結論
ギークスは、国内のITフリーランスと豪州のIT人材を企業につなぎ、人が働く期間に応じた売上を得る会社である。筆者の結論は「やや割高」だ。国内には長年築いた人材と顧客の接点があるものの、AIエージェントが人の工数を減らす時代には、過去の成長をそのまま10年先へ延ばせない。
2026年3月期の国内IT人材事業は年間20,709人月を仲介し、全社営業利益の大部分を生んだ。2026年3月期の連結営業利益は8.8億円まで回復したが、豪州のLaunch Groupは売上92億円に対してセグメント利益が約0.3億円しかない。連結純利益6.4億円には新株予約権戻入益という一過性の利益も含まれ、足元の高いROEだけで将来の稼ぐ力を測るべきではない。
10年後の中立では、国内外の稼働人月がそれぞれ現在の約7割になると考える。名目単価は上昇しても、人が担当する作業量そのものの減少が売上を抑える。豪州事業の利益率が低いことも重く、国内の好調だけでは連結利益を大きく伸ばしにくい。
もっとも、同社を事業価値の乏しい会社と考えるのも誤りだ。国内の継続取引、採用・契約管理の実務、現金余力、配当姿勢には価値がある。10年間に積み上がる余剰現金も評価に含めた。それでも、2026年10月19日時点の時価総額約61.5億円に対し、確率を加重し資本コストで割り戻した価値は約46.8億円となり、約24%下回る。事業が存続することと、現在の値段に十分な安全域があることは別の問題である。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、まず利益が10年後にも残るかを考える。ギークスの国内仲介事業は、顧客が専門人材を必要とする限り役割を持つ。登録者を探し、契約を調整し、稼働中の課題を解決する能力には長年の蓄積がある。軽い設備で稼げる点も魅力だ。しかし、顧客が欲しいのは人月そのものではなく仕事の成果である。AIによって同じ成果をより少ない人手で実現できれば、仲介会社の売上数量は減る。
本物の堀があるなら、値上げを続けても顧客が離れず、増えた資本を高い利回りで再投資できるはずだ。国内事業には長い稼働期間と良好な顧客獲得効率という証拠がある。ただし、単価上昇は物価に比べて小さく、豪州事業の利益率も低い。顧客との長い関係を、永続的な値上げ力と取り違えない姿勢が必要だ。
また、売上が大きくても株主の手元に残らなければ意味はない。豪州買収後の減損は、成長投資の失敗がそれまでに稼いだ利益を失わせることを示した。2026年3月期の営業キャッシュフローと株主還元の回復は評価できるものの、一度の好転だけで経営者の資本配分能力を高く評価し直すことはできない。次の買収や新規投資でも、同じ厳しさで結果を見るべきだ。
純現金と国内の稼ぐ力があるため、経営難の会社として扱う必要はない。ただし、余剰現金を株主が自由に動かせるわけでもない。悲観時の資産価値、通常時に生む利益、10年間の還元を分けて考えると、将来の技術変化に対してなお十分な安全域が欲しい。現在の時価総額は国内仲介の維持と海外の改善を相当に期待しており、その期待に対する報酬は薄いと判断する。
何で稼ぐ会社か
国内IT人材事業の中心は「ギークスジョブ」である。企業から開発案件を受け、登録するフリーランスの技能や就業条件と照らし合わせて紹介する。実際に稼働すると契約に応じた売上が立つため、経済的な数量は登録者総数ではなく、請求対象となる稼働人月数だ。2026年3月期は年間20,709人月、受注単価は月83.2万円であった。セグメントの外部売上は約166億円で、受注単価をそのまま掛けた額とは計上時期などで差がある。
顧客にとっての利点は、正社員を採用せず必要な専門技能を確保できることだ。会社にとっての稼ぎは、技術者への支払いと顧客への請求との差額から、営業、採用、広告、管理の費用を引いた残りである。国内の累計取引企業数は決算説明資料の定義で1,992社、登録フリーランスは約2.4万人に達する。ただし、登録者がすべて常時稼働しているわけではない。年間人月数を12で割った稼働規模は約1,726人相当であり、データベースの大きさをそのまま独占力と解釈してはいけない。
海外IT人材事業は豪州のLaunch Groupが担う。派遣、人材紹介に加え、複数の人材会社を束ねて調達や契約管理を引き受けるMSPサービスを提供する。自社の人材管理システムVMSを使い、企業の人材調達を管理する点は単純な紹介より顧客の業務に近い。43万人を超える人材データと年間7,500人月超の稼働を公表しているが、売上の大きさに比べて利益が極めて薄い。顧客に深く入り込むことと、十分な利益を得られることは同じではない。
Seed Tech事業は、フィリピンを含むオフショア開発、デジタル教育、企業のDX導入支援を扱う。中小企業向けの「DX職―デジショク―」は月20万円から業務改善を支援し、「ソダテク」は動画による学習を提供する。現場への導入支援には人の仕事が残るが、受託開発や研修の標準部分はAIによる代替を受けやすい。事業規模は2026年3月期で約4.7億円と小さく、主力の縮小を補うにはまだ力不足である。
なお、2026年4月には旧アライヴ事業が国内IT人材からSeed Tech側へ組み替えられた。2027年3月期計画に示された両事業の売上構成は、2026年3月期の当初開示とそのまま比較できない。組み替えによる数字の移動を、新規顧客の獲得による成長と取り違えないことが大切だ。
優良さと弱いところ
国内事業には、小さいが確かな競争上の強みがある。顧客の要求に合う人材を探し、契約を調整し、就業後の問題にも対応する仕事には現場の経験が要る。企業とフリーランス双方の情報が蓄積され、次の紹介につながる循環もある。2026年3月期の国内事業の顧客生涯粗利益と獲得費用の比率は5.4倍で、平均稼働継続期間は19.5か月だった。獲得した人材から利益を生む仕組みが、現時点では成り立っている。
ただし、堀、つまり競合が簡単には奪えない優位性は広大ではない。レバテック、PE-BANK、Midworksなどの競合があり、企業は複数社を使い分けられる。技術者も契約終了後には別の仲介会社へ移れる。2026年3月期の国内受注単価の前年比上昇率は0.7%にとどまった。一般物価が年3%上がる長期前提に照らすと、継続的な値上げ力を実績から証明できたとは言い難い。
豪州Launchには、自社VMSと長期顧客関係という別の強みがある。会社によれば、半数以上の顧客が5年以上取引を続けている。しかし、顧客が取引を継続していることは、契約額が減らないことや、解約率が年5%未満であることを意味しない。業界共通基盤への不可逆な組み込みや、法改正のたびに値上げした実績も確認できない。したがって、AI時代にも成長が続く「記録の正本」の事業とは評価しない。
資本効率を見ると、かつての国内中心の高利益率から、豪州買収後は連結利益率が大きく低下した。2024年3月期には巨額の減損を計上し、自己資本が減った。その後のROE回復には利益の改善だけでなく、自己資本が小さくなった効果もある。増分の投下資本が継続して資本コストを上回るかどうかは、まだ証明途上だ。
競争力を守るには、人材データベースの量よりも、AIを使いこなす技術者やプロジェクト責任者を見極められるかが問われる。会社はAI関連案件やプロジェクト管理人材へ重点を移しているが、それが数量の減少を完全に埋めるとまでは考えない。国内の仲介力には一定の堀が残り、海外の堀は収益化の面で弱いというのが、グループ全体への評価である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のITフリーランス市場は、企業の内製化、専門技術者の不足、柔軟な雇用への需要に支えられてきた。フリーランススタートの2025年調査は、国内ITフリーランス市場を約1兆1,849億円と推計し、2030年に約1兆3,619億円へ拡大すると予測している。ただし、これはAIエージェントによる作業時間の急減を十分織り込んだ実績値ではない。10年の価値判断では、過去の市場拡大率よりも、将来に何人月の人手が本当に必要かを重視する。
2026年3月期の国内売上166億円は、この広い市場規模の約1.4%に相当する。契約範囲や売上計上方法が完全にはそろわないため、厳密な同一市場シェアではなく規模の目安である。競争相手はレバテック、PE-BANK、Midworks、ITプロパートナーズなどだが、同じ定義による各社の稼働人月シェアは公表されていない。国内最大級の専門仲介会社の一つであっても、業界全体の数量を支配する地位にはない。
AIエージェント代替は、短期的にはAI開発者や導入責任者の需要を増やしうる。しかし、顧客が買っているのは最終的にはソフトウェアの開発、改修、運用という成果である。AIが同じ成果を少ない人数で作れば、案件数が増えても請求人月数は減る。企業の内製化、仲介を使わない直接契約、AIによる候補者選定も、仲介手数料を押し下げる。国内の中立数量を10年で現在の約7割とするのは、この構造変化を正面から認めるためだ。
豪州ではHays、Peoplebank、Randstad、Robert Halfなどが技術者派遣や採用支援で競争する。豪州の採用関連市場全体を約445億豪ドルとする民間推計に対し、Launchの売上は約9,500万豪ドルで、単純な比率は約0.2%となる。ただし採用市場全体とIT派遣・MSPという実際の競争市場は範囲が異なり、専門市場シェアの数字は確認できない。豪州政府機関Jobs and Skills Australiaによれば、2025~2026年のIT業界の採用実施率は32%で、全業種平均49%を下回った。人材不足の物語だけでは、採用活動の弱さを説明できない。
Seed Techが争うのは、SI受託、オフショア開発、研修、業務支援の複数の市場だ。国内大手SI、地方の開発会社、フィリピンなどの開発会社、教育SaaSが競合する。サービスごとの契約数が公表されておらず、一つの意味ある市場シェアを計算することはできない。DX職の月20万円という料金は具体的だが、契約社数や顧客ごとの継続月数が分からないため、現時点では市場全体を奪う速度を断言できない。
10年後も、複雑なシステム統合、情報セキュリティ、顧客との調整、現場への導入には人が必要だろう。ただし残る仕事と、かつて必要だった人数は別である。会社が競争する市場は消滅しないが、数量の成長を当然視できる市場ではなくなると判断する。
資本政策と M&A
資本配分には、国内事業で稼いだ現金を何に使うかという難題がある。豪州Launch Groupの買収で売上規模は拡大したが、2024年3月期にはのれんや顧客関連資産を中心に約15.6億円、2025年3月期にも約5.4億円の減損を計上した。売上の拡大が株主価値の増加を保証しないことを示す出来事だ。2025年8月には残り30%のLaunch株式も取得し、完全子会社とした。
一方、収益の立て直しと株主還元には前進がある。2026年3月期は営業キャッシュフローが約7.4億円となり、借入金を減らした。約1億円の自社株買いも実行した。配当総額は約3.05億円で配当性向47.8%、2027年3月期の会社計画は配当総額約3.25億円、配当性向51.6%だ。配当性向50%を目安にする方針は具体的であり、利益が減るときには配当も減る可能性を含む。
2027年3月期の単年度計画は売上高283億円、営業利益10億円、純利益6.3億円である。一方、確認できた公開資料には、複数年度の中期経営計画として売上・利益・ROEを拘束する数値目標や、DOE、総還元性向、自社株買い総額についての数字の約束なし。AI活用、DX職、豪州の採算改善は重点施策だが、長期利益の達成を保証する契約ではない。
2026年3月末の現預金は37.5億円、借入金・社債は18.6億円で、純現金は約18.9億円だった。ただし、人材への支払いや顧客からの入金までの運転資金が必要であり、全額を自由に配れるとは考えない。明確な余剰現金をまず5億円とし、残りを事業の安全余力とする。増配と自社株買いの実績を評価する一方、過去5年を通じて高い還元率が定着していたわけではないため、余剰現金の株主への戻り方は75%と見る。
今後の資本配分で最も重要なのは、豪州や新規サービスの売上規模ではなく、新たに使った資本に見合う利益が生まれるかだ。還元余力のある国内事業を守りながら、成果が不確かな買収や先行投資を抑えられるかが、長期株主の取り分を左右する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国内のIT人材市場には、目先の景気を超えた需要がある。金融、通信、製造、公共分野の古いシステムはすぐには消えず、現場の事情を理解して移行作業を進められる人材が足りない。AIで単純なコード作成が容易になっても、顧客の要件を整理し、セキュリティを確かめ、複数のシステムを統合する人の責任は残る。ギークスはAIに強い技術者やプロジェクト管理人材へ登録者の重点を移しており、案件の質を高められる可能性がある。
国内の顧客関係はゼロから再現しにくい。累計取引企業数が増え、平均稼働期間も長いため、次の紹介案件に結び付きやすい。顧客獲得費用に対する生涯粗利益の水準を維持できれば、稼働人月が伸びなくても広告費や管理費を抑えて利益率を改善できる。社内向けのギークスAIによって、候補者選定や営業の事務作業を効率化する余地もある。人を増やさずに多くの契約を管理することは、仲介会社自身にとってのAIの利点だ。
豪州Launchについても、現在の薄利を永続的な実力と決めつける必要はない。オフィス移転や管理費削減は進み、損失から黒字へ戻した。MSP契約と独自VMSを通じて顧客の人材調達全体を引き受けられれば、単発の紹介より関係が長くなる。高採算の政府・金融・技術分野に案件を選別することで、売上を大きく増やさずとも利益を伸ばせる。
配当性向50%を目安とする方針が続き、国内の稼ぐ力から現金が積み上がれば、株主には配当と将来の還元余力が残る。過去の減損を教訓に大規模買収を控えれば、経営者は従来より高い資本効率を実現できる。10年後の同社は、大きく成長する人材会社ではなく、少ない人員で安定した利益と現金を生む仲介会社として価値を高める道がある。
慎重な見方
事業の弱点は、売上の単位が人月であることに尽きる。顧客がAIエージェントへ開発、テスト、改修、運用を任せるほど、必要な外注技術者の数は減る。案件名がAI開発に変わっても、少人数の高度な技術者が多くの作業を片付けるようになれば、仲介会社の売上数量には逆風となる。技術者の単価が上がっても、人数の減少を必ず埋められるわけではない。
仲介業務自体にも代替の危険がある。AIは候補者の技能照合、面談準備、書類確認、契約更新、働き方の管理を自動化できる。企業と技術者が直接つながれば、仲介会社は自らの手数料を説明し続けなければならない。長い稼働期間と大きな登録者名簿は、顧客との関係が続く理由にはなるが、仲介手数料率を守る絶対的な障壁ではない。
海外事業の問題は、将来の技術変化がなくても既に収益性が低いことだ。売上92億円に対して利益は約0.3億円であり、顧客の人材調達を管理するサービスが十分な値決め力を生んでいるとはいえない。豪州の採用統計にも需要の鈍さが表れている。人件費や顧客獲得費用が少し上がるだけで、利益が再び失われる可能性がある。
さらに、Launch買収では大きな減損が生じた。経営者が将来の相乗効果を期待して資本を投じても、株主に利益が残るとは限らない。Seed Techの受託、研修、SaaS型学習サービスも、AIが作業や操作画面を代替する方向から自由ではない。国内の人月縮小と豪州の採算悪化が重なれば、配当は減り、蓄積された自己資本も必ずしも額面の価値を持たなくなる。事業が存続しても、以前の成長会社としての優良さを失う可能性は十分にある。
どちらに重みを置いたか
国内の顧客基盤、稼働継続期間、現金創出力は評価する。一方、売上の大部分が人の稼働時間に依存し、豪州買収の資本効率にも課題が残るという指摘のほうが、10年の価値を考えるうえでは重い。中立の時点でAIによる人月の減少を織り込んでいるため、同じ危険を資本コストや確率でさらに重ねてはいない。確率を下側にやや寄せる理由は、実際に起きた買収減損と豪州の薄利である。やや悲観と悲観の合計を40%とし、楽観側の30%より重くした。将来の現金蓄積も評価した結果、適正価値は約46.8億円となり、現在の時価総額を約24%下回る。結論はやや割高である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 681 円69 億円(+ 還元の換算額還元の合計 227 円23 億円)。 今の値に割り戻すと 461 円47 億円、今との差 −20.8%、 期待の年率 +5.3%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 1,648 円167 億円 | 433 円44 億円 | +257.5% | +15.9% | 250 円25 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,237 円126 億円 | 345 円35 億円 | +171.8% | +12.3% | 285 円29 億円 |
| 中立 | 30% | 584 円59 億円 | 236 円24 億円 | +40.9% | +4.1% | 246 円25 億円 |
| やや悲観 | 25% | 227 円23 億円 | 138 円14 億円 | −37.3% | −5.5% | 91 円9 億円 |
| 悲観 | 15% | 192 円19 億円 | 49 円5 億円 | −58.6% | −9.2% | 36 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 681 円69 億円 | 227 円23 億円 | +56.0% | +5.3% | 908 円92 億円 |
今の株価時価総額 582 円59 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 12% AIに対応した高付加価値仲介として生き残る 利益 12 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,648 円167 億円
企業のAI導入は拡大するが、複雑な既存システムの移行や全社的な業務改革には、経験ある技術者とプロジェクト責任者が必要であり続ける。国内では金融、通信、製造などの顧客基盤が維持され、ギークスがAI駆動開発に強い人材を適切に見極める。年間稼働人月数はおおむね現在の水準を保ち、10年間の物価上昇を契約単価に反映できる。
レバテックやPE-BANKなどとの競争は続くが、既存取引先から繰り返し案件を得られ、顧客獲得費用が売上ほどには増えない。社内のマッチング業務はAIで効率化し、国内セグメントの利益率が改善する。人材市場全体がAIで縮んでも、会社は案件の質と取引関係を守って相対的なシェアを上げる。
豪州Launchも高採算の政府・金融案件への移行が成功し、MSPの管理能力が収益改善に結び付く。Seed Techは大きな事業にはならないが、顧客の現場への導入支援が続き、赤字を生まない。大型買収を控えて余剰現金を蓄え、必要な投資と株主還元の均衡を保つ。堀が強く広がるわけではないものの、既存の仲介力を持続的な現金創出につなげる10年となる。
- 国内IT人材:数量 20,700(年間の稼働人月数(人月、実数))× 価格 1.07(稼働1人月当たりの連結計上売上(百万円、名目))→ 売上 221 億円・営業利益 23 億円。人月数はほぼ横ばい。実現単価は約1.335倍で、名目物価上昇を吸収。AIによる社内事務効率化と高単価人材への重点移行で利益率10.5%。
- 海外IT人材(Launch Group):数量 7,500(年間のIT人材稼働人月数(人月、開示の下限による概算))× 価格 1.62(稼働1人月相当の派遣・紹介・MSP合計売上(百万円、名目の換算単価))→ 売上 122 億円・営業利益 4 億円。人月数は横ばい。契約単価とMSP管理料の構成が改善し、薄利から3.2%の利益率へ回復。
- Seed Tech:数量 500(年間の有償開発・支援・研修の等価人月数(推定))× 価格 1.24(等価人月当たりの各種サービス合算売上(百万円、推定))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。等価人月は増えず、現場支援の付加価値と管理効率によって黒字を維持。
倍率:資本コストk=8.25%。10年より先の名目成長率g_long=0%なので、正当化PER=(1-g÷RONIC)÷(k-g)=1÷0.0825=12.12倍。10年後の余剰現金43億円から税後利息を1.4%として0.602億円引いた事業純利益は11.148億円。事業用自己資本は77.4-43=34.4億円、事業ROEは約32.4%、普通の堀で超過利回りが半分残るRONICは約20.3%。今後のgは0%のため上限倍率を手で割り引かない。時価総額は11.148÷0.0825+43×0.75=約167.38億円。10年の純利益合計約91億円から還元44億円を引いた自己資本増加47億円のうち、事業資本として約9億円を使い、初期余剰現金5億円を含む43億円が残る見立て。
確率:国内の稼働人月を減らさず、豪州も現在の数量を維持し、管理効率と案件構成を改善できる上振れである。AIエージェントを新たな収益商品として金額付きで販売した実績は未確認のため、AIそのもので人月数量が伸びる想定は採用せず、数量を現在以下に制限した。
やや楽観 18% 人月の小幅減を単価と業務効率で補う 利益 9 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,237 円126 億円
AIによって単純な受託開発やテスト作業は減るが、設計や現場調整を担う高度な技術者への需要は残る。国内の稼働人月数は少し減るものの、既存顧客との長い取引関係が案件獲得を支える。企業はフリーランスを使う利便性を失わず、単価上昇の大部分を受け入れる。競合とのシェア争いは続くが、ギークスの地位は大きく崩れない。
社内業務へのAI活用により、候補者探しや契約管理の担当者を大きく増やさずに運営できる。国内の営業利益率は現在より改善するものの、高付加価値案件だけで独占的な値上げをするほどには至らない。豪州では人材調達活動の伸びが鈍いが、高採算案件を選び、赤字を繰り返さない体制が定着する。
Seed Techはオフショア開発と現場導入支援に絞り、SaaS型研修は競争に応じて価格を調整する。大型M&Aによる上乗せは期待せず、利益の一部を還元しながら余剰現金を積み上げる。以前ほど急成長する会社ではないが、技術変化に適応した堅実な人材サービス会社として存続する。
- 国内IT人材:数量 19,700(年間の稼働人月数(人月、実数))× 価格 1.05(稼働1人月当たりの連結計上売上(百万円、名目))→ 売上 207 億円・営業利益 19 億円。人月数は現在の95.1%。名目単価は約1.31倍。営業・管理の効率化で利益率9.3%。
- 海外IT人材(Launch Group):数量 7,000(年間のIT人材稼働人月数(人月、開示の下限による概算))× 価格 1.58(稼働1人月相当の派遣・紹介・MSP合計売上(百万円、名目の換算単価))→ 売上 111 億円・営業利益 2 億円。人月数は現在の93.3%。選別受注により営業利益率2.0%を確保。
- Seed Tech:数量 475(年間の有償開発・支援・研修の等価人月数(推定))× 価格 1.19(等価人月当たりの各種サービス合算売上(百万円、推定))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。等価人月数は95%。人手を要する現場支援を残し、営業利益率8%。
倍率:k=8.25%、AIエージェント代替を反映したg_long=0%から正当化PERは12.12倍。余剰現金38億円の税後受取利息0.532億円を除く事業純利益は8.018億円、事業用自己資本は69.4-38=31.4億円でROEは約25.5%。普通の堀に対応するRONICは約16.9%だが、g=0%なので倍率は1÷kに一致する。事業利益の現在価値と余剰現金の75%を足し、2036年の時価総額を8.018÷0.0825+38×0.75=約125.69億円とする。10年の純利益合計約74億円、還元35億円から自己資本69.4億円へつながり、うち38億円は余剰現金と見込む。
確率:国内の人月数が約5%減、豪州も約7%減るが、顧客管理の効率化とインフレ転嫁で採算を上げる筋書き。事業の強みから十分に起こりうる一方、豪州の利益率改善を長く続ける必要があるため、楽観以上の中心にはしない。
中立 30% AI代替で人月は縮むが、国内仲介の利益は残る 利益 4 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 584 円59 億円
2036年にはAIエージェントがソフトウェアの標準的な開発、テスト、改修、運用作業を相当程度担う。企業が必要とする技術者は減るが、既存システムの移行、顧客との要件調整、障害時の責任ある判断には人が残る。国内の稼働人月は年間14,500人月となり、現在の約7割に縮む。名目単価は物価上昇におおむね沿って上がるため、国内の売上減少は比較的小さい。
レバテックやPE-BANKなどとの競争で、ギークスが大幅なシェアを奪う展開にはならない。AI関連人材への重点移行は、より高度な案件を確保するための防御策として機能するが、数量の減少を逆転させるほどではない。国内事業はなお十分な営業利益を稼ぐものの、利益の増加は限定的となる。
豪州Launchも稼働人月が減り、MSPとVMSの業務管理収入だけでは落ち込んだ人材派遣を補いきれない。高採算案件への転換は進むが、営業利益率は約1%にとどまる。Seed Techでは人手による導入支援が残り、標準的な受託や教育サービスは縮む。全社費用は名目人件費の上昇を受けて残り、連結の利益を圧迫する。
10年を通じて配当は続くが、利益が減る分、総還元額も抑えられる。一方、事業規模に比べて必要な設備が小さいため、利益の留保から余剰現金が積み上がる。会社は存続して現金を生むが、かつての高成長を前提に資本を再投資する会社ではなくなる。
- 国内IT人材:数量 14,500(年間の稼働人月数(人月、実数))× 価格 1.07(稼働1人月当たりの連結計上売上(百万円、名目))→ 売上 155 億円・営業利益 13 億円。人月数は現在の70.0%、単価は約1.335倍。需要減をインフレ転嫁が部分的に補い、国内利益率は8.3%。
- 海外IT人材(Launch Group):数量 5,100(年間のIT人材稼働人月数(人月、開示の下限による概算))× 価格 1.60(稼働1人月相当の派遣・紹介・MSP合計売上(百万円、名目の換算単価))→ 売上 82 億円・営業利益 1 億円。人月数は68.0%、実現単価は約1.30倍。VMS・MSPは残るが価格競争により営業利益率1%。
- Seed Tech:数量 350(年間の有償開発・支援・研修の等価人月数(推定))× 価格 1.10(等価人月当たりの各種サービス合算売上(百万円、推定))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。等価人月数は70%、単価は約1.17倍。SaaSの画面操作と標準研修には値下げ圧力が残る。
倍率:k=8.25%、AI代替下の名目g_long=0%よりPERの正当化上限は12.12倍。10年後純利益3.60億円から余剰現金27億円の税後利息0.378億円を引くと事業純利益は3.222億円。事業用自己資本は56.4-27=29.4億円、事業ROE約11.0%、普通の堀によりRONICは約9.6%となる。gが0%なのでPERは1÷kと一致する。時価総額=3.222÷0.0825+27×0.75=約59.30億円。10年間の純利益の合計を約50億円、配当・自社株買いの合計を24億円と見込み、今の自己資本30.4億円に差額を積んで56.4億円とした。将来の余剰現金27億円は初期の5億円に留保利益のうち運転資金やAI対応投資に必要でない分を積み上げたもので、全額が株主に返るとは考えない。
確率:国内外の人月需要がそれぞれ約7割へ減るというAI代替の人月・工数型の中立レンジを採用した。国内の顧客基盤による一定の利益率維持と豪州の薄利継続を同時に認め、回復一辺倒にも全面的な崩壊にも寄せない中心シナリオ。
やや悲観 25% 仲介の数量減が利益率を圧迫する 利益 0 億円 · PBR 0.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 227 円23 億円
AIエージェントによる開発・運用の自動化が想定より速く進み、企業は新しいシステムの構築だけでなく、既存システムの保守でも外部人材を減らす。国内の稼働人月は11,600人月程度まで縮む。高い技能を持つ人材は残るが、案件数の減少で仲介会社間の競争が激しくなり、名目単価の上昇は物価に追い付かない。
国内の顧客基盤そのものは消えない。しかし、過去に稼いでいた仲介粗利は薄くなり、社員の採用・顧客対応・管理の費用を売上に合わせて十分削れない。競合もAIによる紹介効率化を進めるため、ギークスだけが手数料を守ることは難しい。国内セグメントの利益率は低下する。
豪州Launchの人月数も大幅に減り、MSPによる管理収入では派遣売上の縮小を補えない。高採算案件を選んでも営業利益はほぼゼロになる。Seed Techは標準的な受託開発と研修の縮小で小幅な赤字となる。連結ではほぼ損益均衡に近づき、利益が積み上がらなくなる。
経営は大型買収を控え、現金を維持することを優先する。前半には利益があるため配当を続けられるが、後半の還元額は大幅に減らす。株主に残る価値は高成長企業の利益ではなく、今までの資本と売却できる資産、限定的な稼ぐ力に依存する。
- 国内IT人材:数量 11,600(年間の稼働人月数(人月、実数))× 価格 1.02(稼働1人月当たりの連結計上売上(百万円、名目))→ 売上 118 億円・営業利益 8 億円。人月数は現在の56.0%。単価は名目1.27倍にとどまり、固定費負担で利益率6.5%。
- 海外IT人材(Launch Group):数量 4,350(年間のIT人材稼働人月数(人月、開示の下限による概算))× 価格 1.49(稼働1人月相当の派遣・紹介・MSP合計売上(百万円、名目の換算単価))→ 売上 65 億円・営業利益 0 億円。人月数は58%。MSP管理契約が残っても、人材派遣の減少と競争で採算は均衡。
- Seed Tech:数量 275(年間の有償開発・支援・研修の等価人月数(推定))× 価格 1.00(等価人月当たりの各種サービス合算売上(百万円、推定))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。等価数量は55%。受託・教育SaaSの代替が進み、営業利益率はマイナス2%。
倍率:10年後の純利益は約0.1億円に縮み、稼ぐ力から評価する価値は小さい。そこで過去の市場PBRを参照せず、現時点の自己資本30.4億円に対する資産回収能力で評価する。PBR0.76×現在の30.4億円=約23.10億円であり、10年後の自己資本50.4億円に0.76を掛けてはいない。現時点の純現金18.9億円を資産床とし、これを上回る範囲で事業の残存価値を認める。将来の余剰現金15億円は資産評価の中に含め、別途加算しない。
確率:国内外の人月がAI代替の中立レンジよりさらに減り、価格競争と固定費が利益を圧迫する筋書き。下に寄せる理由:豪州Launchの2026年3月期営業利益率は約0.4%にすぎず、既に買収後の減損実績がある。数量が予想以上に落ちた際の収益防御力が低いという個社固有の事実を重視する。
悲観 15% 人月仲介の優位が崩れ、赤字が定着する 利益 −5 億円 · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 192 円19 億円
企業のAIエージェント利用が高度化し、ソフトウェア開発、保守、テストの多くが少人数で完結するようになる。企業は外部技術者を雇う前にAIによる代替を検討し、募集案件の総数が大きく減る。技術者の候補選定や契約事務も自動化され、仲介会社を通さない直接契約が広がる。国内の稼働人月は7,500人月程度となり、以前の広い登録者基盤は十分な差別化につながらない。
国内の請求単価は名目では上がるものの、物価上昇には大きく遅れる。売上が減る一方で、取引先の対応、セキュリティ、契約管理に必要な固定費をゼロにはできない。営業利益率は著しく低下し、国内事業単独でも従来の利益を稼げなくなる。
豪州Launchは採用市場の弱さと顧客のAI活用が重なり、人月数が現在の4割まで減る。管理契約の単価にも下押し圧力が及び、MSPとVMSが継続しても部門は赤字となる。Seed Techでも、受託開発と操作型教育サービスの価値が失われ、人員整理を行っても採算は戻らない。グループは過去の買収資産の価値を取り戻せず、構造的な赤字に陥る。
経営は新規投資を止め、配当も後半には停止する。最初の数年の還元はあっても、株主価値の中心は現存する純現金と回収できる資産に移る。これは過去の利益率へ戻る景気循環の谷ではない。会社が存続しても、人月仲介にかつての優良さが戻らない10年である。
- 国内IT人材:数量 7,500(年間の稼働人月数(人月、実数))× 価格 0.96(稼働1人月当たりの連結計上売上(百万円、名目))→ 売上 72 億円・営業利益 1 億円。人月数は現在の36.2%、単価は名目1.20倍。競争と固定費で営業利益率1%。
- 海外IT人材(Launch Group):数量 3,000(年間のIT人材稼働人月数(人月、開示の下限による概算))× 価格 1.35(稼働1人月相当の派遣・紹介・MSP合計売上(百万円、名目の換算単価))→ 売上 41 億円・営業利益 −1 億円。人月数は40%。MSPも値下げを迫られ、営業利益率マイナス2.5%。
- Seed Tech:数量 200(年間の有償開発・支援・研修の等価人月数(推定))× 価格 0.85(等価人月当たりの各種サービス合算売上(百万円、推定))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。等価数量は40%、単価も現在を下回る。受託・研修の採算が崩れ、営業利益率マイナス12%。
倍率:2036年の営業利益はマイナス7.4億円、純利益はマイナス5.2億円であり、正当化PERによる継続利益価値を使わない。過去の株価やPBRの谷を根拠にせず、現在の自己資本30.4億円から買収のれん・顧客関連資産の非換金性と事業縮小費用を差し引いた資産回収価値を基準とする。PBR0.64×現在の自己資本30.4億円=19.46億円。2036年の自己資本19.5億円に倍率を掛けておらず、純現金約18.9億円の床も上回る。将来の余剰現金3億円はこの資産評価に含め、別途加算しない。10年累計では初期の利益と後半の損失を合算した純損失約5.9億円、還元5億円によって自己資本が19.5億円になると想定した。
確率:国内外でAI代替と直接契約化が同時に進み、売上数量が現在の4割以下まで落ちる構造的敗北の筋書き。既に豪州事業で大きな減損を経験しており、事業構造の見誤りが再発しうる。ただし国内の顧客基盤と純現金が残るため、直ちに破綻する筋書きとはしない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内IT人材
ITフリーランスと開発案件を結び、稼働人月に応じて売上を計上する主力事業。AI関連技術者やプロジェクト管理人材への重点移行を進めている。
| 数量年間の稼働人月数(人月、実数) | 価格稼働1人月当たりの連結計上売上(百万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20,709 | 0.80 | 166 | 14 |
| 10 年後 中立 | 14,500 | 1.07 | 155 | 13 |
取り方:会社の2026年3月期決算説明資料16ページに年間稼働20,709人月と受注単価83.2万円を開示。有価証券報告書のセグメント外部売上約166.01億円を20,709人月で割ると、実際の売上計上に対応する平均単価は約80.16万円となる。開示受注単価との差は案件ごとの計上期間やセグメント内収益の差を含むため、シナリオの基準は後者の実現売上単価とした。百万円×人月を億円に換算する係数は0.01。国内ITフリーランス市場はフリーランススタートの2025年推計1兆1,849億円、広義市場に対する売上規模は約1.4%。レバテック、PE-BANK、Midworks等の同一定義によるシェアは未開示で、1.4%は厳密な案件シェアではない。AI代替の分類は人月・工数型で、中立の数量は現在の70.0%、価格は現在の約1.335倍。
海外IT人材(Launch Group)
豪州でIT人材派遣、人材紹介、MSPによる人材調達管理を手掛ける。自社のVMSを使うが、収益の中心は人材稼働と調達サービスに依存する。
| 数量年間のIT人材稼働人月数(人月、開示の下限による概算) | 価格稼働1人月相当の派遣・紹介・MSP合計売上(百万円、名目の換算単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 7,500 | 1.23 | 92 | 0 |
| 10 年後 中立 | 5,100 | 1.60 | 82 | 1 |
取り方:会社説明資料は人材データ43万人超、年間稼働7,500人月超を開示する。売上92.44億円を保守的な数量下限7,500人月で割り、MSP管理料と紹介料を含む人月相当単価123.252万円を逆算した。これは契約上の純粋な派遣単価ではなく複数サービスをまとめた代用尺度であり、数量が実際に7,500を上回れば単価は低くなる。2026年3月期の海外売上は約9,500万豪ドル、会社が示す換算レートは豪1ドル96.50円。豪州の人材採用市場全体約445億豪ドルという民間推計に対する規模は約0.2%だが、IT派遣・MSPに限定した市場シェアは不明。競合はHays、Peoplebank、Randstad等。VMSに年5%未満の実解約率など堀の証拠が二つそろわないため、主たる分類は人月・工数型とし、中立の数量は68.0%、価格は約1.30倍。
Seed Tech
オフショア開発、DXの実行支援、デジタル教育、SaaS型学習動画を提供する。受託と研修は工数型、操作画面を持つ教育SaaSは席課金型のAI代替リスクがある。
| 数量年間の有償開発・支援・研修の等価人月数(推定) | 価格等価人月当たりの各種サービス合算売上(百万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 500 | 0.94 | 5 | 0 |
| 10 年後 中立 | 350 | 1.10 | 4 | 0 |
取り方:セグメント外部売上は約4.71億円。オフショア開発、教育、DX職、ソダテクの契約数や利用席数の内訳は開示されておらず、サービス数量を断定できない。会社の有価証券報告書では当該セグメント従業員63名。年間756人月の従業員稼働可能量のうち約500人月を有償サービス相当とする保守的な代理数量を設け、売上から等価単価94.2万円を算出した。実際には教育販売や外部委託もあるため、500人月は会社公表の実績ではない。DX職の公表料金は月20万円から、月40時間・最小3か月で、一般受託と単価体系が異なる。複数市場が重なり、受託・教育・DX支援を統一した分母による会社のシェアや競合シェアは確認できない。2026年4月に旧アライヴ事業がこの区分へ移管されたため、翌期計画の売上増には組替え分が含まれる。中立の等価数量は70%、価格は約1.17倍とし、操作型SaaS部分の価格上昇を人月型より低めに考慮した。
リスクと懸念
AIエージェント代替による請求人月の減少
国内と豪州の主力売上は、技術者が何か月稼働するかに強く依存する。AIがコード作成、試験、運用、資料化を肩代わりすると、顧客の仕事が続いても必要な人月数は減る。AI案件が増加していることだけでは売上数量の増加を保証しない。中立で国内人月を70%、豪州を68%とし、10年より先の名目成長率を0%とした。
仲介手数料と価格決定力の弱さ
顧客は複数の人材仲介会社を使い分けることができ、フリーランスも契約終了時に別会社へ移れる。AIによる候補者検索と直接契約が普及すれば、人材仲介会社が担う部分はさらに狭まる。2026年3月期の国内受注単価上昇率は0.7%で、強いインフレ転嫁力を示す実績ではない。案件数と契約単価を分けて監視する必要がある。
豪州Launch Groupの利益率と買収資本
2026年3月期の海外売上は約92億円に達したが、セグメント利益は約0.3億円だった。わずかな売上減少や人件費の上昇が、すぐに赤字へつながる利益構造である。過去には買収関連資産の大きな減損も生じた。MSPと自社VMSに顧客との接点があっても、採算と資本回収の実績が伴わなければ株主価値を高く評価できない。
顧客データベースの過大評価
国内の登録フリーランス約2.4万人、豪州の人材データ43万人超は営業上の資産だが、全登録者が有償稼働しているわけではない。情報が古くなることや、同じ人材が複数の会社へ登録することも考えられる。顧客が長年取引しているという説明も、契約額の維持や低解約率を直接証明しない。登録者総数より実稼働人月と粗利を重視する。
資本配分の再失敗と減損
海外買収では約15.6億円と約5.4億円の大きな減損を経験し、国内の稼ぐ力が増えても連結の自己資本を傷める可能性を示した。今後、AI対応や新しいDXサービスのために大型買収を繰り返せば、利益率が改善する前に資本だけが膨らむ恐れがある。投資額に対する実際の営業利益とキャッシュフローを追い、売上規模の拡大だけを成功と見なさない。
Seed Techの受託・研修・操作型SaaSの陳腐化
オフショア開発や企業研修は人の工数や受講席から収入を得る部分が多く、AIの自動開発、対話型教育、操作画面を介さない業務処理で置き換えられる可能性がある。DX職には現場作業が残るが、公開情報から契約社数や継続率を十分に確認できない。小規模事業の高成長を、主力事業の数量減少を補う確実な柱と見なすことはできない。
余剰現金と少数株主の取り分
純現金が厚くても、買掛金やフリーランスへの支払いに備えた運転資金は自由に配れない。創業者側の議決権が大きいため、少数株主は買収、配当、自社株買いの判断を直接動かしにくい。一方で2026年3月期には増配と自社株買いの実績があるため、現金を全く戻さないとの前提も適切ではない。余剰現金の75%を株主に帰属する価値として扱った。
今後の分かれ目
- 国内の稼働人月数が3年以上増え、受注単価も物価上昇率を上回り続けたら
- AIによる数量減少を顧客獲得と値上げ力で補える証拠となる。中立の数量と価格を上方修正し、国内事業の堀の評価も見直す。ただし単年度のAI関連案件増加だけでは判断しない。
- 国内の稼働人月が前年比で二桁減り、受注単価も下がり始めたら
- AI代替と仲介競争が同時に進む兆候であり、やや悲観・悲観の筋書きが近づく。売上だけでなく仲介粗利、平均稼働期間、顧客の直接契約化を確認する。
- Launchの海外セグメント利益率が3%以上で複数期安定したら
- MSPの管理能力や案件選別が実際の収益力になったと判断できる。楽観側の利益率と確率を上げ、過去の買収資本の回収可能性を再評価する。
- 豪州のIT採用環境がさらに悪化し、Launchが再び継続的な赤字に転じたら
- 中立の海外利益率を下方修正し、追加の減損と現金流出を検討する。売上を拡大しても営業利益が伴わなければ、海外事業の価値を低く評価する。
- AIエージェントを自社の有償商品として販売し、契約金額と継続率が開示されたら
- 既存の人月仲介とは別の収益構造が実証されたことになる。その金額に限って新たな数量・単価モデルを設ける。社内のAI活用や実証実験だけでは、楽観の人月数量を増やさない。
- 大型買収を控え、配当性向50%前後と継続的な自社株買いが定着したら
- 余剰現金の株主への戻り方を75%から100%へ引き上げる根拠になる。事業の数量や長期成長率を変更せず、株主が実際に受け取れる現金の価値を上方修正する。
- 次の買収で多額ののれんが発生し、その後の営業利益が投下資本コストを下回ったら
- 将来の追加減損と現金使用を悲観側へ反映する。株主に戻る現金を減らし、成長投資で価値を生めるという見方を弱める。
見ておくもの
- 国内IT人材の四半期・通期稼働人月数と前年比伸び率
- 国内の受注単価、実現売上単価、粗利率、平均稼働継続期間
- 国内の累計取引企業数、新規登録者数、顧客獲得費用に対する生涯粗利益
- AI関連案件の稼働人月構成と、AIエージェント商品自体の有償売上額
- 豪州Launchの豪ドル建て売上、稼働人月、MSP売上構成、セグメント営業利益率
- Jobs and Skills AustraliaによるIT採用実施率と採用人数の見通し
- Seed TechのDX職契約社数、継続率、SaaS有料契約数、オフショア開発の採算
- 買収に伴うのれん・顧客関連資産の追加取得と減損
- 営業キャッシュフロー、純現金、配当性向、自社株買いによる発行済み株数の実際の減少
- 新リース会計基準の適用後における使用権資産・リース負債の開示と従来基準への組替え
倍率と資本コストの決め方
2026年10月19日の株価や過去・同業のPERを使って10年後の倍率を決めていない。国内20,709人月、豪州7,500人月超、Seed Techの推定等価人月を起点とし、数量と名目単価を分けて売上を計算した。AIエージェント代替は人月型の中立数量と10年後以降のg_long=0%に反映し、資本コストの寿命には重ねていない。資本コスト8.25%、通常の堀、長期成長率0%から楽観~中立の正当化PERは12.12倍となる。余剰現金については各筋書きで10年間の利益留保と必要運転資本から期末残高を考え、税後利息を純利益から除いて75%を加算した。悲観側では現在の自己資本30.4億円と純現金18.9億円を使い、将来自己資本にPBRを掛けていない。2028年3月期からの新リース会計基準による貸借対照表上の表示変更は、継続価値を増減させないため、各期の利益を従来の賃借料費用を含む基準でそろえる。各筋書きの時価総額と還元を10年・中間5年で割り戻した合計は約46.8億円で、基準時価総額約61.5億円との差は約マイナス24%。結論はやや割高であり、現在の株価に寄せた倍率調整は行っていない。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%による基本資本コスト7.5%に、循環・価格・財務・寿命から算出した品質調整+0.75%を加えた。買収の成否やAIによる数量減少には別の上乗せをせず、各筋書きの利益と確率に反映した。