結論
アドバンテッジリスクマネジメントは、企業の従業員の心と体の健康を支える会社だ。ストレスチェックの実施、カウンセリング、研修、産業医の紹介を一括で引き受け、病気で長く休む人の所得を補う団体保険の制度づくりも手がける。筆者の結論はやや割高である。法の追い風と顧客の基盤は本物だが、稼ぎの一部は人の時間で売る相談と研修で、AIに置き換わる危うさが大きい。
強みは早く動いたことだ。ストレスチェックが義務になる前から仕組みを作り、契約企業は3,000社、年間の利用者は600万人を超えるとされる。2025年の法改正で、従業員50人未満の事業場にもストレスチェックが義務づけられる。市場は広がる。
ただし、同じ仕組みを安く提供する会社は多い。団体の所得補償保険でも、会社自身が「優位は相対化しつつある」と認める。人件費とシステム投資が重く、2026年3月期は増収でも減益だった。10年の中立では、利益は今の1割強増える程度とみる。ROEは資本コストを少し上回るが、今の値段には安全域が見えない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、良い事業の部分と、先が読めない部分が混ざった会社だ。
法律で毎年行うストレスチェックと、制度に組み込まれた団体の保険は、毎年同じお金が入る安定した事業だ。設備が少なく、ROEは長く資本コストを大きく上回ってきた。オーナーとして持つなら、この部分には安心感がある。
一方で、カウンセリングと研修は人の時間で売る仕事だ。10年後にAIの相談相手がどこまで人の代わりをするかは、誰にも読めない。読めない事業に高い値段は払えない。買収で売上を伸ばす手法も、値段次第で株主の価値を壊す。
筆者は、この会社の本質価値を今の値段より少し下と見る。義務の拡大で数量は増えても、単価は物価ほど上がらず、本社とシステムの費用は物価で上がる。利益は伸びるが、今の値段が求めるほどではない。AIを自社の売り物に変えた証拠が出れば、見方は変わる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は4つある。
最大はメンタリティマネジメント事業で、売上の8割弱を占める。中心はストレスチェックの「アドバンテッジ タフネス」だ。従業員が質問に答え、会社は部署ごとの結果を受け取る。そこから相談の窓口、カウンセリング、管理職の研修、組織の改善の提案へとつなげる。産業医や保健師の紹介、健康診断の管理、食事と運動の指導も、買収した子会社とともに広げている。顧客の健康のデータを1つの画面に集め、課題と打ち手を示す基盤も作った。
2つ目は就業障がい者支援事業だ。病気やけがで長く働けなくなった従業員の所得を補う団体保険、GLTDの制度づくりを企業に提案し、保険会社から手数料を受け取る。休業中の従業員と会社をつなぐクラウドの仕組みも売る。
3つ目は職場で個人向けの保険を売るリスクファイナンシング事業で、アフラックの商品が多い。4つ目は2025年に買った少額短期保険の会社で、健康年齢で入れる医療保険などを売る。
全社で見ると、売上の伸びの多くは買収と健康経営の領域から来ている。本社の費用は年8億円を超え、各事業の利益の半分近くを食う。
優良さと弱いところ
優良さの芯は、法対応の仕組みと顧客の基盤だ。ストレスチェックは法律で義務づけられ、企業は毎年必ず実施する。一度仕組みを入れた会社は、毎年同じ業者に頼みやすい。データが積み上がるほど、前年との比べ方や部署の変化が見え、乗り換えの手間は増す。団体の所得補償保険も、制度を入れた企業は簡単には外さない。
ただし堀、つまり他社がまねできない強みとしては中くらいだ。ストレスチェックそのものは安い業者が多く、健康診断の会社や人事のソフトの会社も参入する。GLTDの代理店の仕事も、会社自身が優位は薄れつつあると認める。2026年3月期には大口の顧客との契約が終わり、事業の利益が2割近く減った。
資本効率は高い。ROEは過去10年の中央値で17%と、資本コストの2倍近い。設備が少なく、人とソフトで稼ぐ事業だからだ。ただ、近年はソフトの投資と買収で償却が増え、営業利益率は山の19%から10%前後に下がった。
AIの影響は二面ある。データを集めて分析する部分は、AIで速く安くなり強みが増す。一方、カウンセリングや研修のように人の時間で売る部分は、AIの相談相手や動画の研修に置き換わりやすい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
職場の健康の市場は、法と人手不足に押されて広がっている。2015年にストレスチェックが従業員50人以上の事業場で義務になった。2025年5月に公布された改正法で、50人未満の事業場にも広がる。中小企業の数は多く、受ける人の数は増える。ただし小さな会社は払える額が小さく、1人あたりの単価は下がりやすい。
人的資本の開示も追い風だ。大企業は従業員の健康や働きがいを数字で示すよう求められ、調査と改善の提案に予算をつける。健康経営の認定を取るための支援も需要になっている。育児や介護との両立を支える法改正も段階的に進んでいる。
逆風はAIと競争だ。生成AIは、相談の受け答え、研修の教材、調査の結果の読み解きを安く作れる。人事のソフトや健康管理のアプリの会社が、ストレスチェックを無料のおまけとして付ける例も出ている。人の時間で売る仕事の値段は、物価ほど上がらない。
保険の側は、賃金が上がれば保険料も上がり、手数料も増える。団体の所得補償保険の普及率は欧米に比べて低く、伸びしろはある。ただ大手の保険会社や代理店も力を入れ、手数料の取り分は細りやすい。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。方針は連結配当性向35%以上で、2026年3月期の配当総額は約2.7億円、性向は39%だった。次期は増配を予想する。自社株買いは機動的に行うとし、従業員向けの株式給付の信託も持つ。
成長の手段として買収を使っている。2024年に産業保健のMediplatと栄養指導のフィッツプラスを、2025年に少額短期保険の会社を買った。のれんと顧客の資産は合わせて10億円規模になり、2025年3月期には一部を減損した。買収の値段と統合の成否は、今後の利益を左右する。
ソフトへの投資も重い。年7億円前後を投じ、償却は年10億円近い。会社は償却が当期で山を越えると見ている。
財務は軽い。借入は約15億円あるが現金が上回り、純現金は約4億円だ。大株主の構成は確認できなかったが、親会社はない。時価総額は小さく、同業や投資ファンドの買収の対象になりうる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ARMは職場の健康という伸びる市場の先頭にいる。ストレスチェックは法律の義務で、毎年必ず需要がある。2025年の改正で50人未満の事業場にも広がり、受ける人の数は大きく増える。先に600万人を超える利用者の基盤を作った会社が、最も有利な位置にいる。
データの基盤も強みだ。ストレスチェックと健康診断と勤怠の情報を1つにまとめれば、企業はどの部署で誰が倒れそうかを先に知れる。AIはこの分析を速く安くし、ARMの価値を高める側に働く。相談の窓口にAIを入れれば、人の手間が減って利益率は上がる。
団体の所得補償保険は、賃金が上がれば手数料も上がる。日本の普及率は欧米より低く、人的資本の開示で企業の関心は高まっている。育児や介護との両立を支えるクラウドの仕組みも、法改正の追い風で二桁で伸びている。
ソフトの償却は当期で山を越え、次期の会社予想は営業利益が2割強増える。過去には営業利益率19%を出しており、償却の負担が軽くなれば15%前後まで戻りうる。今の値段は利益の10倍前後で、成長を織り込んでいない。
慎重な見方
ARMの稼ぎの多くは、人の時間で売る仕事だ。カウンセリング、研修、組織の改善の提案は、生成AIが最も置き換えやすい領域にある。AIの相談相手は24時間、ほぼ無料で答える。10年後に企業が人のカウンセラーに今と同じ額を払う保証はない。会社自身も、有報でAIによる代替をリスクに挙げている。
ストレスチェックそのものは安い。健康診断の会社や人事のソフトの会社が無料のおまけで付ければ、単価は下がる。50人未満の事業場への義務化も、払える額の小さい顧客が増えるだけで、利益は思うほど増えない。
団体の所得補償保険の優位も薄れている。会社自身が相対化を認め、2026年3月期には大口の顧客が離れて事業の利益が2割近く減った。職場の保険はアフラックに頼りきりだ。
利益率は山の19%から10%前後に下がった。買収で売上は伸びたが、のれんの減損も出ている。本社の費用は物価で上がり、ソフトの投資も止められない。利益は伸びても、今の値段を正当化するほどではない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。法の追い風と顧客の基盤は認めるが、稼ぎの一部がAIに置き換わりやすい人の時間の仕事で、10年後の姿は読みにくい。確率は中立を中心に、AIの代替が進む悲観側を35%と厚くした。中立でも利益は伸びるが、今の値段を少し下回る。AIを売り物に変えた開示が出れば、楽観側に寄せる。逆に、相談と研修の売上の縮みが決算で見え始めたら、悲観側をさらに厚くする。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 739 円116 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 182 円29 億円)。 今の値に割り戻すと 485 円76 億円、今との差 −3.9%、 期待の年率 +6.2%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 1,590 円250 億円 | 312 円49 億円 | +276.5% | +14.2% | 171 円27 億円 |
| やや楽観 | 21% | 1,170 円184 億円 | 227 円36 億円 | +176.6% | +10.7% | 293 円46 億円 |
| 中立 | 35% | 850 円134 億円 | 188 円30 億円 | +105.7% | +7.5% | 364 円57 億円 |
| やや悲観 | 23% | 209 円33 億円 | 140 円22 億円 | −30.8% | −3.6% | 80 円13 億円 |
| 悲観 | 12% | 38 円6 億円 | 64 円10 億円 | −79.8% | −14.8% | 12 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 739 円116 億円 | 182 円29 億円 | +82.3% | +6.2% | 921 円145 億円 |
今の株価時価総額 505 円79 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 9% 義務化とデータの基盤で、職場の健康の本命になる 利益 15 億円 · PER 15.5 倍 · 株価時価総額 1,590 円250 億円
50人未満の事業場への義務化で、ストレスチェックの利用者は10年で2割増える。ARMは健康のデータを集める基盤を武器に、調査から改善の提案、産業医、保険までを一括で売る。AIは相談の受け付けと調査の分析を肩代わりし、人の手間が減って利益率が上がる。人のカウンセラーは重い相談に集中し、単価を保つ。
団体の所得補償保険は人的資本の開示で普及が進み、賃上げで手数料も増える。両立支援のクラウドも育つ。少額短期保険はグループの顧客に売れ、黒字が定着する。
ソフトの償却は山を越え、本社の費用も効率化で抑える。全社の営業利益率は17%近くまで戻る。配当は性向4割強で増え、自社株買いも加わる。
- メンタリティマネジメント(ストレスチェック・相談・研修・産業保健):数量 720(サービスの年間利用者数(万人))× 価格 0.17(利用者1万人あたり売上(億円・名目))→ 売上 119 億円・営業利益 21 億円。利用者1.2倍・単価名目1.30倍
- 就業障がい者支援(GLTD・両立支援):数量 70.0(GLTDなどの対象従業員数(万人・推定))× 価格 0.40(対象1万人あたり売上(億円・名目))→ 売上 28 億円・営業利益 7 億円。対象1.17倍・単価は賃金連動
- リスクファイナンシング(職域の保険販売):数量 4.0(保有契約件数(万件・推定))× 価格 1.25(1万件あたり手数料(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 3 億円。職域の保険が伸びる
- 少額短期保険:数量 15.0(保有契約件数(万件・推定))× 価格 1.00(1万件あたり保険料収入(億円・名目))→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。グループの顧客に売れる
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.0% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.8%、10 年より先の名目の伸び g 2.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.5 倍。全体の PER 15.54 倍、時価総額 233 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:義務化の拡大を取り切り、データの基盤とAIの活用で利益率が山に近づく筋書き。AIを自社の売り物にした売上の開示はまだ無く、確率は1割弱にとどめた。
やや楽観 21% 法の追い風が効き、利益率が戻る 利益 11 億円 · PER 15.2 倍 · 株価時価総額 1,170 円184 億円
義務化の拡大で利用者は1割強増える。小さな事業場の単価は低いが、大企業には調査から改善までの一括の提案が通り、単価は物価より少し低い程度で上がる。AIは相談の一次対応を担い、人のカウンセラーの数は増やさずに済む。
団体の所得補償保険は大口の離脱の影響が一巡し、賃上げで手数料が増える。両立支援も伸びる。少額短期保険は黒字になる。
ソフトの償却は山を越えるが、本社の費用は物価で上がる。全社の営業利益率は12%台まで戻る。配当は性向4割前後で増え、ROEは資本コストを上回り続ける。
健康経営の認定や人的資本の開示に向けた調査の需要も、大企業を中心に底堅く続く。
- メンタリティマネジメント(ストレスチェック・相談・研修・産業保健):数量 670(サービスの年間利用者数(万人))× 価格 0.16(利用者1万人あたり売上(億円・名目))→ 売上 104 億円・営業利益 17 億円。利用者1.12倍・単価名目1.22倍
- 就業障がい者支援(GLTD・両立支援):数量 64.0(GLTDなどの対象従業員数(万人・推定))× 価格 0.39(対象1万人あたり売上(億円・名目))→ 売上 25 億円・営業利益 6 億円。対象1.07倍・賃金連動
- リスクファイナンシング(職域の保険販売):数量 3.7(保有契約件数(万件・推定))× 価格 1.22(1万件あたり手数料(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 3 億円。微増
- 少額短期保険:数量 10.0(保有契約件数(万件・推定))× 価格 1.00(1万件あたり保険料収入(億円・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。黒字化
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.7% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.1%、10 年より先の名目の伸び g 2.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.2 倍。全体の PER 15.17 倍、時価総額 165 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:義務化の拡大と健康経営の需要で利用者が増え、償却の山越えで利益率が戻る筋書き。次期の会社予想の方向と合い、2割強を置いた。
中立 35% 法の需要は守るが、人の仕事の単価が伸びない 利益 8 億円 · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 850 円134 億円
10年後も企業は毎年ストレスチェックを行い、ARMはその仕組みを提供している。義務化の拡大で利用者は5%増えるが、相談と研修の一部はAIの相談相手と動画の研修に置き換わる。人の時間で売る部分の単価は物価ほど上がらず、全体の単価は10年で1.15倍にとどまる。
団体の所得補償保険は賃上げとともに手数料が増え、物価並みに伸びる。少額短期保険は小さな黒字を出す。本社の費用とシステムの費用は物価で上がり、AIによる効率化はその一部を相殺するだけだ。
全社の営業利益は12億円弱と、今の会社予想とほぼ同じ水準で止まる。配当は性向4割前後を保つ。ROEは9%前後で、資本コストを少し上回る。
- メンタリティマネジメント(ストレスチェック・相談・研修・産業保健):数量 630(サービスの年間利用者数(万人))× 価格 0.15(利用者1万人あたり売上(億円・名目))→ 売上 92 億円・営業利益 14 億円。利用者1.05倍・単価名目1.15倍(AI代替)
- 就業障がい者支援(GLTD・両立支援):数量 60.0(GLTDなどの対象従業員数(万人・推定))× 価格 0.39(対象1万人あたり売上(億円・名目))→ 売上 23 億円・営業利益 6 億円。対象横ばい・賃金連動1.34倍
- リスクファイナンシング(職域の保険販売):数量 3.4(保有契約件数(万件・推定))× 価格 1.20(1万件あたり手数料(億円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 2 億円。横ばい
- 少額短期保険:数量 7.5(保有契約件数(万件・推定))× 価格 1.09(1万件あたり保険料収入(億円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。小さな黒字
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.4% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.4%、10 年より先の名目の伸び g 2.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.7 倍。全体の PER 14.7 倍、時価総額 116 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:義務化の拡大とAIの代替が打ち消し合い、利用者はわずかに増えるが単価は物価を下回る中心の筋書き。人の時間で売る部分の重さをAIの型に沿って置いた。
やや悲観 23% 相談と研修がAIに置き換わり、単価が崩れる 利益 3 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 209 円33 億円
生成AIの相談相手が職場に広がり、企業は人のカウンセラーと研修への支払いを減らす。人事のソフトや健康診断の会社がストレスチェックを無料のおまけで付け、単価は下がる。義務化の拡大で数は増えても、払える額の小さい顧客ばかりで、利用者は1割減る。
団体の所得補償保険は大手の保険会社と代理店に押され、手数料の取り分が細る。職場の保険はアフラックの方針転換で伸びない。少額短期保険は赤字を抜けきれない。
本社の費用は物価で上がり、営業利益は4億円弱に落ちる。配当は方針どおり利益に合わせて減る。ROEは4%前後で、資本コストを下回る。
- メンタリティマネジメント(ストレスチェック・相談・研修・産業保健):数量 540(サービスの年間利用者数(万人))× 価格 0.14(利用者1万人あたり売上(億円・名目))→ 売上 73 億円・営業利益 8 億円。利用者0.9倍・単価名目1.06倍
- 就業障がい者支援(GLTD・両立支援):数量 55.0(GLTDなどの対象従業員数(万人・推定))× 価格 0.36(対象1万人あたり売上(億円・名目))→ 売上 20 億円・営業利益 4 億円。対象0.92倍
- リスクファイナンシング(職域の保険販売):数量 3.0(保有契約件数(万件・推定))× 価格 1.15(1万件あたり手数料(億円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 2 億円。縮む
- 少額短期保険:数量 4.0(保有契約件数(万件・推定))× 価格 0.95(1万件あたり保険料収入(億円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。収支とんとん
倍率:ROE 3.8%(純利益2.6億円÷自己資本68.8億円)でkを下回る。RONIC=8.25%+1/2×(3.8−8.25)=6.0%、g 2.0%から正当化PER=(1−2.0÷6.0)÷6.25%=10.7倍。AIの代替で事業が縮む筋書きなので、その7.5割の8.0倍に置いた。PBRは0.30倍で中立より低い。
確率:AIの相談相手と人事ソフトの無料の付録が広がり、人の時間で売る部分が縮む筋書き。AIエージェント代替の型に沿い、悲観と合わせて35%とした。
悲観 12% 人の仕事が消え、売上が半分近くに縮む 利益 −5 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 38 円6 億円
AIの相談相手が人のカウンセラーをほぼ置き換え、研修も動画とAIの教材で済むようになる。ストレスチェックは人事ソフトの無料の機能になり、ARMの調査の売上は大きく減る。利用者は3割減り、単価も物価を大きく下回る。
団体の所得補償保険では大口の顧客が次々に離れ、職場の保険もアフラックの販路の見直しで細る。少額短期保険は撤退する。買収した会社ののれんと、作りかけのソフトを減損し、自己資本は大きく削られる。
本社の費用は削りきれず、営業赤字になる。配当は大きく減る。価値は手元の純現金と保有株の売れる額まで下がる。
- メンタリティマネジメント(ストレスチェック・相談・研修・産業保健):数量 420(サービスの年間利用者数(万人))× 価格 0.12(利用者1万人あたり売上(億円・名目))→ 売上 50 億円・営業利益 2 億円。利用者0.7倍・単価名目0.94倍
- 就業障がい者支援(GLTD・両立支援):数量 45.0(GLTDなどの対象従業員数(万人・推定))× 価格 0.33(対象1万人あたり売上(億円・名目))→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。大口が離れる
- リスクファイナンシング(職域の保険販売):数量 2.0(保有契約件数(万件・推定))× 価格 1.10(1万件あたり手数料(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。販路が細る
- 少額短期保険:数量 0.0(保有契約件数(万件・推定))× 価格 0.90(1万件あたり保険料収入(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。撤退
倍率:稼ぐ力がマイナスでPERは使えない。売れる資産の床(約6億円)を時価総額に置き、今の自己資本43.3億円に対するPBRは0.14倍。
確率:AIの代替が相談・研修・調査の分析まで及び、保険の大口も離れる筋書き。AIエージェント代替の型に沿い、売上が実質で半分前後になる形として1割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
メンタリティマネジメント(ストレスチェック・相談・研修・産業保健)
ストレスチェックを起点に、カウンセリング、研修、組織改善の提案、産業医・保健師の紹介、健診管理、栄養指導までを企業に提供する。
| 数量サービスの年間利用者数(万人) | 価格利用者1万人あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 600 | 0.13 | 76 | 12 |
| 10 年後 中立 | 630 | 0.15 | 92 | 14 |
取り方:会社の採用ページの年間利用者600万人超を数量とし、セグメント売上76.32億円を割って利用者1万人あたり約0.13億円の単価とした。内訳の開示が無く、法対応の基盤・人の時間の相談と研修・産業保健が混ざる。AIエージェント代替で相談と研修の単価は物価ほど上がらない。
就業障がい者支援(GLTD・両立支援)
団体長期障害所得補償保険(GLTD)の制度構築と運用支援で保険会社から手数料を受け取り、休業者管理のクラウドを提供する。
| 数量GLTDなどの対象従業員数(万人・推定) | 価格対象1万人あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 60.0 | 0.29 | 17 | 4 |
| 10 年後 中立 | 60.0 | 0.39 | 23 | 6 |
取り方:対象の従業員数の開示が無いため、手数料の水準から約60万人と推定した。保険料は賃金に連動するので、単価は賃上げとともに物価並みに上がる。
リスクファイナンシング(職域の保険販売)
企業に勤める個人向けに職場で保険を販売する代理店事業。アフラックの商品の比重が大きい。
| 数量保有契約件数(万件・推定) | 価格1万件あたり手数料(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.4 | 1.00 | 3 | 2 |
| 10 年後 中立 | 3.4 | 1.20 | 4 | 2 |
取り方:契約件数の開示が無いため、1件あたりの年間手数料を約1万円とみて約3.4万件と推定した。保険料は名目でゆっくり上がるが、代理店の手数料率は下がりやすい。
少額短期保険
健康年齢で入れる医療保険やシニア向けの死亡保険を売る子会社(2025年に買収)。
| 数量保有契約件数(万件・推定) | 価格1万件あたり保険料収入(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.5 | 0.91 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 7.5 | 1.09 | 8 | 1 |
取り方:保有契約の開示が無いため、1万件あたりの年間保険料を約0.9億円とみて約2.5万件と推定した。期中の買収で通年ではない。
リスクと懸念
AIエージェント代替
カウンセリング、研修、組織の改善の提案は、人の時間で売る仕事だ。生成AIの相談相手と教材がこれを安く置き換えれば、単価と数量の両方が下がる。会社自身も有報でAIによる代替をリスクに挙げている。AIを自社の売り物に変えた売上の開示はまだ無い。
ストレスチェックの単価の下落
ストレスチェックは実施の仕組みとしては差がつきにくく、健康診断の会社や人事ソフトの会社が安く、または無料の機能として付ける。50人未満の事業場への義務化も、払える額の小さい顧客が増える形で、単価を押し下げうる。
GLTDの優位の薄れと大口の離脱
団体の所得補償保険では先駆者だが、普及とともに大手の保険会社や代理店が力を入れ、会社自身が優位の相対化を認める。2026年3月期には大口の顧客との契約が終わり、事業の利益が2割近く減った。
買収とソフト投資の減損
産業保健、栄養指導、少額短期保険の会社を相次いで買い、のれんと顧客の資産は10億円規模になった。ソフトにも毎年7億円前後を投じる。統合や投資が実らなければ、減損で自己資本が削られる。
取引先と情報の管理
職場の保険はアフラックの商品に大きく頼る。また従業員の心身の健康という最も慎重に扱う個人情報を大量に持ち、漏えいが起きれば顧客の信頼を一度に失う。
今後の分かれ目
- AIを使った新しいサービスの売上が開示で年数億円規模に育ったら
- AIが代替でなく売り物になったとみて、やや楽観・楽観の確率を上げる。
- 50人未満の事業場の義務化の施行後、利用者と単価がともに増えたら
- 法の追い風が利益に届いているとみて、中立から上の利用者数を見直す。
- メンタリティマネジメントの利益率が2期続けて12%を下回ったら
- 人の時間の仕事の単価が崩れ始めたとみて、やや悲観に寄せる。
- GLTDでさらに大口の顧客が離れたら
- 保険の手数料の優位が薄れたとみて、就業障がい者支援の前提を下げる。
- 大型の買収や、のれんの減損を発表したら
- 買収の値段と統合の計画を見て、資本の使い方を評価し直す。
見ておくもの
- ストレスチェックの利用者数と契約企業数
- メンタリティマネジメントの利益率
- GLTDの新規と解約
- AIを使ったサービスの売上の開示
- ソフトの償却と本社の費用の推移
倍率と資本コストの決め方
4つのセグメントを利用者数・対象人数・契約件数(実質・推定)×単価(名目)で積み、AIエージェント代替は人の時間で売る部分の単価と数量に主に入れ、kの寿命は表の下限寄り、gは人月0%と保険・法対応の加重で2%とし、確率は悲観側35%にして重ねすぎないようにした。自己資本は今の値+純利益の合計−配当で流した。倍率は正当化PERと1÷kだけで決め、今・過去・同業のPERは使っていない。事務所は賃借だが家賃は小さく、新リース会計基準の影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.2→15.54 倍・やや楽観 PER 12.2→15.17 倍・中立 PER 12.1→14.7 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%+quality 0.75%で8.25%。AIエージェント代替は中立の数量と価格を主に、kの寿命は表の下限寄りに置き、確率とgでは重ねすぎない。買収の失敗の危うさはkに足さず確率で表した。