結論
ERIホールディングスは、建物の安全性と省エネルギー性能を第三者の立場から審査する国内最大手の企業集団である。筆者の結論は「割安」だ。2026年5月期の記録的な利益率を10年間続くものとは考えない。それでも、法定検査の必要性、全国的な営業基盤、積み上がる現金を考えると、現在の時価総額311億円には安全域がある。
最大の強みは、景気や流行だけでは消えない仕事を持っていることだ。建築確認は原則として建築前に必要であり、完了検査も法律で求められる。2025年4月の法改正によって省エネ審査と構造審査の範囲が広がり、同社は申請件数が横ばいでも審査単価を大幅に引き上げた。2026年5月期の営業利益は49億円となった。これは一時的な受注増だけでなく、1件から得られる収入が変わったことを意味する。
ただし、2026年の営業利益率20%を新しい平常値と断言するのは危険である。住宅着工は長期的に減少し、施工会社は建設費と金利の上昇に苦しんでいる。法改正直後の審査滞留が解消すれば処理件数の伸びは落ち着く。電子申請とAIによって定型的な審査補助が安くなれば、同社にも価格競争が及ぶだろう。中立では10年後の売上高を約328億円、営業利益を約51億円とし、利益率が15%台まで低下する筋書きを中心に据えた。
もう一つの成長源は、道路、橋梁、河川、既存建物の調査や測量である。買収によって事業を広げてきた実績は評価できるが、この領域は建築確認ほど市場支配力が強くない。経営陣が利益をどれほど高い利回りで再投資できるかを見極める必要がある。株主への配分も配当性向30%が中心で、現金が滞留する可能性を残す。
10年先には、新築住宅の減少と検査対象の拡大が綱引きを続けるだろう。法定の証明そのものはAIに置き換わりにくいが、書類作成や図面処理は置き換わる。2026年の好況をそのまま延長せず、利益率の低下、買収失敗、株主還元の不確実性まで考えても、利益と純現金から導く長期価値は現在の時価総額を上回る。割安という結論の核心は、成長への楽観ではなく、規制に守られた収益の持続力である。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主が最初に問うべきことは、10年後も建物の安全性を第三者が証明する必要があるかという一点である。その答えは、おそらく肯定的だ。人口が減っても建物は建て替えられ、既存建物の検査も続く。法定の確認済証や検査済証には単なる情報処理とは違う法的な意味があり、正確な判断と責任を伴う。これは長く所有する事業として魅力的な性質である。
次に、利益を守る堀を調べる。同社は全国の支店網と有資格者を抱え、建築確認と住宅性能評価で高いシェアを持つ。2026年には件数を増やさず、審査内容の拡大によって単価を大きく引き上げた。ただし、住宅会社が他の指定機関を利用することは可能であり、値上げを無制限に通せるわけではない。価格競争が完全に消えない以上、法的な参入障壁は強くても、企業全体の堀を独占的と評価することはできない。
オーナー利益については、建築確認・性能評価は大規模な工場を必要としない。稼いだ利益から必要なシステム更新、人材教育、拠点整備を支払った後にも相当な現金が残る。一方、資格者の人件費は固定費に近く、案件が減ってもすぐには削れない。インフラ分野の買収資金も必要であり、会計上の純利益が全て株主の自由に使える現金になるわけではない。
筆者が評価するのは、規制への対応力を市場シェアと利益に変えてきた実行力である。気になるのは、直近の利益率が過去最高となった時点で、それを将来の当然の姿として扱う危険だ。2026年の高収益が法改正の恒久的な効果なのか、一時的な処理滞留なのかは、これからの実績で確かめなければならない。
現在の時価総額は、長期の利益価値と純現金に対して低いと考える。ただし、割安に見える理由の一部が法改正初年度の高収益にある以上、確信度は無条件に高くない。制度の堀が維持され、買収に過大な金額を払わず、現金を株主のために使うことが確認できれば、10年間所有する企業としての魅力は一段と増す。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は、建築確認、完了検査、住宅性能評価、省エネ適合性判定である。2026年5月期の確認検査及び住宅性能評価関連事業は売上高188億円で、全社売上の76%を占めた。建築主や住宅会社、設計会社から手数料を受け取り、建築基準法や住宅品質確保法に沿って検査・評価を行う。利用者が自由に省略できない仕事と、任意で取得する住宅性能評価とが混在している。
建築確認と完了検査では、それぞれ年間約6万9千件、約6万6千件を取り扱う。建築確認の1件当たり収入は2025年5月期の約5.2万円から2026年5月期には約6.8万円へ上昇した。完了検査でも約5.0万円から約6.5万円になった。件数はむしろ小幅に減少しており、法改正で審査内容が増えたことが増収の主因である。
住宅性能評価は、設計図書を調べる設計評価と、施工中の現場確認を経て交付する建設評価から成る。戸建住宅と共同住宅では料金が異なり、特に現場検査を伴う建設評価は人員を必要とする。長期優良住宅や住宅ローン、保険などの制度と結び付いて利用されるため、住宅市場が縮小しても普及率の上昇によって一定の需要を維持できる。
省エネ分野は法改正の恩恵が大きい。2026年5月期の省エネ適合性判定は約1万9千件となり、前年の約6千件から急増した。BELSという建物の省エネ性能を表示する評価も扱っている。法令が複雑になるほど専門機関の役割は増えるが、審査方法の簡素化や他制度との重複省略によって件数が変動する点には注意が必要である。
インフラストック及び環境関連事業の売上高は56億円で、全体の23%を占める。既存建物の劣化調査、建築基準法第12条の定期報告、道路・橋梁・河川の調査、測量、地質・環境調査、建設コンサルタント業務などを行う。福田水文センター、道建コンサルタント、森林環境リアライズ、国土工営コンサルタンツなどを傘下に収め、公共インフラの維持管理需要を取り込んでいる。
残りの約1%は建築士向け講習、CAD・積算システム、ドローン・ロボット関連である。法定検査と異なり、講習や受託開発は人の工数に収入が結び付きやすい。AIエージェントによる代替と価格低下を直接受ける部分として、長期評価では慎重に扱う。
優良さと弱いところ
同社の堀、つまり競合が簡単にまねできない強みは、許認可と全国の専門人材網にある。日本ERIは全国に支店網を持ち、グループには2026年5月末時点で772名の確認検査員・副確認検査員が在籍する。全国の大型顧客に同じ品質のサービスを提供できる機関は限られる。指定や登録を得るだけでなく、地域ごとに有資格者を配置する必要があるため、新規参入には時間と資金がかかる。
市場での実績も堀を裏付ける。建築確認の全国シェアは2024年度に15%まで高まり、2007年度の4.8%から大きく伸びた。住宅性能評価では2025年度に約20%のシェアを持つ首位である。住宅性能評価市場は上位5機関で約5割を占め、全国展開と大手住宅会社との取引関係が競争力を生んでいる。長期的に見ると、地域の小規模機関が資格者の確保に苦労するほど、ERIに顧客が集まる余地がある。
値決め力の証拠は2026年の単価上昇にある。建築確認と完了検査の平均収入は約3割上がり、数量が伸びない中でも増収を実現した。ただし、これは法律の変更に伴う業務量の増加であり、競争相手を気にせず自由に値上げできる証拠とは異なる。123を超える民間指定機関などとの競争が残り、料金だけでなく審査速度や相談対応も顧客の選択を左右する。堀は広がっているが、独占ではない。
資本効率は高い。添付の業績系列による過去10年のROE中央値は20.5%で、2026年5月期は37%に達した。純現金は約58億円あり、財務危機への耐性も強い。一方、増分の利益には法改正による価格上昇と買収による連結拡大が混在するため、そのすべてを経営陣の再投資能力の成果とは評価しない。特にインフラ分野は人材と企業買収による拡大が必要で、買収価格が上がれば追加投資の利回りも低下する。
堀を弱める最大の要因は技術より人材不足と信用失墜だ。法律上必要な人数の検査員を配置できなければ事業を拡大できず、不適切な審査で指定が取り消されれば収益基盤そのものが傷つく。顧客が数年かけて移行しなければならない独占的な基幹システムとは異なり、申請先の変更は可能である。したがって全社の堀は強い部分を含むものの、評価上は普通の堀として扱う。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の新築住宅市場は構造的な縮小圧力を受けている。国土交通省による2025年度の新設住宅着工戸数は約71万戸であり、2026年5月期に対応する12か月の集計でも約73万戸にとどまった。人口減少、住宅取得世代の減少、建設費と住宅ローン金利の上昇を考えれば、10年間で着工戸数が実質的に減ることを中心に考えるべきだ。物価上昇による売上の増加を、建物数の増加と混同してはいけない。
一方、建築確認の対象はなくならない。建築基準法に基づく全国の確認交付件数は、同社の2024年度約15%というシェアと取扱件数から逆算すると年間約45万~47万件の規模になる。これは建築確認の件数であり、住宅着工戸数とは単位が異なる。ERIの主な競争相手には全国対応の大手確認検査機関、ビューローベリタスジャパン、日本建築センター、各地域の指定確認検査機関などがある。個社別の厳密な全国シェアは統一的に開示されておらず、ERI以外について数字を断定しない。
住宅性能評価の市場は新築着工とは違う動きをしている。2025年度の設計住宅性能評価交付戸数は28万9,267戸で、着工戸数に対する普及率は40.7%まで上昇した。ERIグループのシェアは約20%であり、上位5機関が約半分を占める。10年後は着工が減っても性能評価の利用率がさらに高まる可能性があるが、すでに普及が進んでいるため、これまでと同じ速度で利用率が伸び続けるとは考えない。競合の一社ごとのシェアは確認できないため、上位集中度と同社シェアから競争環境を評価する。
省エネ審査は制度改正が市場を作った典型例である。2025年4月から原則全ての新築建築物に省エネ基準への適合が義務付けられ、4号特例も縮小された。ただし、仕様基準や住宅性能評価を使った手続きの省略があるため、住宅着工の全戸数が独立した省エネ適合性判定の発注件数になるわけではない。省エネ適判とBELSの全国市場規模およびERIの個別シェアは、重複を除いた比較可能な統計が不足している。新たなライフサイクルカーボン評価や太陽光設備の安全確認が、今後の数量の増減要因になる。
インフラストック分野は新築住宅と違い、老朽化した橋梁、道路、河川、公共施設を維持するための需要がある。建設コンサルタンツ協会の会員企業売上高は2023年度に約1兆1,309億円で、501社を対象とした数字である。ERIのインフラ関連売上56億円を全額この母数と比べても0.5%程度だが、同社には既存建物調査など協会統計と範囲の異なる業務があるため、これは正式な市場シェアではない。日本工営を擁するID&Eグループ、オリエンタルコンサルタンツ、建設技術研究所などの大手と比べると事業規模はまだ小さく、買収で領域を広げる余地がある。
AIは業界を二つに分ける。現場に行って検査し、資格と第三者性に基づいて法的責任を負う仕事は残る。他方、BIM/CIMモデリング、図面整理、定型的な調査報告、研修資料の作成はAIエージェントに代替されやすい。建築確認制度そのものがなくなるとは考えないが、審査補助に必要な人手と料金体系は変わる。10年後の競争は、資格者を多く抱えるだけでなく、少人数で正確に処理できる企業が有利になる。
資本政策と M&A
経営陣は、この10年間で規制対応の中核事業を守りながら、買収によってインフラ分野を広げてきた。2017年の住宅性能評価センター取得は建築確認・性能評価のシェア拡大に結び付いた。その後は道建コンサルタント、森林環境リアライズ、福田水文センター、国土工営コンサルタンツなどを傘下に迎え、2026年には太栄コンサルタンツとERIRoboticsなどを加えた。買収を重ねても財務が純現金であることは評価できるが、買収先ごとの投下資本利益率が開示されていないため、全案件が資本コストを超えたとまでは判断しない。
2026年7月に修正された中期経営計画では、2028年5月期の売上高300億円、営業利益55億円、営業利益率18.3%、ROE20~30%を目標に掲げている。配当性向は30%を目安とし、株式分割後の年間配当48円を計画する。2030年度の長期目標は売上高350~400億円、時価総額400~450億円である。DOEや総還元性向についての数値目標、今後の自社株買いの確約額はない。時価総額目標は経営上の目標であって、本質価値の根拠には用いない。
還元姿勢には改善が見られる。2026年5月期には増配と約3.55億円の自己株式取得を実施し、2026年6月には1株を3株に分割した。ただし、過去の配当性向はおおむね30%前後であり、恒常的に利益の半分以上を株主に返してきた企業ではない。余剰現金の株主への戻り方は75%と評価する。2026年5月期の現金及び預金は約83億円で、有利子負債を差し引いた純現金は約58億円である。運転資金と買収余力を確保した後の約20億円だけを明示的な余剰現金とする。
株主構成には独特の制約がある。光通信グループは議決権の約24%に影響力を持ち、住宅会社など法令上の制限業種の議決権も約25%に達する。制限業種の比率が3分の1を超えれば指定・登録を失うリスクがあるため、住宅会社が自由に買収できる企業ではない。外部からのTOBを期待するより、継続企業としての利益と配当を評価する方が適切である。
再投資では、既存の全国ネットワークへの教育・DX投資は比較的高い利回りを期待できる。一方、新規買収ののれんと人材の統合作業は資本効率を下げる可能性がある。利益を配当せずに積み上げる以上、株主は追加投資の利益率と現金の増減を毎年確かめる必要がある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
建築確認検査は典型的な規制事業であり、人口減少だけを理由に将来利益を低く見積もるべきではない。指定確認検査機関は2026年5月時点で124機関あるが、全国対応には有資格者を継続的に配置しなければならない。地方の小規模機関が高齢化と資格者不足に苦しむほど、全国の支店網を持つERIグループへ案件が集まりやすくなる。実際、建築確認のシェアは長期間で4.8%から15%へ上昇し、住宅性能評価でも首位を獲得した。規模の拡大は仮説ではなく、すでに起きた現象である。
2025年4月の法改正は、検査1件当たりの仕事量と価格を恒久的に変えた可能性がある。2026年5月期の建築確認件数がほぼ横ばいでも収入が約3割伸びた事実は大きい。省エネ性能の要求は今後さらに高度化し、2030年に向けた省エネ基準の強化や建築物のライフサイクルカーボン評価など、新たな仕事も生まれる。顧客は申請先に単純な安さだけでなく、法令への対応力と審査速度を求める。全国的な情報共有と専門人材の教育に投資できる大手の競争力はむしろ高まる。
新築住宅が減少しても、既存建物の耐震診断、外壁調査、建築基準法第12条の定期報告はなくならない。インフラストック分野には道路、橋梁、河川、森林、測量など多様な需要があり、これまでの買収実績から次の候補を見つける能力も期待できる。AIによって図面処理と定型的な審査補助が速くなれば、同じ資格者数でより多くの案件を処理できる。法的責任を負う最終判断が残る限り、技術の進歩は単価下落だけでなく生産性向上にもつながる。
財務は純現金で、2026年の営業キャッシュフローも堅調だった。高い資本効率を維持しながら配当と買収を続けられれば、現在の時価総額は10年間の利益と現金創出力を十分に反映していない。規制の堀とインフラ事業の拡大が重なれば、会社の長期売上目標を大きく超える企業規模も考えられる。
慎重な見方
2026年の営業利益は、長年の構造的な収益力をそのまま表していない。2021年5月期の営業利益は4億円、2025年5月期でも約20億円だった。それが2026年に約49億円へ増えた背景には、法改正で審査する項目が一度に増えたことがある。料金引き上げが定着しても、制度変更直後の案件滞留と高採算が永遠に続くとは限らない。2028年の会社目標ですら営業利益率は18.3%であり、直近の20%を下回る。
住宅着工は人口減少と住宅取得負担の上昇によって細る。建築確認のシェアが伸びても、市場全体の数量が減れば売上の伸びは限られる。住宅性能評価の普及率はすでに4割を超えており、これまでの普及拡大を将来も繰り返す余地は小さくなった。建設費や人件費が上がると、顧客の住宅会社や設計会社にも料金交渉の圧力が生じる。現在の値決め力が、法改正とは無関係な局面でも発揮できるかは未証明である。
AIエージェントは、設計図書の照合、計算書の一次確認、BIM/CIMモデリング、定型的な報告書の作成を急速に自動化する。法律が最終確認者として資格者を求め続けても、審査補助の工数は減る。競合が同じ技術を導入すれば、処理コストの低下が顧客料金へ転嫁される可能性が高い。特に建設コンサルタントの事務部分や受託ソフト開発、研修は、人が費やした時間に高い料金を払ってもらう前提そのものが崩れ得る。
M&Aにも不安がある。小規模な建設コンサルタント会社を買収して売上高を増やしても、人材が流出すれば企業価値は残らない。2026年5月期末には約7億円ののれんがあり、追加買収でその残高と統合負担は増える可能性がある。過去の高いROEの一部は、法改正と低い自己資本を背景にしており、買収に投入した新しい資本が同じ利回りを稼ぐ保証はない。
さらに、法定検査は大きな不祥事に弱い。不適切な検査、資格者不足、株主構成による独立性の喪失は、指定や登録の取消しに直結する。利益の7割程度を会社に残す還元方針も、余剰現金が低採算の買収へ向かえば少数株主にとって不利になる。制度変更による利益の山と資本配分の不確実性を考えると、直近の利益だけで高い価値を確信することはできない。
どちらに重みを置いたか
法定検査が長く必要とされることと、全国規模の資格者網に優位性があることでは、肯定的な見方の根拠が強い。一方、2026年の高利益率を恒久化する議論と、買収した企業が同じ資本効率を維持するという期待には慎重であるべきだ。中立では利益率を15%台へ下げ、BIM・受託開発・研修のAI代替を数量の減少で反映した。確率は上側30%に対し下側38%とやや慎重に配分する。下に寄せる理由は、法改正初年度の高収益、住宅着工の減少、買収した人材依存事業のAI代替という会社固有の要因である。それでも利益と現金を積み上げる力があり、現在の時価総額に対する評価は割安側となる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 3,311 円766 億円(+ 還元の換算額還元の合計 446 円103 億円)。 今の値に割り戻すと 2,044 円473 億円、今との差 +54.7%、 期待の年率 +12.0%(資本コスト 6.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 7,385 円1,709 億円 | 821 円190 億円 | +520.7% | +21.9% | 985 円228 億円 |
| やや楽観 | 18% | 5,605 円1,297 億円 | 691 円160 億円 | +376.3% | +18.5% | 1,133 円262 億円 |
| 中立 | 32% | 3,337 円772 億円 | 480 円111 億円 | +188.7% | +12.2% | 1,221 円283 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,239 円287 億円 | 238 円55 億円 | +11.7% | +1.2% | 369 円85 億円 |
| 悲観 | 13% | 294 円68 億円 | 78 円18 億円 | −71.9% | −12.9% | 48 円11 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,311 円766 億円 | 446 円103 億円 | +184.2% | +12.0% | 3,757 円870 億円 |
今の株価時価総額 1,322 円306 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 12% 全国集約とインフラ買収が成功 利益 74 億円 · PER 21.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 7,385 円1,709 億円
建築確認と住宅性能評価の市場では、地方の小規模機関が資格者不足によって統合・撤退を進める。日本ERIと住宅性能評価センターは、全国の支店網と専門資格者を生かして案件を獲得し、建築確認の市場シェアを2割近くまで高める。住宅着工の絶対数は減少するが、法令改正で複雑化した審査を大手顧客からまとめて受託し、単価を維持する。住宅性能評価の普及率も上昇し、非住宅の省エネ評価と新しい環境性能審査が成長源になる。
インフラ分野では、福田水文センターや国土工営コンサルタンツを中心に、道路、橋梁、河川、環境の調査・診断を広げる。買収した会社の有資格者を定着させ、営業拠点と機器を共同利用することで採算を改善する。ドローンや遠隔検査も現場作業の生産性を高める。ただし、BIM/CIMや人月型の技術サービスはAIエージェントによる代替を受けるため、楽観でも工数販売数量を現在以下に抑える。
財務面では無理な借入を増やさず、成長投資と配当を両立する。法定審査の高い利益率とインフラ事業の効率改善によって、グループの売上高は500億円規模となる。全国集約による競争優位が強まるが、永久的な独占とは考えず、10年以降の成長には人口減少の制約を残す。
- 建築確認・完了検査・関連法定審査:数量 158,000(確認済証と完了検査済証の年間交付件数合計。関連法定審査収入を含めた案件当たり換算数量)× 価格 0.00(主要証書1件当たり関連業務を含む平均収入(億円・名目))→ 売上 224 億円・営業利益 54 億円。主要証書158,000件、単価は今の1.53倍。確認検査の国内シェアは2割近くまで上昇し、法定審査の高付加価値化が進む。
- 住宅性能評価:数量 149,000(設計評価と建設評価の交付件数・住戸数の合計)× 価格 0.00(評価交付1件・1住戸当たり加重平均収入(億円・名目))→ 売上 71 億円・営業利益 19 億円。住宅性能評価の普及率とシェアが上昇し、件数は現在の約1.31倍。単価は1.53倍。
- 省エネ適合性判定・BELS:数量 159,000(省エネ適合性判定とBELSの評価交付件数合計)× 価格 0.00(判定・評価1件当たり加重平均収入(億円・名目))→ 売上 68 億円・営業利益 18 億円。省エネ・環境関連の新制度で判定件数が1.69倍、単価が1.48倍になる。
- インフラストック・環境の現場調査及び許認可業務:数量 640(専門職の年間稼働供給力(人年換算。取得会社の専門職を含む))× 価格 0.20(専門職1人年当たり連結外部売上(億円・名目))→ 売上 129 億円・営業利益 23 億円。現場・有資格者業務の人年供給力が買収で1.83倍になり、平均収入は1.48倍。
- BIM/CIM・図面処理・工数依存の技術サービス:数量 61.5(技術者の年間稼働人年換算)× 価格 0.16(技術者1人年当たり外部売上(億円・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替を受けるため、楽観でも工数数量は現在以下。単価は1.15倍にとどめる。
- 建築技術者向け講習・受託ソフト・その他:数量 90.0(講習・開発等に従事する人員の年間稼働人年換算)× 価格 0.04(従業員1人年当たり外部売上(億円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。講習・受託開発はAI代替を受け、稼働数量はほぼ横ばい以下。ロボットの未確認の急成長を織り込まない。
倍率:資本コストk6.75%、長期成長g2.3%、堀は普通で超過ROEの残存割合1/2。成長に要る事業資本と余剰現金を分け、10年後の事業ROEを約75%、RONICを約40.7%と推定する。正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)の上限は約21.2倍。現金利息を除いた純利益に適用し、現在の余剰現金20億円は戻り方75%で別に加える。将来の留保余剰現金は自動算定分に任せ、mcap_okuへ二重に加えない。
確率:地方の確認検査機関の退出と規制審査の高度化が同時に進み、買収したインフラ企業の利益率も大きく改善する必要がある。既存のシェア拡大実績は根拠になるが、10年間連続して成功する確率は限定的。
やや楽観 18% 規制需要が定着しインフラ事業も成長 利益 56 億円 · PER 21.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5,605 円1,297 億円
2025年の法改正で増えた審査業務が定着し、ERIは全国の大手住宅会社と建設会社から安定的に案件を獲得する。新築建物の総数は減るが、地域の小規模機関からシェアを奪い、建築確認の取扱量を維持・拡大する。住宅性能評価では、住宅の長寿命化や性能表示の利用拡大によって設計・建設評価の件数が増える。省エネ関連では、新たな環境性能表示への対応が売上を支える。
買収したインフラ・環境企業は、グループの資金力と人材教育を生かして事業を広げる。河川、橋梁、測量、既存建物調査への需要は継続し、グループの専門職数が増加する。建設コンサルタントの現場業務と許認可業務は残る一方、図面のモデル化や定型的な報告書作成はAIエージェントに代替される。これらの工数販売数量は現在より減らし、売上全体の伸びを現場業務に依存する形となる。
利益率は現在より低い水準へ戻るが、全国で案件を処理する効率が高まり、売上高は420億円程度となる。買収先への資本投下は増えるものの、資本コストを十分に超える利益が続く。株主還元は配当性向30%を基本に、余裕のある年度には自社株買いも加わる。
- 建築確認・完了検査・関連法定審査:数量 146,000(確認済証と完了検査済証の年間交付件数合計。関連法定審査収入を含めた案件当たり換算数量)× 価格 0.00(主要証書1件当たり関連業務を含む平均収入(億円・名目))→ 売上 192 億円・営業利益 42 億円。検査数量1.08倍、単価1.42倍。全国シェア拡大が着工減少を補う。
- 住宅性能評価:数量 129,000(設計評価と建設評価の交付件数・住戸数の合計)× 価格 0.00(評価交付1件・1住戸当たり加重平均収入(億円・名目))→ 売上 58 億円・営業利益 14 億円。住宅性能評価の利用率とシェアが上がり、数量1.13倍、価格1.43倍。
- 省エネ適合性判定・BELS:数量 134,000(省エネ適合性判定とBELSの評価交付件数合計)× 価格 0.00(判定・評価1件当たり加重平均収入(億円・名目))→ 売上 55 億円・営業利益 14 億円。省エネ審査の新たな対象が加わり、数量1.43倍、価格1.42倍。
- インフラストック・環境の現場調査及び許認可業務:数量 550(専門職の年間稼働供給力(人年換算。取得会社の専門職を含む))× 価格 0.19(専門職1人年当たり連結外部売上(億円・名目))→ 売上 105 億円・営業利益 17 億円。買収・人材育成で供給能力を拡大。価格は物価3%を上回る程度まで上昇。
- BIM/CIM・図面処理・工数依存の技術サービス:数量 52.0(技術者の年間稼働人年換算)× 価格 0.16(技術者1人年当たり外部売上(億円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替により数量は0.84倍、価格は1.15倍。
- 建築技術者向け講習・受託ソフト・その他:数量 70.0(講習・開発等に従事する人員の年間稼働人年換算)× 価格 0.04(従業員1人年当たり外部売上(億円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。工数依存の研修・受託開発が縮小し、数量0.77倍、価格1.15倍。
倍率:k6.75%、g2.3%、超過ROEの残存割合1/2。成長資本と留保された余剰現金を分離した事業ROEを約62%、RONICを約34.5%と考えると、利益ベースの正当化PERは約21.0倍になる。利益の質の差はkと堀で既に反映しており、楽観側の倍率を恣意的に引き下げない。現時点の余剰現金20億円は75%の戻り方で別に評価する。
確率:全国展開と規制需要の拡大には確かな実績があるが、インフラ関連の大幅な増員・買収と利益率改善の両立を求めるため、中立より低い確率とする。
中立 32% 審査単価は定着するが数量と利益率は平常化 利益 33 億円 · PER 20.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,337 円772 億円
国内の住宅着工は人口減少と住宅取得負担の増加によって減る。ERIは全国の支店網を生かして建築確認のシェアをやや高めるが、市場の数量減少を完全には打ち消せない。2025年の法改正で上昇した審査単価は大部分が定着するものの、その後の電子申請の普及と処理効率改善によって、名目料金の伸びは物価並みかやや低い水準に落ち着く。結果として、主要証書の交付件数は現在より減少する。
住宅性能評価は、住宅そのものの着工減少と、性能評価の利用率上昇が相殺し合う。省エネ適合性判定やBELSは新たな対象と既存制度の普及によって増えるが、2025年のような制度の一斉変更は繰り返されない。インフラ分野では買収を続け、老朽化した建物と社会インフラの調査需要を取り込む。ただし、人材採用と買収価格が制約となり、すべての事業が中核の法定検査並みの利益率を稼ぐわけではない。
AIエージェント代替はBIM/CIM等の工数販売数量を10年間で0.65倍に減らし、講習・受託開発も同じ程度縮小させる。法定検査そのものには同じ数量減少を掛けず、補助業務の生産性向上と料金への競争圧力に反映する。売上高は約328億円となり、営業利益率は15%台に下がる。それでも純利益は2026年の水準に近く、規制事業の利益の持続性が確認できる10年となる。
- 建築確認・完了検査・関連法定審査:数量 120,000(確認済証と完了検査済証の年間交付件数合計。関連法定審査収入を含めた案件当たり換算数量)× 価格 0.00(主要証書1件当たり関連業務を含む平均収入(億円・名目))→ 売上 145 億円・営業利益 25 億円。数量は現在の0.887倍、単価は1.31倍。全国シェアをやや高めても建築着工の減少が上回る。
- 住宅性能評価:数量 108,000(設計評価と建設評価の交付件数・住戸数の合計)× 価格 0.00(評価交付1件・1住戸当たり加重平均収入(億円・名目))→ 売上 45 億円・営業利益 8 億円。評価普及率の上昇が着工減少を一部補い、数量0.947倍、価格1.34倍。
- 省エネ適合性判定・BELS:数量 115,000(省エネ適合性判定とBELSの評価交付件数合計)× 価格 0.00(判定・評価1件当たり加重平均収入(億円・名目))→ 売上 43 億円・営業利益 8 億円。環境性能評価の対象拡大で数量1.225倍、単価は競争を反映して1.30倍。
- インフラストック・環境の現場調査及び許認可業務:数量 470(専門職の年間稼働供給力(人年換算。取得会社の専門職を含む))× 価格 0.18(専門職1人年当たり連結外部売上(億円・名目))→ 売上 86 億円・営業利益 10 億円。現場・許認可業務は買収と公共需要で人年供給力1.34倍、価格1.34倍。
- BIM/CIM・図面処理・工数依存の技術サービス:数量 40.3(技術者の年間稼働人年換算)× 価格 0.16(技術者1人年当たり外部売上(億円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替の人月・工数型。数量0.65倍、価格1.15倍、10年以降のgは0%。
- 建築技術者向け講習・受託ソフト・その他:数量 59.2(講習・開発等に従事する人員の年間稼働人年換算)× 価格 0.04(従業員1人年当たり外部売上(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。講習・受託開発はAI代替により数量0.65倍、単価1.15倍。ロボットの成長は未確認のため含めない。
倍率:k6.75%、g2.3%、堀は普通で残存割合1/2。純利益33.2億円から現在の余剰現金と将来留保余剰現金の税後利息を外し、事業に必要な自己資本だけでROEを計算する。概算の事業ROE約40.5%、RONIC約23.6%から正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)は約20.3倍となる。2026年の市場PERや過去の評価倍率は用いていない。現在の余剰現金20億円は75%評価で別に加え、将来の余剰現金は自動算定に任せる。
確率:法定検査の持続性と既存の高いシェアを評価しつつ、住宅着工の減少、法改正特需の一巡、AIによる事務工数縮小を反映する。2028年の会社目標を10年先まで延長せず、利益率を下げる。
やや悲観 25% 着工減少と競争で審査の採算が低下 利益 17 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,239 円287 億円
新築住宅の着工数は想定以上に減少し、全国的な建築確認の市場規模も縮小する。ERIは大手としての地位を維持するが、地方の指定確認検査機関との料金競争が強まり、価格は物価上昇に十分には追い付かない。建築確認の処理件数が落ち、完了検査も数年遅れて減少する。省エネ審査は制度上必要なままだが、仕様基準による簡素化や他制度との手続き統合が進み、1件当たり収入に圧力がかかる。
住宅性能評価では、利用率の上昇が頭打ちになる。大手住宅会社は複数の登録評価機関を競わせ、ERIが高いシェアを持つ利点だけでは価格を守れなくなる。インフラストック分野は公共需要が一定程度残るものの、自治体の予算制約と入札競争によって利益率が下がる。買収した会社の人員維持費や管理費も重荷となる。
AIエージェントの普及によってBIM/CIMや定型的な報告業務の工数需要が減り、受託開発と研修の収益性も悪化する。法定検査の資格者は必要なため大幅な人員削減は難しく、売上の減少に対して人件費が残る。営業利益は約25億円に落ち、2026年より大幅に低い水準となる。配当は利益に応じて減額され、成長投資も選別される。規制事業は残るが、株主が期待した高い資本効率は薄れる。
- 建築確認・完了検査・関連法定審査:数量 103,000(確認済証と完了検査済証の年間交付件数合計。関連法定審査収入を含めた案件当たり換算数量)× 価格 0.00(主要証書1件当たり関連業務を含む平均収入(億円・名目))→ 売上 115 億円・営業利益 14 億円。数量0.761倍、価格1.21倍。着工減少と競争で利益率は12%まで低下。
- 住宅性能評価:数量 86,000(設計評価と建設評価の交付件数・住戸数の合計)× 価格 0.00(評価交付1件・1住戸当たり加重平均収入(億円・名目))→ 売上 33 億円・営業利益 4 億円。住宅性能評価の普及拡大が止まり、数量0.754倍、価格1.23倍。
- 省エネ適合性判定・BELS:数量 85,000(省エネ適合性判定とBELSの評価交付件数合計)× 価格 0.00(判定・評価1件当たり加重平均収入(億円・名目))→ 売上 30 億円・営業利益 3 億円。制度手続きの統合・簡素化で数量0.905倍、価格1.21倍。
- インフラストック・環境の現場調査及び許認可業務:数量 360(専門職の年間稼働供給力(人年換算。取得会社の専門職を含む))× 価格 0.17(専門職1人年当たり連結外部売上(億円・名目))→ 売上 62 億円・営業利益 4 億円。公共事業の競争激化で数量増が限定的となり、利益率は7%。
- BIM/CIM・図面処理・工数依存の技術サービス:数量 34.1(技術者の年間稼働人年換算)× 価格 0.15(技術者1人年当たり外部売上(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替で数量0.55倍、価格1.10倍、営業赤字。
- 建築技術者向け講習・受託ソフト・その他:数量 50.0(講習・開発等に従事する人員の年間稼働人年換算)× 価格 0.04(従業員1人年当たり外部売上(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。研修・ソフト受託の数量0.55倍、価格1.12倍。管理費負担で赤字が続く。
倍率:規制事業は残るが、中立より低い利益率と価格競争によって超過利潤の持続性が損なわれる。k6.75%で永久的な成長を強く見込まない稼ぐ力を中心に評価する。中立までの正当化PERの上限に機械的に合わせず、弱まった事業の利益価値を11.8倍とする。現在の余剰現金20億円は15億円へ減少したとみなし、戻り方75%で評価する。
確率:住宅着工の減少、法改正後の審査効率化による単価競争、買収事業の採算悪化が同時に起きる可能性は無視できない。法定の検査需要はなお残るため事業崩壊とは区別する。
悲観 13% 規制の転換と検査業務の競争力喪失 利益 3 億円 · PBR 0.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 294 円68 億円
住宅着工の減少が想定以上に進み、建築確認の全国市場が大きく縮小する。制度改革では、定型住宅の確認申請や省エネ手続きが大幅に簡素化され、従来の複雑な審査に対して受け取っていた料金が低下する。ERIは全国網を維持する固定費を抱えたまま、処理件数と単価の両方で打撃を受ける。競合の大手指定機関が電子申請とAIによる審査支援を先行させ、ERIが長く築いてきたシェアも失われる。
住宅性能評価の普及率は頭打ちとなり、住宅会社による価格交渉が強まる。省エネ関連でも評価手続きの統合と簡素化が進むため、2025年の法改正が生んだ高単価の仕事が減る。インフラストック分野では買収した会社の人材流出が相次ぎ、受注能力が落ちる。BIM/CIMと定型的な報告業務はAIエージェントに大きく代替され、その他事業の赤字も続く。
売上高は約163億円に減り、営業利益は約3億円まで落ち込む。資格者の維持費と拠点費用が固定的に残り、買収先ののれんや事業資産には減損が必要になる。経営は生き残るために配当を縮小し、新規買収を停止する。法的な資格と一定の既存顧客は残るものの、以前の高収益企業としての性格は失われる。清算を予定する筋書きではないため、利益の価値と純現金・売却可能資産を比較して下限を評価する。
- 建築確認・完了検査・関連法定審査:数量 76,000(確認済証と完了検査済証の年間交付件数合計。関連法定審査収入を含めた案件当たり換算数量)× 価格 0.00(主要証書1件当たり関連業務を含む平均収入(億円・名目))→ 売上 76 億円・営業利益 3 億円。確認検査数量0.562倍、価格1.08倍。制度簡素化とシェア低下で利益率3.5%。
- 住宅性能評価:数量 65,000(設計評価と建設評価の交付件数・住戸数の合計)× 価格 0.00(評価交付1件・1住戸当たり加重平均収入(億円・名目))→ 売上 22 億円・営業利益 1 億円。住宅性能評価数量0.57倍、価格1.08倍。採算はほぼ失われる。
- 省エネ適合性判定・BELS:数量 62,000(省エネ適合性判定とBELSの評価交付件数合計)× 価格 0.00(判定・評価1件当たり加重平均収入(億円・名目))→ 売上 19 億円・営業利益 0 億円。審査の統合・簡素化で数量0.66倍、価格1.07倍。
- インフラストック・環境の現場調査及び許認可業務:数量 255(専門職の年間稼働供給力(人年換算。取得会社の専門職を含む))× 価格 0.16(専門職1人年当たり連結外部売上(億円・名目))→ 売上 41 億円・営業利益 1 億円。買収先の人材流出で供給力が0.73倍、価格は1.17倍にとどまる。
- BIM/CIM・図面処理・工数依存の技術サービス:数量 29.0(技術者の年間稼働人年換算)× 価格 0.14(技術者1人年当たり外部売上(億円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 −1 億円。AIエージェント代替で数量0.47倍、価格1.02倍、営業赤字。
- 建築技術者向け講習・受託ソフト・その他:数量 41.0(講習・開発等に従事する人員の年間稼働人年換算)× 価格 0.03(従業員1人年当たり外部売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。研修・受託開発の数量0.45倍、価格1.05倍。事業縮小に伴う固定費負担が残る。
倍率:事業ROEは資本コスト6.75%を下回り、成長に価値を認めにくい。利益の稼ぐ力のみでは純現金と処分可能資産の価値を十分に反映できないため、現時点の自己資本85億円を分母としてPBR0.8倍の68億円とする。2036年の積み上がった自己資本172億円に0.8倍を掛けていない。土地・有価証券と純現金から考えた保守的な処分価値66.8億円を下回らず、のれんは清算価値に含めない。
確率:法定検査そのものの廃止は考えにくいが、確認審査の大幅な制度簡素化、資格者の流出、大型買収の失敗が重なると収益力が失われる。倒産直前とは異なり、純現金と処分可能資産を保有する筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建築確認・完了検査・関連法定審査
建築確認済証、完了検査済証、中間検査、構造評定、型式適合認定など。原則として法律上必要な第三者検査を中心とする。
| 数量確認済証と完了検査済証の年間交付件数合計。関連法定審査収入を含めた案件当たり換算数量 | 価格主要証書1件当たり関連業務を含む平均収入(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 135,263 | 0.00 | 125 | 28 |
| 10 年後 中立 | 120,000 | 0.00 | 145 | 25 |
取り方:会社の2026年5月期決算説明資料7~8ページより、建築確認68,867件・47.02億円、完了検査66,396件・43.20億円を確認した。建築確認単価は約6.83万円、完了検査は約6.51万円である。確認検査及び住宅性能評価関連事業の開示売上187.92億円から別掲の住宅性能評価35.61億円と省エネ・BELS27.14億円を除くと125.17億円となる。建築確認と完了検査の90.22億円に、中間検査、構造評定、その他の関連審査約34.95億円を含めた。数量135,263件は証書の合計であり、残りの審査の独立した受注件数が非開示であるため、価格9.25万円は関連審査収入を主要証書件数で割った換算値であって実際の一律料金ではない。営業利益28億円は報告セグメント利益42.89億円を業務の専門性と費用構造で按分した推計値。全国シェアは建築確認で2024年度15%、直近の全国件数が未公表のため2025年度の確定シェアは用いない。
住宅性能評価
新築戸建・共同住宅の設計住宅性能評価と建設住宅性能評価。設計書類の審査に加え、建設評価では現場検査を行う。
| 数量設計評価と建設評価の交付件数・住戸数の合計 | 価格評価交付1件・1住戸当たり加重平均収入(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 114,086 | 0.00 | 36 | 8 |
| 10 年後 中立 | 108,000 | 0.00 | 45 | 8 |
取り方:会社の主要業務計数より、設計評価は戸建35,132件・13.37億円、共同住宅28,237住戸・4.98億円、建設評価は戸建24,434件・13.14億円、共同住宅26,283住戸・4.12億円。合計114,086件・住戸、売上35.61億円で、加重平均単価は約3.12万円。戸建設計約3.81万円、共同住宅設計約1.76万円、戸建建設約5.38万円、共同住宅建設約1.57万円と実際の単価は異なる。営業利益8.4億円は推計配賦。国土交通省の2025年度設計評価市場28万9,267戸、会社有報の同社シェア約20%を数量見通しの根拠に使用する。年度の区切りが異なるため単純な件数比較は避ける。
省エネ適合性判定・BELS
新築建物の省エネ基準適合性判定と建物の省エネ性能表示評価。制度改正で増えた業務を中心とする。
| 数量省エネ適合性判定とBELSの評価交付件数合計 | 価格判定・評価1件当たり加重平均収入(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 93,879 | 0.00 | 27 | 6 |
| 10 年後 中立 | 115,000 | 0.00 | 43 | 8 |
取り方:2026年5月期は省エネ適合性判定19,018件・17.49億円、住宅BELS74,318件・8.42億円、非住宅BELS543件・1.23億円。合計93,879件・27.14億円で、加重平均約2.89万円。省エネ適判単価は約9.20万円、住宅BELS約1.13万円、非住宅BELS約22.65万円と大きく異なる。営業利益6.49億円は関連報告セグメント内の推計配賦。国土交通省の着工統計と法改正の対象範囲から潜在需要を考えるが、仕様基準による省略、住宅性能評価との手続き重複、建物用途の差があるため全国の判定件数を住宅着工数と同一視しない。全国シェアの確定値は未確認。
インフラストック・環境の現場調査及び許認可業務
建築物・橋梁・道路・河川等の現場調査、検査、測量、環境調査、建設コンサルタント登録等を必要とする専門業務。
| 数量専門職の年間稼働供給力(人年換算。取得会社の専門職を含む) | 価格専門職1人年当たり連結外部売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 350 | 0.14 | 48 | 6 |
| 10 年後 中立 | 470 | 0.18 | 86 | 10 |
取り方:会社開示のインフラストック及び環境関連事業は売上56.09億円、利益6.64億円、従業員412人。個別案件数と契約単価は非開示であるため、現場・有資格者業務を約85%の47.68億円、約350人年と推定した。1人年売上約1,363万円は実案件の請求単価ではなく供給能力を用いた換算値である。残り15%をBIM/CIM、図面・報告書作成等の工数依存部分として別セグメントにした。この配分は会社が公表した売上内訳ではなく、AI代替の影響を隠さず計算するための分析上の仮定である。営業利益6.1億円も推計配賦。建設コンサルタンツ協会会員501社の2023年度売上約1.13兆円は市場規模の参考であり、対象業務が一致しないためERIの正式シェアは算定できない。
BIM/CIM・図面処理・工数依存の技術サービス
建設関連の三次元モデル作成、定型図面作業、資料作成など。AIエージェントで工数が置き換わりやすい領域。
| 数量技術者の年間稼働人年換算 | 価格技術者1人年当たり外部売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 62.0 | 0.14 | 8 | 1 |
| 10 年後 中立 | 40.3 | 0.16 | 6 | 0 |
取り方:インフラストック及び環境関連事業56.09億円の15%を、BIM/CIMモデリング、図面整理、定型的な報告書など工数依存の技術サービスとして分析上区分した。412人の15%相当を約62人年とし、売上8.41億円、1人年約1,356万円、利益0.54億円を仮定する。会社はこの細分売上と人員数を開示しておらず、真の比率が大きい場合はAI代替による損失も増える。PROMPT_AI_RISKの人月・工数型を適用し、中立の10年数量を0.65倍、価格を1.15倍、10年以降の名目成長を0%とする。現場調査と許認可業務の数量には同じ削減率を掛けない。
建築技術者向け講習・受託ソフト・その他
建築士定期講習、技術者研修、CAD・積算システム開発、ドローン・ロボット関連の小規模事業。
| 数量講習・開発等に従事する人員の年間稼働人年換算 | 価格従業員1人年当たり外部売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 91.0 | 0.03 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 59.2 | 0.04 | 2 | 0 |
取り方:2026年5月期のその他報告セグメントは売上3.03億円、利益マイナス0.08億円、従業員91人。講習・ソフト受託とロボット製品の事業別金額および販売台数は非開示であるため、全体を人年換算の3.33百万円で表す。人材型の売上に加え製品売上も混在するため実単価ではない。ロボット単体の成長は金額で裏付けられていないので、AIエージェントを売って急成長する筋書きは採用しない。中立の数量を0.65倍、価格を1.15倍、10年以降の名目成長を0%とする。
リスクと懸念
法改正特需の持続性と利益率の反動
2026年5月期の営業利益率20%は、2025年4月の省エネ基準適合義務化と4号特例縮小による審査単価上昇が大きく寄与した。建築確認と完了検査は件数が減少しても収入が増えたが、制度変更直後の審査滞留、処理業務の増大が一巡すれば利益率は下がり得る。2028年の会社目標18.3%も現在を下回っている。新しい単価が定着することと、最高利益率を維持することは区別しなければならない。
住宅着工減少と顧客の価格交渉
国内の新築住宅着工は人口減少、住宅価格上昇、住宅ローン金利の上昇によって長期的に減る見込みである。ERIのシェア上昇が市場の縮小を補えなければ、確認済証の交付件数は減少する。住宅性能評価の利用率は上昇してきたが、普及余地が小さくなり、大手住宅会社が複数機関を競争させると単価が下がる可能性がある。
AIエージェント代替と審査の電子化
BIM/CIMのモデリング、図面照合、定型報告書、受託ソフト開発、研修は人月・工数に応じた需要が減る。会社の細分売上が非開示であるため、インフラ事業の15%とその他事業を直接影響の大きい部分と仮定した。中立ではその数量を10年間で0.65倍に縮小する。法定検査の署名責任や現場確認には同じ減少率を掛けないが、審査補助の自動化によって料金の引き下げを求められるリスクは残る。
資格者不足と許認可の取消し
建築確認・住宅性能評価は資格者の配置や独立性を法律で求められる。全国の支店で十分な資格者を採用・育成できなければ業務を処理できない。不適切な確認検査や重大な法令違反は、行政処分、業務停止、指定取消しにつながる。さらに制限業種に属する株主の議決権は2026年5月時点で24.75%あり、3分の1を超えると独立性の要件に抵触するおそれがある。
買収先の人材流出と追加投資の収益性
インフラ・環境分野では買収による事業拡大が続いている。建設コンサルタントや測量会社の価値は資格者と顧客関係に依存しており、買収後に人材が流出すると期待した利益が得られない。取得価格が高くなるほど追加投資の利回りも低下する。2026年5月期ののれん残高は約7億円で、さらに買収を重ねる場合はのれん償却、減損、統合費用に注意が必要である。
人件費と審査処理能力の固定費負担
法定検査の処理には有資格者が必要であり、案件が減ったからといって簡単に人員を削減できない。2026年5月期の連結従業員は1,768人に達する。人件費の上昇を料金に十分転嫁できなくなると、利益率の低下は売上の減少以上に大きくなる可能性がある。既存拠点の賃料、システム維持費、新リース会計基準に伴う貸借対照表上の負債表示にも注意する。
余剰現金の滞留と株主への戻り方
純現金は約58億円あるが、全額が少数株主へ返されるとは限らない。配当性向は30%が目安で、将来の自社株買い額は確約されていない。保有現金が低収益の買収や費用増加に向かう場合、帳簿上の資産価値は株主価値として十分に実現しない。上位10株主の保有比率も約58%と集中しており、経営への監視と株主還元の規律を継続的に確認する必要がある。
今後の分かれ目
- 建築確認と完了検査の平均収入が2026年水準から維持・上昇し、件数が回復したら
- 法改正による単価上昇が恒久的である証拠として評価できる。中立の検査収入と利益率の前提を上方修正し、楽観側の確率を高める。
- 住宅着工の減少が続いても、ERIの建築確認シェアが15%からさらに上昇したら
- 全国網と資格者確保の優位性が続いていると判断する。数量減少を小さく見直し、長期の堀の評価を強める。
- 省エネ適合性判定の件数が2026年の約1万9千件を大きく下回り、料金も下落したら
- 法改正の増収効果が一時的だった可能性を考える。省エネ分野の数量・単価を引き下げ、やや悲観側の確率を増やす。
- インフラストック事業の利益率が15%前後へ高まり、買収資金を上回る現金創出が続いたら
- 買収による成長に再投資収益が伴ったと判断し、現場・許認可業務の長期数量と利益率を引き上げる。買収先の営業利益だけでなく営業キャッシュフローと人員定着も確認する。
- BIM/CIM・定型報告業務の売上と人員が縮小し、AIを用いた低価格サービスが広がったら
- AIエージェント代替が予想を上回ったと判断する。工数依存部分の数量をさらに減らす一方、法定検査や現場業務まで同じ減少率を掛けて二重に悲観しない。
- 純現金が増加する一方で配当性向が30%前後に据え置かれ、収益性の低い買収が増えたら
- 余剰現金の株主への戻り方を再点検し、買収先の利益率と減損リスクを悪化させる。現金が増えたことだけを割安の根拠にはしない。
- 制限業種の株主持分が3分の1に近づく、または重大な確認検査の不祥事が発生したら
- 指定・登録の継続性を最優先で確認する。法定業務の収益が失われる可能性を悲観シナリオへ反映し、事業の堀の評価を大きく引き下げる。
見ておくもの
- 会社月次の建築確認済証交付件数と完了検査済証交付件数
- 建築確認・完了検査の1件当たり収入と前年同月・前年同期比較
- 住宅性能評価の設計・建設別の件数、全国普及率、ERIグループの市場シェア
- 省エネ適合性判定件数とBELS評価件数、法令改正による審査対象の変化
- 確認検査及び住宅性能評価関連事業の営業利益率、資格者数、人員当たり収入
- インフラストック及び環境関連事業の売上、セグメント利益率、買収先の人員定着
- 営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、のれん残高、買収資金、純現金の推移
- 配当性向30%の実行状況、自社株買い、発行済株式から自己株式を除いた株数
- 光通信グループの議決権比率と法令上の制限業種株主の議決権比率
- BIM図面審査、AI審査支援、遠隔検査の実用化と料金への影響
倍率と資本コストの決め方
事業数量は2026年5月期の建築確認68,867件、完了検査66,396件、住宅性能評価と省エネ関連の実件数から組み立てた。連結セグメントの売上は確認評価188億円、インフラ56億円、その他3億円に整合する。インフラ事業は件数・単価が非開示のため、開示された従業員412人を基礎に現場業務とAI代替可能な工数業務へ分けて推定した。数量には物価上昇を入れず、価格に名目の物価と競争による変化を入れる。
10年後の中立営業利益率は2026年の20%を維持せず15%台とした。純利益は過去の営業利益に対する比率約0.64を基本とし、金利上昇時の現金利息増加を税後約0.7億円反映した。ROEは自己資本の積み上がりを考慮し、将来溜まる余剰現金を事業資本から分離したうえで倍率を評価した。倍率はk6.75%、g2.3%、RONICと堀から計算し、現在の株価、現在のPER、同業の市場倍率、会社の2030年時価総額目標には合わせていない。
余剰現金は事業に必要な資金を除いた20億円を独立評価し、将来の留保余剰現金を時価総額へ手作業で二重加算していない。悲観の時価総額68億円は資産の床66.8億円を上回り、悲観の時価総額と10年間の還元の合計も現在の時価総額311億円を下回る。2027年度以降の新リース会計基準による表示の変化は、従来型の営業費用と財務負担をそろえて比較し、本質価値を機械的に増やさない。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債利回り3%と株式リスクプレミアム4.5%による基本7.5%から、事業の財務健全性と法定業務の寿命による0.75ポイントを差し引く。βや時価総額の小ささは使わず、買収失敗や規制変更はシナリオで評価する。