結論
三協フロンテアは、工事現場の事務所などに使う仮設ユニットハウスの最大手だ。作って売るだけでなく、貸して回すのが稼ぎの中心である。筆者の結論は、今の時価総額は本質価値とほぼ釣り合っている、というものだ。一番の理由は、成長の源が建設現場の数と物価の上昇に限られ、高く評価できる材料も安く見る材料も乏しいことにある。
中身は強い。自己資本比率は75%で、純現金の状態にある。利益率は15%前後と、仮設の貸し物としては高い。2026年3月期は、前年の応急仮設住宅の特需が抜けて売上が減ったが、営業利益は80億円を保った。今期は増収増益を見込み、配当も年初の予定から引き上げた。
弱みは、需要が建設投資から離れられないことだ。人口が減れば新築は細る。資産を厚く持つ事業なので、稼働が落ちれば利益の減りは売上より大きい。10年後の中立は、棟数がほぼ横ばいで賃料だけが物価並みに上がる姿を置いた。純利益は約74億円、ROEは8%前後にとどまる。
強気に振れる材料は、公共インフラの更新、災害、トランクルームなど建設以外の用途の広がりだ。慎重に見る材料は、ゼネコンの値引き圧力と、住宅大手のモジュール建築への参入である。上振れの余地は厚くない。下振れに備えた確率の置き方にした。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、見たいのは、持ち続けて資産が増える事業かどうかだ。三協の貸し物は、同じ箱を何度も貸して元を取る。これは売り切りより利益の質が高い。借金に頼らず積み上げた純現金の財務も安心材料である。
一方で、再投資のほとんどは、同じ種類の箱を増やすことに使われる。ROEは10%前後で、資本コストの8%を少し上回る程度だ。ためた利益が額面以上の価値を生むと言い切れるほどの稼ぐ力ではない。内部留保が厚いほど、ROEは下がっていく。
経営者の資本配分は堅実だが、保守的でもある。増配は評価できるが、自己資本が積み上がるのに自社株買いで戻す姿勢は弱い。株主にとって、いまの内部留保は価値を生んでいるか、判断が難しい。
安全域の見方はこうだ。10年先の中立でも、利益の質から出る倍率は12〜13倍で、割り戻した価値は今の時価総額を数%上回る程度である。強気側の上振れは薄く、慎重側の下振れは深い。割安と言える余裕はなく、適正の範囲に収まると見る。
何で稼ぐ会社か
事業の柱は、ユニットハウスの製造・販売・賃貸である。ユニットハウスとは、工場で組み立てた箱形の建物を現場に運び、並べて使う仮設の建物のことだ。建設現場の事務所や休憩所が主な用途で、学校の仮校舎、病院内の仮設、イベント会場にも使われる。
稼ぎ方は2通りある。1つは貸す方で、箱を現場に運び、組み立て、撤去するまでの手間賃と月々の賃料が入る。同じ箱を何度も貸せば、資産の元が取れて利益が厚くなる。もう1つは売る方で、本設の事務所や店舗として買い取る顧客に納める。賃貸と販売の内訳は開示が薄く、賃貸が売上の約6割、利益では大半を占めると推定している。
周辺の事業が3つある。トランクルームは「U-SPACE」の名で全国に展開する貸し収納だ。ユニットハウスの技術で作るので、同じ工場と物流網を使える。立体式の駐車装置は、製造から保守までを手がける。レンタルスペースは、会議や期間限定の店に使う小さな貸し空間である。
拠点は千葉県柏市の本社のほか、全国47都道府県に店を持つ(2018年に全県そろった)。2019年3月期末で工場7、物流センター22だった。運んで組み立てる網の広さが、そのまま事業の土台になる。災害では阪神・淡路、東日本、熊本、能登の各地で応急仮設住宅を納めてきた。
優良さと弱いところ
強みは、全国どこへでも箱を運んで1日から数日で建てられる網にある。工場、物流センター、施工の人手が一体で動く。新しく入る会社が同じ網を作るには、資産を積み上げる長い時間が要る。ただし、顧客のゼネコンから見れば、仮設は安く済ませたい費用である。値決めは交渉で決まり、価格を強く押し上げる力があるとまでは言えない。堀はあるが、深さは普通と見る。
規模では2番手のナガワを上回る。2010年3月期は三協の売上150億円に対しナガワが約200億円だったが、東日本大震災の特需で三協が逆転した。今は三協が連結で543億円、ナガワは単体で354億円ほどだ。ただ、この差は一度の特需で開いた面があり、通常時の差とは言い切れない。
資本の使い方は評価できる。2015年3月期は100億円を超える純負債だった。借入でレンタル資産を積み、回収を終えて2022年3月期に純現金へ移った。自己資本比率は75%、利払いは営業利益の数百分の1だ。配当は中期的に配当性向35%を目安とし、今期は増配を発表した。
気がかりは3つある。第1に、貸し物の事業は資産が重く、ROEは10%台前半で頭打ちになりやすい。第2に、利益の一部が特定の年の特需に左右される。第3に、株は筆頭株主の和幸興産が約48%、社長個人が約14%を持ち、少数株主の発言力が弱く、売買も薄い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
仮設ユニットハウスの市場は、建設の着工量に連動する。工事の数が増えれば現場事務所が増え、公共インフラや大型の民間工事が続けば長く借りられる。景気の波には受ける側だが、警備や清掃のような安定した契約収入ではない。2010年と2011年の景気後退期には営業利益率が3%台まで落ちた。
市場の大きさは公式の統計がない。2019年の推計では年1,000億円強とされた。その後も三協とナガワは増収を続けており、実際はそれより大きいとみる。上位はこの2社で、地域ごとの中堅が残りを分け合う。仮設資材の総合レンタルの日建リース工業は足場が中心で、ユニットハウスは一部にすぎない。
これからの追い風は2つある。1つは、人手不足で現場の省力化が進み、組み立て済みの建物を使う工業化が広がること。もう1つは、能登など災害の復旧で応急住宅の需要が定期的に出ることだ。2027年の国際園芸博覧会でも、同社が関わる施設が計画されている。
逆風は、人口減で新築が細ること、住宅大手がモジュール建築に力を入れること、省エネ基準の強化で資産の更新費が増えることだ。需要が数量で伸びる業界ではない。10年の中立は、数量は横ばいから小幅な増加、価格は物価並みとしている。
資本政策と M&A
配当は、中期的に配当性向35%を目安にする。2026年8月、今期の年間配当を年初の予定よりさらに引き上げると発表し、前期より約2割の増配となる。自己株は約5%を持つが、大きな自社株買いの発表は確認できていない。
借入で資産を積む時期は終わり、いまは利益の約6割を再投資と内部留保に回している。純現金は15億円と薄く、余った現金として切り分ける額はない。資産が重い事業なので、手元の資金は貸し物の更新と増設に使われる。
M&Aは、同社が買う側になった大型の例を確認できていない。トランクルームでは、物件のオーナーが建て、同社が施工して借り上げる方式も使い、自社の資金を抑えて店を増やしている。
買われる側になる可能性は低くない。筆頭株主と社長で約6割を握るので、少数株主が売りたくても動かせない。非公開化の話が出ても、決めるのは大株主である。外から買収の圧力がかかる形ではない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
仮設ユニットハウスは、建設現場がある限り必ず要る。三協は全国に網を持つ最大手で、工事が増えれば最初に声がかかる。2026年3月期は特需が抜けた年だったが、営業利益は80億円を保った。通常の年の稼ぐ力が上がった証拠だ。
今期は第1四半期から増収で、通期予想も増益だ。老朽化した橋や道路の更新、防災投資、データセンターや工場の建設が続く。工事の数も、現場が使う期間も伸びる。人手不足で組み立て済みの建物を使う工業化が広がれば、貸し物の稼働と賃料は上向く。
災害も追い風だ。能登で応急仮設を納めた経験は、次の災害でそのまま効く。トランクルームは同じ工場で作れて、建設に頼らない収入になる。
財務は純現金で、自己資本比率は75%。借金の心配なく設備を増やせる。配当を35%目安で増やし続ける姿勢も明確だ。物価で賃料が上がり、稼働が保たれれば、利益は物価並みに伸び、ROEは10%台に戻る。10年後の価値は、今より2〜3割高くなりうる。
慎重な見方
貸し物は、稼働が落ちれば利益が一気に細る。資産は毎期の償却が決まっており、稼働が1割落ちれば、利益は1割より大きく減る。2010年と2011年は営業利益率が3%台まで落ちた。
人口は減る。新築住宅も、オフィスも、工場も、長い目で数が減っていく。ゼネコンの現場事務所は、仮設なので安く済ませたい費用であり、賃料の値上げは通りにくい。人件費と物流費は物価で上がるので、値上げが遅れれば利益率が削られる。
住宅大手は、モジュール建築で仮設・半仮設の領域に入りつつある。三協の優位は、最大手という規模だけだ。製品は他社と置き換えやすい。ナガワはほぼ借金がなく、体力の面でも負けていない。
特需の反動は繰り返し来る。今期の増益は、応急仮設の反動がなくなっただけで、構造が良くなったわけではない。株主構成も弱い。筆頭株主と社長で約6割を持ち、少数株主の意見は届きにくい。配当は増えているが、内部留保が積み上がってROEは下がっている。ROEが資本コストを超えられなければ、ためた利益は価値を生まない。
どちらに重みを置いたか
事業の質は強気の言い分が勝つが、成長の源は慎重な見方が強い。数量が建設投資に縛られる以上、10年で上振れる理由は物価の値上げにほぼ限られる。確率は中立に3割台半ばを置き、ROEが資本コストを割る筋書きに4割近くを寄せた。
ただし、慎重側に寄せすぎない。仮設の貸し物は、稼働が保たれれば利益を守る。悲観でも純現金と資産の厚みがあり、倒れる会社ではない。結論は、割安でも割高でもない適正である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,911 円1,091 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,155 円257 億円)。 今の値に割り戻すと 3,253 円723 億円、今との差 +40.9%、 期待の年率 +10.1%(資本コスト 7.2%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 8,499 円1,889 億円 | 1,539 円342 億円 | +334.7% | +15.8% | 703 円156 億円 |
| やや楽観 | 21% | 6,939 円1,542 億円 | 1,363 円303 億円 | +259.6% | +13.7% | 1,744 円388 億円 |
| 中立 | 35% | 5,830 円1,296 億円 | 1,228 円273 億円 | +205.7% | +11.8% | 2,470 円549 億円 |
| やや悲観 | 25% | 2,906 円646 億円 | 1,008 円224 億円 | +69.5% | +5.4% | 979 円217 億円 |
| 悲観 | 12% | 765 円170 億円 | 661 円147 億円 | −38.2% | −4.7% | 171 円38 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,911 円1,091 億円 | 1,155 円257 億円 | +162.7% | +10.1% | 6,066 円1,348 億円 |
今の株価時価総額 2,309 円513 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 7% 公共インフラの更新と災害・工場建設が重なり、貸し物の稼働と賃料が伸びる10年 利益 107 億円 · PER 17.2 倍 · 株価時価総額 8,499 円1,889 億円
老朽化した公共インフラの更新が国の予算で進み、民間でも工場や情報施設の建設が続く。現場事務所の需要は増え、使う期間も長くなる。賃貸の棟数は今より約2割増え、賃料も物価を少し上回って上がる。
災害への備えも定着する。能登の経験を生かし、自治体が平時から応急仮設の確保を委託する流れが広がる。トランクルームなど建設に頼らない収入も育ち、販売・施工側の件数も伸びる。
利益率は、貸し物の稼働が上がる分だけ改善する。ただし、住宅大手のモジュール建築が一部を奪うので、最良でも利益率の上昇には限度がある。自己資本は積み上がるが、事業の収益力もこの間に上がり、ROEは10%台に乗る。
- ユニットハウス賃貸:数量 13.0(稼働中の賃貸ユニット(万棟、推定))× 価格 42(1棟あたり年間の賃料・施工料(万円、推定))→ 売上 546 億円・営業利益 126 億円。賃貸 13.0 万棟 × 年 42.0 万円、利益率 23.0%
- ユニットハウス販売・トランクルームほか:数量 2.8(販売・施工の件数(万件換算、推定))× 価格 140(1件あたりの売上(万円、推定))→ 売上 392 億円・営業利益 31 億円。販売・施工 2.80 万件 × 140 万円、利益率 8.0%
倍率:事業の純利益 107 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.6% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.2 倍。全体の PER 17.23 倍、時価総額 1,844 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強気に振れるのは、橋・道路・防災の更新、データセンターや工場の建設、災害の復旧が数年にわたって重なる時だけだ。この条件がそろう確度は低く、楽観は1割を切る水準に置いた。
やや楽観 21% 建設は堅調で、賃料は物価を少し上回って上がる10年 利益 88 億円 · PER 16.7 倍 · 株価時価総額 6,939 円1,542 億円
建設の着工量は人口減でも大きくは崩れず、インフラの更新と省力化の動きが現場の数を支える。賃貸の棟数は1割ほど増え、賃料の値上げも通る。
ナガワとの競争は続くが、全国網の差で三協が最大手の位置を保つ。販売・施工では、本設用途の注文が増える。トランクルームは建設に頼らない収入として少しずつ厚みを増す。
利益率は15%台に改善する。配当は増え続けるが、内部留保も厚くなり、ROEは9%台に上がる程度だ。成長は物価と数量の小幅な伸びの合計で、非連続な伸びはない。ゼネコンの現場が堅調でも、特需のような大きな波は織り込まない。安定した中での、少しだけ良い10年だ。
- ユニットハウス賃貸:数量 12.1(稼働中の賃貸ユニット(万棟、推定))× 価格 41(1棟あたり年間の賃料・施工料(万円、推定))→ 売上 497 億円・営業利益 107 億円。賃貸 12.1 万棟 × 年 41.1 万円、利益率 21.5%
- ユニットハウス販売・トランクルームほか:数量 2.4(販売・施工の件数(万件換算、推定))× 価格 136(1件あたりの売上(万円、推定))→ 売上 326 億円・営業利益 23 億円。販売・施工 2.40 万件 × 136 万円、利益率 7.0%
倍率:事業の純利益 88 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.8% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.7 倍。全体の PER 16.68 倍、時価総額 1,468 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:建設投資は大きくは落ちず、賃貸の稼働は今の水準を保つ。賃料が物価を少し上回る程度の、無理のない上振れである。
中立 35% 棟数は横ばいで、賃料だけが物価並みに上がる10年 利益 74 億円 · PER 16.2 倍 · 株価時価総額 5,830 円1,296 億円
建設の着工量は人口減で伸びないが、インフラ更新と災害の復旧が下支えする。賃貸の棟数は3%ほど増える程度で、ほぼ横ばいだ。賃料は人件費と物流費の上昇を転嫁して、物価並みの1.34倍まで上がる。
販売・施工の件数は横ばい、単価は物価並みに上がる。トランクルームは少しずつ店を増やす。住宅大手のモジュール建築は一部の注文を奪うが、仮設の主力は崩れない。
営業利益率は今と同じ15%弱で保たれる。自己資本は配当の後も積み上がるため、ROEは8%台に下がる。稼ぐ力は物価並みに伸びるが、資本が増えて効率はむしろ落ちる、安定した10年である。
- ユニットハウス賃貸:数量 11.3(稼働中の賃貸ユニット(万棟、推定))× 価格 40(1棟あたり年間の賃料・施工料(万円、推定))→ 売上 454 億円・営業利益 91 億円。賃貸 11.3 万棟 × 年 40.2 万円、利益率 20.0%
- ユニットハウス販売・トランクルームほか:数量 2.1(販売・施工の件数(万件換算、推定))× 価格 134(1件あたりの売上(万円、推定))→ 売上 281 億円・営業利益 18 億円。販売・施工 2.10 万件 × 134 万円、利益率 6.5%
倍率:ROE 8.2%。RONIC = 8% + 1/2 ×(8.2% − 8%)= 8.1%、正当化 PER = (1 − 4÷8.1)÷4 = 16.17 倍。ROE が k をわずかに上回るだけで、上限と下限(1÷k = 12.5 倍)がほぼ重なる。普通の堀・横ばいの数量なので、上限どおり 16.17 倍に置いた。
確率:人口減と省力化で現場の数は伸びず、賃料は物価並みに上がる。最も重みを置くのは、今の事業の形が変わらないまま10年が過ぎる筋書きだ。
やや悲観 25% 建設投資が細り、値上げが通らず利益が伸びない10年 利益 51 億円 · PER 10.6 倍 · 株価時価総額 2,906 円646 億円
建設の着工量は人口減で少しずつ細る。賃貸の棟数は約1割減り、稼働の低下で、減価償却の重い貸し物は利益率が落ちる。ゼネコンの値引きと、住宅大手のモジュール建築との競り合いで、賃料の値上げは物価の7割ほどしか通らない。
災害の特需も、巡り合わせが悪く、ほとんど出ない。販売・施工は件数が減り、利益率は薄くなる。
営業利益は今から横ばいかやや減る。内部留保が積み上がるので、ROEは6%台まで下がり、資本コストを割る。配当は続くが、ためた利益は十分な価値を生まなくなる。大きく崩れはしないが、ナガワなど競合との値下げ競争で、最大手の地位の割に利益が伸びない。純現金は残るものの、積み上がった内部留保の使い道を見つけにくくなる10年だ。
- ユニットハウス賃貸:数量 10.2(稼働中の賃貸ユニット(万棟、推定))× 価格 39(1棟あたり年間の賃料・施工料(万円、推定))→ 売上 398 億円・営業利益 68 億円。賃貸 10.2 万棟 × 年 39.0 万円、利益率 17.0%
- ユニットハウス販売・トランクルームほか:数量 1.8(販売・施工の件数(万件換算、推定))× 価格 125(1件あたりの売上(万円、推定))→ 売上 225 億円・営業利益 10 億円。販売・施工 1.80 万件 × 125 万円、利益率 4.5%
倍率:ROE 6.1% は k 7.25% 以下なので、PER の上限は 1÷k = 12.5 倍(ためた利益は額面未満の価値)。稼ぐ力は伸びず利益の質も落ちるので、上限の約 8.5 割(10.6 倍)に置いた。純利益 51 億円 ÷ k 7.25% = 約 640 億円が稼ぐ力の目安。
確率:人口減で新築が細り、ゼネコンの値引き圧力で賃料が物価に追いつかない。事業が崩れるほどではないが、利益は今から伸びない。
悲観 12% 建設需要が構造的に縮み、貸し物の値崩れが始まる10年 利益 17 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 765 円170 億円
新築の着工が人口減で構造的に縮み、ゼネコンの現場も大きく減る。賃貸の棟数は約25%減り、余った箱を値下げして貸す。賃料の上昇は物価の半分にも届かない。
住宅大手が仮設の領域に入り、価格競争がさらに厳しくなる。販売・施工は注文が減って利益がほとんど出ない。減価償却が固定費として残るため、営業利益は今の3分の1以下に落ちる。
箱の更新投資を止めて資金を温存するが、減損も出る。純利益は20億円に届かず、ROEは3%を割る。配当は払い続けるが、ためた利益の価値は大きく落ちる。倒れる会社ではないが、稼ぐ力の低さが株価に重くのしかかる。
- ユニットハウス賃貸:数量 8.2(稼働中の賃貸ユニット(万棟、推定))× 価格 35(1棟あたり年間の賃料・施工料(万円、推定))→ 売上 283 億円・営業利益 31 億円。賃貸 8.2 万棟 × 年 34.5 万円、利益率 11.0%
- ユニットハウス販売・トランクルームほか:数量 1.2(販売・施工の件数(万件換算、推定))× 価格 115(1件あたりの売上(万円、推定))→ 売上 138 億円・営業利益 3 億円。販売・施工 1.20 万件 × 115 万円、利益率 2.0%
倍率:ROE 2.3% は k 7.25% 以下で、PER の上限は 1÷k = 12.5 倍。稼ぐ力は構造的に縮み、減損も出るので、上限の 8 割(10.0 倍)に置いた。純利益 17 億円 ÷ k 7.25% = 約 210 億円が稼ぐ力の目安。
確率:建設投資が構造的に縮み、仮設の貸し物が余る。値崩れが起き、固定の償却が利益を食う。起こる確度は低いが、起これば深い。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ユニットハウス賃貸
工事現場の事務所などに箱形の仮設建物を貸し、搬入・組立・撤去の手間賃と賃料を受け取る。同社の稼ぎの中心。
| 数量稼働中の賃貸ユニット(万棟、推定) | 価格1棟あたり年間の賃料・施工料(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 11.0 | 30 | 330 | 66 |
| 10 年後 中立 | 11.3 | 40 | 454 | 91 |
取り方:賃貸と販売の内訳は開示が薄く、売上の約 6 割(330 億円)が賃貸、営業利益 80 億円のうち 66 億円が賃貸と推定した。1 棟あたり年 30 万円(月の賃料 2 万円強に搬入・組立・撤去の料金を均した値)で割り、11 万棟とした。棟数と単価は推定で、掛け合わせると 330 億円になる。賃料は人件費・物流費が物価で上がるので、中立で 10 年 1.34 倍とした。
ユニットハウス販売・トランクルームほか
本設の事務所・店舗として納める販売と施工、トランクルーム、立体駐車装置、レンタルスペースなど。
| 数量販売・施工の件数(万件換算、推定) | 価格1件あたりの売上(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.1 | 100 | 213 | 14 |
| 10 年後 中立 | 2.1 | 134 | 281 | 18 |
取り方:売上 543 億円のうち賃貸を除く約 213 億円とし、利益は営業利益 80 億円との差の 14 億円(利益率 6〜7%)と推定した。件数は 1 件 100 万円の換算で 2.13 万件。トランクルームや駐車装置も同じ換算に含めた。単価は資材と人件費の物価で上がるので、中立で 10 年 1.34 倍。
リスクと懸念
建設投資の構造的な縮小
人口減で新築の着工が細れば、現場の数と賃貸の稼働が落ちる。貸し物は償却が固定で、稼働が1割落ちれば利益は1割より大きく減る。2010〜11年は営業利益率が3%台まで下がった。
特需の反動
震災や能登の応急仮設は、一度に大きな売上を生むが、翌年に反動が出る。2025年4〜6月期は前年の応急仮設の反動で2割の減収だった。通常の稼ぐ力を見誤ると、利益水準を過大に見る。
ゼネコンの値引き圧力
顧客の多くは大手ゼネコンで、仮設は安く済ませたい費用だ。人件費と物流費が物価で上がっても、賃料に転嫁できなければ利益率は削られる。ナガワとの競り合いも価格に出やすい。
住宅大手のモジュール建築
住宅大手は、工場生産の建物で仮設・半仮設の領域に力を入れている。本設の販売・施工が侵食されると、販売側の利益がさらに薄くなる。
大株主の影響力と少数株主
筆頭株主の有限会社和幸興産が約48%、社長個人が約14%を持つ。資本政策や非公開化の判断を大株主が決められ、少数株主は動かしにくい。売買が薄く、売りたい時に売れない面もある。
省エネ基準の強化と資産の更新
建物の省エネ・耐震の基準が強まれば、古い貸し物の更新に追加の投資が要る。資産が重い事業なので、更新費が増えるとフリーキャッシュフローとROEが下がる。
今後の分かれ目
- 今期の増収増益が計画どおり着地し、賃貸の稼働と賃料の上昇が続く
- 中立の姿が確かめられ、10年のやや楽観の確度が上がる。
- 公共インフラの更新や防災の予算が増え、現場の数が増える
- 賃貸の棟数が伸び、楽観・やや楽観の筋書きが現実味を帯びる。
- 自社株買いなど、内部留保を株主に戻す方針が明確になる
- 自己資本の積み上がりが止まり、ROEが資本コストを上回りやすくなる。
- ゼネコンとの契約で賃料の値上げが通らなくなる
- 利益率が下がり、やや悲観・悲観の確度が上がる。
- 住宅大手が仮設の領域で価格攻勢を強める
- 販売・施工の利益が薄くなり、下振れ側の筋書きに近づく。
- 大株主が非公開化や持ち株の売却を示す
- 少数株主の取り分が焦点になり、筋書きの外の動きが出る。
見ておくもの
- 賃貸の稼働率と1棟あたり賃料(決算説明資料)
- ナガワなど競合の賃貸売上と利益率
- 年間配当の動きと自社株買いの有無
- 建設の着工量と公共工事の発注額
- トランクルーム店舗数と建設以外の収入の割合
倍率と資本コストの決め方
倍率は式だけで決めた。今の株価・PER・PBR や同業の倍率は使っていない。事業の ROE が k をわずかに超える程度なので、中立の PER は上限と下限(1÷k)がほぼ重なり、上限どおりに置いた。同じ領域のナガワなど建設連動型と quality +0.5% で k をそろえた。賃貸と販売の内訳・棟数・単価は開示が薄く推定で、数量と価格は掛けて売上になるように置いた。純現金が薄いので余った現金は分けていない。新リース会計基準(2028/03 期から BS に載る)は、同社が貸す側で影響は大きくないが、借りる側の用地があれば数字の形が変わる。10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.59→17.23 倍・やや楽観 PER 12.5→16.68 倍・中立 PER 12.67→16.17 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。