE は過去 10 年で 6〜17% の間を動き、直近は 7%。営業利益率は 2017〜2018 年の 16% が山で、2021 年には 9% まで落ちた。直近は 11% 前後で、山には届かない。
財務は堅い。自己資本比率は 66%、純現金は 18 億円ある。配当性向は 4 割弱で、自己株式は発行済みの 2 割近くに達しており、株主を意識した姿勢は見える。ただ、買収を 3 回続けて純現金は 31 億円から 18 億円に減った。
気がかりなのは、買収した会社の収益力が見えないことだ。クラックスシステムの利益は小さく、のれんの重さも開示から読み切れない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
上下水道は、日本の社会基盤の中でも老朽化が深刻な分野だ。高度成長期に敷いた水道管が、法定の耐用年数を超え始めている。2025 年には埼玉県の下水道管の破損による道路陥没が起き、点検と更新への関心が一気に高まった。
国は、管理と更新を民間に一体で委ねるウォーターPPP(官民連携)を進めている。人口が減り、自治体の水道職員が足りない中、設計と施工管理を外部に頼る動きは続く。需要は構造的に厚い。
ただ、10 年で見ると、予算は名目で伸びるが、実質は横ばいに近い。物価が年 3% で上がる世界では、自治体の予算が名目で伸びても、できる仕事の量は増えない。技術者も足りず、採用と定着が天井になる。
競合は、日水コン、東京設計事務所といった上下水道の専門会社と、建設技術研究所のような総合大手である。専門性は高いが、規模では劣る。
AI は設計・作図・積算の工数を減らす。技術士の署名と責任は人に残るが、同じ成果物に必要な人月が減れば、入札の単価に下げ圧力がかかる。情報処理の受託・SES は、より直接に置き換えを受ける。
資本政策と M&A
資本政策は、還元と買収の両にらみだ。配当性向は 4 割弱で、2026 年は増配を見込む。自己株式は発行済みの 2 割近くまで取得してきた。
買収は 2025 年から 3 件。クラックスシステム、日本技術サービス、アクティブフュージョンズで、いずれも全株式を取得した。価格は非公表だが、小粒だ。純現金は 2024 年の 31 億円から 2025 年に 18 億円へ減った。
筆者は、純現金 18 億円のうち、賞与や運転資金、取得済みの代金を引いた約 8 億円を余りとみた。戻り方は 0.75 とした。買収に使う意欲が強く、現金が株主に戻る保証は弱いからだ。
買う側として、買収の質は今後の課題である。小さな会社を重ねるやり方は、統合の失敗で価値を壊す危険もある。一方で、買われる側になる確率は kabufu の推計で 10 年に 2 割強あり、時価総額が小さく現金もある点は、狙われやすい形だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
上下水道の更新は先送りできない。法定の耐用年数を超える管が増え、自治体は職員が足りずに外へ頼る。国もウォーターPPP で、官民連携を後押ししている。需要は 10 年先まで厚い。
同社は水道の計画から設計、施工監理まで一貫して請け負い、技術士の署名と自治体との長い関係を持つ。買収で、地図情報のシステムと水道の施設管理の力も取り込んだ。設計とデータを組み合わせて売れるのは、他社にない強みだ。2026 年上期の売上は 23% 増え、営業利益も 17% 増えた。
財務は堅く、純現金は 18 億円、自己資本比率は 66%。配当性向は 4 割弱で、増配も続けている。買収した 3 社の寄与が年間で出始めれば、営業利益率は山の 16% に近づく余地がある。自治体向けの地図情報(GIS)が水道の DX と結びつけば、設計の単価を守る武器にもなる。時価総額は小さく、現金もあるので、10 年待たずに価値が現れる可能性もある。
慎重な見方
更新の需要は強くても、利益は伸びにくい。仕事は入札で決まり、価格を自分で決められない。人件費は年 3% で上がり、物価に届く値上げは通せない。営業利益率は 2021 年に 9% まで落ちた。
AI の影響は軽くない。設計・作図・積算の工数が減れば、入札の単価に下押しがかかる。情報処理の受託・SES は、さらに直接的に AI エージェントへ置き換わる。買収で増やした部分は、まさにこの弱い型だ。
買収の質も見えない。クラックスシステムの利益はほとんど出ておらず、のれんの重さも開示から読み切れない。3 件の買収で純現金は 31 億円から 18 億円に減った。小粒の買収を重ねるやり方は、統合の失敗で価値を壊す危険がある。
通期予想は据え置かれたが、上期で営業利益が通期予想を超えているのは、下期が弱いことの裏返しだ。季節性の大きさが、利益の質への疑問を生む。通期の利益を上期の勢いで読むのは危うい。自治体の予算は、年度の切れ目で納期が集中するためだ。
どちらに重みを置いたか
水道の更新という強い需要は認めつつ、技術者が天井で、AI が人月を削る構図を中立に置いた。強気の言い分のうち、営業利益率が山の 16% に近づく部分は 7% に絞り、弱気の言い分のうち、利益率が 7% 台に戻る懸念はやや悲観に 22% で置いた。買収の質は未検証のため、確率は中立に厚く置き、悲観側は合わせて 3 割とした。現金の戻り方は 0.75。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 1,637 円98 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 387 円23 億円)。 今の値に割り戻すと 1,056 円63 億円、今との差 −24.4%、 期待の年率 +3.8%(資本コスト 7.6%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 2,778 円167 億円 | 549 円33 億円 | +138.2% | +9.1% | 233 円14 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,193 円132 億円 | 482 円29 億円 | +91.5% | +6.7% | 535 円32 億円 |
| 中立 | 42% | 1,898 円114 億円 | 416 円25 億円 | +65.6% | +5.2% | 972 円58 億円 |
| やや悲観 | 22% | 871 円52 億円 | 299 円18 億円 | −16.2% | −1.8% | 258 円15 億円 |
| 悲観 | 9% | 171 円10 億円 | 133 円8 億円 | −78.2% | −14.1% | 27 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,637 円98 億円 | 387 円23 億円 | +44.9% | +3.8% | 2,025 円122 億円 |
今の株価時価総額 1,397 円84 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.6% を下回るほど割高。
楽観 7% 水道の更新と官民連携が追い風となり、利益率が 13% に乗る 利益 11 億円 · PER 14.5 倍 · 株価時価総額 2,778 円167 億円
水道の更新が予想より速く立ち上がり、ウォーターPPP が各地で動く。同社は上下水道の設計と施工監理で受注を伸ばし、技術者を増やして数量は 1.2 倍になる。価格は物価並みの 1.34 倍に上がる。営業利益率は 13% に達する。
買収した 3 社の統合が進み、水道の DX で設計と情報システムを一体で売れるようになる。情報処理の利益率も 7% まで上がる。AI の影響は人月の部分にとどまり、設計では技術士の責任が壁になって単価が守られる。
還元は 33 億円に増える。ただ、利益率が山の 16% に近づくのではなく、同業でも珍しい水準を前提にするため、確率は 7% に絞った。
- 建設コンサルタント:数量 672(稼働する技術者(人、推定))× 価格 1,796(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 121 億円・営業利益 18 億円。数量 1.2 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 15%
- 情報処理サービス:数量 173(稼働する人員(人、推定))× 価格 786(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。数量 1.1 倍・価格 1.20 倍・利益率 7%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 7.60% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)6 億円。全体の PER 14.52 倍、時価総額 167 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:更新需要が予想より速く立ち上がり、買収した会社の統合も進む最良の筋書き。営業利益率が過去 10 年の山(16%)に迫る前提ではないが、同業でも珍しいので 7% に絞った。
やや楽観 20% 更新需要が安定し、買収が利益に乗る 利益 9 億円 · PER 13.5 倍 · 株価時価総額 2,193 円132 億円
水道の更新需要が安定し、自治体の外注が増える。技術者は 15% 増え、価格は物価にほぼ連動する。営業利益率は 11.8% と、今の水準を保つ。
買収した 3 社の寄与が年間で出始め、売上は 126 億円に達する。情報処理も 5% の利益率を確保する。AI の影響は設計の工数の一部にとどまる。受注は自治体の更新計画に沿って積み上がり、ウォーターPPP の案件にも参加できる。
配当は利益に合わせて増え、10 年で 29 億円を還元する。この筋書きが、強気の見方の中心になる。中立との違いは、数量が 5% 多いことと、利益率が 0.6 ポイント高いことの 2 点だ。
- 建設コンサルタント:数量 644(稼働する技術者(人、推定))× 価格 1,769(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 114 億円・営業利益 16 億円。数量 1.15 倍・価格 1.32 倍・営業利益率 14%
- 情報処理サービス:数量 157(稼働する人員(人、推定))× 価格 766(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。数量 1.0 倍・価格 1.17 倍・利益率 5.5%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.0% が k 7.60% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)6 億円。全体の PER 13.54 倍、時価総額 132 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:上期の売上は 23% 増え、営業利益も 17% 増えた。買収した 3 社の寄与が年間で出始める流れを踏まえ、2 割を置いた。
中立 42% 水道の更新が続き、技術者が天井、利益率は 11% 台 利益 8 億円 · PER 13.2 倍 · 株価時価総額 1,898 円114 億円
更新の需要は堅いが、技術者が天井になる。全体では、需要の強さが利益の増え方にそのまま表れない構図が続く。数量は 1.10 倍、AI が設計の工数を削るので、価格は物価に届かない 1.30 倍にとどまる。営業利益率は 11% 台に落ち着く。
情報処理は、AI が人月を削る一方で、買収で人員が増えるので、数量は 0.95 倍と置く。利益率は 4% と低いままだ。全体の営業利益は 13 億円強、純利益は 8 億円強となる。
配当性向は 4 割弱を保ち、10 年で 25 億円を還元する。現金は買収と還元に使われ、積み上がりは緩やかである。
- 建設コンサルタント:数量 616(稼働する技術者(人、推定))× 価格 1,742(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 107 億円・営業利益 14 億円。数量 1.10 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 13.5%
- 情報処理サービス:数量 149(稼働する人員(人、推定))× 価格 753(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。数量 0.95 倍・価格 1.15 倍・利益率 4%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 7.60% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)6 億円。全体の PER 13.16 倍、時価総額 112 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:更新需要は堅く、自治体の技術者不足で外注が増える流れが中心。技術者の確保が数量の天井で、AI が情報処理の人月を削る筋書きを中心に置いた。
やや悲観 22% 自治体予算が頭打ちになり、AI が設計と開発の工数を削る 利益 5 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 871 円52 億円
自治体の予算が頭打ちになり、入札の価格競争が強まる。AI が設計・作図・積算の工数を削り、単価に下押しがかかる。数量は 1.0 倍、価格は 1.2 倍にとどまる。
営業利益率は 7% 台まで下がる。情報処理は人月が縮み、利益が出ない。買収した会社ののれんの償却や減損が重なる。自治体の入札は価格の比重を上げ、技術提案での差別化が効きにくくなる。
配当は据え置きに近く、10 年で 18 億円。純利益は 4〜5 億円に落ち、評価は事業の稼ぐ力と、戻り方で割り引いた現金で決まる。営業利益率は、2014 年から 2016 年の 9〜10% より低い。
- 建設コンサルタント:数量 560(稼働する技術者(人、推定))× 価格 1,608(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 90 億円・営業利益 9 億円。数量 1.0 倍・価格 1.2 倍・営業利益率 10%
- 情報処理サービス:数量 126(稼働する人員(人、推定))× 価格 721(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。数量 0.8 倍・価格 1.1 倍・利益率 1%
倍率:事業の ROE 4.3% は k を下回る。ためた利益は額面を割る価値なので、PER の上限は 13.2 倍だが、ROE÷k に比例して引き、利益率が 7% 台まで下がる筋書きとして 9 倍に置いた。
確率:営業利益率は 2020〜2022 年に 9〜11% で、2014〜16 年にも 9〜10% だった。この水準に戻る力が働き、AI が人月を削る筋書きに 2 割強を置いた。
悲観 9% 自治体が内製化と AI に傾き、設計も開発も縮む 利益 1 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 171 円10 億円
自治体が AI を使った内製化に傾き、設計の外注が縮む。情報処理は AI エージェントにほぼ置き換わり、数量は 0.6 倍に落ちる。建設コンサルの価格も 1.05 倍にとどまる。
営業利益率は 2% 台に下がり、買収したのれんの減損で自己資本も傷む。上下水道の更新は続くが、同社のシェアは落ちる。小さな会社の弱さが、買収で広げた事業の弱さと重なる。受注の落ち込みを補う手段が、乏しくなる。
この筋書きでは、評価は事業の稼ぐ力で決まる。純利益 1 億円強に低い倍率をつけ、余った現金に戻り方 0.75 を掛けて足した約 10 億円で置く。
- 建設コンサルタント:数量 476(稼働する技術者(人、推定))× 価格 1,407(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 67 億円・営業利益 3 億円。数量 0.85 倍・価格 1.05 倍・営業利益率 5%
- 情報処理サービス:数量 94.2(稼働する人員(人、推定))× 価格 655(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。数量 0.6 倍・価格 1.0 倍・利益率 −3%
倍率:事業の ROE は 1% 台で k を大きく下回る。稼ぐ力が小さい筋書きなので、上限を大きく下回る 7 倍に置いた。余った現金には戻り方 0.75 を掛けて足している。
確率:自治体の予算縮小と AI による設計・開発の代替が重なる構造的な負け。上下水道の更新は残るため 9% にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建設コンサルタント
上下水道の調査・計画・実施設計・施工監理を柱に、道路・河川・公園・建築物の設計も手がける。2025 年 7 月に日本技術サービスを子会社化。
| 数量稼働する技術者(人、推定) | 価格1 人あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 560 | 1,340 | 75 | 10 |
| 10 年後 中立 | 616 | 1,742 | 107 | 14 |
取り方:2025/12 期の有価証券報告書のセグメント(建設コンサルタント 75.06 億円・利益 10.3 億円・利益率 13.7%)。グループ従業員 717 人のうち、情報処理の人員を差し引いた約 560 人を技術者と推定し、1 人あたり売上 1,340 万円とした。日本技術サービスは 2025 年 7 月からで、2025 年の数字には半年分しか入っていない。型は技術士の署名と自治体の入札が要る許認可・現場に近い建設コンサル。
情報処理サービス
ソフトウェア開発と IT エンジニアの提供。クラックスシステム(自治体向け GIS・積算)とアクティブフュージョンズ(受託開発・SES)。
| 数量稼働する人員(人、推定) | 価格1 人あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 157 | 655 | 10 | 0 |
| 10 年後 中立 | 149 | 753 | 11 | 0 |
取り方:2025/12 期の有価証券報告書のセグメント(情報処理サービス 10.28 億円・利益 0.17 億円・利益率 1.7%)。グループ従業員 717 人から建設コンサルの技術者を引いた約 157 人と推定し、1 人あたり売上 655 万円とした。アクティブフュージョンズ(2026 年 7 月取得)は 2025 年の数字に入っていない。AI エージェント代替の型:人月・工数で売る型(売上の約 12%)。価格は物価に届かない 1.15 倍を中立に置く(成果報酬に移れた証拠が無い)。
リスクと懸念
AI エージェントが設計と開発の工数を削る(AI エージェント代替)
売上の約 88% を占める建設コンサルは、設計・作図・積算の工数で稼ぐ。技術士の署名は残るが、同じ成果物に必要な人月が減れば、入札の単価に下押しがかかる。情報処理(約 12%)の受託・SES は、より直接に置き換えられる。中立では単価の伸びを物価に届かない 1.30 倍と置き、悲観では情報処理の数量を 0.6 倍に縮めた。
買収の質
2025 年から 3 社を買収したが、価格は非公表で、利益の寄与も見えにくい。のれんの減損や統合の失敗があれば、小さな会社の自己資本が傷む。クラックスシステムの利益は小さい。
技術者の確保
設計業務は人が資産で、技術者の採用と定着が受注の天井になる。転職が相次げば知見も動く。人件費の上昇を単価に転嫁しきれなければ、利益率が下がる。
自治体予算と入札競争
売上の大半が自治体や国の入札に依存する。予算が名目でしか伸びなければ、仕事の量は増えない。価格を自分で決められず、競争が強まれば利益率が下がる。
業績の季節性
2026 年上期の営業利益は 10.8 億円と、通期予想の 10 億円を超えた。納期が期の前半に偏り、下期の利益は小さい。上期の好調は、通期の好調を意味しない。
現金の使い道
純現金は買収で 31 億円から 18 億円に減った。買収を続ければ、還元に回る現金は減る。戻り方を 0.75 としたのはこのためだ。
今後の分かれ目
- 買収した会社の利益が合計で 2 億円を超える
- 買収が価値を生んだ証拠で、中立から楽観側に動く。のれんの重さの心配も薄れる。
- 営業利益率が 12% を超えて定着する
- 設計と情報システムの組み合わせが効いた合図で、中立の利益の質を上げる。
- 自治体が AI を使った内製化を進める
- 設計の外注が縮み、やや悲観の筋書きに近づく。
- のれんの減損が出る
- 買収の質への疑いが強まり、中立の倍率を引き下げる。
- 増配や自社株買いが強化される
- 現金の戻り方が 0.75 から 1.0 に近づき、10 年の価値は上がる。
- 買収提案が出る
- 10 年待たずに価値が現れる。価格が事業と現金の価値を反映するかを見る。
見ておくもの
- 建設コンサルの受注高と利益率
- 買収した 3 社の損益
- 営業利益率(12% を超えて定着するか)
- のれんの残高
- 配当性向と自社株買い
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から出した。中立は事業の ROE 7.1% が k 7.6% をわずかに下回るので、PER の上限は 1÷k の約 13.2 倍で、利益の質を見て 9 割に置いた。市場の PER・PBR は使っていない。現金は余った 8 億円に戻り方 0.75 を掛けて足し、10 年で溜まる現金は build が自動で足す。今の株価が倍でも半分でも数字は動かない。AI の影響は数量・価格・k の寿命に分けて入れ、重ねて引いていない。賃借料は営業費用に入った今の形のまま置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13→14.52 倍・やや楽観 PER 12.2→13.54 倍・中立 PER 11.8→13.16 倍)。
資本コスト 7.6% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。