結論
リプライオリティは、通販会社に代わって電話で商品を販売し、小売店の店頭販促を仲介し、アカモクを使った食品も販売する会社だ。筆者は現在の時価総額をやや割安とみる。ただし、理由は電話営業事業の高成長ではない。約12億円の時価総額に対し、負債を差し引いても厚い現金があり、事業の縮小に耐える余地が残っているためだ。
2025年9月期の売上高は26.3億円、営業利益は約3.1億円だった。ところが、2026年9月期第3四半期累計では売上高が前年同期比5.6%減り、営業利益も約1割減った。主力の電話営業受託では、主要顧客による成果報酬単価の引下げがすでに起きている。値決め力を備えた優良企業というより、顧客の販売活動を効率よく請け負うことで利益を得てきた企業と理解すべきだ。
10年先の最大の変化はAIエージェントである。顧客の購入履歴を使った提案、電話応対、受注処理、会話内容の記録は自動化が進む。電話営業という接点は残っても、人が担当する通話件数と委託手数料の取り分は減る可能性が高い。一方、約1万4,400店の小売店につながる販促網は、実店舗の接点を使う点で比較的残りやすい。食品通販も実物の商品を届ける商売なので、AIが直接置き換える事業ではない。
中立では主力の年間架電件数が今の65%まで減り、店頭販促と食品の売上増がその一部を補う。10年後の純利益は1.64億円、時価総額は約24.6億円を想定する。ただし、それをそのまま現在価値にすることはできない。5つの筋書きと資本コスト、潜在株式による希薄化を織り込むと、現在の本質価値は約13.3億円となり、基準時価総額約11.6億円を約15%上回る。現金の使い方と主力事業の衰退速度に左右されるため、大きな安全域があるとまではいえない。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主なら、この会社を高収益の電話営業会社として買うのか、それとも現金を十分に持つ小型の事業会社として買うのかを最初に分けて考えるだろう。現在の営業利益率は高いが、その利益を10年先まで同じ形で生む力は弱い。委託元が顧客を保有し、料金条件も委託元の交渉力に左右される。主要取引先による単価引下げが実際に起きた以上、価格決定力を強い堀として評価することはできない。
他方で、提携小売店との関係は一朝一夕には作れない。店舗のレジや売場を使った販促には、広告主と小売店の両方を調整する手間がある。こうした実物の販売接点は、電話応対が自動化されても直ちに消えない。通販商品の企画と顧客の購買データを組み合わせて利益率の高い商品を生み出せれば、衰退する受託事業からの転換もありうる。ただし、成功例が積み上がる前に、将来のブランド価値を高く見積もるべきではない。
オーナー利益は、純利益から継続的なシステム改修、人材教育、顧客獲得、食品の広告費や商品開発費を賄った後に残る現金だ。設備を大量に必要とする事業ではないが、人件費や顧客獲得費が不要なわけではない。2025年の営業キャッシュフローが純利益を下回ったことも、会計上の高いROEだけを頼りにできない理由となる。
現時点で最も評価できる資産は現預金と有価証券であり、最も判断が難しいのは、その資金を経営陣がどう使うかだ。収益の落ちた事業を買収で埋めようとするのか、投資額に見合う収益を確かめてから広げるのかで、10年後の株主価値は大きく変わる。価格には一定の安全域があるが、事業の予測可能性と少数株主への還元には慎重な判断を残したい。
何で稼ぐ会社か
収益の中心は、健康食品や化粧品を販売する通販会社から受託するD2C支援である。コールセンターで顧客への電話提案や注文獲得を行い、成果に応じた報酬などを受け取る。2026年の会社資料では月間約150万件の架電規模が示されている。顧客企業は販売員やシステムを自社で抱えずに電話販売を増やせるが、委託先の変更や業務の内製化が比較的容易であることも、この事業の特徴だ。
もう一つの柱がリテールメディアである。スーパーやドラッグストアなどの小売店と取引関係を築き、店頭での広告、販促物の配布、レジでのクーポンやサンプリングの提供を支援する。提携する小売店は約1万4,400店に達する。広告主は実際に買物をする消費者へ商品を訴求でき、小売店は売場の価値を収入に変えられる。店舗は自社保有ではなく提携先なので、ネットワークを維持する営業力と各店舗の協力が欠かせない。
通信販売事業では、海藻のアカモクを使った「アカモク千寿藻」などを扱う。原料調達、商品企画、通信販売、顧客対応を組み合わせた、受託とは異なる商売だ。既存の電話販売で得た購買行動の知見を商品開発に生かそうとしているが、自社商品だから自動的に高い利益率が得られるわけではない。広告費、物流費、原料費、継続購入率が採算を決める。2026年9月期第3四半期累計では、商品価格の改定や費用見直しを進めても、通信販売事業はなお営業赤字だった。
2025年9月期の外部売上高は、営業支援が約19.48億円、通信販売が約6.84億円である。営業支援の内部にあるD2Cとリテールメディアの2025年の売上内訳は、公開された資料から正確には確定できない。そこで数量モデルでは、翌期の事業別開示を参考に約17.4億円と約2.08億円へ暫定的に分けた。通話件数、提携店舗数、食品の推定出荷件数を別々に追うことで、受託手数料の縮小と実店舗・自社商品の成長を混同しないようにしている。
優良さと弱いところ
最大の長所は財務の厚さだ。2025年9月期の自己資本は約12.7億円、自己資本比率は73.6%に達する。現預金は約13.3億円あり、有利子負債を大きく上回る。2026年6月末には現預金約8.24億円に流動の有価証券約5億円が加わっており、預金から有価証券への移し替えを資金流出と誤認してはならない。この流動性は、顧客の受注が落ち込んでも直ちに資金調達を迫られにくいという意味で価値がある。
ただし、営業上の堀、つまり競合が容易に奪えない強みは厚くない。電話営業の運用ノウハウと通話データの蓄積はあるが、解約率の低さ、長期間の移行義務、継続的な値上げ実績といった強い証拠は確認できない。むしろ主要顧客による成果報酬単価の引下げが実際に収益を圧迫した。顧客から見れば、受託先の人員配置や営業手法を変更する選択肢が残っている。高い過去のROEを将来の価格決定力の証拠にしてはならない。
リテールメディアの提携店舗網には、開拓と関係維持の手間という参入障壁がある。ただし、小売店自身が販促サービスを内製化したり、全国規模の広告会社と直接契約したりすることもできる。食品事業は商品企画と顧客基盤を持つが、2026年の赤字が示すように、ブランドの値上げ力が十分な利益を伴って定着したとはいえない。
2024年から2025年にかけて自己資本は増えた一方、営業利益はほぼ横ばいだった。上場に伴う資本調達もあるため、過去の資本効率だけで増分投資利益率を断定できない。2025年9月期の営業キャッシュフローも約1.43億円で、純利益を下回った。株主にとって重要なのは、帳簿上の利益を積み上げることではなく、余剰現金を本当に還元できることと、店頭販促や自社商品への追加投資が資本コストを上回ることだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
電話営業受託が属するコールセンターサービス市場は広い。矢野経済研究所による2024年度の国内市場規模は約1兆517億円である。リプライオリティのD2C支援売上を約17.4億円と推定すると、広義市場に対する比率は約0.17%にすぎない。ただし、同市場には問い合わせ対応、金融機関向け業務、官公庁案件なども含まれるため、この数字は同社の電話販売という狭い市場の厳密なシェアではない。アルティウスリンクやベルシステム24のような大手は、グループ全体で千億円規模の売上を持ち、AI投資と顧客開拓の規模で優位に立つ。
業界の変化は人手不足よりも、仕事の担い手が人からソフトウェアへ移ることにある。AIエージェントは電話での説明、条件確認、受注入力、品質管理を一連の処理として担うようになる。発信先の選定や見込み客の分析でもAIの活用が進む。消費者による自動音声への拒否感や電話勧誘の規制は導入速度を左右するが、人の作業時間に依存した受託料金を長期間維持することは難しい。顧客がAIを内製すれば、委託会社が生産性向上の利益をすべて受け取ることもできない。
リテールメディアには別の競争環境がある。電通の広告費統計による2025年のPOP広告市場は約1,540億円であり、同社の推定売上約2.08億円はその約0.13%に当たる。ただし、店頭クーポンやサンプリングとPOP広告は範囲が完全には一致しない。大手小売業の自社広告網、店舗アプリ、流通系広告代理店、総合広告会社が競争相手となる。店舗接点は実物の買物に結び付くという利点があるが、提携店舗数だけで広告主の予算を独占できるわけではない。
食品通販については、国内の食品EC市場が約5兆円規模という広い需要の器になる。2025年の同社通信販売売上約6.84億円をこの市場と比べると約0.014%で、まだ小規模だ。実際の競争相手は、アカモクなど海藻食品の加工販売会社、健康志向の商品を扱う通販ブランド、楽天市場やAmazon上の販売者である。個別のシェアは公表資料だけでは確認できない。食品EC全体が伸びても、原料調達と集客費用に優位がなければ、同社の利益が同じ速度で増える保証はない。
資本政策と M&A
会社は2024年に福岡証券取引所Q-Boardへ上場した。公表されている連続的な業績資料は比較的短く、過去10年間の買収、増資、配当、自社株買いのすべてについて資本配分の成果を検証できるわけではない。確認できる期間では2024年に増配があり、2025年9月期の配当性向は約22.1%だった。2026年9月期も概ね0.51億円の年間配当を見込む。一定の還元姿勢はあるが、余剰資金を積極的に減らす水準とはいえない。
2026年9月期は、新サービスの拡大、M&Aの検討、広告映像の改訂、人材採用に合計約0.66億円を投じる方針を示した。M&Aは検討段階であり、買収による売上増や相乗効果を確定的な利益には織り込まない。単年度の会社予想として営業利益約2.48億円、純利益約1.63億円が示されているが、独立した中期経営計画について売上高・利益・ROEの数値目標と、配当性向・DOE・総還元性向・自社株買い額を組み合わせた定量的な約束は確認できない。中期経営計画としての数字の約束なし、と判断する。
議決権の面では大株主への持分集中が強く、少数株主は現金の使途を直接決められない。約6億円を事業に不要な現金として区分するものの、全額が速やかに株主へ戻るとはみず、価値への反映を75%とした。増配実績があるため、支配株主の存在だけを理由に50%まで切り下げることもしない。今後の最重要な資本配分は、衰退しうる電話営業へ無理に再投資せず、店頭販促の収益性を確かめながら増配や自社株買いを進められるかどうかである。
公開買付け、MBO、株式交換などによる上場廃止予定は確認できず、直近の四半期決算短信にも継続企業の前提に関する注記はない。将来の買収や非公開化を価値の上振れとして決め打ちする理由はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
現金の厚さを考えると、現在の時価総額は事業の継続価値をかなり控えめに評価している。2025年9月期末には、時価総額に匹敵する規模の現預金がある。2026年6月末も、現預金と流動有価証券を合わせれば約13.2億円であり、財務の余力は維持された。営業利益が一時的に減っても、資金繰りを理由に条件の悪い増資を急ぐ必要は小さい。
電話営業の市場そのものがなくなるとは限らない。高齢者向け商材、継続購入の案内、相談を伴う販売では、人による対話を好む顧客が残るだろう。AIが記録作成や品質管理を担えば、少ない人員で一定の受注件数を維持できる。受託単価の引下げは痛いが、通話品質や販売成果が優れていれば取引先の分散によって交渉力を取り戻す余地もある。2026年の第3四半期単独では利益の回復が確認でき、全社の採算悪化が一方向に進んでいるとまではいえない。
より魅力的なのはリテールメディアだ。約1万4,400店の店舗接点を使い、レジでのサンプリングやクーポン配布を広げている。2026年の会社説明では新サービスの受注が堅調だった。全国の消費者へ実店舗で働きかける網は、純粋な電話営業よりもAIによる中抜きを受けにくい。アカモク関連商品も、価格改定と費用削減が進めば赤字から抜け出せる。外部の通販会社を支援するだけでなく、自ら売れる商品を持つ意味は大きい。
小規模な会社だからこそ、販促案件の積み上げや少数の商品ヒットでも利益額が変わりやすい。M&Aを行うなら、既存の店舗網や顧客基盤を安く補完できる案件に限るべきだ。資本効率の高い成長を実現し、なお余剰現金を配当や自社株買いに回せれば、現在の企業価値を大きく上回る余地はある。
慎重な見方
主力事業の強みは、電話を使った営業を大量かつ効率よく行う能力である。しかし、その能力が10年後も高い委託手数料を生むかは疑わしい。AIエージェントは見込み客の選別から会話、注文処理、結果の分析までを自動化できる。人の架電件数が減れば、受託会社が保有するコールセンターの規模そのものが競争上の重荷になりうる。顧客がAIシステムを直接利用すれば、電話営業を外注する意味も薄れる。
単価下落は遠い将来の仮説ではない。主要取引先から成果報酬の条件を引き下げられ、2026年には収益に影響が表れた。多数の顧客を持つプラットフォームや規制上の独占事業とは異なり、リプライオリティが一方的に料金を決められるわけではない。特定取引先への依存を下げる取り組みが開示されていること自体、顧客集中が経営上の問題になっている証拠でもある。
リテールメディアの店舗網にも限界がある。小売店は同社の所有物ではなく、流通大手や広告会社が似たサービスを直接提供すれば、手数料の取り分は下がる。実店舗の客足が人口減少や購買行動の変化で減る可能性もある。食品事業は一見、受託からの脱却策に見えるが、2026年の第3四半期累計ではまだ赤字である。値上げを行った事実と、値上げが利益を増やした事実は区別しなければならない。
財務の厚さも過信できない。大株主に持分が集中しているため、少数株主は現金の還元時期を決められない。衰退する売上を穴埋めするために、採算の不確かな新商品や買収へ資金を使えば、現在の現預金は簡単に減る。福岡証券取引所Q-Boardの小型銘柄であることから流動性にも制約がある。会計上の純資産が多いことと、株主がその価値を実際に受け取れることは同じではない。
どちらに重みを置いたか
事業の持続性では慎重な見方に分がある。主要顧客による成果報酬単価の引下げは、価格決定力の弱さがすでに表面化した事実だ。AIエージェントの影響は中立の架電件数減少と10年より先の低成長に織り込み、確率で同じ理由を繰り返し差し引かない。そのうえで、特定顧客への依存と食品事業の赤字が残ることから、下側の確率を41%、上側を27%としている。
ただし、事業に対する慎重さと現在の株価が割高かどうかは別問題だ。流動資産が厚く、極端な資金繰り悪化を想定する必要は小さい。既存株主の希薄化も含めた本質価値は時価総額を約15%上回り、結論はやや割安である。これは強い堀への高評価ではなく、資産価値と限られた稼ぐ力に基づく評価だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,044 円23 億円(+ 還元の換算額還元の合計 148 円3 億円)。 今の値に割り戻すと 597 円13 億円、今との差 +13.7%、 期待の年率 +9.3%(資本コスト 7.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 2,128 円47 億円 | 282 円6 億円 | +359.0% | +18.1% | 241 円5 億円 |
| やや楽観 | 17% | 1,571 円35 億円 | 233 円5 億円 | +243.7% | +14.5% | 307 円7 億円 |
| 中立 | 32% | 1,082 円24 億円 | 167 円4 億円 | +138.0% | +9.9% | 400 円9 億円 |
| やや悲観 | 26% | 567 円13 億円 | 92 円2 億円 | +25.7% | +2.5% | 172 円4 億円 |
| 悲観 | 15% | 467 円10 億円 | 18 円0 億円 | −7.7% | −0.8% | 73 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,044 円23 億円 | 148 円3 億円 | +127.0% | +9.3% | 1,192 円27 億円 |
今の株価時価総額 525 円12 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 店頭販促が育ち、自社商品も収益の柱になる 利益 3 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,128 円47 億円
電話営業では顧客企業の分散が進み、一部の大口顧客に取引条件を左右される弱さが和らぐ。AIは通話記録、顧客の選定、品質検査を支える道具として利用されるが、人が販売成果を高める余地も残る。人員の生産性改善により、架電規模を維持したまま営業利益率が改善する。ただし、自社開発のAIエージェントを新たな高成長製品として販売した実績は確認できないため、AI関連の架電数量増を成長の根拠にはしない。
リテールメディアは提携店舗を約1万7000店まで増やし、レジでの販促サービスが広告主の定番施策となる。全国規模の小売会社や広告代理店との競争は続くが、地域店舗への営業網と案件運営の手際で一定の取り分を維持する。食品通販は商品の改善と定期購入の定着によって出荷件数が増える。原料費と広告費を適切に管理でき、利益率も改善する。
買収は既存の店舗網や顧客を補完する小型案件にとどめ、大型買収によるのれんの重荷を作らない。資金の余力を守りながら年間配当を継続し、蓄積した利益を株主に還元する。この場合、売上規模は現在から大きく広がり、複数の収益源を持つ事業へ転換できる。
- D2C支援・電話営業受託:数量 18,000,000(年間架電件数(件、実質数量))× 価格 127(架電1件当たりに換算した受託売上(円、成果報酬等を含む実現売上単価))→ 売上 23 億円・営業利益 3 億円。年間1800万件を維持。名目実現単価は現在の約1.31倍。AIによる事務効率化で利益率14%。
- リテールメディア・店頭販促:数量 17,000(販促サービスを提供できる提携小売店舗数(店、実質数量))× 価格 19,000(提携店舗1店当たりの年間販促売上に換算した額(円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。提携1万7000店、店舗当たり年間売上1万9000円。大型広告案件の獲得で利益率22%。
- 通信販売・アカモク関連食品:数量 165,000(年間商品の出荷注文件数(件、推計実質数量))× 価格 7,200(1注文当たり実現売上高(円、名目))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。年間16万5000注文、平均7200円。定期購入と販促費改善で利益率9%。
倍率:資本コストk=7.75%、10年より先の名目成長率g_long=0%で、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=1÷0.0775=12.9032倍となる。ROEは3.48÷32.3=10.8%でkを上回るが、成長率をゼロに制限するため利益の超過成長は倍率に上乗せしない。現時点の余剰現金6.0億円の税後利息0.084億円を純利益から外し、(3.48−0.084)×12.9032258+6.0×0.75=48.3194億円。今の株価や同業PERから倍率を決めていない。期間純利益累計26.0億円と還元6.4億円から自己資本32.3億円を見込む。
確率:実店舗の提携網を拡大し、通信販売の利益率改善を10年続ける必要がある。電話営業はAIによって効率化しても委託元の内製化にさらされるため、最も良い場合でも架電件数は現在と同じ水準までとした。複数事業の同時成功を要するので確率は10%に限る。
やや楽観 17% 電話受託の縮みを店舗販促と食品の改善が補う 利益 3 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,571 円35 億円
電話営業の主要取引先から受けた単価引下げの影響を、新規顧客の開拓と運用効率化によって吸収する。顧客自身によるAIエージェントの導入が進み、電話応対の一部は外注されなくなる。それでも相談を伴う商品や継続購入の案内では有人対応が残り、受託業務としての規模をある程度保つ。受注先を分散することで、一社の条件変更が全社利益を大きく揺らす状態から少しずつ脱する。
小売店でのサンプリングとクーポン配布は着実に普及し、提携店舗が約1万6000店へ広がる。店舗当たりの販促案件が増え、広告主の継続利用も進む。ただし小売大手の内製化があるため、独占的な広告媒体になるほどの強さは得られない。食品通販ではアカモク関連商品が安定した顧客層を獲得し、広告費の使い方を改善する。販売数量は増え、営業赤字から黒字へ戻る。
経営陣は新サービスの開発と小規模な提携へ資金を振り向ける一方、配当を守る。収益の中心はなお電話営業だが、その他の事業が全社の利益を支える割合は高くなる。強い技術的独占を持たないままでも、小さな企業として十分な営業利益を確保する道筋である。
- D2C支援・電話営業受託:数量 15,300,000(年間架電件数(件、実質数量))× 価格 123(架電1件当たりに換算した受託売上(円、成果報酬等を含む実現売上単価))→ 売上 19 億円・営業利益 2 億円。架電量は現在の85%。単価は約1.27倍、利益率12.5%。
- リテールメディア・店頭販促:数量 16,000(販促サービスを提供できる提携小売店舗数(店、実質数量))× 価格 18,700(提携店舗1店当たりの年間販促売上に換算した額(円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。1万6000店へ拡大。販促案件の単価改善で利益率20%。
- 通信販売・アカモク関連食品:数量 150,000(年間商品の出荷注文件数(件、推計実質数量))× 価格 6,900(1注文当たり実現売上高(円、名目))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。15万注文、平均6900円。商品構成改善により利益率6%。
倍率:ROEは2.50÷29.9=8.36%で資本コスト7.75%を上回る。10年より先のg_longは0%で、正当化PERは1÷k=12.9032倍。純利益から余剰現金6億円の税後利息0.084億円を除き、事業価値を求めた後、還元可能性75%を反映した余剰現金4.5億円を加える。(2.50−0.084)×12.9032258+4.5=35.6742億円。期間の累計純利益22.5億円から株主還元5.3億円を引き、現在の自己資本12.7億円に加えた29.9億円を期末自己資本とした。
確率:会社が進める顧客分散、店頭サンプリングの拡大、食品事業の採算改善が順調に進む場合である。ただし電話営業の取扱量はなお15%減るため、過度に強い成長ではない。既存の販促網を生かせることから楽観より確率を高くした。
中立 32% AIで電話業務が縮み、他事業が一部を補完する 利益 2 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,082 円24 億円
電話営業の受託業務は、必要とされる場面を残しながらも縮小する。AIエージェントが単純な案内、定型的な受注、会話記録、品質監督を担い、委託元が利用する人の作業量は減る。リプライオリティは人が得意とする商品の説明や成約支援に業務を絞り込むが、受託件数を守るために料金を引き上げ続けられるわけではない。年間架電件数は今の65%となり、名目単価が上がっても主力事業の売上は減る。
リテールメディアは約1万4500店の店舗網を維持し、レジでのサンプリングなどを徐々に拡大する。小売業自身の広告事業との競争があるため、店舗当たり売上は物価を超えるほどには伸びない。食品通販は価格改定と販促費の適正化が進み、低いながらも黒字を確保する。顧客獲得競争は続き、強い食品ブランドとして高い利益率を持つ状態には至らない。
大規模な買収による急拡大や、大幅な新株発行は基本の筋書きに含めない。配当は利益の変化に応じて調整され、余剰現金の一部が株主に戻る。10年後の営業利益率は約9%となり、2025年の高い収益性から低下する。自己資本は利益の留保で増えるため、ROEも低下する。事業は残るが、高ROEを維持し続ける会社ではなくなる。
- D2C支援・電話営業受託:数量 11,700,000(年間架電件数(件、実質数量))× 価格 120(架電1件当たりに換算した受託売上(円、成果報酬等を含む実現売上単価))→ 売上 14 億円・営業利益 2 億円。AIエージェント代替により年間架電件数は現在の65%、単価は現在の約1.24倍。利益率11%。
- リテールメディア・店頭販促:数量 14,500(販促サービスを提供できる提携小売店舗数(店、実質数量))× 価格 18,000(提携店舗1店当たりの年間販促売上に換算した額(円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。店舗網はほぼ横ばい。店舗当たり売上は約1.25倍、利益率17%。
- 通信販売・アカモク関連食品:数量 125,000(年間商品の出荷注文件数(件、推計実質数量))× 価格 7,200(1注文当たり実現売上高(円、名目))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。実質注文数量は横ばい。価格は物価に近い上昇、利益率は4%に改善。
倍率:10年後のROEは1.64÷25.5=6.43%で、資本コスト7.75%を下回る。この場合、将来の再投資に超過収益を見込めないため、10年より先の成長は価値に加えず、正当化PERの上限である1÷k=12.9032倍を採用する。AI代替による長期名目成長率g_long=0%とも整合する。余剰現金の利息0.084億円を差し引いた事業利益1.556億円に倍率を適用し、余剰現金6億円の75%を加える。(1.64−0.084)×12.9032258+4.5=24.5774億円。現在自己資本12.7億円+期間純利益累計16.6億円−還元3.8億円=25.5億円。
確率:下に寄せる理由:主要顧客による成果報酬単価の引下げが実際に発生し、主力D2Cの顧客集中を会社自身が課題としている。中立の電話営業数量はすでにAI代替を反映した65%であり、その理由を確率で重ねて引いてはいない。店舗販促の成長と食品の小幅黒字化を同時に見込むため、悲観に寄り切らない中心の筋書きとする。
やや悲観 26% 受託条件が悪化し、店舗販促の伸びも鈍る 利益 1 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 567 円13 億円
電話営業では委託元による取引条件の見直しが続き、成果報酬の取り分が低くなる。顧客企業はAIエージェントを自社の販売システムへ組み込み、定型的な受注と継続購入の案内を外注しなくなる。リプライオリティは人による難しい営業や一部の顧客対応を残すが、受託の絶対量が減る。人員を減らして固定費を調整しても、減収に追いつかず利益率が落ちる。
店頭販促では大手小売業の自社広告網や大手広告代理店との競争が激しくなる。小売店との提携が減少し、広告主から獲得できる案件も伸び悩む。販促網自体は残るが、現在より小さな収益源となる。食品通販では原料調達、配送、広告のコストが重く、価格改定の効果が十分に表れない。継続購入を維持するために値引きや販促費が必要となり、利益は小幅にとどまる。
経営は縮小した電話営業の人員配置を見直し、新規投資も抑える。10年間を通じて配当は減らすが、財務の余裕があるため全面的な停止には至らない。黒字の会社ではあり続けるものの、追加投資から資本コストに見合う収益を得ることは難しくなり、株主が得る価値は主に残った現金と小さな事業利益となる。
- D2C支援・電話営業受託:数量 10,200,000(年間架電件数(件、実質数量))× 価格 111(架電1件当たりに換算した受託売上(円、成果報酬等を含む実現売上単価))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。架電件数は現在の約57%。委託条件の悪化で名目単価は約1.15倍にとどまり、利益率7%。
- リテールメディア・店頭販促:数量 12,000(販促サービスを提供できる提携小売店舗数(店、実質数量))× 価格 15,600(提携店舗1店当たりの年間販促売上に換算した額(円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。提携店舗1万2000店。価格競争で店舗当たり売上も伸びず、利益率14%。
- 通信販売・アカモク関連食品:数量 100,000(年間商品の出荷注文件数(件、推計実質数量))× 価格 6,000(1注文当たり実現売上高(円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。年間10万注文。広告費・配送費を吸収しきれず利益率1%。
倍率:ROEは0.80÷19.0=4.21%でk7.75%を大きく下回る。将来の成長価値は認めず、既存事業の稼ぐ力の上限を1÷k=12.9032倍とする。事業縮小に伴う整理費用や顧客開拓費用で現時点の余剰現金6億円のうち1.5億円を使うため、この筋書きの余剰現金は4.5億円。現金利息0.063億円を除いた純利益0.737億円の稼ぐ力と、現金4.5億円の還元可能額75%の合計は、0.737×12.9032258+3.375=12.8847億円となる。悲観側の稼ぐ力を超えて価値を付けていない。現在自己資本12.7億円+期間純利益累計8.4億円−還元2.1億円=19.0億円。
確率:下に寄せる理由:主力事業で実際に料金条件の悪化が起きているうえ、会社は特定取引先への依存度低減を進めている。顧客の分散が遅れ、食品事業の採算改善にも時間がかかる筋書きを中立に次ぐ重みとした。AIによる数量の減少だけを理由に確率を上積みしていない。
悲観 15% 電話営業の競争力が失われ、資産価値が中心になる 利益 0 億円 · PBR 0.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 467 円10 億円
電話営業の需要は構造的に小さくなり、大手の委託元がAIエージェントを使って営業と受注を内製化する。かつて大量の架電を効率よく処理していた強みは、取引先から評価されにくくなる。人員を大幅に縮小しても、採用、教育、システム維持に必要な費用を十分に回収できない。年間架電件数は半減し、成果報酬の条件もほぼ改善しない。
提携小売店の一部は広告の運用を大手流通会社や別の広告代理店へ移す。自社の売場を持たないリプライオリティは、店舗網を守るために手数料を譲歩する。食品通販では顧客の継続購入が減り、原料・配送・広告の負担が残る。商品単価を上げても販売件数が減るため赤字が続く。電話営業の黒字でその他の赤字を補う余地も小さくなる。
経営陣は事業縮小、拠点整理、システムの減損などを迫られる。途中の年度では撤退費用や減損損失が利益を打ち消し、10年間の累計純利益はほとんど残らない。配当は大幅に削られ、現金の一部が事業再編に使われる。会社は小規模な営業と販促業務を維持するが、高収益企業という性格を失う。10年後の価値の中心は利益ではなく、負債と清算関連費用を差し引いた売却可能資産となる。
- D2C支援・電話営業受託:数量 9,000,000(年間架電件数(件、実質数量))× 価格 97(架電1件当たりに換算した受託売上(円、成果報酬等を含む実現売上単価))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。年間架電件数は半減。名目売上単価はほぼ据え置きとなり、利益率2.5%。
- リテールメディア・店頭販促:数量 11,000(販促サービスを提供できる提携小売店舗数(店、実質数量))× 価格 13,200(提携店舗1店当たりの年間販促売上に換算した額(円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。提携店舗は1万1000店へ減少。手数料率も低下し、利益率10%。
- 通信販売・アカモク関連食品:数量 90,000(年間商品の出荷注文件数(件、推計実質数量))× 価格 5,600(1注文当たり実現売上高(円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。年間9万注文、利益率マイナス5%。原料・物流・広告費の固定負担が残る。
倍率:営業利益がほぼ失われ、ROEは0.08÷12.7=0.63%となるため、利益の成長価値は認めない。稼ぐ力だけなら事業の純利益約0.066億円÷k7.75%と余剰現金の戻り分で約1.60億円にとどまり、売却可能な資産の床10.5846億円を大きく下回る。この筋書きでは資産価値が上限であり、現在の自己資本12.7億円に対するPBR0.835倍から時価総額10.6045億円とする。床との差は処分価値の概算と端数による約0.02億円のみである。将来に累積する自己資本へ床の倍率を掛けない。期間利益累計0.4億円と還元0.4億円は相殺し、減損・整理費用を含めた期末自己資本は起点と同じ12.7億円とする。
確率:特定の大口顧客を失い、電話販売の自動化と受託単価の低下が同時に進む。店頭販促も小売業の内製化で取引先を失い、自社食品は赤字を脱しない。複数事業の失敗が重なるため最多の確率にはしないが、現金を使う買収や事業撤退もありうるため15%を割り当てる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
D2C支援・電話営業受託
健康食品や化粧品の通販会社から電話営業を受託し、架電、販売提案、注文獲得などを担う。人の工数と販売成果に収益が依存するため、AIエージェントによる代替リスクが大きい。
| 数量年間架電件数(件、実質数量) | 価格架電1件当たりに換算した受託売上(円、成果報酬等を含む実現売上単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 18,000,000 | 97 | 17 | 3 |
| 10 年後 中立 | 11,700,000 | 120 | 14 | 2 |
取り方:2025年9月期の営業支援事業の外部売上高19.47721億円を、2026年上期のD2Cとリテールメディアの売上構成比を参照して推定配分した。D2Cを17.4億円とし、会社資料にある月間約150万件の架電規模を年換算した1800万件で割った。したがって96.67円は契約上の通話単価ではなく、成果報酬や固定委託料を含む売上を通話件数で割った推計値である。2025年通期の実測架電数は未開示で、数量にも翌期の開示からの近似を含む。営業利益2.7億円は支援事業利益3.11322億円から店頭販促の推計利益を引いた配賦値であり、正式な事業部別2025年実績ではない。市場の物差しは国内コールセンターサービス市場約1兆517億円で、推定売上比率は約0.17%。ただし電話営業以外も含む広義市場である。AIエージェント代替の型は人月・工数型のBPOであり、中立の10年後数量は今の0.65倍、名目価格は今の1.24倍、10年より先の成長は0%とした。
リテールメディア・店頭販促
提携スーパーやドラッグストアなどの売場やレジを使い、広告・サンプリング・クーポン配布を仲介する。店舗網という実物の接点は残るが、店舗の所有権や広告枠の独占権を持つわけではない。
| 数量販促サービスを提供できる提携小売店舗数(店、実質数量) | 価格提携店舗1店当たりの年間販促売上に換算した額(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 14,394 | 14,431 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 14,500 | 18,000 | 3 | 0 |
取り方:会社の2026年上期説明資料に示された提携店舗約1万4394店を、2025年末の近似的な店舗基盤として利用した。2025年の営業支援外部売上19.47721億円からD2C推計17.4億円を差し引いた2.07721億円を店舗数で割り、年約1万4431円の売上換算単価を得た。これは小売店に請求する固定年間料金ではなく、広告案件の獲得率と販促手数料を含む平均値である。営業利益0.41322億円は2026年上期の事業部別収益性を参考にした配賦値で、正式な2025年事業部別利益ではない。2025年の国内POP広告費1540億円と比べると約0.13%に相当するが、サンプリングなど対象が一致せず厳密な市場シェアではない。AIエージェント代替の型は自社で束ねる実店舗販促ネットワーク型と広告運用受託型の混合であり、店舗接点の数量は中立でほぼ横ばい、単価は広告手数料への競争圧力を考えて物価上昇率以下とした。
通信販売・アカモク関連食品
アカモクを使った食品などを企画・販売する自社商品の通信販売。実物商品の需要が基礎となり、価格改定、継続購入率、原料費、広告費、配送費が利益を決める。
| 数量年間商品の出荷注文件数(件、推計実質数量) | 価格1注文当たり実現売上高(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 125,000 | 5,468 | 7 | 0 |
| 10 年後 中立 | 125,000 | 7,200 | 9 | 0 |
取り方:2025年9月期の通信販売事業の外部売上高6.83540億円とセグメント利益0.03668億円を起点とした。主力のアカモク商品の通販表示価格には数千円のセット商品があり、単品・セット・定期購入・他商品を含む平均実現売上を1注文5468.32円と仮定すると年間約12万5000件に相当する。注文件数と平均単価の直接開示は確認できないため、この組合せは売上高と商品価格帯から作った推計であって実測値ではない。国内食品EC市場は2025年に約5兆円規模とされるが、同社商品の直接的な市場より相当に広い。広義市場に対する売上比率は約0.014%で、アカモク単独の市場シェアは未確認。実物商品はAIによって直接代替されないが、広告制作や受注事務の効率化と顧客獲得競争の影響は受ける。
リスクと懸念
AI エージェント代替
電話営業と受注事務は人の作業時間で売るBPOに近く、AIエージェントによる直接代替の対象となる。通話記録、顧客の選定、商品説明、受注処理まで自動化が広がれば、顧客企業は人を使う委託量を減らせる。中立では10年間の架電数量を65%とし、10年より先の名目成長率を0%に制限した。この縮みは資本コストの寿命項目や確率で重複して引いていない。
主要顧客への依存と受託単価の引下げ
主要取引先が成果報酬単価を引き下げた事実は、同社の価格決定力に対する直接的な反証である。売上規模を維持しても、受注単価や成果報酬率が下がれば利益は減る。取引先の分散が進まなければ、一社の販売方針変更がコールセンターの稼働率と全社利益に波及する。月間架電件数だけでなく、架電1件当たり実現売上を追う必要がある。
現金の使い道と支配株主の影響
現預金と流動有価証券は厚いが、少数株主はその全額の還元を決められない。大株主に持分が集中し、配当性向も現時点では高くない。新規サービスや買収が期待した利益を生まなければ、事業の縮小で損なわれた利益に加え、帳簿上の現金まで減る。余剰資金の評価を75%としたのは、財務の安全性と株主が使える価値を区別するためだ。
食品通販の広告費と価格改定の限界
アカモク関連商品の価格改定は実行されたが、2026年9月期第3四半期累計では通信販売事業の営業赤字が続いた。売価を引き上げても注文件数が減れば、原料費、物流費、広告費を吸収できない。食品EC市場全体の成長を同社の売上や利益へ機械的に転用することはできず、継続購入率と顧客獲得費用を分けて監視する必要がある。
店舗ネットワークの内製化・競合
約1万4,400店の販促ネットワークは有用だが、店舗の資産や独占的な広告枠を所有しているわけではない。大型小売業が自社の会員アプリや購買データを使って広告を直接販売すれば、仲介業者の取り分は細る。大手広告会社も類似の販促手段を用意できる。提携店舗数が増えても、店舗当たりの売上や利益が伸びない場合には堀の拡大と評価できない。
小型上場銘柄の流動性と潜在株式
福岡証券取引所Q-Boardに上場する小型銘柄であり、取引量が少ない時期には売買価格が本質価値から離れやすい。株式分割後の発行済株式と自己株式を区別する必要があり、潜在株式の行使による約2%の希薄化も無視できない。会社全体の価値と、現在の株主が最終的に受け取る価値を混同しないことが大切だ。
今後の分かれ目
- 電話営業の年間架電件数が大きく減っても、架電当たりの実現売上と営業利益が維持されたら
- AIを利用した省人化が収益に結び付いている可能性が高い。中立のD2C利益率とやや楽観側の確率を見直す。ただし、成果報酬の条件と顧客数を同時に確認する。
- 主要顧客の成果報酬単価が再び引き下げられ、新規取引先でも補えなかったら
- 値決め力の弱さが一過性ではないと判断する。電話営業の単価と営業利益率を下げ、やや悲観の重みを増やす。
- 提携店舗が1万6000店を超え、店舗当たり販促売上と営業利益率も同時に上昇したら
- 単なる店舗数の増加ではなく、実店舗ネットワークの収益力が強まった証拠となる。リテールメディアの数量・単価・利益率を上方修正する。
- 通信販売事業が複数期続けて営業黒字となり、値上げ後も注文件数と継続購入率が維持されたら
- 自社商品に再現性のある利益が生まれたと判断できる。食品事業の中立利益率を高め、電話営業への依存度が下がる効果を評価する。
- 大口の買収を実施し、対価に見合う営業利益やキャッシュフローが確認できなかったら
- 余剰現金を事業価値へ振り替える根拠が崩れる。現金の床と将来利益を減らし、減損費用や追加借入の可能性を悲観側へ反映する。
- 配当性向が50%程度まで引き上げられるか、発行済株式数を継続的に減らす自社株買いが実行されたら
- 現金が少数株主に戻る確実性が高まるため、余剰現金の戻り方を0.75から1.0へ見直す余地がある。自社株買いによる株数変化と現金流出は二重に評価しない。
見ておくもの
- 四半期ごとのD2C売上、架電件数、架電1件当たり実現売上、営業利益率
- 電話営業受託の上位顧客への依存度と成果報酬契約の改定
- リテールメディアの提携店舗数、店舗当たり売上、サンプリング案件の継続率
- アカモク関連商品の受注数量、平均販売単価、継続購入率、広告費率
- 現預金と流動有価証券の合計、有利子負債、営業キャッシュフロー
- 会社の新規投資約0.66億円の実行状況と、投資後の利益・キャッシュフロー
- 年間配当総額、配当性向、自社株買い、潜在株式数の変化
- AIエージェントによる電話応対・受注処理の内製化動向
- M&Aの実行有無、買収価格、のれん、投資収益率、上場継続に関する開示
倍率と資本コストの決め方
2025年9月期の売上26.31261億円を、電話営業、店頭販促、食品通販に分けた。会社が2025年の事業部別数量と単価を十分に開示していない部分は、翌期の月間架電件数、提携店舗数、公開商品価格を使った推定であることを明記した。中立ではAIエージェント代替による電話営業数量の35%減を先に織り込み、物価の上昇は単価の側にのみ反映した。
資本コストは7.75%で、長期成長率は0%とした。このため楽観から中立までの正当化PERは約12.90倍となり、現在や過去の市場PERには合わせていない。悲観は現在の自己資本と売却可能資産の床を用い、将来の大きな自己資本に床のPBRを掛けていない。純利益÷営業利益は基本的に過去の中央値約0.69に近づけ、還元を控除した自己資本の増減を各筋書きで整合させた。
5つの時価総額と10年還元額を資本コストで割り引いた確率加重価値は、潜在株式を考慮する前で約13.55億円である。既存株主の取り分0.981を反映すると約13.29億円となり、基準時価総額11.58352億円を約14.8%上回る。結論はやや割安である。現在の株価を使ったのは最後の差の検算だけだ。新リース会計基準で将来の使用権資産と負債の表示が変わっても、ここでは家賃を営業費用に含める従来ベースで利益の見通しをそろえている。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%の合計7.5%を起点に、事業の値決め力の弱さと厚い純現金を4要素の合計+0.25%として反映した。主要顧客や新規投資の固有リスクは資本コストに上乗せせず、数量・利益率・確率に表す。