結論
ダイブグループは、ホテルや旅館に働き手を送り込む「リゾートバイトダイブ」を収益の柱とする会社である。筆者の結論は「やや割安」だ。観光施設の人手不足は10年後も簡単には解消しない一方、現在の時価総額約49億円は、今後の成長だけでなく、すでに積み上がった現金の価値も十分には映していないと考える。
稼ぎの中心は、宿泊施設で実際に働く人を確保することである。2026年6月期には年間1万5,726人が就業し、観光HR事業だけで約145億円を売り上げた。接客、清掃、調理補助といった現場の仕事は、生成AIが登場したからといって消えるわけではない。人手不足が続く地方の宿泊施設にとって、季節ごとの繁閑に応じて採用を外部に任せられる価値は大きい。
しかし、必要とされる仕事と、仲介会社が手数料を取り続けられることは別の問題だ。AIエージェントは求人の検索、応募者との連絡、面接、就業先の提案を自動化する。施設と働き手が直接つながりやすくなれば、ダイブの営業担当者や求人サイトを経由する理由は薄れる。顧客と求職者の双方を集めた実績は強みだが、値上げを自由に通せるほどの堀ではない。
もう一つの論点は、稼いだ利益の使い道である。会社は地域の宿泊施設運営、SaaS、業務代行、買収へと事業を広げている。これらが既存の人材事業を強くするなら価値は増すが、低収益の宿泊資産に現金を投じ続ければ、帳簿上の利益が株主の利益に変わらない。現在の現金の厚さを評価しながらも、その全額が少数株主に戻るとは考えない。
10年後の中立では、観光HRの就業者数が1万8,700人に増え、全社の純利益は約9億円になる。5つの筋書きの価値を確率でならすと、現在価値は約59億円で、足元の時価総額より約20%高い。ただし大きな安全域ではない。2030年以降のグロース市場の時価総額基準と、AIによる仲介の中抜きを考えれば、利益の伸びと株主還元の実績を確認しながら評価を更新すべき会社である。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、まず10年後にも顧客が喜んで料金を払う仕事が残っているかを問う。この会社が送り出す人材は、ホテルのフロントに立ち、客室を清掃し、食事の提供を支える。観光施設が営業する限り、こうした仕事の多くは必要である。人口が減る地域ほど、その不足を埋める事業には存在理由がある。
しかし、本業の必要性と独占力は違う。求職者はほかの求人サイトでも仕事を探せるし、ホテルは複数の人材会社を比較できる。ダイブの求人情報、勤務先レビュー、施設との長い取引関係は蓄積するほど役に立つ。それでも、価格を上げて顧客が離れないという証拠はまだ十分ではない。強いブランドを持つ企業に支払うような高い評価は避けたい。
オーナー利益を見る際には、純利益だけでなく現金の使い方が重要になる。人材派遣は固定資産が少なく、増えた取引に対して比較的小さい設備投資で対応できる。この性質は魅力だ。一方、地方の宿泊施設を新設・取得すれば、建物の更新、清掃設備、予約集客、人員配置に継続的な現金が必要となる。人材事業が稼いだ資金を、低い資本利益率の事業に移してしまわないかを見る必要がある。
評価したいのは、会社が利益を増やすこと自体ではない。新しい取引先を獲得する費用と、増えた就業者から得られる利益の差が、資本コストを超え続けることだ。採用単価を下げ、同じ施設からの受注を積み増し、現場の仕事を安定して埋められるなら、その再投資には価値がある。反対に、大きな買収を重ねて売上を増やしても現金が残らなければ、株主は豊かにならない。
今の時価総額には一定の安全域があると考えるが、非常に大きいとは言えない。現金の戻り方、AIによる仲介料金の圧縮、2030年の上場維持基準という複数の不確実性があるためだ。高い確信を持って何十年も放置できる銘柄というより、就業者数と資本配分を継続して点検することで価値を判断できる銘柄である。
何で稼ぐ会社か
この会社の本業は、都市部などからリゾート地へ働きに行く人を集め、ホテル、旅館、スキー場、テーマパークなどの事業者に紹介または派遣することだ。求職者には住み込みで働く機会を提供し、施設には繁忙期の採用負担を減らす。売上の大部分を占める派遣では、働いた人の労務費を含む派遣料金が売上に計上されるため、紹介手数料だけの事業とは売上高の意味が異なる。
2026年6月期の観光HR事業売上は約145億円で、全社の約95%を占めた。同事業の売上の約97.9%は人材派遣であり、職業紹介は約2.1%である。年間就業者1万5,726人を売上で割り戻すと、1人当たりの年間売上は約92万円になる。ただし同じ人が年間を通じて働くとは限らず、この数字は時給や月給そのものではない。勤務日数、派遣料金、紹介と派遣の構成が合わさった実績単価である。
施設側の採用担当者には、必要な時期に欠員を埋められる利点がある。求職者には、住居付きの仕事を探せること、勤務先の口コミを読めること、初めての土地で働く際に相談相手がいることが価値となる。会社は約6,882施設との取引関係、8,000件以上の勤務先レビュー、LINEの約24万人の接点を公表している。こうした蓄積は集客費用を抑え、仕事のミスマッチを減らす助けになる。
地方創生事業では、自社ブランド「ザランタン」などの宿泊・グランピング施設を運営し、宿泊客から料金を受け取る。2026年6月期の売上は約8.18億円だが、セグメント営業利益は約0.17億円にとどまった。稼働率、天候、設備の更新費用に左右されるうえ、宿泊施設では客が減っても家賃や人件費が残る。このため、人材事業と同じ収益性を期待すべきではない。
2026年7月には持株会社体制へ移り、観光HRをダイブ、地方創生をダイブローカルなどの事業会社が担う形になった。買収した宿屋塾の研修、施設向けSaaS「ハッサク」、スポット業務代行、外国人材支援も育てている。ただし、これらの独立した売上と利益が十分に開示されていない段階で、将来の大きな利益源として先取りはしない。現状では、本業の派遣による現金創出力が企業価値の大半を決める。
優良さと弱いところ
最大の強みは、観光施設という狭い領域で働き手と雇用主を長年集めてきたことである。宿泊施設には一般的な求人媒体だけでは埋めにくい季節的な欠員があり、求職者には住まいや勤務先の評判を確かめたい事情がある。全国の案件、宿泊施設との接点、勤務経験者のレビューが一緒に存在することで、新しい競合が同じサービスを一から築く手間は大きくなる。
ただし、ネットワークがあることと、価格決定力があることは同義ではない。施設は複数の派遣会社や求人媒体を併用できる。ヒューマニックの「リゾバ.com」、グッドマンサービスの「リゾートバイト.com」、アルファリゾートなどが競争相手になる。求職者を集めるために時給を引き上げれば、派遣料金への転嫁が追いつかない限り利益率は下がる。2026年6月期も就業者数は増えたが、全社の売上総利益率は前年から低下した。
2024年6月期から2026年6月期にかけて売上は約124億円から153億円へ伸び、営業利益も約5億円から8億円へ増えた。ROEも直近では20%を超える。固定資産の少ない人材事業を中心とした会社としては良好だが、2022年の赤字から観光需要が回復した過程を含む。直近数年の利益の伸びを、そのまま次の10年間に延ばすべきではない。
同社はAI面接や求人案内の自動化をすでに導入している。これは採用業務の効率化という点で前向きだが、競争相手や宿泊施設自身も同じ技術を利用できる。採用事務の効率化で減ったコストを会社が利益として残せるのか、手数料の引き下げとして顧客に渡すのかが問われる。ハッサクにも施設の記録が集まる可能性はあるものの、低解約率、法令上の切り替え障壁、継続的な値上げの実績が二つ以上確認できる段階ではない。
堀は弱くはないが、広くもないというのが評価である。ブランドと口コミによる集客の優位は残りやすい。反対に、労働条件の比較、求人検索、面接、日程調整は技術の進歩で模倣されやすい。地域の施設が本当に必要とする現場人材を供給できる限り事業は続くが、そこから得る取り分を守り抜けるかには慎重である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の宿泊需要は、訪日客の増加と日本人旅行者の伸び悩みが同時に起きている。観光庁の2025年宿泊旅行統計では、年間の延べ宿泊者数は約6億6,111万人泊だった。外国人宿泊客が支えになる一方、日本人の延べ宿泊者数は減少している。ホテルの総需要が伸びても、すべての地方の宿泊施設が同じ恩恵を受けるわけではない。都市部への集中や観光地ごとの繁閑が、人材派遣の需要を左右する。
市場の大きさを考える際には、一般の人材派遣市場全体と、同社が実際に競争する観光施設向けの短期・住み込み派遣を区別する必要がある。全国のホテル・旅館等を約5万3,000施設とし、1施設が年間3〜8人分の外部短期人材を使うと仮定する。同社の現在の就業者当たり売上を掛けると、宿泊施設部分だけで年間約1,500億〜3,900億円という粗い市場の規模感になる。これは公表された業界市場規模ではなく、外部人材を利用しない施設も含む仮定である。
同社の観光HR売上約145億円は、この仮の市場の約4〜10%に相当する。ただし、同社の売上には宿泊施設以外も含まれ、推計市場にはテーマパークやスキー場が入っていないため、厳密なシェアとは呼べない。ヒューマニックは多数の求人と取引施設を持つ主要競合だが、各社の累計登録数と当期稼働人数は比較できない。公開情報から確かな全国シェア順位を決めることは難しい。
10年の数量を左右するのは、国内人口全体よりも、地方で働く人の不足と施設の外部採用への依存度である。日本の生産年齢人口が減ることは、派遣される働き手の供給にも逆風となる。他方で、正社員を常時抱えにくい旅館やホテルには派遣を利用する動機が残る。中立では業界全体の宿泊者数が急増するとは考えず、対象施設を増やし、既存施設での利用率を高めることによってダイブの就業者数が増える姿を想定する。
価格面では、物価と賃金が年3%上がる環境を前提にする。ただし派遣料金は労働者への支払いと一体で上がるため、売上単価の上昇がそのまま利益率の改善を意味しない。競合が価格を合わせれば手数料率は圧迫される。外国人材の受け入れ制度や特定技能の運用変更も、施設が誰をどの形で雇うかに影響する。
地方創生事業の市場は、グランピング、地方ホテル、体験型観光が重なり、単一の公的市場規模はない。民間推計には国内グランピング市場を数百億円規模とみるものがあるが、調査範囲が統一されていない。競争相手は他のグランピング施設だけでなく、既存ホテル、貸別荘、旅行予約サイトを通じて販売する宿泊施設全般である。設備投資と稼働率に左右されるため、同事業の売上成長をそのまま本業の高い資本効率に結びつけない。
長期の構造変化としてはAIエージェントによる採用事務の自動化が大きい。受付、求人比較、面接日程の調整、候補者への案内は急速に安くなる。人の仕事そのものが残っても、仲介の工程数と手数料は減りうる。この違いを、人材の実稼働人数と1人当たりの売上、そして利益率の三つに分けて追う必要がある。
資本政策と M&A
2026年6月期の営業キャッシュフローは約8億円で、期末の現金及び現金同等物は約24.9億円だった。有利子負債は約3億円あり、差し引きの純現金は約22億円となる。自己資本は約28億円で、財務は比較的厚い。しかし派遣会社には給与の先払い、繁忙期の立替え、取引先からの入金待ちがある。現金をすべて余剰資産と呼ぶことはできない。
株主還元の実績はまだ薄い。2026年6月期まで普通配当はなく、2027年6月期の会社予想も無配である。自己株式の取得は実施したものの、発行済株式から自己株式を控除した株数は過去数年で2%以上減っていない。創業者と関係会社を含む上位株主への持分集中も強い。余った現金が最終的に少数株主へ渡る割合には慎重な評価が必要だ。
2026年8月に公表された中期的な成長戦略は、観光HRを基盤に、宿泊運営、SaaS、業務代行、官公庁案件、M&Aを組み合わせる構想である。2027年6月期の具体的な予想は売上高170億円、営業利益9.5億円、純利益6.3億円だ。一方、複数年度の売上・利益・ROEの達成目標、および配当性向・DOE・総還元性向・自社株買い総額については、明確な数字の約束を確認できない。
2024年には宿屋塾を買収し、2026年7月には持株会社体制へ移行した。観光施設の採用、育成、運営を一体で支援する方向には事業上のつながりがあるが、買収先の利益や追加投資の回収年数が見えない案件まで高く評価しない。宿泊施設には改修費、設備更新費、家賃といった固定的な負担がある。既存設備の減価償却は過去の取得価額で進む一方、新しい施設の建設・改修には物価上昇後の費用がかかる。
2025年に発行された新株予約権には、将来の売上高等を条件とする行使の仕組みがある。強い成長を実現すれば既存株主の取り分が薄まる点は、上振れの筋書きに反映した。現時点で成立済みのTOB、MBO、決定された上場廃止を前提とする状況は確認していない。ただし2030年以降のグロース市場の新しい上場維持基準は、資本政策に影響する重大な条件になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
地方のホテルや旅館の人手不足は、一時的な景気現象ではなく人口構造の問題である。日本の働き手は減少し、宿泊施設は閑散期と繁忙期で必要な人数が大きく異なる。施設が全員を正社員として雇うのは難しく、住み込みの短期人材を広い地域から集める仕組みは、10年後も必要とされる。ダイブは観光業に集中してきたため、一般的な派遣会社よりも求職者が必要とする情報や、施設が求める勤務条件を理解している。
2026年6月期に年間就業者数は1万5,726人まで増え、主力の売上は2桁成長した。取引施設が約6,900に広がっていることも、まだシェアを伸ばす余地を示す。勤務先レビュー、求人案件、利用者との接点は営業費用を減らす助けになる。求人サイトを通じて一度働いた人が再び利用するなら、案件を増やすほど集客効率も高まる。AI面接や案内の自動化は、営業担当者一人当たりの対応件数を増やす道具になる。
地域の宿泊施設運営は現状の利益が小さいが、ブランド認知と運営経験が積み上がれば利益率を改善できる。宿屋塾の研修、ハッサク、業務代行を組み合わせれば、単なる派遣の手数料以外でも施設から収入を得られる。これらが独立採算で育ち、設備投資を抑えながら既存顧客への販売を増やせれば、本業の顧客基盤の価値は高まる。
現金の厚さも見逃せない。2026年6月末の純現金は約22億円あり、時価総額49億円に対して小さくない。主力事業が今後も利益を積み上げ、大きな買収失敗を避ければ、株主の持つ事業価値と現金の合計は着実に増える。現場の人間を置き換えられないという需要の粘り強さを考えれば、現在の評価は過度に慎重である。
慎重な見方
ホテルや旅館に働き手が必要なのは確かだが、そこからダイブが今と同じ取り分を得るとは限らない。人材派遣会社が提供する価値のうち、求人広告の作成、応募者の選別、問い合わせ対応、求人提案、面接調整はAIエージェントに置き換えられやすい。会社自身がAI面接を導入できていることは、その技術を競合や宿泊施設の採用担当者も使えることを意味する。施設が直接採用を増やせば、仲介を通る案件は減る。
求職者の数にも限りがある。日本の若年人口が減少するなか、住み込みで地方へ移動できる働き手を継続的に確保するには、賃金、交通費、住宅条件を改善し続ける必要がある。施設側の支払い余力がそれに追いつかなければ、派遣料金が増えても仲介会社の粗利は減る。規模が大きい競合と求人広告費を競い続ける状況では、就業者数の増加が利益率の改善につながるとは限らない。
地方創生事業はさらに慎重に見るべきだ。2026年6月期には売上が8億円を超えたものの、セグメント利益はごく小さかった。宿泊施設には天候、観光需要、改修費、家賃の固定負担があり、客室稼働率が落ちればすぐに利益が消える。新規開業やM&Aで売上を増やしても、資本の回収に長い時間がかかりかねない。人材事業の現金を低収益の設備に投じる危険がある。
株主への資金の戻り方にも問題が残る。配当の実績はなく、創業者側の支配力が強い。現金が積み上がっても少数株主がその使い道を決めることはできない。また、グロース市場の上場維持基準が時価総額100億円へ引き上げられる。現在の時価総額のままでは適合できず、資本政策や市場区分の変更、再編を迫られる可能性がある。事業が生き残っても、上場株主にとって期待どおりの結果になる保証はない。
どちらに重みを置いたか
事業の存続については前向きに評価する。観光施設で働く人を実際に手配する機能は、AIだけではなくならない。一方、仲介料金の維持と、新規事業への資本配分には慎重さが要る。中立の就業者数は着実なシェア拡大を前提とするが、強い独占力までは認めない。上側の確率30%に対し、やや悲観と悲観の合計を40%とした。下に寄せる理由は、仲介の自動化、宿泊資産の低い利益率、そして2030年以降の上場維持基準という、この会社に固有の三つの条件である。確率をならした価値は足元を約20%上回るため結論は「やや割安」だが、安全域は限定的である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,486 円125 億円(+ 還元の換算額還元の合計 38 円3 億円)。 今の値に割り戻すと 698 円59 億円、今との差 +18.3%、 期待の年率 +10.1%(資本コスト 8.3%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 3,449 円290 億円 | 93 円8 億円 | +500.3% | +20.1% | 354 円30 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,436 円205 億円 | 71 円6 億円 | +324.9% | +15.9% | 501 円42 億円 |
| 中立 | 30% | 1,732 円146 億円 | 48 円4 億円 | +201.7% | +11.9% | 534 円45 億円 |
| やや悲観 | 25% | 420 円35 億円 | 0 円0 億円 | −28.8% | −3.3% | 105 円9 億円 |
| 悲観 | 15% | 196 円16 億円 | 0 円0 億円 | −66.8% | −10.4% | 29 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,486 円125 億円 | 38 円3 億円 | +158.3% | +10.1% | 1,524 円128 億円 |
今の株価時価総額 590 円50 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 観光人材の全国基盤が広がり、周辺事業も収益化 利益 18 億円 · PER 14.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,449 円290 億円
国内の観光施設は人手不足が続き、派遣会社を利用する割合が高まる。ダイブは勤務経験者の口コミ、求職者との接点、営業担当者の施設理解を生かして新規の取引先を増やす。2036年には年間2万5,500人を就業へつなぎ、現在の約1.6倍の規模へ広がる。ホテルの繁忙期だけでなく、通年利用や外国人材の支援案件も増える。
AI面接や問い合わせ自動化で社内の処理費用は減るが、求人比較などが自動化されるため、職業紹介部分の数量が際限なく増えるとは想定しない。成長の中心は、実際に働く人の派遣と取引施設の増加だ。賃金上昇を派遣料金へ転嫁しながら、採用広告費を抑え、主力の営業利益率は現在より高くなる。
地方創生では、ザランタンなどの宿泊ブランドの施設数を増やし、既存施設の稼働率も改善する。宿屋塾やハッサクは単独の高成長事業とみなさないものの、既存顧客の定着と宿泊施設の収益改善に役立つ。大型買収で資本を毀損せず、利益の多くを現金として残す。高い売上条件を満たす新株予約権の行使により株式数は増えるが、それを上回る事業の成長を実現する。
- 観光HR事業:数量 25,500(年間就業者数(人、会社開示の年間就業実人数))× 価格 0.01(年間就業者1人当たりの観光HR売上(億円/人、派遣料金と紹介料を含む))→ 売上 323 億円・営業利益 35 億円。年間就業者が現在の1.62倍。単価は約1.37倍。施設網と再利用者が増え、採用効率の改善により営業利益率11%を実現する。
- 地方創生事業:数量 106,000(宿泊売上換算の年間延べ人泊(人泊、推計であり実泊数ではない))× 価格 0.00(売上換算人泊当たり売上(億円/人泊))→ 売上 21 億円・営業利益 3 億円。新規施設と稼働率改善により売上換算人泊数が1.83倍。高付加価値の宿泊体験による単価向上を含む。
倍率:資本コストk=8.25%、10年より先の名目成長g=2%、普通の堀の超過利益残存割合1/2を採用する。余剰現金95億円の税後受取利息相当1.33億円を除いた事業純利益は16.97億円。事業に必要な自己資本は139.1−95=44.1億円で、事業ROEは38.5%。RONIC=8.25%+0.5×(38.5%−8.25%)=約23.4%。正当化PER=(1−2%÷23.4%)÷(8.25%−2%)=約14.63倍。中立より好調な10年間の利益の伸びは既に純利益に反映してあり、長期成長率を増やして二重に評価しない。時価総額=(18.3−95×1.4%)×14.63+95×0.5=約295.77億円。
確率:現場人材の不足に加え、競合からのシェア獲得、宿泊施設の新規開設、周辺サービスの採算改善が同時に進む必要がある。既存事業の実績は評価するが、10年間連続して高成長する可能性を高くは見ない。
やや楽観 20% 本業のシェア拡大が続き、地方事業も黒字を定着 利益 13 億円 · PER 14.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,436 円205 億円
地方の宿泊施設は引き続き採用に苦労し、外部の人材サービスを利用する。ダイブは都市部の求職者との接点を維持しながら、未開拓の施設への営業を進める。年間就業者数は2万1,500人まで増え、採用案件の増加が主力の売上を支える。単価はおおむね物価上昇に沿って高くなるが、施設側の支払い余力も考え、実質的な手数料の大幅上昇は見込まない。
AIは応募受付や面接調整の負担を減らし、営業社員一人当たりの取扱件数を増やす。半面、職業紹介の一部は施設の直接採用や自動化された求人検索に移るため、会社全体の高い成長は現場の派遣人数によって説明される。競合のヒューマニックやグッドマンサービスも同様の技術を導入し、独占的な利益率にはならない。
地方創生事業は新しい施設を慎重に増やし、既存施設の稼働率を上げることで営業利益率を改善する。宿屋塾やハッサクは顧客との関係強化に役立つが、大きな独立利益を先取りしない。買収は小規模な補完案件にとどめ、内部留保から必要な投資を賄う。配当は引き続き限定的だが、適度な自己株式取得を通じて株主にも一部を返す。
- 観光HR事業:数量 21,500(年間就業者数(人、会社開示の年間就業実人数))× 価格 0.01(年間就業者1人当たりの観光HR売上(億円/人、派遣料金と紹介料を含む))→ 売上 266 億円・営業利益 27 億円。年間就業者は現在の1.37倍、単価は物価10年分に近い1.34倍。営業効率が改善し、セグメント利益率10%。
- 地方創生事業:数量 90,000(宿泊売上換算の年間延べ人泊(人泊、推計であり実泊数ではない))× 価格 0.00(売上換算人泊当たり売上(億円/人泊))→ 売上 17 億円・営業利益 2 億円。宿泊売上換算人泊数は1.55倍。施設数の増加と稼働率改善により、固定費を吸収する。
倍率:余剰現金76億円の税後利息相当1.064億円を控除した事業純利益は11.586億円。事業自己資本は113−76=37億円、ROEは31.3%。普通の堀の残存割合1/2によるRONICは約19.8%、k8.25%、g_long2%から正当化PERは14.38倍。時価総額=(12.65−76×1.4%)×14.38+76×0.5=約204.61億円。事業の先行成長は数量に織り込み、将来の倍率には重ねない。
確率:既存の施設との取引拡大と採用効率の改善は現実的だが、派遣市場の競争が続く中で利益率を大きく高めるには継続的な実行が必要である。
中立 30% 現場派遣は緩やかに拡大し、仲介の付加価値は薄まる 利益 9 億円 · PER 14.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,732 円146 億円
日本の宿泊需要は訪日客に支えられながらも、国内旅行者数の伸び悩みと地域の偏りが続く。ホテルや旅館では正社員の採用が難しく、季節ごとの外部派遣は必要とされる。ダイブは既存施設との関係を保ち、新規の施設も獲得することで、年間就業者を1万8,700人へ増やす。市場全体が大きく増えるのではなく、競合とのシェア争いに勝ち残ることが成長の源泉となる。
派遣料金は10年間の物価上昇にほぼ沿って高くなる。一方、時給や住宅条件の改善にも費用がかかるため、主力の営業利益率は現在よりやや低くなる。AIエージェントによって応募者との連絡や面接調整が安くなるが、施設側の直接採用も容易になる。会社が蓄積してきた勤務先レビューや求職者との接点は維持されるものの、価格を決められるほどの独占力にはならない。
地方創生事業は施設数と利用者を少しずつ増やす。宿泊単価は物価に沿って上がり、固定費を吸収できる施設が増えるが、新しい施設の開発費や既存設備の改修費も必要となる。2026年に公表した周辺サービスは既存顧客への提供を続けるが、その効果は主力の収益性と本社費用に含め、独立した巨大事業へ育つとは仮定しない。
配当を急に厚くすることはなく、利益の大半は社内に残る。純利益は増えても自己資本はそれ以上の勢いで蓄積し、見かけのROEは過去より低くなる。現金の一部は株主に返り、一部は将来の宿泊事業や買収に使われるため、現金の全額を株主価値としては数えない。
- 観光HR事業:数量 18,700(年間就業者数(人、会社開示の年間就業実人数))× 価格 0.01(年間就業者1人当たりの観光HR売上(億円/人、派遣料金と紹介料を含む))→ 売上 229 億円・営業利益 20 億円。就業者数は10年で1.19倍。単価は1.33倍でほぼ物価相当。競争と賃金上昇によりセグメント利益率は8.9%へ低下する。
- 地方創生事業:数量 76,000(宿泊売上換算の年間延べ人泊(人泊、推計であり実泊数ではない))× 価格 0.00(売上換算人泊当たり売上(億円/人泊))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。宿泊売上換算人泊数は1.31倍、単価は1.34倍。一定の稼働率改善はあるが、更新投資を要する。
倍率:余剰現金65億円に係る税後利息0.91億円を除いた事業純利益は8.01億円、事業に必要な自己資本は96.2−65=31.2億円、事業ROEは25.7%となる。堀は普通で残存割合1/2、RONIC=8.25%+0.5×(25.7%−8.25%)=約17.0%。長期名目成長2%、k8.25%から正当化PER=(1−2%÷17.0%)÷(8.25%−2%)=14.11倍。10年後の価値は(8.92−65×1.4%)×14.11+65×0.5=約145.52億円。事業ROEの計算から余剰現金を除き、別に価値として足すため、二重計上しない。
確率:宿泊施設の人手不足という長期の需要は続くが、国内の働き手の減少とAIによる事務の自動化で、最近の急成長がそのまま続くとは考えない。現場派遣の実需と競争圧力を両方反映した中心の筋書きである。
やや悲観 25% 人材仲介の競争が激しくなり、成長が止まる 利益 2 億円 · PER 10.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 420 円35 億円
宿泊施設の採用難は続くものの、ダイブが仲介する人数は減っていく。ホテル各社はAIを使って求人情報を作り、応募者への連絡や面接を自動化する。求職者は複数の求人媒体から勤務先を比較し、条件が合えば施設へ直接応募する。一般的な求人検索と紹介の価値が薄れ、競合の人材会社も派遣料金の条件を厳しくする。
派遣される人が現場で働く仕事は残るため、売上が突然なくなるわけではない。それでも年間就業者数は1万3,000人へ減り、1人当たり売上の上昇は物価に届かない。時給の引き上げを顧客に完全には転嫁できず、主力の営業利益率は7%へ下がる。採用広告費を削っても、減少した取扱人数の影響を十分には補えない。
地方創生事業では、都市部の宿泊需要に客を奪われ、施設の稼働率が低い状態が続く。宿泊料金は多少上がるが、家賃や従業員配置などの固定費は減らしにくい。地方事業の利益はほぼなくなり、本社費用も物価上昇で重くなる。
創業者主導の経営は続き、積み上がった現金の大部分は事業の維持や投資に使われる。配当や自社株買いは限定的となる。2030年以降の上場維持基準を達成できるか不透明になり、事業再編や市場区分の変更が選択肢に入るが、それによる売却益は先取りしない。
- 観光HR事業:数量 13,000(年間就業者数(人、会社開示の年間就業実人数))× 価格 0.01(年間就業者1人当たりの観光HR売上(億円/人、派遣料金と紹介料を含む))→ 売上 141 億円・営業利益 10 億円。就業者数は現在の0.83倍、単価は1.18倍。AIによる直接採用と派遣の価格競争で、インフレ分を転嫁し切れない。
- 地方創生事業:数量 52,000(宿泊売上換算の年間延べ人泊(人泊、推計であり実泊数ではない))× 価格 0.00(売上換算人泊当たり売上(億円/人泊))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。宿泊売上換算人泊数は0.90倍。宿泊料金は上がるが、家賃、運営人員、広告費の増加で利益が残らない。
倍率:余剰現金45億円に係る税後利息0.63億円を除く事業純利益は1.22億円、必要自己資本は65−45=20億円で事業ROEは6.1%に落ちる。ROEが資本コスト8.25%を下回るため、永続的な再投資の成長価値は加えず、利益による上限1÷8.25%=12.12倍以下で判断する。競争激化後の収益維持には不確実性が残るため、事業PERは10.5倍。現金の株主への戻り方は0.5とし、時価総額=(1.85−45×1.4%)×10.5+45×0.5=35.31億円。現金の帳簿額を将来の株主価値として満額は数えない。
確率:求職者の減少、派遣時給の上昇、AIによる採用事務の中抜きが重なる場合を考える。すでに会社自身がAI面接を導入していることは、競争環境の変化が遠い将来の話ではない証拠である。
悲観 15% 仲介の基盤を失い、地方宿泊事業にも損失が残る 利益 −2 億円 · PBR 0.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 196 円16 億円
AIエージェントを用いた直接採用が宿泊施設で広く定着し、大手の求人プラットフォームも短期・住み込み求人へ本格的に参入する。施設が必要な時期に働き手を探す仕組みは残るが、ダイブを必ず経由する理由が弱くなる。会社は広告費と求職者向けの条件改善で対抗するものの、年間就業者は8,500人まで減少する。人材派遣の粗利は薄くなり、従来の取引先の一部を失う。
現場業務そのものがすべて消えるわけではない。しかし派遣会社が得られる利幅は大きく下がり、主力の営業利益率は5%に低下する。給与の先払い、採用広告、管理体制を維持する負担が残るため、人数減少に応じて費用をすべて落とせない。施設向けSaaSや業務代行も顧客の自動化に巻き込まれ、大きな代替利益源には育たない。
地方創生事業では、低稼働の施設を抱えたまま改修費と家賃が増える。ホテルの閉鎖や減損を迫られ、事業の赤字が本業の利益を食いつぶす。既存の設備は取得時の価格で償却されても、改修や建て替えは高くなった建設費を支払わなければならない。事業全体の営業利益は赤字となり、配当と自己株買いは停止する。
2027年の会社予想を達成した後も、早い段階で収益力を失い、2030年代には複数年の損失と事業整理費用が発生する。10年間の純利益の累計は約7億円の赤字となり、自己資本は現在より減る。上場維持基準に適合できず、再編や市場区分変更を迫られる可能性が高まる。買収者が現れることを前提に高い価値を認めず、残る現金と回収可能な資産を中心に評価する。
- 観光HR事業:数量 8,500(年間就業者数(人、会社開示の年間就業実人数))× 価格 0.01(年間就業者1人当たりの観光HR売上(億円/人、派遣料金と紹介料を含む))→ 売上 91 億円・営業利益 5 億円。就業者数は現在の0.54倍、単価は1.15倍。施設の直接採用と求人プラットフォームへの流出で案件を大きく失う。
- 地方創生事業:数量 40,000(宿泊売上換算の年間延べ人泊(人泊、推計であり実泊数ではない))× 価格 0.00(売上換算人泊当たり売上(億円/人泊))→ 売上 6 億円・営業利益 −1 億円。宿泊売上換算人泊数が0.69倍に減少し、固定費と改修費の負担でセグメント営業赤字となる。
倍率:2036年の純利益が赤字でありPERによる永続価値は不適切なため、損失と事業整理を反映した2036年末の自己資本20.6億円を基準とする。PBR0.8は過去の市場の底値ではなく、回収可能な運転資産と残存現金に対し、低収益事業の継続負担と換金費用を考慮した資産価値の評価である。20.6×0.8=16.48億円となり、別途積算した売却可能資産の税後床16.4億円を下回らない。現在より増えた自己資本に昔のPBRを掛けて価値を膨らませる方法は使っていない。
確率:施設の直接採用が大幅に広がり、求職者の獲得費用も上がり、宿泊事業で固定費負担が残る複合的な失敗を想定する。全国的な宿泊需要が消える必要はなく、ダイブの取り分が大きく縮むだけで成立する筋書きである。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
観光HR事業
リゾートホテル、旅館、スキー場、レジャー施設などに住み込みの短期就業者を派遣・紹介する。売上の約97.9%が人材派遣で、約2.1%が職業紹介である。
| 数量年間就業者数(人、会社開示の年間就業実人数) | 価格年間就業者1人当たりの観光HR売上(億円/人、派遣料金と紹介料を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 15,726 | 0.01 | 145 | 14 |
| 10 年後 中立 | 18,700 | 0.01 | 229 | 20 |
取り方:2026年6月期有価証券報告書で、観光HR売上14,505,330千円、セグメント利益1,359,794千円、年間就業者数15,726人を確認した。売上を年間就業者数で割り、約92.24万円/人を得た。これは働いた人数を分母にした年間売上で、時給や労働者への支払額ではない。人材派遣97.9%、職業紹介2.1%という内訳を用いると、紹介売上は約3.05億円、派遣売上は約142.0億円となる。人材紹介・応募管理・面接調整はPROMPT_AI_RISKの人月・事務系仲介型であり、AIエージェント代替を受ける。中立ではこの部分の実質取扱数量を10年で約0.65倍、単価は物価の1.34倍以下とする。一方、現地で接客・清掃・調理補助をする人の派遣は現場の体を必要とする型で、人数そのものを一律0.65倍にはしない。会社が公表する施設数約6,882、勤務先レビュー8,000件以上、ハッサク導入176施設は集客と営業効率の補足指標であり、独立した追加売上として二重計上しない。
地方創生事業
ザランタンを中心とするグランピング・地方宿泊施設の企画、運営と関連サービス。売上は宿泊客の利用と施設の稼働率に左右される。
| 数量宿泊売上換算の年間延べ人泊(人泊、推計であり実泊数ではない) | 価格売上換算人泊当たり売上(億円/人泊) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 58,000 | 0.00 | 8 | 0 |
| 10 年後 中立 | 76,000 | 0.00 | 14 | 1 |
取り方:2026年6月期有価証券報告書の地方創生売上817,588千円、セグメント利益17,415千円を採用した。宿泊料金の代表水準を約1万4,000円/人泊と仮定し、売上から約5万8,000人泊を逆算した。会社は全施設を通じた実際の宿泊人泊数を示していないため、この数量は宿泊料金だけでなく関連サービス収入も含む売上換算値であり、実宿泊者数の開示値とは区別する。現在は約6地域に施設を展開し、天候、季節性、宿泊客の地域偏在が数量を左右する。市場規模には公的に統一されたグランピング市場統計がないため、施設数・宿泊単価・稼働率の積で考える。SaaSや業務代行は独立した売上・利益が開示されないため、ここに架空の収益を追加しない。
リスクと懸念
AIエージェント代替による仲介機能の中抜き
現場で働く人そのものは必要でも、求人の検索、面接、日程調整、応募者への連絡、求人案内はAIエージェントで自動化できる。観光HR売上の約2.1%を占める職業紹介は直接影響を受け、派遣事業でも採用管理に対する手数料部分は競争にさらされる。会社のAI導入は効率化の助けになるが、施設側にも同じ技術が普及すれば、削減した事務費用を会社が利益として独占できない。
求職者不足と時給引き上げの転嫁遅れ
生産年齢人口が減る日本では、地方へ移動して住み込みで働く人を確保する競争も厳しくなる。ダイブは働き手を集めるために賃金や勤務条件を改善する必要があるが、旅館やホテルには支払い能力の限界がある。派遣料金を引き上げても人件費や求人広告費がそれ以上に増えれば、売上の拡大と反対に利益率は低下する。年間就業者数と売上総利益率を合わせて確認したい。
競合サイトと施設の直接採用
ヒューマニック、グッドマンサービス、アルファリゾートなどの専門競合は、同じ宿泊施設と求職者を対象にする。一般求人媒体や大手プラットフォームも短期就業の募集を強化できる。勤務先レビューやLINEの接点はダイブの強みだが、求職者の複数サービス利用を妨げるものではない。取引施設数が増えても、1施設当たりの取扱人数や利益が減る場合には、ネットワークの価値を見直す必要がある。
地方宿泊施設の設備投資と固定費
地方創生事業は人材紹介とは異なり、宿泊施設の開発、改修、運営人員、広告、賃借料などの支出を伴う。自然災害、悪天候、野生動物の出没、観光客の都市部集中によって宿泊予約が減っても、費用の多くはすぐには減らせない。2026年6月期は売上約8.2億円に対して営業利益が約0.17億円にとどまった。新規施設の開設が収益力を高めているか、資本投下額と営業キャッシュフローで検証すべきだ。
創業者支配と現金の資本配分
創業者と関係会社を含む株主の持分集中が強い一方、会社は無配を続けている。現金を積み上げても、その全額が少数株主に分配されるとは限らない。人材事業で生まれた利益を宿泊施設や周辺サービスの買収へ振り向け、十分な収益を得られなければ価値は減少する。自己株式の取得実績はあるが、純株式数の大幅な減少や具体的な還元率の約束にはまだつながっていない。
2030年からのグロース市場上場維持基準
東証は2030年3月1日以後に最初に到来する事業年度末から、グロース市場の基準を上場5年経過後の時価総額100億円以上へ引き上げる。現在のダイブの時価総額は約49億円で、この基準に届かない。基準未達でも改善期間や適合計画による猶予の仕組みはあるため、直ちに上場廃止が決まっているわけではない。ただし将来は市場区分の変更、事業再編、資本政策の変更を迫られる可能性がある。
新株予約権の希薄化と短い上場実績
成長条件付きの新株予約権は、会社の業績が伸びたときに既存株主の持分を薄める。2025年に発行した175,500株分の予約権は、現在の自己株控除後株式数に対して約2.1%に当たる。業績を伸ばす経営陣への動機付けという効果はあるが、行使後の1株当たりの取り分を確認する必要がある。また2024年上場のため、景気後退を含む上場後の資本配分実績が短いことも評価の不確実性を高める。
今後の分かれ目
- 観光HRの年間就業者数が1万9,000人を超え、1人当たりの売上とセグメント利益率も同時に維持されたら
- 中立の数量前提を上方修正する。就業者数だけでなく、競合との獲得競争に費用を使っていないことを確認できれば、やや楽観の確率を高める。
- 観光HRの年間就業者数が1万4,500人を下回り、2期連続で回復しなかったら
- 人手不足という業界需要が残っていても、同社がシェアを失っている可能性を重視する。中立の数量を引き下げ、やや悲観の確率を上げる。
- 派遣料金の名目単価が上がっているのに、観光HRの利益率が継続的に低下したら
- 時給や広告費の上昇を顧客へ転嫁できていないと判断する。売上成長率だけで評価せず、将来の営業利益率と再投資利回りを下方修正する。
- 地方創生事業が営業利益1億円以上を2期続けて確保し、設備投資後のキャッシュフローも黒字になったら
- 現在は小さく評価している宿泊施設運営の利益創出力を引き上げる。ただし新設施設の取得費や改修費を含む資本利益率も確認し、本業より低収益な投資を無条件には評価しない。
- ハッサクの有料導入施設が大幅に増え、解約率と継続値上げの実績が開示されたら
- 単なる操作画面のSaaSから、施設の継続的な業務記録を担う基盤へ進んでいるか確認する。低解約率など独立した堀の証拠が二つ以上揃った部分だけ、AI代替リスクと長期成長率を再評価する。
- 配当性向や自己株式取得の明確な数値方針が公表され、実際に純株式数が大きく減り始めたら
- 余剰現金の株主への戻り方を現在の0.5から見直す。配当性向50%以上の持続や、十分な純株式数の減少が確認できれば、より高い回収率で現金価値を評価する。
- 2030年以降の判定に向けて時価総額100億円への適合が見通せなくなり、会社が適合計画や市場区分変更を公表したら
- 計画の期限、必要な資本政策、希薄化の有無、再編時の少数株主の取り分を精査する。未発表のTOB価格や上場維持による価値上昇を推測で加えず、発表された条件に応じて筋書きと確率を更新する。
見ておくもの
- 観光HR事業の年間就業者数。2026年6月期の15,726人からの伸びと、1人当たり売上の変化
- 観光HR事業の売上総利益率、セグメント営業利益率、派遣と職業紹介の構成比
- 取引施設数約6,882、勤務先レビュー8,000件以上、求職者との継続的な接点の増減
- 地方創生事業の施設数、稼働率、客室単価、営業利益、改修投資後のキャッシュフロー
- ハッサクの導入施設数、有料化の状況、解約率とAIエージェントへの対応
- 宿屋塾などの買収先の利益、投下資本、買収後の減損や追加投資の有無
- 現金及び現金同等物、有利子負債、配当方針、自己株式取得額と純株式数
- 2028年・2029年の新株予約権行使条件の達成状況と潜在的な希薄化
- 2030年以降のグロース市場時価総額100億円基準への適合見通しと会社の対応
倍率と資本コストの決め方
売上は2026年の観光HR年間就業者15,726人と1人当たり売上約92万円、地方創生事業の売上換算約5万8,000人泊を起点に、各筋書きの数量と名目単価を個別に決めた。物価上昇は単価に含み、人数に重ねていない。営業利益は各事業の利益率と本社共通費用を別々に見積もり、純利益は過去の純利益対営業利益比率約0.64を基本とした。自己資本は現在約27.6億円に10年間の利益累計を足し、株主還元を引く流れと整合させた。倍率は現在や過去、競合の市場PERから採用せず、資本コスト8.25%、10年より先の成長率2%、余剰現金を除く事業ROEとRONICから決めた。AIによる仲介機能の縮小は数量・単価・長期成長率に入れ、資本コストの寿命上乗せで重複させていない。将来の余剰現金は株主に全額戻るとせず、支配構造と還元実績から半分を評価した。2027年7月開始年度からの新リース会計適用による貸借対照表上の表示変更は、事業価値そのものの増減と混同せず、10年後の営業利益は現行と同じ賃借費用を含む基準で比較している。最後に、確率加重後の現在価値約58.6億円を足元の時価総額約49.1億円と比べ、差は約+19.5%であることを確認した。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%、株式リスクプレミアム4.5%による基本7.5%に、事業の循環・値決め力・純現金による品質調整+0.75%を加える。グロース市場の上場維持基準や買収失敗は個別の筋書きと確率に反映し、資本コストへ別途上乗せしない。