結論
リブ・コンサルティングは、大企業から中堅企業、成長企業まで、経営戦略を現場で実行する支援を売る会社だ。筆者の結論は「割高」である。顧客に深く入り込む技術はあるが、AIエージェントが人の調査、分析、資料作成、業務改善の実務を引き受ける時代には、過去の人員増と利益成長をそのまま10年先へ延ばせない。
2025年12月期は売上高61億円、営業利益8億円まで伸び、2026年上期にもコンサルタントの増員と一人当たり売上高の上昇が確認できる。AI関連案件の受注金額は前年同期比86%増え、上期受注の21%を占めた。これは新しい需要を取れている証拠だが、同時に顧客がAIを使えるようになるほど、従来の人月契約が不要になるという矛盾を抱える。会社自身も2026年8月、人材・AI投資のため通期営業利益予想を約21%下方修正した。
純現金は約24億円あり、資金繰りに追われる会社ではない。しかし配当や自社株買いの実績がなく、創業者を含む役員の持株比率が高い。余剰資金が少数株主に届く確度を割り引く必要がある。さらに上場時から残る新株予約権が将来の一株当たり取り分を薄める。人を増やして売上を作る会社から、成果に対して継続的に対価を取る会社へ転じる証拠が積み上がるまでは、厚い安全域なしには長く持ちにくい。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主が欲しいのは、将来何人雇えるかではなく、顧客が毎年その会社に払わずにはいられない理由である。リブ・コンサルティングは社内に事例を蓄え、顧客の経営陣や現場から信頼を得ている。成長企業と中堅企業の間を横断して実務を教えられる人材もいる。この蓄積には値打ちがあり、採用から育成までを一貫して設計する力を軽視すべきではない。
それでもオーナー利益を考えると、人件費と採用費の負担は逃せない。優秀な人材に高い報酬を払わなければ品質が落ち、増員を続ければ育成期間の費用が先に出る。AIによって調査や提案書の作業時間が短くなることは、提供者の生産性を上げる一方、顧客の支払う人月を減らす。利益率が一時的に伸びた年を永続の基準にすることはできない。顧客成果に連動する対価を継続して取れるか、その数字がこれからの本当の試験である。
財務には好感を持てる。借金がほぼなく、現金は売上規模に比べて厚い。これは厳しい景気局面でも採用や技術投資を続ける選択肢を与える。しかし現金の持ち主が経営者と少数株主であることは同じではない。無配を続け、現金を次の買収へ使うなら、買収が資本コストを超えて利益を生まなければ価値は増えない。株式報酬による持分の希薄化も避けて通れない。
筆者が欲しい安全域は、AI時代の人月需要が減っても支えになる値段との差である。今はその余白が十分ではない。中期計画の成長率が達成される可能性より、その後の十年も顧客が価格を引き上げて払い続ける証拠の方を重視したい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は、顧客の経営課題に担当チームを付け、戦略策定から事業開発、営業改革、組織改革までを手伝い、契約した期間や仕事量に応じて報酬を受け取る形だ。2025年の連結売上の86%はビジネスコンサルティング、14%はIT・DXコンサルティングである。これは会社が示すサービス領域別の管理区分であり、制度上の報告セグメントは「コンサルティング事業」の一つである。
主力のビジネス領域では、新規事業の構想だけでなく、営業組織の立て直しや事業計画の実行まで社員と並走する。売上構成は会社単体で大企業33%、中堅中小43%、ベンチャー24%と顧客の広さが特徴だ。IT・DXではSFAやCRMと呼ばれる営業管理ソフトの導入、プロジェクト管理、AIを使う業務改革が中心となる。2024年取得のGoofyは営業管理システムの実装、2025年取得のFlow Groupは外部の専門人材とのマッチングを補う。
一人の専門家が何か月顧客のために働き、月々いくら売り上げるかが本業の経済単位である。2025年末の本体コンサルタントは188名で、2026年上期末には196名となった。本体の上期一人当たり売上高は前年の1,310万円から1,400万円へ上昇した。ただしこの数字はサービス別にも子会社別にも公表されていない。数量と単価の欄では、人員、稼働率、総売上とサービス別売上構成を組み合わせた「延べ請求人月換算」を推計し、実測の契約件数と取り違えないよう区別した。
同社は営業支援SaaSのアンバサダークラウドも案内するが、独立した継続課金売上や解約率は開示されていない。会社の柱となるのはまだ人の工数によるサービスであり、ソフトウエア会社としての継続課金倍率を全社に与えるのは早い。
優良さと弱いところ
強みは、課題を聞いて終わらず顧客の現場で仕事を進める実行力にある。会社は累計一万件以上のプロジェクト実績を示し、2026年上期の満足以上という回答は91.5%に達した。スタートアップの事業開発と中堅企業の営業現場で得た知見を大企業の案件へ運ぶこともできる。採用面での受賞歴と社員教育の仕組みは、成長期の人材確保を助ける。
ただし、評判の良さと乗り換えられない堀は違う。案件は期限付きで、顧客は毎年予算と外注先を選び直せる。法定の記録を預かる制度的な独占も、解約率5%未満という数値も、値上げを繰り返して通した実績も確認できない。集合知をAIで検索できるようにする取り組みは有益だが、顧客や競合も同じ技術を使える。独自事例の数だけで、規制に守られた情報基盤と同じ堀とは評価できない。
2025年のROEは20.7%と高いが、2023年は赤字であった。2025年は一般管理費の伸びが売上より低かった効果も大きく、毎年利益率を改善できるわけではない。2026年のAI関連受注の拡大と社内での高いAI利用率は評価に値するものの、それが成果報酬や継続ライセンスへ移った金額は分からない。新しく投じる資金が資本コストを超えて稼ぎ続けるかは、買収後の営業利益、現金創出、顧客単価の動きで確かめる必要がある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本のコンサルティング需要は、企業の人手不足と事業変革を追い風に拡大してきた。IDCの2026年6月時点の調査では、国内ビジネスコンサルティング市場は2025年に約8,822億円、2030年に約1兆4,064億円と見込む。ITコンサルも加えた市場は2025年に約1兆4,554億円で、IT部分は差し引き約5,732億円になる。会社資料の2030年の対象市場約4.2兆円は定義が異なる広い潜在市場であり、IDCの実際の支出額と同じ分母にはできない。
この物差しでは同社の2025年のビジネス領域売上は国内市場の約0.60%、IT・DXは約0.15%に当たる。ただし前者にはハンズオン支援、後者には実装支援や子会社売上が含まれ、厳密な市場占有率ではなく比較のための代理値だ。競合にはベイカレント、船井総研、アクセンチュア、デロイト、PwC、シグマクシスのほか、顧客自身の企画部門がいる。ベイカレントの2026年2月期売上高は約1,483億円と同社より一桁以上大きい。顧客別に区切った同一範囲の競合シェアは公表されていない。
今後の最大の不確実性は、サービスへの支出が増えても、専門家が請求できる人月が増えるとは限らないことだ。AIは市場調査、業務整理、設計書作成の価格を下げ、企業の内製化も進める。反対に、経営者の合意形成や現場の組織変革には人間が残りやすい。2026年の会社資料ではAI関連受注が全体の21%に育っているが、これが従来の仕事を置き換えた純増かどうかは開示されていない。2030年までの市場拡大予測を2035年まで直線的に延長せず、人月ベースでは縮む可能性を中心に考える。
資本政策と M&A
経営陣は2026年8月の説明資料で、2026〜2029年の年平均成長目標を売上高20%、営業利益40%とした。2026年の修正予想を起点にすれば、2029年の水準は計算上、売上約124億円、営業利益約24億円に相当する。これは会社が別途保証した絶対額ではない。2026年通期は先行的なAI投資約2.5億円を理由に、営業利益の予想が約11億円から約9億円へ下がっている。ROE、DOE、配当性向、総還元性向、自社株買い額について、中期計画で数字の約束はない。
買収ではGoofyとFlow Groupを傘下に置き、会社は買収後の増益を公表している。ただし観測期間は短く、完全な投下資本利回りは示されない。買収の規律として、のれんを純資産以内、取得後2年以内のEPS増加、3年以内にROICを想定資本コスト10%超、純負債をEBITDAの3倍未満とする条件が明示されている。これは健全だが、今後の案件でも守れるかが肝心である。
過去の配当と自社株買いは確認できず、2026年も無配予想である。最大株主は約58%を持ち、上位3名だけで約71%を占めるため、余剰現金の株主への戻り方は慎重に評価する。未行使の新株予約権は約96万株で、全行使時には既存株主の取り分が約87%に縮む。上場後の追加公募分の資本増加と、行使代金の会社への流入は別に勘定した。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
現場への伴走を請け負う仕事は、資料を自動生成するAIだけでは完成しない。新規事業を動かすときには顧客企業内の部門間調整、営業組織の立て直し、役員の意思決定を支える責任が要る。リブ・コンサルティングはそうした実行領域で一万件を超える知見を積み、顧客満足度も高い。企業規模を横断した経験が案件紹介と共同受注につながる点は、大手の定型的なコンサルティングとの差別化になる。
AIを脅威だけと見るのは行き過ぎである。2026年上期にはAI関連プロジェクトが受注金額の21%に達し、その受注は前年同期から86%増えた。社内で日々AIを使う社員が98%に達し、一人当たりの売上も増えている。実装支援まで提供し、社内の人的作業を削りながら顧客単価を維持できれば、稼働率と原価率を同時に改善できる。Preferred Networksとの共同開発も、新しい受注源への足掛かりだ。
加えて純現金の厚さは経営の選択肢を広げる。買収したGoofyやFlow Groupは報告上、統合後の利益が伸びている。中期計画が示す投資規律を守り、顧客紹介と外部人材の融通によって買収先が育てば、採用だけに頼らず案件を増やせる。AI時代にも人が責任を持つ仕事が残り、その部分に顧客が従来以上の料金を払うなら、利益の質も市場での評価も見直される余地がある。
慎重な見方
これまでの収入は、コンサルタントが何か月顧客に入ったかに強く左右されてきた。AIエージェントは情報収集、分析、企画書、ソフトの設定や業務設計を引き受けるだけでなく、顧客自身がその成果を組織内で使う手順を簡単にする。顧客企業の企画担当者が少人数で外注の役割を果たすようになれば、会社の受注が増えている今でも十年先の総人月は減る。価格を物価並みに上げても、請求できる工数の消失を埋め切れない。
一万件の支援履歴があることと、顧客のシステムに代替不能な形で組み込まれていることは別である。契約の長期継続率も、法令対応に伴う値上げの実績も十分には公表されていない。AI案件の21%という数字は受注構成比であって、利益や継続課金の構成比ではない。人材不足への投資が高値採用につながり、退職と育成費が重なれば、案件が増えても利益は残らない。2026年の通期利益予想の引き下げは、その小さな例である。
さらに創業者の支配力が強く、配当は未実施である。余剰現金を買収に投じ、成果が出なければ、現金の厚さ自体は少数株主の保護にならない。GoofyとFlow Groupの買収効果は短い期間の比較であり、投資額との厳密な利回りは不明だ。上場前に発行された新株予約権は既存株主を希薄化させる。低い営業利益率に戻るだけでなく、社員を減らす固定費と買収のれんの処理が重なれば、継続企業としての価値は現金の床に近づく。
どちらに重みを置いたか
現場伴走とAI実装の実績は軽視できず、受注の増え方には明確な上向きの証拠がある。しかし、十年を通した人月の耐久性を示す契約継続率や成果報酬売上の開示は足りない。2026年の利益下方修正、無配と強い株主支配、未行使の新株予約権という会社固有の事情を踏まえ、上側28%に対し下側40%とした。AIの技術的代替は中立の工数と長期成長率で既に織り込み、確率で同じ被害を重ねていない。結論は、事業は残っても現在の時価総額には長期の安全域が足りない、である。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 955 円63 億円(+ 還元の換算額還元の合計 47 円3 億円)。 今の値に割り戻すと 485 円32 億円、今との差 −47.3%、 期待の年率 +0.9%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 2,108 円140 億円 | 131 円9 億円 | +143.5% | +9.7% | 224 円15 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,545 円103 億円 | 92 円6 億円 | +77.9% | +6.1% | 295 円20 億円 |
| 中立 | 32% | 994 円66 億円 | 53 円3 億円 | +13.8% | +1.3% | 335 円22 億円 |
| やや悲観 | 25% | 401 円27 億円 | 0 円0 億円 | −56.4% | −8.0% | 100 円7 億円 |
| 悲観 | 15% | 316 円21 億円 | 0 円0 億円 | −65.7% | −10.1% | 47 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 955 円63 億円 | 47 円3 億円 | +8.8% | +0.9% | 1,001 円67 億円 |
今の株価時価総額 920 円61 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% AIを使いこなす実行支援が残る 利益 11 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,108 円140 億円
企業はAIに何を任せ、何を人に任せるかで迷い続ける。リブ・コンサルティングは現場での意思決定と営業改革を握り、AI導入を実務の成果に変える役割を広げる。Preferred Networksとの連携やGoofyのSFA導入が実案件につながり、AI関連受注が一時の流行で終わらず顧客の継続予算に入り込む。成果を求める顧客から、物価に見合う単価上昇を受け入れてもらう。
2035年の人月は主力・IT領域とも2025年並みを維持し、売上高は約82億円、営業利益は15億円を超える。国内市場全体が拡大しても、請求人月を守れるのは実行案件を選び取ったからであり、契約件数の独占を前提としない。M&Aは取得後の利回りと現金回収を厳しく点検し、グループの顧客紹介が奏功する。創業者は上場後の資本市場との対話を強め、遅れていた利益還元にも着手する。
AIで市場調査を大量に作る仕事には戻らず、人間の実装責任に対価が残る姿である。ただし会社が受注金額として示すAI関連の割合を、すべて継続ライセンス売上に変えられるとまではみない。継続するのは人が責任を取る工数であり、十年後の高収益がさらに名目成長し続けるわけではない。
- ビジネスコンサルティング(戦略・ハンズオン):数量 1,850(年当たり延べ請求人月換算(人月、実質、推計))× 価格 0.04(人月当たり平均売上(億円/人月、名目、推計))→ 売上 70 億円・営業利益 14 億円。実質請求人月1,850、単価は2025年比1.34倍。AIエージェント代替を工数に織り込む。
- IT・DXコンサルティング(SFA・CRM・AI実装):数量 320(年当たり延べ請求人月換算(人月、実質、推計))× 価格 0.04(人月当たり平均売上(億円/人月、名目、推計))→ 売上 11 億円・営業利益 2 億円。実質請求人月320、単価は2025年比1.34倍。AI導入支援と内製化の両面を見る。
倍率:AIエージェント代替の人月型で長期名目成長g_long=0%。k=7.75%、弱い堀を勘案したRONICにかかわらず、g=0なら正当化PER=(1−0/RONIC)/(0.0775−0)=12.90倍。10年末の総純利益10.70億円から余剰現金70億円の税後金利1.4%分を外し、事業利益×12.90倍に余剰現金の戻り方50%を加える。市場・過去のPERは不使用。
確率:AI案件の受注構成比21%・前年同期比86%増と顧客満足度91.5%を、10年先の工数の維持に変えられる最良の展開。ただしAI事業の金額規模がまだ小さく継続料金は不明なので確率は限定する。
やや楽観 18% 実装支援で減った人月を補う 利益 8 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,545 円103 億円
大企業のAI業務改革や中堅企業の営業変革で、現場への伴走需要が残る。会社はAIを使って社内の資料作成を短縮し、顧客の事業計画を実行する仕事に人を振り向ける。AI領域の受注割合は高く、Goofyの導入支援とFlow Groupの外部人材を組み合わせることで、一件ごとの受注額がやや大きくなる。
それでも顧客が自分で調査を完結できる範囲は広がるため、十年後に人が請求する工数は2025年をやや下回る。主力人月は約84%、IT領域は約92%に落ち着き、単価の上昇と採用の効率化で売上高は約69億円を確保する。売上増だけに頼らず、顧客紹介を生かして採用費の伸びを抑え、営業利益率を高める。
買収は小規模で統合実績が見える案件に絞る。年次の報酬支払いと案件原価を厳しく管理することで、2023年のような利益の落ち込みを繰り返さない。成長速度は会社の中期目標ほど長く続かないが、AIが人月を減らす効果と実行支援への需要がほぼ釣り合う十年となる。
- ビジネスコンサルティング(戦略・ハンズオン):数量 1,554(年当たり延べ請求人月換算(人月、実質、推計))× 価格 0.04(人月当たり平均売上(億円/人月、名目、推計))→ 売上 59 億円・営業利益 10 億円。実質請求人月1,554、単価は2025年比1.33倍。AIエージェント代替を工数に織り込む。
- IT・DXコンサルティング(SFA・CRM・AI実装):数量 294(年当たり延べ請求人月換算(人月、実質、推計))× 価格 0.03(人月当たり平均売上(億円/人月、名目、推計))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。実質請求人月294、単価は2025年比1.28倍。AI導入支援と内製化の両面を見る。
倍率:AIエージェント代替の人月型で長期名目成長g_long=0%。k=7.75%、弱い堀を勘案したRONICにかかわらず、g=0なら正当化PER=(1−0/RONIC)/(0.0775−0)=12.90倍。10年末の総純利益7.60億円から余剰現金61億円の税後金利1.4%分を外し、事業利益×12.90倍に余剰現金の戻り方50%を加える。市場・過去のPERは不使用。
確率:買収した事業とAI案件の実績を生かせるが、初級作業は代替されるため工数維持までは見込まない。人月が8~16%減っても値上げで埋める展開。
中立 32% 顧客は残るが請求工数が減る 利益 5 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 994 円66 億円
顧客はDXや新規事業への投資を続けるが、外注する工数の中身が変わる。情報収集、競合分析、資料作成、SFAの定型設定は、AIエージェントか顧客の内製チームが担う。人の支援が要るのは、経営陣の合意形成や、営業社員を動かして成果を出す最後の段階に絞られる。これまでの豊富な知見は残るが、請求できる月数までは守れない。
2035年の主力人月は2025年の68%、IT領域は71%になる。会社は特定分野の専門家に絞り、人員を減らしながら、物価上昇の大部分を料金に反映する。売上高は約53億円、営業利益は約6億円となる。案件単価の改善よりも、定型工数の減少が売上に強く効く。国内コンサル市場の公表予測が伸びていても、2030年以降の人月需要に同じ成長率を当てはめない。
2026年上期のAI案件の勢いは、最初の数年には業績を押し上げる。しかし今の積極的な採用投資は、時間がたつほど見直しを迫られる。買収は選別し、投資済みの現金の一部は資金として残るが、配当の数字の約束はない。株主に十分な利回りが届くには、将来の継続課金や成果報酬の開示が必要である。
- ビジネスコンサルティング(戦略・ハンズオン):数量 1,258(年当たり延べ請求人月換算(人月、実質、推計))× 価格 0.04(人月当たり平均売上(億円/人月、名目、推計))→ 売上 45 億円・営業利益 6 億円。実質請求人月1,258、単価は2025年比1.27倍。AIエージェント代替を工数に織り込む。
- IT・DXコンサルティング(SFA・CRM・AI実装):数量 227(年当たり延べ請求人月換算(人月、実質、推計))× 価格 0.03(人月当たり平均売上(億円/人月、名目、推計))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。実質請求人月227、単価は2025年比1.20倍。AI導入支援と内製化の両面を見る。
倍率:AIエージェント代替の人月型で長期名目成長g_long=0%。k=7.75%、弱い堀を勘案したRONICにかかわらず、g=0なら正当化PER=(1−0/RONIC)/(0.0775−0)=12.90倍。10年末の総純利益4.50億円から余剰現金55億円の税後金利1.4%分を外し、事業利益×12.90倍に余剰現金の戻り方50%を加える。市場・過去のPERは不使用。
確率:人月型である実態と2026年のAI導入受注増の両方を反映する中心。人口減だけでなくAIによる定型業務の内製化が進み、主力人月が0.68倍、IT人月が0.71倍に縮む。
やや悲観 25% 外注期間の短縮と価格圧力 利益 2 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 401 円27 億円
AIエージェントが基礎調査や企画書の大半を請け負い、中堅企業ではコンサルへの新規発注が減る。会社は営業力と現場知見で一定の顧客を維持するが、大手のコンサルティング会社と価格の安いAI専門業者に挟まれ、プロジェクトの継続期間が短くなる。契約更新時に価格を上げようとしても、顧客は内製化の方が安いと判断する。
2035年の請求人月は主力52%、IT56%へ減少する。売上高は37億円弱となり、固定の管理費と教育費が重く営業利益は2億円に届かない。売上の減少に合わせて採用を止め、余剰人員を自然減で調整するが、利益率は以前の水準に戻らない。Flow GroupのマッチングにもAIによる直接発注が増え、導入支援はシステムベンダー自身に取り込まれる。
買収は新しい成長を生まず、のれんの一部を処理する。大きな借金はないため事業をすぐに畳む必要はないが、経営は既存顧客の維持を優先し、株主還元を始める余裕もない。稼ぐ力の価値と、残る現金の株主帰属分だけが時価総額の支えとなる。
- ビジネスコンサルティング(戦略・ハンズオン):数量 962(年当たり延べ請求人月換算(人月、実質、推計))× 価格 0.03(人月当たり平均売上(億円/人月、名目、推計))→ 売上 31 億円・営業利益 2 億円。実質請求人月962、単価は2025年比1.15倍。AIエージェント代替を工数に織り込む。
- IT・DXコンサルティング(SFA・CRM・AI実装):数量 179(年当たり延べ請求人月換算(人月、実質、推計))× 価格 0.03(人月当たり平均売上(億円/人月、名目、推計))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。実質請求人月179、単価は2025年比1.10倍。AI導入支援と内製化の両面を見る。
倍率:AIエージェント代替の人月型で長期名目成長g_long=0%。k=7.75%、弱い堀を勘案したRONICにかかわらず、g=0なら正当化PER=(1−0/RONIC)/(0.0775−0)=12.90倍。10年末の総純利益1.50億円から余剰現金35億円の税後金利1.4%分を外し、事業利益×12.90倍に余剰現金の戻り方50%を加える。市場・過去のPERは不使用。
確率:下に寄せる理由:2026年8月に通期営業利益を21%下方修正したこと、無配の創業者支配、定型業務の代替に対する継続率の非開示を考慮。ただしAI減少分は中立にも入れてある。
悲観 15% 人月の半分以上を構造的に失う 利益 −1 億円 · PBR 0.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 316 円21 億円
顧客企業がAIエージェントを自社の営業管理、資料作成、戦略検証へ本格導入する。かつて人を何か月も派遣した改革案件は、少人数の社内責任者がAIを操作して終える。大手コンサルも自社のAI基盤を低価格で提供し、同社の現場伴走だけでは採用予算を守れない。2026年に伸びていたAI関連受注は一時的な導入需要で、顧客が運用を内製化すると新規発注が鈍る。
2035年の主力人月は2025年の43%、IT領域は38%に落ち、売上は約28億円となる。単価もほぼ物価に追いつかず、採用費を絞っても過去の管理機能や顧客支援の固定費が残り、営業損失を計上する。GoofyやFlow Groupの付加価値はAIや直接契約に置き換えられ、取得時ののれんは収益回復に寄与しない。
借入負担は小さいため、早期に確保した現金と売掛金の回収で生き延びる道はある。だが本業の将来利益に高い倍率を付ける理由は失われ、評価を支えるのは2025年末の純現金に近い換金可能資産である。将来の累積損失と縮小による運転資金の回収が相殺すると考え、赤字だからといって今の帳簿純資産に倍率を掛けることもしない。
- ビジネスコンサルティング(戦略・ハンズオン):数量 796(年当たり延べ請求人月換算(人月、実質、推計))× 価格 0.03(人月当たり平均売上(億円/人月、名目、推計))→ 売上 25 億円・営業利益 0 億円。実質請求人月796、単価は2025年比1.10倍。AIエージェント代替を工数に織り込む。
- IT・DXコンサルティング(SFA・CRM・AI実装):数量 122(年当たり延べ請求人月換算(人月、実質、推計))× 価格 0.03(人月当たり平均売上(億円/人月、名目、推計))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。実質請求人月122、単価は2025年比1.06倍。AI導入支援と内製化の両面を見る。
倍率:構造的な営業赤字で事業利益に永久の倍率を付けられないため、2025年末の純現金23.9億円を目安とする税後換金床24.0億円。PBR0.72倍は2025年末の自己資本33.3億円に掛けた資産換価率であり、2035年に積み上がった自己資本47億円には掛けない。取得のれん約4.6億円、繰延費用と売掛金の回収割引、撤退時の約定費用を考慮した。市場の谷のPBRは不使用。
確率:AI内製化、買収失敗、人材流出が重なる場合。業務の種類そのものが変わり、稼ぐ力をほぼ失う一方、借金が少ないため資産の下値が一定の支えとなる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ビジネスコンサルティング(戦略・ハンズオン)
大企業・中堅中小・ベンチャーに対する事業戦略、新規事業、営業改革と実行伴走。連結売上の86%を占めるサービス区分。AI分類は人月・工数型。
| 数量年当たり延べ請求人月換算(人月、実質、推計) | 価格人月当たり平均売上(億円/人月、名目、推計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,850 | 0.03 | 53 | 8 |
| 10 年後 中立 | 1,258 | 0.04 | 45 | 6 |
取り方:2025年連結売上61.1億円×会社公表のビジネスコンサル86%=52.546億円。2025年末の単体コンサル188名、単体の年一人当たり売上26.2百万円、グループ内の関連人材や外注も踏まえ、稼働率相当を調整した請求人月1,850を仮置きし、単価約284万円/人月を逆算した。実契約数もサービス別コンサルタント数も非開示なので、推定人月・単価の組を同時に見る必要がある。営業利益7.7億円は連結利益を売上構成と人件費構造で配賦した推計でセグメント開示値ではない。IDC2025年ビジネス市場8,822億円に対する売上代理シェアは0.596%。AIエージェント代替の『人月・工数で売る』型とし中立人月0.68倍、単価1.27倍、永続成長0%。なお両サービスに配賦した営業利益は計9.0億円で、未配賦の本社共通費約0.6億円を控除して連結営業利益8.4億円と一致させた。
IT・DXコンサルティング(SFA・CRM・AI実装)
SFA・CRM導入、PM・PMO、デジタル業務改革、AI導入支援など。連結売上の14%を占め、GoofyのSFA実装等が含まれる。小規模SaaSもあるが単独の継続課金売上は非開示。
| 数量年当たり延べ請求人月換算(人月、実質、推計) | 価格人月当たり平均売上(億円/人月、名目、推計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 320 | 0.03 | 9 | 1 |
| 10 年後 中立 | 227 | 0.03 | 7 | 1 |
取り方:2025年連結売上61.1億円×IT・DX領域14%=8.554億円。子会社Goofyの導入支援・本体IT人材・外部協力者の合計を延べ請求人月約320と試算すると、平均約267万円/人月となる。会社は案件数・部門別稼働月数を公表せず、人月・単価はいずれも代理推計。営業利益1.3億円は配賦の推計。IDC国内ビジネス+IT市場1兆4,554億円とビジネス8,822億円との差約5,732億円をIT市場分母とすればシェア代理値0.149%。UI型SaaS「アンバサダークラウド」は解約率・売上構成が非開示なので別建ての堀とは認めず、主要なIT/DX領域を人月型とする。中立人月0.71倍・単価1.20倍、永続成長0%。
リスクと懸念
AIエージェント代替
情報収集、業界調査、戦略案、SFA設定、PMOの定型業務はAIと顧客の社内担当者が引き受けやすい。人月型サービスの中立の工数は主力68%、IT71%へ減る想定とした。会社がAI実装の注文を受けていても、それが継続売上か、一度きりの内製化支援かで10年の姿は大きく変わる。
採用・人材原価と稼働率
同社の成長にはコンサルタントの採用と教育が必要だが、2026年は採用前倒しとAI投資で利益計画を下方修正した。人員が増えた直後に案件が鈍れば、賃金、採用費、教育費が先に出る。顧客への請求単価と一人当たり売上の違いを見極めないと、売上増だけで収益力を過大評価しやすい。
買収のれんと統合の失敗
2024年にGoofy、2025年にFlow Groupを買収した。統合後の業績改善は会社が示すが、2025年末には約4.6億円ののれんが残る。買収先の専門人材が流出したり、AIがマッチングやシステム導入の工数を減らしたりすれば、買収価格を回収できず、利益と自己資本の両方を損なう。
創業者支配と余剰現金
最大株主が発行株式の約58%を持ち、役員を含む上位3名だけで約71%を保有する。配当や自社株買いの実績はなく、2026年も無配予定である。現金を積んでも少数株主が使途を決められないため、会社の資産額と株主に返る価値を同一視しない。高値の買収を避け、還元方針を数値で示せるかが大きい。
新株予約権による希薄化
発行済6,647,500株に対し、上場時の有価証券報告書で約959,463株の新株予約権が記載される。全行使すれば既存株主の持分は約87%になる。行使代金は会社に流入するが、現金の追加だけでは持分の薄まりを消せない。行使期限や既行使数の後続開示を継続して確認する。
市場の成長と受注シェアの錯覚
国内コンサルティング市場の予測は名目支出額で、AI導入案件が増える短期の成長を示す。しかし企業の自動化が進む十年後には、同じ仕事の必要人月が減り得る。会社資料の広い潜在市場とIDCの実支出市場も定義が異なる。受注金額の伸びやシェア拡大を、顧客が繰り返し払う工数の持続と取り違えない。
今後の分かれ目
- 四半期の一人当たりコンサルティング売上高が2年以上伸び、在籍コンサルタント数が横ばいでも契約額が伸びたら
- AIによる業務効率が顧客への値下げに渡らず売上単価に残る証拠となり、人月縮小の前提を緩める。ただしSaaSの継続課金とは別に判断する。
- AI関連受注割合が上がる一方、既存顧客の年間継続売上や顧客単価が減ったら
- AI案件が旧来の人月契約を置き換えていると判断し、主力の数量と利益率を悲観側へ寄せる。
- 2029年までに中期目標に近い営業利益率が実現し、買収のROICが10%超と実証されたら
- 買収の資本配分と実行支援の差別化を上方評価し、楽観側の比重を増やす。目標の達成だけで長期のgを引き上げない。
- 配当性向や総還元性向の数値目標を公表し、増配または十分な自社株買いを継続したら
- 余剰現金が少数株主に届くと検証できるため、現金の戻り方0.5の見直しを優先する。
- 新株予約権の大量行使または新たな株式交付を伴うM&Aがあったら
- 行使後の実株数、会社が受け取る資金、利益の増減を照合し、既存株主の取り分を更新する。
- 営業赤字が二期続くか、のれんの大規模減損が発生したら
- 現金の消費と再投資の失敗が同時に進んでいる可能性があるため、悲観の資産床と存続可能性を再検証する。
見ておくもの
- 本体コンサルタント数(2025年末188人、2026年6月末196人)と採用・離職の推移
- 本体の半期一人当たり売上高(2025年上期1,310万円→2026年上期1,400万円)と実際の契約単価・稼働率
- AI関連受注金額の構成比21%と前年同期比86%増の継続性、及び定額収入への転化額
- 2026年修正予想の営業利益約8.7億円と中期2026〜2029年CAGR目標の達成度
- Goofy・Flow Groupの買収後利益、ROIC、のれん残高と追加買収金額
- 未行使新株予約権959,463株の行使と発行済株数、配当・自社株買いの実行
- 手元資金の用途、未収入金と契約負債、利益から現金への転換率
倍率と資本コストの決め方
2025年の売上61.1億円をビジネス86%、IT・DX14%に分け、188名のコンサルタントを手掛かりに請求人月と単価の推計を明示した。人月を物価で増やさず、物価3%の十年分は価格側にのみ含め、AIエージェント代替による工数縮小を中立の数量とg_long=0%にだけ反映した。営業利益は人件費・管理費の変化を含めて積み、純利益には現金の税後利息を含めたが、現金価値には同じ利息を重ねない。資本コストは企業の利益変動と純現金から7.75%とし、長期PERはその正当化式の上限12.90倍で決めた。悲観は2025年末の純現金に相当する24億円を税後換金床とし、2035年に積んだ自己資本へPBRを掛けなかった。創業者支配と未還元の歴史による現金の戻り方0.5、未行使のストックオプションに伴う既存株主の取り分も独立に織り込む。現在のPER、過去の谷の倍率、同業の株価は価値の算定に用いず、最後に2026年10月23日の時価総額と比較した。将来のリース新基準で事務所賃借料のBS表示が変わっても、営業費用込みの利益の物差しでそろえた。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に業績変動と純現金の質を合計した0.25%だけ上乗せ。創業者支配やAI代替を資本コストに重ねない。