結論
藤田観光は、ビジネスホテルのワシントンホテルを全国で運営し、東京・文京区のホテル椿山荘東京も持つ会社だ。筆者の結論は割高である。いまの利益は過去最高だが、この会社はコロナ前、本業でほとんど稼げていなかった。山に近い利益率が10年続くと置くのは、安全域のない見方だと考える。
稼ぎの中心はワシントンホテルだ。外国人客の増加と客室単価の上昇で、2025年12月期の営業利益は138億円と過去最高になった。利益率は17%に届く。ただ、2019年12月期は0.4%だった。賃借のホテルが多く、家賃は売上が落ちても減らない。景気や感染症で需要が崩れると、利益は一気に消える。コロナ時は債務超過の手前まで追い込まれ、大阪の結婚式場を売って乗り切った。
2026年2月、DOWAホールディングスが持っていた3割超の株を、投資ファンドの日本産業推進機構グループが買った。ホテルの買収や開発を一緒に進める提携だ。成長の可能性は上向く。ただ、買収で価値が増えるかは払う値段次第で、まだ何も決まっていない。
中立の10年後は、営業利益が約180億円、純利益が約120億円。時価総額は1,300億円ほどで、今の1,900億円に届かない。楽観でも今の値段を下回る。値上げと室数の増加が長く続けば上振れるが、筆者は逆の見方に重みを置く。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社を「オーナーとして10年持ちたいか」と問われれば、慎重にならざるをえない。
理由は、利益の安定性だ。ホテルは、建物と家賃という固定の費用が重い事業で、需要が落ちたときに利益が一気に消える。コロナ前の10年で、純利益が安定して出た年はほとんどない。今の17%という利益率は、外国人客の増加と客室単価の上昇という、追い風の中で出たものだ。追い風がやんだときに、この利益率が続く保証はない。
評価できる点もある。運営を軽くしてフランチャイズを広げた転換、コロナ期に資産を売って生き延びた判断、いまの自己資本の回復だ。ただ、堀は広くない。ビジネスホテルは新規参入が続き、価格を自分で決められる力は限られる。椿山荘のブランドは本物だが、利益の規模は小さい。
安全域の面でも、今の値段は厚くない。利益の質を低めに見ても、10年後の本質価値は今の時価総額を大きく下回る。筆者は、土地の含み益を確かめられない以上、それを理由に買える水準とは言えないと考える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎは3つの事業から来る。いちばん大きいのはWHG事業で、売上の6割、営業利益の8割を占める。ワシントンホテル、ホテルグレイスリー、フィフスなど、国内外で34軒、約1万800室を運営する。自社で持つ物件、賃借の物件、フランチャイズ(他社の建物に看板と運営を貸す形)、運営の受託が混ざる。
WHG事業の利益率は2割を超える。直近は外国人客の宿泊が全体の6割近くまで増え、客室単価が前年から1割上がった。新宿ワシントンホテルのように、都心の大型物件が効いている。中期計画では2028年に1万2千室を目指し、大阪・和泉、長崎・佐世保、立川など、フランチャイズでの出店を続ける。
2つ目は、ホテル椿山荘東京と婚礼・宴会のラグジュアリー&バンケット事業。売上は約200億円で、営業利益は15億円にとどまる。広大な庭園を持つ強いブランドだが、婚礼は少子化で件数が減る。庭園の敷地は都心にあり、土地そのものの価値は大きいはずだが、開示から値を確かめられないため、評価には入れていない。
3つ目は箱根小涌園などのリゾート事業。売上は約110億円、営業利益は9億円。国内客が中心で、利益率は1桁にとどまる。2026年は客室の改装を進めており、売り止めで利益が一時的に減る見込みだ。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、都心の立地と、運営を請け負うホテルの数だ。弱みは、利益率が景気と外国人客の波に左右されやすいことだ。
WHG事業は、駅に近いビジネスホテルが中心で、客の幅が広い。家賃や人件費が上がる中、客室単価を上げる力を直近で見せた。ただ、ビジネスホテルは東横イン、アパホテル、相鉄フレッサイン、ダイワロイネットなど競合が多く、新しい客室が毎年増える。値上げが通るのは、需要が供給を上回る間だけだ。
資本の使い方には注意が要る。自己資本は、コロナで一度ほぼ消えた。いまは回復したが、これは直近の高い利益のおかげで、厚い蓄えではない。配当は1割前後で、2021〜23年は無配だった。稼ぎを手元に残して、改装や買収に使う姿勢は理解できる。ただ、経営の手腕を測る材料は、まだ過去数年の好業績だけだ。
筆者が評価するのは、コロナ期に資産を売って生き延びた判断と、運営を軽くして利益率を上げた転換だ。不満なのは、2019年12月期まで10年以上、利益率が数%に張り付いていたことだ。いまの高い利益率が構造的に続くのか、山に近いのかは、10年見ないと分からない。堀(他社がまねできない強み)は、椿山荘を除けば中程度と見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のホテルは、外国人客に支えられて好調だ。2025年の外国人延べ宿泊は約1億7,800万人泊と過去最高。一方、日本人の宿泊は前年から4%減っている。国全体の稼働率は約8割と高く、客室単価は上がり続けている。
10年の見通しは、需要と供給で決まる。外国人客の絶対数は高い水準を保つが、伸びは鈍る。日本人の宿泊は人口減で細る。一方、供給は増える。大手のチェーンが新しい客室を毎年足し、フランチャイズも広がる。需要の伸びが鈍る中で供給が増えれば、客室単価の上昇は止まり、稼働率が落ちる。
競争は分散的で、都心のビジネスホテルでは東横イン、アパホテル、相鉄フレッサイン、ダイワロイネットなどが競う。藤田観光のWHG事業は、客室数で見ると中堅だ。アパホテルは4.5%の株を持つ大株主に名前が出ており、同業が持つこと自体が業界の再編を連想させる。
景気への感度は高い。リーマン級の不況では、国内のホテル稼働は大きく落ちる。コロナ禍では、2020年12月期の売上が6割落ち、営業損益は大幅な赤字になった。ホテルは固定費が重く、需要が落ちたときの利益の落ち幅が大きい事業だ。これが資本コストを少し高めに置く理由でもある。
資本政策と M&A
株主構造が大きく変わった。2026年2月、筆頭株主だったDOWAホールディングスが持ち分を31.8%から6.8%に下げ、日本産業推進機構グループのファンドが約25%を持つ筆頭株主になった。売却額は約390億円。同時に、ホテル運営会社の取得、開発、地域の宿泊施設の一括取得、人材の供給で提携を結んだ。
筆者が見るのは、この提携の中身が「買う側」だという点だ。ファンドは、ホテルとレジャーを重点領域にしている。藤田観光に、ホテルを買い増す役割を期待している。買収が成功すれば客室数が増える。ただ、買収は値段と運営の力次第で、失敗すれば価値を壊す。
還元は薄い。配当は2023年まで無配で、2024年に再開した。その後も増やしているが、配当性向は1割前後だ。自社株買いの公表はない。DOWA株の売却益(約60億円)で、2026年12月期の純利益は一時的に膨らむ。これは事業の稼ぎではない。
再編の可能性は一定程度ある。筆頭株主がファンドで、一般にファンドは数年で株を売る。その売却先が事業会社になる、あるいは経営陣と組んだ非公開化に進む可能性は、考えておく必要がある。ただ、提携時点では会社側は独立性が保たれると説明している。
株主優待は、100株以上で1千円分(年2回)、500株以上で1.5万円分の施設優待券。会社は優待の費用を開示していないため、株主 約3万人(割引額×利用率5割×変動費率5割)から年3億円と推定した。優待は株主が受け取る現物の還元なので、10年の還元に年額×10年を、中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5の係数で足した(費用は販管費として利益から引き済みで、自己資本の流れには入れない)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
WHG事業は、駅近の立地とフランチャイズの広がりで、毎年室数を増やしている。2028年の1万2千室という目標は通過点にすぎない。筆頭株主になった日本産業推進機構は、ホテルの買収に実績がある。藤田観光のブランドと運営力に、ファンドの資金と目利きが加われば、地域のホテルを束ねて室数を倍近くに増やせる。
外国人客は、韓国や東南アジアに比べて、日本の宿泊費がまだ割安だと感じて来ている。客室単価はさらに上がる余地がある。しかも運営を軽くしたため、増えた売上のほとんどが利益になる。利益率が2割を超える事業が、室数を増やしながら続くなら、純利益は今の倍に近づく。
椿山荘の土地には、帳簿に出ない含み益がある。都心の庭園付きの大型ホテルは、同じものを新しく作れない。ホテルが不振なら、売ってでも価値を引き出せる。コロナ期に実際に資産を売って生き延びた経営が、再びそれをできることを示している。今の利益は山ではなく、運営の転換が実った結果だ。
慎重な見方
利益率17%は、外国人客の急増と客室単価の急上昇が重なった結果で、構造ではない。コロナ前の10年は、営業利益率が数%で、赤字の年も多かった。2026年の営業利益は、改装の売り止めで下がる見込みで、すでに伸びは止まっている。
供給は増え続ける。東横イン、アパホテル、相鉄フレッサイン、ダイワロイネットなど、競合は毎年客室を足している。需要が頭打ちになれば、客室単価の上昇は止まり、稼働率が落ちる。賃借のホテルは、売上が落ちても家賃は減らない。利益は需要の減少よりずっと大きく落ちる。
筆頭株主になったファンドが期待するのは買収による拡大だが、買う値段が高ければ価値を壊す。ホテルの買収は、いまは売り手に有利な相場になりやすい。配当は1割前後で、稼ぎを使うのは買収だ。失敗すれば株主に戻らない。
椿山荘の含み益は、開示から確かめられていない。ブログの推計は根拠が示されておらず、これを理由に価値を上げるのは危うい。しかも、ホテルとして使いながら売ることはできない。10年後の利益を、今の山の利益のまま置くのは無理がある。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方の方が強い。強気の見方の根拠である、室数の増加とファンドの買収力は、実際に成果が出るまで時間がかかり、値段次第で価値を壊すこともある。一方、慎重な見方の根拠である、コロナ前の薄利、賃借の固定費、山に近い利益率は、いまの数字から確かめられる。
そこで、確率は悲観側に寄せた。楽観とやや楽観の合計を約3割、やや悲観と悲観の合計を約4割とした。中立は利益率が2割から落ち着く筋書きを置いた。強気の上振れは、楽観の筋書きで十分に織り込んだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 3,208 円1,923 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 699 円419 億円)。 今の値に割り戻すと 1,962 円1,176 億円、今との差 −35.6%、 期待の年率 +2.5%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 6,070 円3,638 億円 | 873 円523 億円 | +128.0% | +8.6% | 555 円333 億円 |
| やや楽観 | 20% | 5,092 円3,052 億円 | 881 円528 億円 | +96.1% | +7.0% | 1,195 円716 億円 |
| 中立 | 33% | 3,957 円2,372 億円 | 848 円508 億円 | +57.8% | +4.7% | 1,586 円950 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,488 円892 億円 | 575 円345 億円 | −32.3% | −3.8% | 516 円309 億円 |
| 悲観 | 14% | 188 円113 億円 | 212 円127 億円 | −86.9% | −18.4% | 56 円34 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,208 円1,923 億円 | 699 円419 億円 | +28.3% | +2.5% | 3,907 円2,342 億円 |
今の株価時価総額 3,045 円1,825 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 買収と値上げが重なり、運営の力で拡大が続く10年 利益 180 億円 · PER 18.2 倍 · 株価時価総額 6,070 円3,638 億円
日本産業推進機構との提携で、ホテル運営会社や地域の宿泊施設をほどよい値段で取り込み、WHG事業は1万7千室に近づく。外国人客の客室単価は物価を上回って上がり、運営を軽くした構造で、増えた売上の多くが利益になる。椿山荘の婚礼は縮むが、宴会と宿泊の単価が補う。箱根の改装した宿も客を取り戻す。買収資金の一部は借金なので利息は増えるが、利益の伸びがそれを上回る。強気の見方がほぼ成り立つ10年だが、それでも今の時価総額に届かない。ここまで伸びれば、事業の質は上がる。数が増えるほど仕入れや予約の力が増し、運営受託とフランチャイズの手数料が積み上がる。ただし筆者は、その恩恵が利益率の上昇まで続くとは見ない。大きくなるほど新しい物件の質は落ちやすく、収益の伸びは物価並みに近づく。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年3億円×10年×1.0=30億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- WHG 事業(ワシントンホテル等):数量 17,000(総客室数(室))× 価格 0.07(1 室当たり年間売上(億円。客室単価×稼働率を含む))→ 売上 1,124 億円・営業利益 247 億円。NSSK との提携と FC 出店で 1.7 万室、客室単価も上振れ、利益率 22%
- ラグジュアリー&バンケット事業:数量 150(延べ利用客数(万人、推定))× 価格 19,527(1 人当たり売上(円、推定))→ 売上 293 億円・営業利益 29 億円。椿山荘と婚礼・宴会の単価が上がり利益率 10%
- リゾート事業:数量 90.0(延べ利用客数(万人、推定))× 価格 20,445(1 人当たり売上(円、推定))→ 売上 184 億円・営業利益 20 億円。改装した箱根の宿が客を増やし利益率 11%
倍率:事業の純利益 180 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 21.6% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.2 倍。全体の PER 18.23 倍、時価総額 3,281 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ファンドの買収力と室数の拡大が噛み合う筋書き。実行の難しさと景気の振れがあり、確率は低めに置く。
やや楽観 20% 計画を超える室数と高めの単価が続く10年 利益 150 億円 · PER 18.2 倍 · 株価時価総額 5,092 円3,052 億円
WHG事業は2028年の1万2千室の計画を超えて、1万4千室台まで増える。客室単価は、外国人客の底堅さと改装の効果で、物価をやや上回る。利益率は今の23%から21%に落ち着く。椿山荘は婚礼の減少を宴会と宿泊の単価で補い、箱根は改装後の単価が定着する。買収は一部にとどまり、借金は軽いまま。純利益は今の5割増になるが、倍率は成熟した事業並みに落ち着く。この筋書きが成り立つ鍵は、外国人客の宿泊が高い水準で続くことと、新しい客室の供給が需要を超えないことだ。どちらも崩れやすいが、10年のうち前半は追い風が残ると見る。後半は人口減で日本人客が細り、増えた分が減る分を埋める形になる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年3億円×10年×1.0=30億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- WHG 事業(ワシントンホテル等):数量 14,500(総客室数(室))× 価格 0.06(1 室当たり年間売上(億円。客室単価×稼働率を含む))→ 売上 912 億円・営業利益 192 億円。1.2 万室の計画を超え 1.45 万室、客室単価は物価をやや上回る
- ラグジュアリー&バンケット事業:数量 148(延べ利用客数(万人、推定))× 価格 18,584(1 人当たり売上(円、推定))→ 売上 275 億円・営業利益 25 億円。婚礼は減るが宴会と宿泊の単価で補う
- リゾート事業:数量 85.0(延べ利用客数(万人、推定))× 価格 19,458(1 人当たり売上(円、推定))→ 売上 165 億円・営業利益 17 億円。改装後の単価が定着
倍率:事業の純利益 150 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 21.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.2 倍。全体の PER 18.17 倍、時価総額 2,726 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:室数の増加と客室単価の上昇が、計画を少し上回って続く筋書き。強気の根拠は一部成り立つが、完全には続かないと見る。
中立 33% 利益率が落ち着き、室数と単価は物価並みに伸びる10年 利益 117 億円 · PER 17.8 倍 · 株価時価総額 3,957 円2,372 億円
WHG事業は計画どおり1万2千室に達し、客室単価は物価並みに上がる。ただし新しい客室が毎年増えるので、利益率は今の23%から20%に落ち着く。椿山荘は婚礼件数の減少を宴会と宿泊の単価で支え、利益は小さいまま。箱根は改装の効果が出ても利益率は1桁にとどまる。純利益は今の3割増にとどまり、10年で見れば物価を下回る伸びだ。買収は大きくは成功も失敗もせず、配当性向は4〜5割に上がるが、手元に残した稼ぎは改装と運営の更新に回る。中立では、いまの高い利益率を恒久とは置かない。ビジネスホテルは新しい客室が増え続け、人件費も物価で上がる。値上げで吸収できる年と、できない年が交互に来ると見るのが自然だ。10年の終わりには、成熟した中堅ホテル会社の姿に落ち着く。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年3億円×10年×1.0=30億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- WHG 事業(ワシントンホテル等):数量 12,000(総客室数(室))× 価格 0.06(1 室当たり年間売上(億円。客室単価×稼働率を含む))→ 売上 733 億円・営業利益 147 億円。計画どおり 1.2 万室、客室単価は物価並み、利益率は今の 23% から 20% へ戻る
- ラグジュアリー&バンケット事業:数量 145(延べ利用客数(万人、推定))× 価格 18,046(1 人当たり売上(円、推定))→ 売上 262 億円・営業利益 21 億円。婚礼件数は減り、宴会と宿泊の単価で支える
- リゾート事業:数量 80.0(延べ利用客数(万人、推定))× 価格 18,894(1 人当たり売上(円、推定))→ 売上 151 億円・営業利益 14 億円。改装の効果は出るが利益率は 1 桁
倍率:事業の純利益 117 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.7% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.8 倍。全体の PER 17.79 倍、時価総額 2,081 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:室数の増加と単価の上昇が続くが、山に近い利益率は落ち着く。強気と慎重な見方の落としどころ。
やや悲観 25% 供給過多で客室単価が物価に追いつかない10年 利益 70 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,488 円892 億円
外国人客の伸びが鈍り、都心のビジネスホテルでは東横イン、アパホテル、相鉄フレッサイン、ダイワロイネットなどが新規の客室を足し続ける。WHG事業の客室単価は物価を下回って上がり、稼働率も落ちる。室数は計画に届かず、利益率は15%まで下がる。賃借の家賃は物価で上がるが売上は伴わず、固定費が重くなる。椿山荘は婚礼の減少が続き、箱根は国内客が伸びない。純利益は今の3割減になる。優良とは言えない水準だが、赤字までは落ちない。この筋書きでは、いまの好調が一巡し、2019年12月期までの薄利に半分戻る。配当は出せるが、改装と運営の更新で稼ぎの多くが消える。株主に残る利益は小さく、新しく投じるお金も、資本コストをようやく賄う程度の稼ぎしか生まない。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年3億円×10年×0.8=22.5億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- WHG 事業(ワシントンホテル等):数量 11,500(総客室数(室))× 価格 0.05(1 室当たり年間売上(億円。客室単価×稼働率を含む))→ 売上 629 億円・営業利益 94 億円。供給過多で客室単価が物価に届かず、室数は計画未達、利益率 15%
- ラグジュアリー&バンケット事業:数量 125(延べ利用客数(万人、推定))× 価格 16,834(1 人当たり売上(円、推定))→ 売上 210 億円・営業利益 11 億円。婚礼・宴会が減り固定費が重い
- リゾート事業:数量 70.0(延べ利用客数(万人、推定))× 価格 17,625(1 人当たり売上(円、推定))→ 売上 123 億円・営業利益 7 億円。国内客の伸び悩み
倍率:ROE 8.2% は k 8% と同じ水準で、新しく投じるお金が k しか稼がないので正当化 PER は 1÷k = 12.1 倍が上限。稼ぎの山が過ぎた筋書きで、上限の約 7.4 割(9.0 倍)に置く。
確率:新規供給の増加と、需要の伸びの鈍化が重なる筋書き。薄利の歴史から見て、この筋書きには強い根拠があるので確率を高めに置く。
悲観 14% 供給過多と買収の失敗が重なり、賃借の固定費が利益を食う10年 利益 15 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 188 円113 億円
低価格ホテルの新規供給と、外国人客が韓国や東南アジアへ分散することで、WHG事業の客室単価は伸びず、稼働率が落ちる。賃借ホテルの家賃は固定で、利益率は7%まで下がる。ファンドとの提携で買った物件も、高値づかみで期待した稼ぎが出ない。椿山荘は婚礼と宴会が縮み、箱根は投資の回収が進まず、どちらも採算がゼロ近辺になる。コロナ前の薄利の姿に戻り、減損も出て自己資本が減る。ホテル不動産の一部を売って凌ぐが、成長企業ではなくなる。この筋書きでは、いまの利益の水準は一時のものだったと分かる。コロナ前の薄利と同じ構造に戻り、運営を軽くした転換も、需要が崩れれば固定費の重さを隠せない。堀は残らず、普通のホテル会社として低い倍率で売買される。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年3億円×10年×0.5=15億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- WHG 事業(ワシントンホテル等):数量 10,000(総客室数(室))× 価格 0.05(1 室当たり年間売上(億円。客室単価×稼働率を含む))→ 売上 479 億円・営業利益 34 億円。低価格ホテルの新規供給と外国客の分散で客室単価が伸びず、固定の家賃が残り利益率 7%
- ラグジュアリー&バンケット事業:数量 100(延べ利用客数(万人、推定))× 価格 14,814(1 人当たり売上(円、推定))→ 売上 148 億円・営業利益 0 億円。婚礼・宴会が縮み固定費だけが残る
- リゾート事業:数量 60.0(延べ利用客数(万人、推定))× 価格 15,510(1 人当たり売上(円、推定))→ 売上 93 億円・営業利益 0 億円。投資の回収が進まず採算がゼロ近辺
倍率:ROE 2.7% は k 以下。正当化 PER の上限は 1÷k = 12.1 倍で、稼ぐ力(純利益 ÷ k = 約 180 億円)の約 6 割(7.5 倍)に置く。構造的に負けた姿で利益の振れも大きいので、やや悲観の 9.0 倍より低く置く。床は事業の稼ぐ力で測る(所有地の含み益は開示で確かめられず入れていない)。
確率:需要の頭打ち、新規供給の増加、買収の失敗が重なる構造的な負け。コロナ前の薄利の実績があり、起これば打撃が大きいので確率は低くない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
WHG 事業(ワシントンホテル等)
ワシントンホテル、ホテルグレイスリー、フィフスなど国内外 34 軒の宿泊事業。直営・賃借・FC・運営受託が混ざる。
| 数量総客室数(室) | 価格1 室当たり年間売上(億円。客室単価×稼働率を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 10,800 | 0.05 | 492 | 115 |
| 10 年後 中立 | 12,000 | 0.06 | 733 | 147 |
取り方:国内外 34 軒で約 1.08 万室。売上 492 億円を室数で割り、1 室当たり年間売上(客室単価と稼働率の積)を出した。室数は実質の量、1 室当たり売上は名目で、中立は 10 年 1.34 倍(物価並み)。
ラグジュアリー&バンケット事業
ホテル椿山荘東京と婚礼・宴会・レストラン。
| 数量延べ利用客数(万人、推定) | 価格1 人当たり売上(円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 150 | 13,467 | 202 | 15 |
| 10 年後 中立 | 145 | 18,046 | 262 | 21 |
取り方:開示は売上のみで、宿泊・宴会・婚礼・飲食の延べ利用客を年 150 万人と推定し、売上 202 億円から 1 人当たりを逆算した(推定)。人数は婚礼件数の減少で減りやすく、単価には物価が乗る。
リゾート事業
箱根小涌園などの宿泊・日帰り・飲食。
| 数量延べ利用客数(万人、推定) | 価格1 人当たり売上(円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 80.0 | 14,100 | 113 | 9 |
| 10 年後 中立 | 80.0 | 18,894 | 151 | 14 |
取り方:開示は売上のみで、延べ利用客を年 80 万人と推定し、売上 112.8 億円から 1 人当たりを逆算した(推定)。国内客が中心で人数は伸びにくく、単価に物価が乗る。
リスクと懸念
利益率が山から落ちる
営業利益率は直近で17%まで上がったが、コロナ前の10年は数%だった。外国人客の増加と客室単価の上昇が止まれば、利益は一気に縮む。2026年の営業利益は、改装の売り止めで下がる見込みだ。
賃借ホテルの固定費
WHG事業には賃借の物件が多く、家賃は売上が落ちても減らない。需要が崩れると、利益は売上の落ち幅よりずっと大きく落ちる。新リース会計基準で、2028年3月期ごろからは負債が貸借対照表に載り、見かけの財務は弱く見える。
新規供給の増加
東横イン、アパホテル、相鉄フレッサイン、ダイワロイネットなどが毎年客室を足している。需要の伸びが鈍る中で供給が増えれば、客室単価の上昇が止まり、稼働率が落ちる。
買収の失敗
筆頭株主の日本産業推進機構と、ホテル運営会社の取得や地域の宿泊施設の一括取得を進める方針だ。値段が高ければ価値を壊し、稼ぎを株主に戻さず使う分だけ、失敗の影響が大きい。
感染症・天災・地政学
2020年12月期は営業損益が大きな赤字になり、自己資本比率は1%台まで落ちた。外国人客が6割近い構造は、外交や為替、感染症の影響を受けやすい。
筆頭株主の売却
筆頭株主はファンドで、一般に数年で持ち分を売る。売却先や売り方次第で株主構成と経営の方向が変わる。アパグループも4.5%を持つと報じられ、再編の思惑も出やすい。
今後の分かれ目
- 2026年の改装後も、WHG事業の客室単価が前年を上回り続ける
- 山ではなく構造で利益率が上がったことになり、やや楽観・楽観の筋書きに近づく。
- 外国人客の宿泊が前年割れに転じる
- 客室単価と稼働率が同時に落ち、利益率の落ち込みが想定より早まる。やや悲観の筋書きに近づく。
- 日本産業推進機構との提携で、適正な値段でホテル運営会社を取得できる
- 室数が計画を超えて増え、楽観の筋書きに近づく。値段が高ければ逆に価値を壊す。
- 筆頭株主が持ち分を市場で売り出す、または事業会社に譲る
- 株主構成が変わり、非公開化や再編に進む可能性が上がる。
- 同業の新規供給が都心で急増し、稼働率が落ちる
- 客室単価の上昇が止まり、賃借の固定費が利益を圧迫する。やや悲観に近づく。
- 配当性向を引き上げる、または自社株買いを始める
- 資本を株主に戻す姿勢が示され、買収の失敗リスクを割り引ける。
見ておくもの
- WHG 事業の客室単価と稼働率の四半期ごとの動き
- 外国人宿泊者数の前年比
- 日本産業推進機構との提携による買収の発表と値段
- 配当性向と自社株買いの有無
倍率と資本コストの決め方
倍率は、今の PER や PBR、同業の倍率を使わず、利益ベースの正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) から置いた。k は基本 7.5% に quality 0.75% を足した 8.25%、g は 4%、RONIC = k + 残る割合 1/2 ×(ROE − k)。薄利の歴史と山に近い今の利益率を理由に、中立は上限の約 7.6 割に置いた。今のトレーリング PER(約 20 倍)や PBR は使っていない。10 年後の数字は、家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえた(2028年3月期以降の新リース会計基準では負債と営業利益の形が変わるが、本質価値はほぼ同じ)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13→18.23 倍・やや楽観 PER 12→18.17 倍・中立 PER 11→17.79 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。