結論
WDBホールディングスは、化学やバイオの研究室で実験を担う人材を派遣する国内最大級の専門会社である。筆者の結論は「やや割安」だ。研究職派遣の約3割というシェア、育成から就業後の支援までを担う仕組み、厚い純現金を評価すると、事務派遣や医薬品開発受託の縮小を厳しく見ても、現在の時価総額には一定の安全域がある。
ただし、過去の成長率を10年先へ延ばしてよい会社ではない。2022年3月期に63億円あった営業利益は、2026年3月期に45億円まで減った。売上が大きく崩れていないにもかかわらず、派遣スタッフの待遇改善、システム開発、新本社への投資、CROの受託量減少が利益を圧迫している。過去10年のROE中央値15.9%に対し、直近は8%台である。資本を積み上げるほど企業価値が増える段階から、資本の使い方を問い直す段階に入った。
事業を分けて見ることが欠かせない。売上の約68%を占める理学系派遣では、顕微鏡での観察、試料の調製、化学分析など、現実の研究室で人が行う仕事が残る。一方、事務派遣やCROの文書作成・安全性情報処理は、AIエージェントによる代替と顧客の内製化を強く受ける。自社開発のプラットフォームは対抗手段だが、現時点で独立した大きな収益源と認める証拠はない。
10年後の5つの筋書きを資本コストで現在価値に戻し、期間中の株主還元を加えた本質価値は約394億円となる。基準時価総額334億円に対して約18%高い。これは大幅な成長への期待ではなく、現場型の研究職派遣が残ることと、会社の資産・利益が株主に届くことを前提とした評価である。CROの再建、配当性向65%の実行、研究職派遣のシェア維持を継続して確認する必要がある。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の目で最初に評価したいのは、この会社が10年後も必要とされる仕事を持っていることだ。医薬品、化学、食品の研究室では、検体を扱い、測定装置を動かし、実験結果の信頼性を確かめる人が要る。WDBはその仕事を担える人を育て、顧客へ届ける。単なる求人広告より複雑で、専門家を社内だけで十分に確保できない顧客に価値を提供している。この事業は2036年にも残る可能性が高い。
しかし、必要な事業であることと、高い利益率で成長する事業であることは違う。派遣先は料金を抑えたい。働く人は報酬を上げたい。WDBは両者の間で、研修、採用、労務管理、顧客対応を引き受ける。ここで継続的に超過利益を得るには、候補者の獲得費用を低くし、就業率を高め、顧客が納得するだけの品質を示さなければならない。2026年の料金改定は前進だが、利益率の長期低下を覆すにはまだ足りない。
株主の取り分という観点では、純利益より現金の使途が気になる。保有現金は厚く、借金も重くない。それでも大型の本社投資や研修施設の建設が続くため、利益の全額を自由に使えるわけではない。実験研修への投資は人材獲得力を高めうるが、資産の積み上がりに見合う追加利益を生めないなら、ROEは下がる。今後は売上の伸びより、投資額に対する増分利益と営業キャッシュフローの回復を重視したい。
支払う値段には、事務派遣とCROの将来が読みにくい分だけ慎重になる。その一方、理学系派遣のシェア、実際に残る研究現場の需要、財務の厚さまで一緒に失われると考える必要はない。現在の時価総額では、AIに代替されにくい事業が一定の規模で残り、配当方針が守られれば、株主が受け取る価値は支払う対価を上回りうる。最大の条件は、経営が成長の看板より資本効率を優先することである。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は理学系研究職の派遣である。2026年3月期の売上は約343億円で、連結売上の68%を占める。化学、医薬、食品、素材などの企業や大学、公的研究機関の研究室へ人材を送り、実験補助、成分分析、試験、品質管理を担う。顧客は必要な技能を持つ人材を直接採用し、育て、管理する手間を減らせる。WDBは派遣料金とスタッフへの報酬との差から、採用、研修、営業、管理の費用を負担して利益を残す。
同社の特色は、専門知識のある人材を紹介するだけでなく、研修によって実験技術を身につけさせてから派遣できる点だ。全国の拠点と研修所を通じて人材を集め、実技試験で技能を確かめ、派遣後も面談と就業支援を続ける。この仕組みは化学・バイオ分野に詳しくない総合派遣会社との差別化になる。工学系派遣約32億円、一般事務派遣約51億円、人材紹介なども手掛けるが、収益の性格は理学系派遣と同じではない。
もう一つの柱がCRO、すなわち医薬品や医療機器の開発・市販後業務を企業から受託する事業である。国内売上は約51億円、海外は約17億円で、連結売上の約13%に相当する。WDBココ、コーブリッジ、フィンランドのMedfilesなどが、安全性情報管理、薬事申請、医薬品開発関連の文書・データ処理を担う。医薬品の安全性管理という仕事はなくならないが、その処理を製薬会社が外注し続けるとは限らない。とりわけ人の工数に応じて収益を得る部分は、AIと顧客の内製化によって仕事量を失いうる。
デジタル化を担うのが、2021年に始まった「doconico」、2025年に提供を始めた「ドコ1」、CRO向けの「CoCopos」などである。派遣の登録、応募、契約、勤怠、請求を効率化し、複数の派遣会社をまとめて管理する仕組みも広げている。将来は他社の取引にも利用を広げる構想だが、現在の連結開示から独立したプラットフォーム売上を信頼できる金額で切り出すことはできない。そのため、将来の独立したソフトウエア収入を先取りして価値に加えることはしない。
優良さと弱いところ
WDBの競争上の強みは、理学系という狭い市場で築いた規模にある。会社推計で約1,100億円の理学系派遣市場のうち、同社は約3割を占める。実験技術の研修、候補者の技能評価、顧客の研究内容への理解、就業後の支援が組み合わさっているため、顧客が単純に料金だけで他社へ切り替えるとは限らない。80前後の拠点を持ち、登録型と正社員型の派遣を併用することも、採用できる人材の裾野を広げている。
ただし、独占的な値決め力までは確認できない。2026年4月には派遣料金を引き上げ、スタッフの報酬増加を吸収した実績がある。これは評価に値する。一方、2022年以降の連結利益率は下がり続けており、賃金や募集費の上昇を長年にわたって完全に価格へ転嫁できた証拠は乏しい。専門派遣としてのブランドは強いが、解約率や顧客別の継続年数が十分に開示されていないため、企業全体を強い堀のある事業として扱わない。
資本効率にも変化が表れている。2022年3月期のROICは会社開示で18.6%だったが、2026年3月期には9.5%まで低下した。なお資本コストは上回るものの、新たに投じた資本の見返りが従来より小さくなっている。新本社の取得、研修設備の増強、プラットフォーム開発が将来の生産性を高めれば回復余地はある。しかし、これらの投資は実行した時点ではなく、採用費・管理費の削減や受注率の改善として現れた時に初めて価値が生まれる。
CROの品質管理や法規制への対応には専門知識が必要だが、これをそのまま持続的な堀と見なすのは危険だ。低い解約率、年単位のシステム移行負担、顧客横断の共同利用基盤、繰り返し実現した値上げ、他社が再現できないデータ蓄積のうち、複数を数字で確認できる状況にはない。規制対応の必要性と、WDBに人月料金を払い続ける必要性は別である。理学系派遣には一定の堀がある一方、CROと事務派遣では競争優位が削られるという評価が妥当だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
理学系派遣は国内人材サービス市場の中でも専門性の高い領域である。WDBの会社推計では市場規模が約1,100億円、同社のシェアが約30%、その他が約70%を占める。競合にはアドバンテック、テクノプロ・R&D、パーソルテンプスタッフ、スタッフサービスなどがいる。ただし、各社の研究開発受託と派遣の区分が一致せず、競合各社の厳密な理学系派遣シェアは公開情報だけでは確定できない。WDBが首位という会社開示は有力な材料だが、シェアを際限なく拡大できる市場でもない。
研究室の人材需要は、製薬や素材開発、食品の品質保証、大学・公的機関の研究予算に支えられる。人口減少によって国内全体の人手は細るが、研究者の正社員採用が難しくなれば専門派遣への需要は残る。中立では2036年の市場の実質的な業務量を現在の約98%とし、WDBがシェアを約34%へ高める展開を考える。物価を含む名目市場は約1,445億円となり、同社の理学系派遣売上は約487億円に達する。成長の中心は市場自体の急拡大ではなく、採用力と管理効率によるシェア獲得だ。
もっとも、AIは理学系の仕事を一つも置き換えないわけではない。実験計画の作成、データ整理、報告書作成は自動化が進み、ロボット実験設備の普及も一部の人手を減らす。ただし、試料の取り扱い、装置の調整、現物の分析、研究室での安全管理までをソフトウエアだけで完結させることは難しい。人が研究現場で身体を使って行う仕事と、画面上で完結する仕事を分ける必要がある。
CRO市場では逆の圧力が強い。日本CRO協会の2025年調査では会員企業の総売上高が2,300億円から2,168億円へ減少し、WDBが得意とする医薬品安全性情報関連の受託売上は約171億円と前年比37.1%減った。大手製薬会社の内製化、定型処理の自動化、受託業務の統合が進んでいる。国内CRO市場全体は調査範囲によって約2,500億円規模とされるが、WDBの国内CRO売上を単純に安全性情報市場だけで割ってシェアを推定することはできない。同社は安全性情報の専門会社として知られるものの、その領域の正確な市場シェアは未確認だ。
2036年に向けた競争は二つに分かれる。研究職派遣では専門人材の確保と派遣単価の改善が勝負になる。事務派遣とCROでは、処理件数や人月の需要そのものが減り、効率化による原価削減だけでは売上減少を埋められない可能性がある。WDBのデジタル投資が後者の収益を守れるかどうかは、導入件数だけでなく、外部からの継続的な収益、処理単位当たり原価、顧客の内製化率で判断すべきだ。
資本政策と M&A
資本政策は2026年に重要な転換を迎えた。2024年に示した2029年3月期までの中長期計画では、売上高1,000億円、経常利益100億円を目指し、人材事業の営業利益率10%、CROなどの利益率20%、ROE15%以上、配当性向40%以上を掲げていた。しかし、会社は2025年に売上と経常利益の達成は困難と判断し、事業構想を見直した。2026年版の中長期経営方針に年度を定めた売上高・利益額の新たな数値約束はない。一方、2026年3月期の有価証券報告書では営業・経常利益率10%以上、ROE15%以上という経営目標を記している。
株主還元の数字の約束は明確になった。2027年3月期から配当性向65%を基準とし、安定的な配当を続ける方針である。従来の配当性向はおおむね40%前後だったため、実行されれば利益の株主への帰属は大きく改善する。ただし、東証プライム市場の流通株式比率を意識し、今後の自社株買いは原則行わないと説明した。過去には約7億円の自己株取得を行っており、その株数減少は既に現在の発行済み株式数に反映されている。
資本配分の最大の懸念は、収益性が下がる中で固定資産が大きくなったことだ。2026年3月期の営業キャッシュフローは約28億円で、固定資産への支出はこれを上回った。新本社に続き、六甲の研修施設にも投資する計画がある。土地・建物は売却価値を持つ半面、派遣会社が研究室の採用力や管理効率を高めるために必須の資本かどうかは検証を要する。建物の償却は取得額に基づき、物価と同じ速さでは増えないが、今後の更新投資は建設費の上昇にさらされる。
経営権は創業者側に集中し、上場子会社WDBココの議決権も約68%を保有している。子会社の少数株主に帰属する利益を親会社の価値に含めないことが重要だ。過去の海外展開では不採算事業を売却し、撤退判断ができた点は評価できる。一方、持株会社の余剰資金が新たな買収や不採算プラットフォームに向かえば、帳簿上の現金がそのまま少数株主の利益になるわけではない。10年間の還元は新しい配当方針を基準に、利益が減る筋書きでは配当も減るものとした。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
研究職派遣の約3割というシェアは、同じ派遣業でも容易に得られる地位ではない。WDBは化学・バイオ分野の人材を集めるブランドを持ち、必要な実験技術を研修してから派遣できる。専門人材の不足が続くほど、採用基盤を持つ会社は顧客から選ばれやすい。一般の事務職ではAIが人を置き換えるが、分析装置の操作や検体処理をすぐに置き換えるわけではない。研究職派遣はむしろ、企業が正社員採用を絞る時にも利用される柔軟な労働力になりうる。
会社は2026年4月に派遣料金を引き上げ、待遇改善と両立させながら人材サービス部門を増益にした。doconicoやドコ1によって登録、受注、契約、勤怠、請求が自動化されれば、管理費を下げ、その分を人材の報酬へ移すことができる。採用力が強まり、顧客への納入単価も上げられれば、市場が大きく伸びなくてもシェア拡大と利益率の回復が両立する。会社が構築してきた専門人材のネットワークが、システム投資によって以前より収益性の高いものになる可能性がある。
財務面の余力も大きい。2026年3月期末の純現金は約174億円に達する。配当性向を65%へ引き上げたことで、追加投資に回す資本に経営規律が働きやすくなる。CROでは海外の不採算事業を売却し、国内では処理業務の標準化を進めている。これが成功すれば、理学系派遣だけでなくCROの利益も回復する。優れた事業に大きな成長率を仮定しなくても、株主へ戻る現金と将来利益の合計には相応の価値がある。
慎重な見方
最大の問題は、収益性が数年続けて低下したという実績である。売上は2015年3月期から大きく増えたが、営業利益は2022年を頂点に下がった。新本社、研修設備、システムへの投資は積み上がっても、それに見合う利益の回復はまだ確認できない。会社の理想とする高い報酬は求職者には魅力的だが、顧客が十分な料金上昇を認めなければ、派遣会社の利益を圧迫する。規模が大きいから高い利益率を維持できるとは限らない。
CROはさらに難しい。安全性情報の処理、文書作成、薬事関連の補助作業にはAIエージェントによる代替余地がある。日本CRO協会の2025年統計では、関連受託市場そのものが大きく縮んだ。製薬会社が業務を内製化すれば、WDBがいくら処理を効率化しても売上が戻るとは限らない。実際に2027年3月期第1四半期のCRO売上も減少しており、構造的な変化が始まっている可能性がある。会社が開発するプラットフォームも、顧客が別のAIシステムで代替できるなら、独立した高収益事業には育たない。
資産の厚さにも留保が要る。現金には派遣スタッフへの給与、運転資金、施設投資に備える役割がある。経営権は創業者側に集中しており、少数株主が現金の使途を決めることはできない。過去の自社株買いが今後続くとも期待できない。10年後にCROの稼ぐ力が失われ、理学系派遣のシェアまで下がれば、保有資産だけでは期間中の投資損失を十分に防げない。専門派遣の首位という事実に魅力を感じても、その強みがどれだけ利益として株主へ届くかは別の問題だ。
どちらに重みを置いたか
事業の存続可能性では理学系派遣の強さを評価するが、利益成長と資本効率では慎重な見方を重く受け止める。下に寄せる理由は、CROの受託量減少が既に起き、事務派遣についても会社自身がAIによる求人減少を認めていることだ。やや悲観と悲観を合計40%、上側を29%とした。これはAIリスクを確率と利益に二重計上するためではなく、顧客内製化や賃金転嫁の失敗という別の不確実性を反映したものである。それでも研究職派遣の約3割シェアと純現金を評価すると、現在の時価総額は本質価値をやや下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 2,728 円523 億円(+ 還元の換算額還元の合計 943 円181 億円)。 今の値に割り戻すと 2,100 円403 億円、今との差 +22.9%、 期待の年率 +9.4%(資本コスト 6.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 5,254 円1,008 億円 | 1,411 円271 億円 | +290.0% | +17.2% | 600 円115 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,044 円776 億円 | 1,203 円231 億円 | +207.0% | +14.1% | 1,049 円201 億円 |
| 中立 | 31% | 3,012 円578 億円 | 1,016 円195 億円 | +135.7% | +10.6% | 1,249 円240 億円 |
| やや悲観 | 27% | 1,360 円261 億円 | 738 円142 億円 | +22.8% | +2.5% | 567 円109 億円 |
| 悲観 | 13% | 1,121 円215 億円 | 469 円90 億円 | −7.0% | −0.8% | 207 円40 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,728 円523 億円 | 943 円181 億円 | +114.8% | +9.4% | 3,671 円704 億円 |
今の株価時価総額 1,709 円328 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 専門人材の獲得力が圧倒的な競争優位に変わる 利益 56 億円 · PER 17.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5,254 円1,008 億円
専門派遣の首位という地位が、採用力と利益率の双方を押し上げる。研究職の候補者は、高い報酬、研修機会、就業後の支援を求めてWDBへ集まる。顧客は必要な実験技能を持つ人材を安定して確保できるため、派遣料金の継続的な引き上げを受け入れる。研究職派遣市場の実質需要は小幅に増え、WDBは主要な競合からシェアを奪って約37%へ高める。
doconicoとドコ1は採用・契約・管理の費用を減らし、待遇改善と利益率の上昇を両立させる。ただし、AIで拡大する独立したソフトウエア売上は計上しない。事務派遣、人材紹介、CROの受託量は自動化により減るが、国内CROでは残った案件を高品質かつ低コストで処理できる体制が整い、利益率が回復する。海外では不採算事業の整理が一巡し、薬事の専門業務に集中する。
経営は新たな大型買収より、専門人材の採用・研修と既存プラットフォームの効率化を優先する。配当性向65%を実行しながら、資本コストを上回る追加利益を生む。ROEは過去の最良期ほど高くなくても、株主に帰属する利益は十分に拡大する。研究職派遣の専門性が10年後も価値を持つことを最も強く評価する筋書きである。
- 理学系研究職派遣:数量 10,240(平均稼働人員の人年換算(FTE・推定))× 価格 0.06(稼働人年当たり年間派遣売上(億円))→ 売上 615 億円・営業利益 76 億円。理学系派遣数量1.28倍、年間単価1.40倍。実質市場の小幅拡大とシェア約37%を想定する。
- 工学系技術職派遣:数量 637(平均稼働人員の人年換算(FTE・推定))× 価格 0.07(稼働人年当たり年間派遣売上(億円))→ 売上 44 億円・営業利益 4 億円。現場業務が残り、設計・文書業務の減少を一部相殺する。
- 一般事務職派遣:数量 1,105(平均稼働人員の人年換算(FTE・推定))× 価格 0.05(稼働人年当たり年間派遣売上(億円))→ 売上 57 億円・営業利益 4 億円。AI代替後も数量は現状の0.85倍、単価1.32倍まで。
- その他人材派遣:数量 67.0(平均稼働人員の人年換算(FTE・推定))× 価格 0.05(稼働人年当たり年間派遣売上(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。専門職が事務系の減少を補う。
- 人材紹介・人材サービスその他:数量 450(年間紹介成約相当件数(推定))× 価格 0.02(1成約相当当たり売上(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。成約相当数量は現在の0.85倍。AIによる紹介業務削減で利益率は改善する。
- 国内CRO・医薬品関連受託:数量 468(年間受託工数の人年相当(推定))× 価格 0.13(年間受託工数1人年相当当たり売上(億円))→ 売上 59 億円・営業利益 10 億円。AI代替を受けても処理工数は現在の0.90倍残り、標準化で利益率17%。
- 海外CRO・薬事関連サービス:数量 100(年間受託工数の人年相当(推定))× 価格 0.20(年間受託工数1人年相当当たり売上(億円・円換算))→ 売上 20 億円・営業利益 1 億円。薬事専門業務へ集中するが、処理工数は現状以下にとどまる。
倍率:資本コストk6.75%、長期名目成長g2.2%、通常の堀による超過収益の残存割合1/2を使用。余剰現金利息1.19億円を除く事業純利益54.51億円と、余剰現金85億円を除く事業自己資本388.6億円からROE約14.0%、RONIC約10.4%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=約17.32倍を上限そのものに採用。事業の稼ぐ力に余剰現金85億円×戻り方0.75を加え、時価総額約1008億円。現在や過去の市場PERは参照しない。
確率:理学系派遣でシェアを約37%まで広げ、料金改定とデジタル化がともに成功する筋書き。既存の首位基盤があるため不可能ではないが、労働供給の制約とCROの立て直しを同時に克服する必要があるので9%とした。AI代替を受ける事務派遣・CROの数量は、この楽観でも現在以下とする。
やや楽観 20% 研究職派遣のシェア上昇と効率化が進む 利益 43 億円 · PER 16.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,044 円776 億円
研究職派遣の顧客基盤が着実に強くなる。医薬、化学、素材、食品の研究所では直接雇用が難しい職種が残り、専門派遣の利用が続く。WDBは研修による人材育成と就業後の支援で候補者を確保し、研究職派遣のシェアを約35%へ引き上げる。値上げの全額が利益になるわけではないが、登録・契約・勤怠・請求の自動化によって管理費の伸びを抑える。
一般事務派遣は現在より縮み、人材紹介でも直接マッチングの普及によって成約手数料を得られる仕事が減る。工学系派遣には現場作業が残るため、事務ほどの減少にはならない。CROでは安全性情報の定型処理が減る一方、製薬会社が自社で抱えたくない専門的な確認、申請、顧客対応の案件を獲得する。海外CROは不採算事業からの撤退後、利益率の改善に専念する。
経営陣は資本効率の低下を教訓として、売上の見栄えより営業利益と現金創出を重視する。新たな投資の中心は研究職の採用効率と既存システムの改善になり、配当性向65%が定着する。CROの売上が以前の成長軌道へ戻らなくても、理学系派遣の成長と還元によって株主価値は増える。
- 理学系研究職派遣:数量 9,120(平均稼働人員の人年換算(FTE・推定))× 価格 0.06(稼働人年当たり年間派遣売上(億円))→ 売上 536 億円・営業利益 62 億円。理学系派遣数量1.14倍、単価1.37倍。実質市場の微増とシェア約35%。
- 工学系技術職派遣:数量 585(平均稼働人員の人年換算(FTE・推定))× 価格 0.07(稼働人年当たり年間派遣売上(億円))→ 売上 39 億円・営業利益 3 億円。現場型の案件が中心となり数量は0.90倍にとどまる。
- 一般事務職派遣:数量 975(平均稼働人員の人年換算(FTE・推定))× 価格 0.05(稼働人年当たり年間派遣売上(億円))→ 売上 49 億円・営業利益 3 億円。AI代替を受け数量0.75倍、価格1.30倍。
- その他人材派遣:数量 60.0(平均稼働人員の人年換算(FTE・推定))× 価格 0.05(稼働人年当たり年間派遣売上(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。専門職の需要は一部残る。
- 人材紹介・人材サービスその他:数量 390(年間紹介成約相当件数(推定))× 価格 0.02(1成約相当当たり売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。成約数量0.74倍、紹介単価は1.28倍。
- 国内CRO・医薬品関連受託:数量 416(年間受託工数の人年相当(推定))× 価格 0.13(年間受託工数1人年相当当たり売上(億円))→ 売上 52 億円・営業利益 8 億円。処理工数0.80倍。標準化と専門案件への集中で営業利益率15.5%。
- 海外CRO・薬事関連サービス:数量 88.0(年間受託工数の人年相当(推定))× 価格 0.19(年間受託工数1人年相当当たり売上(億円・円換算))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。事業整理後も工数は0.80倍に減るが採算は改善する。
倍率:k6.75%、g_long2.2%。余剰現金の利息を除く事業純利益42.21億円、事業自己資本367.1億円、ROE約11.5%。通常の堀で超過収益を半分残すRONIC約9.1%から、正当化PER約16.68倍。楽観側の倍率はこの理論上限そのものとし、事業価値に余剰現金の株主帰属分63.75億円を加える。
確率:専門人材の採用・研修と料金改定の実績があるため、最良期には至らなくても理学系派遣のシェア改善は十分に考えられる。ただしCROの回復には顧客の内製化を上回る競争力が必要で、20%にとどめる。
中立 31% 研究職派遣は残るが、事務派遣とCROが縮む 利益 32 億円 · PER 15.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,012 円578 億円
2036年にも化学・バイオの研究室では専門技能を持つ人材が必要とされ、WDBは主要な供給者であり続ける。国内の理学系派遣市場の実質業務量は現在よりわずかに小さくなるが、同社は採用・研修の仕組みと全国の顧客基盤を維持し、シェアを約34%まで高める。派遣料金は物価上昇におおむね沿って引き上げられる。ただし、スタッフの待遇改善と顧客への還元にも費用がかかるため、値上げ分がそのまま利益になるわけではない。
一般事務派遣は、AIエージェントが入力、照合、資料作成、連絡、日程管理を代替するため、稼働人数が10年間で約35%減る。工学系派遣では現場での試験や評価が残るものの、設計・文書作成の自動化によって全体の数量は減る。国内外のCROでも処理工数が約35%減る。法規制のため安全性情報を管理する必要は続くが、その仕事を外部へ同じ人月料金で委託する必要性は弱まる。
プラットフォームの開発は管理費を抑える効果を持つが、独立した大規模収益には育たない。CROの採算改善は売上減少の一部を補う程度にとどまる。新本社などへの投資負担が残り、連結営業利益率は約7.7%になる。経営陣は配当性向65%を守り、利益が大きく増えなくても株主への現金還元を続ける。優良な専門派遣事業と、縮小する事務・受託事業が共存する10年になる。
- 理学系研究職派遣:数量 8,480(平均稼働人員の人年換算(FTE・推定))× 価格 0.06(稼働人年当たり年間派遣売上(億円))→ 売上 487 億円・営業利益 50 億円。市場の実質数量約0.98倍、WDBシェア約34%、単価1.34倍。稼働人年は現状の1.06倍。
- 工学系技術職派遣:数量 540(平均稼働人員の人年換算(FTE・推定))× 価格 0.06(稼働人年当たり年間派遣売上(億円))→ 売上 35 億円・営業利益 2 億円。現場型と設計事務型の混合。数量0.83倍、単価1.30倍。
- 一般事務職派遣:数量 845(平均稼働人員の人年換算(FTE・推定))× 価格 0.05(稼働人年当たり年間派遣売上(億円))→ 売上 42 億円・営業利益 2 億円。AIエージェント代替を中心に数量0.65倍、単価1.27倍。
- その他人材派遣:数量 53.0(平均稼働人員の人年換算(FTE・推定))× 価格 0.05(稼働人年当たり年間派遣売上(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。数量は現在の約0.76倍。
- 人材紹介・人材サービスその他:数量 340(年間紹介成約相当件数(推定))× 価格 0.02(1成約相当当たり売上(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。AIマッチングと直接採用により成約相当数量0.64倍、単価1.27倍。
- 国内CRO・医薬品関連受託:数量 338(年間受託工数の人年相当(推定))× 価格 0.12(年間受託工数1人年相当当たり売上(億円))→ 売上 41 億円・営業利益 5 億円。処理工数0.65倍、価格1.24倍。自動化による費用削減を織り込む。
- 海外CRO・薬事関連サービス:数量 72.0(年間受託工数の人年相当(推定))× 価格 0.19(年間受託工数1人年相当当たり売上(億円・円換算))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。処理工数約0.65倍、円建て単価1.22倍。採算改善は限定的。
倍率:k6.75%、g_long2.2%、通常の堀。2036年の事業純利益は32.4−85×1.4%=31.21億円。余剰現金85億円を除く事業自己資本は347.9億円でROE約9.0%、RONIC約7.86%。正当化PER=(1−0.022÷0.0786)÷(0.0675−0.022)=約15.83倍。この上限を中立の倍率に使い、事業純利益×PERに余剰現金85億円×0.75を加える。現金利息と現金元本を二重計上しない。
確率:研究職派遣に専門性と首位の基盤が残る一方、会社自身が事務派遣のAI代替とCROの顧客内製化を認めている。理学系派遣の小幅なシェア改善は見込むが、連結利益率は過去の高水準へ戻らないという中心筋書きに31%を割り当てる。
やや悲観 27% 専門派遣の価格競争とCROの内製化が重なる 利益 16 億円 · PER 12.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,360 円261 億円
化学・バイオの研究職派遣市場は存続するが、人材不足でスタッフの確保費用が一段と上がる。WDBは市場首位を維持しても、より高い報酬を提示する競合に一部の候補者を奪われる。派遣先も研究費や品質管理費用を厳しく管理し、値上げの受け入れを抑える。結果として理学系派遣の稼働人数は現在より約5%減少し、料金も10年間で物価の伸びを下回る。
一般事務派遣はAIエージェントが多くの定型業務を処理できるようになり、稼働人数が47%ほど減る。工学系派遣では設計・資料作成の自動化が進み、現場業務の維持だけでは減少を埋められない。CROでは主要製薬会社が安全性情報の処理体制を内製化し、国内の受託工数が半分以下になる。欧州でも委託業務の統合が進み、会社は規模を維持するより不採算案件からの撤退を選ぶ。
売上減少に合わせて拠点と人員を減らすものの、本社設備の償却、基幹システムの維持、既存社員の給与はすぐには減らせない。CROの固定的な処理体制も利益を圧迫する。営業利益率は約4.3%まで低下し、ROEは資本コストを下回る。配当性向65%は基本的に維持されても、利益の縮小に連れて還元額は減る。事業は続くが、資本を使って増やす価値が乏しくなる筋書きである。
- 理学系研究職派遣:数量 7,600(平均稼働人員の人年換算(FTE・推定))× 価格 0.05(稼働人年当たり年間派遣売上(億円))→ 売上 407 億円・営業利益 32 億円。数量0.95倍、単価1.25倍。シェアは概ね3割へ戻り、賃金転嫁が遅れる。
- 工学系技術職派遣:数量 455(平均稼働人員の人年換算(FTE・推定))× 価格 0.06(稼働人年当たり年間派遣売上(億円))→ 売上 27 億円・営業利益 1 億円。数量0.70倍、単価1.20倍。
- 一般事務職派遣:数量 689(平均稼働人員の人年換算(FTE・推定))× 価格 0.05(稼働人年当たり年間派遣売上(億円))→ 売上 31 億円・営業利益 0 億円。AI代替と直接雇用への切り替えで数量0.53倍。
- その他人材派遣:数量 42.0(平均稼働人員の人年換算(FTE・推定))× 価格 0.05(稼働人年当たり年間派遣売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。専門外の周辺職種も数量0.60倍に縮小する。
- 人材紹介・人材サービスその他:数量 265(年間紹介成約相当件数(推定))× 価格 0.01(1成約相当当たり売上(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。成約数量0.50倍。マッチングの内製化が進む。
- 国内CRO・医薬品関連受託:数量 250(年間受託工数の人年相当(推定))× 価格 0.11(年間受託工数1人年相当当たり売上(億円))→ 売上 28 億円・営業利益 2 億円。国内の受託工数0.48倍、単価1.15倍。
- 海外CRO・薬事関連サービス:数量 55.0(年間受託工数の人年相当(推定))× 価格 0.17(年間受託工数1人年相当当たり売上(億円・円換算))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。工数0.50倍、固定費の吸収不足で赤字。
倍率:親会社帰属ROEは約4.0%でk6.75%を下回る。したがって再投資による成長には価値を加えず、稼ぐ力の上限1÷k=14.81倍より低い12倍で評価する。余剰現金は現在の85億円の75%に減らし、その金額に戻り方0.75を適用する。現金の税後利息相当額を利益から控除し、時価総額約229億円とする。現在の自己資本や過去のPBR水準を倍率の根拠としない。
確率:下に寄せる理由:2026年3月期にCRO売上が減り、2027年3月期第1四半期にも減少が続いた。派遣スタッフの報酬引き上げと固定的な拠点費用も既に利益を圧迫している。大幅な事業崩壊より起こりやすい下振れとして27%を配分する。
悲観 13% CROの優位が失われ研究職派遣も後退する 利益 0 億円 · PBR 0.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,121 円215 億円
研究職派遣の首位という地位が崩れる。人材供給の不足と競争の激化によって、WDBは高い報酬を払っても十分な人員を確保できなくなる。同時に研究室の自動化が進み、実験工程の一部がロボット設備へ置き換わる。専門派遣という市場自体は残るが、顧客は調達先を分散させ、WDBの実質的な稼働人数は現在の75%程度まで縮む。値上げも人件費の増加には追いつかない。
一般事務派遣では大部分の定型業務がAIエージェントに代替され、稼働人数は現在の3割程度になる。人材紹介でも企業が直接採用と自動マッチングを利用する。国内外CROは製薬会社の内製化と競合への案件集約により、処理工数が現在の35%前後まで落ちる。安全性情報の確認や薬事申請はなくならないが、WDBが従来の人月型の受託料金を得る余地は著しく狭まる。
経営は人員削減、海外拠点の整理、使われなくなった設備の処分を進める。新本社などの不動産にも保守的な減損を認識し、自己資本の一部が失われる。期間前半には利益と配当が残るが、10年後の営業損益は小幅な赤字に落ち込む。株主に残る価値の中心は事業の成長力ではなく、手元の現金と処分可能な不動産などである。利益を生む優良企業としての評価が失われ、資産回収が重要になる。
- 理学系研究職派遣:数量 6,000(平均稼働人員の人年換算(FTE・推定))× 価格 0.05(稼働人年当たり年間派遣売上(億円))→ 売上 288 億円・営業利益 12 億円。稼働人数0.75倍、単価1.12倍。シェアは2割台半ばへ後退する。
- 工学系技術職派遣:数量 360(平均稼働人員の人年換算(FTE・推定))× 価格 0.05(稼働人年当たり年間派遣売上(億円))→ 売上 19 億円・営業利益 0 億円。数量0.55倍、単価1.08倍。固定費負担で赤字。
- 一般事務職派遣:数量 390(平均稼働人員の人年換算(FTE・推定))× 価格 0.04(稼働人年当たり年間派遣売上(億円))→ 売上 16 億円・営業利益 −1 億円。数量0.30倍、単価1.02倍。事務派遣の採算が崩れる。
- その他人材派遣:数量 30.0(平均稼働人員の人年換算(FTE・推定))× 価格 0.05(稼働人年当たり年間派遣売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。数量0.43倍。小規模事業の固定費負担が残る。
- 人材紹介・人材サービスその他:数量 190(年間紹介成約相当件数(推定))× 価格 0.01(1成約相当当たり売上(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。成約数量0.36倍。直接採用とAIマッチングで収益性を失う。
- 国内CRO・医薬品関連受託:数量 182(年間受託工数の人年相当(推定))× 価格 0.10(年間受託工数1人年相当当たり売上(億円))→ 売上 19 億円・営業利益 −1 億円。処理工数0.35倍、単価1.05倍。人員整理が需要減少に追いつかない。
- 海外CRO・薬事関連サービス:数量 33.0(年間受託工数の人年相当(推定))× 価格 0.16(年間受託工数1人年相当当たり売上(億円・円換算))→ 売上 5 億円・営業利益 −1 億円。処理工数0.30倍。海外拠点の整理費用と固定費が残る。
倍率:継続的な稼ぐ力がほぼ消えるため、10年後の純利益に永久的なPERを掛けず、現在の親会社帰属自己資本327.9億円に対する回収可能資産約215億円を床として評価する。PBRは215÷327.9=約0.656。2036年の自己資本317.5億円には60億円程度の固定資産減損を織り込み、悲観価値を積み上がった自己資本へ掛けて膨らませない。10年後の時価総額215億円と期間中の還元90億円の合計305億円は、現在の時価総額334億円を下回る。
確率:AIによる定型業務の代替だけでなく、研究職の採用競争でWDBがシェアを失い、投資済みの固定資産も減損する複合的な筋書きである。純現金と専門人材の基盤があるため直ちに倒産するとは考えないが、利益率がほぼ消える事態は十分起こりうるため13%とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
理学系研究職派遣
化学・バイオの研究者、研究補助者、分析技術者、品質管理担当者を顧客の研究室や工場へ派遣する。実験技術の研修と人材の選任が付加価値になる。
| 数量平均稼働人員の人年換算(FTE・推定) | 価格稼働人年当たり年間派遣売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8,000 | 0.04 | 343 | 34 |
| 10 年後 中立 | 8,480 | 0.06 | 487 | 50 |
取り方:売上343.05222億円は2026年3月期有価証券報告書の理学系人材派遣売上に基づく開示値。会社説明資料では2026年8月時点の『派遣社員他』が全分野合計10,072人である。理学系以外にも工学系・事務系の派遣があるため、理学系の年間平均稼働を8,000人年と仮定し、年間請求額を343.05222÷8,000=0.0428815億円と逆算した。これは開示された実人数・単価ではなく整合性を確かめるための推定である。営業利益34.31億円は人材サービス部門利益43.01482億円の内部配賦推定。市場1,100億円、シェア約30%は会社の2027年3月期第1四半期説明資料9ページの推計。AI分類は実験・試料操作を伴う『現場の体』であり、事務派遣の数量縮小率を適用しない。出典:https://www.wdbhd.co.jp/assets/pdf/ir/finance/p_260807.pdf
工学系技術職派遣
機械・電気・設計・評価などを扱う技術者派遣。現場試験を伴う仕事と、画面上で完結する設計・資料作成が混在する。
| 数量平均稼働人員の人年換算(FTE・推定) | 価格稼働人年当たり年間派遣売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 650 | 0.05 | 32 | 3 |
| 10 年後 中立 | 540 | 0.06 | 35 | 2 |
取り方:売上32.46983億円は有価証券報告書の工学系人材派遣売上。理学系より単価の高い技術者が多いという仮定で650人年に相当させ、年間単価約499.5万円を計算した。工学系の独立した稼働人員・営業利益の開示がないため、双方とも推定。2026年4月にはWDB工学がWDBへ吸収合併されたが、この再編による売上の二重計上は行わない。AI分類は現場型と設計・文書作成の人月型の混合で、中立数量は約0.83倍。出典:https://regfis.com/reports/20260618_S100YDOC_E05560_null_010_030000_120
一般事務職派遣
企業の事務処理、入力、一般的な管理補助を担う人材派遣。作業の相当部分が情報処理と画面操作で完結する。
| 数量平均稼働人員の人年換算(FTE・推定) | 価格稼働人年当たり年間派遣売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,300 | 0.04 | 51 | 5 |
| 10 年後 中立 | 845 | 0.05 | 42 | 2 |
取り方:売上50.66381億円は有報の一般事務派遣売上。年間単価約390万円を仮定して1,300人年に換算した推定値であり、会社の開示人数ではない。営業利益は人材サービス部門利益からの配賦推定。会社は2026年版中長期経営方針でAIによる事務職派遣求人の減少を明記している。AI分類は人月・工数で売る事務系派遣で、中立数量0.65倍、価格上昇は物価3%の10年累積より低い1.27倍、10年より先の成長率0%とする。出典:https://www.wdbhd.co.jp/assets/pdf/ir/about/management-policy260729.pdf
その他人材派遣
主要3職種に分類されない専門・周辺職種の派遣。規模が小さく、職種ごとの正確な人数は非開示である。
| 数量平均稼働人員の人年換算(FTE・推定) | 価格稼働人年当たり年間派遣売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 70.0 | 0.04 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 53.0 | 0.05 | 3 | 0 |
取り方:有報のその他派遣売上2.9276億円を、年間派遣請求額約418万円で割った70人年相当の推定。営業利益0.12億円も配賦推定。職種の内訳が非開示のため、現場型と事務型が混在すると扱い、中立の数量を現在の約0.76倍にする。
人材紹介・人材サービスその他
直接雇用を希望する顧客への人材紹介と周辺サービス。採用が成立した場合の紹介手数料などで収益を得る。
| 数量年間紹介成約相当件数(推定) | 価格1成約相当当たり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 530 | 0.01 | 6 | 1 |
| 10 年後 中立 | 340 | 0.02 | 5 | 1 |
取り方:有報の紹介・その他売上6.36518億円を、1件約120万円の紹介手数料相当額で除した530件相当という代理数量。実際には紹介以外の売上も含まれ、成約件数の会社開示ではない。人材紹介の手数料率は採用年収の3割前後という業界の慣行を参考にした。営業利益は人材部門の合計43.01482億円へ一致するよう各事業の採算差を考慮して内部配賦した推定。AI分類は情報・仲介業務の人月型で、中立数量0.64倍、長期成長率0%。
国内CRO・医薬品関連受託
WDBココ、コーブリッジなどによる安全性情報管理、文書支援、薬事申請、臨床研究関連の受託業務。製薬会社と医療機器会社が主な顧客である。
| 数量年間受託工数の人年相当(推定) | 価格年間受託工数1人年相当当たり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 520 | 0.10 | 51 | 10 |
| 10 年後 中立 | 338 | 0.12 | 41 | 5 |
取り方:国内CRO売上50.80028億円は有報の地域別開示。年間約977万円の処理工数単価を仮定して520人年相当に換算したもので、実際の従業員数・契約件数ではない。部門利益はCRO全体で10.47761億円しか開示されないため国内営業利益10.0億円は推定。日本CRO協会の2025年会員売上2,168億円および安全性情報関連171.2億円は市場の物差しであり、国内CRO売上の全額が安全性情報関連ではないので171.2億円で割って市場シェアとはしない。AI分類は人月・工数で売るBPOで、中立数量0.65倍、価格1.24倍、gは0%。規制対応は必要でも低解約率・独自データなど2件以上の堀の証拠がないため『記録の正本』型にはしない。出典:https://www.jcroa.or.jp/wp-content/uploads/2026/06/2025report.pdf
海外CRO・薬事関連サービス
フィンランドのMedfilesなどを中心とする欧州の医薬品・医療機器関連受託サービス。不採算事業の整理後の事業規模を起点にする。
| 数量年間受託工数の人年相当(推定) | 価格年間受託工数1人年相当当たり売上(億円・円換算) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 110 | 0.15 | 17 | 0 |
| 10 年後 中立 | 72.0 | 0.19 | 13 | 0 |
取り方:海外CRO売上16.77090億円を約1,525万円の年間受託単価に相当させた110人年の推定。海外事業の受託件数・工数・利益は独立開示されず、0.47761億円の営業利益もCRO部門合計への内部配賦である。不採算事業売却後の規模を起点にし、ドル円は共通前提150円を固定する。AI分類は人月・工数で売る業務受託で、中立数量0.65倍、価格1.22倍、gは0%。
リスクと懸念
AIエージェント代替と顧客の内製化
一般事務派遣、人材紹介、国内外CROの合計は連結売上のおよそ25%を占める。これらは人月、処理工数、仲介件数に依存するため、AIエージェントが仕事を完了できるようになると必要な人数と受託件数が減る。CROでは製薬会社が安全性情報処理を内製化する動きもあり、2026年3月期とその翌第1四半期の減収は既にその懸念を裏付けている。規制対応業務だから外注売上も残るとは限らない。
研究職派遣の人材獲得競争と値上げの限界
専門人材の不足は派遣需要を支えるが、WDBが人材を確保する費用も押し上げる。2026年の料金改定ではスタッフの待遇改善を吸収できたものの、毎年同じだけの値上げが通る保証はない。候補者がより高い報酬を提示する競合へ移れば、WDBはシェアを失うか利益率を下げるかの選択を迫られる。研究職派遣の首位という地位を守る費用を継続して確認すべきだ。
CROの処理量減少と市場の競争激化
日本CRO協会の2025年統計では安全性情報関連業務が前年比37.1%減った。WDB自身も国内主要顧客の受託量減少に直面している。受託処理センターでは仕事量が減っても、品質保証や顧客対応のために一定の人員を維持する必要がある。減収が続くと固定費負担が重くなり、価格を上げても利益を回復できない可能性がある。EPS、シミック、IQVIAなどとの競争も続く。
資本効率を下げる不動産・設備投資
専門派遣は本来、工場を大量に持たずに利益を生める事業である。しかしWDBは新本社、研修施設、プラットフォームに資金を投じてきた。2026年3月期は営業キャッシュフローを固定資産投資が上回った。建物の償却は取得時の金額で固定されやすい一方、更新投資はインフレの影響を受ける。人材獲得力や事務費削減につながらなければ、会計利益より株主が使える現金は小さくなる。
創業者側の支配と少数株主の資本配分リスク
創業者側の持株比率が高く、少数株主が余剰資金の使途を直接決めることは難しい。また、上場子会社WDBココには外部株主が存在するため、その利益を全額親会社株主のものとして扱えない。配当性向65%の方針は前進だが、新規買収、海外事業への再投資、採算の見えにくいプラットフォーム開発によって現金が使われる可能性は残る。
研究室の自動化と専門派遣市場の変質
AIそのものは試験管を操作しないが、自動分注装置、実験ロボット、分析装置の連携が進めば、従来は複数人で行った工程を少人数で処理できる。研究計画と結果の整理も自動化されるため、実験補助者の仕事がすべて残るとは考えない。設備を保有する研究機関と人材を供給する派遣会社の間で、価値の取り分が変わるリスクがある。
今後の分かれ目
- 理学系研究職派遣の市場シェアが約30%から継続的に35%へ近づき、派遣料金の上昇がスタッフ報酬の増加を上回ったら
- 採用・研修基盤が利益に結びついている証拠となる。楽観・やや楽観の確率を高め、中立の研究職派遣数量と営業利益率を引き上げる。
- 国内CROの売上減少が止まり、受託工数当たり利益と新規案件の増加が同時に確認できたら
- 標準化の成果が出ていると評価し、中立の国内CRO数量の縮小を緩める。ただしAI処理で減った工数をそのまま売上成長に換算しない。
- 配当性向65%が複数年度にわたって実行され、配当額と営業キャッシュフローが利益に見合って増えたら
- 余剰現金が株主に戻る確度が高まるため、excess_cash_returnを0.75から1.0へ引き上げる余地が生まれる。自社株買い再開の有無とは分けて評価する。
- プラットフォームの外部利用が増え、独立した契約数、解約率、継続課金収益が金額付きで開示されたら
- 現状の単なる費用削減効果から切り離し、新しい事業セグメントとして評価を始める。ただし操作画面中心のサービスにはAIエージェント代替の数量・価格制約を適用する。
- ROICが会社の資本コストを下回る水準へ低下し、本社や研修施設への追加投資が続いたら
- 投下資本に対する追加利益の見通しを引き下げる。中立のROEと正当化倍率を低くし、固定資産の処分価値も再点検する。
- 日本CRO協会の安全性情報関連売上がさらに大きく減り、WDBの国内CRO売上も二桁減収を続けたら
- 顧客内製化とAI代替が一時的な案件変動ではなく構造変化と考え、やや悲観・悲観の確率を増やす。処理センターの固定費削減実績が伴うかも確認する。
見ておくもの
- 理学系研究職派遣の売上と会社推計の市場シェア約30%の推移
- 派遣料金の改定率、派遣スタッフの報酬増加率、人材サービス部門の営業利益率
- 派遣社員の稼働人数、就業継続率、受注率、募集費用
- 国内CROの受託量と営業利益率、製薬会社からの新規受注
- 日本CRO協会の安全性情報関連業務の売上と処理件数
- doconico、ドコ1、CoCoposの外部利用法人・課金額・解約率の開示
- 営業キャッシュフローと設備投資額の差、ROIC、自己資本の増加
- 配当性向65%の実行状況、余剰現金残高、追加買収の有無
- 新本社と六甲研修施設の償却・稼働状況および研修からの就業者数
- WDBココの売上・利益・少数株主持分の変化
倍率と資本コストの決め方
売上の起点は添付factsの2026年3月期503.0億円、営業利益44.6億円、親会社帰属純利益27.6億円とした。各事業の現在売上は有報の内訳から取り、人数・成約件数・処理工数が非開示の部分だけ単価と数量を推定した。10年後は実質数量と名目単価を別々に計算し、物価上昇を数量へ重複して含めていない。研究職派遣の首位という強みを事務派遣・CROにも一律適用せず、AIエージェント代替のある部分は中立数量を縮めた。
倍率は今の株価や同業の市場PERを参照せず、資本コスト6.75%、10年より先の名目成長率2.2%、通常の堀による増分利益の残存割合1/2から決めた。楽観から中立のPERは正当化PERの上限そのものとし、堀やAIリスクを倍率で二重に減額しない。悲観は事業がほぼ利益を生まないため純現金と売却可能資産の床で評価した。株主還元は実際の配当方針65%を基本にし、将来利益が縮めば還元も縮む。配当・自社株買いを二重計上せず、株数は添付の発行済株式数から自己株式を差し引いた基準を維持する。
2036年の名目価値を10年国債と株式リスクを反映した6.75%で割り引き、10年間の還元は期間の中間で受け取る近似とした。確率加重の現在価値は約394億円であり、基準時価総額約334億円との差は約+17.9%。結果に合わせて最後に結論を決めた。新リース会計基準による貸借対照表の表示変更があっても、10年の営業利益は現行の家賃費用を含む形で比較し、固定的な賃借費用は悲観の利益率に反映する。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%の合計7.5%を起点に、事業の循環性と純現金の厚さによる合計−0.75%を調整した。CROの顧客内製化、買収、経営者の資本配分は個別の筋書きに反映し、資本コストへ上乗せしない。