結論
博展は、展示会や企業イベントの企画から設計、施工、運営までを一括して請け負う体験マーケティング会社である。筆者は今の時価総額約127億円を、10年先の稼ぐ力と還元に照らして「割安」と見る。ただし、2025年の営業利益率11.1%を恒常的な実力と扱わないことが前提だ。大阪・関西万博の大型案件が重なった年と、日常的な受注力を分けて考えなければならない。
強みは、顧客企業との直接取引と、企画だけで終わらない現場の完成責任にある。2026年上期のリピート売上比率は81.7%で、制作拠点T-BASEや買収した施工会社を使い、工期と品質を一体で管理する。AIが提案書や映像の制作工数を減らしても、会場の設営、安全管理、資材の循環まで自動で終わるわけではない。反対に、継続率が高いことは長期契約や値上げの自由を意味せず、顧客の販促費が減れば受注は止まる。
中立の2035年は、現場案件が増える一方、企画の外注工数は減り、営業利益率は直近の山を下回る。2028年の会社計画を機械的に10年間伸ばさず、自己資本にたまる利益と必要な運転資金も分けている。強気だけでなく景気後退とAI代替の下振れを厚めに織り込んでも、確率加重した現在価値は市場価格を上回る。ただし、受注単価の公式開示はなく、案件数と企画売上の配分は推定である。現場原価とキャッシュ創出を毎期確認する条件付きの割安さだ。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、博展の魅力は「実際に人が集まる場」を完成させる能力が、画面の広告制作より長く必要とされることにある。顧客が求めるのは美しい企画書ではなく、予定日に安全な会場ができ、来場者が商品やブランドに触れ、商談につながる結果だ。施工会社の調達、設営、原状回復までを引き受ける者への信頼には価値がある。AIはその仕事を助けるが、10年後に責任主体を不要にする可能性は小さい。
しかしこの価値は、消費者が毎月解約をためらうサービスや、価格を自分で決める独占品とは違う。顧客企業の広告費は景気が悪くなれば先に削られ、案件を受注できなければ人員とオフィスの固定費が重荷になる。2025年の高収益と過去の赤字年を両方見て、平年のオーナー利益を測る必要がある。特に、設計部門の生産性向上で空いた時間を新規案件に変えられなければ、AIは社員の味方でも会社の売上の敵になる。
資本の配分にも条件をつける。受注の質を守り、資本コストを超える施工能力の拡張には資金を使ってよい。一方、流行するIPや海外事業を高値で買い、のれんを積み上げるなら、将来の利益を信頼する理由は弱まる。配当性向30%の約束は有用だが、残る利益が有効に再投資されるか、現金として蓄積されるかを追う。いまの時価総額には2025年の好調が永遠に続くという条件までは要求されていない。悲観時に支払った値段を回収できる保証はないものの、確率で見た安全域は確認できる。
何で稼ぐ会社か
博展の法定報告セグメントは「エクスペリエンス・マーケティング事業」の一つである。しかし商材別には、2025年のリアルイベント約194億円、デジタル約7億円、商環境約17億円、その他約15億円と性格が違う。顧客はBtoBの製造業・IT企業から、消費財メーカー、自治体、商業施設まで広い。展示会のブース、企業の記念行事、新商品発表、体験型イベント、常設ショールームを作り、案件ごとに受注額を得る。恒常的な利用料より、繰り返し発注してもらう案件商売に近い。
リアルイベントでは、営業担当が顧客の課題を聞き、プランナーやデザイナーなどの専門職が体験を設計する。その後、社内制作拠点や外部協力会社を使って、設営から撤去までを納める。完成責任を負い、施工管理や物流を手配する部分はAIだけで置き換えにくい。一方、企画書、画像制作、運営マニュアル、動画編集は生成AIで工数が減る。この違いを見えるようにするため、売上の約8割を占めるリアルイベントを「現場実装」と「企画制作」に分析上分けた。会社がその内訳を開示したわけではない。
商環境はショールーム、ミュージアム、常設展示の設計施工で、単発案件の規模が大きく発注間隔も長い。デジタル分野では子会社デジタルエクスペリエンスが配信、映像、サイネージ、アプリ開発を担う。ニチナンの展示施工とヒラミヤの金属什器製造は、実物を納める能力と地域対応力を補う。2025年の受注高は約237億円で、受注残高は約77億円だった。2026年上期には受注残高が約91億円へ増え、案件の先行指標として役立つが、採算を保証する数字ではない。
優良さと弱いところ
堀、つまり競合が容易に奪えない強みは、製造設備を持つこと自体ではなく、発注者との関係、複雑な現場を完遂する実績、企画と施工の連携にある。2026年4〜6月期の指名受注比率81.6%、リピート売上比率81.7%は、コンペを毎回勝ち抜かなければならない受託会社より営業効率がよい証拠だ。特定建設業許可と一級建築士事務所登録、制作拠点や環境配慮型施工の実績は現場の参入障壁になる。しかし、競合も取得できる許認可であり、法定の記録基盤でもない。長期契約による解約率が開示されているわけでもないため、強い堀とは認めない。
2025年の自己資本利益率は約38%まで上がったが、2017年と2021年には営業赤字を出している。万博関連の高採算案件と固定費吸収が良かった年を基準に、将来の増分投資利回りを判断するのは危うい。一方、社内の設計・制作機能を増やしながら、近年は営業キャッシュフローが増えた。資本をあまり食わないモデルだけに、指名受注の質を保てれば、投じた資金が資本コストを超えて稼ぐ余地は大きい。
値上げ力には留保が必要だ。2025年の粗利益率は上がったが、大型案件の構成変化もあり、同じ仕様で何%値上げできたかは示されていない。2026年上期は売上高が増えながら営業利益が減り、買付費用と人件費の圧力が利益に現れた。したがって、業務の標準化を進めても利益率が上がるとは決めつけない。継続取引という営業上の強みは残るが、仕入価格と需要の両方にさらされる普通の堀だと判断する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のイベント市場は大きいが、2025年の伸びを平時の成長率と誤認してはいけない。日本イベント産業振興協会による2025年のイベント関連産業は1兆1,478億円で、前年比17.2%増だった。大阪・関西万博や大型展示会が重なった特殊な年である。博展に近い広告関連イベント2,255億円とイベント専業2,676億円の合計は約4,931億円だ。博展のリアルイベント売上約194億円はその約3.9%に相当するが、統計には商流の重複があり、厳密な独占的シェアではない。2035年の中立では、実質需要の横ばいに近い市場で同社が常設・地域・中小展示会を開拓し、実質の受注件数を約2割増やす道筋を考える。
競争相手はテー・オー・ダブリュー、セレスポ、イベント施工各社に加え、乃村工藝社、丹青社、スペースなどのディスプレイ大手である。後三社の関わるディスプレイ市場は約1兆7,900億円で、乃村工藝社の売上は1,500億円規模、丹青社も1,000億円規模に達する。博展の商環境売上はまだ約17億円にすぎず、そこでは挑戦者の立場だ。広告市場8兆円超という大きな数字を、そのまま博展の獲得可能市場とは扱えない。会場施工費、媒体費、企画費が重複するためである。
今後の数量を決めるのは展示会の開催回数だけではない。BtoBでは実際の対話と製品実演が残り、BtoCではIPを使う体験型催事と訪日客向け施策が広がる余地がある。一方、広告主は効果測定を厳しくし、Webだけで十分な施策に実会場の予算はつけない。AIは企画・画像・配信の費用を押し下げ、施工現場では人手不足が続く。名目の契約単価には物価上昇の一部を転嫁できても、その値上げが丸ごと利益になるわけではない。2035年以降の名目成長は物価上昇率以下と見て、需要の寿命を高く評価しすぎない。
資本政策と M&A
経営は成長投資を優先しながらも、還元目標を明示している。2026〜2028年の中期計画は、最終年度の売上高310億円、営業利益30億円、純利益20.8億円、営業利益率9.7%を掲げる。ROEは15%超、自己資本比率は通常40〜50%、投資時30〜40%を目安とし、配当性向30%を約束する。自社株買いの金額やDOEの数値目標は示されていない。2025年の配当には特別配当が含まれ、2026年は普通配当の増配と全体の減配が併存するため、総還元の実績を過大評価しない。
これまでの買収は、2016年のデジタル子会社、2021年のニチナン、2024年のヒラミヤと、機能補完を重ねるものだった。2014年に取得したWeb制作会社アイアクトは2021年に売却し、事業入替えも経験した。製作工程の内製化には筋が通るが、投資回収を案件別に示した資料は限られる。2028年に向けてIP事業、海外展開、追加のM&Aも検討している。資本を増やしてまで未経験の事業を買えば、現在の高い資本効率を壊しうる。大株主上位10者の持分は2025年末で計58%であり、少数株主の現金を直ちに全額還元すると考えない。公表済みのTOBや上場廃止予定は確認されない。買収される可能性はゼロではないが、買付プレミアムは価値に含めない。
株主優待には保有条件付きのギフトカードと抽選の体験招待がある。株主数約6,560名、保有区分別の額から優待費用は年0.1億円前後、10年間でおおむね1億円と推定し、各筋書きの還元総額に含めた。中立では配当性向30%を軸に総額約64億円の還元を見込む。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
対面の体験は、AIが情報を大量に作れる時代ほど希少になりうる。商品発表、展示会、国際会議、ファンイベントでは、実物に触れ、人と直接話す価値はオンラインに置き換えにくい。博展は単なる企画会社ではなく、T-BASEでの試作、素材選定、施工管理、効果測定までをつなぐ。2026年上期も受注残高は増加し、継続顧客との直接取引比率が高い。営業のたびに無名の競合と一から競う会社ではない。
自前の製作機能が広がれば、外注先の値上げをただ受け入れるのではなく、工程を組み替え利益を残せる。資源循環型イベントの案件数も増えており、再利用しやすい設計が標準になるほどノウハウの蓄積が生きる。ニチナンとヒラミヤの買収は大企業との同じ土俵を避け、独自の製作対応力を厚くする選択だった。会社が掲げる2028年の310億円の売上目標は、2025年の特需で一度だけ達成した水準ではなく、案件の継続性を高める途中の通過点になり得る。
この見方が正しければ、現場案件数の拡大と物価転嫁で売上は一段増え、企画工数のAI効率化を価格の引下げ以上に生産性向上へ変えられる。追加M&Aにも規律があれば、稼いだ利益の一部は現金として株主の手に届く。現在の企業価値はその余地を十分には織り込んでいない。
慎重な見方
イベントの案件受注には永続的な契約がない。広告主が販促予算を減らすと、新規案件は止まり、同じ顧客でも既存のブースを使い回す。2025年の売上と最高益は万博などの大型案件が重なった年の数字であり、前年の成長率を長期の実力と考えるのは危険だ。2026年上期は売上が増えたにもかかわらず減益で、案件ごとの値上げや原価抑制が常に成功するわけではないことが既に示された。
継続受注比率8割という数字も囲い込み契約ではない。大手広告会社やディスプレイ会社は顧客との接点、技術者、施工調達網で勝り、顧客が大規模な発注を集約すれば、小さな専門会社は下請け化する。企画、動画、展示プランの作成はAIエージェントの得意分野へ近づく。顧客自身が制作費を削り、単価を引き下げるだけなら、AIが生産性を上げても売上は増えない。デジタル子会社のプラットフォームにも法定記録のような切り替え障壁は確認できない。
人員の採用と制作拠点の固定費は需要が縮んでもすぐには消えない。借金が少なくても本社と工場の年間賃料は固定の支払いである。IPや海外への拡張を買収で急げば、良い時期の利益を不確かな資産と交換することになる。2035年に今の顧客単価と利益率を保てず、貯めた利益が低採算資産へ変わる危険を重視するべきだ。
どちらに重みを置いたか
リアルな施工と継続顧客の証拠は、博展を純粋な広告制作会社と同じ扱いにしない理由になる。一方、価格決定力は限定的で、2025年の万博特需、固定人件費、AIによる企画工数の縮小を軽視できない。中立の数量にもAI代替を織り込むため、同じ理由で資本コストをさらに引き上げない。確率は楽観側30%に対し下側40%とし、案件の循環と新規事業の不確実性を反映した。それでも再投資を伴う利益と現金の価値が今の時価総額より大きい。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,899 円304 億円(+ 還元の換算額還元の合計 351 円56 億円)。 今の値に割り戻すと 1,142 円183 億円、今との差 +48.5%、 期待の年率 +12.7%(資本コスト 7.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 4,210 円674 億円 | 593 円95 億円 | +524.5% | +22.5% | 576 円92 億円 |
| やや楽観 | 18% | 3,036 円486 億円 | 499 円80 億円 | +359.7% | +18.5% | 636 円102 億円 |
| 中立 | 30% | 2,207 円354 億円 | 399 円64 億円 | +238.9% | +14.6% | 782 円125 億円 |
| やや悲観 | 26% | 644 円103 億円 | 218 円35 億円 | +12.2% | +1.3% | 224 円36 億円 |
| 悲観 | 14% | 125 円20 億円 | 94 円15 億円 | −71.6% | −14.1% | 31 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,899 円304 億円 | 351 円56 億円 | +192.5% | +12.7% | 2,249 円360 億円 |
今の株価時価総額 769 円123 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 12% 現場で勝ち、商環境も飛躍 利益 41 億円 · PER 15.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,210 円674 億円
実物を伴う販促の価値が高まり、顧客企業は展示会と体験型イベントへの投資を続ける。中部・西日本、海外に関連する国内案件、IPを使った体験空間の受注が広がり、博展は広告関連・イベント専業市場で存在感を高める。現場実装の案件は年4000件に達し、商環境でも常設施設を数多く取る。2025年の万博特需に頼らずに大型案件と継続顧客を両立させる展開である。
デザインのAI自動化が進んでも、実装と体験の責任を一括して受けるサービスへの請求価値は守られる。ただし、自社AI商品の確定売上は確認できないため、制作工数換算量は2025年を上回らない。ニチナン・ヒラミヤの製作機能が受注増を支え、データによる採算管理で外注費も抑える。2028年以降のM&Aは小型で補完的な案件にとどまり、のれんの大きな減損を避ける。
2035年には約497億円の売上を得て、営業利益は約59億円に伸びる。配当と買戻しの合計は10年間で約95億円に達し、なお現金の一部が会社に残る。顧客との関係と施工品質の差が維持されるが、独占力と同じ強い堀までは認めない。
- リアルイベントの現場施工・運営:数量 4,000(現場施工・運営を伴う案件数(件/年、推定))× 価格 0.09(現場施工・運営1案件の売上(億円/件、名目))→ 売上 351 億円・営業利益 44 億円。市場の実質件数×自社シェア。現場作業はAIでは代替しない
- リアルイベントの企画・クリエイティブ工数:数量 2,600(企画・制作工数の基準年案件換算量(件相当/年))× 価格 0.02(2025年工数相当1単位の売上(億円/件相当、名目))→ 売上 52 億円・営業利益 8 億円。AIエージェント代替の人月・広告制作型。数量は基準年工数換算
- デジタル・配信・販促コンテンツ:数量 140(デジタル制作・運用の案件換算量(件相当/年、推定))× 価格 0.06(デジタル1案件の平均売上(億円/件、名目))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替の受託・画面型。成果報酬の確証なし
- 商環境・常設ショールーム:数量 110(商環境・常設展示の完成案件(件/年、推定))× 価格 0.47(1案件の平均受注売上(億円/件、名目))→ 売上 52 億円・営業利益 7 億円。常設施設の受注案件数。設計事務以外は現場施工型
- その他・子会社製作案件:数量 300(製作・特殊案件の案件換算量(件相当/年、推定))× 価格 0.11(1案件換算の平均売上(億円/件、名目))→ 売上 34 億円・営業利益 5 億円。製作・子会社の案件換算。実績の内訳開示なし
倍率:資本コストk=7.75%、長期名目成長率g=2%、堀は普通で超過収益の残存率1/2。余剰現金90億円の税後利息1.4%相当を純利益から外すと事業ROEは約26.4%で、RONICは約17.1%。正当化PERの上限は15.35倍。楽観〜中立はその上限をそのまま採用する。現金90億円には戻り方0.75を掛け、重複する利息を除いた事業利益にPERを掛けて足す。
確率:市場成長に加えて2035年まで施工案件の実質増と商環境の高い伸び、規律あるM&Aが続く複合成功のため低めの12%。
やや楽観 18% 継続顧客と制作力が育つ 利益 30 億円 · PER 15.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,036 円486 億円
2028年の会社中計の水準を足場に、同社は常設展示や地方のイベント支援に顧客を広げる。大企業の展示会は成熟するが、直接取引の継続率が高く、新規顧客から繰り返し発注を得る。実質の現場案件数は2035年に約3500件となり、物価に近い単価改定と複雑な演出への需要が売上を押し上げる。ディスプレイ大手の専業分野に広く乗り込まず、体験設計と機動的な施工を生かせる案件を選ぶ。
企画書と動画の作業はAIで短くなるものの、顧客の現場に合わせた設計と安全管理は残る。企画の請求工数は現在を下回り、デジタル受託も量的拡大を想定しない。制作拠点の稼働率改善、協力会社との仕入条件、案件ごとの採算判断が機能する。既存子会社の機能を使い切る方針が続き、海外やIPでの無理な大型買収は避けられる。
2035年の売上は約404億円で、営業利益は約43億円となる。利幅は2025年の例外的な高さに全面回帰しなくても、利益とキャッシュが徐々に積み上がる。利益の一部を社員・制作設備に再投資しながら、配当を継続する10年である。
- リアルイベントの現場施工・運営:数量 3,500(現場施工・運営を伴う案件数(件/年、推定))× 価格 0.08(現場施工・運営1案件の売上(億円/件、名目))→ 売上 291 億円・営業利益 33 億円。市場の実質件数×自社シェア。現場作業はAIでは代替しない
- リアルイベントの企画・クリエイティブ工数:数量 2,100(企画・制作工数の基準年案件換算量(件相当/年))× 価格 0.02(2025年工数相当1単位の売上(億円/件相当、名目))→ 売上 41 億円・営業利益 6 億円。AIエージェント代替の人月・広告制作型。数量は基準年工数換算
- デジタル・配信・販促コンテンツ:数量 120(デジタル制作・運用の案件換算量(件相当/年、推定))× 価格 0.06(デジタル1案件の平均売上(億円/件、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替の受託・画面型。成果報酬の確証なし
- 商環境・常設ショールーム:数量 85.0(商環境・常設展示の完成案件(件/年、推定))× 価格 0.46(1案件の平均受注売上(億円/件、名目))→ 売上 39 億円・営業利益 5 億円。常設施設の受注案件数。設計事務以外は現場施工型
- その他・子会社製作案件:数量 230(製作・特殊案件の案件換算量(件相当/年、推定))× 価格 0.11(1案件換算の平均売上(億円/件、名目))→ 売上 26 億円・営業利益 3 億円。製作・子会社の案件換算。実績の内訳開示なし
倍率:資本コストk=7.75%、長期名目成長率g=2%、堀は普通で超過収益の残存率1/2。余剰現金70億円の税後利息1.4%相当を純利益から外すと事業ROEは約20.7%で、RONICは約14.2%。正当化PERの上限は14.95倍。楽観〜中立はその上限をそのまま採用する。現金70億円には戻り方0.75を掛け、重複する利息を除いた事業利益にPERを掛けて足す。
確率:直接取引と制作の連携は実在するが、中計を10年先まで順調に超える条件が要るため18%。
中立 30% 現場は伸び、企画工数は細る 利益 22 億円 · PER 14.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,207 円354 億円
リアル体験の需要は残るが、2025年の万博特需は一巡する。イベント市場の実質規模はおおむね横ばいとし、博展は指名受注を維持しながら常設展示、中小ブース、首都圏以外で案件を増やす。現場の案件数は2600件から3150件に増え、平均単価は10年間の物価上昇に沿って上がる。広告関連とイベント専業を合わせた参考市場での売上シェアは、2025年の約3.9%からおおむね4%台前半へ進む。
その陰で、AIエージェントが企画書、静止画、編集、提案業務を代替し、請求可能な人の工数は約65%へ縮む。デジタル受託も案件換算で約65%となり、単価の上昇は物価に届かない。施工とクリエイティブを一括発注する顧客は残るが、契約の内訳における制作フィーの比率は下がる。商環境はまだ小さい事業なので、一定のシェア増を見込む一方、利益率の高止まりは想定しない。
2035年の売上は約346億円、営業利益は約32億円で、2028年の中計を大きく超える利益率は期待しない。約22億円の純利益の一部を配当として戻し、残りは運転資金・投資・現金へ振り分ける。2025年の高いROEは資本が積み上がるにつれて平準化する。
- リアルイベントの現場施工・運営:数量 3,150(現場施工・運営を伴う案件数(件/年、推定))× 価格 0.08(現場施工・運営1案件の売上(億円/件、名目))→ 売上 252 億円・営業利益 26 億円。市場の実質件数×自社シェア。現場作業はAIでは代替しない
- リアルイベントの企画・クリエイティブ工数:数量 1,690(企画・制作工数の基準年案件換算量(件相当/年))× 価格 0.02(2025年工数相当1単位の売上(億円/件相当、名目))→ 売上 33 億円・営業利益 4 億円。AIエージェント代替の人月・広告制作型。数量は基準年工数換算
- デジタル・配信・販促コンテンツ:数量 91.0(デジタル制作・運用の案件換算量(件相当/年、推定))× 価格 0.06(デジタル1案件の平均売上(億円/件、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替の受託・画面型。成果報酬の確証なし
- 商環境・常設ショールーム:数量 70.0(商環境・常設展示の完成案件(件/年、推定))× 価格 0.45(1案件の平均受注売上(億円/件、名目))→ 売上 32 億円・営業利益 3 億円。常設施設の受注案件数。設計事務以外は現場施工型
- その他・子会社製作案件:数量 215(製作・特殊案件の案件換算量(件相当/年、推定))× 価格 0.11(1案件換算の平均売上(億円/件、名目))→ 売上 24 億円・営業利益 3 億円。製作・子会社の案件換算。実績の内訳開示なし
倍率:資本コストk=7.75%、長期名目成長率g=2%、堀は普通で超過収益の残存率1/2。余剰現金55億円の税後利息1.4%相当を純利益から外すと事業ROEは約15.8%で、RONICは約11.8%。正当化PERの上限は14.44倍。楽観〜中立はその上限をそのまま採用する。現金55億円には戻り方0.75を掛け、重複する利息を除いた事業利益にPERを掛けて足す。
確率:日本のイベント市場の実質需要横ばいを中心に、現場案件で少しシェアを取るが企画工数のAI代替と仕入コストが相殺する。市場規模と会社の実績の両方を重視した30%。
やや悲観 26% 顧客予算縮小と工数単価の低下 利益 8 億円 · PER 11.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 644 円103 億円
イベント市場そのものは消えないが、広告主が案件を選別し、直接発注先を大手代理店とディスプレイ会社にまとめる。博展は既存顧客の一部を維持するものの、大型案件の受注機会と地方での開拓が想定以下となる。現場実装の案件数は2025年に近い水準で伸びず、価格は資材・人件費の上昇分を十分には転嫁できない。商環境は大型企業とのコンペが厳しく、受注規模も小さくなる。
企画・映像・Web関連では、AIエージェントによる制作時間の削減が発注額の引下げとして現れる。企画の請求工数換算は2025年の55%、デジタルはほぼ半分に減る。社員が効率化で余った時間を新しい案件に振り向けられず、社内人件費や京橋の本社・製作拠点の賃料が重く残る。補完的買収に資金を使うが、利益成長に十分つながらない。
2035年の売上は約254億円、営業利益は約12億円まで細る。株主への配当は利益に見合って縮み、余剰現金の蓄積も鈍る。ROEが資本コストを下回るため、会社の資産が増えても株主にとっての稼ぐ価値は増えにくい。
- リアルイベントの現場施工・運営:数量 2,550(現場施工・運営を伴う案件数(件/年、推定))× 価格 0.07(現場施工・運営1案件の売上(億円/件、名目))→ 売上 186 億円・営業利益 13 億円。市場の実質件数×自社シェア。現場作業はAIでは代替しない
- リアルイベントの企画・クリエイティブ工数:数量 1,430(企画・制作工数の基準年案件換算量(件相当/年))× 価格 0.02(2025年工数相当1単位の売上(億円/件相当、名目))→ 売上 26 億円・営業利益 2 億円。AIエージェント代替の人月・広告制作型。数量は基準年工数換算
- デジタル・配信・販促コンテンツ:数量 75.0(デジタル制作・運用の案件換算量(件相当/年、推定))× 価格 0.05(デジタル1案件の平均売上(億円/件、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替の受託・画面型。成果報酬の確証なし
- 商環境・常設ショールーム:数量 52.0(商環境・常設展示の完成案件(件/年、推定))× 価格 0.41(1案件の平均受注売上(億円/件、名目))→ 売上 21 億円・営業利益 1 億円。常設施設の受注案件数。設計事務以外は現場施工型
- その他・子会社製作案件:数量 160(製作・特殊案件の案件換算量(件相当/年、推定))× 価格 0.10(1案件換算の平均売上(億円/件、名目))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。製作・子会社の案件換算。実績の内訳開示なし
倍率:資本コストk=7.75%、長期名目成長率g=2%、堀は普通で超過収益の残存率1/2。余剰現金20億円の税後利息1.4%相当を純利益から外すと事業ROEは約6.2%で、RONICは約7.0%。正当化PERの上限は12.90倍。この筋書きはROEがkを下回り、1/k=12.90倍が稼ぐ力の上限となるため、顧客流出と追加費用を考え11.0倍に下げる。現金20億円には戻り方0.75を掛け、重複する利息を除いた事業利益にPERを掛けて足す。
確率:2026年上期の増収減益が示す採算感応度に加え、AI制作費低下と大型顧客の発注集約が重なる場合を26%。
悲観 14% 制作業務の内製化と現場受注の構造的敗北 利益 −4 億円 · PBR 0.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 125 円20 億円
広告主がイベント予算をデジタルや自社施設へ移し、実イベントでは大手広告会社と施工大手に発注を集中する。博展は指名顧客の維持に失敗し、件数は大きく減る。2017年や2021年の一時的な赤字ではなく、得意先の切替えが恒常化する敗北である。現場実装は1450件に減り、名目の売上単価も物価の上昇に追いつかない。常設展示への参入も利益を生まない。
AIエージェントによる設計、動画、広告運用の内製化が進む。企画の外注工数換算は2025年の25%、デジタルは約29%となり、制作部門の人員を維持できない。IP・海外への投資や買収も成果が出ず、子会社ののれんや設備を減損する可能性がある。企業規模が縮む中で本社家賃、工場維持、安全管理の固定費が残り、業績は赤字に転落する。
2035年の売上は約138億円まで落ち、営業損失は約3億円となる。存続可能性が完全に失われる想定ではないが、新規成長の価値はゼロに近い。株主の価値は、今ある現金と回収可能な売掛金、売却できる設備から既存債務と清算費用を払った残りが中心になる。
- リアルイベントの現場施工・運営:数量 1,450(現場施工・運営を伴う案件数(件/年、推定))× 価格 0.07(現場施工・運営1案件の売上(億円/件、名目))→ 売上 104 億円・営業利益 3 億円。市場の実質件数×自社シェア。現場作業はAIでは代替しない
- リアルイベントの企画・クリエイティブ工数:数量 650(企画・制作工数の基準年案件換算量(件相当/年))× 価格 0.02(2025年工数相当1単位の売上(億円/件相当、名目))→ 売上 11 億円・営業利益 −1 億円。AIエージェント代替の人月・広告制作型。数量は基準年工数換算
- デジタル・配信・販促コンテンツ:数量 40.0(デジタル制作・運用の案件換算量(件相当/年、推定))× 価格 0.05(デジタル1案件の平均売上(億円/件、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替の受託・画面型。成果報酬の確証なし
- 商環境・常設ショールーム:数量 30.0(商環境・常設展示の完成案件(件/年、推定))× 価格 0.37(1案件の平均受注売上(億円/件、名目))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。常設施設の受注案件数。設計事務以外は現場施工型
- その他・子会社製作案件:数量 95.0(製作・特殊案件の案件換算量(件相当/年、推定))× 価格 0.10(1案件換算の平均売上(億円/件、名目))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。製作・子会社の案件換算。実績の内訳開示なし
倍率:構造的敗北で2035年の純利益は赤字となり、PERで継続利益を値付けしない。現在の自己資本約50億円にだけ0.40倍を掛けて時価総額20億円とする。10年後に利益を留保した帳簿資本95億円へ掛けてはならない。会社を清算できると仮定した床も、現時点で売れる資産の税後約20億円を限度とし、過去のPBRの底は使わない。
確率:リアル施工まで失注し、AIによる制作内製化とM&A失敗が同時に重なる厳しい構造的敗北であるため14%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
リアルイベントの現場施工・運営
展示会、発表会、体験イベントなどの制作、施工管理、現地運営、撤去。人が現場で実行する部分であり、AIは事務作業を補助するにとどまる。
| 数量現場施工・運営を伴う案件数(件/年、推定) | 価格現場施工・運営1案件の売上(億円/件、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,600 | 0.06 | 155 | 18 |
| 10 年後 中立 | 3,150 | 0.08 | 252 | 26 |
取り方:2025年有報のリアルイベント売上193.88億円のうち、創作・企画の対価を20%=38.78億円、施工・運営を80%=155.10億円と分析上仮配分。2026年4〜6月の指名受注612件÷指名率81.6%≈四半期750件、年換算約3000件を出発点に、他の商材を除き2600件と推定。単価は155.10億÷2600件≈596.5万円。現場売上と案件数の内訳は会社未開示。中立では案件数3150件、単価は物価3%で10年約1.34倍。JACE2025の近接市場は広告関連2255億+イベント専業2676億=4931億円で同社リアル全体の参考シェア約3.9%。
リアルイベントの企画・クリエイティブ工数
同じイベントに付随する企画、CG・動画、デザイン、集客計画など。人月・制作工数が売り物でAIエージェント代替の対象。
| 数量企画・制作工数の基準年案件換算量(件相当/年) | 価格2025年工数相当1単位の売上(億円/件相当、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,600 | 0.01 | 39 | 4 |
| 10 年後 中立 | 1,690 | 0.02 | 33 | 4 |
取り方:2025年リアルイベント193.88億円の20%を制作企画の対価と仮配分。企画・デザインなどの専門職が586人の従業員の一部を占めることを踏まえた仮定で、会計上の独立セグメントではない。2600件換算×約149万円/件で38.78億円。AIエージェント代替の人月・広告制作型で、中立の外注工数は1690÷2600=0.65倍、価格は約1.29倍、長期gは0%。本体リアル市場のシェアを重複加算しない。
デジタル・配信・販促コンテンツ
映像配信、デジタルサイネージ、Web・アプリの開発、イベントと連動したデジタル施策。受託と操作画面の価値が中心。
| 数量デジタル制作・運用の案件換算量(件相当/年、推定) | 価格デジタル1案件の平均売上(億円/件、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 140 | 0.05 | 7 | 0 |
| 10 年後 中立 | 91.0 | 0.06 | 5 | 0 |
取り方:2025年有報のデジタル分野7.35億円を基礎とし、専門子会社と2026年上期の全社受注件数を参考に、年間140件×525万円と推計した。案件数と単価は非開示。AIエージェント代替は広告制作・受託ソフト型で、中立数量91件=0.65倍、価格は0.060/0.0525=1.14倍。中立gは0%、記録の正本と認める証拠は不足。JACEの関連ソフト費を含む分類は警備等との混合2,532億円であり、純粋なデジタル市場シェアは不明。
商環境・常設ショールーム
店舗・ショールーム・ミュージアム・常設展示の設計・製作と施工。物理的な現場完成責任を負う。
| 数量商環境・常設展示の完成案件(件/年、推定) | 価格1案件の平均受注売上(億円/件、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 50.0 | 0.34 | 17 | 1 |
| 10 年後 中立 | 70.0 | 0.45 | 32 | 3 |
取り方:2025年有報の商環境売上16.93億円を50案件×3386万円と仮置きした。工事件数は非開示で、比較可能な建築単価の公式資料も得られないため、件数は大小案件の平均換算である。矢野経済研究所を引用する会社中計のディスプレイ市場1兆7900億円に対する売上シェアは約0.095%で、常設施設だけの厳密な母数ではない。中立で70案件と1.34倍の価格を想定し、現場工事型でAIの影響は設計事務部分に限定。
その他・子会社製作案件
ニチナン・ヒラミヤの製作機能など、分類外の物理的な設備・什器製造を中心とする残余商材。
| 数量製作・特殊案件の案件換算量(件相当/年、推定) | 価格1案件換算の平均売上(億円/件、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 180 | 0.08 | 15 | 2 |
| 10 年後 中立 | 215 | 0.11 | 24 | 3 |
取り方:2025年有報で「その他」と開示された15.18億円を残余として使う。製造子会社の単独外販や一過性大型案件を含みうるため分類の精度が最も低い。180件換算×約843万円と仮定したが会社の受注件数の公表値ではない。2026年上期の子会社等の売上動向で継続性を確認し、中立215件、物価に近い単価を考える。現場製作中心なのでAIは主に事務工程。
リスクと懸念
AIエージェント代替と内製化
企画書、CADの初稿、CG・動画、イベント告知の制作と運用は、顧客がAIエージェントや内製チームで処理しやすくなる。現場の設営は残っても、その上に載る制作フィーは縮む。クリエイティブとデジタルの中立数量をそれぞれ2025年の65%へ減らした。デジタルを法定記録・独占データ型と見なす開示上の証拠はない。
万博後の大型案件反動と景気循環
2025年は大阪・関西万博や大型見本市の集中で、会社と業界の最高水準が重なった。広告主の予算削減、開催中止、大型案件の獲得失敗が連続すると、設計者や本社の固定人件費は売上と同じ速さで減らない。過去の赤字年度を見ても、一本調子の利益成長を仮定できない。
顧客関係は長期契約ではない
指名受注とリピート率の高さは関係の深さを示すが、同じ価格で何年も買い続ける義務は顧客にない。大手ディスプレイ会社や広告代理店がイベント予算を一括受注すると、博展が下請けに回り粗利益を失う。大口顧客と案件の集中度は公開統計だけでは十分に分からない。
人手と建物賃料の固定費
2025年有報の主要事務所・工場の年間賃借料だけで約4.18億円に上る。人材獲得、施工安全、資材物流の負担もある。2028年12月期からの新リース会計で見かけの負債が増えても事業価値を二重に減らさないが、売上が急減する悲観では家賃と人件費の固定性を利益率に反映する。
M&A・IP・海外展開の資本配分
過去のデジタル、製作、什器への小型買収は補完性があるものの、個別の増分投資利回りは開示からは確定できない。2026〜2028年計画の新規IP事業、海外展開、追加M&Aは、案件獲得力を広げる可能性と、取得原価・人材流出・のれんの減損という危険を同時に持つ。
余剰現金と悲観の床の過信
2025年末の純現金約32億円は、全額を少数株主が直ちに取り出せる金庫の金ではない。税金支払いや繁忙期の発注立替えで2026年上期の現預金は減った。売掛金・仕掛品には回収と完成の危険があり、悲観時の売却可能資産は帳簿の自己資本よりも大幅に小さくなる。
今後の分かれ目
- リピート売上比率80%以上、指名受注率80%以上が複数年続き、2028年営業利益30億円を達成したら
- 通常イベントの継続発注と採算改善が確認できる。中立の現場案件数・利益率を引き上げ、やや楽観側の重みを高める。
- 2027〜2028年にAI活用が進んでも企画の外注請求工数と平均フィーが減らなかったら
- AI代替による売上縮小の前提を和らげる。ただし成果報酬や自社AI商品の金額開示がない限り、制作工数の数量を楽観的に増やさない。
- 受注残高が前年比で2期続けて減少し、営業利益率が5%を割ったら
- 大型案件の反動にとどまらない顧客離れを疑う。やや悲観・悲観の確率を増し、固定費が残る筋書きで利益を再計算する。
- 買収・海外事業の投下資金に対する税引後利益率が資本コスト7.75%を下回ったら
- 余った現金の株主への帰属を低く評価し、追加M&Aによる売上の上振れを採用しない。
- 配当性向30%と増配が維持され、自己株式の実質的な買戻しで純株数が5%以上減ったら
- 10年の還元額を見直すとともに、現金の戻り方を0.75から1.0へ引き上げる根拠が生まれる。
- 2028年末以降もAI代替でデジタル・企画売上が減る一方、商環境と現場施工が拡大したら
- 複合事業を一律のAIリスクで割り引かず、物理施工の数量とAI対象工数を分けた中立モデルを維持する。
見ておくもの
- 四半期の指名受注件数・指名受注率とリピート売上比率の推移
- 受注高、受注残高、受注残高回転期間と大型案件の進行
- リアルイベント・デジタル・商環境・その他の商材別売上と案件粗利益率
- 平均受注単価、現場施工コスト、協力会社への外注比率、制作工数のAI効率化
- 2028年の売上310億円・営業利益30億円・ROE15%超・配当性向30%の実現
- 純現金・契約負債・売掛金・営業キャッシュフローの季節変動
- ニチナン・ヒラミヤの増分利益、買収のれん、IP・海外事業の投資回収
倍率と資本コストの決め方
現在の株価・過去のPER・PBRは10年後の倍率を決める材料にしていない。2025年有報のリアル・デジタル・商環境・その他の売上を起点に、受注約3000件という案件数の推計を置き、リアル売上は物理施工80%とAI対象の企画20%に仮分解した。中立では現場案件数3150件、企画工数換算1690件、デジタル91件とし、名目価格に物価を含めた。倍率は資本コスト7.75%、成長率g_long2%、通常の堀によるRONICの逓減から決め、楽観〜中立には式の上限をそのまま使用した。
現金は2025年末の純現金32.3億円から案件運転資金を差し引き、今の余剰約12億円と期間中の蓄積を区別した。各筋書きの余剰現金は当該筋書きの純利益と自己資本に含め、税後利息をPER評価から除いて帳簿額の75%を足した。悲観の床は今の売れる資産から負債・清算費用を控除し、過去のPBRの底を用いていない。2028年12月期からのリース表示変更で利益と負債の見かけが変わっても、賃料を二重に控除しない。最大の推定誤差は工数・案件単価と10年間の現金蓄積である。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%+株式プレミアム4.5%の基本7.5%に、循環・純現金を反映した品質調整+0.25%のみを加える。