結論
川崎地質は、地盤の調査と地質の設計を請け負う建設コンサルタントだ。ボーリングと海上調査が得意で、国や自治体が主な顧客になる。
結論から言う。筆者は、10 年後の本質価値は今の時価総額 36 億円をやや下回ると見る。2025 年 11 月期の利益は防衛省向けの大型調査で膨らんだ。その分は繰り返さない。
防衛省は売上の 31%、洋上風力の事業者が 13% を占める。二社で売上の 4 割を超え、案件が途切れれば利益は大きく落ちる。利益の波が大きい会社に、高い倍率は付けにくい。しかも ROE は資本コストに届かない。
救いは海上調査の実力と、公共調査という手堅い土台だ。2025 年の純利益を使えば今の値段は 6 倍の PER に見えるが、平らにならした利益は 4〜5 億円とみる。この水準なら今の時価総額は割安でも割高でもない。売上の大半が公共なので、景気の影響は小さい。会社予想も、2027 年 11 月期は営業利益が 2026 年の半分に戻るとみている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「利益の見え方」で見誤りやすい。2025 年の 6 億円の純利益に今の時価総額を割れば PER は 6 倍弱で、割安に映る。だが、その利益は防衛省の大型調査という繰り返しにくい仕事で膨らんだ。
筆者が重く見るのは、稼いだ利益が資本の効率を上げていない点だ。利益の 8 割が内部に残るのに、ROE は 5% 台と資本コストに届かない。残した利益は額面を下回る価値になる。株主が持ち続けたい会社とは言いにくい。
一方で、安全域は小さくない。純負債はあるが、営業利益は利息の 17 倍あり、公共調査の仕事は急に消えない。悲観でも自己資本の 3 割は残る。大きく負ける形は狭いが、大きく勝つ形も狭い。
結論は「中立で小幅な割高」だ。平らな利益と、配当性向の低さが、価値の天井を決めている。
何で稼ぐ会社か
事業は単一で、建設コンサルタント事業だ。橋、ダム、トンネル、港、上下水道などを作る前に、地盤の強さや地下水を調べ、設計につなげる。売上の約 5 割は運輸施設・上下水道・情報通信向け、2 割強がエネルギー・資源向けだ。
特色は海だ。海上でボーリングを打ち、海底の土の強さを測る技術を持つ。この力で防衛省の大規模な海上土質調査を受け、2025 年 11 月期は防衛省向けの売上が約 39 億円と前期の約 3 倍に増えた。洋上風力の調査では、つがるオフショアエナジーが約 13% の売上先になっている。
陸上は地質調査、防災、道路や上下水道の設計だ。子会社のユニオン・コンサルタントが測量と設計を担う。連結の従業員は 373 人。受注残は 61 億円で、期をまたいで売上に変わる。受注高は 132 億円で、売上を上回った。地質調査は設計の前段にあたるので、公共の工事計画が動けば仕事が増える。
報酬は人の稼働と機械・船の稼働で決まる。入札で取る仕事が多く、価格を自分で決めにくい。景気よりも、国の予算と入札の結果が売上を左右する。
優良さと弱いところ
堀は中程度で、強みは海上調査にある。海の上でボーリングを行うには、専用の作業台船と経験者が要る。他社がすぐにまねられる仕事ではない。ただ、これは案件の取れる年だけ光る強みで、継続的な値決めの力にはならない。
資本の効率は低い。過去 10 年の ROE の中央値は 4% 台で、資本コストに届かない。営業利益率も 2〜5% の間を動き、2023 年 11 月期は 1% だった。2025 年 11 月期の ROE 12% は例外と見るべきだ。
財務は普通。自己資本比率は 44% あるが、売上債権が急に増えて営業のキャッシュフローは赤字に転じた。純負債は 24 億円と前期の 3 倍になった。
経営は配当性向 20% 前後と内部留保の厚みを方針にしている。自社株買いの実績はない。第 6 次中期計画は売上 100 億円・営業利益率 4% を掲げたが、初年度で達成した。それ以上の姿は示されておらず、一過性をどう扱うかが見えにくい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
市場は公共事業の調査・設計で、数量は技術者の数が天井になる。国土強靱化の第 1 次実施中期計画は 2026 年度から 5 年で 20 兆円強を掲げる。老朽化した道路や上下水道の更新、防災の調査は長く続く。需要の確かさは民間より高い。
競合は応用地質、建設技術研究所、中央開発など。川崎地質は規模が小さく、海上調査という狭い得意分野で戦う。応用地質は機器と海外を持ち、規模で上回る。
追い風が二つある。一つは防衛の南西方面の施設整備で、海上土質調査の需要を押し上げた。もう一つは洋上風力で、海底地盤の調査が要る。ただし洋上風力は事業者の撤退や見直しが続き、案件の確かさは低い。
逆風は、AI による設計・積算の省力化だ。ボーリングなど現場の仕事は残るが、解析と報告書づくりの工数は減り、発注側が予定価格を下げる圧力になる。数量は横ばい、価格は物価に届かない程度と見る。公共の予定価格は労務単価を通じて人件費の上昇を追うが、追いつく速さは遅い。人手が足りない業界でもあり、技術者を増やせるかが売上の上限を決める。
資本政策と M&A
還元は安定配当が基本で、配当性向は 20% 前後だ。2025 年 11 月期は年間配当が約 1.3 億円、2026 年 11 月期は約 1.1 億円の予想で、純利益の 1〜2 割にとどまる。自社株買いの実績はなく、利益の大半は内部に残る。
大株主は信託銀行と個人、銀行、生命保険で、支配株主はいない。持ち合いの色が薄い代わりに、株主の発言力も限られる。株主還元を厚くする圧力は、今のところ弱い。
M&A は目立たない。時価総額が小さく、同業が株式を取る対象になりうる。ただし TOB や MBO の発表は見当たらない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
川崎地質は、海に強い数少ない調査会社だ。防衛省は南西方面の施設整備を続けており、海上土質調査は今後も出る。2025 年の防衛向け売上は 39 億円で、前期の 3 倍になった。1 回きりではなく、一段上の需要に入ったとみてよい。海上で土を調べる設備と人を持つ会社は少なく、大型案件を任せられる相手は限られる。
洋上風力は長い追い風だ。事業者の入れ替わりはあっても、国の導入目標は変わっていない。日本は 2040 年までに数十ギガワットの導入を掲げ、海底地盤の調査は着工前に必ず要る。国土強靱化の 20 兆円は陸上の調査も支える。受注高は売上を上回っており、足元の仕事は十分にある。
財務は悪くない。利益が出れば配当を増やせる。2026 年 11 月期の純利益は 7 億円を超える見通しで、会社の計画は初年度で超過達成した。時価総額 36 億円は、平らにならした利益の 8 倍に届かない。海上調査の実績が積み上がれば、次の案件も取りやすくなる。
慎重な見方
利益の太い部分は防衛省一社に乗っている。売上の 31% を一社に頼る会社が、その案件の終わりを織り込まずに評価されるのは危うい。2026 年 11 月期の予想は前倒し計上を含み、2027 年 11 月期の会社予想は利益が半分に戻る。
洋上風力は撤退や延期が続き、案件が出る保証がない。つがるの案件が終われば、13% の売上先も消える。
営業のキャッシュフローは 2025 年に赤字へ転じ、売上債権が膨らんだ。利益は出たが、現金はまだ入っていない。ROE は過去 10 年中 8 年が 5% 以下で、資本コストを稼げた年は少ない。AI による設計の省力化は、陸上の単価を押し下げる。時価総額が小さく、売買も薄いので、悪材料が出た時の下げも大きい。2025 年に受注した大型案件の追加費用が心配されたが、2026 年 3 月に解消したと会社が発表し、利益は前倒しで計上された。それは良い知らせだが、翌年以降の利益の山を先取りしただけとも読める。
どちらに重みを置いたか
海上調査の実力は本物だが、案件の波と顧客の偏りが価値を削る。ROE が資本コストに届かないので、倍率も上げられない。そのため確率は中立と、やや悲観に厚めに置いた。楽観は 5% にとどめた。強気の言い分は筋が通るが、案件の継続を示す開示が受注残以外に乏しい。慎重な言い分は、会社自身の予想が裏づけている。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/11 期)
確率で加重した株価時価総額 7,770 円69 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,033 円9 億円)。 今の値に割り戻すと 4,211 円37 億円、今との差 +4.0%、 期待の年率 +8.1%(資本コスト 8.3%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 16,861 円150 億円 | 1,463 円13 億円 | +352.4% | +16.3% | 916 円8 億円 |
| やや楽観 | 20% | 11,631 円103 億円 | 1,339 円12 億円 | +220.2% | +12.3% | 2,594 円23 億円 |
| 中立 | 40% | 8,854 円79 億円 | 1,204 円11 億円 | +148.3% | +9.5% | 4,023 円36 億円 |
| やや悲観 | 25% | 3,535 円31 億円 | 698 円6 億円 | +4.5% | +0.4% | 1,058 円9 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,755 円16 億円 | 360 円3 億円 | −47.8% | −6.3% | 212 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7,770 円69 億円 | 1,033 円9 億円 | +117.3% | +8.1% | 8,803 円78 億円 |
今の株価時価総額 4,050 円36 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 5% 防衛と洋上風力の大型案件が続き、利益率が 7% を超える 利益 9 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 16,861 円150 億円
防衛の南西方面の施設整備と洋上風力の調査が重なり、海洋部門が今の規模を保つ。川崎地質は海上のボーリング調査の船と人を持つ数少ない会社で、大型案件を続けて取れる。一件ごとの利益率も高いまま残り、海洋の営業利益率は 11% に乗る。
陸上も国土強靱化の予算を背に技術者を増やし、数量は 1.1 倍になる。価格は物価並みの 1.34 倍。全社の営業利益率は 7.5% と、過去の山の 5.7% を超える。これは 2026 年 11 月期の会社予想がすでに 11% を超えている実績に根拠を置く。
純利益は 9 億円台に乗り、還元は方針の範囲で増える。ただし単一の大口顧客に頼る形は変わらず、安定した成長とは言えない。
- 海洋・防衛・洋上風力の調査:数量 110(海洋部門の人員(人、推定))× 価格 6,797(1 人当たりの年間売上(万円))→ 売上 75 億円・営業利益 8 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 11.0%
- 陸上の地質調査・防災・設計:数量 289(陸上部門の人員(人、推定))× 価格 3,633(1 人当たりの年間売上(万円))→ 売上 105 億円・営業利益 5 億円。数量 1.10 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.4% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.0 倍。全体の PER 13.97 倍、時価総額 132 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:防衛の海上調査が毎年のように続き、洋上風力の調査も再開する。さらに陸上の人員も増える。三つがそろう筋書きなので 5% に絞った。
やや楽観 20% 海洋は縮むが高止まりし、陸上が少し伸びる 利益 7 億円 · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 11,631 円103 億円
防衛の大型案件は山を越えるが、基地周辺や離島の調査が続いて海洋の数量は今の 9 割に残る。洋上風力は一部の海域で調査が出る。海洋の営業利益率は 8.5%。
陸上は老朽化対策と防災の調査が堅く、数量が 5% 増える。単価は物価にやや届かず 1.32 倍。営業利益率は 4.2%。
全社の営業利益は 10 億円弱。2021 年 11 月期の 5.7% を上回る 6% の利益率になるが、海洋の高い利益率が根拠で、陸上は変わらない。この筋書きでも、売上の波と顧客の偏りは残る。受注が積み上がり、配当も少しずつ増える姿だが、資本の効率が資本コストに届かない点は変わらない。
- 海洋・防衛・洋上風力の調査:数量 99.0(海洋部門の人員(人、推定))× 価格 6,797(1 人当たりの年間売上(万円))→ 売上 67 億円・営業利益 6 億円。数量 0.90 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 8.5%
- 陸上の地質調査・防災・設計:数量 276(陸上部門の人員(人、推定))× 価格 3,579(1 人当たりの年間売上(万円))→ 売上 99 億円・営業利益 4 億円。数量 1.05 倍・価格 1.32 倍・営業利益率 4.2%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.1% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.7 倍。全体の PER 12.67 倍、時価総額 88 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:防衛の大型案件は一巡しても調査需要が残り、陸上は公共予算で小幅に伸びる。中立の一段上の筋書きとして 20% を置いた。
中立 40% 大型案件が一巡し、利益は 2021 年 11 月期並みに落ち着く 利益 5 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 8,854 円79 億円
防衛省向けの大型案件が一巡し、海洋の数量は 2025 年 11 月期の 8 割に戻る。それでも 2024 年 11 月期の約 2 倍の水準で、海洋調査の実力は残る。営業利益率は 7%。
陸上は人員が横ばい。国土強靱化で仕事は足りるが、技術者の数が天井になる。価格は公共の積算が人件費の上昇を追うため 1.30 倍。営業利益率は 3.5% と、過去の山の 5.7% の下に置いた。
全社の売上は約 150 億円、営業利益は 7 億円強、純利益は 5 億円。ROE は 5% 台で資本コストに届かない。利益は積み上がるが、資本の効率は上がらない。
- 海洋・防衛・洋上風力の調査:数量 88.0(海洋部門の人員(人、推定))× 価格 6,797(1 人当たりの年間売上(万円))→ 売上 60 億円・営業利益 4 億円。数量 0.80 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 7.0%
- 陸上の地質調査・防災・設計:数量 263(陸上部門の人員(人、推定))× 価格 3,524(1 人当たりの年間売上(万円))→ 売上 93 億円・営業利益 3 億円。数量 1.00 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 3.5%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 63 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2025 年の防衛案件が特殊だったという見方が妥当で、2026 年の会社予想も前倒し計上を含む。調査の需要は堅いが数量は戻る。この筋書きを中心の 40% とした。
やや悲観 25% 海洋の大型案件が途切れ、積算の省力化で単価が下がる 利益 2 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 3,535 円31 億円
洋上風力の事業者が撤退や延期を重ね、防衛の大型調査も次が出ない。海洋の数量は半分強に縮み、価格も 1.25 倍にとどまる。営業利益率は 4.5%。
陸上は、国が設計・積算に AI エージェントを入れて予定価格を下げ、受注単価が物価に追いつかない。数量は 1 割減、価格は 1.20 倍。営業利益率は 2%。
営業利益は 3 億円強まで落ち、2023 年 11 月期のような薄利に戻る。借入の利払いも 3.5% へ上がり、純利益は 2 億円ほどになる。配当は据え置くのが精いっぱいだ。技術者は減らせないので、人件費の上昇が利益率を削る。
- 海洋・防衛・洋上風力の調査:数量 61.0(海洋部門の人員(人、推定))× 価格 6,341(1 人当たりの年間売上(万円))→ 売上 38 億円・営業利益 2 億円。数量 0.55 倍・価格 1.25 倍・営業利益率 4.5%
- 陸上の地質調査・防災・設計:数量 237(陸上部門の人員(人、推定))× 価格 3,253(1 人当たりの年間売上(万円))→ 売上 77 億円・営業利益 2 億円。数量 0.90 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 2.0%
倍率:ROE 2.8% が k を大きく下回る。上限 1÷k = 12.1 倍に ROE の低さと案件の途切れを反映し、上限の 62% の 7.5 倍。
確率:防衛と洋上風力の案件が山を越えて戻らず、設計・積算の自動化が公共の単価を押し下げる。調査の需要は残るので 25% にとどめた。
悲観 10% 単一顧客を失い、陸上も値下げで赤字に近づく 利益 0 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,755 円16 億円
防衛省向けの海上調査が競合の台頭や方針の変更で取れなくなり、洋上風力もほぼ消える。海洋の数量は 3 分の 1 まで縮み、営業利益率は 2%。
陸上は AI エージェントによる設計・積算の自動化と入札の値下げで、数量は 25% 減、価格は物価の半分も取れない 1.05 倍。営業利益はゼロに近づく。
こうなると稼ぐ力では値が付かない。調査機器、土地・建物、売上債権の回収で得られる分を床に置く。公共の仕事は急には消えないので清算までは行かず、小さな会社として続く形だ。技術者を減らし、船や機械を手放して固定費を落とすが、そこまでの縮小は利益に間に合わない。自己資本は減損で目減りし、配当も大きく削られる。
- 海洋・防衛・洋上風力の調査:数量 38.0(海洋部門の人員(人、推定))× 価格 5,580(1 人当たりの年間売上(万円))→ 売上 22 億円・営業利益 0 億円。数量 0.35 倍・価格 1.10 倍・営業利益率 2.0%
- 陸上の地質調査・防災・設計:数量 197(陸上部門の人員(人、推定))× 価格 2,847(1 人当たりの年間売上(万円))→ 売上 56 億円・営業利益 0 億円。数量 0.75 倍・価格 1.05 倍・営業利益率 0.0%
倍率:稼ぐ力は崩れている。床は今の自己資本 52 億円に対する PBR 0.30 倍。借入 36 億円を返したあとに残る調査機器・不動産・債権の回収見込みを、自己資本の約 3 割と推定した。稼ぐ力がほぼ無いため、EV ÷ 営業利益の倍率は意味を持たず、純負債 24 億円は床の側で差し引いて見ている。
確率:防衛省向けは三割を占める一社集中で、失えば穴は大きい。公共の入札市場は退出が少ないため 10% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
海洋・防衛・洋上風力の調査
海上ボーリング、海底地盤の調査。防衛省の施設整備と洋上風力の事業者向け。
| 数量海洋部門の人員(人、推定) | 価格1 人当たりの年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 110 | 5,073 | 56 | 5 |
| 10 年後 中立 | 88.0 | 6,797 | 60 | 4 |
取り方:有報は単一セグメントで、防衛省向け約 39.2 億円とつがるオフショアエナジー約 16.6 億円(売上の 13.1%)を合わせて海洋と推定し、売上 55.8 億円とした。連結 373 人のうち海洋に 110 人を充てたのは推定。営業利益 5.0 億円も推定(全社 6.65 億円を、大型案件の利益率が高いとして配分)。先の価格は中立で物価 1.34 倍。AI エージェント代替の型:現場の体(船・機械)が中心で、事務部分は小さく、価格は上げ幅をほぼ物価並みに置いた。
陸上の地質調査・防災・設計
道路・上下水道・河川・防災の地質調査と設計。国・自治体向け。
| 数量陸上部門の人員(人、推定) | 価格1 人当たりの年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 263 | 2,711 | 71 | 2 |
| 10 年後 中立 | 263 | 3,524 | 93 | 3 |
取り方:全社の売上 127.1 億円から海洋 55.8 億円を引いた 71.3 億円を陸上とし、残りの 263 人で割って 1 人 2,711 万円とした。人員の分け方は推定。AI エージェント代替の型:建設コンサルの許認可業務と現場調査が中心で、解析・報告書づくりの事務部分(作業の 2〜3 割と仮定)だけが人月型で縮む。数量は中立で 1.0 倍、価格は物価に届かない 1.30 倍。AI エージェントを売り物にした売上の開示は確認できない。
リスクと懸念
防衛省一社への集中
防衛省は売上の 31%、2025 年 11 月期の利益を大きく押し上げた。方針の変更や競合の台頭で案件が出なくなれば、利益の半分以上が消える。会社予想が 2027 年 11 月期に半分近く戻る理由もここにある。
洋上風力の案件の不確かさ
つがるオフショアエナジーは売上の 13%。国内の洋上風力は事業者の撤退や見直しが続き、調査の発注が止まりうる。海洋の数量を中立で 2 割縮めたのは、この不確かさを入れたため。
利益が現金にならない
2025 年 11 月期は売上債権が急増し、営業のキャッシュフローは約 15 億円の赤字になった。純負債は 24 億円へ増え、借り換えで金利が 3.5% に上がると利払いが利益を削る。
AI エージェント代替
設計・積算・報告書づくりの工数が減り、発注側が予定価格を下げる圧力になる。現場調査は残るので、中立では陸上の数量 1.0 倍・価格 1.30 倍と、物価に届かない形で入れた。
技術者の確保と小規模さ
連結 373 人の小さな会社で、技術者の採用と定着が成長の天井になる。大型案件では外注や人手の逼迫が原価を押し上げ、利益率を下げる。
資本効率の低さ
利益の 8 割を内部に残す一方で ROE は 5% 台と資本コスト未満。残した利益が価値を生まず、ためるほど倍率の根拠が薄れる。
今後の分かれ目
- 防衛省向けの海上調査が次の期も大型で出る
- 海洋の数量が高止まりし、楽観の確率を引き上げる。受注残が 100 億円を超えるかが目安。
- 会社が自社株買いか配当性向 40% 以上を示す
- 残した利益が株主に戻る形になり、余った現金の戻り方を 1.0 へ上げる余地が出る。
- 洋上風力の事業者が撤退を発表する
- 海洋の売上の 13% が消え、やや悲観の筋書きに重みが移る。
- 売上債権が回収され、営業のキャッシュフローが黒字に戻る
- 利益の質への懸念が和らぎ、純負債の増加が一過性と確認できる。
- 国が設計・積算に AI を導入し、予定価格の引き下げを決める
- 陸上の価格が物価に届かなくなり、やや悲観の確率が上がる。
見ておくもの
- 受注高と受注残(特に防衛省・洋上風力向け)
- 営業のキャッシュフローと売上債権の回転
- 営業利益率(陸上の 3.5% 超、全社の 5.7% 超が続くか)
- 純負債と借入金利
- 配当性向と自社株買いの有無
倍率と資本コストの決め方
倍率は式だけで置いた。基本の k 7.5% に quality +0.75% を足して 8.25%。ROE が k に届かない筋書きでは PER の上限は 1÷k = 12.1 倍で、ROE の低さと案件の波を踏まえて上限の 6〜7 割に置いた。今の PER や同業の倍率は使っていない。利益は 2025 年 11 月期の 6 億円でなく、案件の一巡を入れた 5 億円で見た。2028 年 11 月期から新リース会計基準で BS が変わるが、10 年後の数字は今と同じ形にそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→13.97 倍・やや楽観 PER 8.5→12.67 倍・中立 PER 8→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。