結論
協和コンサルタンツは、港湾・空港・橋梁・河川などの調査と設計を請け負う建設コンサルタントだ。発注元の中心は国と自治体、そして防衛関連である。
結論から言う。筆者は、10 年後の本質価値は今の時価総額 39 億円を 3 割ほど上回る、やや割安と見る。理由は 2 つ。事業の稼ぐ力が 6 年で倍以上になったこと、そして時価総額の 8 割近い純現金が、ほとんど株主に戻されずに積み上がっていることだ。
利益率の上昇は本物に近い。2019 年に 4% だった営業利益率は、2025 年に 11% へ届いた。防衛力整備にもとづく基地整備と国土強靱化の業務が増え、手持ちの業務量が厚い。ただ、この会社の歴史では 4% 台の時代の方が長い。筆者は、利益率が 13% 台に定着するところまでは見るが、それ以上は置かない。
現金は強みでもあり、弱みでもある。配当性向は 3% 前後で、現金は使われない。戻り方を半分に割り引いて評価した。AI エージェントは設計の工数を減らす。単価の伸びを物価に届かせない形で、この影響を織り込んだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「事業」と「現金」に分けて見るのがよい。
事業は悪くない。公共と防衛が発注元で、景気に左右されにくい。ただし堀は普通で、AI が設計の単価を削る可能性がある。10 年後の利益は 8 億円前後と置き、それに 12 倍ほどの値をつけた。成長は見込まず、現金にも倍率をかけていない。
問題は現金だ。純現金 30 億円は時価総額の 8 割近い。ここから前受金と引当を引いても、約 15 億円は余る。これを経営が使うのか、株主に戻すのか、それとも眠らせるのか。過去の実績は、眠らせる側に傾く。そのため、評価額を半分にした。
安全域はある。悲観の筋書きでも、売れる資産と現金で今の時価総額の 3 分の 1 強は残る。一方で、設計が AI に置き換わる筋書きでは、利益率は元の 4% 台よりさらに下がりうる。
筆者は、この会社が 10 年後に生き残ること自体は疑わない。気になるのは、積み上がる現金がどう使われるかである。
何で稼ぐ会社か
事業は大きく 3 つに分かれる。売上の約 8 割が建設コンサルタントで、残りの約 2 割が情報処理と技術者派遣、わずかに不動産の賃貸・管理が付く。
建設コンサルタントは、港湾・空港・橋梁・河川・上下水道などの調査、計画、設計、施工管理を請け負う。2025 年 11 月期の売上は 84 億円で、うち建設コンサルは 70 億円前後だ。受注は入札と企画競争が中心で、売上は技術者の数と 1 人あたりの単価で決まる。決算短信は、近年の追い風を防災・減災、国土強靱化の業務と、防衛力整備計画にもとづく基地整備の業務だと書く。
情報処理は、システム開発・運用の受託と、技術者派遣である。売上は約 14 億円で、利益はほとんど出ない。2026 年の第 3 四半期累計で、ようやく営業赤字を抜けて小さな黒字になった。人の時間で売る型なので、AI エージェントに置き換えられやすい側に立つ。
会社は 58 万株しか発行していない。時価総額は約 39 億円と小さい。この規模では、開示されない受注の中身や技術者の人数まで追えない部分が残る。
優良さと弱いところ
強みは、公共と防衛の実績に裏づけられた受注の安定だ。技術士の署名と入札参加の資格が参入の壁になり、国や自治体、防衛関連との取引は急には奪われない。手持ちの業務量が厚く、2026 年の第 3 四半期累計は売上が 1% しか伸びなくても、営業利益は 23% 増えた。生産性の改善が効いている。
堀としては普通と見る。入札では価格を自分で決められず、技術者が転職すれば知見も動く。海外や資源調査といった別の収益源も持たない。利益率の上昇は構造の変化が混じるが、2019 年以前の 4% 台に戻る余地は残る。
資本の使い方が最大の弱点だ。純現金は 2014 年の借入超過から、2025 年に 30 億円まで積み上がった。配当は据え置きが続き、配当性向は 3% 前後にとどまる。自己資本比率は約 53%(2026 年 8 月は 60%)、ROE は 14% だが、現金を除いた事業の ROE はもっと高い。
財務は強いが、その現金が少数株主の手に渡る保証はない。経営の姿勢は、利益の改善には前向きで、株主還元には慎重という二面性がある。筆者は、現金の評価を半分に落として置いた。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
建設コンサルタントの需要を支えるのは公共の予算だ。国土強靱化の実施中期計画が 2026〜2030 年度で 20 兆円強の事業規模を掲げ、老朽化した道路・上下水道の更新も続く。防衛では、防衛力整備計画にもとづく基地整備が当面の発注を生む。同社の決算短信も、この 2 つが需要を押し上げたと書く。
10 年で見ると、予算の総額は名目で伸びるが、実質では横ばいに近い。物価が年 3% で上がる世界では、予算が名目で 3% 伸びても、受けられる仕事の量は増えない。しかも技術者は足りない。採用と定着が受注の天井になる。
競合は、建設技術研究所や日本工営、パシフィックコンサルタンツといった大手と、同じ規模の中堅である。大手は河川や海外に強く、協和は港湾・空港・基地といった専門領域で戦う。専門が狭い分、案件の波を受けやすい。
AI の影響は、設計・作図・積算の工数に出る。技術士の署名と責任は人に残るので、仕事そのものは消えない。ただ、同じ成果物に必要な人月が減れば、入札の単価に下げ圧力がかかる。これが利益率の上昇を止める最大の要因になりうる。情報処理の受託と派遣は、より直接に置き換えを受ける。
資本政策と M&A
資本政策は、これまで保守的だった。配当は据え置きで、配当性向は 3% 前後。自己株式の取得も、直近は見当たらない。純現金は 30 億円で、時価総額の 8 割近い。
2026 年 8 月末は、現金 42 億円に対し短期借入が 6 億円まで減った。契約負債(前受金)が 13 億円あり、現金のすべてが自由に使えるわけではない。退職給付や役員退職慰労の引当も 4 億円強ある。筆者はこれらを引いた約 15 億円を、事業に要らない余りとみて評価する。
戻り方は 0.5 とした。長い間、利益の大半が内部に残り、会社に株主還元を強める姿勢はまだ見えないからだ。東証が資本効率の改善を求める流れの中で、配当を上げる余地は大きい。ただ、それが実行されるまでは、割り引く。
M&A の実績は目立たない。買収で価値を壊す心配は小さい反面、現金を成長に使う道も見えない。株数が少ないため、買収提案の対象になりうる大きさでもある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
利益率が 4% から 11% に上がったのは、一過性ではない。防衛力整備の基地整備と国土強靱化の予算は 2030 年度まで続くことが見えており、手持ちの業務量も厚い。2026 年の第 3 四半期累計は、売上が 1% の伸びでも営業利益は 23% 増えた。生産性の改善が続いている証拠だ。
建設コンサルの許認可は、技術士の署名と入札の資格で守られる。AI が作図や積算を助けても、責任を負うのは人だ。工数が減れば、浮いた人員を高単価の案件に回せる。
財務は強い。純現金は 30 億円で、時価総額の 8 割近い。配当性向は 3% と低く、東証の資本効率改善の流れの中で、増配や自社株買いに動く余地が大きい。PBR が低いうちは、株主が声を上げやすい。事業は 10 年後も存在し、利益率が 13% 台に定着すれば、今の時価総額は事業価値だけで説明できてしまう。
情報処理も、受注対策が効いて営業赤字を抜けた。小さな部門だが、悪化が止まったことは確かだ。会社の規模は小さくても、1 人あたりの生産性は上がり続けている。10 年先を考えても、港湾や空港、基地を設計できる専門の会社は多くない。
慎重な見方
利益率の上昇は、予算の追い風に乗った一時的なものだ。この会社の歴史では、2019 年以前の 4% 台が長かった。強靱化の予算が 2030 年度で一巡すれば、受注環境は元に戻る。
AI の影響は軽くない。設計・作図・積算の工数が減れば、入札の単価に下押しがかかる。技術士の署名が残っても、同じ仕事に必要な人月が減れば、技術者を抱える固定費が重くなる。情報処理は、人月で売る型で、黒字化したばかりだ。
何より、現金が使われない。配当性向は 3% で、純現金は積み上がっても、少数株主の手には届かない。ROE が高くても、その利益は内部に積もるだけだ。経営が還元に動いた実績はなく、東証の要請を受けても、小幅な増配にとどまる可能性が高い。
会社は小さく、58 万株という少ない株数で、売買は薄い。市場が現金の価値を認める保証はない。
買収の対象になるとしても、支配株主がいれば少数株主は価格を決められない。割安に見えるのは、そうした事情が値段に入っているからだ。
どちらに重みを置いたか
事業の稼ぐ力は、10 年で利益率が 13% 台に落ち着く中立が最も確からしい。AI の影響は単価と情報処理に織り込み、悲観側は 32% を置いた。現金の戻り方は 0.5 とし、強気の言い分のうち、増配への期待は割り引いた。それでも、現金と事業の合計は今の時価総額を上回る。確率は中立に厚く置き、弱気の言い分のうち、利益率が元に戻る懸念はやや悲観と悲観の筋書きに入れた。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/11 期)
確率で加重した株価時価総額 24,522 円143 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 652 円4 億円)。 今の値に割り戻すと 12,465 円73 億円、今との差 +93.0%、 期待の年率 +14.6%(資本コスト 7.4%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 41,253 円241 億円 | 2,052 円12 億円 | +570.4% | +21.0% | 3,031 円18 億円 |
| やや楽観 | 20% | 35,400 円207 億円 | 1,026 円6 億円 | +463.9% | +18.9% | 7,285 円43 億円 |
| 中立 | 41% | 30,091 円176 億円 | 513 円3 億円 | +373.7% | +16.8% | 12,547 円73 億円 |
| やや悲観 | 22% | 8,988 円53 億円 | 342 円2 億円 | +44.4% | +3.7% | 2,053 円12 億円 |
| 悲観 | 10% | 2,394 円14 億円 | 171 円1 億円 | −60.3% | −8.8% | 256 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 24,522 円143 億円 | 652 円4 億円 | +289.7% | +14.6% | 25,173 円147 億円 |
今の株価時価総額 6,460 円38 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.4% を下回るほど割高。
楽観 7% 防衛と強靱化の追い風が続き、利益率 13% 近くが定着 利益 11 億円 · PER 21.3 倍 · 株価時価総額 41,253 円241 億円
防衛力整備の基地整備と国土強靱化の予算が、2030 年度を越えても続く。協和は港湾・空港・基地の専門性を武器に、技術者を増やして受注を伸ばし、数量は 1.1 倍になる。単価は物価並みに上がり、営業利益率は 16% に達する。
東証の資本効率改善の流れを受け、経営が配当を引き上げ、自己株式の取得にも動く。10 年の還元は 12 億円に達する。AI の影響は、情報処理の縮小にとどまり、建設コンサルの設計では技術士の責任が壁になって単価が守られる。
この筋書きは、利益率が 4% から 16% へ 3 倍以上になる前提で、同業でも珍しい。確率は 7% に絞った。
- 建設コンサルタント:数量 506(稼働する技術者(人、推定))× 価格 2,050(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 104 億円・営業利益 17 億円。数量 1.10 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 16%
- 情報処理・技術者派遣:数量 196(稼働する人員(人、推定))× 価格 731(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。数量 0.85 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 2.5%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 23.4% が k 7.40% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.9% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 21.34 倍、時価総額 229 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率が 4% から 11% まで 6 年で上がった勢いがさらに続き、現金の還元も始まる筋書き。この水準は同業でも珍しいので 7% に絞った。
やや楽観 20% 受注が堅調で、利益率 14% 台を保つ 利益 9 億円 · PER 20.8 倍 · 株価時価総額 35,400 円207 億円
国土強靱化と基地整備の予算が、2030 年度まで着実に執行され、そのあとも更新需要が続く。技術者は 5% 増え、価格は物価にほぼ連動する。営業利益率は 14.8% と、今の水準を保つ。
情報処理は縮むが、受注対策が効いて赤字には戻らない。現金の一部は配当に回り、10 年で 6 億円が還元される。会社は慎重だが、PBR の低さが株主の目に入り、少しずつ動く。
AI の影響は設計の工数の一部にとどまり、単価への下押しは小さい。受注残の厚さが利益率の維持を支える。
中立との違いは、利益率が落ちないことと、数量が 5% 伸びることの 2 点である。純利益は 9.2 億円となる。
- 建設コンサルタント:数量 483(稼働する技術者(人、推定))× 価格 2,035(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 98 億円・営業利益 15 億円。数量 1.05 倍・価格 1.33 倍・営業利益率 14.8%
- 情報処理・技術者派遣:数量 179(稼働する人員(人、推定))× 価格 713(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。数量 0.78 倍・価格 1.17 倍・営業利益率 2.2%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 21.2% が k 7.40% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.9% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 20.77 倍、時価総額 194 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:基地整備と国土強靱化の予算は 2030 年度まで見通せ、受注残も厚い。利益率の上昇が定着する側に 2 割を置いた。
中立 41% 技術者は横ばい、AI が単価の伸びを削り、利益率は 13% 台に戻る 利益 8 億円 · PER 20.2 倍 · 株価時価総額 30,091 円176 億円
予算は堅く、技術者の数は横ばいで推移する。数量は 1.0 倍。AI エージェントが設計・作図・積算の工数を減らすため、単価は物価に届かない 1.30 倍と置く。営業利益率は今の 14.8% から 13.5% へ落ち着く。
情報処理・派遣は、人月で売る型なので数量が 0.7 倍まで縮む。利益は小さいままで、全体の営業利益は 11 億円弱となる。本社費は物価で増える。
現金は積み上がるが、還元はわずかな増配にとどまる。10 年の還元は 3 億円。受取利息が純利益を押し上げ、純利益は 7.9 億円とした。現金の使い道が変わらなければ、この会社の評価は事業の稼ぎ中心に決まる。
- 建設コンサルタント:数量 460(稼働する技術者(人、推定))× 価格 1,989(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 92 億円・営業利益 12 億円。数量 1.00 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 13.5%
- 情報処理・技術者派遣:数量 161(稼働する人員(人、推定))× 価格 700(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。数量 0.70 倍・価格 1.15 倍・営業利益率 2%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.2% が k 7.40% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.9% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 20.2 倍、時価総額 163 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:予算は堅く、AI の影響が設計の工数に出る流れの中心。数量 1.0 倍、価格 1.30 倍と、物価に届かない形で置いた。
やや悲観 22% 予算が頭打ちになり、AI が設計の単価を削る 利益 4 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 8,988 円53 億円
強靱化の予算が 2030 年度で一巡し、その後の更新需要は名目でしか伸びない。AI エージェントが設計の工数を削り、入札の単価に下押しがかかる。数量は 0.9 倍、価格は 1.22 倍にとどまる。
営業利益率は 9.5% まで下がる。2019 年以前の 4% 台に戻るわけではないが、ここ数年の上昇の半分近くを失う。情報処理は赤字に戻らないまでも、利益が出ない。
現金は積み上がり、還元は 2 億円にとどまる。会社は慎重で、現金は事業の悪化に備える名目で眠る。この筋書きでは、評価は事業の稼ぐ力と、戻り方で割り引いた現金で決まる。
- 建設コンサルタント:数量 414(稼働する技術者(人、推定))× 価格 1,867(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 77 億円・営業利益 7 億円。数量 0.90 倍・価格 1.22 倍・営業利益率 9.5%
- 情報処理・技術者派遣:数量 138(稼働する人員(人、推定))× 価格 670(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。数量 0.60 倍・価格 1.10 倍・営業利益率 0%
倍率:事業の ROE 4.6% は k 7.4% を下回る。ためた利益は額面を割る価値なので、PER の上限は 1÷k の 12.7 倍。利益率が下がり、AI が単価を削る筋書きなので、ROE÷k の割合に近づけて 9 倍に置いた。
確率:利益率の上昇は 4% 台の長い低迷のあとの話で、元に戻る力が働く。AI による設計の省力化も重なり、2 割強を置いた。
悲観 10% 強靱化の予算が終わり、AI が設計を置き換える 利益 1 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 2,394 円14 億円
防衛・強靱化の予算が剥落し、AI エージェントが設計・作図・報告書づくりの大半を肩代わりする。入札は工数ではなく成果物の単価を競う形に変わり、数量は 0.7 倍、価格は 1.05 倍に落ちる。
営業利益率は 5% まで下がり、情報処理・派遣は赤字になる。技術者の流出が知見を空洞化させる。利益は小さく、現金は積み上がっても少数株主には届かない。
この筋書きでは、評価は純現金と売れる資産の床で決まる。余った現金に戻り方 0.5 を掛け、土地の簿価と有価証券の税後を足した約 14 億円を床と置く。契約負債に見合う現金は数えない。
- 建設コンサルタント:数量 322(稼働する技術者(人、推定))× 価格 1,607(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 52 億円・営業利益 3 億円。数量 0.70 倍・価格 1.05 倍・営業利益率 5%
- 情報処理・技術者派遣:数量 104(稼働する人員(人、推定))× 価格 579(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。数量 0.45 倍・価格 0.95 倍・営業利益率 −3%
倍率:稼ぐ力が小さい悲観。事業の純利益 0.5 億円は k で割っても小さく、純現金と売れる資産の床(余った現金 15 億円に戻り方 0.5 を掛けた分、土地、有価証券)で値を付ける。床の PBR は今の自己資本 44 億円に掛けた(14 億円 ÷ 44 億円)。
確率:予算の剥落と AI による設計業務の代替が重なる構造的な負け。建設コンサルの許認可は残るため、大きくは置かず 10% とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建設コンサルタント
港湾・空港・橋梁・河川・基地などの調査、計画、設計、施工管理。国・自治体・防衛関連が発注元。
| 数量稼働する技術者(人、推定) | 価格1 人あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 460 | 1,530 | 70 | 10 |
| 10 年後 中立 | 460 | 1,989 | 92 | 12 |
取り方:2025/11 期の建設コンサル 70.4 億円(設計・施工管理の外部売上。第 3 四半期累計の構成比から按分)。技術者数は開示を取れなかったため、業界の 1 人あたり売上 1,500 万円台から 460 人と推定し、単価は売上÷人数。営業利益は全社 9.2 億円に本社費 1.6 億円・情報処理の小さな損益を戻した推定の 10.4 億円。型は許認可・現場に近い建設コンサル(技術士の署名と入札が要る)。
情報処理・技術者派遣
システム開発・運用の受託と、建設・IT 向けの技術者派遣。主力の建設コンサルを補う小さな柱。
| 数量稼働する人員(人、推定) | 価格1 人あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 230 | 609 | 14 | 0 |
| 10 年後 中立 | 161 | 700 | 11 | 0 |
取り方:2025/11 期の情報処理セグメント約 14 億円(受託開発と技術者派遣。第 3 四半期累計で受託 3.0 億円・派遣 7.6 億円)。人数は 1 人あたり売上 600 万円前後の派遣単価から 230 人と推定。営業利益は前年同期は赤字、今期の第 3 四半期累計で 0.08 億円と黒字化したばかり。AI エージェント代替の型:人月・工数で売る型(売上の約 17%)。価格は人月の型として物価(1.34 倍)に届かない 1.15 倍を中立に置く(AI が工数単価に下げ圧力をかけ、成果報酬に移れた証拠は無い)。
リスクと懸念
AI エージェントが設計の工数を削る(AI エージェント代替)
売上の約 8 割を占める建設コンサルは、設計・作図・積算の工数で稼ぐ。技術士の署名と入札の資格は残るが、同じ成果物に必要な人月が減れば、入札の単価に下げ圧力がかかる。中立では単価の伸びを物価の 1.34 倍に届かない 1.30 倍とし、悲観では数量も 0.7 倍まで縮む。情報処理・派遣(約 17%)は人月で売る型で、より直接の影響を受ける。
利益率が元に戻る
営業利益率は 2019 年の 4% 台から 2025 年の 11% まで 6 年で上がった。その大半は防衛・強靱化という追い風に乗っている。予算が 2030 年度で一巡すれば、受注の競争が戻り、利益率が下がる。やや悲観では 9.5%、悲観では 5% を置いた。
現金が使われない
純現金は 30 億円で時価総額の 8 割近いが、配当性向は 3% 前後。直近で自社株買いの実績が見当たらず、戻り方は半分に割り引いた。増配がなければ、現金は評価に反映されにくい。
技術者の確保
建設コンサルは人が資産で、技術者の採用と定着が受注の天井になる。転職が相次げば知見も動く。人件費の上昇を単価に転嫁しきれなければ、利益率が下がる。
防衛関連の発注の偏り
基地整備は追い風だが、特定の発注元に偏れば、計画の見直しや執行の遅れが業績に響く。防衛予算の増加が続く前提を置いているが、政策の変更で変わりうる。
株数が少ない
発行済株式は 58 万株と少なく、売買は薄い。市場の評価が事業価値に近づくまでに時間がかかる。反面、買収提案の対象にもなりうる。
今後の分かれ目
- 配当性向が 20% 以上に引き上げられる、または自社株買いが始まる
- 現金の戻り方が 0.5 から 1.0 に近づく。余った現金 15 億円の評価が倍になり、10 年の価値は大きく上がる。
- 営業利益率が 12% を超えて定着する
- 中立の筋書きが楽観側に動く。防衛・強靱化の追い風が構造の変化だった証拠になる。
- AI の導入で設計の単価が下がり、受注額が伸びない
- やや悲観の筋書きに近づく。技術者の数が同じでも、売上が伸びない。
- 情報処理が 2 期続けて赤字に戻る
- 人月で売る型の弱さが表に出た合図で、情報処理の縮小を速める。
- 防衛関連の予算が減る、または計画が見直される
- 基地整備の需要が落ち、利益率の上昇分を失う。悲観側の確率を上げる。
- 買収提案が出る
- 10 年待たずに価値が現れる。ただし、提示価格が事業と現金の価値を反映しているかは別に見る。
見ておくもの
- 受注高と受注残(建設コンサル)
- 営業利益率(12% を超えて定着するか)
- 配当性向と自社株買いの有無
- 情報処理の損益
- 防衛・国土強靱化の予算執行
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から出した。中立は事業の ROE と k 7.4% から求めた上限(約 12.7 倍)の 95% ほどに置いた。市場の PER・PBR は使っていない。現金は余った 15 億円に戻り方 0.5 を掛けて足し、10 年で溜まる現金は build が自動で足す。今の株価が倍でも半分でも、この数字は動かない。純現金が時価総額の 8 割近いので、割安に出やすい。AI の影響は数量・価格・k の寿命に分けて入れ、重ねて引いていない。賃借料は営業費用に入った今の形のまま置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.7→21.34 倍・やや楽観 PER 12.8→20.77 倍・中立 PER 12→20.2 倍)。
資本コスト 7.4% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。