結論
セルソースは、整形外科などの医療機関から患者の血液や脂肪を預かり、成長因子の凍結乾燥品や幹細胞に加工して戻す会社だ。ひざの痛みに使う自費の再生医療が稼ぎの柱になる。筆者の結論は割高だ。現金 47 億円は時価総額の 7 割を超えるが、本業の利益は 2022 年の 16 億円から 1〜2 億円まで落ちた。
件数は 2023 年から減り、2026 年にようやく下げ止まった。院内で血液を加工する安いキットや同業の受託が増え、単価を上げる力は弱い。10 年の中立でも、営業利益率は 1 割前後と見る。
現金の扱いも割り引く。創業者の山川雅之氏と資産管理会社で議決権の 46% を持ち、配当は 2026 年に止まった。現金が少数株主に戻る道筋は細く、帳簿の半分ほどしか数えられない。件数が再び伸び始めるまでは、今の値段に見合う価値は出ない。2026 年に戻った 1 割台の利益率がコスト削減の一度きりでなく、件数の増加で続くのか。それを見極めるのが先だと筆者は考える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「一度は高い利益を出したが、その強さが長続きするか見えない事業」だ。PFC-FD は、自費の治療という新しい市場を切り開いた。2022 年に 4 割近い利益率を出したのは、その先駆けの利益だった。
だが、先駆けの利益は続かなかった。院内のキットと同業が後を追い、件数は減った。値段を自分で決める力、つまり本物の堀があれば、件数が減っても単価で守れたはずだ。そうはなっていない。10 年後の利益を自信をもって読める事業ではない。
資本の配分も気になる。現金は積み上がったが、配当はわずかで、消費者向けの新規事業で損を出した。創業者が半分近くを握る会社で、現金の使い道を少数株主は選べない。現金の厚さは下値を支えるが、払う値段に見合う安全域にはならない。件数の回復が数字で確かめられるまで、オーナーとして持ち続けたい事業とは言いにくい。
何で稼ぐ会社か
事業は再生医療関連の 1 本だが、中身は 3 つある。柱は加工受託で、2025 年 10 月期の売上 37 億円のうち 26 億円を占める。患者の血液から成長因子を取り出し、凍結乾燥した PFC-FD という品に加工して医療機関に戻す。医師はそれをひざに注射する。保険の外の自費の治療で、患者が払う額の一部が同社の加工料になる。脂肪から幹細胞を培養する受託や、卵子の凍結保管もある。
加工受託や支援の契約を結んだ提携院は 2,218 院まで増えた。一方で、加工受託件数は年 2 万件前後で、2023 年から減っている。提携院の数は伸びても、1 院あたりの件数が減っているということだ。
2 つめは医療機器の販売で、美容クリニックに脂肪吸引の機器を売る。売上は 8 億円弱で、加工受託の入口にもなる。3 つめは化粧品と消費者向けの新規事業で、細胞の培養液を使った化粧品や睡眠のブランドを手がけるが、赤字が続き、2026 年に在庫の評価損と減損を出して絞り込みに入った。2026 年 7 月に子会社を吸収合併し、決算は単体に変わった。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、再生医療の法律に沿った加工の施設と、2,200 院を超える医療機関との取引の網にある。細胞の加工には国への届出と管理の仕組みが要り、新しく始めるには時間がかかる。医師に書類づくりや経営の支援まで提供し、取引を手放しにくくしている。
ただ、その堀は浅くなっている。血液から成長因子を取り出す治療は、院内で使える加工キットが出回り、医療機関が外に出さずに済むようになった。件数の減りはその表れと筆者は見る。単価も自費の治療の相場に縛られ、思うように上げられない。
利益率は 2022 年の 37% から 2025 年の 4.5% まで落ちた。研究開発と消費者向けの新規事業への先行投資が重く、どれも利益に結びついていない。ROE は 2025 年に 0.2% で、厚い自己資本のほとんどは現金のまま眠っている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の再生医療は、2014 年の再生医療等安全性確保法で、自由診療として細胞の加工を外に任せる道が開いた。セルソースはこの制度の上で生まれた会社で、整形外科のひざの治療を切り開いた。ひざの変形性関節症の患者は国内で 2,000 万人を超えるとされ、高齢化で増え続ける。手術を避けたい人は多く、需要の母数は大きい。
ただ、競争は厳しくなった。医療機器の大手が院内で使える血液の加工キットを売り、医療機関は外に出さずに済む。同じ加工を請け負う同業も増え、価格の競争が始まっている。効き目の確かな証拠がまだ十分でない治療でもあり、国が自費の再生医療の広告や管理を厳しくする動きもある。
10 年を見ると、患者の数は増えるが、加工を外に任せる割合は下がる。加工受託件数は中立で横ばい、単価は物価より少し低く上がる、と筆者は見ている。保険で使える新しいひざの治療が出れば、需要そのものが細る危うさもある。一方で、脂肪由来の幹細胞やエクソソームのように、より高い加工の技術を要る治療も育っている。そこで先頭に立てれば単価は守れるが、まだ売上の柱と呼べる規模ではない。訪日客の自費治療も小さな上積みにとどまる。
資本政策と M&A
還元は細い。配当は 2025 年 10 月期に初めて出しただけで、総額は 1 億円に届かない。2026 年 10 月期は赤字の見込みで無配に戻した。自社株買いの実績も乏しい。
大株主は創業者だ。2026 年 9 月、社長の山川雅之氏が 500 万株を自分の資産管理会社に移し、会社と個人を合わせた議決権は 46% になる。長く持つ安定株主と説明しており、経営の重心は変わらない。
手元の現金 47 億円は、研究開発や新規事業、医療機関向けの買収に使う考えを示してきた。2026 年に子会社を吸収し、消費者向けを絞ったのは前向きな動きだが、現金を株主に戻す方針は示されていない。筆者は余った現金を帳簿の半分しか数えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
現金 47 億円に借金はゼロで、時価総額の 7 割を超える。本業の価値はわずか十数億円しか値段に入っていない。2026 年の第 3 四半期は件数が 3 四半期続けて増え、営業利益率は 11.5% に戻った。コスト削減と消費者向けの絞り込みで、利益の出る体質に戻りつつある。
ひざの変形性関節症の患者は国内に 2,000 万人を超え、高齢化で増える。手術を避けたい人は多く、提携院は 2,218 院まで増えた。脂肪由来の幹細胞やエクソソームの新しい加工、訪日客の治療など、単価の高い品も育っている。2022 年に 16 億円の営業利益を出した実績は、事業の素の力を示している。
創業者が持株を資産管理会社に集めたのは長く持つ意思の表れで、経営は安定する。件数が戻れば、厚い現金の上に稼ぐ力が乗り、今の値段は安く見えるはずだ。再生医療の法律に沿った加工の施設と、医師への届出の支援を含む取引の網は、新しく入る会社がすぐには作れない。院内キットは手軽だが品質の管理に手間がかかり、外に任せたい医療機関は残る。
慎重な見方
2022 年の高い利益は先駆けの利益で、もう戻らない。院内で血液を加工するキットが広がり、医療機関は外に出さずに済む。提携院が増えても件数が減っているのは、1 院あたりの利用が細っている証拠だ。同業の受託も増え、単価は上がらない。
効き目の確かな証拠が十分でない自費の治療で、規制の目も厳しくなる。広告の制限や届出の管理が強まれば、患者の流れは一気に細る。保険で使える新しい治療が出れば、選ぶ理由そのものが消える。
現金は厚いが、少数株主のものではない。創業者側が議決権の 46% を握り、配当は 2026 年に止まった。消費者向けの新規事業で損を出したように、現金は新しい試みに回る。2026 年の利益率の回復はコスト削減によるもので、二度は効かない。研究開発の費用を削り続ければ、次の柱も育たない。利益を守るか、未来に投じるか、どちらを選んでも株主の取り分は細い。提携院の数という見栄えのよい数字の陰で、1 院あたりの件数は毎年減っている。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が勝つ。件数の下げ止まりとコスト削減は前向きだが、件数が増える根拠は提携院の数だけで、1 院あたりの利用の減りは止まっていない。現金は厚いが、創業者の支配の下で株主に戻る道筋が見えない。確率は中立を軸に、2023 年から現に起きた件数の減りが続く姿を重く見て、やや悲観の側に寄せた。楽観は件数の反転が数字で出るまで 1 割未満に抑えた。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/10 期)
確率で加重した株価時価総額 397 円79 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 50 円10 億円)。 今の値に割り戻すと 209 円41 億円、今との差 −33.9%、 期待の年率 +3.5%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 954 円189 億円 | 151 円30 億円 | +249.6% | +13.3% | 88 円18 億円 |
| やや楽観 | 20% | 637 円126 億円 | 91 円18 億円 | +130.1% | +8.7% | 145 円29 億円 |
| 中立 | 37% | 406 円81 億円 | 40 円8 億円 | +41.2% | +3.5% | 165 円33 億円 |
| やや悲観 | 23% | 148 円29 億円 | 20 円4 億円 | −46.9% | −6.1% | 39 円8 億円 |
| 悲観 | 12% | 81 円16 億円 | 0 円0 億円 | −74.5% | −12.8% | 10 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 397 円79 億円 | 50 円10 億円 | +41.5% | +3.5% | 447 円89 億円 |
今の株価時価総額 316 円63 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% ひざの再生医療が保険の外の定番になり、件数が 1.5 倍に 利益 10 億円 · PER 17.1 倍 · 株価時価総額 954 円189 億円
高齢化でひざの変形性関節症の患者は増え続け、手術を避けたい人が自費の再生医療を選ぶ。提携院は 2,200 院から 3,000 院を超え、加工受託件数は 10 年で 1.5 倍になる。脂肪由来の幹細胞やエクソソームの新しい加工も加わり、1 件あたりの単価は物価並みに上がる。インバウンドの患者も取り込む。消費者向けの赤字事業は畳み、本社費は物価並みにとどめる。営業利益率は 2 割に戻り、2022 年の 4 割近い山には届かないが、厚い現金の上で稼ぐ力が戻る。創業者は配当を再開し、自社株買いも始める。厚い現金の上に高い利益率が乗り、会社は再び成長の会社として見られるようになる。
- 加工受託・医療機関支援:数量 31,248(加工受託件数(件・年))× 価格 16(1 件あたり売上(万円・名目、支援サービスを按分))→ 売上 51 億円・営業利益 15 億円。件数 1.50 倍(実質)・単価 1.30 倍(名目)
- 医療機器販売:数量 197(脂肪吸引などの機器の販売台数(台・年、推定))× 価格 0.07(1 台あたり売上(億円・名目))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。数量 1.30 倍・値段 1.30 倍
- 化粧品販売その他:数量 65.2(出荷の個数(千個・年、推定))× 価格 6.50(1 個あたり売上(千円・名目、原料・受託を按分))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。数量 1.00 倍・値段 1.30 倍
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 25.8% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 17.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 17.05 倍、時価総額 188 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:PFC-FD がひざの痛みの自費治療の定番になる筋書き。件数は 2023 年から減っており、反転の根拠はまだ提携院の増加だけなので 8%。
やや楽観 20% 件数が緩やかに戻り、利益率 15% 台 利益 6 億円 · PER 16.0 倍 · 株価時価総額 637 円126 億円
コスト削減と事業の絞り込みが効き、2026 年に下げ止まった加工受託件数が少しずつ戻る。提携院は年に 100 院前後ずつ増え、件数は 10 年で 2 割増える。院内で血液を加工する安いキットとの競争で、単価は物価より少し低く上がる。医療機器は美容クリニックの開業に合わせて伸びる。営業利益率は 15% 前後で、自己資本と現金の厚さに比べれば ROE は資本コストに届くか届かないかの水準にとどまる。配当は少額で再開する。新しい加工の技術が単価の下支えになり、件数の回復と合わせて、2022 年の半分ほどの利益まで戻る筋書きだ。
- 加工受託・医療機関支援:数量 26,040(加工受託件数(件・年))× 価格 15(1 件あたり売上(万円・名目、支援サービスを按分))→ 売上 40 億円・営業利益 11 億円。件数 1.25 倍・単価 1.22 倍
- 医療機器販売:数量 174(脂肪吸引などの機器の販売台数(台・年、推定))× 価格 0.06(1 台あたり売上(億円・名目))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。数量 1.15 倍・値段 1.25 倍
- 化粧品販売その他:数量 52.2(出荷の個数(千個・年、推定))× 価格 6.25(1 個あたり売上(千円・名目、原料・受託を按分))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。数量 0.80 倍・値段 1.25 倍
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.2% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 16.04 倍、時価総額 123 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026 年の第 3 四半期に件数が下げ止まり、利益率が 11% 台に戻った。その延長の上振れ。
中立 37% 中立:件数は横ばい、利益率 1 割 利益 4 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 406 円81 億円
加工受託件数は年 2 万件前後で横ばいが続く。提携院は増えるが、1 院あたりの件数は減る。ひざの自費治療は広く知られた一方で、院内で血液を加工する安いキットや、同じ加工を請け負う他社が増え、単価は物価ほど上がらない。医療機器は横ばい、化粧品と消費者向けは縮める。営業利益率は 1 割前後に戻るが、2021〜2023 年の 3 割台には遠い。配当は細く、現金は積み上がる。ROE は 5% 台で資本コストを下回り、厚い現金は使われないまま残る。会社は再生医療の会社として生き残るが、成長の会社とは呼べなくなる。
- 加工受託・医療機関支援:数量 20,832(加工受託件数(件・年))× 価格 15(1 件あたり売上(万円・名目、支援サービスを按分))→ 売上 30 億円・営業利益 7 億円。件数 1.00 倍・単価 1.15 倍(院内キットとの競争で物価未満)
- 医療機器販売:数量 151(脂肪吸引などの機器の販売台数(台・年、推定))× 価格 0.06(1 台あたり売上(億円・名目))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。数量 1.00 倍・値段 1.20 倍
- 化粧品販売その他:数量 39.1(出荷の個数(千個・年、推定))× 価格 6.00(1 個あたり売上(千円・名目、原料・受託を按分))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。数量 0.60 倍(事業の絞り込み)・値段 1.20 倍
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.0% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 14.33 倍、時価総額 76 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2023 年からの件数の減りは止まりつつあるが、反転の材料も弱い。提携院の増加と、院内加工や他社との値下げ競争が打ち消し合う中心の筋書き。
やや悲観 23% 件数が 2 割減り、利益は細る 利益 1 億円 · PER 6.0 倍 · 株価時価総額 148 円29 億円
院内で加工するキットと同業の安い受託が広がり、加工受託件数は 10 年で 2 割減る。単価もほぼ据え置きで、物価に負ける。人件費と培養の設備の費用は上がり、営業利益率は 3% 台まで落ちる。新しい加工やインバウンドは小さな売上にとどまる。創業者は現金を研究開発と新規事業に回し、株主への配当は細いまま。稼ぐ力が細るなかで、現金の一部も試行錯誤で減っていく。提携院の数だけが増え、1 院あたりの件数が減る今の流れが、そのまま 10 年続く姿だ。培養の施設の更新に現金が要り、本社の費用も物価で増えるので、利益率は下がりやすい。
- 加工受託・医療機関支援:数量 16,666(加工受託件数(件・年))× 価格 13(1 件あたり売上(万円・名目、支援サービスを按分))→ 売上 22 億円・営業利益 4 億円。件数 0.80 倍・単価 1.05 倍
- 医療機器販売:数量 129(脂肪吸引などの機器の販売台数(台・年、推定))× 価格 0.06(1 台あたり売上(億円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。数量 0.85 倍・値段 1.15 倍
- 化粧品販売その他:数量 26.1(出荷の個数(千個・年、推定))× 価格 5.50(1 個あたり売上(千円・名目、原料・受託を按分))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。数量 0.40 倍・値段 1.10 倍
倍率:事業の ROE は 3% 弱で k を大きく下回る。上限 1÷k の 5.4 割の 6.0 倍。余った現金は谷で食う分を引いて 30 億円とし、戻り方 0.5 を掛けた。稼ぐ力(事業の純利益÷k+余った現金)より下に置いている。
確率:2023 年から 2 年で件数が 1 割強減った実績があり、その流れが続く姿として重く見る。
悲観 12% 規制か技術で置いていかれ、加工受託が半分に 利益 −1 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 81 円16 億円
再生医療等安全性確保法の運用が厳しくなり、効き目の証拠が薄い自費の再生医療に患者が集まらなくなる。あるいは保険で使える新しい治療が出て、PFC-FD を選ぶ理由が消える。加工受託件数は半分になり、単価も下がる。培養の施設と人の固定費が残り、営業赤字が続く。会社に残る価値は現金だけだが、創業者が事業の立て直しと新規事業に使い、少数株主に戻る分は細い。加工の施設は他に使い道が乏しく、売っても値はつかない。10 年で現金の一部は赤字の穴埋めに消える。再生医療の先駆けとして生まれた会社が、制度の変化に飲まれて縮む筋書きだ。
- 加工受託・医療機関支援:数量 10,416(加工受託件数(件・年))× 価格 12(1 件あたり売上(万円・名目、支援サービスを按分))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。件数 0.50 倍・単価 0.95 倍
- 医療機器販売:数量 90.7(脂肪吸引などの機器の販売台数(台・年、推定))× 価格 0.06(1 台あたり売上(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。数量 0.60 倍・値段 1.10 倍
- 化粧品販売その他:数量 19.6(出荷の個数(千個・年、推定))× 価格 5.00(1 個あたり売上(千円・名目、原料・受託を按分))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。数量 0.30 倍・値段 1.00 倍
倍率:赤字で稼ぐ力は無く、純現金の床で置いた。床 16 億円=(現金 47 億円−運転資金と引当 5 億円−赤字で減る 10 億円)×戻り方 0.5。今の自己資本 59.6 億円に対する PBR で書いた。
確率:再生医療の規制の強化や、ひざの治療の別の技術の登場で一気に縮む構造的な負け。単一の自費治療に頼る事業なので 12%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
加工受託・医療機関支援
整形外科などの提携医療機関から患者の血液・脂肪を預かり、成長因子の凍結乾燥品(PFC-FD)や幹細胞に加工して戻す。届出の書類づくりや経営の支援も含む。
| 数量加工受託件数(件・年) | 価格1 件あたり売上(万円・名目、支援サービスを按分) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 20,832 | 13 | 26 | 5 |
| 10 年後 中立 | 20,832 | 15 | 30 | 7 |
取り方:2025/10 期の加工受託件数は第 3 四半期累計 15,881 件+第 4 四半期 4,951 件=約 20,800 件(短信の四半期の推移)。加工受託 24.5 億円と医療機関支援・その他 1.8 億円の合計 26.3 億円を件数で割った単価。営業利益は全社 1.7 億円を分類の採算の見立てで割り振った推定。
医療機器販売
美容クリニックなどに脂肪吸引の機器を売る。加工受託の入口にもなる。
| 数量脂肪吸引などの機器の販売台数(台・年、推定) | 価格1 台あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 151 | 0.05 | 8 | 1 |
| 10 年後 中立 | 151 | 0.06 | 9 | 1 |
取り方:台数の開示が無いので、2025/10 期の販売額 7.56 億円を 1 台 500 万円(消耗品込みの推定)で割った台数。
化粧品販売その他
ヒトの細胞の培養液などを使った化粧品の自社販売と原料・受託製造。睡眠のブランドなど消費者向けの新規事業を含む。
| 数量出荷の個数(千個・年、推定) | 価格1 個あたり売上(千円・名目、原料・受託を按分) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 65.2 | 5.00 | 3 | −2 |
| 10 年後 中立 | 39.1 | 6.00 | 2 | 0 |
取り方:2025/10 期の販売額 3.26 億円を 1 個 5 千円(原料の販売と受託製造を按分した推定)で割った個数。2026/10 期は 2.4 億円の見込みで、会社は消費者向け事業を絞っている。
リスクと懸念
院内キットと同業による置き換え
血液から成長因子を取り出す治療は、院内で使える加工キットが出回り、医療機関が外に任せずに済むようになった。同業の受託も増えた。提携院が増えても件数が減っているのは、この置き換えが進んでいる表れで、単価も上げにくい。
再生医療の規制の強化
自費の再生医療は、効き目の証拠の薄さや広告のあり方が問題視されてきた。国が届出や広告、安全の管理を厳しくすれば、医療機関が治療をやめたり、患者が離れたりする。単一の自費治療に頼る事業には大きな打撃になる。
単一の治療への依存
売上の 7 割は加工受託で、その大半はひざの治療に使う PFC-FD だ。保険で使える新しい治療や、効き目の高い別の技術が出れば、需要そのものが細る。新しい加工は育っているが、まだ柱の代わりにはならない。
現金が少数株主に戻らない
現金 47 億円は時価総額の 7 割を超えるが、創業者側が議決権の 46% を握る。配当は 2026 年に止まり、自社株買いの実績も乏しい。現金が新規事業や買収に回れば、少数株主の価値にはならない。
新規事業の損失
化粧品や睡眠のブランドなど消費者向けの新規事業は赤字が続き、2026 年に在庫の評価損と減損を出した。本業の利益が細るなかで、新しい試みの損が重なれば、利益の回復は遅れる。
今後の分かれ目
- 加工受託件数が年 2.2 万件を超えて増え続けたら
- 1 院あたりの利用の減りが止まったことになり、やや楽観に確率を寄せる。
- 営業利益率が 15% を超える年が続いたら
- コスト削減が一度きりでなかったとみて、中立の利益率を上げる。
- 自費の再生医療の届出や広告の規制が強まったら
- 件数の前提を下げ、やや悲観と悲観に確率を寄せる。
- 配当の再開や大きな自社株買いを決めたら
- 余った現金の戻り方を 0.75 に上げ、本質価値を上に直す。
- 現金を使った大きな買収を決めたら
- 買う事業の稼ぐ力と値段を見て、余った現金の扱いを直す。
見ておくもの
- 月次の加工受託件数と提携院の数
- 営業利益率(2026 年第 3 四半期 11.5%)
- 再生医療等安全性確保法の運用と広告の規制
- 配当と自社株買いの方針
- 消費者向け事業の縮小の進み
倍率と資本コストの決め方
今の時価総額 63 億円や PBR 1.06 倍には寄せていない。加工受託件数と名目の単価、医療機器と化粧品の数量から 10 年の利益を積み、倍率は ROE が k に届く楽観だけ正当化 PER の 8 割、それ以外は 1÷k = 11.1 倍を上限に 5.4〜8 割で置いた。余った現金 40 億円は創業者の支配を見て戻り方 0.5。本社・研究開発の費用は物価で 1.34 倍にし、培養の施設の償却は取得時の値段のまま増やしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.1→17.05 倍・やや楽観 PER 11.5→16.04 倍・中立 PER 11.1→14.33 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。