結論
ティアは、名古屋を地盤に葬儀会館を営む会社だ。筆者の結論は「おおむね適正」である。出店で葬儀の件数は伸びるが、借金を抱えたうえに、件数の失速と値下げの圧力が利益を削っている。
強みは名古屋の足場だ。市内の斎場の3割近くをティアの会館が占める。会員制度と明朗な価格で、地元の顧客をつかんできた。2023年には大阪の八光殿と愛知の東海典礼を買い、関西と三河にも広げた。
一方で、この1年は逆風が続いた。亡くなる人の数が前の年を下回り、葬儀の件数が計画に届かない。人件費と原価も上がり、2026年9月期の営業利益は前の期の16億円から11億円に落ちる見込みだ。買収の借入で純負債は80億円近くあり、金利が上がれば利払いも増える。
10年で見ると、亡くなる人の数は2040年ごろまで高い水準が続き、出店で件数は2割ほど増えるだろう。ただ、家族葬や火葬だけの葬儀が増え、1件の単価は物価ほどには上がらない。確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額とほぼ同じだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、葬儀は理解しやすい商売だ。人は必ず亡くなり、地元で信頼される会館には顧客が集まる。名古屋で斎場の3割を握るティアは、その地域では本物の足場を持つ。
ただ、払う値段に見合う堀かと問えば、答えは慎重になる。葬儀の小型化で単価は伸びにくく、ネットの低価格のプランが価格を押さえる。名古屋の外では、ティアの強みはまだ証明されていない。
資本の使い方も気になる。借入で買収を重ね、のれんが自己資本の6割に達する。利益が落ちた今期も配当はほぼ利益と同じ額を払う。借金を抱えたまま、件数の失速と金利の上昇が重なれば、株主の取り分は細る。
筆者は、この会社を「地域の良い商売だが、安全域は薄い」と見る。今の値段は、件数が計画どおりに伸びることをある程度まで織り込んでいる。
それでも、地元の会員と会館の網は簡単には崩れない。借金を減らし、出店の採算を確かめながら進むなら、長く持てる会社になりうる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの8割は葬儀そのものだ。ティアは自社の会館で、通夜と告別式を請け負う。祭壇・棺・料理・返礼品などを一式で売り、1件の売上は平均で90万円ほどになる。2025年9月期のグループの直営の葬儀は約2万件だった。
会館は愛知県に7割が集まる。名古屋市内に39の直営店があり、ほかに三重・大阪・首都圏・北海道にも出る。最近の出店は、200坪ほどの土地に建てる家族葬の小さなホールが中心だ。コンビニの跡地にも入れ、1店の投資は7,000万円ほどで済む。
2023年に買った八光殿は大阪で、東海典礼は愛知の三河で会館を営む。どちらも単価が100万円を超える、地域の老舗だ。買収の代金は73億円で、のれん、つまり買収で払った上乗せ分が69億円ある。毎年その償却が利益から引かれる。
残りの2割は、FC(フランチャイズ)と、葬儀の後の仕事だ。FCは他社にティアの名前と仕組みを貸し、74店で年6,700件ほどの葬儀を手がける。南海電気鉄道のグループ会社も加盟する。葬儀の後には、法要・仏壇・相続・不動産の相談まで請け負う。会社はこれをトータル・ライフ・デザインと呼び、伸ばそうとしている。
会員制度も柱だ。会員は割引で葬儀を受けられ、これが顧客を囲い込む。
優良さと弱いところ
優良さで見ると、ティアは「地元で強いが、堀は浅い」部類に入る。
強みは名古屋での密度だ。市内の斎場のシェアは29%まで上がった。会館が多いほど、病院からの搬送や会員の紹介が集まる。明朗な価格と人材の教育で評判を作り、それが次の顧客を呼ぶ。会員の囲い込みは、他社に乗り換えにくくする。
弱さもはっきりしている。葬儀は地域ごとの商売で、名古屋の強さを他の地域にそのまま持ち込めない。首都圏の店は件数が伸び悩む。値段の面では、ネットで葬儀を紹介する会社が低価格の定額プランを広げ、ユニクエストは愛知で十数店の直営を開く計画だ。ティア自身も低料金のプランを出し、件数を取る代わりに単価を下げている。
資本効率はまずまずだ。ROEは過去10年の中央値で10%弱あった。ただ、買収で純負債を抱え、自己資本比率は3割にとどまる。のれんの償却と利払いが、利益を毎年削る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
葬儀の市場は、亡くなる人の数で決まる。日本の死亡数は年160万人前後で、2040年ごろの山まで高い水準が続く。数量の面では、10年は横ばいからやや増えるとみてよい。ただ、2025年の後半からは、コロナの時期の増加の反動で死亡数が前の年を下回った。
単価は下がる力が強い。家族葬・一日葬・火葬だけの直葬が増え、参列者は減り、料理や返礼品の売上も細る。ネットの葬儀紹介会社は、定額の安いプランを全国で売る。2023年以降は物価の上昇で単価が少し戻ったが、長い目で見れば葬儀の小型化は止まらない。筆者は、1件の単価は10年で物価を下回る2割ほどの上昇にとどまると見る。
業界はまだ細かく分かれている。全国の大手でも、シェアは数%にすぎない。地域の老舗は後継ぎの不足で売り先を探しており、買収の機会は多い。燦ホールディングスやきずなホールディングスも、買収と出店で広がってきた。
人手の面では、葬祭の担当者は人が足りず、賃金が上がっている。会館を建てる費用も上がった。新しい会館の償却は、建てた時の高い値段で10年以上続く。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。年4.5億円の配当を2020年から同じ額で続け、2026年9月期は創業30周年の記念を足して5.2億円にする。この額は、利益が落ちた今期は利益とほぼ同じ額になる。配当性向の目標は示していない。株主優待は2019年に廃止した。
資本の使い道は出店と買収だ。2023年に八光殿と東海典礼を73億円で買い、代金は借入で賄った。中期経営計画は、3年で店舗を290に増やし、買収も前向きに探すとする。のれんは51億円残り、毎年4億円台の償却が続く。
借金は重めだ。有利子負債は118億円で、現金を引いた純負債は80億円近い。借り換えのたびに金利が上がれば、利払いは今より年2〜3億円増えうる。地域の葬儀会社の買収は値段が上がっており、高く買えば価値を壊す。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
葬儀の需要は、これから15年は高い水準が続く。死亡数は2040年ごろに山を迎え、とくに愛知や大阪の大都市圏では高齢の人口がなお増える。ティアは名古屋で斎場の3割を握り、病院や会員からの紹介が自然に集まる。その仕組みを、家族葬の小さなホールで周りの市町村に広げている。1店の投資は7,000万円で済み、数年で元が取れる。
買収も効いている。八光殿と東海典礼は単価の高い地域の老舗で、ティアの人材の教育と営業の型を入れれば利益はまだ伸びる。地域の葬儀会社は後継ぎがいないところが多く、安く買える会社は残っている。
今期の失速は、コロナの時期の死亡数の増加の反動だ。死亡数が増える流れに戻れば、件数は出店とともに伸び、営業利益は中期経営計画の25億円に近づく。そうなれば、今の時価総額は安い。
会員制度も効く。会員は割引で葬儀を受けられ、亡くなった時に他社を探さない。家族の誰かが会員なら、次の葬儀もティアになりやすい。
慎重な見方
葬儀は小さくなり続ける。家族葬や火葬だけの葬儀が増え、料理も返礼品も要らなくなる。ネットの紹介会社は定額の安いプランで顧客を集め、ユニクエストは愛知で直営の会館を十数店開く。ティア自身も安いプランを出して件数を守っており、単価は物価に追いつかない。
今期の数字は、その弱さを示した。件数が計画を下回ると、人件費と会館の費用は減らないので、営業利益は3割以上落ちた。会館の家賃や償却は固定費で、件数が1割落ちれば利益は半分になる。
借金も重い。買収のために借りた100億円超は、金利が上がるほど利払いを増やす。のれんは自己資本の6割に及び、買った会社の稼ぎが落ちれば減損で自己資本が削られる。それでも配当は利益とほぼ同じ額を払い続け、借金は減りにくい。名古屋の外での出店は、まだ件数が伸び悩んでいる。
首都圏の店は、名古屋の評判が届かない土地で一から顧客を集めねばならない。埼玉や千葉の店の件数が伸び悩むのは、その難しさの表れだ。
どちらに重みを置いたか
両方の言い分は互角に近い。死亡数が高い水準を保つことと、名古屋の足場の強さは確かだ。一方で、単価の下落と固定費の重さ、借金は今期の失速ではっきり表に出た。中立は件数を出店で2割弱増やすが、単価は物価に届かないとした。やや悲観と悲観の重みを3割半ばに置き、楽観は小さくした。今期の失速が一時的か、構造の変化の入口かは、あと1〜2年の件数を見ないとわからない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 651 円147 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 230 円52 億円)。 今の値に割り戻すと 458 円103 億円、今との差 +7.0%、 期待の年率 +7.5%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,443 円325 億円 | 311 円70 億円 | +309.8% | +15.1% | 140 円32 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,043 円235 億円 | 276 円62 億円 | +208.1% | +11.9% | 264 円59 億円 |
| 中立 | 37% | 740 円167 億円 | 244 円55 億円 | +130.1% | +8.7% | 364 円82 億円 |
| やや悲観 | 23% | 199 円45 億円 | 200 円45 億円 | −6.9% | −0.7% | 92 円21 億円 |
| 悲観 | 12% | 62 円14 億円 | 111 円25 億円 | −59.5% | −8.6% | 21 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 651 円147 億円 | 230 円52 億円 | +105.8% | +7.5% | 881 円198 億円 |
今の株価時価総額 428 円96 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 出店と買収で中部・関西の雄に 利益 20 億円 · PER 16.0 倍 · 株価時価総額 1,443 円325 億円
死亡数は2027年から再び増え、2040年の山に向かう。ティアは中期経営計画どおりに店舗を増やし、その後も年10店前後の出店を続ける。後継ぎのいない地域の葬儀会社を手ごろな値段で買い、関西と三河の足場を厚くする。グループの直営の葬儀は10年で1.4倍近くになる。
葬祭の担当者の提案営業が根付き、買収した会社の単価も上がる。家族葬が増えても、料理や返礼品の提案で1件の売上は物価に近く上がる。営業利益率は過去の山の水準を回復する。
利益で借金を返し、利払いは減る。配当は増え、のれんの償却が終わりに近づく。中部と関西で、葬儀の大手の1つになる。
- 葬儀(グループ直営):数量 27.0(直営の葬儀件数(千件・年))× 価格 112(1 件あたりの葬儀の売上(万円))→ 売上 302 億円・営業利益 35 億円。件数 1.37 倍・単価 1.25 倍・利益率 11.5%
- FC・葬儀の後の仕事(トータル・ライフ・デザイン):数量 35.0(グループの葬儀件数(直営+FC、千件・年))× 価格 19(葬儀 1 件あたりのその他の売上(万円))→ 売上 65 億円・営業利益 8 億円。件数 1.32 倍・単価 1.28 倍・利益率 13%
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.0 倍。全体の PER 16.01 倍、時価総額 325 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:死亡数が増える流れに戻り、出店と買収がともに当たる筋書き。単価も物価に近く上がる必要があり、そろう確度は低い。
やや楽観 20% 計画に少し遅れて店が増える 利益 16 億円 · PER 15.1 倍 · 株価時価総額 1,043 円235 億円
死亡数は高い水準で横ばいを続ける。ティアは家族葬のホールを愛知・三重・大阪で増やし、直営の葬儀は10年で1.26倍になる。名古屋の斎場のシェアは3割を超え、八光殿と東海典礼もティアの営業の型で件数を伸ばす。
単価は、家族葬の増加で物価を少し下回って上がる。人件費と会館の費用の上昇は、件数の増加で吸収する。営業利益率は今の水準をやや上回る。
借金は少しずつ減り、利払いは金利の上昇を件数の伸びが上回る。配当は年5億円台から少しずつ増える。ROEは資本コストを上回り、地域の葬儀の会社として着実に大きくなる。
- 葬儀(グループ直営):数量 25.0(直営の葬儀件数(千件・年))× 価格 110(1 件あたりの葬儀の売上(万円))→ 売上 275 億円・営業利益 29 億円。件数 1.26 倍・単価 1.23 倍・利益率 10.5%
- FC・葬儀の後の仕事(トータル・ライフ・デザイン):数量 32.0(グループの葬儀件数(直営+FC、千件・年))× 価格 18(葬儀 1 件あたりのその他の売上(万円))→ 売上 58 億円・営業利益 7 億円。件数 1.21 倍・単価 1.26 倍・利益率 12%
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.1 倍。全体の PER 15.13 倍、時価総額 235 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出店は計画に少し遅れるが続き、単価は物価を少し下回る筋書き。過去10年の伸びの延長に近い。
中立 37% 件数は2割弱増え、単価は物価に届かない 利益 12 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 740 円167 億円
死亡数は2040年の山に向けて緩やかに増えるが、年ごとの波は残る。ティアは出店を続けるが、名古屋の周りでは既存の店の件数を食い合う。直営の葬儀は10年で2割弱増える。
単価は物価を下回る。家族葬と一日葬が主流になり、ティアの低料金のプランも件数を取る役目を担う。ユニクエストなど低価格の会社が愛知で広がり、値上げの余地は小さい。会館の費用と人件費は上がり、営業利益率は今期の底からは戻るが、過去の山には届かない。
借金は大きくは減らず、利払いは金利の上昇で増える。配当は年5億円台を続ける。地域で強い葬儀の会社として残るが、伸びは緩やかだ。
- 葬儀(グループ直営):数量 23.5(直営の葬儀件数(千件・年))× 価格 108(1 件あたりの葬儀の売上(万円))→ 売上 253 億円・営業利益 24 億円。件数 1.19 倍・単価 1.20 倍・利益率 9.5%
- FC・葬儀の後の仕事(トータル・ライフ・デザイン):数量 30.0(グループの葬儀件数(直営+FC、千件・年))× 価格 19(葬儀 1 件あたりのその他の売上(万円))→ 売上 56 億円・営業利益 6 億円。件数 1.13 倍・単価 1.30 倍・利益率 11%
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍。全体の PER 14.06 倍、時価総額 167 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出店で件数は2割弱増えるが、家族葬と低料金のプランで単価は物価を下回る筋書き。今期の失速と中期経営計画の間をとった。
やや悲観 23% 低価格の競合に押され単価が沈む 利益 4 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 199 円45 億円
ネットの紹介会社とユニクエストが名古屋で定額の安い葬儀を広げ、ティアの単価は物価にまったく追いつかない。件数を守るため、ティアは低料金のプランを増やし、1件の売上はさらに下がる。出店は続くが、既存の店の件数が減り、直営の葬儀は10年で1割ほどしか増えない。
会館の家賃と償却、人件費は売上が伸びなくても減らない。営業利益率は5%を割る水準まで下がる。利払いは金利の上昇で増え、純利益は今期の水準からほとんど戻らない。
配当は年4.5億円を守るが、それで借金はほとんど減らない。買収した会社の稼ぎも落ち、のれんの減損の恐れが続く。
- 葬儀(グループ直営):数量 21.0(直営の葬儀件数(千件・年))× 価格 101(1 件あたりの葬儀の売上(万円))→ 売上 212 億円・営業利益 15 億円。件数 1.06 倍・単価 1.13 倍・利益率 7%
- FC・葬儀の後の仕事(トータル・ライフ・デザイン):数量 27.0(グループの葬儀件数(直営+FC、千件・年))× 価格 17(葬儀 1 件あたりのその他の売上(万円))→ 売上 46 億円・営業利益 4 億円。件数 1.02 倍・単価 1.18 倍・利益率 9%
倍率:ROE 4.8% は k を下回るので PER の上限は 1÷k=12.5 倍。価値はこの筋書きの稼ぐ力(純利益 4.4 億÷k≒55 億)まで。8 割の 10.0 倍に置いた。
確率:低価格の葬儀が広がり、件数の伸びも出店ほどには出ない筋書き。今期の失速がその入口かもしれない。
悲観 12% 件数が減り、借金と固定費に押される 利益 −5 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 62 円14 億円
低価格の葬儀と直葬が主流になり、ティアの会員制度も価格の差を埋められない。名古屋の外の店は件数が伸びず、閉鎖が続く。直営の葬儀は10年で1割近く減り、単価も物価に大きく届かない。
会館の家賃と償却、人件費は残り、営業利益はほぼ消える。金利の上昇で利払いは年4億円近くに増え、会社は赤字になる。買収した会社ののれんは減損され、自己資本は大きく削られる。
配当は減らされ、借金の返済が優先される。銀行は貸し続けるが、株主に残る価値は、借金を返したあとの会館の土地と建物の価値だけになる。
名古屋の会員は残るが、競合の安い葬儀との差を埋めるため、会員の割引を深くせざるを得ない。
- 葬儀(グループ直営):数量 18.0(直営の葬儀件数(千件・年))× 価格 95(1 件あたりの葬儀の売上(万円))→ 売上 171 億円・営業利益 5 億円。件数 0.91 倍・単価 1.06 倍・利益率 3%
- FC・葬儀の後の仕事(トータル・ライフ・デザイン):数量 23.0(グループの葬儀件数(直営+FC、千件・年))× 価格 16(葬儀 1 件あたりのその他の売上(万円))→ 売上 37 億円・営業利益 2 億円。件数 0.87 倍・単価 1.11 倍・利益率 5%
倍率:赤字の筋書きなので PBR で置き、今の自己資本 86 億に掛けた。稼ぐ力の床は無く、床は売れる資産の 14 億。PBR 0.163 倍。
確率:件数が減り、固定費と利払いで赤字に沈む構造的な負け。死亡数が高い水準のうちは起きにくいので1割強とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
葬儀(グループ直営)
ティアの直営会館と、八光殿・東海典礼・ティア北海道の会館で請け負う葬儀。祭壇・棺・料理・返礼品などを含む。
| 数量直営の葬儀件数(千件・年) | 価格1 件あたりの葬儀の売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 19.8 | 90 | 177 | 20 |
| 10 年後 中立 | 23.5 | 108 | 253 | 24 |
取り方:件数と単価は開示(FISCO の 2025-12 の資料:グループ直営 19,773 件・単価 897 千円)。売上は件数×単価で 177.3 億。営業利益はセグメントの開示が無いので推定で、全社の営業利益 16.4 億に本社費とのれん償却を足し戻した額を、葬儀 11%・その他 12% で配った。物価 3% は単価に入れた。10 年の単価は、家族葬・直葬への移行と低料金のプランで物価を下回る(中立 1.20 倍。燦ホールディングスの中立 1.22 倍と同じ考え)。
FC・葬儀の後の仕事(トータル・ライフ・デザイン)
FC 加盟社からの収入、法要・仏壇・相続・不動産の相談、会員の事業など、葬儀の前後で稼ぐもの。
| 数量グループの葬儀件数(直営+FC、千件・年) | 価格葬儀 1 件あたりのその他の売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 26.5 | 14 | 38 | 5 |
| 10 年後 中立 | 30.0 | 19 | 56 | 6 |
取り方:全社の売上 215.6 億から直営の葬儀の売上 177.3 億を引いた 38.2 億を、直営と FC を合わせた葬儀 26,470 件で割り、1 件あたり 14.4 万円とした(推定)。営業利益は売上の 12% と推定。物価 3% は単価に入れた。
リスクと懸念
葬儀の小型化と単価の下落
家族葬・一日葬・直葬が増え、料理や返礼品の売上が細る。ティア自身も低料金のプランで件数を取っており、1件の単価は物価に追いつかない。単価が1割下がれば、営業利益は半分近く減る。
低価格の競合の進出
ネットの葬儀紹介会社が定額の安いプランを広げ、ユニクエストは愛知で直営の会館を十数店開く計画だ。名古屋は全国でも競争の激しい地域で、シェアを守るための値下げが利益を削る。
借金と金利の上昇
買収の借入で有利子負債は118億円ある。借り換えのたびに金利が上がれば、利払いは年2〜3億円増えうる。利益が落ちる年に利払いが増えれば、配当と出店の余力が細る。
のれんの減損
八光殿と東海典礼の買収で生じたのれんは51億円残り、自己資本の6割にあたる。買った会社の件数や単価が落ちれば減損が出て、自己資本が一度に削られる。
固定費の重さ
会館の家賃・償却と葬祭の担当者の人件費は、件数が落ちても減らない。今期は件数が計画を下回っただけで営業利益が3割以上落ちた。会館を建てる費用も上がり、新しい会館の償却は重くなる。
人手の不足
葬祭の担当者は24時間の対応が要り、人が集まりにくい。賃金の上昇が単価の上昇を上回れば、利益率は下がる。出店の速さも、人を育てる速さに縛られる。
今後の分かれ目
- 死亡数が前年を上回る流れに戻り、既存店の件数が2期続けて増える
- 今期の失速は一時的と見て、中立の件数を上げ、やや楽観の確率を上げる。
- ユニクエストなどの低価格の会社が名古屋で斎場のシェアを伸ばす
- 単価と件数の両方が押されると見て、やや悲観の確率を上げる。
- 買収した会社ののれんを減損する
- 買収の値段が高すぎたと見て、悲観の確率を上げ、自己資本の起点を下げる。
- 借入を大きく返し、純負債がEBITDAの2倍を下回る
- 金利の上昇に耐える力が増したと見て、k の借金の分を 0 に戻す。
- 新しい買収を借入で行う
- 値段と買った会社の単価・件数を見て、価値を壊すかを判断する。高い値段なら悲観側に寄せる。
見ておくもの
- グループ直営の葬儀件数と単価(四半期)
- 名古屋市内の斎場シェア
- 既存店の件数の前年比
- 有利子負債とのれんの残高
- 人口動態統計の死亡数
倍率と資本コストの決め方
葬儀はグループ直営の件数(開示)×単価(開示)で、その他は直営と FC を合わせた件数×1 件あたりの売上(推定)で積んだ。物価 3% は単価に入れ、単価は葬儀の小型化で物価を下回るとした。k は 7.5% に quality +0.5% で 8.0%。中立の PER は正当化 PER の 9 割で、今の PER・PBR は使っていない。純負債の会社なので余った現金は立てない。2028/09 期から会館の賃借がリース負債として載るが、10 年後の数字は家賃を費用に入れた今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.5→16.01 倍・やや楽観 PER 13.4→15.13 倍・中立 PER 12.6→14.06 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に品質の調整+0.5%を足した。