結論
エブリーはレシピ動画の『デリッシュキッチン』を起点に、食品メーカーの広告費とスーパーの販促費をつなぐ会社である。筆者の結論は『やや割高』だ。店頭接点と購買データには価値があるが、広告制作を人工知能が代替する十年に、今の利益率を持続させる証拠はまだ少ない。
同社は2026年6月期に売上50.2億円、営業利益3.2億円を計上した。広告主635社のうち、年間出稿額が1,000万円以上のロイヤル顧客は80社で、売上の大半を担う。約3,100万という月間利用者指標にはアプリとウェブの重複があり、人数そのものを競争上の堀と見てはならない。それより、食品卸との提携で確保した店頭サイネージ約1万1,300台が、ウェブ広告だけの競合にはない接点だ。
反面、2024年6月期は大幅赤字で、黒字実績はまだ短い。2026年の純利益には繰延税金資産の計上益が含まれ、営業キャッシュフローのほうが小さい。2027年6月期は営業利益5.3億円を目指すが、KDDI関連の受託取引が縮むため、広告主向け事業の増収が必要になる。
十年後の中立は、店頭広告が伸びても顧客単価に制作工数の値下げ圧力がかかり、利益が足踏みする姿である。資本コストで現在に引き戻した五つの筋書きの加重価値は約34億円となり、添付株数からの時価総額約46億円を約25%下回る。好材料を否定する結論ではない。広告主の継続率、増分の投資利回り、蓄えた現金の還元が見えるまでは、株主の安全域を厚く取るべきだという結論である。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の目では、料理動画の人気より、一円を投じてどれだけ現金が増えるかが核心となる。エブリーの固定資産は軽く、動画とデータを再利用して出稿社数を増やせれば、限界利益が大きく伸びる。その意味で、ロイヤル顧客の増加と食品卸経由の店頭網は見逃せない。単発の広告代理業から、広告主が毎年予算を付ける販促インフラに変われるなら、稼ぐ力は大きく違ってくる。
だが、店頭で測定できる購買の増分と、広告主が支払う手数料の増分は同じではない。広告制作は生成AIで安くなり、動画の見栄えだけでは値決め力を失う。店頭の機器とPOSデータを小売や卸が握る以上、データの受け渡しが一社に固定されたものでもない。媒体の規模と永続的な独占を取り違えることはできない。
次に見るのは、利益が株主のものになる道筋である。黒字化までの損失は大きく、2026年の利益には税効果という一過性の要因が混ざる。過去に利益を配ってきた証拠はなく、支配力のある株主と新株予約権が少数株主の取り分を左右する。現金の厚さは破綻リスクを下げるが、現金がそのまま時価総額に上乗せされるとは考えない。
筆者が望むのは、宣伝費を投じれば新たなロイヤル顧客が増え、その顧客が翌年も出稿し、利益の伸びが株数の増加を上回る循環である。その証拠が三、四期積み重なれば、評価を見直す余地は大きい。今の段階では、良い事業になる可能性に先払いするより、不確実さに見合う安全域を確保する判断が優先される。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ頭のMarketing Solutionは、2026年6月期に40.32億円を売り上げた。デリッシュキッチンのアプリ、ウェブ、SNS、スーパーの店頭サイネージで広告を配信し、購買情報を使って効果を検証する。相手は味の素などの食品・飲料メーカーと、小売店に販促施策を提案する企業である。広告代理店を介した配信や制作受託も含まれ、全額が自社媒体の高利益率な広告枠収入ではない。
会社は年間出稿額1,000万円以上の顧客をロイヤル顧客と定義する。80社からの売上が32.70億円、残る555社が約7.62億円である。前者の一社当たり年額は約4,088万円、後者は約137万円となる。この一社当たり売上は純粋な広告単価ではなく、ブランド数、制作本数、出稿面、購買分析の組み合わせを含む。
伊藤忠食品と加藤産業との提携は、商品の流通網と店頭売り場に入るための重要な入口だ。店頭には約1万1,300台のデジタルサイネージがあり、小売向け『retail HUB』ではアプリやネットスーパーのシステムも扱う。ただし設置台数、広告配信売上、開発保守売上の個別内訳は非開示である。小売DXがすべて解約困難な定額課金だと決めつけない。
Consumerの売上は4.79億円で、動画アプリの有料会員と冷凍宅食『ミールズ』などから生まれる。課金会員数も商品別単価も公表されていないため、数量は月額課金に換算した参考値であり、実会員数ではない。その他の5.13億円はライブコマース運営や個別の開発・制作受託であり、2026年9月に終了するKDDI系の共同運営が大きい。2027年6月期のその他売上予想は0.60億円まで下がる。
会計上はメディアプラットフォームの単一報告セグメントである。各事業の営業利益は開示されないため、この分析では広告主の規模とAI代替の型で仮配分し、共通の人件費、企画開発費、オフィス費を別に見る。本社の年間賃借料は約2.96億円で、軽資産の会社でも固定費の重さは消えない。
優良さと弱いところ
最大の強みは、料理を考える時点からスーパーの棚前まで、同じ食品の購買過程をつなげられることである。管理栄養士監修などのレシピは5万7,000本を超え、アプリ内の平均評価は5点中4.4と会社は開示する。伊藤忠食品、加藤産業という卸の協力があれば、小規模な動画媒体には難しい店頭展開も進められる。
競争力は顧客数にも表れている。ロイヤル顧客は2024年の42社から2026年の80社に増えた。しかし、これは継続契約の解約率を意味しない。広告主は毎年予算を見直すため、契約更改に年単位の移行が必要か、値上げが通るか、同じ顧客が何年出稿するかは別の立証が要る。現在の開示からは、強い堀と断定できない。
独自のレシピ閲覧と店頭購買の組み合わせは、単なる生成AIには模倣しにくい。もっともPOSデータの支配者は小売側にあり、配信面を持つ卸との契約も永久の専有権ではない。広告素材の制作・運用、食トレンド分析、操作画面中心の小売支援はAIエージェントに代替されうる。『データがあるから安全』と全売上に同じ評価を与えるのは危険だ。
2024年の営業赤字6.4億円は、2026年に黒字3.2億円へ改善した。だが同年の純利益4.2億円には約1.09億円の繰延税金資産計上が効いている。営業キャッシュフローは2.92億円で、稼ぎのすべてが現金化したわけではない。追加の広告投資や買収から資本コストを超える増分ROICを得られるかは、公開後の数期を追わないと判断しにくい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
追い風は、食品販促費がテレビや紙の広告から、購入結果を追跡できる媒体に移ることだ。電通による2025年の国内インターネット広告費は4兆459億円と総広告費の過半を占める。CARTA HOLDINGSの調査では、2025年のリテールメディア広告費は6,066億円で、そのうち店舗事業者の広告費は830億円、店頭サイネージは210億円である。店舗分は2029年に1,939億円、サイネージ分は350億円に広がる予想だ。
エブリー自身は食品・飲料大手100社の広告宣伝費と販促費を約2.2兆円と見積もり、そのデジタル化可能な市場を約5,000億円と示す。直近のMarketing Solution売上40.32億円は、後者に対して単純計算で約0.8%に当たる。ただし市場は広告主の支出総額で、同社売上には制作やシステム開発も入るため、厳密な市場シェアではない。会社が示す1,000億円の標的市場も、達成を約束した売上目標ではない。
競争相手には、レシピ動画のクラシルとクックパッド、広告配信のGoogle・Meta・LINEヤフー、店舗データを握る小売自身がいる。クラシルは関連サービスを含めた月間利用者約3,600万、小売提携店舗約3万7,000店を開示する。エブリーの月間利用者3,100万は重複除去前であり、相手の店舗数と自社のサイネージ台数も単位が違う。これらから利用者シェアや店頭広告シェアを断定しない。
十年の分かれ目は広告支出の総量ではなく、その支出を誰が受け取るかである。料理の検索は生成AIの回答に吸収され、広告の企画、制作、配信先選定はAIエージェントが低コストでこなせるようになる。逆に、実店舗の売上上昇を測れる広告面は価値を保ちやすい。食品表示・個人情報保護の規制が厳しくなれば、購買データの共同利用には同意管理や安全対策の追加費用も生じる。成熟した国内人口に対し、広告主の数が際限なく増える前提は採らない。
資本政策と M&A
財務には余裕がある。2026年6月期末の現預金18.24億円に対して長期借入金は3.00億円で、純現金は約15.24億円だ。2026年8月の公募と9月の第三者割当による払込額は合計約4.18億円と見積もられ、上場後の自己資本は約21.3億円を起点に考える。2026年には長期借入金を約2.02億円返済した。
会社が公表する2027年6月期の計画は、売上58.54億円、営業利益5.30億円、純利益4.85億円である。上場時の成長計画には時価総額100億円以上を目指す意向があるが、十年後の売上・ROE・利益額の確約ではない。2026年の配当実績も2027年の配当予想もゼロであり、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額についての数字の約束はない。
買収は2023年のネットスーパー向けシステム事業、2024年の小売アプリ向けシステム事業の譲受が中心である。小売との接点を増やす狙いは理解できるが、取得額に対する投資利回りの実績は十分に見えない。直近の上位10株主は88.38%を保有し、過去の配当・自社株買い実績もない。蓄えた余剰現金が少数株主に戻る価値は帳簿の半分で評価し、還元に転じた筋書きだけ将来の配当を認める。未行使の新株予約権による希薄化も、好調な筋書きでは無視できない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
食は景気が悪くなっても消えず、メーカーは商品の売れ行きを上げるための販促費を支払い続ける。エブリーは料理を考える消費者とスーパーの売り場の両方に接点を持ち、閲覧履歴から店頭購買まで追える。デリッシュキッチンの5万7,000本超のレシピ、約1万1,300台のサイネージ、伊藤忠食品と加藤産業の卸網は、単なる広告制作会社にない土台だ。販促効果を数字で示せば、テレビからの予算の移動を吸収できる。
ロイヤル顧客が42社から80社へ増えた二年間は、複数ブランドへの横展開が始まった証拠でもある。2027年の会社計画でも主力事業は三割超の増収を目指す。広告主の数を増やすだけでなく、一社から動画、SNS、サイネージ、購買分析をまとめて受注できれば、同じ営業担当者が獲得する売上を増やせる。固定費の伸びを売上の伸びより抑えられれば、営業利益率には大きな上振れ余地がある。
生成AIは媒体来訪を奪うが、食の好みと購買結果という独自データを持つ会社も、顧客の意思決定に役立つ技術として使える。2026年10月には食トレンドデータのAIアシスタントと外部接続機能を公開した。これ自体の売上実績はまだ公表されていないため、新しいAI収益を先取りしなくても、既存の広告主の離反を防ぐ手段にはなりうる。
二つの食品卸との契約は、サイネージの設置と保守を分担する関係である。小売アプリとネットスーパーも販路に入り込めば、単発の動画案件を越えた付き合いになる。買収に大金を使わず既存網を拡張し、やがて株主還元に転じるなら、十年後の企業価値は現在を大きく上回りうる。
慎重な見方
今の売上の八割は広告主向けだが、そのすべてが自社媒体の広告枠ではない。クリエーティブ制作、広告運用、トレンド分析、システム受託は、企業のAIエージェントが引き受けやすい。広告主が動画制作や媒体買い付けを内製化したとき、出稿社数は保てても一件当たりの手数料が減る。レシピの答えが検索結果やAI対話に直接表示されるようになれば、ウェブへの来訪も減りうる。
同社が示す月間利用者数はアプリとウェブの重複を含む。その人数を利益率の高い会員数と誤解してはいけない。競合クラシルにも大きな利用者基盤と小売提携網があり、Google、Meta、Amazon、LINEヤフーは広告主の予算を先に押さえる。卸と共同で持つ売り場の広告面は有利でも、媒体の運用権やPOSデータの完全な独占ではない。
過去の収益力も十分に検証されていない。2024年の営業赤字6.4億円から二年後に黒字化したが、2026年の営業利益は3.2億円にすぎない。純利益がこれを上回ったのは一部に税効果があるためだ。さらにKDDI関連のライブコマース共同運営が2026年9月に終わり、その他売上は翌期に大きく減る見込みである。主力事業がつまずけば、販管費と賃料だけが先に残る。
上場後の株主にとっては、稼いだ利益が分配されるかも未知数だ。過去に配当も自社株買いもなく、上位10株主に所有が集中する。好況時にはストックオプションの行使で株数が増える。売上が伸びても、株主の取り分と収益の持続が同時に証明されなければ、高い評価を維持できない。
どちらに重みを置いたか
店頭と食品卸を結ぶ仕組みには他社が容易に再現できない部分がある。それでも、広告制作・分析のAIエージェント代替と、実際の解約率が非開示であることを踏まえれば、十年先の利益を強く信じるのは早い。確率は楽観側27%、中立29%、悲観側44%とした。下に厚いのはAIを確率でもう一度差し引くためではなく、黒字実績が短いこと、KDDI案件の終了、卸への依存、未還元の現金と希薄化の不確実性が残るためだ。中立の終点で事業が存続しても、現在価値には時間と還元の不足が効く。株主価値の加重平均は約34億円で、現状には十分な安全域がない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 355 円73 億円(+ 還元の換算額還元の合計 10 円2 億円)。 今の値に割り戻すと 167 円34 億円、今との差 −16.0%、 期待の年率 +6.3%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 1,376 円282 億円 | 54 円11 億円 | +618.2% | +22.6% | 129 円26 億円 |
| やや楽観 | 18% | 619 円127 億円 | 27 円6 億円 | +224.3% | +12.9% | 116 円24 億円 |
| 中立 | 29% | 261 円53 億円 | 0 円0 億円 | +31.0% | +2.7% | 76 円16 億円 |
| やや悲観 | 27% | 102 円21 億円 | 0 円0 億円 | −48.5% | −6.4% | 28 円6 億円 |
| 悲観 | 17% | 98 円20 億円 | 0 円0 億円 | −51.0% | −6.9% | 17 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 355 円73 億円 | 10 円2 億円 | +83.2% | +6.3% | 365 円75 億円 |
今の株価時価総額 199 円41 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 店頭データを軸に全国広告主の必需品へ 利益 22 億円 · PER 13.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,376 円282 億円
食品メーカーの販促費が購買データ付きの店頭広告へ大きく移る。伊藤忠食品と加藤産業の流通網から提携スーパーが広がり、デリッシュキッチンの店頭サイネージは約4万5,000台に拡大する。実際に商品が売れたかを確認できることが、GoogleやMetaの広告枠だけでは得にくい差別化となる。ロイヤル顧客は80社から220社へ増え、一社の複数ブランドを継続して扱う。
広告企画や制作そのものはAIエージェントで安くなるが、店舗の広告面と購買実績の利用権を守り、値下がりを多面的な出稿で補う。クラシルとの利用者獲得競争にも耐え、小売アプリと会員事業は黒字に転じる。直販営業の生産性が高まり、全社の営業利益率は二割に近づく。AIアシスタントは顧客維持に役立つが、金額が開示されていない新規AI商品売上は織り込まない。
経営陣は大型の高値買収を避け、営業で得た現金の一部を還元し始める。新株予約権の多くは業績拡大に伴って行使され、既存株主の取り分は薄まるものの、残る利益の伸びがそれを上回る。十年後にも成長の余地が残るが、機器の所有権や小売のPOS権限まで独占したとは考えない。
- Marketing Solution:ロイヤル広告主:数量 220(年間出稿額1,000万円以上の取引先企業数(社・実質))× 価格 0.75(大口取引先一社の年間平均売上(億円・名目、複数ブランドと提供サービス数を含む))→ 売上 165 億円・営業利益 33 億円。220社×年7,500万円。店頭広告と購買分析の追加出稿で一社取引額を拡大。
- Marketing Solution:小口広告・制作運用:数量 500(ロイヤル基準に満たない広告取引先企業数(社・実質))× 価格 0.02(小口取引先一社の年間平均売上(億円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。人月型の小口制作は縮むが、他社から乗り換える広告主を獲得。
- Consumer:有料アプリ・冷凍食:数量 10.0(年間課金・購買の月額480円サブスク換算(万人年・推定、実会員数ではない))× 価格 0.74(換算数量1万人年当たり売上(億円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。推定課金当量10万人年、継続課金と宅食の単価上昇。
- その他:KDDI関連の終了案件:数量 0.0(終了する大型共同運営契約の換算件数(件・実質))× 価格 4.53(大型共同運営契約一件の年間換算売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。2026年9月の契約終了を反映し、再契約を想定しない。
- その他:継続小口受託・保守:数量 20.0(継続する小規模受託案件数(件・実質、モデル上の代理件数))× 価格 0.04(継続小口受託一件当たり年額(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AI活用で人月型の採算を改善できた場合だけ維持。
倍率:k8.25%、g_long1%、普通の堀で超過収益の残存率1/2。2036年自己資本126.3億円から余剰現金48億円を外し、税後利息0.672億円を純利益22.4億円から除いた事業ROEは27.75%。RONIC18.0%から(1−g/RONIC)/(k−g)=13.03倍。余剰現金は支配株主の還元実績不足を踏まえ0.5で足す。現在や過去のPERを根拠としない。
確率:卸との提携が全国店舗へ広がり、販促の効果測定が広告予算の必須条件になる上位筋。2026年の大口80社から220社への増加には連続した大型受注が必要で、実現確率は一割未満に抑える。
やや楽観 18% 大手食品メーカーへの横展開が着実に進む 利益 10 億円 · PER 12.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 619 円127 億円
小売の店頭広告費が拡大し、同社の設置サイネージは約3万台になる。食品メーカーが動画、SNS、サイネージ、購買分析をまとめて発注する習慣が定着するが、販路ごとの競合は続く。ロイヤル顧客は150社に増え、年当たりの平均取引額も伸びる。海外大手プラットフォームが広告の認知領域を握る中、エブリーは国内の実店舗で実売を示す役割に集中する。
生成AIの導入で制作・配信業務の単価は下がり、小口受託の客数は減る。もっとも、大口顧客の複数ブランドへの販売が減少を上回る。会員課金と宅食は規模を保てるが、価格競争が強く大きな収益柱にはならない。小売アプリの保守費用を抑えながら、広告主の増加に見合う営業人員だけを増やす。
2027年の会社計画をおおむね達成した後は、高い成長率を維持するより、既存顧客の広告予算を積み重ねる段階に移る。経営陣が高値の大型買収を避け、十年間で一定の株主還元を始める。株価上昇に伴ってストックオプションの行使が進み、既存株主の持分は薄まるが、事業の利益増加はそれを十分に補う。
- Marketing Solution:ロイヤル広告主:数量 150(年間出稿額1,000万円以上の取引先企業数(社・実質))× 価格 0.62(大口取引先一社の年間平均売上(億円・名目、複数ブランドと提供サービス数を含む))→ 売上 93 億円・営業利益 16 億円。150社×年6,200万円。販促媒体が増え、ブランド横展開が進む。
- Marketing Solution:小口広告・制作運用:数量 455(ロイヤル基準に満たない広告取引先企業数(社・実質))× 価格 0.02(小口取引先一社の年間平均売上(億円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。制作運用の客数は今より少なく、単価も物価未満。
- Consumer:有料アプリ・冷凍食:数量 9.0(年間課金・購買の月額480円サブスク換算(万人年・推定、実会員数ではない))× 価格 0.70(換算数量1万人年当たり売上(億円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。会員・物販は維持するが拡大費用で損益均衡。
- その他:KDDI関連の終了案件:数量 0.0(終了する大型共同運営契約の換算件数(件・実質))× 価格 4.53(大型共同運営契約一件の年間換算売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。終了契約を復活させない。
- その他:継続小口受託・保守:数量 17.0(継続する小規模受託案件数(件・実質、モデル上の代理件数))× 価格 0.04(継続小口受託一件当たり年額(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。受託件数を抑え、利益率はゼロ。
倍率:余剰現金34億円と税後受取利息0.476億円を分ける。事業の利益9.544億円÷事業自己資本57.3億円=ROE16.66%。k8.25%、g_long1%、普通の堀の残存率1/2からRONIC12.45%、正当化PER12.6855倍。余剰現金は株主への戻り方0.5を掛けた17億円。
確率:大口顧客の拡大と実店舗媒体の需要には根拠があるが、10年連続の継続出稿と固定費率の低下が必要で、中立より上の確率を抑制する。
中立 29% 店頭販促は残るがAIと競争で利益は伸び悩む 利益 4 億円 · PER 12.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 261 円53 億円
2027年には会社の予想どおり大口広告主が増える。しかし、その後はレシピ検索の一部が対話型AIへ移り、ウェブ由来の広告到達が鈍る。店頭サイネージは約2万台まで増えるが、卸との収益配分もあり、台数がそのまま利益率を引き上げるわけではない。ロイヤル顧客は105社にとどまり、販促を複数面で受けることで年間取引額を維持する。
小口の広告制作・運用はAIエージェントの内製化に押され、取引先は390社まで減る。小売システムの個別保守受託も縮む。会員向けの献立提案は無料AIと競合するため、Consumerは費用負担が残り赤字になる。一方で、購買データと店頭への接点は残り、主力のマーケティングがその赤字を埋める。
2026年の繰延税金資産計上のような一時利益は繰り返さない。増えた利益は研究開発や営業人員、運転資本に回され、過去に実績のない恒常的な配当はまだ始まらない。十年間の留保で自己資本は厚くなるが、追加の資本が増分の高い利回りを生むとは限らない。会社として存続しながら、株主の投じた金額に対する稼ぎの伸びは限定的となる。
- Marketing Solution:ロイヤル広告主:数量 105(年間出稿額1,000万円以上の取引先企業数(社・実質))× 価格 0.50(大口取引先一社の年間平均売上(億円・名目、複数ブランドと提供サービス数を含む))→ 売上 53 億円・営業利益 7 億円。105社×年5,000万円。大口化と顧客離反が拮抗。物価1.34倍より低い単価成長。
- Marketing Solution:小口広告・制作運用:数量 390(ロイヤル基準に満たない広告取引先企業数(社・実質))× 価格 0.01(小口取引先一社の年間平均売上(億円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。工数型の数量は555社の70.3%、価格は現在の約1.06倍のみ。
- Consumer:有料アプリ・冷凍食:数量 7.5(年間課金・購買の月額480円サブスク換算(万人年・推定、実会員数ではない))× 価格 0.65(換算数量1万人年当たり売上(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。有料換算利用は減少。名目単価は物価未満の1.13倍。
- その他:KDDI関連の終了案件:数量 0.0(終了する大型共同運営契約の換算件数(件・実質))× 価格 4.53(大型共同運営契約一件の年間換算売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。2026年9月終了の大型受託をゼロ計上。
- その他:継続小口受託・保守:数量 13.0(継続する小規模受託案件数(件・実質、モデル上の代理件数))× 価格 0.03(継続小口受託一件当たり年額(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。人月・工数型の案件数は現在20件の65%、単価は約1.1倍。
倍率:k8.25%、g_long1%、普通の堀。余剰現金24億円に対応する税後利息0.336億円を差し引き、事業利益3.424億円÷事業自己資本39.37億円=ROE8.70%。RONIC8.47%より正当化PER=(1−0.01/0.0847)/(0.0825−0.01)=12.165倍。PERを過去株価に合わせて低くせず上限を採用し、余剰現金の戻り方0.5による12億円を足す。
確率:2027年の主力事業増収見通しと現行の店頭網を尊重しながら、2028年以降はロイヤル顧客の獲得速度が落ちる中心像。確率の谷が浅い予想は避ける。
やや悲観 27% 広告主の選別が進み小口事業は赤字化 利益 1 億円 · PBR 1.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 102 円21 億円
AIの普及で食品メーカーが広告制作と運用を内製化し、媒体選定も自動化する。GoogleやMetaなどが購買データの活用を深め、広告主が店頭媒体に割く予算も厳しく選別される。伊藤忠食品と加藤産業の提携は続くものの、新しい店舗へのサイネージ展開は伸びず、稼働する画面は一万台台前半にとどまる。
ロイヤル顧客は75社へ後退する。既存顧客には食品の販促という需要が残るため壊滅的な撤退にはならないが、制作費と手数料への値下げ圧力が続く。小口取引先も330社まで減り、Consumerでは無料のAI献立作成が課金の価値を削る。2026年9月に終わるKDDI関連の大型案件が戻ることもない。
広告主向けの大口業務は黒字を守るが、小口の受託とConsumerの赤字を十分に埋められない。本社の賃貸借契約とデータ管理費用は売上に比例して落ちず、全社の利益はかろうじて黒字にとどまる。経営は運転資金を守るため配当と自社株買いを控え、保有現金と回収可能な債権が少数株主にとっての主要な価値となる。
- Marketing Solution:ロイヤル広告主:数量 75.0(年間出稿額1,000万円以上の取引先企業数(社・実質))× 価格 0.43(大口取引先一社の年間平均売上(億円・名目、複数ブランドと提供サービス数を含む))→ 売上 32 億円・営業利益 3 億円。75社×年4,300万円。店頭枠は存続、制作費は削られる。
- Marketing Solution:小口広告・制作運用:数量 330(ロイヤル基準に満たない広告取引先企業数(社・実質))× 価格 0.01(小口取引先一社の年間平均売上(億円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。人月型の取引先数は現在の59%、単価も低下。
- Consumer:有料アプリ・冷凍食:数量 5.5(年間課金・購買の月額480円サブスク換算(万人年・推定、実会員数ではない))× 価格 0.60(換算数量1万人年当たり売上(億円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。無料AIへの流出で有料換算客数が減る。
- その他:KDDI関連の終了案件:数量 0.0(終了する大型共同運営契約の換算件数(件・実質))× 価格 4.53(大型共同運営契約一件の年間換算売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。既知の契約終了を反映。
- その他:継続小口受託・保守:数量 10.0(継続する小規模受託案件数(件・実質、モデル上の代理件数))× 価格 0.03(継続小口受託一件当たり年額(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。受託の単価下落と工数削減で採算が悪化。
倍率:将来ROEは0.56÷45.3=1.24%と資本コスト8.25%を大きく下回る。純利益を高倍率で資本化せず、2026年の自己資本17.1億円を基準に、純現金と換金可能債権の税後評価21.0億円を価値の床とする。PBR1.22807×現在の自己資本17.1億円=21.0億円。2036年に積み上がる自己資本45.3億円には掛けない。
確率:動画広告の販売競争が激化し、制作と運用をAIで内製する広告主が増える可能性は高い。ただし既存卸網が残るため、大口顧客の半数以上が維持される筋書きとする。
悲観 17% 動画への来訪と広告予算を同時に失う 利益 −1 億円 · PBR 1.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 98 円20 億円
料理の検索結果はAIアシスタントの回答へ集約され、デリッシュキッチンへの流入が減る。メーカーは制作と運用を内製化し、小売も自社の購買データに広告商品を組み合わせて販売する。食品卸との提携の一部は続くが、店頭サイネージの稼働数は一万台を下回り、広告の販路としての差別化が薄れる。
ロイヤル顧客は45社まで減少し、出稿額も小さくなる。小口顧客は200社に減り、Consumerは無料の献立AIと食材ECの競争に耐えられず赤字が定着する。既に終了したKDDI案件は復活せず、保守・制作受託もAIエージェントに置き換えられる。売上は直近の半分以下へ縮み、固定賃料と最低限の動画・データ維持費が損失を生む。
大型買収での逆転は想定せず、経営陣は人員整理と媒体の縮小運営を選ぶ。過去の黒字期に蓄えた現金や上場時の調達資金があるため、直ちに債務超過には陥らないが、稼ぐ力の資産価値はほぼ失われる。株主への還元はゼロで、新株予約権も多くは行使されない。少数株主が回収を期待できるのは、運転資金と整理費用を差し引いた現預金や売掛債権に限られる。
- Marketing Solution:ロイヤル広告主:数量 45.0(年間出稿額1,000万円以上の取引先企業数(社・実質))× 価格 0.36(大口取引先一社の年間平均売上(億円・名目、複数ブランドと提供サービス数を含む))→ 売上 16 億円・営業利益 0 億円。45社×年3,600万円。取引先と一社当たり予算がともに減少。
- Marketing Solution:小口広告・制作運用:数量 200(ロイヤル基準に満たない広告取引先企業数(社・実質))× 価格 0.01(小口取引先一社の年間平均売上(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。人月型の顧客数は現在の36%、価格にも値下げ圧力。
- Consumer:有料アプリ・冷凍食:数量 3.5(年間課金・購買の月額480円サブスク換算(万人年・推定、実会員数ではない))× 価格 0.55(換算数量1万人年当たり売上(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。AI献立と食材通販の競争で赤字定着。
- その他:KDDI関連の終了案件:数量 0.0(終了する大型共同運営契約の換算件数(件・実質))× 価格 4.53(大型共同運営契約一件の年間換算売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。大型委託は終了済み。
- その他:継続小口受託・保守:数量 6.0(継続する小規模受託案件数(件・実質、モデル上の代理件数))× 価格 0.03(継続小口受託一件当たり年額(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。受託作業の自動化と顧客離れで縮小。
倍率:事業は恒常赤字で将来ROEはマイナスとなり、正のPERを用いない。現在自己資本17.1億円に対し、今ある純現金約19.42億円と回収可能債権から整理費・潜在損失を差し引いた約20.0億円を資産床とする。PBR1.169591倍は現在の自己資本17.1億円にだけ掛け、2036年の自己資本31.3億円には掛けない。
確率:AI検索が料理動画への導線を代替し、大口食品メーカーが店頭広告網の別事業者へ移る複合事象。短い黒字実績と媒体依存を考え無視できないが、実店舗の接点を一部残すため破綻を基本にしない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
Marketing Solution:ロイヤル広告主
年間出稿額1,000万円以上の大口食品メーカー等への広告、店頭販促、購買分析の複合提供。自社媒体広告枠とAI代替可能な制作・運用を併せ持つ。
| 数量年間出稿額1,000万円以上の取引先企業数(社・実質) | 価格大口取引先一社の年間平均売上(億円・名目、複数ブランドと提供サービス数を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 80.0 | 0.41 | 33 | 5 |
| 10 年後 中立 | 105 | 0.50 | 53 | 7 |
取り方:決算説明資料24頁のロイヤル顧客80社・当該顧客の売上3,270百万円から年額40.875百万円を計算した。顧客単価は純粋な広告枠CPMではなく出稿回数・複数販路・制作運用の混合額。台数11,300は別の媒体指標で顧客売上と重複するため売上を二度計上しない。営業利益5.4億円はセグメント利益非開示につき直接費負担の推定で、本社費別。型は自社媒体広告を主、制作運用AI代替を従とし、中立の単価上昇を物価1.34倍未満に抑える。
Marketing Solution:小口広告・制作運用
大口以外の取引先向けに動画・SNS・媒体運用・広告企画を受託する。広告制作・運用の人月型でAIエージェント代替を強く受ける。
| 数量ロイヤル基準に満たない広告取引先企業数(社・実質) | 価格小口取引先一社の年間平均売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 555 | 0.01 | 8 | 0 |
| 10 年後 中立 | 390 | 0.01 | 6 | 0 |
取り方:顧客635社−ロイヤル80社=555社。マーケティング全体40.32億円−ロイヤル32.70億円=7.62億円で、一社当たり約137万円。ロイヤルとの境目は顧客の実際の年間取引高で、分類移行による見かけの数量変動がある。制作・運用の人月と広告の買い付けはAIエージェント代替に該当し、中立の客数は555社の約70%の390社、年額価格は物価上昇より低い約1.06倍とする。営業利益は直接負担の仮配分。
Consumer:有料アプリ・冷凍食
デリッシュキッチンの会員課金とミールズ等の食品物販。AIのレシピ回答による利用減と物販原価を考慮する。
| 数量年間課金・購買の月額480円サブスク換算(万人年・推定、実会員数ではない) | 価格換算数量1万人年当たり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 8.3 | 0.58 | 5 | 0 |
| 10 年後 中立 | 7.5 | 0.65 | 5 | 0 |
取り方:会社開示のConsumer売上4.79億円は会費と冷凍弁当を含む一括金額で、実会員数や単品販売数量は非開示。月額480円×12か月の購読額で割ると約8.32万人年に相当するという『課金当量』を数量の代用にする。宅食売上を購読者数と偽らず、値上げと物販単価の変化はprice、課金・購買量の変化はvolumeに置く。自社の会員データは業務SaaSの記録の正本には当たらない。利益は非開示のため推定。
その他:KDDI関連の終了案件
auコマース&ライフとのライブコマース共同運営など、2026年9月に終了予定の大型案件。受託制作・運用の人月型。
| 数量終了する大型共同運営契約の換算件数(件・実質) | 価格大型共同運営契約一件の年間換算売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 1.0 | 4.53 | 5 | −1 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 4.53 | 0 | 0 |
取り方:その他の2026年売上5.13億円と2027年会社予想0.60億円の差4.53億円を、終了するKDDI関連の受託契約の代理額とする。KDDI向けの実際の個社売上ではなく、他案件の増減も含みうる概算だ。2026年9月の取引終了が予定されているため10年の数量は全筋書きでゼロ。営業損益は非開示につき推定。AIによる縮みと既知の契約終了を二重に数えない。
その他:継続小口受託・保守
KDDI関連の大型契約を除く小売システム運用、動画制作、個別受託。手間で売る部分はAIエージェント代替の対象となる。
| 数量継続する小規模受託案件数(件・実質、モデル上の代理件数) | 価格継続小口受託一件当たり年額(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 20.0 | 0.03 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 13.0 | 0.03 | 0 | 0 |
取り方:2027年のその他売上予想0.60億円を継続する部分の規模感とし、年間300万円の小口案件20件と仮定した推計。会社が20件と公表しているわけではない。10年中立の案件数13件は20件の0.65倍で人月・工数型の0.55〜0.75倍の範囲。単価は0.03億円から0.033億円へ約1.10倍で物価の上昇未満、長期gはこの部分ではゼロ。利益は非開示のため推定。
リスクと懸念
AI エージェント代替
広告企画・動画制作・配信先選定・運用報告・食トレンド分析・小売システムの操作画面はAIエージェントに置き換わりやすい。中立で小口顧客数を七割程度、継続受託件数を六割台に縮め、価格も物価上昇より低くした。大口向けの自社媒体広告は実店舗の到達数で残るが、制作費を含む一社売上には圧力が残る。
料理検索のゼロクリック化
生成AIが検索画面内で献立や手順を示せば、ユーザーはレシピ記事やアプリまで来なくなる。会社開示の月間利用者約3,100万人はアプリとウェブの重複を除いておらず、その減少を実人数の流出と直接読み替えられない。広告の到達と消費者課金の双方を追う必要がある。
食品卸・小売との提携依存
店頭サイネージ約1万1,300台は強みだが、設置・保守・広告販売は伊藤忠食品などと分担している。小売がデータと媒体の運営を内製化したり、卸が他の広告ネットワークと提携したりすれば、台数を維持しても一台当たりの手取りが減る。長期独占の契約期間と解約率はまだ確認できない。
単年黒字と税効果の見誤り
2024年の営業赤字6.4億円から2026年に黒字化した一方、2026年純利益4.2億円には繰延税金資産約1.09億円の計上が影響した。営業キャッシュフローは2.92億円である。利益率の改善が販促需要の一時的な追い風なのか、継続する生産性向上なのかを数期かけて確認する必要がある。
KDDI契約終了と固定費
2026年9月にauコマース&ライフとのライブコマース共同運営が終了する予定で、その他事業は翌期に大幅減収見込みである。受託終了による人員振替は主力営業の強化にもなるが、転換に失敗すれば余剰人員とオフィス賃料が残る。年間本社賃借料約2.96億円は売上に比例せず、新リース会計の導入後は負債表示も変わる。
株主還元の欠如と新株予約権
配当も自社株買いも実績がなく、直近有報の上位10株主の持分は88.38%である。純現金が増えても、それが少数株主の価値として回収できるとは限らない。未行使新株予約権約181.65万株は好調な時ほど行使されやすい。添付の評価基準株数と上場後の公表発行済株数にも差があり、検証を続ける必要がある。
データ規制と効果測定の品質
購買データ、位置に近い来店情報、食の嗜好を組み合わせるには、小売側の権限と消費者の同意が要る。個人情報保護法上の取扱いや規制強化でデータ連携費用が膨らむ可能性がある。会社が紹介する広告効果の事例は対象キャンペーンの比較であり、広告がなければ同じ売上増が起きなかったという因果までは証明しない。
今後の分かれ目
- 2027年6月期にロイヤル顧客が約100社へ増え、その後も解約率を明示しながら120社超に達したら
- 主力の顧客数量と広告主の定着率を上方修正する。価格上昇が制作工数ではなく購買効果の対価であることまで確認できれば、強気筋の確率を上げる。
- 店頭サイネージの稼働数が2万台を超え、画面当たりの広告収益と小売店への分配額も開示されたら
- 卸の網が実際の利益を生んでいると評価できる。利用者数だけに依存する媒体から店頭データへの移行を強気側の根拠に加える。
- AI検索普及後にアプリとウェブの広告到達数が二年連続二桁減となり、ロイヤル顧客も減ったら
- AIによる来訪減が実際に広告出稿の減少へ波及したとみて、中立の大口顧客数と単価を切り下げ、悲観側を厚くする。
- 2027年6月期のMarketing Solution売上53.05億円計画を大きく割り込み、営業キャッシュフローも再び赤字になったら
- 黒字転換の構造が定着しなかったとみる。販管費の固定部分と契約終了後の人件費を確認し、会社の資産床を残しながら稼ぐ力を引き下げる。
- 食トレンドAIの有料販売額、更新率5%未満の低解約率、顧客システムの不可逆な連携のうち二つ以上が数量付きで開示されたら
- その部分だけ記録の正本に近い強い堀として再評価する。AI商品が存在するという発表だけではg_longや楽観側の数量を引き上げない。
- 継続的な増配や大型自社株買いが実行され、5年間の還元実績が利益の半分以上になったら
- 支配株主の下でも現金が戻る証拠になる。余剰現金の戻り方を0.5から1.0へ見直し、利益を配ってなお伸びる増分ROICを確かめる。
- 発行済株数とストックオプションの行使実績が2026年9月以降の開示と一致するよう更新されたら
- 添付の基準株数との差を修正し、将来の既存株主持分係数と現在時価総額を同じ基準にそろえて本質価値との差を再計算する。
見ておくもの
- Marketing Solutionの顧客社数とロイヤル顧客社数、ロイヤル顧客経由売上
- 大口広告主の契約更新率と新規顧客・離脱顧客の実数(開示開始の有無)
- デリッシュキッチンのアプリ/ウェブ別の重複を除いた利用実数と広告到達
- 店頭サイネージ稼働台数、画面当たり収益、小売・卸への分配率
- 2027年6月期のMarketing Solution売上53.05億円と営業利益5.30億円の達成
- 税効果を除いた純利益、営業キャッシュフロー、年間本社賃料
- AIアシスタント・MCPの有料受注額と顧客の解約率
- 配当・自社株買い、主要株主の持分、発行済株数、新株予約権行使残高
倍率と資本コストの決め方
市場価格223円・添付株数20,505,908株からの時価総額45.73億円は最後の比較にのみ用いた。数量は大口広告主80社、小口555社、課金当量、終了契約の件数から組み立て、値段は顧客一社当たり取引額に分けた。中立PER12.165倍はk8.25%、長期g1%、余剰現金を除く事業ROE8.70%、新規投資の超過収益が半分残る式で決め、現在・過去・同業のPERを基準にしていない。余剰現金と期間の配当は重複計上せず、利益に含まれる受取利息を控除した。悲観は今の純現金と換金可能な債権を床にし、将来膨らむ自己資本にPBRを掛けていない。2026年6月決算後の公募・第三者割当による約4.18億円の払込みは自己資本の起点に反映した。一方、上場後の公表発行済株数21,611,208株と添付の株数20,505,908株には差がある。利用者指定のbasisを優先しているため、この差を放置した実勢の投資判断には使えず、再計算が必要だ。2027年度以降の新リース会計による負債表示の変更も、ここでは家賃を営業費用とする旧基準にそろえている。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債3%と株式プレミアム4.5%の基本7.5%に、事業の変動性・弱い値決め力・純現金を反映したquality+0.75%を足す。個別のAIや提携解消の危険は数量・利益と確率で見る。