結論
ケア21は、大阪を地盤に全国で有料老人ホームや訪問介護を営む介護の会社だ。筆者の結論は割高である。需要は確実に増えるが、値段は国が決め、人の費用は物価より速く上がる。薄い利益の上に重い借金と家賃が乗り、株主の取り分が残りにくいからだ。
売上は10年で2.6倍の480億円になった。施設を借りて増やし、部屋を埋めてきた。だが営業利益率は高い年でも4%で、2023年10月期と2024年10月期は赤字だった。利払いを引くと、純利益は売上の1%に満たない。
85歳以上の人は2035年に向けて増え続ける。部屋を埋めること自体は難しくない。難しいのは、人を集め、報酬の改定が物価に届かない中で利益を守ることだ。
筆者は、部屋が少しずつ増え、利益率が今と同じ薄さで続く姿を真ん中に置く。その姿では、利益は利払いと家賃に食われ、今の時価総額を支えるには足りない。
介護は社会に欠かせない仕事だ。だが、欠かせないことと、株主に報いることは同じではない。この会社の株を持つ理由は、利益率が上がる確かな証拠が出てからでも遅くない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ケア21は「社会に欠かせない仕事をしているが、株主にはお金が残りにくい会社」だ。
介護は必要とされ続ける。会社がつぶれる心配は大きくない。だが、値段は国が決め、費用は人で決まる。利益率は数%で、そこから利息と家賃の重い約束が先に引かれる。株主のものになる利益は、売上の1%に満たない。
筆者が最も気にしているのは、借金と家賃の重さだ。利益率が1ポイント下がるだけで、株主の取り分はほぼ消える。2023年と2024年の赤字は、その脆さを示した。
堀、つまり他社がまねできない強みも見当たらない。施設は誰でも借りて作れ、職員は同業と取り合う。
オーナーとして長く持ちたい事業ではない。今の時価総額は、中ほどの利益が順調に続く姿をそのまま映しており、安全域は無い。
利益率が上がる証拠を待ちたい。
何で稼ぐ会社か
ケア21は1993年に大阪で生まれた介護の会社だ。売上は482億円で、関西と首都圏を中心に事業所を広げてきた。事業は3つある。
1つめは施設系で、売上の半分強を占める。有料老人ホームとグループホームを営み、住まいと食事と介護をまとめて売る。建物の多くは地主や投資家が建て、会社が長く借りる。入居者が払う家賃と食費、国の介護保険から入る報酬が売上になる。
2つめは在宅系で、売上の3割だ。ヘルパーが自宅を訪ねる訪問介護、ケアプランを作る居宅介護支援、デイサービスなどだ。売上のほとんどが介護保険の報酬で、値段は国が3年ごとに決める。
3つめはその他で、保育園、障がい者の支援、訪問看護、配食などを営む。
稼ぎの源は人だ。介護の現場は人がいなければ回らず、費用の多くは人件費と家賃だ。会社にできるのは、部屋を埋め、人を確保し、無駄を削ることに尽きる。2025年10月期は、施設の入居率を上げ、仕入れを見直して、施設系の利益を大きく戻した。
従業員は連結で数千人規模になる。売上が伸びるほど人が要り、人の数がそのまま事業の天井になる。
優良さと弱いところ
ケア21の強みは、施設を早く増やし、部屋を埋める力だ。この10年で売上を2.6倍にした。関西では名の知れた介護の会社で、職員の待遇を手厚くする独自の制度でも知られる。
だが、値段を決める力は無い。介護保険の報酬は国が決め、3年ごとの改定は物価の上昇に届かないことが多い。有料老人ホームの家賃や食費は自分で決められるが、近くの施設と比べられ、上げにくい。
資本の効率は低く、波も大きい。営業利益率は過去12年の最高でも4%だ。2023年10月期と2024年10月期は、人の費用と物価の上昇で赤字になった。純有利子負債は52億円で、自己資本の1.2倍ある。そのうえ、施設の建物を長く借りる約束がある。家賃は売上が落ちても下がらない。
経営は利益の回復に手応えを示しているが、筆者はその回復を、薄い利益率の中での揺れの1つと見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
介護の需要は、確実に増える。85歳以上の人は2035年に向けて増え続け、介護が要る人も増える。施設の部屋を埋めること自体は、多くの地域で難しくない。
問題は、人と値段だ。介護の職員は全国で足りず、2040年には数十万人が不足するという国の推計がある。賃金は物価より速く上がる。国は処遇を改善する加算で一部を補うが、それは賃金に回す前提のお金で、会社の利益にはならない。
介護保険の報酬は、国の財政の制約で上げ幅が小さい。2024年度の改定は全体で1.59%の上げだった。物価が年3%上がる世界では、報酬は実質で目減りしやすい。
業界では統合が進む。ニチイやSOMPOケア、ベネッセのような大手が規模で採用と仕入れの力を高め、中小の事業所は廃業や身売りに追い込まれる。ケア21は中堅として、買う側にも買われる側にもなりうる位置にいる。
AIや介護ロボットは、記録や見守りの手間を減らすが、体を支える仕事そのものは置き換えにくい。人手不足を少し和らげる道具であって、利益を大きく増やす力にはならないと筆者は見る。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。同じ額の配当を続け、総額は年2.3億円ほどだ。2026年10月期は純利益の予想が0.5億円しかなく、配当は利益を大きく上回る。自社株買いはほとんどしていない。
財務は重い。純有利子負債は52億円で、自己資本比率は15%を切る。利払いだけで年3億円かかり、営業利益の3割近くが消える。金利が上がれば、その割合はさらに増える。施設の家賃の約束も、帳簿に見えない借金に近い。
成長は施設を借りて増やすことで進めてきた。これからも同じ形で伸ばせば、家賃の約束は膨らむ。会社が小さい分、大手による買収の対象になる可能性はある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
高齢者は確実に増える。85歳以上の人は2035年に向けて増え続け、施設の部屋は埋まる。ケア21は10年で売上を2.6倍にした実績があり、施設を借りて増やす型はこれからも使える。
利益は戻り始めた。2025年10月期は施設の入居率を上げ、仕入れを見直して、施設系の利益を4倍にした。2026年10月期も第3四半期までで経常利益が前の年の4倍を超え、通期の予想を超えて進んでいる。人の費用の上昇を、入居率と効率で吸収できると示した。
人手不足も、見方を変えれば追い風だ。中小の事業所が人を集められずに廃業すれば、残った会社に利用者が集まる。ケア21は職員の待遇の制度で知られ、採用で負けにくい。
報酬の改定も、人手不足が深刻になるほど国は上げざるを得ない。処遇の改善の加算は毎回の改定で厚くなっている。
利益率が4%に戻れば、純利益は今の数倍になる。借金の重さは、利益が戻れば少しずつ軽くなる。
いまの時価総額は、売上の1割強にすぎない。少しの利益率の改善が、株主の取り分を大きく動かす。
慎重な見方
需要が増えても、利益は増えない。値段は国が決め、2024年度の改定は1.59%の上げにとどまった。物価が年3%上がる世界では、報酬は実質で毎年目減りする。人の費用はそれより速く上がる。
利益の薄さと借金の重さが、株主の取り分を消す。営業利益率は過去12年の最高でも4%で、2期前まで赤字だった。純有利子負債は52億円、利払いは年3億円で、金利が上がればさらに増える。施設の家賃は売上が落ちても下がらない。
2026年10月期の純利益の予想は0.5億円で、配当の総額2.3億円を大きく下回る。経常利益が戻っても、特別な損失で純利益は残らない。利益の質が低い。
人手不足は追い風ではなく、成長の天井だ。職員を集められなければ、部屋はあっても入居者を受けられない。大手が採用と仕入れで規模の力を使えば、中堅は挟まれる。
施設を増やすほど家賃の約束が膨らみ、悪い年に固定費として残る。成長が脆さを増やす形だ。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。需要が増えることと、利益が株主に残ることは別の話だ。値段を国に決められ、人と家賃と利息の固い費用を抱える形では、利益率の小さな揺れが株主の取り分を大きく揺らす。中立は今の薄い利益率が続く姿とし、確率は悲観の側に寄せた。施設の利益の回復は楽観の側に入れた。確率の寄せ方は、過去12年に赤字の期が3度あった事実にもよる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/10 期)
確率で加重した株価時価総額 320 円43 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 164 円22 億円)。 今の値に割り戻すと 233 円31 億円、今との差 −44.4%、 期待の年率 +1.4%(資本コスト 9.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 1,039 円141 億円 | 259 円35 億円 | +209.8% | +12.0% | 91 円12 億円 |
| やや楽観 | 20% | 578 円78 億円 | 222 円30 億円 | +90.9% | +6.7% | 160 円22 億円 |
| 中立 | 38% | 294 円40 億円 | 185 円25 億円 | +14.2% | +1.3% | 182 円25 億円 |
| やや悲観 | 23% | 77 円10 億円 | 111 円15 億円 | −55.2% | −7.7% | 43 円6 億円 |
| 悲観 | 12% | 16 円2 億円 | 44 円6 億円 | −85.5% | −17.6% | 7 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 320 円43 億円 | 164 円22 億円 | +15.3% | +1.4% | 483 円65 億円 |
今の株価時価総額 419 円57 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 施設を増やし、利益率を4%近くまで戻す 利益 11 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 1,039 円141 億円
施設の入居率の改善と仕入れの見直しが定着し、新しい施設も早く埋まる筋書きだ。部屋は10年で2割強増え、報酬の改定は人手不足を映して物価に近い上げになる。在宅は職員の待遇の制度で採用に勝ち、利用者を増やす。
営業利益率は3%台に乗り、利払いを引いても純利益は10億円を超える。借金は利益で少しずつ返り、自己資本比率は上がる。
業界の統合でも買う側に回り、関西の中堅の事業所を取り込む。人と仕入れの規模が利益率を支える。
利益率が過去の山に近づき、借金の重さがようやく和らぐ姿だ。値段を決める力は無いままでも、規模と効率で稼げることを示す。
- 施設系介護:数量 10,500(施設の部屋の数(室・推定))× 価格 375(1 室あたりの年間の売上(万円))→ 売上 394 億円・営業利益 28 億円。10,500 室×375 万円(1.25 倍)、7%
- 在宅系介護:数量 28,000(利用者の数(人・推定))× 価格 75(1 人あたりの年間の売上(万円))→ 売上 210 億円・営業利益 7 億円。2.8 万人×75 万円(1.25 倍)、3.5%
- その他(保育・障がい・訪問看護・食事):数量 320(事業所の数(推定))× 価格 3,850(1 事業所あたりの年間の売上(万円))→ 売上 123 億円・営業利益 4 億円。320 か所×3,850 万円(1.25 倍)、3%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.4% が k 9.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍。全体の PER 12.56 倍、時価総額 138 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:施設の部屋を2割強増やし、利益率を過去の山近くまで戻す筋。人の確保が前提なので7%とした。
やや楽観 20% 利益の回復が続き、利益率は3%弱 利益 7 億円 · PER 11.3 倍 · 株価時価総額 578 円78 億円
施設の利益の回復が続き、新しい施設も計画どおり埋まる筋書きだ。部屋は2割近く増え、報酬の改定は物価をやや下回る。在宅は人手の制約で利用者の伸びが小さい。
営業利益率は2%台後半で、利払いを引いた純利益は8億円前後になる。配当は増え、借金は少しずつ減る。
ただ、利益率は過去の山に届かず、値段を決められない会社の限界は残る。株主の取り分は増えるが、まだ薄い。
回復の手応えは本物だが、構造は変わらない。報酬の改定の行方しだいで、利益はまた揺れる。施設を増やすほど家賃の約束も増え、悪い年への備えは薄いままだ。
- 施設系介護:数量 10,000(施設の部屋の数(室・推定))× 価格 370(1 室あたりの年間の売上(万円))→ 売上 370 億円・営業利益 24 億円。10,000 室×370 万円(1.23 倍)、6.5%
- 在宅系介護:数量 27,000(利用者の数(人・推定))× 価格 74(1 人あたりの年間の売上(万円))→ 売上 200 億円・営業利益 6 億円。2.7 万人×74 万円(1.23 倍)、3%
- その他(保育・障がい・訪問看護・食事):数量 300(事業所の数(推定))× 価格 3,800(1 事業所あたりの年間の売上(万円))→ 売上 114 億円・営業利益 2 億円。300 か所×3,800 万円(1.24 倍)、2%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.7% が k 9.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.3 倍。全体の PER 11.31 倍、時価総額 78 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2025年10月期からの回復が続き、利益率が2%台後半で落ち着く筋。足元の進み具合から20%とした。
中立 38% 部屋は増えるが、利益率は薄いまま 利益 4 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 294 円40 億円
高齢者の増加で施設の部屋は1割余り増え、入居率も保てる筋書きだ。だが報酬の改定は物価を下回り、職員の賃金はそれより速く上がる。施設の利益率は6%前後、在宅は2%台にとどまる。
本社の費用も物価並みに増え、全社の営業利益率は2%に届かない。借金の借り換えで金利が上がり、利払いは年4億円近くになる。純利益は4億円ほどで、配当を払うと手元にはわずかしか残らない。
ROEは資本コストとほぼ同じで、事業は価値を生みも壊しもしない。社会に必要な仕事を続ける、ふつうの介護の会社の姿だ。
筆者は、これがいちばんありそうな10年だと見る。
- 施設系介護:数量 9,500(施設の部屋の数(室・推定))× 価格 366(1 室あたりの年間の売上(万円))→ 売上 348 億円・営業利益 21 億円。9,500 室×366 万円(1.22 倍)、6%
- 在宅系介護:数量 26,000(利用者の数(人・推定))× 価格 72(1 人あたりの年間の売上(万円))→ 売上 187 億円・営業利益 5 億円。2.6 万人×72 万円(1.20 倍)、2.5%
- その他(保育・障がい・訪問看護・食事):数量 280(事業所の数(推定))× 価格 3,700(1 事業所あたりの年間の売上(万円))→ 売上 104 億円・営業利益 2 億円。280 か所×3,700 万円(1.21 倍)、1.5%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.0% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 40 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:部屋が少しずつ増え、報酬の改定が物価に届かず、利益率が今と同じ薄さで続く筋。38%とした。
やや悲観 23% 人手不足と報酬の目減りで利益が細る 利益 1 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 77 円10 億円
職員の不足が深刻になり、新しい施設を開けられない筋書きだ。部屋の数は今のままで、在宅は利用者を断る事業所が出る。報酬の改定は物価を大きく下回り、賃金だけが上がる。
施設の利益率は5%台に下がり、在宅とその他は赤字すれすれになる。本社の費用を削っても、営業利益は6億円ほどにとどまる。利払いと家賃の固い費用が残り、純利益は1億円台だ。
配当は減り、借金は減らない。ROEは3%台に落ち、株主の取り分はほとんど残らない。
2023年と2024年の赤字が、形を変えて戻ってくる姿だ。人がいないことが、そのまま売上の天井になる。施設の家賃と借金の利息だけは、売上が伸びなくても確実に出ていく。
- 施設系介護:数量 8,500(施設の部屋の数(室・推定))× 価格 345(1 室あたりの年間の売上(万円))→ 売上 293 億円・営業利益 16 億円。8,500 室×345 万円(1.15 倍)、5.5%
- 在宅系介護:数量 22,000(利用者の数(人・推定))× 価格 68(1 人あたりの年間の売上(万円))→ 売上 150 億円・営業利益 3 億円。2.2 万人×68 万円(1.13 倍)、2%
- その他(保育・障がい・訪問看護・食事):数量 240(事業所の数(推定))× 価格 3,500(1 事業所あたりの年間の売上(万円))→ 売上 84 億円・営業利益 1 億円。240 か所×3,500 万円(1.14 倍)、1%
倍率:ROE 3%で資本コストに遠く届かない。PERの上限は1÷kの11.8倍で、利益が細る筋なので8倍。PBRは0.24倍で中立の0.8倍より低い。
確率:職員を集められず部屋が増えず、報酬の実質の目減りが続く筋。2023〜2024年の赤字の実例から23%とした。
悲観 12% 赤字に沈み、家賃と利息が残る 利益 −8 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 16 円2 億円
国の財政の制約で報酬が実質で大きく下がり、職員も集まらない筋書きだ。施設は空き部屋が増え、在宅とその他の事業所を閉じる。売上は減っても、施設の家賃は長い約束で残る。
営業損益は赤字になり、利払いを含めて最終赤字が数年続く。自己資本は削られ、配当はほぼ止まる。借金の返済のために施設を同業に手放し、残った事業だけで細々と続ける。
介護の需要は残るが、株主の取り分はほぼ消える。
薄い利益率に借金と家賃を重ねた形の、典型的な負け方だ。家賃と利息という固い費用が、売上の落ち込みをそのまま赤字に変える。会社が残っても、株主の値打ちは残らない。
- 施設系介護:数量 7,500(施設の部屋の数(室・推定))× 価格 330(1 室あたりの年間の売上(万円))→ 売上 248 億円・営業利益 7 億円。7,500 室×330 万円(1.10 倍)、3%
- 在宅系介護:数量 18,000(利用者の数(人・推定))× 価格 66(1 人あたりの年間の売上(万円))→ 売上 119 億円・営業利益 0 億円。1.8 万人×66 万円(1.10 倍)、0%
- その他(保育・障がい・訪問看護・食事):数量 200(事業所の数(推定))× 価格 3,400(1 事業所あたりの年間の売上(万円))→ 売上 68 億円・営業利益 −1 億円。200 か所×3,400 万円(1.11 倍)、−2%
倍率:営業赤字で稼ぐ力は無い。純現金は無く、建物の多くは借りたもので売れる資産も乏しい。今の自己資本44億円にPBR 0.05倍を掛けた約2億円とし、株主の取り分がほぼ消える姿を映した。
確率:報酬の引き下げと人手不足が重なり、2023〜2024年より深い赤字が続く筋。12%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
施設系介護
有料老人ホームとグループホームを営み、住まいと食事と介護をまとめて売る。
| 数量施設の部屋の数(室・推定) | 価格1 室あたりの年間の売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 8,500 | 300 | 255 | 17 |
| 10 年後 中立 | 9,500 | 366 | 348 | 21 |
取り方:売上の約 53%(約 255 億円)を、1 室あたり年 300 万円(家賃・食費・介護報酬)とみて 8,500 室と置いた推定。セグメント利益 16.5 億円は開示(データサービスの要約)。価格は介護保険の報酬が中心で、3 年ごとの改定は物価に届かないとみて中立 10 年 1.2 倍前後。
在宅系介護
訪問介護、居宅介護支援、デイサービスで、自宅で暮らす高齢者を支える。
| 数量利用者の数(人・推定) | 価格1 人あたりの年間の売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 25,000 | 60 | 150 | 3 |
| 10 年後 中立 | 26,000 | 72 | 187 | 5 |
取り方:売上の約 31%(約 150 億円)を、利用者 1 人あたり年 60 万円とみて 2 万 5 千人と置いた推定。利益は 2% 前後と推定。価格は介護保険の報酬が中心で、3 年ごとの改定は物価に届かないとみて中立 10 年 1.2 倍前後。
その他(保育・障がい・訪問看護・食事)
保育園、障がい者の支援、訪問看護、配食などを営む。
| 数量事業所の数(推定) | 価格1 事業所あたりの年間の売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 250 | 3,070 | 77 | 1 |
| 10 年後 中立 | 280 | 3,700 | 104 | 2 |
取り方:連結の売上 481.58 億円から施設と在宅を引いた約 77 億円を、250 事業所・1 か所 3,070 万円と置いた推定。価格は介護保険の報酬が中心で、3 年ごとの改定は物価に届かないとみて中立 10 年 1.2 倍前後。
リスクと懸念
介護報酬の改定
売上の多くは国の介護保険の報酬で、3年ごとに国が決める。改定が物価の上昇に届かなければ、売上は実質で目減りする。財政の制約で引き下げになる年もありうる。
職員の不足と賃金の上昇
介護の職員は全国で足りず、賃金は物価より速く上がる。人が集まらなければ、部屋はあっても入居者を受けられず、在宅の利用者も断ることになる。
借金と金利
純有利子負債は52億円で、利払いは年3億円ある。借り換えで金利が上がれば、薄い営業利益の大きな部分が利息に消える。自己資本比率は15%を切る。
施設の家賃の約束
施設の建物の多くは長く借りる約束だ。家賃は売上が落ちても下がらない。新しいリースの会計基準では、この約束が負債として帳簿に載り、見かけの財務はさらに重くなる。
利益の質
2026年10月期は経常利益が戻っても、純利益の予想は0.5億円で配当の額を下回る。特別な損失が続くと、自己資本は増えない。
事故・不祥事
介護の現場の事故や虐待、報酬の不正な請求が起きれば、行政の処分で新しい入居を止められることがある。信用の失墜は入居率に直結する。
今後の分かれ目
- 営業利益率が2期続けて3%を超えたら
- 利益の回復が定着したとして、やや楽観に重みを移す。
- 2027年度の介護報酬の改定が物価を上回る上げになったら
- 値段の目減りが止まったとして、中立の価格を上げる。
- 純有利子負債が30億円を切ったら
- 利払いの重さが和らぐとして、借金の分の資本コストを下げる。
- 職員の不足で新しい施設の開業を延ばしたら
- 人手が成長の天井になったとして、やや悲観の確率を上げる。
- 大手の介護会社や投資ファンドから買収の提案が出たら
- 業界の統合の中で値が付くとして、楽観の確率を上げる。
見ておくもの
- 施設の入居率と部屋の数
- 介護報酬の改定率(2027 年度)
- 営業利益率と利払いの額
- 職員の数と離職率
- 純有利子負債と自己資本比率
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価やPERを見ずに、各筋書きのROEとk 9.5%から決めた。中立のROEは8.0%でkをわずかに下回るので、PERの上限は1÷kの11.8倍とし、、借金とリースの重さで8.5割の10倍にした。本社の費用は物価並みに1.34倍、報酬の価格は改定が物価に届かないとして1.20倍前後。リースは今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)で置き、2028年10月期から新しい会計基準でリース負債が帳簿に載って純有利子負債が膨らむことは数字に入れていない。悲観のPBRが0.1倍を切るのは、純現金が無く建物も借り物で、売れる資産の床がほぼ無いため。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.4→12.56 倍・やや楽観 PER 11.8→11.31 倍・中立 PER 10→10.53 倍)。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。