結論
エル・ティー・エスは、大企業の業務改革からIT基盤の構築、人材の調達までを一体で支援するコンサルティング会社である。筆者の結論は「やや割高」だ。顧客の事業と業務を深く理解する力は評価できるが、売上の大部分が人の稼働時間に依存しており、AIエージェントの普及でその経済性が変わると考える。
同社は2015年から2025年にかけて売上を約9倍に伸ばした。2023年のHCSホールディングス買収などで事業規模を広げ、2025年には売上171億円、営業利益11.8億円に達した。2026年上期もDXコンサルティングの収益性が改善し、営業利益は前年同期比37.3%増だった。一方、DXエンジニアリングと人材マッチングは減収が続いている。成長の質がサービスごとに分かれ始めたことが、将来を見るうえで重要である。
今後10年も企業が業務を変革する必要はなくならない。むしろAIの導入によって業務設計や組織改革の需要は増えるだろう。しかし、需要が増えることと、コンサルタントの人月が増えることは別である。AIが調査、資料作成、設計、開発を担えば、同じ案件に必要な人数は減る。成果に応じて対価を受け取る仕組みに移行できなければ、市場の成長を売上に取り込めなくなる。
中立では、10年後の売上を約139億円、営業利益を約11.4億円と考える。現在より少ない売上でも業務効率化で利益を保つが、成長のための留保が積み上がる割に資本効率は低下する。確率加重後の現在価値は約63億円で、修正後の基準時価総額約74.8億円を約16%下回る。2030年の高い成長目標よりも、2036年にどの仕事で利益を得ているかを重視したい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず2036年にも顧客が同社にお金を払う理由を確かめたい。企業が変革し続ける必要はある。しかし、顧客が必要とするのはコンサルタントの人数ではなく、問題を解決した結果だ。これまで数十人が数か月かけて行った調査や設計をAIが短期間で済ませるようになれば、人月という商品の価値は下がる。
同社には大企業との長い取引関係や業務理解という強みがある。会社の中に入り、利害の異なる部門をまとめ、現実に運用できる仕組みへ変える能力は簡単に代替されない。ただし、特定の企業を絶対に離れられない顧客基盤や、独自データへの排他的な権利が確認できるわけではない。優秀な人が抜ければ競争力も失われる。堀を広いと断定するには証拠が足りない。
オーナー利益を見ると、設備投資の負担は製造業ほど大きくない。それでも採用、教育、営業、社内システム整備には継続的な資金が必要である。人材の育成費用を削って一時的に利益率を上げても、長期の稼ぐ力は強くならない。利益が現金として残るか、買収と人件費に吸収されるかを区別したい。
現在の企業規模と株価は、大手コンサルティング会社に比べると控えめである。2025年の実績利益に対する価格だけを見れば極端な割高ではない。しかし、問題は現在の利益の何割が10年後にも残るかだ。AI代替後の人月数量、資本効率、残余現金の使い方を慎重に考えると、現時点では十分な安全域を確認できない。成果課金への移行と継続的な資本還元が数字で証明されれば、評価を変える余地はある。
何で稼ぐ会社か
同社の仕事は、顧客企業が自力では進めにくい変革を支援することである。戦略を考えるだけでなく、業務プロセスを設計し、システムを構築し、運用を担う人材まで手配する。2026年から報告セグメントはトランスフォーメーションサービス事業の単一セグメントとなったが、経済性の異なる4つのサービス領域を区別して考える必要がある。
戦略コンサルティングは、経営戦略、SX・GX、M&Aや買収後の統合支援を扱う。2025年の売上構成は約6%で、規模はまだ小さい。幹部の意思決定や組織間の調整には人的な判断が残るが、調査や分析の多くはAIに移る。専門家の名前で受注できることが競争力になる一方、担当者への依存が大きい事業でもある。
DXコンサルティングは売上の約43%を占める中核事業だ。業務改革、ビジネスアーキテクチャ、プロジェクト管理、人材育成を支援する。顧客の業務を理解し、部門間の利害を調整する仕事には一定の継続性がある。2026年上期には売上が前年同期比9.4%増加し、粗利益率も改善した。ただし、成果報酬型の売上が独立して大きく開示されているわけではなく、現段階では人の稼働を中心に収益を得る事業とみる。
DXエンジニアリングは2025年の売上の約29%を占める。クラウド、データ基盤、システム開発などの実装を担当し、HCSグループの取得によって機能が広がった。事業として顧客には不可欠だが、AIによるコード生成やテスト自動化の影響を最も受けやすい。2026年上期は減収と粗利益率の悪化が同時に起きた。
プラットフォーム&エージェントは売上の約22%で、アサインナビなどのネットワークを活用した企業とIT人材のマッチングを扱う。人材データベースと取引先の関係は資産だが、会員管理ソフトを持つこと自体が強固な堀ではない。AIが人材探しと案件選別を自動化すれば、仲介に必要な人手と手数料に圧力がかかる。2026年上期の売上減少は、この領域に楽観的な成長を織り込めない理由の一つである。
優良さと弱いところ
同社の最も確かな競争力は、大企業の業務を理解したうえで、構想から実行まで継続して支援できることである。伊藤忠商事への業務省力化支援や東京ガスへのビジネスアナリスト育成支援など、顧客の実務に深く入り込む案件がある。これらは単純な資料作成よりも代替されにくい。売上上位20社への依存度も2021年平均の83%から2025年平均の71%へ低下し、顧客基盤の分散が進んでいる。
ただし、顧客関係が長いことと値上げを自由に通せることは同じではない。2024年には重点顧客への単価改定が進んだが、恒常的な値上げ率や長期の解約率について十分な数値は確認できない。競合のベイカレント、アクセンチュア、野村総合研究所、国内SI企業も同じ大企業のDX予算を争っている。人材とノウハウは転職によって移動しうるため、特定の会社だけが高い利益率を守れる構造ではない。
2025年のROEは約15%で、過去10年の中央値13.5%を上回った。一方、売上の急成長ほど営業利益率は改善しておらず、2022年以降は買収の影響もあって利益率が5~7%台にとどまる時期が長かった。増分利益には既存顧客からの高採算案件と買収による売上の両方が含まれるため、増分ROICが恒常的に資本コストを超えているとは断定できない。
アサインナビにはネットワーク効果の可能性があるが、解約率5%未満、年単位の移行負担、規制に支えられた共同利用基盤など、記録の正本型と認めるための証拠が2つ以上そろっていない。4領域とも強い堀とはせず、会社全体の堀は普通と判断する。顧客理解とPM能力が守りになる反面、工数課金のままではAIが生産性を上げるほど請求数量を失うという矛盾を抱える。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のコンサルティング需要は成長している。IDCが2026年6月に示した予測では、国内ビジネスコンサルティング市場は2025年の約8,822億円から2030年に約1兆4,064億円へ拡大する。ITコンサルティングを含めた市場は2025年に約1兆4,554億円である。AIを企業全体へ導入するには、業務の見直しと組織改革が必要であり、上流の意思決定支援には今後も需要が残る。
もっとも、市場規模が拡大するという予測は、人月数が増えるという意味ではない。IDC自身も、人員増加と売上成長が連動してきた構造の変化を指摘している。調査、要件整理、資料作成、プログラミング、テストの自動化が進むほど、従来の人月課金モデルでは実質的な請求数量が減る。業界ノートにある過去型の名目年4~6%成長を、そのまま2036年まで延長することはしない。
市場での同社の地位は、大手企業群に比べると小さい。2025年の戦略コンサルティング売上を国内ビジネスコンサルティング市場と比べると約0.1%、DXコンサルティングをビジネスとITの合算市場に比べると約0.5%に相当する。ただしサービス分類が一致しないため、これは厳密な市場シェアではない。ガートナーによる2024年の国内コンサルティング市場では、デロイトが約15%、アクセンチュアが約10%、PwCが約9%を占める。調査による母数の違いはあるものの、LTSの規模が小さいことは明らかだ。
DXエンジニアリングの競合にはNTTデータ、富士通、日立製作所、NECなどがある。IDCの2024年国内ITサービス市場約7兆205億円に対する同社の売上規模は0.1%に満たない。プラットフォーム&エージェントではレバテック、ギークス、INTLOOPなどと競争する。2025年のITフリーランス市場推計約1兆1,849億円に対する売上規模は約0.3%だが、仲介手数料だけの市場ではないため、こちらも参考値である。
今後10年の市場は、上流の変革設計と、標準化される実装作業に二極化すると考える。LTSが市場シェアを大きく伸ばすには、採用人数の拡大ではなく、顧客にとって代替しにくい業務設計能力を高める必要がある。現段階では、その転換が全領域で成功するとまでは考えない。
資本政策と M&A
経営陣は長年、成長投資と買収を優先してきた。特に2023年のHCSホールディングス買収によってエンジニアリング能力と顧客接点を広げたが、買収後の利益率は必ずしも安定していない。2025年には一部プロジェクトの契約損失も発生した。売上規模の拡大だけでなく、買収した人材が将来どれだけ利益を生むかを検証すべきである。
会社が公表する2nd Growth Planでは、2027年12月期のオーガニック売上目標は194億円、営業利益目標は20.2億円で、営業利益率は10.4%である。2025~2027年の営業利益について年平均20%成長を目指す。2030年には買収を加えた売上500億円、営業利益率10%超を掲げる一方、オーガニック計画は再策定中である。これらは固定的な中期経営計画ではなく、毎年見直す参考的な成長計画として開示されている。ROEの数値目標は確認できない。
株主還元では、2024年から配当を開始し、2025年も増配した。2026年は配当性向20%を目安に年間40円を予定する。また、2026年8月には上限2億円、12万株の自己株取得枠を設定し、8月に5万1,400株、9月に1万4,000株を取得した。総還元性向やDOEの数値目標は確認できず、自己株買いは機動的な実施という方針にとどまる。
2026年10月23日には東証プライム市場からスタンダード市場へ移行した。これは上場廃止ではないが、流動性や資本市場との関係を考える必要がある。今後の買収には借入を活用し、増資は予定していないとの説明である。ただし、AIによって仕事の形が変わる時期に、人員増加を目的とした買収を重ねることには慎重であるべきだ。利益を再投資して得る利回りが資本コストを下回るなら、追加買収より株主還元の方が合理的になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
同社には、大企業の変革を長期的に支えるための実績と人材がある。単なるIT開発会社ではなく、業務設計やプロジェクト管理を中心に、戦略から実装まで横断して支援できることが強みだ。2026年上期のDXコンサルティングは売上が伸び、粗利益率も改善した。高付加価値の業務へ人材を移し、顧客単価を高める戦略はすでに一部で成果を見せている。
企業にAIエージェントが普及すれば、仕事の単純化だけでなく、顧客自身が組織や業務を作り替える需要も発生する。伊藤忠商事への業務省力化支援や東京ガスへの人材育成支援は、同社が現実の大企業の変革に関われることを示す。FPTグループとの連携やシンガポールでの事業展開も、新しい顧客への接点を広げる可能性がある。
人月数量の縮小が避けられなくても、案件全体を管理する力と専門家の単価を高めれば収益性は守れる。大企業の業務改革には組織間の調整や責任の所在を明確にする作業が必要であり、これらをAIだけで完結させるのは難しい。単純作業をAIへ任せることで、高い専門性を持つ人材に利益が集中する構造も考えられる。
財務面でも、2026年6月末には現金及び預金が約39.7億円となり、有利子負債を上回った。無理な買収を抑え、営業資金を確保しながら収益性改善を進める余地がある。人員増加を追わずに利益率を高める経営へ移れれば、売上の成長が控えめでも、株主に帰属する価値は十分に増えるだろう。
慎重な見方
同社の売上の中核は、現時点では依然として人の労働時間である。戦略コンサルティング、DXコンサルティング、DXエンジニアリングのいずれも、人が作業した量と顧客に請求できる対価が売上を決める。AIが短期間で資料を作り、コードを書き、要件を整理できるようになれば、同じ仕事に必要な人月は大幅に減る。従来の単価改定や採用拡大では、この変化を補いきれない可能性がある。
2026年上期には、DXエンジニアリングが約12%、プラットフォーム&エージェントが約14%の減収だった。すべてをAIの影響と断定することはできないが、需要とサービス構造に弱さがあることは確かだ。特にSESや案件マッチングは、需要側が自動化によって人数を減らせば、紹介の数量が先に縮む。人材データベースが存在するだけでは、高い手数料を守る根拠にならない。
さらに、HCSホールディングスの買収で事業規模を拡大した後も、利益率は一貫して向上していない。2025年には不採算プロジェクトの影響が発生した。大企業のコンサルティング需要が成長しても、ベイカレントやアクセンチュアなど規模の大きい競合が高採算案件を取り、小規模な会社に人員提供型の案件が残る可能性もある。
2030年の売上500億円という成長目標は魅力的に映るが、現在の売上の約3倍である。AIが人月を減らす局面で、買収による売上加算がそのまま株主価値の増加につながるとは限らない。買収価格が高すぎれば、取得した人材の稼ぐ力が落ちた時にのれんの減損も発生する。長く持つ株主は、売上の大きさではなく、投じた資本が十分な利益を生むかを見極める必要がある。
どちらに重みを置いたか
顧客との関係とDXコンサルティングの収益性改善には実績がある。一方、売上の大部分が人月に依存し、2026年上期にはエンジニアリングとマッチング領域の縮小が確認された。AI代替による数量減少は各筋書きに織り込んでおり、確率でさらに一律の減点はしていない。会社固有の実行リスク、特にHCS買収後の採算、低採算案件、プラットフォーム需要の弱さを踏まえ、楽観側28%に対して悲観側37%とやや下へ寄せた。中立でも一定の利益は残るが、利益を留保した後のROEは資本コストを下回る。現時点では慎重な見方がやや勝る。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 2,444 円106 億円(+ 還元の換算額還元の合計 380 円16 億円)。 今の値に割り戻すと 1,451 円63 億円、今との差 −11.6%、 期待の年率 +6.1%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 5,530 円240 億円 | 684 円30 億円 | +278.9% | +15.5% | 621 円27 億円 |
| やや楽観 | 18% | 4,030 円175 億円 | 563 円24 億円 | +180.1% | +11.8% | 827 円36 億円 |
| 中立 | 35% | 2,391 円104 億円 | 420 円18 億円 | +71.4% | +6.1% | 984 円43 億円 |
| やや悲観 | 25% | 901 円39 億円 | 230 円10 億円 | −31.1% | −4.0% | 283 円12 億円 |
| 悲観 | 12% | 865 円38 億円 | 46 円2 億円 | −44.4% | −5.8% | 109 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,444 円106 億円 | 380 円16 億円 | +72.2% | +6.1% | 2,824 円123 億円 |
今の株価時価総額 1,640 円71 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 業務変革の中核を守り、高付加価値化に成功 利益 17 億円 · PER 13.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5,530 円240 億円
AIが企業の標準的な開発や調査作業を担う一方、LTSは業務変革の設計者としての地位を確立する。顧客企業の経営層と現場を結び、業務構造を再設計する仕事が中心となる。DXコンサルティングでは、PM・BAの専門家が高い価値を提供し、現在に近い稼働数量を維持する。高度な戦略案件の増加により、価格の引き上げも定着する。
HCSグループとの統合効果が進み、エンジニアリングは単純な開発作業からクラウドやデータ基盤の設計へ重点を移す。人材マッチングも外部パートナーを供給するだけでなく、顧客の変革チーム全体を設計する機能として定着する。FPTグループとの連携によって大型案件への対応力も高まる。
2035年には売上約215億円、営業利益約25.7億円を生む。営業利益率は約12%に改善し、成長投資後も一定の超過利益が残る。大型M&Aによる追加売上は織り込まず、資本配分も比較的健全に推移する。AI関連の独立した売上金額が十分に確認できないため、最も良い筋書きでも人月数量を現在水準以上に増やさない。
- 戦略コンサルティング:数量 41.2(年間稼働換算コンサルタント数(人年、推定))× 価格 0.32(稼働1人年当たり売上(億円、名目))→ 売上 13 億円・営業利益 2 億円。数量は現在の0.98倍、単価は1.32倍。高難度の戦略案件が定着する。
- DXコンサルティング:数量 392(年間稼働換算コンサルタント数(人年、推定))× 価格 0.25(稼働1人年当たり売上(億円、名目))→ 売上 98 億円・営業利益 13 億円。数量は現在と同じ、単価は1.34倍。PM・BAと変革設計への需要が維持される。
- DXエンジニアリング:数量 279(年間稼働換算エンジニア数(人年、推定))× 価格 0.20(稼働1人年当たり売上(億円、名目))→ 売上 57 億円・営業利益 8 億円。数量は0.90倍、単価は1.28倍。高付加価値設計が標準作業の減少を補う。
- プラットフォーム&エージェント:数量 4,750(年間の仲介・SES稼働換算人月(人月、推定))× 価格 0.01(稼働換算1人月当たり売上(億円、名目))→ 売上 46 億円・営業利益 5 億円。数量は0.95倍、単価は1.30倍。専門人材の統合調達で仲介価値を守る。
倍率:資本コストkは7.5%、2035年以降のg_longは0%。AIエージェント代替後の成熟事業として、正当化PERは(1−g/RONIC)/(k−g)=1/0.075=13.3333倍。ROEは約10.3%でkを上回るが、長期成長率を0%に制限するため倍率に高成長を織り込まない。余剰現金25億円に含まれる税後運用益0.35億円を純利益から外し、事業純利益16.65億円にPERを適用した後、余剰現金の75%である18.75億円を加算する。結果は約240.75億円。
確率:DXコンサルティングの収益性改善と顧客関係を高く評価する。ただし、AI普及後も現在規模に近い人月数量を保つには、専門性と顧客単価の上昇がほぼ全領域で成功する必要があるため、確率は10%とする。
やや楽観 18% 高付加価値の変革支援が下支え 利益 12 億円 · PER 13.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,030 円175 億円
DXコンサルティングの高付加価値案件が事業の中心となり、既存顧客との関係を維持する。企業の業務改革は継続し、AIを導入するための業務設計やプロジェクト管理の仕事は残る。ただし、設計資料の作成や分析業務は徐々に自動化され、同じ案件に必要な人数は減少する。顧客が支払う総額は大きく増えないが、専門家の単価はある程度引き上げられる。
DXエンジニアリングでは、従来の開発人月が縮小する一方、複雑なシステムの統合作業が残る。プラットフォーム&エージェントも、案件数は減るものの高い専門性を持つ人材への紹介需要が続く。HCSグループの統合は大きな失敗を起こさず、買収後の利益回復が定着する。
2035年の売上は約183億円で、名目売上は2025年をやや上回る。しかし、実質数量は全領域で減っており、売上増加の主因は単価上昇である。営業利益は約19.1億円、純利益は約12.4億円となる。2027年の利益回復目標に近い収益力を、その後も保つ筋書きである。
- 戦略コンサルティング:数量 37.0(年間稼働換算コンサルタント数(人年、推定))× 価格 0.32(稼働1人年当たり売上(億円、名目))→ 売上 12 億円・営業利益 2 億円。数量0.88倍、価格1.29倍。専門性は維持するが調査工数は減る。
- DXコンサルティング:数量 345(年間稼働換算コンサルタント数(人年、推定))× 価格 0.25(稼働1人年当たり売上(億円、名目))→ 売上 85 億円・営業利益 11 億円。数量0.88倍、価格1.31倍。業務設計と変革管理が支える。
- DXエンジニアリング:数量 248(年間稼働換算エンジニア数(人年、推定))× 価格 0.20(稼働1人年当たり売上(億円、名目))→ 売上 49 億円・営業利益 5 億円。数量0.80倍、価格1.24倍。低付加価値の開発が縮小する。
- プラットフォーム&エージェント:数量 4,100(年間の仲介・SES稼働換算人月(人月、推定))× 価格 0.01(稼働換算1人月当たり売上(億円、名目))→ 売上 37 億円・営業利益 3 億円。数量0.82倍、価格1.20倍。専門人材の紹介収入が残る。
倍率:k7.5%、g_long0%の正当化PER13.3333倍。ROE約8.6%はkを上回るが、10年より先は人月数量の再成長を認めない。余剰現金18億円に対応する税後運用益0.252億円を除いた事業純利益12.148億円を評価し、余剰現金の75%に当たる13.5億円を加算する。
確率:DXコンサルティングの単価と粗利益率の改善はすでに確認できる。ただし、エンジニアリングと人材マッチングの減収が同時に解消するとは考えないため、楽観ほど数量を維持させず18%とする。
中立 35% 市場は拡大するが人月数量は減少 利益 7 億円 · PER 13.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,391 円104 億円
2026年から2027年にかけては、会社の計画に沿って収益性が回復する。しかし、その後はAIによる業務自動化が本格化し、顧客企業が外部に依頼する作業量が減っていく。市場全体としては企業変革への投資が続くが、同社の収入源である人月数量は減る。単価の上昇で減収を一部補うものの、過去10年のような高成長には戻らない。
DXコンサルティングは業務設計や利害調整を中心に生き残るが、資料作成や調査の自動化によって請求数量は現在の72%程度となる。DXエンジニアリングは標準開発の自動化で数量が60%まで縮む。プラットフォーム&エージェントもSES需要の縮小と仲介自動化によって数量が減少する。HCS買収の経済効果は大きく悪化しないが、新たな大型買収による売上加算も見込まない。
2035年には売上約139億円、営業利益約11.4億円、純利益約7.3億円を生む。売上は現在より小さいが、非稼働費用の管理と高付加価値案件の比率上昇によって営業利益率は約8.2%を確保する。一方、過去に留保した利益が自己資本に積み上がるため、ROEは約6.1%に低下する。顧客基盤は残るものの、再投資による超過利益を生む力は弱まる。
- 戦略コンサルティング:数量 29.4(年間稼働換算コンサルタント数(人年、推定))× 価格 0.30(稼働1人年当たり売上(億円、名目))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。数量0.70倍、価格1.24倍。高度な判断支援は残るが調査工数は減る。
- DXコンサルティング:数量 282(年間稼働換算コンサルタント数(人年、推定))× 価格 0.24(稼働1人年当たり売上(億円、名目))→ 売上 67 億円・営業利益 8 億円。数量0.72倍、価格1.26倍。PM・BAの需要が残るため縮小は比較的緩やか。
- DXエンジニアリング:数量 186(年間稼働換算エンジニア数(人年、推定))× 価格 0.19(稼働1人年当たり売上(億円、名目))→ 売上 35 億円・営業利益 3 億円。数量0.60倍、価格1.18倍。標準開発の人月減少が大きい。
- プラットフォーム&エージェント:数量 3,250(年間の仲介・SES稼働換算人月(人月、推定))× 価格 0.01(稼働換算1人月当たり売上(億円、名目))→ 売上 28 億円・営業利益 2 億円。数量0.65倍、価格1.15倍。仲介自動化で数量が減る。
倍率:2035年のROE約6.1%はk7.5%を下回る。ROEが資本コスト以下のため正当化PERの上限は1/k=13.3333倍であり、g_long0%の式と一致する。事業利益を資本コストで評価し、利益を留保することで超過価値が自動的に生まれるとは考えない。余剰現金12億円に対応する税後運用益0.168億円を純利益から控除し、事業純利益7.132億円にPERを適用した後、余剰現金の75%を加える。
確率:2026年上期にDXコンサルティングの改善が確認できる一方、エンジニアリングと人材マッチングの減収が続く。高付加価値案件の利益を維持しながら、AI代替で数量が減るという両面を最も代表するため35%とする。
やや悲観 25% 人月の縮小と競争が収益性を圧迫 利益 3 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 901 円39 億円
DXの需要は残るが、顧客がAIを活用して開発や分析を内製化する。企業が外部コンサルタントを使う場面は、特に判断や責任を外部に委ねたい重要案件へと限られる。LTSはPM・BAを中心とした業務改革案件を維持するものの、全体の稼働人数を大幅に減らすことになる。DXコンサルティングでも単価改定は進まず、実質単価が徐々に下がる。
エンジニアリングではAI活用の進んだ競合に価格面で劣り、プロジェクト管理や保守作業の一部を失う。プラットフォーム&エージェントではSES需要が縮小し、マッチング事業の規模も小さくなる。HCSグループの事業再編や人員配置転換が必要となり、期間中には採算が悪化する年も発生する。
2035年の売上は約100億円、営業利益は約4.7億円となる。コスト削減によって黒字は維持するが、営業利益率は約4.7%に低下する。顧客関係は残るものの、値上げできる領域が限定され、資本効率も大きく悪化する。2025年末に存在した資産を保守的に評価した価値が、株主価値の下支えとなる。
- 戦略コンサルティング:数量 23.1(年間稼働換算コンサルタント数(人年、推定))× 価格 0.28(稼働1人年当たり売上(億円、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。数量0.55倍、価格1.15倍。提案作業の自動化と競争が進む。
- DXコンサルティング:数量 227(年間稼働換算コンサルタント数(人年、推定))× 価格 0.22(稼働1人年当たり売上(億円、名目))→ 売上 50 億円・営業利益 5 億円。数量0.58倍、価格1.18倍。実質単価の低下が避けられない。
- DXエンジニアリング:数量 140(年間稼働換算エンジニア数(人年、推定))× 価格 0.17(稼働1人年当たり売上(億円、名目))→ 売上 24 億円・営業利益 0 億円。数量0.45倍、価格1.08倍。AIによる開発工数削減と採算低下が進む。
- プラットフォーム&エージェント:数量 2,500(年間の仲介・SES稼働換算人月(人月、推定))× 価格 0.01(稼働換算1人月当たり売上(億円、名目))→ 売上 19 億円・営業利益 0 億円。数量0.50倍、価格1.02倍。仲介数量減少と手数料競争が進む。
倍率:ROE約3.6%は資本コスト7.5%に届かず、PERの上限は1/k=13.3333倍。AI代替後の収益低下と再投資の価値毀損を考え、やや悲観では12.5倍を採用する。余剰現金3億円の税後運用益0.042億円を除いた純利益2.958億円に倍率を適用し、現金の戻り方75%による2.25億円を加算する。稼ぐ力の上限約41.69億円と資産の床37.665億円の範囲内であり、両方を重複して足していない。
確率:2026年上期のDXエンジニアリングとプラットフォーム&エージェントの減収に加え、競争激化や不採算案件の再発が長期利益を削る可能性を考慮する。AI代替による数量減少自体は中立にも含めているため、その分を確率に重ねていない。
悲観 12% AI代替によって従来型の事業が構造的に衰退 利益 1 億円 · PBR 0.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 865 円38 億円
AIエージェントが企業の業務分析、要件定義、資料作成、コード生成、テスト、保守の相当部分を代替する。顧客企業は自社のAI環境を使って多くの仕事を完結させ、外部コンサルタントを使うのは限られた難度の高い案件だけになる。LTSの売上は現在の半分前後に縮小し、従来型のコンサルタント・エンジニアの人数を維持できなくなる。
DXエンジニアリングでは、不採算案件が続き、買収で獲得した人材と事業資産の一部が期待した利益を生まない。プラットフォーム&エージェントも仲介価値が薄れ、赤字に陥る。大企業との関係は一部残るが、大手コンサルティング会社と低価格のAI事業者の双方から競争を受ける。2028年から2033年ごろには構造改革費用や事業損失が発生し、利益を生む力を一度大きく失う。
2035年の売上は約80.5億円、営業利益は約1.2億円にとどまる。資金繰りを維持し、少額の利益を確保できても、資本効率は低く、従来の成長企業としての評価は失われる。10年間の累積利益は途中の損失に相殺されて約2億円となり、期間中の還元約2億円を差し引くと、評価上の自己資本の起点は現在の約46.5億円となる。株主価値の中心は将来の成長ではなく、残された資産の回収可能性である。
- 戦略コンサルティング:数量 21.0(年間稼働換算コンサルタント数(人年、推定))× 価格 0.26(稼働1人年当たり売上(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。数量0.50倍、価格1.08倍。高難度案件だけが残る。
- DXコンサルティング:数量 196(年間稼働換算コンサルタント数(人年、推定))× 価格 0.21(稼働1人年当たり売上(億円、名目))→ 売上 40 億円・営業利益 2 億円。数量0.50倍、価格1.10倍。組織改革支援は残るが競争が激しい。
- DXエンジニアリング:数量 124(年間稼働換算エンジニア数(人年、推定))× 価格 0.15(稼働1人年当たり売上(億円、名目))→ 売上 19 億円・営業利益 0 億円。数量0.40倍、価格0.96倍。実質・名目とも単価低下が生じ、赤字となる。
- プラットフォーム&エージェント:数量 2,100(年間の仲介・SES稼働換算人月(人月、推定))× 価格 0.01(稼働換算1人月当たり売上(億円、名目))→ 売上 15 億円・営業利益 0 億円。数量0.42倍、価格0.98倍。仲介価値の低下により赤字となる。
倍率:2035年の純利益0.65億円と資本コスト7.5%から測る稼ぐ力は約8.67億円にすぎない。一方、2025年末の自己資本から換金しにくいのれん・顧客関連資産・ソフトウェアと有価証券の一部を除いた現在の参考床は37.665億円である。悲観では将来増えた帳簿純資産にPBRを掛けず、現在の自己資本46.5億円に対する0.81倍で37.665億円とする。これは中立の実効PBR約0.87倍より低く、稼ぐ力と資産を重複して数えていない。
確率:AIによる標準業務の自動化、顧客の内製化、価格競争、過去の買収資産の採算悪化が同時に進む厳しい筋書きである。売上は現在の半分前後まで縮小するが、主要顧客との関係と一定の現金・換金可能資産は残るため、倒産直前とは扱わない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
戦略コンサルティング
経営戦略、SX・GX、M&A、買収後の統合、経営幹部向けの意思決定支援。高い専門性を要するが、収入の中心は専門家の作業と案件契約である。
| 数量年間稼働換算コンサルタント数(人年、推定) | 価格稼働1人年当たり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 42.0 | 0.25 | 10 | 2 |
| 10 年後 中立 | 29.4 | 0.30 | 9 | 1 |
取り方:2025年度の会社開示による売上構成比約6%を、連結売上171億円に掛けた約10.3億円を出発点とする。人数の直接開示はないため、高単価の専門コンサルタント42人年、1人年当たり2,450万円という仮定で再構成した。人数は実測値ではない。2026年上期の正式な収益分解では、この領域の売上は4.86億円であり、規模感を確認できる。AIエージェント代替の型は人月・工数型。中立の数量は現在の0.70倍、価格は1.24倍とし、物価上昇を価格側だけに含める。2025年の領域別営業利益は開示されないため、粗利益率と本社費配賦から推定した。市場規模は国内ビジネスコンサルティング約8,822億円で、同社売上相当の参考シェアは約0.12%である。
DXコンサルティング
業務改革、ビジネスアーキテクチャ、プロジェクト管理、変革人材育成、データ・AI導入の構想と実行支援。顧客との深い関係がある主力領域。
| 数量年間稼働換算コンサルタント数(人年、推定) | 価格稼働1人年当たり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 392 | 0.19 | 74 | 7 |
| 10 年後 中立 | 282 | 0.24 | 67 | 8 |
取り方:2025年度の開示構成比約43%と売上171億円から約73.5億円を推定した。案件を直接担当するコンサルタント392人年、1人年当たり1,875万円の売上という組立てであり、領域別人員数の開示ではない。2026年上期の正式な領域売上は41.72億円で、前年同期の38.24億円から増加した。2026年上期のフロント人員911名という全社KPIと矛盾しない範囲で、戦略・DXコンサルティング・エンジニアリングの合計744稼働人年を仮定したが、実際の領域別稼働率は未確認である。AIエージェント代替の型は人月・工数型で、PM・BAの比較的代替しにくい部分を考慮して中立数量0.72倍、単価1.26倍とする。国内のビジネス+ITコンサルティング市場約1兆4,554億円に対する売上規模は約0.5%だが、厳密な分類一致を伴うシェアではない。営業利益は本社費配賦を含む推定値。
DXエンジニアリング
クラウド、システム開発、データ基盤、ソリューション開発などの実装支援。HCSグループの買収によって事業領域が拡張した。
| 数量年間稼働換算エンジニア数(人年、推定) | 価格稼働1人年当たり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 310 | 0.16 | 50 | 3 |
| 10 年後 中立 | 186 | 0.19 | 35 | 3 |
取り方:2025年度の会社開示構成比約29%から約49.6億円とし、年間稼働エンジニア310人年、1人年当たり売上1,600万円に換算した。人数と単価は推定であり、会社開示の実績単価ではない。2026年上期の正式な売上は23.54億円で、前年同期25.76億円から減少した。AIエージェント代替の型はSI受託・人月工数型であり、生成AIによる開発、テスト、保守作業の削減が最も強いと判断する。中立の数量を0.60倍、価格を1.18倍とする。2024年国内ITサービス市場約7兆205億円に対する売上規模は約0.07%だが、SIと保守を含む広い市場を分母にした参考値である。営業利益は全社利益へ一致するよう本社共通費を別にした管理上の推定である。
プラットフォーム&エージェント
アサインナビを含む企業とIT人材のマッチング、外部パートナーの活用、SES・人材供給、コミュニティ運営。仲介機能と人材稼働が混在する。
| 数量年間の仲介・SES稼働換算人月(人月、推定) | 価格稼働換算1人月当たり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 5,000 | 0.01 | 38 | 2 |
| 10 年後 中立 | 3,250 | 0.01 | 28 | 2 |
取り方:2025年度の新しいサービス領域別構成比約22%から売上37.6億円を推定した。ITフリーランス案件の公表平均単価が月75万円前後であることを参考に、5,000人月×75.2万円で換算した。ただし、プラットフォーム利用料と人材供給の売上認識が混在するため、5,000人月は実際の成約件数ではなく売上換算数量である。2026年上期の正式な売上は15.05億円、前年同期16.55億円から減少している。AIエージェント代替の型は主に人材仲介・工数型であり、管理画面や会員制機能の一部には席課金型と同様の圧力もある。解約率、規制対応、独自データを巡る証拠が不足するため、記録の正本型には分類しない。中立数量0.65倍、価格1.15倍とする。国内ITフリーランス市場推計約1兆1,849億円に対する参考規模は約0.3%で、競合のレバテック、ギークス、INTLOOPとの厳密なシェア比較ではない。
リスクと懸念
AIエージェント代替による人月収入の縮小
最も大きい構造リスクである。調査、資料作成、業務整理、コード生成、テスト、保守の一部がAIで完結するようになれば、同じ顧客需要を満たすための人月は減る。人月単価を引き上げても請求数量の減少を補いきれなければ、売上と利益は同時に縮小する。成果報酬への転換がどれだけ進んだかを金額で確認する必要がある。
顧客集中と大型案件の採算
売上上位20社の構成比は低下しているが、2025年でも約71%と高い。重点顧客の大型案件が延期されたり、不採算化したりすると、稼働人員と利益率の両方に影響が及ぶ。2025年には契約損失が発生しており、単に受注残が増えたことを競争力の証拠とはできない。
DXエンジニアリングの収益性
2026年上期には売上が約12%減少し、粗利益率も悪化した。AIによる工数削減だけでなく、案件構成と人材配置の問題が重なると、売上が減る以上に利益が傷む。HCSグループの取得で増えた人員や事業資産について、継続的な稼働と利益を確保できるかが問われる。
人材マッチングの仲介価値低下
プラットフォーム&エージェントは、顧客が外部人材を必要とする量に依存する。AIによってSES需要が減り、案件と人材の検索・選別も自動化されれば、成約数量と仲介手数料が同時に低下する。会員数や登録者数が増えるだけでは、独自のデータや高い乗換費用に基づく堀が強くなったことにはならない。
M&Aと増分資本収益率
買収を通じて売上を増やしても、取得原価に見合う利益を長期間得られなければ株主価値は増えない。2023年のHCSホールディングス買収後も利益率の改善には時間を要した。人材獲得を目的とするM&Aを続ける場合、AIで必要人員が減少する将来に、買収時の期待利益を維持できない可能性がある。
借換金利と株主還元の制約
2026年6月末の借入金は約24.24億円であり、純現金の状態でも利払いは存在する。借入の借換条件が悪化すれば、営業利益が維持されても純利益に負担が生じる。増配と自己株買いは進んでいるものの、成長投資を優先する方針であるため、業績悪化時に現在と同じ還元を受け取れるとは限らない。
市場区分変更と株式の流動性
2026年10月23日に東証スタンダード市場へ移行したことは上場廃止ではない。しかし、大型の機関投資家が保有しにくくなる可能性や、売買の流動性が低下する可能性はある。これは事業価値そのものの減少とは区別すべきだが、少数株主が適切な価格で持分を売却できるかという問題を大きくする。
今後の分かれ目
- 成果報酬またはAIエージェントの運用対価として、従来の人月収入を置き換える売上が独立して開示されたら
- 該当領域のAI代替の型を見直す。受注額だけでなく継続売上、解約率、粗利益率を確認し、10年後の数量とg_longを上方修正できるか判断する。
- DXコンサルティングの粗利益率改善と顧客単価の上昇が3年以上続いたら
- 単なる人件費削減ではなく値決め力の改善が定着した可能性を評価する。中立の利益率と高付加価値案件の構成比を上方修正する。
- DXエンジニアリングの売上減少と不採算案件が続いたら
- 中立の数量を下げ、やや悲観・悲観の確率を高める。特に構造改革後も稼働率が戻らなければ、買収資産の減損可能性も見直す。
- プラットフォーム&エージェントの成約数量が減少する一方で手数料率も低下したら
- 仲介のネットワーク効果が弱まっていると判断する。数量と価格の両方を引き下げ、独自データを堀として評価する余地をさらに小さくする。
- 会社が利益成長より売上規模の拡大を優先し、大型M&Aを繰り返したら
- 買収対価、のれん、買収後のROICを確認する。増分ROICが資本コストを下回る場合、売上の増加を価値の増加とは認めず、下方シナリオへ重みを移す。
- 営業キャッシュフローが安定し、増配と自己株買いによる総還元が長期間50%以上に定着したら
- 余剰現金の戻り方を0.75から1.0へ引き上げることを検討する。稼いだ利益が株主の手元に戻る確度が高まれば、再投資の不確実性に伴う評価上の損失は小さくなる。
見ておくもの
- DXコンサルティングの売上成長率、顧客単価、粗利益率の推移
- 4サービス領域ごとの売上高と粗利益率、全社営業利益への接続
- フロント人員数、稼働率、PM・BA資格取得者数、離職率
- 顧客数、重点顧客30社の取引継続状況、売上上位20社の構成比
- DXエンジニアリングの不採算案件、受注損失引当金、構造改革の進捗
- プラットフォーム&エージェントの稼働人月、成約率、案件単価、手数料率
- 成果報酬型・AI関連サービスの実際の売上金額と粗利益
- HCSを含む買収事業の利益と投下資本、のれん残高
- 営業キャッシュフロー、現預金、総借入金、支払利息、設備投資
- 配当性向、自社株取得の実行額、発行済株式数と自己株式数
- 2030年成長計画の再策定と、AI普及後の事業モデルに関する定量開示
倍率と資本コストの決め方
事業価値の算定では現在のPER・PBRや同業の市場倍率を使わず、4サービス領域の稼働数量と単価から売上を求めた。AIエージェント代替による数量減少を中立に織り込み、2035年以降の長期成長率を0%とした。倍率は資本コスト7.5%と長期の事業経済性から正当化し、楽観から中立は正当化PERの上限をそのまま採用した。現在株価を基準に倍率を逆算していない。
株数については重要な修正がある。添付factsの4,674,685株は、発行済株式に自己株式相当数を重ねて加算した疑いがある。2026年6月の決算短信に記載された発行済株式4,725,185株から自己株321,962株を控除し、その後開示された8月の買付51,400株と9月の買付14,000株をさらに控除した4,337,823株を基準とした。10月の新株予約権行使等による微小な株数変動は未確認であり、発行済株式の追加変動があれば更新を要する。基準株価1,724円での時価総額は約74.8億円となる。
中立の2035年時価総額は約104.1億円だが、10年間の資本コストを考慮すると現在価値は小さくなる。全5筋書きの終価と期間中の還元を確率加重して割り引いた本質価値は約63.2億円で、現在の基準時価総額との差は約マイナス15.6%となる。結果は「やや割高」であり、文章の結論もこの差に合わせた。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債利回り3%と株式リスクプレミアム4.5%の合計を基準とする。個別案件の失敗やM&Aの不確実性は資本コストへ機械的に加算せず、各筋書きの利益と確率で表現する。