結論
GMOインターネットは、ドメインの「お名前.com」、レンタルサーバーの「ConoHa」、プロバイダー事業を束ねる国内最大級のネット基盤会社だ。売上の約 9 割が毎月・毎年の継続課金で、景気の波に強い。2025 年の初めに親会社から事業を引き継ぎ、売上は一気に 6 倍へ膨らんだ。
筆者の結論は、祖業は良い商売だが今の値段は高い、というものだ。株価を支えているのは、2024 年に始めた GPU クラウド(AI 向けの計算機の貸し出し)への期待である。ところが GPU は 5 年ほどで古くなり、貸出単価も下がる。稼ぎの柱になるまで、毎年のように新しい機械へ投資し続ける商売だ。
稼ぎの中心は営業利益率 14% 前後の祖業にある。契約件数は人口と無関係に増えており、10 年後の営業利益は今の 2 倍の 160 億円ほどになると置いた。GPU クラウドが加わっても、成長は年 6% 前後にとどまる。
親会社が 6 割超の株を持つ親子上場で、配当性向 100% を予定する。株主には優しいが、GPU 投資の元手は増資と借入に頼る。確率で重ねた本質価値は今の時価総額を 4 割ほど下回る。AI 需要が想像以上に続く強気の筋書きでも、今の値段を大きくは超えない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、まず見るのは「10 年先も続く商売か」と「稼いだお金をどう使うか」だ。
祖業はおおむね合格だ。ドメインとサーバーは、使われ続ける限り更新料が入る。商売の質は水道のような継続課金に近く、利益率 14% も悪くない。筆者はこの部分を、手元に置いておきたい事業と見る。
一方で、その利益を GPU サーバーの購入に回す点には慎重になる。機械は 5 年ほどで価値が落ち、貸出単価も毎年下がる。買った瞬間から減価償却が始まる商売で、オーナー利益(再投資を引いたあとに株主の手元に残る利益)は見た目の利益より小さい。
経営の資本の使い方にも注文がある。親会社の都合で増資・売出し・事業の売買が重なっており、少数株主は親の意思決定の外にいる。安全域、つまり払う値段と本質価値との余裕は、今の値段では取れていない。
本質価値は、祖業を今の 2 倍の利益に育てる前提でも、今の時価総額の 6 割ほどだ。GPU が大成功する筋書きを入れても、値段を正当化するところまでは届かない。
何で稼ぐ会社か
事業は 2 本柱で、稼ぎはほぼ片方に偏っている。
インターネットインフラ事業が売上の 8 割を超える。ドメイン登録の「お名前.com」は 14 年連続で国内シェア首位を名乗り、登録実績は 4,200 万件を超える。レンタルサーバーの「ConoHa」、プロバイダー事業、ドメイン付きのホームページ作成なども同じ顧客に売る。国内の契約件数は 1,370 万件(2026 年 6 月末)で、売上の 87.6% がストック型の継続課金だ。一度ドメインを取った人がサーバーも借り、更新を続ける。この積み重ねが、会社の土台である。
2024 年 11 月に始めた GPU クラウドもこの事業に入る。NVIDIA の最新 GPU「B300」を載せた機械を借りてもらう仕組みだ。B300 25 台は稼働率 9 割超で動き、2025 年 10〜12 月期には単体で黒字になった。2026 年 8 月には、さらに 106 台(約 170 億円)を買うと決めた。
インターネット広告・メディア事業は売上の 2 割弱だが、利益は薄い。広告代理の「GMO NIKKO」、広告配信の「GMOSSP」、自社メディアが中心だ。広告主が自社で運用する動きが強まり、2026 年上期の売上は 14% 減った。2026 年 10 月には、親会社が持つ「GMOコマース」の株を 66% 取得し、広告事業をそこへ寄せる再編に入る。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、規模と顧客の習慣にある。
ドメイン管理は一度預けると他社へ移す手間がかかり、更新率が高い。同じ顧客にサーバー・接続・広告までまとめて売れるので、1 人あたりの売上が積み上がる。売上の 9 割近くが継続課金なので、景気が悪い年でも利益が崩れにくい。ここは筆者が評価する点だ。
ただし値決めの力は強くない。ドメインは格安キャンペーンが当たり前の世界で、レンタルサーバーはエックスサーバー・さくらインターネット・ロリポップ・海外勢と数が多い。AWS などの大手クラウドにも上から侵食される。ここで堀が深いと言えるほどではないため、堀は並と見る。
資本効率は高い。軽い資産で稼ぐ祖業の自己資本利益率は、2025 年に 4 割を超えた。ただし事業を引き継いだ時に自己資本が薄く積まれた面があり、この数字は割り引いて読む。GPU クラウドは逆に重い資産を抱えるため、会社全体の資本効率は少しずつ下がっていく。
弱い点は 2 つある。広告・メディアは利益率が 1% 台と低く、抜け出せていない。もう 1 つは親会社への依存で、取引条件が親子の都合で決まる懸念が残る。社長の伊藤正氏は、インフラ事業の首位を取りにいく方針を示している。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のレンタルサーバーとドメインは、成熟しているが縮まない市場だ。
企業も個人も、ホームページ・メール・ネットショップをクラウドに置く流れは続いている。IDC の予測では国内ホスティング市場は 2018 年の 1.3 兆円から 2022 年に 1.8 兆円へ伸びる見通しで、伸びの中心はクラウド型だった。非クラウド型の共用サーバーは緩やかに縮んでいる。一方でドメインの総数は、AI で誰でもサイトを作れるようになり、むしろ増えやすい。
競争は厳しい。国内ではエックスサーバー、さくらインターネット、ロリポップ、GMO の ConoHa が上位を争い、世界ではアマゾンやグーグルのクラウドが基盤を押さえる。値段で勝負する商売なので、利益率を上げにくい。GMO は「ドメインを入口に、サーバー・接続・広告へ広げる」販売の力で戦っている。
GPU クラウドは別の勝負だ。AI の学習や推論に使う計算機は不足しており、国内では GMO・さくらインターネット・ソフトバンクなどが同じ GPU を調達している。足りない間は貸し手に有利だが、機械の世代が替わると、古い GPU の貸出単価は急に下がる。足もとは需要が強いと見るのが自然だが、10 年先は単価と台数の両方が読みにくい。
広告は国内のネット広告費が 2025 年に 4 兆円を超えて成長している。ただし伸びの大半はグーグル・メタ・アマゾンに集まり、国内の中堅代理店は広告主のインハウス化に押されている。
資本政策と M&A
資本政策は 2025 年と 2026 年で大きく変わった。
2025 年は親会社の持株会社化に伴う事業の承継だった。親会社の持分は 57% から 92% へ上がり、東証プライムの流通株式比率の基準を割る形になった。そのため 2026 年 4 月に、新株 3,000 万株の発行(手取り約 202 億円)と親会社の売出し 6,150 万株を同時に行った。親会社の持分はこれで 6 割前後に下がったとみる。
増資の資金は GPU クラウドの機械に回す。さらに「連結配当性向 100%」を 2026 年 12 月期の方針とし、利益をほぼ全額配当に回す。成長の元手は増資と借入になるため、配当を多く出す方針と、投資を続ける方針がぶつかりやすい。
再編の中身も注意が要る。2026 年 10 月に、親会社が持つ GMOコマースの株を取得する。同時に自社の広告子会社をそこへ移す。親子間で売買する取引で、価格の妥当性は外から見えにくい。親会社の持分がなお 6 割あり、流通株式比率の基準(期限は 2026 年末)を満たし続けるため、追加の売出しや、逆に完全子会社化もありうる。
10 年の還元は、連結配当性向 100% の方針(2026 年 12 月期)を下回る 8 割。2026 年 4 月の増資の手取り 202 億円は GPU 投資に回り、還元の原資にしない。
点検済み:中立の営業利益率13.3%が会社予想(26・27年12月期11.5%)と過去最高(10.5%)を超えていたため、ドメイン14%・GPUクラウド15%に置き直した(全社12.3%。直近の急な改善が続く分だけ予想より少し高く採る)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
祖業はこれから伸びる。AI でサイトやアプリを作る人が増えている。ドメインとサーバーの国内契約件数は、2025 年末の 1,263 万件から 2026 年 6 月末の 1,370 万件へ半年で伸びた。お名前.com の首位は 14 年続く。継続課金が売上の 9 割近くを占めるため、新しい契約はそのまま将来の利益になる。
GPU クラウドは、国内で AI の計算機が足りない時期に当たっている。B300 は稼働率 9 割超、事業単体の黒字は 2025 年 10〜12 月期に達成した。増資で集めた約 202 億円はすぐに使い道が決まり、追加の 106 台は 2027 年を待たず前倒しで入る。AI 需要が 10 年続くなら、台数は今の数倍に増やせる。
親会社の支援も大きい。グループには決済・銀行・証券・暗号資産があり、AI を使う企業顧客を引き込みやすい。配当性向 100% の方針は、利益が増えればそのまま配当が増えることを意味する。祖業の 10 年後の営業利益が今の 2 倍になれば、GPU の上乗せで 3 倍もありうる。
慎重な見方
祖業は良い商売でも、成長の速い商売ではない。ドメインもレンタルサーバーも値下げ競争の世界で、この 10 年の売上は人口と物価の範囲に収まってきた。契約件数の伸びには海外子会社の連結や割引での獲得が混じっている可能性があり、1 件あたりの売上が伸びているとは言えない。利益率が 14% を超えて上がる根拠は薄い。
GPU クラウドは、事業の質が根本から違う。機械は 5 年ほどで入れ替えが要り、新世代が出るたびに古い機械の貸出単価は崩れる。需要が強い間は稼働率が高くても、供給が増えれば価格競争になる。170 億円の追加投資が回収できる確かな保証はなく、利益は見かけより小さい。
親会社が 6 割を握り続ける構造は、少数株主に不利に働く。GMOコマースの取得価格は親会社が決める取引だ。配当性向 100% は、成長投資の資金を再び増資に頼ることを意味する。足元の利益が増えても、1 株あたりの価値は薄まりやすい。今の時価総額は、GPU が大成功することを前提にした値段になっている。
どちらに重みを置いたか
強い方は慎重な見方だ。祖業の質は認めても、今の時価総額は GPU クラウドの成功をすでに織り込んでいる。祖業だけで説明できる本質価値は、今の値段の 6 割ほどだ。
GPU の上振れは強気の筋書きで拾うが、機械の入れ替え負担と単価下落を考えると、利益に残る割合は小さい。確率は中立に 3 割、悲観に近い側に 4 割強を置き、強気側は 2 割強にとどめた。親会社の取引の不透明さも、悲観寄りに効かせた。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 529 円1,610 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 176 円535 億円)。 今の値に割り戻すと 387 円1,177 億円、今との差 −22.3%、 期待の年率 +3.5%(資本コスト 7.2%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 1,627 円4,949 億円 | 272 円828 億円 | +281.3% | +14.3% | 114 円347 億円 |
| やや楽観 | 17% | 976 円2,970 億円 | 236 円717 億円 | +143.4% | +9.3% | 206 円627 億円 |
| 中立 | 32% | 641 円1,951 億円 | 198 円603 億円 | +68.5% | +5.4% | 269 円817 億円 |
| やや悲観 | 28% | 188 円572 億円 | 151 円458 億円 | −32.0% | −3.8% | 95 円288 億円 |
| 悲観 | 17% | 47 円143 億円 | 82 円250 億円 | −74.1% | −12.6% | 22 円67 億円 |
| 加重平均 | 100% | 529 円1,610 億円 | 176 円535 億円 | +41.6% | +3.5% | 705 円2,146 億円 |
今の株価時価総額 498 円1,515 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 6% AI 需要が 10 年続き、GPU クラウドが祖業に並ぶ柱になる 利益 220 億円 · PER 22.3 倍 · 株価時価総額 1,627 円4,949 億円
AI で作られるサイトとアプリが増え、ドメインとサーバーの契約は 1,750 万件まで伸びる。クラウド型の上位プランへ移る人が増え、1 件あたり売上も物価並みに上がる。GPU クラウドは AI の推論需要を取り込み、600 台規模の計算機を回す。稼働率は 9 割近くを保ち、機械の更新も借入と営業の稼ぎで賄えるようになる。広告・メディアは GMOコマースとの統合で顧客を共有し、利益率が 9% まで改善する。親会社との再編は進むが、少数株主に不利な取引にはならない。配当は利益の 6 割ほどに落ち着き、残りを機械の購入に回す。祖業の安定と GPU の成長が同時に成り立つ、最も良い 10 年である。
- ドメイン・サーバー・接続(継続課金):数量 1,750(国内契約件数(万件))× 価格 6,600(1 件あたり年間売上(円、名目))→ 売上 1,155 億円・営業利益 208 億円。契約 1,750 万件×1 件あたり売上(今の約 1.31 倍)
- GPU クラウド:数量 600(稼働サーバー台数(台、8 GPU 換算の年平均))× 価格 0.90(1 台あたり年間売上(億円、名目))→ 売上 540 億円・営業利益 119 億円。GPU 600 台規模×1 台あたり年間 0.9 億円
- インターネット広告・メディア:数量 4,000(取引する広告主の数(社、推定))× 価格 477(1 社あたり年間売上(万円、名目))→ 売上 191 億円・営業利益 17 億円。広告主 4,000 社維持×1 社あたり売上 477 万円
倍率:事業の純利益 220 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 26.9% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 17.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 22.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 22.3 倍。全体の PER 22.3 倍、時価総額 4,915 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:GPU の台数が今の 25 倍に達し、利益率も保つ筋書きは条件が重い。強気としては最も上に置くが、機械の入れ替え負担を考えると 5% 台が妥当で、6% とした。
やや楽観 17% 祖業が着実に伸び、GPU が脇役として利益に乗る 利益 138 億円 · PER 21.6 倍 · 株価時価総額 976 円2,970 億円
祖業は契約件数が 1,600 万件まで増え、1 件あたり売上も物価よりやや低い伸びで上がる。ドメインで入った顧客に ConoHa と接続を売る営業が効き、営業利益率は 16% 台に乗る。GPU クラウドは 2027 年までに 170 億円分の機械が入り、250 台前後で回る。貸出単価は年 3% ほど下がるが、台数でそれを上回る。広告・メディアは広告主が減るものの、GMOコマースの顧客基盤とのクロス販売で利益率を 6% 台まで戻す。親会社の持分は流通株式比率の基準に合わせて緩やかに下がり、取引の不透明さは目立たない。祖業が柱、GPU が追加の稼ぎという、素直に良い 10 年である。
- ドメイン・サーバー・接続(継続課金):数量 1,600(国内契約件数(万件))× 価格 6,400(1 件あたり年間売上(円、名目))→ 売上 1,024 億円・営業利益 169 億円。契約 1,600 万件×1 件あたり売上(今の約 1.27 倍)
- GPU クラウド:数量 250(稼働サーバー台数(台、8 GPU 換算の年平均))× 価格 0.80(1 台あたり年間売上(億円、名目))→ 売上 200 億円・営業利益 40 億円。GPU 250 台規模×1 台あたり年間 0.8 億円
- インターネット広告・メディア:数量 3,800(取引する広告主の数(社、推定))× 価格 441(1 社あたり年間売上(万円、名目))→ 売上 168 億円・営業利益 11 億円。広告主 3,800 社×1 社あたり売上 441 万円
倍率:事業の純利益 138 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 23.3% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.6 倍。全体の PER 21.57 倍、時価総額 2,970 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:祖業の契約増と GPU の追加 170 億円の導入がともに計画どおり進む筋書き。会社の実績(2026 年上期の営業利益 +46%)が示す勢いを、10 年に引き延ばした形。
中立 32% 祖業が物価並みに伸び、GPU は台数を保つだけの平凡な 10 年 利益 95 億円 · PER 20.5 倍 · 株価時価総額 641 円1,951 億円
契約件数は 1,500 万件まで増える。人口が減る国で伸びる理由は、AI で作るサイトとアプリ、中小企業のネット移行だ。1 件あたり売上は物価の 1.34 倍に届かず 1.25 倍にとどまり、営業利益率は 14% で落ち着く。GPU クラウドは追加投資で 150 台に達するが、機械は 5 年で入れ替えが要るため、そこで頭打ちになる。貸出単価は新世代の登場で緩やかに下がり、営業利益率は 15% に収まる。広告・メディアは広告主が 1 割減るが、GMOコマースとの統合で利益率は 5% まで戻る。配当は純利益の 8 割ほどを出し続ける。この 10 年で営業利益は今の 1.9 倍の約 150 億円になるが、成長は年 6% 前後で、驚きのない着実な会社になる。
- ドメイン・サーバー・接続(継続課金):数量 1,500(国内契約件数(万件))× 価格 6,275(1 件あたり年間売上(円、名目))→ 売上 941 億円・営業利益 132 億円。契約 1,500 万件×1 件あたり売上(今の 1.25 倍)
- GPU クラウド:数量 150(稼働サーバー台数(台、8 GPU 換算の年平均))× 価格 0.75(1 台あたり年間売上(億円、名目))→ 売上 113 億円・営業利益 17 億円。GPU 150 台を維持×1 台あたり年間 0.75 億円
- インターネット広告・メディア:数量 3,600(取引する広告主の数(社、推定))× 価格 441(1 社あたり年間売上(万円、名目))→ 売上 159 億円・営業利益 8 億円。広告主 3,600 社×1 社あたり売上 441 万円
倍率:事業の純利益 95 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.3% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.5 倍。全体の PER 20.51 倍、時価総額 1,950 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:祖業の継続課金は堅く、GPU は追加 170 億円が入るが以後は更新で台数を保つだけ、という最も妥当な筋書き。強気と慎重の言い分が拮抗する落としどころ。
やや悲観 28% 値下げ競争で祖業の利益率が下がり、GPU は単価下落で利益が出ない 利益 58 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 188 円572 億円
ドメインの値下げ競争が続き、サーバーも大手クラウドの簡易プランに押され、1 件あたり売上は 1.15 倍にとどまる。契約件数は 1,380 万件まで伸びるが、割引で取った契約が多く、営業利益率は 12% に下がる。GPU クラウドは需要の強い時期が過ぎ、供給が増えて単価が崩れる。追加の機械は入れるが、貸出単価が 5 割近く下がり、台数も 100 台に減って、償却を賄うのがやっとになる。広告・メディアは広告主が 3 割減り、利益はほぼ出ない。配当性向は 8 割を保てず、利益に見合う水準へ下がる。稼ぎは今の 6 割程度に縮むが、事業としては残る。
- ドメイン・サーバー・接続(継続課金):数量 1,380(国内契約件数(万件))× 価格 5,773(1 件あたり年間売上(円、名目))→ 売上 797 億円・営業利益 96 億円。契約 1,380 万件×1 件あたり売上(今の 1.15 倍)
- GPU クラウド:数量 100(稼働サーバー台数(台、8 GPU 換算の年平均))× 価格 0.45(1 台あたり年間売上(億円、名目))→ 売上 45 億円・営業利益 2 億円。GPU 100 台×1 台あたり年間 0.45 億円
- インターネット広告・メディア:数量 3,000(取引する広告主の数(社、推定))× 価格 395(1 社あたり年間売上(万円、名目))→ 売上 119 億円・営業利益 2 億円。広告主 3,000 社×1 社あたり売上 395 万円
倍率:ROE 約 13%、g 3.0%(成長が鈍る)、RONIC = k 7.25% + 1/2 ×(13% − 8.0%)= 10.5% から正当化 PER = (1 − 3.0÷10.5)÷(8.0 − 3.0) = 14.3 倍。稼ぎが縮み続ける筋書きなので、上限の 7 割に引き上げず、約 6.7 割に置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 9.5 倍・時価総額 555 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:ドメイン・サーバーの値下げ競争と GPU の単価下落は、すでに起きている流れの延長にある。親会社との取引の不透明さも重なるため、中立に近い確率を置く。
悲観 17% 祖業が大手クラウドと AI に侵食され、GPU 投資が不良資産になる 利益 15 億円 · PBR 1.0 倍 · 株価時価総額 47 円143 億円
AI でサイトが自動で作られ、ドメインとサーバーは値上げができない商材に変わる。大手クラウドが中小企業向けのまとめ販売を強め、1 件あたり売上は物価を下回って横ばいになる。契約件数も 1,150 万件に減り、営業利益率は 7% まで下がる。GPU クラウドは供給過剰で単価が 8 割以上落ち、2026〜27 年に買った機械の多くを減損する。配当は最初の数年こそ今の水準を保つが、保有資産の売却で払う形になり、のちに大きく削る。借入も増える。広告・メディアは縮小のまま赤字になり、GMOコマースへの出資も回収できない。親会社は支援せず、少数株主は価値の毀損だけを引き受ける。稼ぐ力は今の 2 割ほどに縮み、優良な会社とは言えなくなる。
- ドメイン・サーバー・接続(継続課金):数量 1,150(国内契約件数(万件))× 価格 5,020(1 件あたり年間売上(円、名目))→ 売上 577 億円・営業利益 40 億円。契約 1,150 万件×1 件あたり売上(今と同じ。価格は上がらない)
- GPU クラウド:数量 120(稼働サーバー台数(台、8 GPU 換算の年平均))× 価格 0.20(1 台あたり年間売上(億円、名目))→ 売上 24 億円・営業利益 −10 億円。GPU 120 台×1 台あたり年間 0.2 億円(単価が崩れ赤字)
- インターネット広告・メディア:数量 2,200(取引する広告主の数(社、推定))× 価格 329(1 社あたり年間売上(万円、名目))→ 売上 72 億円・営業利益 −1 億円。広告主 2,200 社×1 社あたり売上 329 万円
倍率:構造的に負け、稼ぐ力は純利益 14.6 億円(÷k で 約 183 億円)まで縮む。床は純現金とすぐ売れる資産の税後(約 143 億円)と稼ぐ力のうち大きい方。今の自己資本 137 億円に PBR 1.04 を掛けた約 143 億円で(稼ぐ力にやや悲観の 9.5 倍を掛けた約 139 億円とほぼ同じ)、GPU の機械の減損(約 200 億円)は自己資本の計算に入れた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 1.04 倍・時価総額 142 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:大手クラウドの侵食と GPU の単価下落が同時に進み、増資と借入で買った機械の回収に失敗する構造的な負け。5% 未満ではない確率を置くのは、すでに親子上場・GPU 先行投資という構造があるため。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ドメイン・サーバー・接続(継続課金)
お名前.com・ConoHa・プロバイダーなど。更新料と月額料金の積み上げで、売上の約 9 割が継続課金。
| 数量国内契約件数(万件) | 価格1 件あたり年間売上(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,263 | 5,020 | 634 | 89 |
| 10 年後 中立 | 1,500 | 6,275 | 941 | 132 |
取り方:有報の 2025/12 末の国内契約件数 1,263 万件。インフラ事業の売上 660 億円から GPU クラウドの推定 20 億円と内部取引の調整を引いた約 634 億円を、契約件数で割って 1 件あたり売上を出した。利益は事業の利益 86 億円に GPU の推定赤字 3 億円を戻した値(推定)。
GPU クラウド
NVIDIA の GPU を搭載した計算機(1 台 8 GPU)を AI 企業に貸し出す事業。2024 年 11 月開始。
| 数量稼働サーバー台数(台、8 GPU 換算の年平均) | 価格1 台あたり年間売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 22.0 | 0.90 | 20 | −3 |
| 10 年後 中立 | 150 | 0.75 | 113 | 17 |
取り方:売上・利益は開示がない推定。H200 の機械に、2025/12 から B300 25 台が加わった。年間平均で約 22 台、1 台あたり売上は 8 GPU×8,760 時間×稼働 9 割×1 GPU 時あたり約千円の料金が目安で約 0.6 億円、H200 の高い単価を含め 0.9 億円とした。通期は償却先行で小さな赤字とし、10〜12 月期は黒字(会社説明)。
インターネット広告・メディア
広告代理(GMO NIKKO)、広告配信(GMOSSP)、自社メディア。広告主のインハウス化で縮小中。
| 数量取引する広告主の数(社、推定) | 価格1 社あたり年間売上(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 4,000 | 329 | 132 | 2 |
| 10 年後 中立 | 3,600 | 441 | 159 | 8 |
取り方:広告・メディア事業の 2025/12 売上 131.7 億円、利益 2.0 億円(有報)。取引する広告主の数は開示がなく、代理店型の事業として約 4,000 社と推定し、1 社あたり売上を逆算した。
リスクと懸念
GPU の価値が早く落ちる
GPU サーバーは 5 年ほどで次の世代に入れ替わり、古い機械の貸出単価は新世代の登場で急に下がる。2026〜27 年に約 170 億円を追加で買うが、単価が想定より下がれば償却を稼ぎで賄えず、資産の減損に進む。会社は回収年数や利回りを公表しておらず、外から判断しにくい。
親会社との取引の透明性
親会社が株の 6 割超を持ち、2026 年 10 月にはその親会社から GMOコマースの株を取得する。取得価格の細目は外から見えにくい。事業の再編や資金の貸し借りが親の都合で決まる懸念があり、少数株主の価値が薄まる余地がある。
上場維持と親会社の持分の行方
東証プライムの流通株式比率の基準は 2026 年末が充足の期限で、増資・売出しは一部その対応だった。基準を満たさなければ追加の売出し、あるいは完全子会社化による上場廃止の可能性が出る。後者は値段次第で少数株主に有利にも不利にもなる。
ドメイン・サーバーの値下げ競争
ドメインは格安キャンペーンが続き、レンタルサーバーも国内外の競合が多い。AWS・グーグルなどの大手クラウドが中小企業向けの簡易サービスを強めれば、1 件あたり売上が伸びにくい。値上げができなければ、利益率 14% の維持も難しくなる。
広告・メディアの縮小
広告主が自社で運用する動きと、グーグル・メタ・アマゾンへの集中で、国内の中堅広告代理店は縮んでいる。2026 年上期の売上は 14% 減った。GMOコマースへの再編で改善を狙うが、利益率が 1% 台から上がるかは確かでない。
配当性向 100% と資金調達の依存
2026 年は連結配当性向 100% を予定する。利益をほぼ全て配当に回しながら、GPU 投資を増資と借入で賄う形だ。AI 需要が鈍れば、配当の維持と投資の継続を同時には続けられなくなり、減配か再増資のどちらかが要る。
今後の分かれ目
- GPU クラウドの 1 台あたり売上と利益率が決算で開示され、利益率が 20% を超える
- GPU が祖業を上回る稼ぎの柱になる道が開け、10 年のやや楽観・楽観の確度が上がる。
- B300 の次の世代に切り替わり、B300 の貸出単価が 1 年で 3 割以上下がる
- 追加投資 170 億円の回収が遅れ、悲観に近い筋書き(減損と配当の削減)の確度が上がる。
- 親会社が追加の売出しか完全子会社化の公開買付けを発表する
- 売出しなら株式の需給悪化、公開買付けなら価格次第。いずれも祖業の本質価値は変わらないので、筋書きの確率は動かさない。
- 国内契約件数が 1,500 万件を超えても 1 件あたり売上が伸びない
- 数量だけが伸びて価格が伸びない構図が確認でき、祖業の成長は物価未満と見て中立の下側に寄せる。
- 広告・メディアが GMOコマースとの統合後も利益率 1% 台のまま
- 統合の効果が出ていない証拠になり、広告事業は撤退・売却の候補になる。
- 配当性向 100% の方針が来期以降も続く
- 利益を配当に回し続けても祖業の稼ぎだけで足りることが確認でき、資本の使い方への懸念はやや後退する。
見ておくもの
- GPU クラウドの追加サーバー(2026 年 8 月・2027 年 1 月から導入)の稼働率と、決算で開示される売上・利益
- インフラ事業の国内契約件数(1,370 万件)と、1 件あたり売上の推移
- 広告・メディア事業の利益率と、GMOコマースとの統合後の業績
- 親会社の持株比率と、東証プライムの流通株式比率の充足状況
- 配当性向 100% の継続と、増資・借入の動き
倍率と資本コストの決め方
今の株価・PER は見ずに、セグメントごとの数量×価格で 10 年後の営業利益(中立で約 160 億円)を積み、その時点の ROE から利益ベースの倍率を決めた。倍率は資本コスト 7.25%・長期の成長 4.0%・残る割合 1/2 の式から出した上限の約 7.5 割で、今の PER の高さには寄せていない。GPU の売上・利益は開示がなく、サーバー 1 台あたりの稼ぎは自分で推定した。推定が外れた時の幅は、強気と弱気の筋書きの台数・単価・利益率に反映した。新リース会計基準の影響は小さく、10 年後の数字は今の形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 17→22.3 倍・やや楽観 PER 15.8→21.57 倍・中立 PER 13.2→20.51 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.5% を足した。親会社との取引など個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.25%。