結論
白洋舍は、1906年創業のクリーニング最大手の一社だ。いまの稼ぎの6割は、ホテルや病院に寝具やタオル、制服を貸して洗うレンタル事業から出ている。クリーニングは売上の4割弱で、こちらは縮む市場にいる。
筆者の結論は、適正の範囲にあり、含み資産のぶんだけ上に傾く、というものだ。事業の稼ぐ力に比べて高くはない。そのうえ、賃貸ビルなどの不動産に、帳簿より80億円ほど高い時価がある。時価総額は129億円だから、この含みだけで6割にあたる。
ただし手放しの割安ではない。2025年12月期の純利益21億円には、株の売却益と税の戻りが混じる。ならした稼ぎは18億円前後だ。2026年12月期の上期は、クリーニングの利益が2割減った。人件費と電気代の上昇を、値上げで追い切れていない。
10年先の中立は、クリーニングが2割強縮み、レンタルが1割半増える姿だ。営業利益は今の1.25倍にとどまる。借金は返済が進むが、返済の原資は不動産の売却に頼る部分がある。この点が、値段への安心感と同時に、成長の乏しさを映している。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「事業は並みで、資産が値段を支える」という型だ。クリーニングは縮み、レンタルは良い部門だが、競争が厳しい。事業だけで見れば、割安とは言いにくい。
一方、資産の裏づけは確かにある。賃貸等不動産などの時価は、有価証券報告書の開示で約110億円、帳簿は約28億円だ。差額の税引き後は約57億円になる。会社は、利回りの低い不動産を売って借入を返す方針を示し、実際に売却益を出した。
経営の資本配分は、これまで慎重だった。借入を返し、配当を上げ、不要な設備を手放している。10年持つ株主として気になるのは、売却で得た資金を、成長の乏しい事業に再投資し過ぎないかだ。筆者は、売却が進み、資金が借入と配当に回る限り、持ち続ける価値があると見る。ただし、含みの実現には時間がかかり、焦って売る会社でもない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は2つある。1つは、洋服や着物を預かって洗う店舗型のクリーニング事業で、2025年12月期の売上は167億円。もう1つは、ホテルや病院に寝具やタオル、白衣や制服を貸して洗う、レンタル事業で、売上は271億円ある。
利益はレンタルが多い。セグメント利益はレンタルが24億円、クリーニングが18億円だ。2026年12月期の上期は、レンタルが売上7%増・利益9%増となった。ホテルの新規開業と改装、値上げが効いた。クリーニングは売上3%減、利益23%減だった。
不動産事業は売上5億円の小さな部門だが、利益は3億円を占める。首都圏の土地と賃貸ビルを持つ。ここに、会社の見えにくい価値が眠る。ほかに、機械や消耗品の販売が4億円ある。
洗濯の設備は重い。茨城工場は2020年6月から、共同リネンサプライの池田工場は2025年2月から止まっている。クリーニングの需要が減り、工場の稼働が落ちたためだ。2023年には、大阪のホテル向けを担う共同リネンサプライを完全子会社にし、吸収合併した。連結の従業員は1,722人で、クリーニングが945人、レンタルが633人だ。
優良さと弱いところ
強みは、ブランドと、ホテルなど法人客との長い取引だ。白洋舍は高級衣料の洗いに強く、クリーニングでは単価を保ちやすい。レンタルでは、ホテルの稼働率が高いほど数量が増え、リネンの入れ替えも進む。
財務は、会社が再建を終えた段階にある。自己資本比率は36%まで戻り、上期末には39%になった。借入は2年で約30億円返し、2026年6月末は68億円だ。営業利益は支払利息の11倍ある。
弱みは3つある。1つは、クリーニング需要の構造的な減少だ。服装のカジュアル化と家庭用洗濯機の進化で、業界の施設数は15年で約45%減った。2つ目は、レンタルの売上がホテルなど法人に偏ることだ。2020年は営業利益が47億円の赤字に沈んだ。3つ目は、重い装置と人手が必要な点で、人件費の上昇が利益を直撃する。
資本効率は、2025年12月期のROEが18%と高く見える。だが、これは株の売却益と税の戻りが膨らませた数字だ。筆者は、堀、つまり他社がまねできない強みを、弱めに見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
クリーニング市場は、ピークの1992年に約8,200億円あったが、2022年は約2,700億円まで縮んだ。施設数は2025年3月末で約7万か所と、前年から4%減った。人口の減少に、服装の変化が重なる。大手でも、売上を伸ばすのは難しい。
リネンサプライは別の世界だ。2023年度の市場規模は約4,550億円で、前年度より8.5%増えた。訪日客でホテルの稼働率が高く、高齢化で病院や介護施設の需要も増える。人手不足の宿泊業は、洗濯を外に出す傾向を強める。
競争の形は分散的だ。ホテルのリネンは、地域の中堅が強く、大手同士の値引き競争が起きやすい。白洋舍は、首都圏と大阪の拠点網と、品質の評判で勝負する。一方、人件費、電気・燃料、洗剤の上昇が続き、値上げを通せるかが利益を決める。
今後の鍵は、ホテルの新規開業と改装の波が続くか、そして値上げが受け入れられるかだ。もうひとつ、重い設備を減らせるかも問われる。使わない工場や土地の売却は、すでに始まっている。クリーニングで余った工場を、レンタルの洗濯に転用できるかも、設備の効率を左右する。
資本政策と M&A
資本政策は、借入を返し、配当を増やす流れだ。2024〜2026年の中期計画で、借入金の圧縮は当初の30億円から35億円に広げた。原資は営業キャッシュフローと、利回りの低い不動産の売却だ。2026年12月期の上期には、固定資産の売却益を12億円計上した。
配当は2025年12月期に8割強増え、2026年12月期は、さらに25%増やす計画だ。純利益の2割前後と、まだ控えめである。長期保有の株主を対象にした優待も2024年に作ったが、費用は小さい。
目標のROEは、2026年12月期に17%以上だ。筆者は、売却益や税の戻りを除いた稼ぐ力で測るべきだと考える。自己株式の買い入れは見えない。余った資金は、まず借金の返済に回る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
資産の価値が、時価総額に織り込まれていない。賃貸等不動産などの時価は約110億円で、帳簿の約28億円との差は約82億円ある。税引き後でも約57億円で、時価総額129億円の4割強にあたる。会社は不動産を売って借入を圧縮すると明言し、上期に12億円の売却益を出した。
事業そのものも底堅い。レンタル事業は売上が7%増え、ホテルの新規開業と改装、値上げが続く。リネンサプライ市場は2023年度に8.5%増え、高齢化で病院や介護施設の需要も続く。営業キャッシュフローは年30億円で、借金は2年で約30億円減った。投資に回す額は年9億円ほどと小さく、残りが返済と配当に回る構造だ。
2026年12月期の純利益は24億円の予想で、配当は25%増える。ROE17%の目標が実現すれば、再評価の余地は大きい。株価はPBR1倍前後にとどまり、資産と稼ぎの両方が評価されていない。借入の返済が進めば、利払いが減り、利益は自然に増える。
慎重な見方
クリーニングは縮む市場で、再生のしようがない。業界の施設数は15年で約45%減り、市場は30年で3分の1になった。2026年12月期の上期は、売上が3%減り、利益は23%減った。人件費の上昇を値上げで吸収できていない証拠である。レンタルの利益率も9%台と薄く、わずかなコスト増で赤字に近づく。
利益の質にも疑問がある。2025年12月期の純利益21億円は、株の売却益と税の戻りが膨らませた。2026年12月期の上期は、営業利益が2割減ったのに、純利益が9割増えたのは、固定資産の売却益12億円のおかげだ。売却は一度きりの収入で、繰り返せない。同じ売却益を毎年期待することはできない。
さらに、レンタルはホテルに偏る。2020年は営業利益が47億円の赤字だった。不動産の時価約110億円も、売却が進まなければ絵に描いた餅だ。稼ぐ力は変わらず並みである。含みの現金化には時間がかかり、その間も人件費は上がり続ける。
どちらに重みを置いたか
強い方は慎重な見方だ。ただし、資産の裏づけがあるため、下値は固い。事業の稼ぐ力は並みで、クリーニングは構造的に縮む。ならした純利益は18億円前後で、10年の中立は、営業利益が緩やかにしか増えない姿に置いた。
含みは、売却の実績と方針があるため、税引き後57億円の75%を価値に加えた。確率は、中立を最も厚く、やや悲観にも2割台を置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 7,563 円295 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,241 円48 億円)。 今の値に割り戻すと 4,348 円169 億円、今との差 +32.5%、 期待の年率 +10.4%(資本コスト 8.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 15,830 円617 億円 | 1,925 円75 億円 | +441.3% | +18.4% | 1,420 円55 億円 |
| やや楽観 | 22% | 11,569 円451 億円 | 1,591 円62 億円 | +301.2% | +14.9% | 2,895 円113 億円 |
| 中立 | 36% | 8,371 円326 億円 | 1,412 円55 億円 | +198.2% | +11.5% | 3,522 円137 億円 |
| やや悲観 | 22% | 2,601 円101 億円 | 898 円35 億円 | +6.7% | +0.7% | 770 円30 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,381 円54 億円 | 257 円10 億円 | −50.1% | −6.7% | 196 円8 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7,563 円295 億円 | 1,241 円48 億円 | +168.4% | +10.4% | 8,804 円343 億円 |
今の株価時価総額 3,280 円128 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% ホテルと病院向けが伸び、クリーニングは下げ止まる 利益 35 億円 · PER 15.1 倍 · 株価時価総額 15,830 円617 億円
ホテルの新規開業と改装が続き、人手不足の宿泊業がリネンの外注を増やす。レンタルの数量は今より3割増え、値上げも物価を上回って通る。
クリーニングは高級衣料の洗いで単価を守り、数量の減りは1割強にとどまる。工場の統合が進み、利益率も戻る。
借入は返し終わり、不動産の売却益も入る。営業利益は今の2倍を超え、ROEは資本コストを上回る。会社が掲げる17%のROE目標にも近づく。ブランドの強さが値上げを通し、他社との差を広げる。クリーニングの縮みは、ホテルの外注化の追い風で相殺される。余った工場の転用も進み、設備の稼働率が上がって固定費の負担が軽くなる。
- クリーニング(店舗型・宅配):数量 1,221(取扱点数(万点)。1万点あたり売上0.12億円と置いた推定)× 価格 0.16(1万点あたり売上(億円、名目))→ 売上 196 億円・営業利益 24 億円。点数-12%・価格1.34倍
- レンタル(リネンサプライ・ユニフォーム):数量 586(取扱点数(百万点)。100万点あたり売上0.6億円と置いた推定)× 価格 0.84(100万点あたり売上(億円、名目))→ 売上 493 億円・営業利益 52 億円。点数+30%・価格1.40倍
- 不動産(首都圏の賃貸ビルなど):数量 11.3(賃貸面積(千㎡)。1,000㎡あたり年賃料0.3億円と置いた推定)× 価格 0.40(1,000㎡あたり賃料(億円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 3 億円。面積-30%(売却)・価格1.34倍
- その他(機械・消耗品の販売):数量 42.2(取引件数換算(百件)=売上を1百件あたり0.1億円で割った推定)× 価格 0.13(百件あたり売上(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。件数横ばい・価格1.34倍
倍率:事業の純利益 35 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)43 億円。全体の PER 15.07 倍、時価総額 576 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ホテルの稼働が高く、病院や介護の外注化が進み、クリーニングも単価で踏みとどまる姿。強気が当たる部分に限り、1割弱とした。
やや楽観 22% レンタルが伸び、値上げが利益を支える 利益 26 億円 · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 11,569 円451 億円
レンタルの数量は今より2割強増える。ホテルの新設と改装が続き、病院や介護施設の外注化も進む。値上げは物価並みに通る。
クリーニングの数量は2割近く減るが、閉店と工場の統合で利益率を保つ。高級衣料や法人の制服の洗いは、価格を守りやすい。
借入は10年で返し終わる。不動産の売却は一部にとどまる。ROEは資本コストと同じ水準まで戻り、配当も段階的に増える。ホテルの新設は国内に限られ、伸びは緩やかだ。クリーニングの縮みを、レンタルの増加が少しずつ埋めていく展開である。工場の統合も予定どおり進み、洗う設備の使い方が効率的になる。
- クリーニング(店舗型・宅配):数量 1,138(取扱点数(万点)。1万点あたり売上0.12億円と置いた推定)× 価格 0.16(1万点あたり売上(億円、名目))→ 売上 180 億円・営業利益 19 億円。点数-18%・価格1.32倍
- レンタル(リネンサプライ・ユニフォーム):数量 550(取扱点数(百万点)。100万点あたり売上0.6億円と置いた推定)× 価格 0.82(100万点あたり売上(億円、名目))→ 売上 452 億円・営業利益 44 億円。点数+22%・価格1.37倍
- 不動産(首都圏の賃貸ビルなど):数量 12.2(賃貸面積(千㎡)。1,000㎡あたり年賃料0.3億円と置いた推定)× 価格 0.40(1,000㎡あたり賃料(億円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 4 億円。面積-25%・価格1.34倍
- その他(機械・消耗品の販売):数量 42.2(取引件数換算(百件)=売上を1百件あたり0.1億円で割った推定)× 価格 0.13(百件あたり売上(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。件数横ばい・価格1.34倍
倍率:事業の純利益 26 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.7% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)43 億円。全体の PER 14.15 倍、時価総額 414 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:レンタルが堅調に伸び、クリーニングの縮みを補う姿。値上げは通るが人件費の上昇も続く。2割強に置いた。
中立 36% クリーニングは縮み、レンタルが支える。利益は緩やかに増える 利益 19 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 8,371 円326 億円
クリーニングの数量は今より2割強減る。値上げは通るが、物価には届かない。閉店と工場の統合を進めても、利益率は1割を割る。
レンタルの数量は1割半増える。ホテルの新設と改装が続き、値上げも物価並みに通る。利益率は9%前後で、人件費と電気代の上昇に追いつくのがやっとだ。
借入は10年でほぼ返し終わる。不動産は一部を売るが、売却の益は価値の別枠で見る。営業利益は今の1.25倍で、純利益は19億円にとどまる。ROEは資本コストにわずかに届かない。ホテルの稼働率は高止まりするが、人手不足で値上げ交渉が厳しくなり、利益の伸びは物価を下回る。
- クリーニング(店舗型・宅配):数量 1,083(取扱点数(万点)。1万点あたり売上0.12億円と置いた推定)× 価格 0.16(1万点あたり売上(億円、名目))→ 売上 169 億円・営業利益 16 億円。点数-22%・価格1.30倍
- レンタル(リネンサプライ・ユニフォーム):数量 519(取扱点数(百万点)。100万点あたり売上0.6億円と置いた推定)× 価格 0.80(100万点あたり売上(億円、名目))→ 売上 417 億円・営業利益 38 億円。点数+15%・価格1.34倍
- 不動産(首都圏の賃貸ビルなど):数量 12.2(賃貸面積(千㎡)。1,000㎡あたり年賃料0.3億円と置いた推定)× 価格 0.40(1,000㎡あたり賃料(億円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 4 億円。面積-25%(売却)・価格1.34倍
- その他(機械・消耗品の販売):数量 42.2(取引件数換算(百件)=売上を1百件あたり0.1億円で割った推定)× 価格 0.13(百件あたり売上(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。件数横ばい・価格1.34倍
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)43 億円。全体の PER 13.14 倍、時価総額 292 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:クリーニングが縮み、レンタルが伸びて補う姿。2つの見方の落としどころで、最も厚い3割台に置いた。
やや悲観 22% 人件費が重く、値上げが追いつかない 利益 5 億円 · PER 11.0 倍 · 株価時価総額 2,601 円101 億円
人手不足で人件費が物価を超えて上がる。ホテルは値上げを嫌い、レンタルの価格は物価に届かない。数量の伸びも5%にとどまる。
クリーニングの数量は3割強減り、閉店と減損が続く。工場の統合では、利益率の低下を止められない。
営業利益は10億円強に縮む。借入を返すため不動産の売却が進むが、事業の稼ぐ力は細る。自己資本も減損で伸びない。配当は据え置きが精一杯で、増配の余地は小さい。この筋書きでは、ホテルが外注先を絞り込み、白洋舍が選ばれにくくなる。クリーニングの店舗網も維持できなくなる。同業との価格競争が強まり、新規の顧客を取れない。この筋書きでは、含みの不動産の売却だけが会社を支える柱になる。
- クリーニング(店舗型・宅配):数量 944(取扱点数(万点)。1万点あたり売上0.12億円と置いた推定)× 価格 0.15(1万点あたり売上(億円、名目))→ 売上 142 億円・営業利益 10 億円。点数-32%・価格1.25倍
- レンタル(リネンサプライ・ユニフォーム):数量 474(取扱点数(百万点)。100万点あたり売上0.6億円と置いた推定)× 価格 0.75(100万点あたり売上(億円、名目))→ 売上 355 億円・営業利益 27 億円。点数+5%・価格1.25倍
- 不動産(首都圏の賃貸ビルなど):数量 11.5(賃貸面積(千㎡)。1,000㎡あたり年賃料0.3億円と置いた推定)× 価格 0.38(1,000㎡あたり賃料(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 3 億円。面積-30%・価格1.27倍
- その他(機械・消耗品の販売):数量 42.2(取引件数換算(百件)=売上を1百件あたり0.1億円で割った推定)× 価格 0.12(百件あたり売上(億円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。価格1.2倍
倍率:事業の ROE は3%で k 8%を大きく下回る。上限 1÷k の約11.4倍より下の10.98倍に置いた。稼ぐ力は細るが、事業が残る前提。
確率:人件費の上昇を値上げで吸収できず、利益率が薄くなる姿。クリーニングの縮みも速い。慎重な見方の本流として2割台に置いた。
悲観 12% ホテル向けが崩れ、クリーニングも縮み、資産を売って整理する 利益 −14 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,381 円54 億円
ホテルの需要が急に落ち、レンタルの数量は1割減る。価格の引き上げは止まり、洗う設備の稼働も落ちる。
クリーニングは数量が半分になり、店舗を大幅に閉じる。工場の統合と減損が続き、営業損益は赤字になる。
借入は不動産の売却で返済する。自己資本は半分まで減る。配当は無配に近づき、取引先のホテルにも洗う能力の縮小を理由に値引きを迫られる。残るのは不動産と、洗濯の事業の一部である。会社は再建の途上に戻り、株主への還元も止まる。景気の急変は、2020年と同じ規模の落ち込みを生む。回復にも時間がかかり、設備の再投資もできない。借入の返済が遅れ、金利の負担も重くなる。
- クリーニング(店舗型・宅配):数量 694(取扱点数(万点)。1万点あたり売上0.12億円と置いた推定)× 価格 0.13(1万点あたり売上(億円、名目))→ 売上 92 億円・営業利益 −2 億円。点数-50%・価格1.10倍
- レンタル(リネンサプライ・ユニフォーム):数量 406(取扱点数(百万点)。100万点あたり売上0.6億円と置いた推定)× 価格 0.69(100万点あたり売上(億円、名目))→ 売上 280 億円・営業利益 8 億円。点数-10%・価格1.15倍
- 不動産(首都圏の賃貸ビルなど):数量 8.5(賃貸面積(千㎡)。1,000㎡あたり年賃料0.3億円と置いた推定)× 価格 0.40(1,000㎡あたり賃料(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 2 億円。面積-48%・売却
- その他(機械・消耗品の販売):数量 20.0(取引件数換算(百件)=売上を1百件あたり0.1億円で割った推定)× 価格 0.10(百件あたり売上(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。縮小
倍率:赤字で稼ぐ力はほぼゼロ。残るのは売れる不動産・有価証券と運転資金の一部で、借入とリースが引く。今の自己資本128億円の42%に置いた。
確率:景気の急変かホテル需要の崩れで、レンタルが減り、クリーニングが縮む姿。借入を返せても、事業は小さくなる。10年で起きる確率は1割強とみた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
クリーニング(店舗型・宅配)
洋服や着物を預かって洗う。直営店と取次店で受ける。縮む市場にいるが、高級衣料の洗いでは単価を保てる。
| 数量取扱点数(万点)。1万点あたり売上0.12億円と置いた推定 | 価格1万点あたり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,388 | 0.12 | 167 | 18 |
| 10 年後 中立 | 1,083 | 0.16 | 169 | 16 |
取り方:セグメント売上166.6億円、利益18.0億円(開示)。点数は開示が無く、1万点あたり売上0.12億円(1点の平均料金から)と置いた推定。実際の点数や単価は異なる。
レンタル(リネンサプライ・ユニフォーム)
ホテル・病院・介護施設に、寝具やタオル、白衣や制服を貸して洗う。使用の都度、料金が入る。
| 数量取扱点数(百万点)。100万点あたり売上0.6億円と置いた推定 | 価格100万点あたり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 451 | 0.60 | 271 | 24 |
| 10 年後 中立 | 519 | 0.80 | 417 | 38 |
取り方:セグメント売上270.6億円、利益24.0億円(開示)。点数は開示が無く、100万点あたり売上0.6億円(リネンの洗い・貸しの平均単価から)と置いた推定。
不動産(首都圏の賃貸ビルなど)
自社で持つ土地と賃貸ビルを貸す。時価に比べて収益の利回りが低く、売却の対象にもなる。
| 数量賃貸面積(千㎡)。1,000㎡あたり年賃料0.3億円と置いた推定 | 価格1,000㎡あたり賃料(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 16.2 | 0.30 | 5 | 4 |
| 10 年後 中立 | 12.2 | 0.40 | 5 | 4 |
取り方:セグメント売上4.9億円、利益3.5億円(開示)。賃貸等不動産の賃貸収益は有報注記で約4.8億円。面積は開示が無く、1,000㎡あたり年賃料0.3億円と置いた推定。
その他(機械・消耗品の販売)
クリーニング機械や資材の販売。小さい。
| 数量取引件数換算(百件)=売上を1百件あたり0.1億円で割った推定 | 価格百件あたり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 42.2 | 0.10 | 4 | 1 |
| 10 年後 中立 | 42.2 | 0.13 | 6 | 1 |
取り方:セグメント売上4.2億円、利益0.8億円(開示)。件数は推定。
リスクと懸念
クリーニング需要の構造的な減少
服装のカジュアル化、家庭用洗濯機の進化、在宅勤務の定着で、市場はピークから7割減った。施設数も15年で約45%減っている。大手でも売上を伸ばすのは難しく、店舗の閉鎖と減損が続くおそれがある。
ホテルなど法人客への偏り
レンタルの売上は、ホテルや病院などの法人客に偏る。2020年は営業利益が47億円の赤字で、需要が急変すると洗う設備の固定費が重くなる。大口客の値引き要求も、利益率を押し下げる。
人件費・電気・燃料の上昇
洗濯は人手と熱を使う。2026年12月期の上期は、クリーニングの利益が23%減り、全社の営業利益も2割減った。値上げが通らなければ、売上が伸びても利益は減る。
不動産の売却が進まないリスク
賃貸等不動産などの時価は約110億円で、収益利回りは3%前後と低い。売却の益は一度きりで、買い手がつかなければ価値は実現しない。市況が崩れれば、含みも縮む。
金利上昇とリース債務
借入は2026年6月末で約68億円、リース債務も約30億円ある。借り換えの金利が3.5%前後に上がれば、利払いが増える。新リース会計基準では、店舗の賃借も貸借対照表に載り、見かけの負債が増える。
火災・環境・品質
洗浄に石油系の溶剤を使うため、工場の火災や土壌の汚染が起きると損失が大きい。品質の不正や個人情報の漏えいも、ブランドと取引先の信頼を傷つける。
今後の分かれ目
- クリーニング事業の利益の減りが、2026年下期も続く
- 値上げが追いつかないという慎重な見方が裏づけられる。中立の利益率を下げる必要が出て、やや悲観の筋書きの重みが増す。
- レンタル事業の売上増が2桁に乗る
- ホテルの新設・改装の波と外注化が本物になる。数量の置き方が上振れ、やや楽観から楽観に近づく。
- 賃貸ビルや土地の売却が相次いで決まる
- 含みが現金に変わり、借入が減る。含み資産の見方が裏づけられ、価値に足す割合を上げる余地が出る。
- ホテル需要が急に落ちる(災害・感染症・景気後退)
- 洗う設備の固定費が重くなり、レンタルが赤字に近づく。悲観の筋書きに近づく。
- 配当や自己株式取得の方針が大きく拡充される
- 資産の価値が株主に届く道筋が見え、含みの戻り方を上げられる。
見ておくもの
- クリーニングとレンタルのセグメント利益率(半期ごと)
- 賃貸等不動産などの売却の発表と売却益、借入残高の推移
- ホテルの稼働率と新規開業・改装の件数、リネンサプライ市場の伸び
- 最低賃金の上昇率と、値上げの通り方
- 配当方針の変更・自己株式の取得・優待の改定
- 新リース会計基準の適用による負債の見かけの変化
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の ROE(ならした純利益と自己資本から約7〜11%)、k 8%、g 4% の式から出した正当化 PER を土台にした。今の PER が約5〜7倍であることや同業の倍率は見ていない。不動産の含みは、収益利回りが時価の約3%と低く、会社が売却の方針と実績を示しているため、税引き後57億円の75%を余り資産に足した。賃料の稼ぎは利益に残るが、足すのは含みの部分だけで、簿価分は二重にしていない。新リース会計基準は、今の形(店舗の賃料を営業費用に入れる形)でそろえて置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→15.07 倍・やや楽観 PER 10.5→14.15 倍・中立 PER 9→13.14 倍・やや悲観 PER 10→10.98 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality+1.25%を足して8.75%。個別の懸念は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.75% → 8.00%。