結論
セーラー広告は、高松に本社を置き、四国・山陽・北部九州を中心に広告制作、媒体取扱、イベント、地域振興を手がける老舗の広告会社である。筆者の結論は「割高」だ。地域に根を張った営業網や保有不動産には価値がある。しかし、長く持つ株主が受け取れる利益は小さく、広告制作・運用をAIエージェントが代替する10年間を考えると、現在の時価総額約13.7億円には十分な安全域がない。
会社の総売上高は2026年3月期で約78.6億円だが、広告媒体の仕入額などを除いた会計上の収益は約22.2億円にとどまる。広告の取扱規模と、会社自身が獲得する付加価値は区別しなければならない。営業利益は赤字であり、過去10年のROE中央値も約1.1%と低い。2023年3月期には利益率が大きく改善したものの、その後は再び収益力が弱まり、持続的な高収益企業へ転換できた証拠はまだない。
評価できる変化もある。高知の広告会社の統合、ソフト開発会社フェローの買収、地域イベントや空間プロデュースの拡大によって、単なる広告枠の仲介から脱しようとしている。フェローの斎場予約システムは全国に導入実績があり、地域広告とは異なる顧客基盤を持つ。ただし、2026年3月期のソフト開発収益は連結期間が半年であり、利益貢献の持続性はまだ検証段階だ。
最大の問題は、利益を増やすための再投資が資本コストを上回っているかどうかである。広告の数量が減っても人員や拠点費用を削れなければ、利益は急速に失われる。反対に、案件管理の共通化と現場型サービスへの移行が進めば、会社は小さくなりながら利益を維持できる可能性がある。筆者はその改善余地を認めるが、実現を当然とは考えない。
10年後の中立時価総額は約8.7億円であり、資本コスト8.5%で将来の価値と期間中の還元を現在へ割り引くと、確率加重した本質価値は約5.6億円となる。現在の時価総額との差は約マイナス59%だ。帳簿上の純資産が時価総額より大きいというだけで、この差を埋めることはできない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で最初に問いたいのは、10年後も顧客がこの会社にお金を払う必然性である。地域企業が広告を出し、自治体が地域振興を行い、イベントが開催される需要は残る。しかし、広告を作って配信し、結果をまとめる仕事は今ほど多くの人間を必要としなくなる。長い歴史や知名度だけで、10年間の利益を守れるわけではない。
地域の顧客関係には一定の価値がある。経営者が困ったときに相談できる相手であり、自治体や地域団体との調整を任せられることは、AIだけでは簡単に置き換えられない。イベントや商業空間の企画から現場実行まで責任を持てるのであれば、その能力は長く残る可能性がある。一方、広告媒体を所有せず、広告主の乗り換え費用も高くないため、強い価格決定力までは期待できない。
次に、株主の取り分となる利益を考える。会社が稼いだ利益は、従業員の確保、制作体制の更新、システム開発、買収費用に再投入される。過去10年のROEは資本コストを大きく下回り、追加投資が高い利回りを生んだ実績も乏しい。売上が伸びても株主の価値が増えない可能性がある。経営陣には、収益性を確かめられない新事業へ資本を広げるより、利益を生む仕事に集中し、不要な資産を還元する規律が求められる。
保有不動産や上場株式は、事業が苦しくなったときの支えになる。しかし、少数株主はいつ資産を売るか決められない。実際に売却され、配当や自社株買いとして戻るまでは、帳簿の額をそのまま株式の本質価値に加えるべきではない。
フェローの斎場予約システムは例外的に詳しく見たい。自治体の運営と深く結び付くサービスが広がり、継続契約の解約率が低く、適切な値上げを続けられるなら、小さいながら長期の収益源になりうる。ただし、その証拠はまだ十分ではない。
現時点の判断は、地域で必要とされる会社ではあるが、優れた資本効率を備えた会社ではないというものだ。将来の黒字化を信じるだけでなく、利益が資本コストを上回ることを確認できるまで、高い評価を与えない。
何で稼ぐ会社か
同社の中核は広告事業である。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、屋外広告、インターネット広告の媒体取扱に加え、販売促進、イベント運営、制作、地域振興事業を提供する。広告事業の2026年3月期総取扱高は約76.0億円で、グループの事業規模の大部分を占める。ただし、会計上の広告事業収益は約20.4億円である。媒体の仕入れに相当する部分は会社の稼ぎではなく、収益の実態を見るにはこの違いが重要になる。
媒体取扱では、地方企業や自治体の広告予算を預かり、テレビ局、新聞社、ネット広告媒体などへ出稿する。既存顧客との関係が受注の入口になるが、媒体そのものを保有しているわけではない。媒体の価格や広告効果は外部に左右され、代理店の収入は手数料や企画制作費に依存する。2026年3月期にはインターネット・モバイル広告の取扱高が約21.0億円となり、前年から増加した。一方、テレビ、新聞、販売促進、イベントなどには減少が目立った。
制作・販売促進では、企業の販促物、ウェブサイト、ブランド施策、採用支援、地域産品の販路開拓などを扱う。観光イベント、スポーツマーケティング、自治体の公募型企画提案も重要な仕事だ。広告文や画像の制作はAIが代替しやすいが、会場運営、施工、地元事業者との調整、行政との折衝は現場での対応が残る。この違いが10年後の利益構造を左右する。
リテール事業では、「徳島・香川トモニ市場」やオンライン販売を通じて地域産品を扱う。2026年3月期の会計上の収益は約0.6億円で、まだ赤字である。地域商品の開発や販売先の開拓には広告事業との接点があるが、小売の物流、在庫、店舗運営という別の難しさを持つ。広告顧客の支援から自社の流通事業へ進むことで、広告以外の収益が生まれるかが課題になる。
ソフト開発事業は、2025年10月に取得したフェローが中心である。斎場予約システム、電話催告システム、音声自動応答、クラウドサービスの開発と保守を手がける。斎場予約システムでは、自治体や広域組合などに導入実績を持ち、年間25万件以上の予約・火葬実績を管理していると同社は公表する。2026年3月期の連結収益は約1.2億円で、営業利益は小幅な黒字だった。この事業には顧客の業務に組み込まれる強みがあるが、個別受託開発と継続課金の内訳は十分に開示されていない。
優良さと弱いところ
最大の強みは、長年にわたって築いた地域顧客との接点である。1951年創業の会社として、四国の企業、金融機関、自治体、地域メディアとの仕事を積み重ねてきた。広告出稿だけでなく、地域イベントや行政事業の実行まで引き受けられることが、単純なネット広告代理店との差になる。地元企業が新しい案件を相談する相手として選ばれ続ければ、営業費用を抑えながら仕事を獲得できる。
しかし、それを強い堀、つまり競争相手が容易に越えられない障壁と呼ぶには証拠が足りない。広告媒体を独占しておらず、広告主が他社へ乗り換える費用も限定的である。特にネット広告では、全国の大手代理店や専門会社と競争し、AIによって制作や運用の工程そのものが減少する。継続率、顧客ごとの採算、手数料の値上げ実績も十分には開示されていない。地域での知名度は受注の助けになるが、価格を決める力とは別物だ。
資本効率の低さは、過去の数字が明確に示している。2017年3月期から2026年3月期までの間に複数回の最終赤字があり、営業利益率も安定していない。2023年3月期には営業利益率が8%程度に達したが、その水準を維持できなかった。2026年3月期の自己資本は約23.1億円あるのに、営業利益は赤字である。保有資産が厚くても、利益をほとんど生まないのであれば、株主にとって効率の良い資本とはいえない。
フェローの斎場予約事業には、より長持ちする強みの芽がある。火葬場ごとの運営規則、予約枠、葬祭事業者との連携、利用実績の蓄積は、単なる広告制作より乗り換えが難しい。ただし、解約率5%未満といった実績や、法改正に伴う値上げの継続実績は確認できない。記録の正本として特別に強い堀を認めるための複数の証拠は、まだそろっていない。
財務面では純現金が約1.6億円あり、自己資本比率も5割を超える。しかし、媒体仕入れや売掛金の季節変動が大きく、借入れも利用するため、純現金すべてが自由に配れるわけではない。会社の優良さは財務の見かけほど高くなく、広告以外の高採算事業を育てられるかが今後の決め手になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の広告市場は、全体としては拡大している。電通の調査によれば、2025年の総広告費は8兆623億円、インターネット広告費は4兆459億円となった。ネット広告は総広告費の50.2%を占め、初めて過半数に達した。一方、マスコミ四媒体広告費は約2兆2,980億円で前年を下回った。広告会社にとって、市場全体の成長がそのまま利益の成長を意味する時代ではなくなっている。
地域市場には全国市場とは異なる制約がある。四国や地方都市では人口減少に加え、新聞購読者やテレビ視聴者の減少が続く。地元企業の広告予算がデジタルに移るほど、Google、Metaなどの大規模プラットフォームや全国の代理店が競争相手になる。セーラー広告が地域の顧客接点を維持しても、広告の制作費や運用手数料まで維持できる保証はない。
2025年の全国広告費に対して、同社が主に営業する地域の実効的な広告需要を仮に3〜8%とみると、対象となる年間広告市場はおよそ2,400億〜6,450億円となる。同社の広告総取扱高約76億円は、この市場の約1.2〜3.2%に相当する。ただし、これは経済圏の広がりから推計した概算であり、地域別の代理店取扱高を直接集計した公式シェアではない。全国広告費の全額が地元代理店に開放された市場でもないため、シェアの精度には限界がある。
競合は電通・博報堂系の地域拠点やデジタル専門会社に加え、ジェイアール四国企画、読宣WEST、西日本広告などの地域に接点を持つ事業者である。各社の同一地域における比較可能なシェアは公表が乏しく、優劣を数字で断定できない。10年の中立では、従来媒体の取扱数量が縮小し、ネット広告でも市場の拡大を取り込む以上に代理店手数料の競争が進むとみる。イベントと空間関連は、現実の会場や施設を動かす仕事として比較的残りやすい。
AIエージェント代替は業界を根本から変える。広告文、デザインの初稿、配信設定、入札調整、効果分析、報告書作成は、自動化によって必要な人手が減る。広告主がAIを直接利用すれば、代理店を経由する理由そのものが弱まる。広告費が増えても制作・運用の手数料率が低下する構造を、長期の中心に据える必要がある。
フェローが関わる斎場予約市場は別の市場である。全国の稼働する火葬場は約1,350施設規模であり、フェローの公表する予約対象施設はおよそ50施設強に相当する。施設数でみた浸透率は4%前後の目安になる。年間25万件以上という予約管理実績は評価できるが、予約件数のシェアと施設数のシェアは一致しない。自治体の調達競争や低価格クラウドサービスとの競争もあるため、既存契約が長期間維持されることを無条件には織り込まない。
資本政策と M&A
同社の資本配分は、安定配当を続けながら、広告事業の再編と周辺事業の買収へ資金を振り向ける姿勢が中心である。2026年5月14日に更新した資本効率改善資料では、営業活動の生産性向上、AIとデータを活用した組織営業、地域資源の事業化を掲げた。配当については安定配当を前提に、純資産配当率を参考とした改善を検討するとしている。
同資料には、2026年3月期の配当総額約0.30億円、純資産配当率約1.3%という実績が示されている。一方、中期の売上高、営業利益、ROEの定量目標や、将来の配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額について、拘束力のある数字の約束は確認できない。2027年3月期については、単年度の会社予想として総売上高82億円、営業利益1.8億円、経常利益2億円が公表されている。これは中期目標とは区別する必要がある。
過去の買収では、高知のメディア・エーシーを子会社化し、地域内の営業組織を統合した。2025年10月にはフェローを取得し、新たにソフト開発事業を持った。広告市場が縮むなかで利益源を増やそうとする方向は理解できる。しかし、2026年3月期には子会社取得費用、人材投資、AIツール導入などの費用が先行し、営業赤字となった。買収後の利益が投じた資本に見合うかを、まだ判断できる段階ではない。
資本政策では、自己株式を用いた新株予約権の行使によって流通株数が増えたことも重要である。2026年1月に第4回新株予約権の行使が完了し、財務基盤は強化されたが、既存株主の持分は希薄化した。今後も買収資金を株式で調達するなら、事業の増益が持分の減少を上回る必要がある。
保有不動産と投資有価証券にも目を向けたい。投資不動産の2026年3月末簿価は約6.0億円だが、開示された時価は約4.6億円である。帳簿を上回る含み益はなく、むしろ売却価値には注意が要る。政策保有株についても、取引維持に見合う収益を生まないものは、売却と株主還元を検討すべきである。10年後の価値を高めるには、売上規模の追求よりも投資回収と資本効率の改善が必要だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
セーラー広告の地域顧客基盤は、全国の大手広告会社が簡単に再現できるものではない。地元企業や自治体に長く接し、広告制作、地域振興、イベント、販路開拓まで一括して引き受けられる。媒体単体の手数料では競争にさらされても、複数のサービスを束ねることで顧客との関係を深める余地がある。
同社は広告枠の仲介だけに依存する体制から脱し始めている。スポーツマーケティング、空間プロデュース、地域産品の開発、JR四国グループとの商品企画は、現場での実行や地域事業者との関係が必要だ。こうした仕事は広告文や運用報告書の自動化とは性質が異なる。AIを社内の案件管理や制作補助に使えば、人員の効率化によって、売上がそれほど伸びなくても利益が増える可能性がある。
さらに、フェローの斎場予約システムには全国的な導入実績がある。自治体の予約実務、火葬場の利用統計、葬祭事業者との接続を長年管理してきた点は、一般的な広告会社にはない資産だ。既存顧客向けの保守、機能追加、新規導入を積み重ねれば、継続収益の比率が増える。2026年9月に発表したジオテクノロジーズとの提携による人流データ広告サービスも、地域の顧客関係を活用する新しい事業機会になりうる。
財務面でも自己資本は厚く、純現金があり、不動産と有価証券を保有している。経営陣が不採算業務を整理し、稼ぐ力の弱い資産を売却して還元すれば、少数株主に帰属する価値は改善する。2027年3月期の黒字回復計画が達成され、その後も利益が安定すれば、過去の低収益を過度に延長する必要はない。
慎重な見方
地域の顧客基盤は残っても、広告会社に支払われる仕事の量そのものが減る。広告の文章、画像、動画の初稿、媒体選定、入札調整、効果測定はAIエージェントが処理できる。広告主は代理店を介さず広告を発注できるようになり、制作や運用に対する手数料も下がる。地方の人口減少と広告媒体の変化が重なるため、従来型の営業網を持つだけでは売上を守れない。
セーラー広告は約20億円の広告事業収益を持つが、2026年3月期はこの事業でも赤字を計上した。広告の取扱額に対して獲得する利益がもともと薄く、数億円の収益減少でも固定費を十分に削れなければ赤字が拡大する。自治体案件や大型イベントは年度によって変動し、実績の良い年を持続可能な利益とみなせない。
AIを利用すれば従業員の効率は改善するかもしれない。しかし、顧客も競合も同じ技術を利用するため、生産性向上の利益が会社に残るとは限らない。削減した制作費が広告主への値下げとして渡る可能性も高い。利益率の向上を当然視すると、数量の減少を過小評価してしまう。
資本効率も弱い。過去10年のROE中央値は低く、利益が安定しない一方、買収や新事業への支出は続いている。株主還元はあるものの、自己株式を利用した新株予約権行使で既存株主の持分が薄まった。将来も買収資金を株式で調達すれば、事業が拡大しても一株当たりの価値が伸びない可能性がある。
不動産にも注意が必要だ。投資不動産の時価は簿価を下回り、事業用の土地や建物も、営業を続ける限り自由に売却できない。純資産約23億円を清算価値と考えるのは危険である。フェローの斎場予約事業も現時点では規模が小さく、広告事業全体の構造的な縮小を補えると判断する証拠は不足している。
どちらに重みを置いたか
地域との関係、保有資産、斎場予約システムには評価できる要素がある。しかし、売上の中心がAIエージェントに代替されやすい業務であり、過去の資本効率も低い。10年先に優良な高収益会社へ転換することを中立に含める根拠は弱い。
確率は楽観10%、やや楽観20%、中立30%、やや悲観26%、悲観14%とし、下側を合計40%とした。中立の数量と手数料にAI代替の縮小を織り込んでいるため、確率で同じ損失を過度に重ねない。ただし、固定費の高さ、継続的な低ROE、過去の希薄化という会社固有の不確実性があるため、上側より下側を重くした。
現在の時価総額に十分な安全域があるとは判断しない。フェローの継続収益と広告事業の生産性改善が数字で確認できるまでは、慎重な見方が優勢である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 179 円9 億円(+ 還元の換算額還元の合計 46 円2 億円)。 今の値に割り戻すと 109 円6 億円、今との差 −59.6%、 期待の年率 −2.1%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 305 円16 億円 | 86 円4 億円 | +44.2% | +4.2% | 39 円2 億円 |
| やや楽観 | 20% | 244 円13 億円 | 66 円3 億円 | +14.6% | +1.5% | 62 円3 億円 |
| 中立 | 30% | 169 円9 億円 | 54 円3 億円 | −17.6% | −2.2% | 67 円3 億円 |
| やや悲観 | 26% | 125 円6 億円 | 23 円1 億円 | −45.4% | −6.3% | 38 円2 億円 |
| 悲観 | 14% | 117 円6 億円 | 10 円1 億円 | −53.3% | −7.6% | 18 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 179 円9 億円 | 46 円2 億円 | −17.2% | −2.1% | 224 円12 億円 |
今の株価時価総額 271 円14 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 地域密着型の高効率な事業会社へ転換 利益 1 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 305 円16 億円
地域企業との長年の関係が強みとして残り、セーラー広告は従来の媒体取扱会社から、地域の販促、イベント、施設活用を実行する会社へ移行する。テレビや新聞の取扱高は縮小するが、残る案件では企画から実行まで引き受け、価格競争に巻き込まれにくい仕事の比率が高まる。
広告制作や運用のAIエージェント代替は進むものの、会社は早期に制作体制を集約し、案件管理を標準化する。広告主への手数料低下が続いても、人件費と外注費をそれ以上に減らせるため、全社利益率は改善する。広告の取扱数量が大きく伸びるのではなく、少ない人員で付加価値の高い案件を扱えるようになることが成功の中心だ。
イベントと空間プロデュースでは、自治体の地域振興、観光、スポーツ、採用関連の案件を継続して獲得する。フェローは斎場予約システムの保守と追加開発を安定化させる。既存の導入先を維持しながら追加機能の販売が進み、ソフト開発部門が継続的な黒字を確保する。
買収は小規模なものに限定し、事業利益から投資資金を回収する規律が定着する。政策保有株や遊休資産の整理も進み、株主還元が改善する。地域広告市場が構造的に厳しいなかでも、現場実行力と費用構造改革によって、過去とは異なる利益水準を実現する。
- テレビ・新聞・ラジオ・雑誌・屋外広告:数量 24.4(媒体取扱高の2026年固定価格換算額(億円)。地域媒体市場規模×当社シェアに相当)× 価格 0.19(固定価格の取扱額1億円当たりの認識収益(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。媒体取扱数量0.90倍、手数料単価維持。地域顧客の離反を抑える。
- インターネット・モバイル広告:数量 19.9(インターネット広告取扱高の2026年固定価格換算額(億円))× 価格 0.16(固定価格の広告取扱額1億円当たりの認識収益(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。数量0.95倍、単価0.97倍。制作工程の大幅な効率化で利益率改善。
- 販売促進・広告制作・その他企画:数量 16.3(販促・制作案件の2026年固定価格換算取扱額(億円))× 価格 0.42(固定価格の案件取扱額1億円当たりの認識収益(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。数量0.90倍、単価維持。制作人員の再配置と企画付加価値の向上。
- イベント・空間プロデュース:数量 9.8(イベント・現場案件の2026年固定価格換算取扱額(億円))× 価格 0.57(固定価格の現場案件取扱額1億円当たりの名目認識収益(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。現場案件数量維持、名目単価1.34倍。現場運営力と高付加価値案件が寄与。
- リテール・地域産品販売:数量 6.4(年間購買件数の推計(万件))× 価格 0.12(購買1万件当たりの会計上の認識収益(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。購買件数維持、単価1.34倍。赤字を縮小するが高収益化までは見込まない。
- ソフト開発・斎場予約システム:数量 49.4(予約サービス対象施設数(施設))× 価格 0.03(1施設当たり連結認識収益の換算額(億円、受託開発収益を含む))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。施設・開発案件換算数量0.95倍、単価1.10倍。保守と追加開発の採算改善。
倍率:10年後ROEは約4.0%で資本コスト8.5%を下回る。長期成長率g_longは0%であり、利益を超過収益性のある再投資に回せないため、正当化PER上限は1÷k=11.76倍となる。期間中に積み上がった余剰現金3.0億円を営業利益の価値から分離し、純利益から税後利息相当3.0×1.4%を控除してからPERを適用する。時価総額は(1.12−0.042)×11.7647+3.0=約15.68億円となる。
確率:既存の地域顧客基盤を守り、現場型サービスへの転換、広告部門の効率化、買収したソフト開発事業の安定化を同時に成功させる筋書きである。各施策には実績の芽があるものの、10年間継続して高い利益率を維持する確度は限定的とみる。
やや楽観 20% 広告縮小を生産性向上で補う 利益 1 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 244 円13 億円
地域の広告市場ではテレビ、新聞、販促物の取扱が減るものの、セーラー広告は主要顧客との関係を維持する。制作や媒体運用の手数料は下がるが、案件管理を共通化し、定型作業をAIに任せることで、従来より少ない人員で同じ顧客を支えられるようになる。
インターネット広告は市場全体では伸びるものの、会社が獲得する収益は取扱高ほど増えない。広告主の直接運用が進み、単純な運用業務は価格競争になる。これに対してイベントや空間プロデュースでは、企画から現場まで実行する仕事の比率が上昇する。
フェローの斎場予約システムは、自治体の既存利用先を維持しながら追加機能や保守の収益を確保する。導入件数が急増するわけではないが、システムの運用を標準化できることで利益率が改善する。地域産品の販売も続くものの、リテール事業の高収益化は実現しない。
経営陣は大型買収を避け、既存事業の改善と小規模な周辺投資に集中する。業績に応じた配当を続け、残った利益の一部が現金として積み上がる。会社の規模は大きくならないが、利益を生む能力は現在より改善した姿になる。
- テレビ・新聞・ラジオ・雑誌・屋外広告:数量 21.1(媒体取扱高の2026年固定価格換算額(億円)。地域媒体市場規模×当社シェアに相当)× 価格 0.19(固定価格の取扱額1億円当たりの認識収益(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。数量0.78倍、単価維持。既存顧客の継続出稿が下支え。
- インターネット・モバイル広告:数量 17.2(インターネット広告取扱高の2026年固定価格換算額(億円))× 価格 0.15(固定価格の広告取扱額1億円当たりの認識収益(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。数量0.82倍、単価0.95倍。業務効率化によって収益率を改善。
- 販売促進・広告制作・その他企画:数量 14.0(販促・制作案件の2026年固定価格換算取扱額(億円))× 価格 0.42(固定価格の案件取扱額1億円当たりの認識収益(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。数量0.77倍、単価0.98倍。制作原価低下が利益を支える。
- イベント・空間プロデュース:数量 9.3(イベント・現場案件の2026年固定価格換算取扱額(億円))× 価格 0.56(固定価格の現場案件取扱額1億円当たりの名目認識収益(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。数量0.95倍、単価1.31倍。地域イベントを安定受注する。
- リテール・地域産品販売:数量 6.1(年間購買件数の推計(万件))× 価格 0.12(購買1万件当たりの会計上の認識収益(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。数量0.96倍、単価1.34倍。店舗採算は小幅赤字。
- ソフト開発・斎場予約システム:数量 46.8(予約サービス対象施設数(施設))× 価格 0.02(1施設当たり連結認識収益の換算額(億円、受託開発収益を含む))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。施設・案件換算数量0.90倍、単価1.08倍。標準化した保守収益が寄与。
倍率:ROE約3.3%が資本コスト8.5%を下回り、長期成長率0%のため正当化PERは1÷8.5%=11.76倍が上限となる。余剰現金2.5億円の税後利息相当0.035億円を純利益から除き、事業利益0.855億円に正当化PERを適用した後、戻り方1.0の現金を足す。(0.89−0.035)×11.7647+2.5=約12.56億円となる。
確率:2026年に始まった業務のAI活用、現場型サービスへの転換、フェローの保守収益が一定の成果を生む可能性を評価する。一方、強い値上げ力や持続的な高ROEは確認できないため、楽観より現実的な改善に限定する。
中立 30% 広告の数量減少と限定的な効率化 利益 1 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 169 円9 億円
広告業界全体ではデジタル広告が拡大するが、セーラー広告の受け取る手数料は伸びない。広告主はAIエージェントを利用して制作と運用を内製化し、地域企業も広告代理店に発注する作業を選別する。テレビや新聞の取扱は人口減少と媒体利用者の縮小で減り、販売促進物の制作案件にも同じ圧力が及ぶ。
会社は2026年から進めている組織営業やAIツールの導入を継続する。定型的な制作、運用報告、資料作成の工数を減らし、少ない人数で既存顧客を支える。そのため売上規模が縮小しても、営業利益の全面的な消失は避けられる。ただし、価格を引き上げる力は弱く、2023年3月期の好業績が当たり前の状態になるわけではない。
イベントや空間関連の事業は、実際の会場運営や地域の調整力が必要なため相対的に残る。フェローの斎場予約システムも一定の利用先を維持するが、全国市場を大きく取り込む成長は織り込まない。リテール事業は利益への寄与が小さく、地方の消費人口減少が制約になる。
経営は大型買収による急成長ではなく、採算の悪い仕事を削り、費用を圧縮する方向へ進む。配当は一定水準を維持しながら業績に応じて調整する。10年後の会社は今より小規模になり、営業利益を確保していても、自己資本に見合う高いROEは生めていない。
- テレビ・新聞・ラジオ・雑誌・屋外広告:数量 17.6(媒体取扱高の2026年固定価格換算額(億円)。地域媒体市場規模×当社シェアに相当)× 価格 0.19(固定価格の取扱額1億円当たりの認識収益(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。数量0.65倍、価格維持。従来媒体の縮小と地域シェア維持を組み合わせる。
- インターネット・モバイル広告:数量 14.7(インターネット広告取扱高の2026年固定価格換算額(億円))× 価格 0.15(固定価格の広告取扱額1億円当たりの認識収益(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。数量0.70倍、単価0.92倍。AIによる運用内製化と手数料圧縮。
- 販売促進・広告制作・その他企画:数量 11.8(販促・制作案件の2026年固定価格換算取扱額(億円))× 価格 0.42(固定価格の案件取扱額1億円当たりの認識収益(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。数量0.65倍、単価維持。定型制作の縮小を費用削減で補う。
- イベント・空間プロデュース:数量 8.8(イベント・現場案件の2026年固定価格換算取扱額(億円))× 価格 0.53(固定価格の現場案件取扱額1億円当たりの名目認識収益(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。現場案件数量0.90倍、価格1.25倍。物価上昇を完全には転嫁できない。
- リテール・地域産品販売:数量 5.7(年間購買件数の推計(万件))× 価格 0.12(購買1万件当たりの会計上の認識収益(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。購買件数0.90倍、単価1.34倍。地域人口減少を織り込む。
- ソフト開発・斎場予約システム:数量 42.6(予約サービス対象施設数(施設))× 価格 0.02(1施設当たり連結認識収益の換算額(億円、受託開発収益を含む))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。施設・案件換算数量0.82倍、単価1.05倍。受託開発とクラウドのAI代替を反映。
倍率:10年後ROEは約2.4%でk8.5%に届かない。長期成長率0%とし、超過利益のない企業の正当化PER上限1÷k=11.76倍を適用する。余剰現金1.8億円は、10年間の利益留保から事業に必要な運転資本を除いた部分である。税後受取利息相当1.8×1.4%を純利益から控除するため、事業価値は(0.61−0.0252)×11.7647=6.88億円、これに現金1.8億円を加え、時価総額8.68億円とする。
確率:人口減少、従来媒体の縮小、広告制作・運用のAI代替を中心に置く。2026年の事業再編と社内AI利用は一定の費用改善につながるが、強い価格決定力を獲得するまでは見込まない。将来の会社予想が毎年達成されるとの前提も置かない。
やや悲観 26% 制作業務の侵食と低収益の定着 利益 0 億円 · PBR 0.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 125 円6 億円
AIエージェントの普及によって、広告主は広告文、画像、動画の制作と広告配信を自ら行うようになる。地域企業の広告予算が全面的に消えるわけではないが、代理店に外注する仕事は減る。従来媒体の出稿数量が縮小し、ネット広告でも配信設定や運用報告に対して手数料を支払う理由が薄れる。
セーラー広告は地域の顧客を維持するものの、競合からの値下げ圧力にさらされる。案件の減少に対して人員や拠点の整理が遅れ、固定費が重い状態が続く。イベントや空間プロデュースにも案件競争が広がり、収益を補うほどの高い利益率を確保できない。
フェローの斎場予約システムは一定の顧客が残るが、自治体の契約更改や低価格サービスとの競争によって、受託開発と保守の収益が減る。リテール事業も地方人口の減少と運営費負担で赤字が続く。経営陣は大型買収を控え、事業の縮小と財務維持を優先する。
10年後は営業利益がわずかに残るものの、株主資本コストに対して稼ぐ力が著しく不足する。配当は過去ほど続けられず、価値の中心は利益ではなく、現金や売却可能な金融資産、不動産に移る。ただし、少数株主が資産売却を指示できるわけではないため、帳簿の純資産を全額回収できるとは考えない。
- テレビ・新聞・ラジオ・雑誌・屋外広告:数量 14.9(媒体取扱高の2026年固定価格換算額(億円)。地域媒体市場規模×当社シェアに相当)× 価格 0.18(固定価格の取扱額1億円当たりの認識収益(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。数量0.55倍、単価0.95倍。媒体手数料の競争が強まる。
- インターネット・モバイル広告:数量 11.5(インターネット広告取扱高の2026年固定価格換算額(億円))× 価格 0.14(固定価格の広告取扱額1億円当たりの認識収益(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。数量0.55倍、単価0.85倍。内製化と価格競争が同時進行。
- 販売促進・広告制作・その他企画:数量 10.0(販促・制作案件の2026年固定価格換算取扱額(億円))× 価格 0.38(固定価格の案件取扱額1億円当たりの認識収益(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。数量0.55倍、単価0.90倍。制作単価と案件数が低下する。
- イベント・空間プロデュース:数量 7.4(イベント・現場案件の2026年固定価格換算取扱額(億円))× 価格 0.50(固定価格の現場案件取扱額1億円当たりの名目認識収益(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。現場案件数量0.75倍、単価1.18倍。固定費負担で利益率低下。
- リテール・地域産品販売:数量 5.1(年間購買件数の推計(万件))× 価格 0.12(購買1万件当たりの会計上の認識収益(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。数量0.80倍、単価1.25倍。店舗費用を賄えない。
- ソフト開発・斎場予約システム:数量 36.4(予約サービス対象施設数(施設))× 価格 0.02(1施設当たり連結認識収益の換算額(億円、受託開発収益を含む))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。施設・案件換算数量0.70倍、単価維持。開発案件の減少で収支均衡。
倍率:10年後の純利益0.08億円を資本コスト8.5%で評価した稼ぐ力は1億円未満となる。一方、現状の純現金と換金可能資産の保守的な売却価値は約6.4億円と評価する。やや悲観では将来増加した自己資本に床の倍率を掛けず、現在の自己資本23.1億円に対するPBR約0.277倍で資産の床を表す。稼ぐ力と資産の床の大きい方を採用する。
確率:従来媒体と制作・運用の数量が同時に縮小し、社内の費用削減が十分に進まない場合を評価する。過去10年の利益変動と地域顧客の有限性を考えると、単なる景気後退ではなく競争力の弱体化が起こりうる。
悲観 14% 広告会社としての競争力が構造的に崩れる 利益 −1 億円 · PBR 0.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 117 円6 億円
広告主が広告制作、出稿、効果分析をAIエージェントに任せるようになり、セーラー広告の従来型サービスは構造的に不要になる。新聞やテレビの地域向け広告は人口減少と媒体の利用者減少で一段と縮小する。ネット広告も全国大手とAIによる直接取引へ流れ、地域代理店が確保できる手数料は低下する。
会社は営業拠点と人員の縮小に取り組むが、売上の減少に追いつかない。人件費、事務所費用、システム維持費が残り、赤字が繰り返される。イベントや空間関連も自治体の予算削減や競争入札によって採算が悪化し、従来型の広告業務を補えない。リテール事業は店舗運営の固定費を負担できず、縮小や撤退を余儀なくされる。
フェローの斎場予約システムは残るものの、自治体向け低価格クラウドサービスとの競争で収益性が悪化する。個別開発案件が減り、保守収益だけでは取得時の投資を回収できない。経営陣が再建のための資金を必要とし、配当を大幅に縮小する可能性がある。
この段階では、会社の価値は将来利益よりも処分できる資産に依存する。投資不動産には簿価を下回る時価が示されており、早期売却ではさらに価格が下がる可能性がある。保有株式にも税金や売却上の制約がある。現在の自己資本を下値の保証とは考えず、実際に処分可能な現金、不動産、金融資産から見た保守的な価値だけを残す。
- テレビ・新聞・ラジオ・雑誌・屋外広告:数量 10.8(媒体取扱高の2026年固定価格換算額(億円)。地域媒体市場規模×当社シェアに相当)× 価格 0.15(固定価格の取扱額1億円当たりの認識収益(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。数量0.40倍、単価0.80倍。従来媒体の取扱機能が大きく縮小。
- インターネット・モバイル広告:数量 8.4(インターネット広告取扱高の2026年固定価格換算額(億円))× 価格 0.12(固定価格の広告取扱額1億円当たりの認識収益(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。数量0.40倍、単価0.75倍。広告主による直接運用が主流となる。
- 販売促進・広告制作・その他企画:数量 6.3(販促・制作案件の2026年固定価格換算取扱額(億円))× 価格 0.36(固定価格の案件取扱額1億円当たりの認識収益(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。数量0.35倍、単価0.85倍。制作外注市場が構造的に縮小する。
- イベント・空間プロデュース:数量 5.4(イベント・現場案件の2026年固定価格換算取扱額(億円))× 価格 0.47(固定価格の現場案件取扱額1億円当たりの名目認識収益(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。数量0.55倍、単価1.10倍。現場需要は残るが固定費負担に耐えられない。
- リテール・地域産品販売:数量 4.5(年間購買件数の推計(万件))× 価格 0.11(購買1万件当たりの会計上の認識収益(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。数量0.70倍、単価1.15倍。店舗採算が大幅に悪化。
- ソフト開発・斎場予約システム:数量 26.0(予約サービス対象施設数(施設))× 価格 0.02(1施設当たり連結認識収益の換算額(億円、受託開発収益を含む))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。施設・案件換算数量0.50倍、単価0.90倍。受託と保守の双方が縮小。
倍率:構造的な営業赤字が続くため、利益にPERを適用した事業価値は正の床にならない。純現金、投資不動産、上場株式の換金可能額を保守的に合計した約6.0億円を時価総額の床とする。倍率の分母には将来積み上がった自己資本を使わず、現在の自己資本23.1億円を使う。6.0÷23.1=約0.260倍である。現在の帳簿上の自己資本全額は回収できるとは考えない。
確率:広告の制作・媒体取扱・運用がAIエージェントと広告主の内製化に大幅に置き換わり、固定費の削減や事業転換も失敗する複合的な下振れである。純現金と不動産を持つため直ちに倒産するとは限らないが、過去の低収益と希薄化の履歴から無視できない確率を付与する。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
テレビ・新聞・ラジオ・雑誌・屋外広告
地域企業や自治体の従来型媒体への出稿を取り扱う。媒体仕入額を含む総取扱高と、会社に残る会計上の収益を分けて評価する。
| 数量媒体取扱高の2026年固定価格換算額(億円)。地域媒体市場規模×当社シェアに相当 | 価格固定価格の取扱額1億円当たりの認識収益(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 27.1 | 0.19 | 5 | 0 |
| 10 年後 中立 | 17.6 | 0.19 | 3 | 0 |
取り方:2026年3月期有報の総取扱高からテレビ12.33億円、ラジオ1.51億円、新聞8.14億円、雑誌1.50億円、屋外3.60億円を合計し27.08億円とした。会社は媒体別の会計上の収益と利益を開示していないため、媒体仕入れ後の実効認識率を19.2%と推計し、収益5.20億円とした。営業利益0.05億円は配賦推計であり会社開示ではない。2025年の全国マス四媒体市場2兆2,980億円に地域の実効需要割合5%を掛けると約1,149億円であり、屋外を除く同社取扱高23.48億円は約2.0%に相当する。地域比率5%は推計であり、公式地域シェアではない。AIエージェント代替では広告媒体取扱型に分類し、中立数量を現状の0.65倍、実質の手数料単価を維持できる程度に抑える。
インターネット・モバイル広告
検索、SNS、動画などの広告媒体取扱と配信運用を担う。市場自体は成長しても、代理店への手数料はAIと広告主の内製化によって圧迫される。
| 数量インターネット広告取扱高の2026年固定価格換算額(億円) | 価格固定価格の広告取扱額1億円当たりの認識収益(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 21.0 | 0.16 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 14.7 | 0.15 | 2 | 0 |
取り方:有報のインターネット・モバイル広告総取扱高20.96億円を数量の基準とした。会計上の媒体別収益は非開示のため、実効認識率16.0%を仮定して3.35億円と推計し、営業利益0.12億円も配賦推計とした。全国の2025年インターネット広告市場4兆459億円のうち実効地域需要を5%と仮定すると約2,023億円となり、同社取扱高は約1.0%である。地域需要割合は推計であり、全国プラットフォームでの競争を考慮すると真の到達可能市場は異なる。AIエージェント代替では広告制作・運用型に分類し、中立数量0.70倍、単価0.92倍とする。
販売促進・広告制作・その他企画
広告物制作、ウェブ制作、販促企画、採用マーケティング、地域産品のプロモーションなどを提供する。人の制作工数と企画工数への依存が大きい。
| 数量販促・制作案件の2026年固定価格換算取扱額(億円) | 価格固定価格の案件取扱額1億円当たりの認識収益(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 18.1 | 0.42 | 8 | 0 |
| 10 年後 中立 | 11.8 | 0.42 | 5 | 0 |
取り方:有報のセールスプロモーション10.03億円と制作・その他11.94億円から、セグメント内部売上高3.85億円を控除し、外部向け取扱額18.12億円とした。実効認識率を42.4%と推計すると収益7.69億円になる。内部取引の控除をこの区分へ寄せたのは推計上の便宜であり、実際の社内配賦は非開示である。営業利益マイナス0.20億円も推計である。国内プロモーションメディア市場は2025年約1兆7,184億円であり、イベントを含む同社の関連取扱高は全国市場のごく一部である。AIエージェント代替では広告制作・工数型とし、中立数量0.65倍、単価は現状維持までとする。
イベント・空間プロデュース
自治体イベント、スポーツ、観光、商業施設や職場空間の演出など、現場の運営と関係者調整を伴うサービスである。
| 数量イベント・現場案件の2026年固定価格換算取扱額(億円) | 価格固定価格の現場案件取扱額1億円当たりの名目認識収益(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 9.8 | 0.43 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 8.8 | 0.53 | 5 | 1 |
取り方:有報のイベント総取扱高9.83億円を数量基準とし、会計上の認識収益を4.20億円と推計した。イベント別の件数、単価、利益は開示されていないため、営業利益マイナス0.15億円も配賦推計である。全国のイベント・展示・映像ほかの2025年広告費は4,748億円であり、地域比率5%を仮定した市場約237億円に対する同社取扱高は約4.1%となる。現場施工・運営はAIで完全代替されにくい一方、企画書や事務処理は代替される混合型とする。中立では現場案件の実質数量0.90倍、名目単価1.25倍とし、物価3%の10年累積1.34倍より弱い転嫁を想定する。
リテール・地域産品販売
徳島・香川トモニ市場、オンライン販売、地域商品の開発や販路開拓を行う。広告事業と異なり現物の流通・販売を伴う。
| 数量年間購買件数の推計(万件) | 価格購買1万件当たりの会計上の認識収益(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6.4 | 0.09 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 5.7 | 0.12 | 1 | 0 |
取り方:有報のリテール総取扱高1.34億円、会計上の収益0.59億円、セグメント損失約0.06億円を基準とした。購買件数は非開示であるため、平均購入額を約2,100円と仮定して約6.38万件に換算した。実際の件数を確認したものではなく、平均購入額1,800〜2,400円なら件数は約5.6万〜7.4万件となる。会計上の認識収益単価は総取扱額をそのまま表すものではない。地域人口の減少を踏まえ、中立数量は0.90倍、価格は物価におおむね連動する1.34倍とする。実際の商品流通を伴うためAIエージェントの直接代替型には分類しない。
ソフト開発・斎場予約システム
フェローが自治体、斎場、葬祭関連事業者向けにソフトウェア開発、予約システム、保守、電話自動応答などを提供する。
| 数量予約サービス対象施設数(施設) | 価格1施設当たり連結認識収益の換算額(億円、受託開発収益を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 52.0 | 0.02 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 42.6 | 0.02 | 1 | 0 |
取り方:2026年3月期有報のソフト開発収益1.20億円、セグメント利益約0.02億円を使用した。フェローの公式サイトが掲載する予約対象斎場施設数は地域別に合計52施設であり、年間25万件以上の予約・火葬実績を管理するとしている。52施設で収益1.20億円を割った約231万円は、2025年10月から6か月分の連結収益を施設数で換算した値であり、実際の年間契約単価ではない。個別開発、保守、電話催告、クラウド利用料が混在しており、サービス別収益は非開示である。Lite版の月額利用料は6万円からと公開されているが、これを全施設の単価として採用しない。全国の稼働火葬場約1,350施設に対し、施設数ベースの浸透率は約4%である。受託開発は人月型、操作型クラウドはSaaS型とみなし、中立の施設・開発案件換算数量を0.82倍、単価を1.05倍とする。記録の正本として長期成長率を高めるための解約率・値上げ実績など複数の証拠は確認できない。
リスクと懸念
AIエージェント代替
広告制作、ウェブ制作、配信設定、広告運用、分析、報告書作成など、同社の中心的な業務はAIエージェント代替の対象になる。広告主がAIを利用して自ら広告を運用すれば、代理店が扱う案件数と手数料の双方が縮小する。ソフト開発事業でも個別受託開発と操作型クラウドには同様の圧力がある。中立では広告制作・工数型の数量を10年で0.55〜0.70倍程度まで縮小させ、長期成長率も0%とした。
地方人口減少と広告予算の構造変化
四国・山陽・北部九州では人口減少と高齢化によって地域企業の顧客基盤が変化する。新聞、テレビなどの従来媒体は利用者の減少が続き、広告主の予算がネットへ移る。市場全体の広告費が名目で増えても、地方代理店が獲得する取扱数量や手数料が減少するリスクがある。地域振興や観光需要による補完だけでは、従来型媒体の縮小を完全に埋められない可能性が高い。
低い利益率と固定費
広告事業は外注費を除く人件費や拠点費用の固定的な負担が大きい。2026年3月期は収益が増えたにもかかわらず営業赤字であり、利益率が安定していない。広告案件が減少した際に人員、拠点、制作体制を縮小できなければ、少ない収益減少が大きな赤字につながる。AIによる生産性改善があっても、その利益が値下げとして顧客へ移転すれば、会社の利益には残らない。
買収後の資本効率と希薄化
高知の広告会社やフェローの取得は事業の幅を広げたが、追加投資が資本コストを上回る利益を生むかは未確認である。過去には自己株式を用いた新株予約権の行使で流通株数が増えた。資本調達によって財務の厚みが増しても、既存株主の取り分が薄まれば一株当たりの価値は伸びにくい。今後の買収で株式対価や新たな増資を利用する場合には、その希薄化を別途評価する必要がある。
保有資産の換金価値と少数株主の制約
同社の投資不動産は、2026年3月末の簿価約6.0億円に対して開示時価が約4.6億円である。したがって、簿価をそのまま清算価値として足すと価値を過大評価する。保有株式にも取引先との関係や売却時の税負担がある。本社など事業用不動産は営業を続ける限り利用が必要であり、少数株主は資産売却や配当を自由に決定できない。PBRが低いというだけでは安全域にならない。
斎場予約システムの成長と契約維持
フェローの予約システムは導入実績があるものの、自治体の契約更改、価格競争、競合システムへの移行、クラウドサービスの低価格化というリスクがある。受託開発と継続課金の売上構成、解約率、機能追加に伴う値上げ実績は十分に確認できない。年間25万件以上という予約管理実績だけで、長期の高い価格決定力まで認めることはできない。買収時の投資回収にも注意が必要だ。
経営管理と監査体制の変更
2026年には公認会計士等の異動と一時会計監査人の選任に関する開示があった。監査人の変更だけで会計上の不正や重大な問題があるとは判断しないが、小規模企業で買収、新規事業、資本調達が重なる局面では、内部統制と会計処理の継続性を確認する必要がある。今後の監査報告、重要な会計上の見積り、連結範囲の変更、後発事象を継続して点検する。
今後の分かれ目
- 広告事業の収益が伸びなくても営業利益率が3期連続で改善し、安定した営業利益を確保できたら
- AIによる効率化の利益が会社に残っている可能性を評価し、やや楽観側の確率を上げる。実際の人員、生産性、外注費、固定費の変化も確認する。
- インターネット広告・制作事業の取扱数量と手数料単価がともに減少したら
- AIエージェント代替の進行が速いと判断し、中立の数量前提を引き下げる。収益減少に費用削減が追いつかなければ、やや悲観・悲観側の確率も引き上げる。
- フェローが斎場予約システムの継続契約数、解約率、値上げ実績、営業利益を定量的に開示し、安定した成長を示したら
- ソフト開発のうち継続収益部分を独立して評価し直す。低解約率など複数の堀の証拠が確認できれば、その部分に限り長期成長率と資本効率の前提を改善する。
- イベントと空間プロデュースが安定した粗利益を生み、従来広告媒体の減少を補えるようになったら
- AIによる代替を受けにくい現場型事業への転換が進んだと判断し、中立の現場案件数量と利益率を見直す。単発の大型案件だけでは判断しない。
- 投資不動産や政策保有株式を売却し、売却代金が配当または自社株買いとして株主へ戻されたら
- 少数株主にとっての資産の実現価値が高まるため、現金の戻り方と悲観側の資産価値を更新する。ただし、売却に伴い失われる賃料や配当収益を二重計上しない。
- 大型M&Aまたは新たな新株予約権の発行が公表されたら
- 買収資金、追加利益、取得のれん、既存株主の希薄化を分けて評価する。希薄化が確定する筋書きにはholder_shareを導入し、現在の株主に帰属する価値を引き下げる。
- 2027年3月期の営業利益1.8億円という会社予想が未達となり、その後も赤字が継続したら
- 費用削減と事業再編の実行力を見直し、やや悲観・悲観の確率を上げる。純現金や保有資産があっても、継続的な営業赤字による資産流出が進めば悲観の床を再計算する。
見ておくもの
- 広告事業の総取扱高と会計上の収益の差、および媒体別構成比
- 広告事業の営業利益と売上総利益率、販管費、人員数の推移
- インターネット広告・制作案件の数量、価格、広告主の内製化動向
- イベント・空間プロデュース事業の継続案件数と採算
- フェローの斎場予約対象施設数、年間予約管理件数、契約解約率、継続課金売上
- 会社が公表する中期目標、ROE目標、DOEまたは配当性向の数値
- 投資不動産の開示時価と簿価、賃貸損益、政策保有株式の売却額
- 新株予約権、自己株式処分、増資などによる既存株主持分の変化
- 2027年3月期の会社予想に対する進捗と、期中の季節性
- 監査人変更後の監査報告、重要な後発事象、継続企業の前提に関する注記
倍率と資本コストの決め方
出発点は2026年3月期の会計上の収益約22.2億円であり、総取扱高約78.6億円とは区別した。広告の種類ごとの総取扱高から会計上の収益を推計し、地域広告市場の実質数量と会社のシェア変化、媒体手数料率を別に扱った。AIエージェント代替では広告制作・運用型の中立数量を0.55〜0.75倍の範囲に置き、イベントの現場部分は別の数量前提を採用した。物価上昇を数量と価格の両方へ掛けていない。
10年後の資本コストは8.5%、長期成長率は0%とした。全ての黒字筋書きでROEがkを下回るため、楽観から中立のPERは1÷k=11.76倍を上限そのものとして採用した。現在の株価や過去のPER・PBRを倍率の根拠には使っていない。将来の余剰現金は利益の価値から税後利息を除き、戻り方を掛けて足した。悲観側のPBRは将来の積み上がった純資産ではなく、現在の自己資本23.1億円を基準にしている。
自己資本の10年累積は、楽観で期間利益合計9.2億円から還元4.4億円を控除して27.9億円、やや楽観で7.2億円から3.4億円を控除して26.9億円、中立で5.3億円から2.8億円を控除して25.6億円、やや悲観で1.3億円から1.2億円を控除して23.2億円、悲観で累積損失3.5億円と還元0.5億円を反映して19.1億円となる。悲観側の時価総額は資産の床を下回らない。
現行の日本基準による賃借費用を前提としており、新リース会計基準で将来の使用権資産とリース負債が両建てになる影響を、同じ家賃費用と重複して評価しない。価値の最終比較にだけ現在の時価総額13.6729億円を使った。確率加重した現在価値は約5.62億円、差は約マイナス58.9%であり、判断区分は割高となる。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%による基本7.5%に、営業利益の不安定性と弱い価格決定力に対する1.0ポイントを加え、資本コストを8.5%とする。2026年3月期は営業赤字だが、純現金があり継続企業の前提に関する注記もないため、存続危機への追加上乗せは行わない。AI代替は10年間の数量と価格およびg_longに反映し、kへ重ねない。